JP2543819B2 - 固体潤滑剤およびしゅう動装置 - Google Patents

固体潤滑剤およびしゅう動装置

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JP2543819B2 JP5124615A JP12461593A JP2543819B2 JP 2543819 B2 JP2543819 B2 JP 2543819B2 JP 5124615 A JP5124615 A JP 5124615A JP 12461593 A JP12461593 A JP 12461593A JP 2543819 B2 JP2543819 B2 JP 2543819B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温下で高荷重が負荷
される軸受などのしゅう動部の潤滑に用いると、優れた
潤滑性を長時間持続し、かつ、腐食環境下で長時間使用
する場合にも軸受を腐食から保護する複合材料の固体潤
滑剤に関する。
【0002】また、別の本発明は、本発明による固体潤
滑剤を用いることにより、腐食環境下で、高温下で高荷
重が負荷された条件で長時間持続して使用可能なしゅ動
装置に関する。
【0003】
【従来の技術】油膜などの厚い流体膜による完全潤滑、
非常に薄い油膜などによる境界潤滑あるいは自己潤滑性
の固体材料による固体潤滑が、軸受の潤滑に一般に用い
られる。境界潤滑は、軸受に負荷される荷重によって油
膜が非常に薄くなって潤滑用流体膜の形成が困難な状態
で行われる潤滑である。固体潤滑は、潤滑用流体膜の形
成が本来的に困難な場合に潤滑性固体材料を用いて行わ
れる潤滑である。その潤滑性固体材料は一般的に固体潤
滑剤と称されている。
【0004】固体潤滑剤は、潤滑用流体膜の形成が本来
的に困難な用途での軸受、例えば、起動停止による負荷
が頻繁にかかる軸受、あるいは低すべり速度あるいは高
荷重軸受などに使用されている。微粉末浮遊の環境下で
使用の軸受には、潤滑油では微粉末が混入して潤滑性が
低下するということで、固体潤滑剤が一般的に使用され
ている。さらに、高温あるいは長時間使用の軸受にも、
潤滑油が酸化して使用時間が短くなるということで固体
潤滑剤が一般的に使用されている。なお、グースについ
ても、その事情は潤滑油の場合と同様である。
【0005】固体潤滑剤には、潤滑性固体材料単独から
なるものと、潤滑性複合材料からなるものとがあり、次
のような方法で使用されている。すなわち、軸受自体を
固体潤滑剤で形成する、軸受のしゅう動面に固体潤滑剤
の皮膜を形成する、あるいは軸受しゅう動部の空間に固
体潤滑剤を埋め込むなどの方法である。潤滑性固体材料
単独からなる潤滑剤は、一般的に「固体潤滑剤」と称さ
れているが、複合材料の固体潤滑剤もしばしば「固体潤
滑剤」と称されている。 すなわち、「固体潤滑剤」の
用語は、狭義には潤滑性固体材料単独からなる潤滑剤の
意味で使用され、広義には複合材料の潤滑剤の意味で使
用されている。したがって、単に「固体潤滑剤」という
場合、狭義あるいは広義の意味、あるいはその両方の意
味のいずれに解するのかが不明瞭となる。
【0006】そこで、本明細書では、「固体潤滑剤」の
用語を、用語本来の語義、すなわち固体状の潤滑剤、の
意味で使用し、特に断わらないかぎり、潤滑性固体材料
単独の固体潤滑剤および複合材料の固体潤滑剤の両方を
包含した意味で使用している。又、潤滑性固体材料単独
からなる潤滑剤については「単独の固体潤滑剤」の用語
を、複合材料の固体潤滑剤については「複合材料の固体
潤滑剤」の用語をそれぞれ使用している。ただし、「複
合材料の固体潤滑剤」については、以下、便宜上、「複
合材料」と略称することがある。また、「潤滑剤」の用
語を、液状の潤滑剤(例えば、潤滑油およびグリース)
あるいは固体潤滑剤をとわず、一般的に潤滑に使用する
剤の意味で使用している。単独の固体潤滑剤には、黒
鉛、二硫化モリリブデンあるいは二硫化タングステンな
どの潤滑性鉱物、軟質金属などの潤滑性金属、またはポ
リテトラフルオロエチレンあるいはポリイミド樹脂など
の潤滑性合成樹脂を用いるのが一般的である。 そのよ
うな潤滑性鉱物は、潤滑性、機械的強度および耐摩耗性
をある程度有しているので、使用限界温度以下では、通
常の荷重付加の条件で使用することが可能である。軟質
金属などの潤滑性金属またはポリテトラフルオロエチレ
ンなどの潤滑性合成樹脂潤も、機械的強度が若干劣り、
使用限界温度が低くなるが、通常の荷重付加の条件では
使用できる。黒鉛は約400℃程度の温度で酸化により
炭酸ガスが発生し、二硫化モリブデンは約350℃程度
の温度で酸化により三酸化モリブデンが生じるので、実
質的な使用温度領域はそれらの使用限界温度よりも相当
に低い温度領域にある。
【0007】一方、軸受は過酷な条件で使用される場合
がある。その場合には、それに対応して、潤滑剤が高荷
重付加、高機械的強度(例えば、大きな耐衝撃性)、低
摩擦係数およびそれの長時間の維持、耐熱性、耐摩耗性
あるいは防食性(潤滑する材料を腐食から保護する性
能)などの特性を有することが不可欠となる。例えば、
高荷重付加の軸受に使用の潤滑剤の場合、あるいは高荷
重付加および衝撃力付加の条件で腐食性の環境下で用い
る軸受に使用の潤滑剤の場合などである。
【0008】このような場合、潤滑油あるいはグリース
では、その性能からして使用に供するのが困難であるま
た、単独の固体潤滑剤でも、高温下(例えば、300℃
以上)で高荷重と衝撃力に耐え、低摩擦の潤滑を軸受に
与えるのが困難である。過酷な条件がさらに付加した条
件て使用される軸受ではより困難となる。そこで、単独
の固体潤滑剤用の材料を用いて複合化し、所望の性能を
有する複合材料にすることが提案されている。複合化
は、材料の焼結あるいはバインダー(主として、合成樹
脂)による一体化によるのが代表的である。焼結による
複合材料には、代表的なものとして、下記(1)〜
(3)の提案がある。
【0009】ただし、焼結による複合材料では、所定の
形状の複合材料を形成して、それを軸受にはめ込むなど
の方法をとらざるを得ないので、特別に構造の軸受を使
用するという制約があり、一般的な軸受に使用するのが
困難なものである。 (1)二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンから
なる潤滑性鉱物と、モリブデン、ニオブ、タンタルある
いはタングステンの酸化物とをホットプレス焼結して複
合材料にし、超高真空雰囲気中において低温から高温に
至る条件下で使用するに際しての耐摩耗性を向上させ、
ホットプレス焼結時の黒鉛ダイスの消耗をも低減させる
提案がある(特公昭63−62470号公報参照)。 (2)黒鉛25〜65重量部、硫化亜鉛15〜45重量
部、硫化アンチモン5〜20重量部およびアルカリ土類
金属リン酸塩など5〜20重量部を焼結により複合材料
にし、それによって低摩耗性および低い摩擦係数を複合
材料に付与する提案がある(特開昭61−258896
公報参照)。 (3)黒鉛粉末と柔質金属とから焼結により複合材料に
し、その中に過マンガン酸カリウムなどの熱分解性化合
物を含有させ、潤滑時の発生熱により過マンガン酸カリ
ウムなどの分解で生じた酸素および水を黒鉛に結合させ
た複合材料にし、それによって複合材料の摩擦係数を低
下させる提案がある(特開昭62−225596号公報
参照)。
【0010】ただし、この提案の複合材料は、潤滑に際
して、酸素および水がしゅう動面に存在するので、その
使用分野において著しく制約を受ける。また、バインダ
ーにより固める複合材料には、代表的なものとして、下
記(イ)および(ロ)の提案がある。 (イ)黒鉛あるいは二硫化モリブデンの粉末と、金属の
ジチオリン酸塩と有機モリブデン化合物と界面活性剤と
をポリエチレンなどの重合体のバインダーで固めて複合
材料にし、それによって耐摩耗性と低摩擦性とを複合材
料に付与する提案がある(特開昭64−31893号公
報参照)。
【0011】ただし、この提案の複合材料は、金属のジ
チオリン酸塩が約180℃で分解するので、実質的に
は、約150℃以上の温度では使用できないものであ
る。 (ロ)フエノール・フォルムアルデヒドオリゴマー15
〜25重量%、ヘキサメチレンアミン0.5重量%、強
化添加剤1〜5重量%、シクロヘキシルアミンの合成脂
肪酸塩0.5〜3重量%、黒鉛繊維またはガラス繊維か
らなる強化添加剤および黒鉛を20〜40重量%のフラ
ン系単量体の重合体のバインダーで固めて複合材料に
し、それによって潤滑性を向上させて高速回転での潤滑
に使用できるようにし、しかも軸受に防食性に付与でき
るようにした提案がある(特開平4−239598号公
報参照)。
【0012】ただし、この提案の複合材料は、潤滑油用
の一般的防食剤として周知のシクロヘキシルアミンの合
成脂肪酸塩を含有させたものである。しかも、この提案
は、シクロヘキシルアミン合成脂肪酸塩の長鎖パラフィ
ン炭化水素の部分で潤滑性を複合材料に付与し、高速回
転でのベアリングの寿命を長くし、シクロヘキシルアミ
ン自体によってベアリングの腐食を抑制しているので
(特開平4−239598号公報第2頁第1欄第44行
〜第2欄第2行、第2欄第33行〜第48行参照)、シ
クロヘキシルアミン合成脂肪酸塩の揮発温度約150℃
程度でそれらの機能が消滅する。したがって、この提案
の複合材料は、その揮発温度を越える温度(例えば、2
00〜300℃程度)の使用では、シクロヘキシルアミ
ンの合成脂肪酸塩が揮発または分解して潤滑性と防食性
が消滅し、高温で腐食環境下での潤滑には使用できない
ものである。 なお、黒鉛あるいは二硫化モリブデン
などを用いないで、金属微粒子と合成樹脂とを一体化し
た複合材料も提案されている。
【0013】しかし、それらは、固体潤滑剤用として公
知の熱硬化樹脂のマトリックス中に合金あるいは金属酸
化物などの金属微粒子を分散させ、それによって一般的
に合成樹脂−金属粉系複合体で得られる硬度などの機械
的強度の向上を図ったものにすぎない(特開平5−32
989号公報、特開平5−32797号公報など参
照)。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】したがって、従来の提
案にもかかわらず、高温下(例えば、250〜350
℃)で、高腐食環境下および高荷重下での潤滑に長時間
使用でき、かつ、一般的に使用する軸受でも、それに容
易に埋め込んで使用できる複合材料の固体潤滑剤が存在
しないという問題点があった。
【0015】そのために、そのような条件で使用する軸
受の潤滑には、フルオロシリコン系グリースあるいはフ
ッ素化ポリエーテル系グリースなどのフッ素系グリース
が、比較的高温に耐え、軸受を腐食から保護するという
ことで使用されていた 。しかし、フッ素系グリース
は、250℃以上の温度で、短時間の使用により揮発し
てしまうので、新しいフッ素系グリースを常時軸受に注
入しなければならないという問題点(すなわち、メイン
テナンスを常時必要とするという問題点)があった。
【0016】
【課題を解決するための手段】そこで、第一の本発明
は、高温下(例えば、200〜350℃)および金属を
腐食させる環境下で、低荷重から高荷重に至る負荷がか
かる状態で使用する軸受などのしゅう動装置に低摩擦の
潤滑を長時間にわたって持続させて付与し、かつ、摩耗
性に優れて、しゅう動装置を腐食から保護することがで
きる工業的に有益な複合材料の固体潤滑剤を提供するこ
とを目的とする。
【0017】また、第一の本発明は、一般的な軸受など
のしゅう動部にも埋め込むことができる複合材料の固体
潤滑剤を提供することをも目的とする。
【0018】特に、第一の本発明は、高温で操業する炉
に直接あるいは間接に使用する装置の軸受に埋め込ん
で、メインテナンスフリーで(メインテナンなしで)低
摩擦の潤滑を軸受に長期間にわたって付与する複合材料
の固体潤滑剤を提供することをも目的とする。
【0019】なお、高温で操業する炉というのは、例え
ば、溶解炉、焼結炉あるいは焼成炉などである。また、
炉に直接に使用する装置の軸受というのは、例えば、炉
の開閉扉の軸受などであり、炉に間接に使用する装置の
軸受というのは、炉への原料の供給あるいは炉からの製
品の搬出に使用の台車に使用の軸受などである。
【0020】さらに、第一の本発明は、従来、潤滑油あ
るいはグリースしか使用できないとされていたリニヤ−
ガイドのような直動案内あるいはボールネジのようなし
ゅう動装置にも潤滑油あるいはグリースに代えて使用で
き、かつ、それらのしゅう動装置に精密な潤滑を付与で
きる複合材料の固体潤滑剤を提供することをも目的とす
る。
【0021】さらにまた、第一の本発明は、金属が著し
く腐食し易い環境(代表的には、水中)で高荷重負荷の
条件で使用される装置の軸受などのしゅう動装置に長時
間にわって低摩擦の潤滑を付与する複合材料の固体潤滑
剤を提供することをも目的とする。そのような装置とし
ては、例えば、土木工事で使用される装置(例えば、排
泥用の装置)がある。
【0022】第二の本発明は、高温下(例えば、200
〜350℃)、金属を腐食させる環境下で、高荷重負荷
の状態で長時間使用することができるしゅ動装置を提供
することを目的とする。
【0023】特に、第二の本発明は、高温で使用する炉
に直接あるいは間接に使用する装置に使用して、メイン
テナンスフリーで(メインテナンなしで)低摩擦の潤滑
を長期間にわたって付与する軸受を提供することをも目
的とする。なお、高温で使用する炉、およびそれに直接
あるいは間接に使用する装置の軸受の意義については前
述してある。
【0024】また、第二の本発明は、金属を腐食させる
環境下で長時間使用しても腐食することがないしゅう動
装置を提供することを目的とする。さらに、第二の本発
明は、従来、潤滑油などの液状潤滑剤のみが使用されて
いたしゅう動装置、あるいは初期充填のグリースが使用
されていたしゅう動装置に代えて使用できる固体潤滑剤
を埋め込んだしゅう動装置を提供することを目的とす
る。そのようなしゅう動装置には、リニヤ−ガイドのよ
うな直動案内軸受あるいはボールネジのような軸受があ
る。 (第一の本発明) 第一の本発明による固体潤滑剤は、下記(A)〜(D)
にそれぞれ定義する、潤滑性物質、充填材、防食剤およ
びバインダーからなり、かつ、潤滑性物質が100重量
部である場合にバインダー1〜150重量部の比率で有
してなる組成物を固めて、少なくとも動摩擦係数0.5
以下でシャルビー衝撃強度1.0kgf・cm/cm
以上の物性を有する複合材料からなり、しゅう動装置内
の空間に埋め込んで用いられるものであることを特徴と
する。(A)潤滑性物質 潤滑性物質は、層状結晶構造を有する潤滑性鉱物、潤滑
性セラミックス、メラミンシアヌレートまたは/および
有機モリブデニウムジチオカルバメートよりなる潤滑性
有機化合物からなる群より選ばれた単一あるいは複数の
ものからなる。ただし、複数のものからなる場合、同一
種のものが複数でもよく、異種のものが複数でもよい。(B)充填材 充填材は、150℃の温度で熱変形しない、セラミック
繊維、ガラス繊維、ウイスカー、金属酸化物あるいは炭
素繊維の単一あるいは複数のものからなる。ただし、複
数のものからなる場合、同一種のものが複数でもよく、
異種のものが複数でもよい。(C)防食剤 防食剤は、防食性の無機酸アルカリ金属塩が0.01〜
10重量%(複合材料の合計重量基準)配合されている
ものからなる。(D)バインダー バインダーは、常温〜350℃の温度で固体有機高分子
となるものである。 (第二の本発明) 第二の本発明によるしゅう動装置は、下記(a)〜
(d)にそれぞれ定義する、潤滑性物質、充填材、防食
剤およびバインダーからなり、かつ、潤滑性物質が10
0重量部である場合にバインダー1〜150重量部の比
率で有してなる組成物を固めて、少なくとも動摩擦係数
0.5以下でシャルビー衝撃強度1.0kgf・cm/
cm以上の物性を有する複合材料にしたものからなる
固体潤滑剤を部材が相手方部材と回転自在な部品を介し
て接触するしゅ動部に埋め込んでなるものであることを
特徴とする。(a)潤滑性物質 潤滑性物質は、層状結晶構造を有する潤滑性鉱物、潤滑
性セラミックス、メラミンシアヌレートまたは/および
有機モリブデニウムジチオカルバメートよりなる潤滑性
有機化合物からなる群より選ばれた単一あるいは複数の
ものからなる。ただし、複数のものからなる場合、同一
種のものが複数でもよく、異種のものが複数でもよい。(b)充填材 充填材は、150℃の温度で熱変形しない、セラミック
繊維、ガラス繊維、ウイスカー、金属酸化物あるいは炭
素繊維の単一あるいは複数のものからなる。ただし、複
数のものからなる場合、同一種のものが複数でもよく、
異種のものが複数でもよい。(c)防食剤 防食剤は、防食性の無機酸アルカリ金属塩が0.01〜
10重量%(複合材料の合計重量基準)の配合量からな
る。(d)バインダー バインダーは、常温〜350℃の温度で固体有機高分子
となるものである。 〔発明の具体的説明〕 以下、第一の本発明および第二の本発明を具体的に説明
する。 〈第一の本発明による固体潤滑剤〉 第一の本発明は、前述の構成の複合材料からなるもので
ある。第一の本発明は、三成分系以上からなる複合材料
での潤滑性と耐熱性と機械的強度との相互関係を探索す
る検討において、本発明者により見いだされた新しい事
象を基礎としてなされたものである。
【0025】すなわち、本発明者による検討により、合
成樹脂バインダーによる複合化によっても、低摩擦の潤
滑性を有して200℃を越える高温にも耐える複合材料
にすことが可能であることが見いだされた。
【0026】そして、第一の本発明の配合成分(前記
(A)〜(D)で定義する成分)を合成樹脂バインダー
により少なくとも動摩擦係数0.5以下でシャルビー衝
撃強度1.0kgf・cm/cm以上の物性を有する
複合材料に複合化すると、摩耗量も小さくなって優れた
潤滑性を有し、曲げ強度もある程度強くなって機械的強
度も備え、限界PV値もある領域になることが見いださ
れて本発明が得られた。
【0027】以下に、第一の本発明の複合材料に用いる
材料を具体的に説明する。潤滑性物質 「潤滑性物質」は、本発明の複合材料に潤滑性を主体的
に付与する物質である。それには、層状結晶構造を有す
る潤滑性鉱物、潤滑性セラミックス、メラミンシアヌレ
ートまたは/および有機モリブデニウムジチオカルバメ
ートよりなる潤滑性有機化合物からなる群より選ばれた
単一あるいは複数のものが用いられる。ただし、複数の
ものからなる場合、同一種のものが複数でもよく、異種
のものが複数でもよい。したがって、潤滑性物質には、
例えば、二種以上の潤滑什鉱物の使用、あるいは二種以
上の潤滑性鉱物と他の潤滑性物質の一種あるいは二種以
上との組み合わせの使用も可能である。 ここで、「潤
滑性物質」は、その物質自体で固体潤滑材になりうる程
度の潤滑性、いわゆる自己潤滑性、を有していることが
望ましい。「潤滑性物質」には、単独の固体潤滑材にな
る材料として公知のものを使用できる。潤滑性鉱物の代
表的なものを例示すると、黒鉛、二硫化モリブデン、二
硫化タングステン、セリサイトあるいは雲母などがあ
る。複合材料の耐熱性を大きくするには、黒鉛単独の使
用あるいは黒鉛と二硫化モリブデンの併用が適してい
る。その併用の場合には、黒鉛60〜97重量%と二硫
化モリブデン3〜40重量%(重量%は、黒鉛と二硫化
モリブデンとの合計重量基準)するのが好ましい。黒鉛
が、60重量%未満であると複合材料の耐熱性が不足す
る傾向があり、97重量%を越えると複合材料の耐荷重
性が不足する傾向があるからである。
【0028】潤滑性セラミックスの代表的なものを例示
すると、金属酸化物、ホウ化物、炭化物あるいはチッ化
物(例えば、チッ化ホウ素)のセラミックスなどがあ
る。潤滑性有機化合物は、メラミンシアヌレートまたは
有機モリブデニウムジチオカルバメートの単独使用また
は両方の併用である。それらの単独使用または併用によ
っても本発明の物性を有する複合材料を形成できるこ
と、およびそれらと他の潤滑性物質との組み合わせによ
っても本発明の物性を有する複合材料に形成できること
が見いだされている。
【0029】そして、潤滑性物質を二種以上使用する場
合における、異種潤滑性物質の組み合わせあるいは異種
潤滑性物質の量的比率は、複合材料を少なくとも動摩擦
係数0.5以下でシャルビー衝撃強度1.0kgf・c
m/cm以上の物性の複合材料にできれば原則として
任意である。好ましい量的比率が、いくつか本発明で見
いだされている。例えば、潤滑性鉱物と潤滑性セラミッ
クスの併用では、潤滑性鉱物100重量部に対して潤滑
性セラミックスを10重量部以上用いるのが好ましい。
潤滑性セラミックスが10重量部未満であると、潤滑性
セラミックスの種類によっては複合材料の耐熱性と耐荷
重性(荷重に耐える能力)が低下する場合があるからで
ある。潤滑性鉱物と潤滑性合成樹脂の併用では、潤滑性
鉱物100重量部に対して潤滑性合成樹脂5〜20重量
部程度用いるのが好ましい。
【0030】潤滑性合成樹脂が5重量部未満では、潤滑
性合成樹脂の種類によっては、複合材料の耐摩耗性が低
下し、潤滑性合成樹脂が20重量部を越えると複合材料
の耐衝撃性が低下する場合があるからである。潤滑性セ
ラミックスが10重量%未満であると複合材料の熱安定
性が低下する場合があり、30重量%を越えてまで潤滑
性鉱物を潤滑性セラミックスに置き換える技術的必要性
が乏しいからである。これらの比率は、代表的な例示で
あって、潤滑性鉱物、充填剤、バインダーの種類によっ
ては別の比率を用いることが可能である。
【0031】なお、潤滑性物質に白色のものを使用する
と、それ以外の材料には白色のものが多いので複合材料
を白色にすることができる 白色の固体潤滑剤にするに
は、例えば、雲母、チッ化ホウ素あるいはフッ化黒鉛な
どの白色潤滑性物質の単独あるいは組み合わせと、ポリ
テトラフルオロエチレン樹脂の微粉末などの白色潤滑性
合成樹脂とを併用すればよい。白色の固体潤滑剤を埋め
込んだ軸受を塗装装置(例えば、自動車の塗装装置)に
用いると、仮に摩擦によって固体潤滑剤の微粉が塗料に
混ざっても、塗装自体が不良なるという事態を防止する
ことができ、白色の固体潤滑剤の汚れから工場全体の汚
染状態を判別できることが本発明で見いだされている。
黒色の固体潤滑剤であれば、その微粉が塗料に混ざるこ
とによって、塗装装置の工程を停止するために生ずる大
きな損害の発生を防止できる。
【0032】潤滑性物質は原則として粉末を用いる。粉
末を用いることにより複合材料の物性を目的の範囲のも
の(本発明で定義する範囲のもの)にするのが容易であ
ることが本発明で見いだされている。粉末粒径、粒径分
布などは、複合材料の物性との関係で選択すればよい。
例えば、平均粒径が、0.1〜100ミクロン、特に1
〜30ミクロンであれば、本発明による複合材料を得る
のに容易であることが本発明で見いだされている。充填材 充填材は、150℃の温度で熱変形しない、セラミック
繊維、ガラス繊維、ウイスカー、金属酸化物あるいは炭
素繊維の単一あるいは複数のものからなる。ただし、複
数のものからなる場合、同一種のものが複数でもよく、
異種のものが複数でもよい。150℃で熱変形しないと
いうことは、150℃で熱により軟化するなどして、そ
の形態が変化しないことである。充填材は、合成原料の
みならず天然原料から製造されたものでもよい。
【0033】セラミックスには、合成原料を焼結した焼
結物(いわゆる、ファインセラミックスと称されるも
の)のみならず、ガラスのような天然原料をするセラミ
ックスも使用できる。本明細書では、充填材の「セラミ
ックス」は、広義の意味(ファインセラミックスと従来
からあるセラミックスを含んだ意味)で用いている。セ
ラミックスは、潤滑性物質としても使用しているが、潤
滑性物質に用いるセラミックスは、それ自体が有する潤
滑性によって単独で固体潤滑剤になりうるものである。
これに反して、充填材として使用する「セラミックス」
は、それ自体では固体潤滑剤になりえず、複合材料の機
械的物性の改善に関与するものである。
【0034】充填材は、原則として任意の形態のものを
使用できるが、繊維状のもの、すなわち、セラミックス
繊維、繊維状のウイスカーあるいは金属酸化物繊維、を
使用することにより本発明の目的とする物性を有する複
合材料にするのが容易である。セラミックス繊維あるい
は金属酸化物繊維は、本発明の目的の物性の複合材料を
得やすいという面からは、その平均繊維長が0.1〜
1.5mm程度、好ましくは0.1〜0.8mm程度、
のものである。ウイスカーは、その平均繊維長が20〜
500ミクロン程度のものが好ましい。
【0035】その程度の平均繊維長のものを平均粒径1
〜30ミクロンの粒状の潤滑性物質と組合わせると、本
発明の複合材料を得るのが容易であることも本発明者に
より見いだされている。特に、平均繊維長さが、0.1
〜3.0mm、好ましくは0.1〜0.8mm、の充填
材であれば、種々の機械的強度が優れた本発明の複合材
料がやすいことも本発明者により見いだされている。セ
ラミックスを例示すると下記のものがある。
【0036】炭素、アルミナ、シリカ・アルミナ、チタ
ン酸カリ、ホウ酸アルミ、炭化ケイ素、チッ化ケイ素、
炭化ホウ素、ジルコニア、ジルコニア・シリカ・アルミ
ナ、ガラスなどで、これらの多くは繊維状を用いるのが
本発明の効果を享受するのに適している。炭素繊維とし
ては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(ポリアクリロ
ニトリルを原料とする炭素繊維)あるいはピッチ系炭素
繊維(ピッチを原料とする炭素繊維)の使用が代表的で
ある。ウイスカーを例示すると下記のものがある。アル
ミナ・酸化ホウ素(9Al・2B)、炭化
ケイ素(SiC)、チッ化ケイ素(Si)、アル
ミナ(Al)、チタン酸カリウム(KTi
13)、硫酸カルシウム(CaSO)、酸化マググネ
シウム(MgO)、酸化ホウ素マグネシウム(MgB
O)、クロソタイルおよびワラストナイトなど。ウイス
カーは、短繊維状のものが代表的である。なお、充填剤
量は、2〜50重量%(複合材料の重量基準)であるの
が好ましく、特に好ましくは2.5〜20重量%、であ
る。
【0037】充填剤量が2重量%未満であると、複合材
料のシャルビー衝撃強度1.0kgf・cm/cm
上にできても、それ以外の機械的物性を大きくする、す
なわち、シャルビー衝撃強度と他の機械的物性をバラン
スさせるのに困難を伴うようになるからである。また、
充填剤量が50重量%を越えると、複合材料の動摩擦係
数を0.5以下、特にそれ以下のより低い動摩擦係数、
にするのに困難を伴うようになるからである。防食剤 防食剤は、防食性の無機酸アルカリ金属塩が0.01〜
10重量%(複合材料の合計重量基準)の配合量からな
る。本発明の複合材料であれば、無機酸アルカリ金属塩
を均一に分散して含有させることができること、および
複合材料がわずかずつ摩耗していく過程で無機酸アルカ
リ金属塩が金属面に接して金属面に防食性膜を作り易い
ことが本発明において見い出されている。無機酸アルカ
リ金属塩のうちでは、経済的に安価である点および取扱
が容易である点などから、無機酸ナトリウム塩の使用が
適している。無機酸ナトリウム塩としては、例えば、亜
硝酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、メタホウ酸ナ
トリウム、モリブデン酸ナトリウムあるいはタングステ
ン酸ナトリウムの一種または二種以上の使用が適してい
る。
【0038】これらの無機酸ナトリウム塩のうちでは、
代表的には、亜硝酸ナトリウムを単独使用しても、本発
明による効果である、腐食環境下で高温で使用するしゅ
動装置などの腐食を防止が達成できる。防食剤は、本発
明の固体潤滑剤を用いるしゅう動装置の使用条件によっ
て防食に有効な量を使用すればよい。一般的には、0.
01〜10重量%(複合材料の合計重量基準)である。
0.01重量%未満では、防食効果の発生に時間遅れが
生じて、防食効果が十分でない場合がある。また、10
重量%を越える量では、防食効果が大きく変化せず、1
0重量%以下の量で、工業的には十分な防食効果が得ら
れる。
【0039】防食剤は、潤滑性物質と充填材と共にバイ
ンダーで固める際には粉末状のものを用いる。したがっ
て、複合材料は、無機酸アルカリ金属塩の微粒子が混在
する状態のものとなっている。 そのために、しゅう動
装置のしゅう動部の金属が本発明の固体潤滑剤に接触し
て、固体潤滑剤がミクロ的に剥れるなどして潤滑が行わ
れると、無機酸アルカリ金属塩の微粒子が次々に接触し
て金属の接触面に防食性皮膜を作り、それによって金属
が腐食から保護されることになる。
【0040】バインダー 本発明による複合材料は、潤滑性物質が100重量部で
ある場合にバインダー1〜150重量部の比率で組成物
中に存在するバインダーにより潤滑性物質などからなる
組成物を固めたものである。バインダーには、常温〜3
50℃の温度で反応して、固化が完結した状態で固体有
機高分子となるものを使用する。潤滑性物質量に対する
バインダーの量的比率は、バインダー量を量的比率で調
整することにより、本発明の複合材料が得やすいことが
見いだされたからである。バインダー量が1重量部でも
よいのは、他の材料に強固に結合する性質を有するバイ
ンダーを選択すれば、その量でも可能な場合があるから
である。
【0041】また、バインダー量が150重量部までも
可能なのは、硬化後のバインダーが潤滑性を有するもの
であれば、潤滑性物質量を相対的に少なくしても、本発
明の複合材料にできる場合があるからである。バインダ
ーは、反応後において固体有機高分子(固化が完結した
もの)となるものであれば、反応前においては、単量
体、プレポリマーあるいは未架橋の高分子のいずれでも
よい。
【0042】反応は、一般に加熱下で固化が進行するも
のを使用する。ただし、硬化剤などの使用により、常温
あるいはその近傍の温度で固化が進行するものを用いい
ることも可能である。ただし、加熱により溶融の過程を
得て硬化して固化が完結する熱硬化型の合成樹脂の使用
が望ましい。バインダーの行う反応においては特に制約
がなく、付加重合、架橋あいはその両方が生じるもので
もよいが、架橋反応で硬化が進行する熱硬化型の合成樹
脂が代表的である。なお、350℃の温度以下で固化が
進行するものを使用するのは、軸受に本発明の材料の粉
末を充填してそれを越える温度で進行させると、軸受自
体の材料に劣化が生じる場合があるからである。
【0043】バインダーとしては、一般的に、粉末状あ
るいはそれより径の大きい粒子状のものを用いるのが便
宜である。バインダーを例示的に挙げると、ポリイミド
樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、
レゾルシン樹脂、ウレタン樹脂あるいはポリエステル樹
脂など。特に適したバインダーは、フェノール樹脂の分
子にメチロール基を結合させた樹脂で、熱溶融し、その
熱溶融時の熱により分子に結合したメチロール基が反応
して三次元架橋硬化するフェノール樹脂とヘキサメチレ
ンテトラミンなどにより熱硬化(メチレン架橋)するフ
ェノール樹脂である。前者の熱溶融時の熱でメチロール
基の反応により三次元架橋硬化するフェノール樹脂は、
樹脂が熱溶融するという点ではノボラック樹脂の性格を
有するが、三次元架橋硬化に際して付加反応が生じるこ
とがあってもよいものである。そのようなフェノール樹
脂としては、市販のもの(例えば、鐘紡社製、商品名:
ベルパール)を用いることができる。
【0044】後者のヘキサメチレンテトラミンなどによ
り熱硬化するフェノール樹脂も、市販のもの(例えば、
三井東圧化学社製、商品名:ミレックスXL−225)
を用いることができる。バインダーの種類および量は、
充填材の種類あるいは量との関係も考慮して決めればよ
い。例えば、充填材に機械的強度があまり大きくないも
のを用いる場合は、固化した後の機械的強度が大きいバ
インダーを使用するとよい。充填材の量が少ない場合
は、バインダーの量を多くすることで、バインダーの機
械的強度を利用することができる。また、複合材料の耐
熱性を大きくするには、ポリイミド樹脂を使用するのが
適している。その他の配合物 本発明による複合材料においては、本発明の目的に合目
的である場合、他の配合物が含まれていてもよい。その
ような配合物として、例えば、耐熱性付与剤がある。耐
熱性付与剤というのは、添加により複合材料の耐熱性を
大きく高くすることができる材である。耐熱性付与剤と
しては、例えば、金属の酸化物あるい硫化物がる。金属
の酸化物としては、例えば、酸化鉛(Pbo)、酸化亜
鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)、酸化クロム(Cr
O)、酸化カドミニウム(CdO)、酸化銅(Cu
O)などがる。また、金属の硫化物としては、例え
ば、硫化亜鉛あるいは硫化カルシウムがある。これら
は、単独使用しても、あるいは併用してもよい。複合材料の製造 本発明による複合材料は、基本的には、それを構成する
各材料が混ざった粉末(特に乾燥粉末)を製造する粉末
製造工程と、そこで得られた粉末を軸受内に充填して、
その状態で粉末を硬化(代表的には、加熱硬化)させて
軸受内に固体潤滑剤を埋め込んだ状態に形成する成形化
工程とからなっている。成形化工程は、硬化を二段階に
分けて行うと、所望の複合材料にするのに便宜である。
粉末製造工程は、溶媒の共存化で攪拌混合してから溶媒
を揮発させて粉末にする方法(いわゆる、湿式法)が適
している。溶媒は、水あるいは水とそれより揮発性の大
きい溶媒との組み合わせが適している。
【0045】成形物化工程は、ホットプレスなどを用い
る加圧加熱によるのが適している。その際の圧力は、例
えば、約50〜150kg/cmで、温度が、例え
ば、約100〜250℃である。ただし、圧力および温
度は、軸受の大小あるいは軸受の構造などによって適宜
変えてもよい。
【0046】複合材料 第一の本発明のよる固体潤滑剤は、バインダーによりそ
れを含む組成物を固めて、少なくとも動摩擦係数0.5
以下でシャルビー衝撃強度1.0kgf・cm/cm
以上の物性を有する複合材料にしたものである。「少な
くとも」としたのは、動摩擦係数0.5以下でシャルビ
ー衝撃強度1.0kgf・cm/cm以上の物性を有
する複合材料にすれば、他の物性においても、第一の本
発明の目的を達成しうることが見いだされているからで
ある。他の物性としては、曲げ強さ、硬さ、限界PV値
および摩耗量などがある。なお、動摩擦係数が0.5以
下であって、シャルビー衝撃強度が1.0kgf・cm
/cm以上の物性であれば、第一の本発明のよる効果
が得られるが、工業的実施が容易という点からは、シャ
ルビー衝撃強度は6.5あるいはその近傍の値まで、動
摩擦係数は0.15あるいはその近傍の値までにするの
がよい。 〈第二の本発明によるしゅう動装置〉 第二の本発明は、第一の本発明による複合材料をしゅう
動部に埋め込んだしゅう動装置である。しゅう動装置
は、部材が相手方部材と回転自在な部品を介して接触す
るしゅう動部を有する装置である。具体的には、玉ある
いはコロのような回転自在な部品を介してしゅう動を行
わせるしゅう動部を有する装置である。しゅう動装置
は、それ自体がしゅ動部のみからなるものでもよく、あ
るいは一部にしゅ動部を有するものであってもよい。し
ゅう動装置の代表的なものには、玉軸受その他がある。
玉軸受の場合、内輪が一方の部材に相当し、外輪が他方
の部材に相当して、玉(一般に転動体といわれている)
が回転自在な部品に相当する。
【0047】玉軸受はいずれの種類のものでもよい。た
だし、特に、高温で操業する炉に直接あるいは間接に使
用する装置の玉軸受に第一の本発明の複合材料を埋め込
むと、その玉軸受を高温下(例えば、200〜350
℃)および金属を腐食させる環境下で、低荷重から高荷
重、特に高荷重、の負荷がかかる状態で長期にわたって
メインテナスなしに使用できる。高温で操業する炉とと
いうのは、例えば、溶解炉、焼結炉あるいは焼成炉など
である。また、炉に直接に使用する装置の軸受というの
は、例えば、炉の開閉扉の軸受などであり、炉に間接に
使用する装置の軸受というのは、炉への原料の供給ある
いは炉からの製品の搬出に使用の台車に使用の軸受など
である。玉軸受以外のしゅう動装置としては、直動案内
軸受あるいはボールネジが代表的である。なお、直動案
内軸受としては、リニアガイド、リニアボールベアリン
グなどが代表的である。
【0048】さらに、第二の本発明のしゅう動装置は、
高荷重の潤滑に使用でき、防食性を有して、水中でも使
用できるので、土木工事で使用される装置(例えば、排
泥用の装置)に使用して工業的に有益である。第二の本
発明では、回転自在な部品を回転可能にして、かつ、部
材および該相手方部材のいずれか一方あるいは両方を運
動可能にするようにして複合材料がしゅう動部に形成さ
れている。形成方法には、回転自在な部品を動かしなか
ら複合材料を形成する粉末をしゅう動部に埋め込み、加
圧過熱して複合材料をしゅう動部内に形成する方法があ
る。潤滑性被覆膜を形成しておいたしゅう動部内に複合
材料を形成する粉末を充填し、加圧過熱して複合材料を
しゅう動部内に形成するなどの方法がある。
【0049】しゅう動部内に充填する粉末の量は、軸受
の種類に応じて選択しうるが、例えば、しゅう動部内の
空間容積の約35〜95容量%程度であればよい。粉末
を充填する際に、例えば、液に混ぜて充填するなどする
と、複雑な空間形状のしゅう動部内にも容易に充填でき
る。第二の本発明の効果を最も効率よく享受できるの
は、潤滑性被覆膜を形成したしゅう動部内に複合材料を
形成して得られたしゅう動装置である。その場合、硬化
した固体潤滑剤が潤滑性皮膜に接して直接に金属面に接
することないので、しゅう動部内の玉が回転自在の状態
を保持できる。また、潤滑性皮膜が破損しても、本発明
の固体潤滑剤は防食性を有しているのでしゅう動部が腐
食することがない。
【0050】潤滑性皮膜としては、例えば、フッ素樹脂
皮膜あるいはワックス皮膜がある。そのフッ素樹脂に
は、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・六フッ
化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・ペルフル
オロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、四フッ化エチ
レン・エチレン共重合樹脂、四フッ化エチレン・六フッ
化プロピレン・ペルフルオロアルキルビニルエーテル共
重合樹脂、四フッ化エチレン・ペルフルオロジオキソー
ル(ジオキソールは、例えば2,2−ジメチル−1,3
ジオキソール)共重合樹脂、2−ペルフルオロメチルオ
キソラン重合樹脂あるいは四フッ化エチレンとスルホン
酸基を有するペルフルオロオキシアルキレン単量体との
共重合樹脂などを用いることができる。
【0051】フッ素樹脂皮膜は、それらのフッ素樹脂
(単独でも複数でもよい)をフッ素系溶媒に溶解した溶
液にしゅう動装置を漬ける、あるいはその溶液をしゅう
動装置に塗布するなどの方法により形成する。フッ素樹
脂溶解溶液の調製の際には、加温(例えば、100〜2
50℃)すると調製が容易になる。フッ素樹脂溶解溶液
がしゅう動装置に付着すると、比較的短時間(例えば、
30分〜1時間)でフッ素樹脂皮膜がしゅう動装置に形
成できる。ワックスには、高融点パラフィンワックス、
モンタン酸ワックス、カルナバワックス、モンタン酸エ
ステルワックス、高融点ポリエチレンワックスあるいは
エチレンビスステアロアマイドワックスなどを用いるこ
とができる。潤滑性皮膜には、特に、皮膜の潤滑性と複
合材料に対する離型性(複合材料に付着しないという性
能)が優れているのでフッ素樹脂皮膜が適している。フ
ッ素樹脂皮膜を形成後に本発明の固体潤滑剤を形成した
軸受が、特に優れた性能を有することが本発明で見い出
されている。
【0052】
【実施例】{実施例1} 下記材料を下記成形法により成形して複合材料の固体潤
滑剤を埋め込んだ軸受を得た。 〈材料〉潤滑性物質 黒鉛 …35.0重量% (日本黒鉛工業社製、商品名:CSSP、平均粒径1.
0μmの鱗状黒鉛を使用した 。) 二硫化モリブデン…13.0重量% (日本モリブデン社製、商品名:ニチモリパウダーB、
平均粒径2.0μmのものを使用した 。)充填材 ガラス繊維 …15.0重量% (日本電気硝子社製、商品名:Eファイバチョプドスト
ランド、平均繊維経6μm、平均繊維長さ1.5mmの
ものを使用した)防食剤 亜硝酸ナトリウム …1.5重量% (宇部興産社製のものを使用した。) リン酸三ナトリウム …0.5重量% (米山化学社製のものを使用した。)バインダー フェノール樹脂粉末 …35.0重量% (鐘紡社製、商品名:ベルパールS−870を使用した。) 合計100重量% 〈成形法〉 成形法は、上記比率の材料から乾燥粉末を製造する工程
(以下、乾燥粉末製造工程ということがある)と、その
乾燥粉末から軸受の空間内に成形物を形成する工程(以
下、成形化工程ということがある)と、その成形物をポ
ストキュアーして複合材料の固体潤滑剤を埋め込んだ軸
受にする工程(以下、ポストキュアー化工程ということ
がある)からなる。
【0053】そして、それらの各工程の時系列外に行わ
れる工程として、軸受にフッ素樹脂皮膜を形成する工程
(以下、軸受のフッ素樹脂皮膜形成工程ということがあ
る)がある。乾燥粉末製造工程 上記比率の材料100重量部と、メチレンクロライド1
00重量部とアセトン50重量部とからなる溶媒とを攪
拌機(小平製作所製、ACM−5L型)に加え、30分
間攪拌後に混合物を取り出した。その取り出した混合物
を2本ロール機(小平製作所製、プラスチック用3−F
C−2電熱加熱型)で、120℃、30分混練して上記
材料中の無機物も微粒子として含まれた乾燥粉末を得
た。乾燥粉末は、密度2.27g/cm(23℃)
(JISK7112による)であった。軸受のフッ素樹脂皮膜形成工程 そして、その乾燥粉末から形成する固体潤滑剤を埋め込
む軸受には、あらかじめ、フッ素樹脂の皮膜を形成して
おいた。
【0054】そのフッ素樹脂の皮膜は、フッ素樹脂混合
物(米国デュポン社製、商品名:テフロンAF、大阪ガ
ス社製、商品名:フッ化ピッチ)を溶解したフッ化炭化
水素溶液(溶媒:住友スリーエム社製、商品名:フロリ
ーナートPF−5080)を軸受に塗布して乾燥処理す
ることにより形成した。軸受には、単列深みぞ玉軸受
(型番6306、ラジアルすきまC−4、日本精工社
製)と単列深みぞ玉軸受(型番6204、ラジアルすき
まC−4、日本精工社製)の2種類を使用した。成形化工程 得られた乾燥粉末から、各軸受の空間容量の80%に相
当する量を取り分けた。
【0055】型番6306の軸受には32グラムを、型
番6204の軸受には10グラムを取り分けた。取り分
けた各量の乾燥粉末をあらかじめフッ素樹脂混合物の皮
膜形成処理をしておいた各軸受の空間にそれぞれ充填し
て、圧縮成形機(東邦マシナリー社製、自動加熱成形機
TBD−50型)により金型温度180℃、硬化時間2
0分、成形圧力100kg/cmで成形して、各軸受
空間内に成形物を生成した。ポストキュアー工程 その後、各軸受を加熱炉内に180℃で3時間静置後、
さらに230で4時間ポストキュアー(後硬化処理)を
行って、硬化生成物(すなわち、複合材料の固体潤滑
剤)を埋め込んだ軸受を得た。 {実施例2} 下記材料を成形して複合材料の固体潤滑剤を埋め込んだ
軸受を得た。 〈材料〉潤滑性物質 …35.0重量% (日本黒鉛工業社製、商品名:CSSP、平均粒径1.
0μmの鱗状黒鉛を使用した 。) 二硫化モリブデン …12.0重量% (日本モリブデン社製、商品名:ニチモリパウダーB、
平均粒径2.0μmのものを使用した 。)充填材 ジルコニヤ・シリカ・アルミナ繊維 …15.0重量% (東芝モノフラックス社製、商品名:ZFC400−S
F、平均繊維径2〜4μm、平均繊維長さ300〜50
0μmのものを使用した)防食剤 亜硝酸ナトリウム …2.5重量% (宇部興産社製のものを使用した。) リン酸三ナトリウム …0.5重量% (米山化学社製のものを使用した。) フェノール樹脂粉末 …35.0重量%(鐘紡社製、商品名:ベルパールS−870を使用した。) 合計100重量% 〈成形法〉 燥粉末製造工程で得られた上記比率材料の乾燥粉末の密
度は、2.25g/cm(23℃)(JISK711
2による)であった。
【0056】成形物化工程は実施例1と同様であるが、
型番6306の軸受に充填する乾燥粉末は32グラムに
して、型番6204の軸受に充填する乾燥粉末は10グ
ラムにした。それら以外は、実施例1と同様にした。 {実施例3} 下記材料を成形して複合材料の固体潤滑剤を埋め込んだ
軸受を得た。 〈材料〉潤滑性物質 黒鉛 …24.0重量% (日本黒鉛工業社製、商品名:ACP−1000、平均
粒径6.0μmの鱗状黒鉛を使用した 。) 粒状アモルファスカーボン …24.0重量% (鐘紡社製、商品名:ベルパールC−2000S、等方
性粒状ガラス状カーボンで平均粒径10μmのものを使
用した 。)充填材 炭素繊維 …15.0重量% (東邦レーヨン社製、商品名:テルメックスBM−1
0、平均繊維径8〜13μm、平均繊維長さ0.2〜
0.5mmのものを使用した。)防食剤 亜硝酸ナトリウム …1.5重量% (宇部興産社製のものを使用した。) リン酸三ナトリウム …0.5重量% (米山化学社製のものを使用した。)バインダー フェノール樹脂粉末 …35.0重量%(鐘紡社製、商品名:ベルパールS−870を使用した。 合計100重量% 〈成形法〉 乾燥粉末製造工程では、実施例1のメチレンクロライド
100重量部とアセトン50重量部からなる溶媒に代え
て、水100重量部とアセトン50重量部からなる溶媒
を使用した。乾燥粉末製造工程で得られた上記比率材料
の乾燥粉末の密度は、1.62g/cm(23℃)
(JISK7112による)であった。成形物化工程で
は、型番6306の軸受に充填する乾燥粉末は23グラ
ムにして、型番6204の軸受に充填する乾燥粉末は
7.2グラムにした。それら以外は、実施例1と同様と
した。 {実施例4} 下記材料を成形して複合材料の固体潤滑剤を埋め込んだ
軸受を得た。 〈材料〉潤滑性物質 黒鉛 …50.0重量% (日本黒鉛工業社製、商品名:CSSP、平均粒径1.
0μmの鱗状黒鉛を使用した 。)充填材 ガラス繊維 …10.0重量% (日本電気硝子社製、商品名:E−ファイバチップドス
トランドECS015B191DE、平均繊維経6μ
m、平均繊維長さ1.5mmのものを使用した。) アラミド繊維 …3.0重量% (米国デュポン社製、商品名:ケブラー29、ドライパ
ルプのものをレディ−ゲミキサー(松阪貿易社製)で解
分散したものを使用した。)防食剤 亜硝酸ナトリウム …1.5重量% (宇部興産社製のものを使用した。 リン酸三ナトリウム …0.5重量% (米山化学社製のものを使用した。バインダー フェノール樹脂粉末 …35.0重量%(鐘紡社製、商品名:ベルパールS−870を使用した。) 合計100重量% 〈成形法〉 乾燥粉末製造工程では、実施例1のメチレンクロライド
100重量部とアセトン50重量部からなる溶媒に代え
て、実施例3と同様の溶媒を使用した。乾燥粉末製造工
程で得られた上記比率材料の乾燥粉末の密度は、1.9
0g/m(23℃)(JISK7112による)であ
った。成形物化工程では、型番6306の軸受に充填す
る乾燥粉末は27グラムにして、型番6204の軸受に
充填する乾燥粉末は8.5グラムにした。それら以外
は、実施例1と同様とした。 {実施例5} 下記材料を成形して複合材料の固体潤滑剤を埋め込んだ
軸受を得た。成形方法は、実施例1と同様であるが、攪
拌機による混合物の調製の際に加える溶媒は、メチレン
クロライド100重量部とアセトン50重量部からなる
溶媒に代えて、実施例3と同様の溶媒を使用した。 〈材料〉潤滑性物質 合成雲母 …32.0重量% (コープケミカル社製、商品名:MK−100、平均粒
経1〜5.0μmの非膨潤性雲母を使用した。合成雲母
は白色であった。) チツ化ホウ素 …10.0重量% (三井東圧化学社製、商品名:MBN−010、平均粒
経0.9μmのものを使用した。) フッ化黒鉛 …5.0重量% (セトラル硝子社製、商品名:セフララル−ブ−1、平
均粒経3.0μmのものを使用した。)充填材 ジルコニヤ・シリカ・アルミナ繊維 …15.0重量% (東芝モノフラックス社製、商品名:ZFC400−S
F、平均繊維径2〜4μm、平均繊維長さ300〜50
0μmのものを使用した。)防食剤 亜硝酸ナトリウム …2.0重量% (宇部興産社製のものを使用した。) リン酸三ナトリウム …1.0重量% (米山化学社製のものを使用した。)バインダー フェノール樹脂粉末コンパウンド …35.0重量% (三井東圧化学社製、商品名:ミレックスXL−225MBSを使用した。) 合計100重量% 材料に用いた、ジルコニヤ・シリカ・アルミナ繊維、チ
ッ化ホウ素、フッ化黒鉛、合成雲母、亜硝酸ナトリウ
ム、リン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウムおよびフ
ェノール樹脂粉末コンパウンドは、いずれも白色であっ
た。 〈成形法〉 乾燥粉末製造工程では、実施例1のメチレンクロライド
100重量部とアセトン50重量部からなる溶媒に代え
て、実施例3と同様の溶媒を使用した。乾燥粉末製造工
程で得られた上記比率材料の乾燥粉末の密度は、2.0
8g/cm(23℃)(JISK7112による)
で、かつ白色であった。成形化工程では、型番6306
の軸受に充填する乾燥粉末は30グラムにして、型番6
204の軸受に充填する乾燥粉末は9.3グラムにし
た。
【0057】それら以外は、実施例1と同様とした。 {実施例6} 下記材料を成形して下記成形方法により複合材料の固体
潤滑剤を埋め込んだ軸受を得た。 〈材料〉 潤滑性物質 黒鉛 …47.0重量 (日本黒鉛工業社製、商品名:CSSP、平均粒径1.
0μmの鱗状黒鉛を使用した 。)充填材 ジルコニヤ・シリカ・アルミナ繊維 …15.0重量% (東芝モノフラックス社製、商品名:ZFC400−S
F、平均繊維径2〜4μm、平均繊維長さ300〜50
0μmのものを使用した)防食剤 亜硝酸ナトリウム …2.0重量% (宇部興産社製のものを使用した。 リン酸三ナトリウム …1.0重量% (米山化学社製のものを使用した。バインダー ポリイミド樹脂 …35.0重量%(カネボウエネエスシー社製、商品名:サーミッドIP−600を使用した。) 合計100重量% 〈成形方法〉乾燥粉末製造工程 上記比率の材料100重量部と水100重量部とアセト
ン50重量部とを攪拌機(実施例1と同様)に加え、3
0分間攪拌後に混合物を取り出した。その取り出した混
合物を2本ロール機(実施例1と同様)で、120℃、
30分混練して上記材料中の無機物も微粒子として含ま
れた密度1.98g/cm(23℃)(JISK71
12による)の乾燥粉末を得た。軸受のフッ素樹脂皮膜形成工程 そして、固体潤滑剤を形成する軸受には、実施例1と同
様にしてあらかじめ、フッ素樹脂の皮膜を形成しておい
た。軸受には実施例1と同様のものを用いた。成形化工程 型番6306の軸受に充填する乾燥粉末は28グラム
(軸受の空間容量の95%に相当)にして、型番620
4の軸受に充填する乾燥粉末は8.8グラムにした。
【0058】乾燥粉末を充填した各軸受は、圧縮成形機
(実施例1と同様)により金型温度220℃で硬化時間
(1mm厚さに対し2分の割合)40分、成形圧力17
6kg/cmで成形して成形物を得た。ポストキュアー工程 その後、各軸受を加熱炉内にて250℃で5時間静置し
てポストキュアー(後硬化処理)した後、毎分8℃の速
度で冷却し、93℃で取り出して、硬化生成物(すなわ
ち、複合材料の固体潤滑剤)を埋め込んだ軸受を得た。
上記実施例1〜6で得られた固体潤滑剤の物性を下記表
1に示す。
【0059】
【表1】 なお、表1において、摩耗量の試験には試料相手材にS
−45Cを用い、JISK7218(A法)に基づく摺
動特性の測定にはオリエンテックス社製EMF−III
−F型機を使用した。その摩耗量の試験は、試験速度
0.5m/秒、試験荷重5kgf、滑り距離3kmで行
った。曲げ強さおよび衝撃強さ(シャルピー)の試験
は、JISK6911に準じて行った。硬さの試験はA
STMD785(Mスケール)に準じて行った。限界P
V値、摩耗量および動摩擦係数の試験はオリエンテック
ス社製EMF−III−F型機を使用してJISK72
18(A法)に準じて行った。
【0060】また、上記実施例1〜6で得られた、固体
潤滑剤を埋め込んだ軸受の寿命試験の結果を下記表2に
示す。
【表2】 なお、表2において、型番6306の軸受の寿命試験は
ASTMD−1741に準じて行った。試験機には神鋼
造機社製のものを使用した。寿命時間の測定は、軸受の
外輪温度125℃、ラジアル荷重11.3kg、スラス
ト荷重18.1kgの条件で3500rpmで20時間
運転して4時間停止する運転を繰り返し、起動トルクが
大きくなって(すなわち、再始動不能になって)自動停
止するまでの時間を測定した。また、型番6204の軸
受の寿命試験は、試験機には神鋼造機社製のGT−II
型機を使用して行った。寿命時間の測定は、軸受の槽内
温度280℃、ラジアル荷重1,361kg、スラスト
荷重2,268kgの条件で350rpmで運転して、
起動トルクが大きくなって(すなわち、再始動不能にな
って)自動停止するまでの時間を測定した。軸受の防食
試験はASTMD−1743(1%NaCl溶液使用)
に準じて行った。
【0061】軸受の防食試験の数字は、ベアリングの個
数を表している。ASTMD−1743試験法によれ
ば、3個のベアリングを試験に供して、所定時間経過後
(48hr経過後)に錆びが発生した(ピンホール程度
の錆びの存在も発生と認める)ベリングの個数を試験結
果として表示することを決めている。なお、錆びの発生
は、ピンホール程度の錆びの存在も発生と認めると定め
られており、錆びが発生したベアリングの個数が1個の
場合は、合格と認めている。比較例として、型番630
6の軸受に鉱油系リチウムグリース(昭和シェル石油社
製、商品名:アルバニグリース)6グラムを封入して、
神鋼造機社製の試験機によりASTMD−1741に準
じて寿命試験を行ったところ、700時間であった。
【0062】比較例として、フッ素系グリース(米国デ
ュポン社製、商品名:クライトックス280AD)1
0.5グラムを封入した型番6204の軸受での神鋼造
機社製のGT−11型試験機を使用した寿命試験は、5
00時間であった。
【0063】
【発明の効果】第一の本発明によれば、下記(1)〜
(7)のような効果が得られる。 (1)200〜350℃のような高温下の金属を腐食さ
せる環境下において、低荷重から高荷重に至る負荷、特
に高荷重負荷、がかかる軸受などのしゅう動装置の潤滑
に使用しても、長時間安定して精密な潤滑をしゅう動装
置に与えることができる。 (2)固体潤滑剤が優れた機械的強度と低摩擦係との性
質を併有するので、大きな機械的強度が要求されるしゅ
う動装置の潤滑においても安定した精密な潤滑を与える
ことができる。 (3)固体潤滑剤は、そのような(1)および(2)の
ような特性を有して、しかも、一般的な軸受などのしゅ
う動装置にも埋め込むことができるので、従来、フッ素
系グリースのような耐熱性グリースしか使用できなかっ
た軸受などのしゅう動装置に用いることができる。 (4)高温で操業する炉に直接あるいは間接に使用する
装置の軸受に固体潤滑剤を埋め込むことにより、メイン
テナンスフリーで(メインテナンなしで)低摩擦の潤滑
をそのような軸受に長期間にわたって付与することがで
きる。
【0064】例えば、溶解炉、焼結炉あるいは焼成炉な
ど炉の開閉扉などの軸受、あるいは炉への原料の供給あ
るいは炉からの製品の搬出に使用の台車などに使用の軸
受を低摩擦の潤滑でメインテナンスフリーで(メインテ
ナンなしで)長期間にわたって使用することができる。 (5)溶解炉あるいは焼結炉に広く関連する装置の軸受
などのしゅう動装置の潤滑に耐熱性グリースを使用する
ことに伴って生じていた様々な問題点、例えば、しばし
ば必要となっていたメインテナンスなど、が解消され、
かつ、使用限界が広がって、長時間にわたってメインテ
ナンスなしにしゅう動装置を使用することが可能とな
る。 (6)従来、グリースしか使用できないとされていたし
ゅう動装置あるいは初期充填でしか使用できないとされ
ていたしゅう動装置にも固体潤滑剤を用いることができ
るようになる。 (7)金属が著しく腐食し易い環境で高荷重負荷の条件
で使用される装置の軸受などのしゅう動装置に長時間に
わって低摩擦の潤滑を付与することが可能となる。
【0065】第二の本発明によれば、下記(イ)〜
(ハ)のような効果が得られる。 (イ)250〜350℃のような高温下で金属を腐食さ
せる環境下において、高荷重負荷の状態でも長時間使用
することができ、しかも精密な潤滑を長時間にわたって
維持することができる軸受などのしゅう動装置を得るこ
とができる。 (ロ)固体潤滑剤を埋め込んだ、リニヤ−ガイドのよう
な直動案内軸受あるいはボールネジのような軸受を得る
ことができる。 (ハ)土木工事などに用いるしゅう動装置のように、金
属が著しく腐食し易い環境で高荷重負荷の条件で使用さ
れる場合にも、長時間にわって低摩擦の潤滑を行うこと
ができるしゅう動装置を得るこができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 103:06 107:54 105:70 125:00 125:28 125:20 125:24 145:20) C10N 10:02 10:06 10:12 20:00 20:06 30:06 30:08 30:12 40:02 50:08 70:00

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記(A)〜(D)にそれぞれ定義する、
    潤滑性物質、充填材、防食剤およびバインダーからな
    り、かつ、潤滑性物質が100重量部である場合にバイ
    ンダー1〜150重量部の比率で有してなる組成物を固
    めて、少なくとも動摩擦係数0.5以下でシャルビー衝
    撃強度1.0kgf・cm/cm以上の物性を有する
    複合材料からなり、しゅう動装置内の空間に埋め込んで
    用いられる固体潤滑剤。(A)潤滑性物質 潤滑性物質は、層状結晶構造を有する潤滑性鉱物、潤滑
    性セラミックス、メラミンシアヌレートまたは/および
    有機モリブデニウムジチオカルバメートよりなる潤滑性
    有機化合物からなる群より選ばれた単一あるいは複数の
    ものからなる。ただし、複数のものからなる場合、同一
    種のものが複数でもよく、異種のものが複数でもよい。(B)充填材 充填材は、150℃の温度で熱変形しない、セラミック
    繊維、ガラス繊維、ウイスカー、金属酸化物あるいは炭
    素繊維の単一あるいは複数のものからなる。ただし、複
    数のものからなる場合、同一種のものが複数でもよく、
    異種のものが複数でもよい。(C)防食剤 防食剤は、防食性の無機酸アルカリ金属塩が0.01〜
    10重量%(複合材料の合計重量基準)配合されている
    ものからなる。(D)バインダー バインダーは、常温〜350℃の温度で固体有機高分子
    となるものである。
  2. 【請求項2】下記(a)〜(d)にそれぞれ定義する、
    潤滑性物質、充填材、防食剤およびバインダーからな
    り、かつ、潤滑性物質が100重量部である場合にバイ
    ンダー1〜150重量部の比率で有してなる組成物を固
    めて、少なくとも動摩擦係数0.5以下でシャルビー衝
    撃強度1.0kgf・cm/cm以上の物性を有する
    複合材料にしたものからなる固体潤滑剤を部材が相手方
    部材と回転自在な部品を介して接触するしゅ動部に埋め
    込んでなることを特徴とするしゅう動装置。(a)潤滑性物質 潤滑性物質は、層状結晶構造を有する潤滑性鉱物、潤滑
    性セラミックス、メラミンシアヌレートまたは/および
    有機モリブデニウムジチオカルバメートよりなる潤滑性
    有機化合物からなる群より選ばれた単一あるいは複数の
    ものからなる。ただし、複数のものからなる場合、同一
    種のものが複数でもよく、異種のものが複数でもよい。(b)充填材 充填材は、150℃の温度で熱変形しない、セラミック
    繊維、ガラス繊維、ウイスカー、金属酸化物あるいは炭
    素繊維の単一あるいは複数のものからなる。ただし、複
    数のものからなる場合、同一種のものが複数でもよく、
    異種のものが複数でもよい。(c)防食剤 防食剤は、防食性の無機酸アルカリ金属塩が0.01〜
    10重量%(複合材料の合計重量基準)配合されている
    ものからなる。(d)バインダー バインダーは、常温〜350℃の温度で固体有機高分子
    となるものである。
  3. 【請求項3】上記充填材が、2.0〜50重量%(複合
    材料の重量基準)の比率で複合材料に含まれていること
    を特徴とする、請求項1に記載の固体潤滑剤あるいは請
    求項2に記載のしゅう動装置。
  4. 【請求項4】上記潤滑性物質が、黒鉛、フッ化黒鉛、二
    硫化モリブデン、二硫化タングステンあるいは雲母の一
    種あるいは二種以上からなることを特徴とする、請求項
    1に記載の固体潤滑剤あるいは請求項2に記載のしゅう
    動装置。
  5. 【請求項5】上記バインダーが、熱溶融し、熱溶融時の
    熱により分子に結合したメチロール基が反応して三次元
    架橋硬化するフェノール樹脂または/およびヘキサメチ
    レンテトラミンにより熱硬化するフェノール樹脂である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の固体潤滑剤あるい
    は請求項2に記載のしゅう動装置。
  6. 【請求項6】上記しゅう動装置は、潤滑性被覆膜が形成
    されたしゅう動部の空間に固体潤滑剤が形成されている
    ことを特徴とする、請求項2に記載のしゅう動装置。
  7. 【請求項7】上記しゅう動装置が、玉軸受、直動案内軸
    受あるいはボールネジであることを特徴とする、請求項
    2に記載のしゅう動装置。
  8. 【請求項8】上記潤滑性被覆膜が、フッ素樹脂被覆膜ま
    たはワックスあるいはワックス誘導体の被覆膜であるこ
    とを特徴とする、請求項6に記載のしゅう動装置。
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