JP2542772B2 - 多孔質フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

多孔質フィルムおよびその製造方法

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JP2542772B2 JP21762392A JP21762392A JP2542772B2 JP 2542772 B2 JP2542772 B2 JP 2542772B2 JP 21762392 A JP21762392 A JP 21762392A JP 21762392 A JP21762392 A JP 21762392A JP 2542772 B2 JP2542772 B2 JP 2542772B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多孔質フィルムおよび
その製造方法に関し、特にガス透過量制御フィルム、水
蒸気透過量制御フィルムなどの各種機能性フィルムとし
て有用な多孔質フィルムおよびその製造方法に係わる。
【0002】
【従来の技術および課題】従来より各種の機能性フィル
ムとして有用な多孔質フィルムが種々開発されている。
【0003】例えば、汎用のオレフィン樹脂(例えばポ
リエチレン)に微細な無機物粉末を大量(通常、樹脂に
対して50体積%以上)に充填した後、フィルム化し、
更に一軸又は二軸方向に高倍率で延伸する。このような
方法により、前記無機物粉末との境界面に破壊孔を形成
して迷路的に連通した微細な孔が開口された多孔質ポリ
エチレンフィルムが製造される。しかしながら、多孔質
フィルムは無機物粉末を大量に添加されているため、フ
ィルムを構成する樹脂(ポリエチレン)本来の特性(例
えば強度、ソフト感、透明性等)が著しく低下する。
【0004】また、ニードルパンチ法や熱溶融穿孔法の
ような機械的穿孔法により多孔質熱可塑性樹脂フィルム
を製造することが知られている。前記ニードルパンチ法
は、熱可塑性樹脂フィルム(例えばポリエチレンフィル
ム)に加熱された針を押し付けて穿孔する方法である。
前記熱溶融穿孔法は、加熱されたエンボスロールにより
熱可塑性樹脂フィルム(例えばポリエチレンフィルム)
を溶融して穿孔する方法である。
【0005】前記機械的穿孔方法により得られた多孔質
熱可塑性樹脂フィルムは多数の孔が貫通されている。こ
のため、前記多孔質熱可塑性樹脂フィルムは前記貫通孔
の大きさおよび数を調節することによって酸素ガスの透
過量制御を行っている。しかしながら、前記多孔質熱可
塑性樹脂フィルムは前記貫通孔の大きさが100μm程
度大きいため、前記貫通孔を通して水、細菌、雑菌も容
易に透過される。また、前記貫通孔の大きさが前述した
ように大きいため、より精度の高い酸素ガスの透過量制
御を行うことが困難である。
【0006】本発明の目的は、多数の微細な凹部を有
し、表面の濡れ性が高く、インクまたは磁性粉末などの
各種の微粉末を含む塗布剤との接着性が良好な多孔質フ
ィルムを提供しようとするものである。
【0007】本発明の別の目的は、水、細菌、雑菌の透
過がなく、酸素ガス、炭酸ガスなどのガスの透過量制御
や水蒸気の透過量制御が可能な多孔質フィルムを提供す
るものである。
【0008】本発明のさらに別の目的は、多数の微細な
凹部および前記凹部に底部に繋がる前記凹部の開口幅よ
り小さい径の貫通孔を有し、表面の濡れ性が高く、イン
クまたは磁性粉末などの各種の微粉末を含む塗布剤との
接着性が良好な多孔質フィルムを提供しようとするもの
である。
【0009】本発明のさらに別の目的は、細菌、雑菌の
透過を抑制ないし防止し、優れた耐水圧性を有すると共
に酸素ガス、炭酸ガスなどのガスの透過量制御や水蒸気
の透過量制御が可能な多孔質フィルムを提供するもので
ある。
【0010】本発明のさらに別の目的は、細菌、雑菌の
透過を抑制ないし防止し、優れた耐水圧性を有すると共
にガスの選択透過性を示す多孔質フィルムを提供するも
のである。本発明の別の目的は、前述した優れた特性を
有する多孔質フィルムを簡単かつ量産的に製造すること
が可能な方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる多孔質フ
ィルムは、有機系フィルムと、前記有機系フィルムに多
数形成され、微細な開口幅を有し、かつ内面が親和性を
示す凹部とを具備したことを特徴とするものである。
【0012】前記有機系フィルムとしては、例えばポリ
エチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ
エチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化
ビニル、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、
ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテ
ルケトン、エラストマー、ポリウレタン等からなる各種
高分子樹脂フィルム;発泡ポリエチレン、発泡ポリプロ
ピレンなどの各種の発泡高分子樹脂フィルム;発泡紙;
熱融着性樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレートフ
ィルムとポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタ
レートフィルムとポリプロピレンフィルムとを積層した
ような材質の異なる高分子樹脂フィルムを2層または3
層積層した積層フィルム、高分子樹脂フィルムに織布ま
たは不織布を積層した積層フィルム、高分子樹脂フィル
ムに紙を積層した積層フィルムなどの各種の積層フィル
ム等を用いることができる。前記有機系フィルムは、例
えば厚さ5μm〜3mmのものが用いられる。前記有機
系フィルムに形成される凹部は、例えば逆円錐形状、逆
多角錐形状などの逆錐形状を有する。
【0013】前記有機系フィルムに形成される凹部の平
均開口幅は、前記多孔質フィルムの用途により例えば
0.5〜300μmの範囲内で任意に選択される。前記
多数の凹部は、その開口幅が揃っていることが望まし
い。
【0014】前記有機系フィルムに形成される前記凹部
の数は、前記凹部の開口幅との関係や前記多孔質フィル
ムの用途により例えば1cm2 当たり500〜200,
000個の範囲で任意に選択される。前記多数の凹部
は、前記有機系フィルムに一様に分散されて形成されて
いることが望ましい。
【0015】前記凹部底部に位置する前記フィルムの残
存薄膜部の厚さは、前記有機系フィルムの厚さ、前記凹
部の開口幅との関係や前記多孔質フィルムの用途により
一概に決められないが、通常10μm以下にすることが
望ましい。
【0016】本発明に係わる多孔質フィルムは、鋭い角
部を有する多数のモース硬度5以上の誘電体粒子が表面
に付着された第1ロールと表面に誘電体層が被覆された
第2ロールとを対向配置する工程;
【0017】前記第1、第2のロールを互いに反対方向
に回転させ、前記第1、第2のロール間に長尺有機系フ
ィルムを通過させると共に、前記各ロール間を通過する
前記長尺有機系フィルムへの押圧力を前記各ロールと接
触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節
し、同時に前記第1ロールに高電圧を供給することによ
り、前記第1ロール表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部
を前記長尺有機系フィルムに喰い込ませて多数の微細な
開口幅を有する凹部を形成すると共に、前記第1ロール
表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部と前記第2ロールの
間でコロナ放電を発生させて前記誘電体粒子の鋭い角部
が食い込まれた前記凹部内面を親和化処理する工程;を
具備した方法により製造される。
【0018】前記第1ロールは、金属製ロール本体と、
前記ロールの本体表面に電着、または有機系もしくは無
機系の結合剤により付着され、表面に鋭い角部を有する
多数のモース硬度5以上の誘電体粒子とを備えた構造を
有する。
【0019】前記金属製ロール本体は、例えば銅および
銅合金、または鉄および鉄合金、あるいはこれらの金属
表面にニッケルめっき層、クロムめっき層を被覆したも
の等から形成される。
【0020】前記モース硬度5以上の誘電体粒子は、そ
の誘電率が10以下のものが望ましく、例えば炭化ケイ
素粒子(誘電率;9.7)、天然もしくは合成のダイヤ
モンド粒子(誘電率;5.7)等を挙げることができ
る。これら誘電体粒子の中で、前記天然もしくは合成の
ダイヤモンド粒子は硬度、強度等が著しく大きく、絶縁
耐圧が高いために好適である。特に、前記合成のダイヤ
モンド粒子は粒径の揃ったものが入手できるためにより
好適である。前記合成天然もしくは合成のダイヤモンド
粒子は、電着により前記ロール本体に付着させることが
望ましい。この際、前記ロール本体は良電気伝導性の銅
または銅合金から形成することがより好ましい。このよ
うに前記天然もしくは合成のダイヤモンド粒子を前記ロ
ール本体に電着させることによって、前記ロール本体に
対して前記ダイヤモンド粒子を強固に付着させることが
できると共に前記多数の合成天然もしくは合成のダイヤ
モンド粒子の前記ロール本体への付着率を向上できる。
また、前記ロール本体を表面にNiめっき層が被覆され
た良電気伝導性の銅または銅合金から形成すれば、前記
合成天然もしくは合成のダイヤモンド粒子を前記ロール
本体に一層強固に電着させることが可能になる。
【0021】前記誘電体粒子は、粒径が10〜350μ
mで粒径のばらつきが5%以下のものを用いることが望
ましい。前記誘電体粒子は、前記長尺有機系フィルムに
1cm2 当たり500〜200,000個の多数の凹部
を形成すると共に前記凹部底部の残存薄膜部に一様なコ
ロナ放電を行う観点から、前記ロール本体に70%以上
付着させることが望ましい。前記第2ロールは、金属製
ロール本体と、前記ロール本体表面に被覆された誘電体
層とを備えた構造を有する。
【0022】前記金属製ロール本体は、例えば鉄および
鉄合金、または銅および銅合金、あるいはこれらの金属
表面にニッケルめっき層、クロムめっき層を被覆したも
のなどの各種の金属から形成される。
【0023】前記誘電体層は、例えばシリコーンゴム、
硬質ゴムなどのゴム、またはアルミナ、ジルコニア、ム
ライト、窒化ケイ素などのセラミック等から形成され
る。前記誘電体層の厚さは、2〜5mm程度にすること
が望ましい。前記セラミック層を前記ロール本体に被覆
するには、例えば溶射法が採用され、前記ロール本体に
前記セラミック層を溶射により被覆した後は、前記セラ
ミック層表面を研摩処理して平滑にすることが望まし
い。
【0024】前記長尺有機系フィルムへの凹部の穿孔
は、前記第1、第2のロール間を通過する前記長尺有機
系フィルムへの押圧力を調節すること等によって達成さ
れる。前記第1ロールに供給される高電圧は、交流高電
圧、直流高電圧のいずれでもよい。また、前記高電圧は
前記凹部底部に位置する有機系フィルムの残存薄膜部を
穿孔しないエネルギーを有するコロナを前記第1ロール
表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部と前記第2ロールの
間に放電させるように制御される。
【0025】また、本発明に係わる多孔質フィルムは、
表面に誘電体層が被覆された導電材料からなる基台と鋭
い角部を有するモース硬度5以上の多数の誘電体粒子が
前記基台と対向する面に付着された電極体を有するプレ
ス手段とを対向して配置する工程;
【0026】前記基台と前記プレス手段の間に長尺有機
系フィルムを通過させ、前記プレス手段を移動して前記
長尺有機系フィルムを前記基台との間で加圧し、同時に
前記プレス手段の前記電極体に高電圧を供給することに
より、前記電極体表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部を
前記長尺有機系フィルムに喰い込ませて多数の微細な開
口幅を有する凹部を形成すると共に、前記プレス手段の
多数の誘電体粒子の鋭い角部と前記第2ロールの間でコ
ロナ放電を発生させて前記誘電体粒子の鋭い角部が食い
込まれた前記凹部内面を親和化処理する工程;を具備す
る方法により製造される。
【0027】本発明に係わる別の多孔質フィルムは、有
機系フィルムと、前記有機系フィルムに多数形成され、
微細な開口幅を有し、かつ内面が親和性を示す凹部と、
前記凹部底部に位置する前記フィルムの残存薄膜部に形
成され、前記開口幅に比べて小さい径を有し、かつ内面
が親和性を示す貫通孔とを具備したことを特徴とするも
のである。
【0028】前記有機系フィルムは、前記多孔質フィル
ムで説明したのと同様のものが用いられる。特に、ポリ
エチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム(二軸延伸
ポリプロピレンフィルムを含む)等のポリオレフィンフ
ィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、または
ポリオレフィンフィルムとポリエチレンテレフタレート
フィルムとの積層フィルムが好適である。前記有機系フ
ィルムは、例えば厚さ1μm〜10mmのものが用いら
れる。前記有機系フィルムに形成される凹部は、例えば
逆円錐形状、逆多角錐形状などの逆錐形状を有する。
【0029】前記有機系フィルムに形成される凹部の平
均開口幅は、前記多孔質フィルムの用途により例えば5
〜300μmの範囲内で任意に選択される。前記多数の
凹部は、その開口幅が揃っていることが望ましい。
【0030】前記有機系フィルムに形成される前記凹部
の数は、前記凹部の開口幅との関係や前記多孔質フィル
ムの用途により例えば1cm2 当たり500〜200,
000個の範囲で任意に選択される。前記多数の凹部
は、前記有機系フィルムに一様に分散されて形成されて
いることが望ましい。
【0031】前記凹部底部に位置する前記フィルムの残
存薄膜部の厚さは、前記有機系フィルムの厚さ、前記凹
部の開口幅との関係や前記多孔質フィルムの用途により
一概に決められないが、通常1〜20μmの範囲にする
ことが望ましい。
【0032】前記貫通孔は、例えば円柱形状を有する。
前記貫通孔の平均径は、前記凹部の開口幅との関係や前
記多孔質フィルムの用途により例えば0.05〜20μ
mの範囲で任意に選択される。
【0033】本発明に係わる別の多孔質フィルムは、鋭
い角部を有する多数のモース硬度5以上の誘電体粒子が
表面に付着された第1ロールと表面に誘電体層が被覆さ
れた第2ロールとを対向配置する工程;
【0034】前記第1、第2のロールを互いに反対方向
に回転させ、前記第1、第2のロール間に長尺有機系フ
ィルムを通過させると共に、前記各ロール間を通過する
前記長尺有機系フィルムへの押圧力を前記各ロールと接
触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節
し、同時に前記第1ロールに高電圧を供給することによ
り、前記第1ロール表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部
を前記長尺有機系フィルムに喰い込ませて多数の微細な
開口幅を有する凹部を形成すると共に、前記第1ロール
表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部と前記第2ロールの
間でコロナ放電を発生させて前記誘電体粒子の鋭い角部
が食い込まれた前記凹部内面を親和化処理し、同時に前
記凹部底部に位置する前記フィルムの残存薄膜部を前記
コロナで穿孔して内面が親和化処理された前記開口幅に
比べて小さい径を有する貫通孔を形成する工程;を具備
した方法により製造される。前記第1および第2のロー
ルは、前述した製造方法で説明したのと同様な構成のも
のが用いられる。
【0035】前記第1ロールに供給される高電圧は、交
流高電圧、直流高電圧のいずれでもよい。また、前記高
電圧は前記凹部底部に位置する有機系フィルムの残存薄
膜部を穿孔するに十分にエネルギーを有するコロナを前
記第1ロール表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部と前記
第2ロールの間に放電させるように制御される。
【0036】また、本発明に係わる別の多孔質フィルム
は、表面に誘電体層が被覆された導電材料からなる基台
と鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の誘電体粒
子が前記基台と対向する面に付着された電極体を有する
プレス手段とを対向して配置する工程;
【0037】前記基台と前記プレス手段の間に長尺有機
系フィルムを通過させ、前記プレス手段を移動して前記
長尺有機系フィルムを前記基台との間で加圧し、同時に
前記プレス手段の前記電極体に高電圧を供給することに
より、前記電極体表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部を
前記長尺有機系フィルムに喰い込ませて多数の微細な開
口幅を有する凹部を形成すると共に、前記プレス手段の
多数の誘電体粒子の鋭い角部と前記第2ロールの間でコ
ロナ放電を発生させて前記誘電体粒子の鋭い角部が食い
込まれた前記凹部内面を親和化処理し、同時に前記凹部
底部に位置する前記フィルムの残存薄膜部を前記コロナ
で穿孔して内面が親和化処理された前記開口幅に比べて
小さい径を有する貫通孔を形成する工程;を具備する方
法により製造される。
【0038】
【作用】本発明に係わる多孔質フィルムは、有機系フィ
ルムと、前記有機系フィルムに多数形成され、微細な開
口幅を有し、かつ内面が親和性を示す凹部(例えば逆円
錐軽所の凹部)とを具備した構造を有し、前記有機フィ
ルム本来の特性(例えば透明性、ソフト感、強度)が維
持される。前記多孔質フィルムは、内面が親和性を示す
多数の凹部が形成されているため、前記凹部が存在しな
い有機系フィルムに比べて濡れ性が著しく改善される。
また、前記多孔質フィルムは多数の微細な凹部が形成さ
れているため、前記多数の凹部の開口側に接着剤層等を
塗布すると、前記多数の凹部の個所で前記接着剤層等に
対して優れたアンカー効果を示す。このような前記多孔
質フィルムは、次に説明する塗布膜形成用ベースフィル
ム、積層用フィルムとして利用することができる。
【0039】(1)前記多孔質フィルムの多数の凹部の
開口部側の面に磁性粉末を含む樹脂溶液を塗布し、乾燥
することによって、前記多孔質フィルムの前記多数の微
細な凹部における濡れ性およびアンカー効果により前記
多孔質フィルムに対して密着性の優れた磁性層を被覆す
ることができる。したがって、前記磁性層が被覆された
多孔質フィルムは、磁気フィルムとして利用することが
できる。特に、前記多孔質フィルムの多数の凹部内に前
記磁性粉末を埋没させることができるため、前記磁性層
の厚さを薄くしても前記磁性粉末の充填密度を向上でき
る。その結果、高密度記録が可能な例えばプリペイドカ
ードのような薄い磁気フィルムを得ることが可能にな
る。
【0040】(2)前記多孔質フィルムの多数の凹部の
開口部側の面にインクを塗布し、乾燥することにより前
記多孔質フィルムの多数の微細な凹部の濡れ性およびア
ンカー効果により前記多孔質フィルムに対して密着性の
優れたインク層を被覆することができる。したがって、
前記インク層が被覆された多孔質フィルムは、インクリ
ボンとして利用することができる。特に、前記多孔質フ
ィルムの多数の凹部内にも前記インクを充填させること
ができるため、前記インク層の厚さを薄くしても前記イ
ンクの塗布量を向上できる。その結果、良好な印字記録
が可能で、薄いインクリボンを得ることが可能になる。
【0041】(3)所定の接着剤を用いて前記接着剤と
相溶しない有機系フィルム(第1有機系フィルム)と前
記接着剤と相溶する有機系フィルム(第2有機系フィル
ム)を積層する際、前記第1有機系フィルムに多数の微
細な凹部を形成して多孔質フィルムとし、前記多孔質フ
ィルムの凹部の開口部側の面に前記接着剤を塗布し、こ
の接着剤に前記第2有機系フィルムを接着して積層す
る。このような積層において、前記多孔質フィルムはそ
の多数の微細な凹部の濡れ性およびアンカー効果により
前記接着剤が良好に接着される。一方、前記第2有機系
フィルムは前記接着剤に対して相溶性を有する。その結
果、前記第1、第2有機系フィルムが前記接着剤により
良好に接着された積層フィルムを得ることができる。
【0042】本発明に係わる多孔質フィルムは、有機系
フィルムと、前記有機系フィルムに多数形成され、微細
な開口幅を有し、かつ内面が親和性を示す凹部とを具備
した構造を有するため、前記多数の凹部底部に対応する
前記フィルムの残存薄膜部において水、細菌、雑菌を透
過せず、酸素ガス、炭酸ガスなどのガスや水蒸気を透過
して前記ガス透過量、水蒸気透過量を制御することがで
きる。具体的には、前記有機系フィルムの残存薄膜部に
おいてフィルム素材の持つガスの溶解、拡散が起こるた
め、酸素ガス、炭酸ガスの透過量が大幅に増大される。
また、水蒸気は前記有機系フィルムの多数の微細かつ内
面が親和性を示す凹部に付着し、前記凹部底部の前記残
存薄膜部においてフィルム素材の持つ水蒸気の拡散が起
こるため、水蒸気の透過量が大幅に増大される。このた
め、前記凹部の開口幅およびその数やそれら凹部に対応
する前記残存薄膜部の厚さを制御することにより、前記
酸素ガス、炭酸ガスの透過量や水蒸気の透過量が制御さ
れた機能性を有する多孔質フィルムが得られる。前記多
孔質フィルムの酸素ガス透過量は、例えば103 〜10
7 cc/m2 ・24hr・25℃を有する。このような
機能性を有する多孔質フィルムは、次に説明する包装材
に応用することができる。
【0043】(1)例えばポリエチレンフィルム、二軸
延伸ポリプロピレンフィルム、ポリプロピレンフィル
ム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等からなる有
機系フィルムに多数の微細かつ内面が親和性を有する凹
部を形成した多孔質フィルムは、青果物鮮度保持用包装
材に利用できる。
【0044】すなわち、青果物を密封包装した場合、青
果物自身の呼吸作用により包装材内の酸素濃度が減少し
て炭酸ガス濃度が増加する。このため、酸素量の低下と
二酸化炭素の高濃度化によつて前記青果物の呼吸が抑制
され、前記青果物の鮮度保持がなされる。この場合、前
記包装材の素材であるフィルムは個々の青果物が正常に
呼吸して生命体を維持できる最低限度の酸素を透過する
こと、呼吸によって生成した炭酸ガス濃度も過剰になら
ないように制御されること、細菌繁殖の原因となる結露
を招く水蒸気を透過すること、等が要求される。
【0045】例えばポリプロピレンフィルムに多数の微
細かつ内面が親和性を示す凹部が形成して前記多孔質フ
ィルムを作製すると、前述したように酸素ガスおよび炭
酸ガスの透過量が大幅に増大されると共に、水蒸気の透
過量が増大され、かつ水、雑菌の透過が防止される。し
たがって、前記多孔質フィルムから形成された包装材
は、酸素ガスを透過でき、かつ前記青果物の呼吸によっ
て生成した炭酸ガスを透過して炭酸ガス濃度が過剰にな
るのを抑制でき、さらに結露の原因となる水蒸気を透過
することができる。その結果、前記多孔質フィルムから
なる包装材は優れた青果物鮮度保持作用を有する。
【0046】(2)例えばポリエチレンまたはポリプロ
ピレンからなる第1のフィルムと例えばポリエチレンテ
レフタレートからなる第2のフィルムとを積層した積層
フィルムに多数の微細かつ内面が親和性を示す凹部を前
記第2フィルム側から前記第1フィルムに亘って形成し
た多孔質フィルムは、低価格の脱酸素剤用包装材として
利用できる。なお、前記多孔質フィルムに形成された凹
部は、前記第2フィルム部分において貫通部となる。
【0047】すなわち、従来の脱酸素剤用包装材はポリ
エチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィル
ムの二層フィルムにニードルパンチ法等により多数の貫
通孔を穿設し、前記二層フィルムのポリエチレンフィル
ム側に和紙を積層した構造になっている。このため、前
記和紙を積層する分、価格が高くなる。また、前記包装
材に脱酸素剤を収納し、前記包装材を液状の内容物と共
に密閉容器に収納すると、前記内容物が前記包装材の貫
通孔および和紙の孔を通して内部に侵入する。その結
果、前記包装材中に収納した脱酸素剤を劣化させるとい
う問題がある。
【0048】前記多孔質フィルムを、前記残存薄膜部を
有する前記第1フィルムが内側になるように袋状にして
脱酸素剤用包装材を作製する。このような包装材は、外
部の酸素が前記第2フィルムの多数の貫通部を通り、さ
らに前記第1フィルムの凹部に対応する残存薄膜部にお
いてフィルム素材の持つガスの溶解、拡散により透過す
る特性を有する。
【0049】したがって、前記包装材に脱酸素剤を収納
し、前記包装材をガスバリア性の高い密閉容器に菓子等
の内容物と共に装填すると、前記容器内の酸素は前記包
装材を透過して前記脱酸素剤に吸収される。その結果、
前記容器内の雰囲気を酸素が殆ど存在しない状態にでき
るため、前記内容物の酸化に伴う品質劣化を防止でき
る。
【0050】また、前記包装材は高い耐透水性を有する
ため、前記内容物が液体であっても前記内容物が前記包
装材を通して内部に侵入して、その中の脱酸素剤を劣化
させるのを防止することができる。その結果、数種類の
包装材を用意するだけで、液体状、固体状の内容物を長
期間保存することができる。
【0051】(3)前記多孔質フィルムは、前記凹部の
開口幅、その数および前記残存薄膜部の厚さを制御する
ことにより、酸素ガスおよび炭酸ガスの透過量を制御で
きるため、酸素ガスフィルタまたは炭酸ガスフィルタと
して利用することができる。 (4)有機系フィルム、例えばエラストマーフィルムに
多数の微細かつ内面が親和性を示す凹部を形成した多孔
質フィルムは、はっぷ剤の伸縮性ベースフィルムに利用
できる。
【0052】すなわち、はっぷ剤は皮膚に貼り付けて消
炎または分泌物吸収の目的で用いられる。前記はっぷ剤
としては、従来より粉末薬品を含むペースト状外用剤を
布に塗布した構造のものが知られている。しかしなが
ら、このような構造のはっぷ剤は前記布が水蒸気を十分
に透過しない。このため、前記はっぷ剤を寝眠時に皮膚
に貼り付けて使用すると、皮膚から発生した汗が前記は
っぷ剤を透過せずにそのまま滞留して不快感を与える。
【0053】前記多孔質フィルムに外用剤を塗布したは
っぷ剤は、前記多孔質フィルムが高い水蒸気透過性を有
する。このため、前記はっぷ剤は皮膚から発生した汗を
透過して良好に揮散でき、寝眠時でも良好に使用するこ
とができる。
【0054】(5)前記(4)で説明したエラストマー
フィルムに多数の微細な凹部を形成した多孔質フィルム
は、水、細菌、雑菌を透過せず、水蒸気の透過量を増大
でき、さらに高い伸縮性を有する。このため、手術用の
手袋として利用することができる。
【0055】本発明に係わる多孔質フィルムの製造方法
は、鋭い角部を有する多数のモース硬度5以上の誘電体
粒子が表面に付着された第1ロールと表面に誘電体層が
被覆された第2ロールとを対向配置し、前記第1、第2
のロールを互いに反対方向に回転させ、前記第1、第2
のロール間に長尺有機系フィルムを通過させると共に、
前記各ロール間を通過する前記長尺有機系フィルムへの
押圧力を前記各ロールと接触するフィルム面全体に亘っ
て均一となるように調節し、同時に前記第1ロールに高
電圧を供給するものである。かかる方法によれば、前記
第1ロール表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部を前記長
尺有機系フィルムに喰い込ませて前記長尺有機系フィル
ム本来の特性(例えば透明性、強度、ソフト感等)を殆
ど損うことなく、多数の微細な開口幅を有する凹部を形
成することができる。同時に、前記第1ロール表面の多
数の誘電体粒子の鋭い角部と前記第2ロールの間でコロ
ナ放電を発生させて前記誘電体粒子の鋭い角部が食い込
まれた前記凹部内面を親和化処理することができる。
【0056】したがって、本発明の方法によれば前述し
た塗布膜形成用ベースフィルムやガス透過量または水蒸
気透過量の制御が可能な種々の機能性フィルムとして有
用な多孔質フィルムを容易かつ量産的に製造することが
できる。
【0057】また、本発明に係わる別の多孔質フィルム
は有機系フィルムと、前記有機系フィルムに多数形成さ
れ、微細な開口幅を有し、かつ内面が親和性を示す凹部
と、前記凹部底部に位置する前記フィルムの残存薄膜部
に形成され、前記開口幅に比べて小さい径を有し、かつ
内面が親和性を示す貫通孔とを具備した構造を有し、前
記有機フィルム本来の特性(例えば透明性、ソフト感、
強度)が維持される。前記多孔質フィルムは、内面が親
和性を示す多数の凹部および前記凹部底部に繋がる貫通
孔が形成され、前記凹部が存在しない有機系フィルムに
比べて濡れ性が著しく改善される。前記多孔質フィルム
は多数の微細な凹部が形成されているため、前記多数の
凹部の開口側に接着剤層等を塗布すると、前記多数の凹
部の個所で前記接着剤層等に対して優れたアンカー効果
を示す。このような前記多孔質フィルムは、前述した塗
布膜形成用ベースフィルム、積層用フィルムとして利用
することができる。
【0058】また、前述した別の多孔質フィルムは前記
凹部底部の前記凹部の開口幅に比べて小さい径を有する
貫通孔において水の透過を抑制ないし防止するため、優
れた耐水圧性を有し、かつ細菌、雑菌の透過を防止でき
ると共に酸素ガス、炭酸ガスなどのガスの透過量や水蒸
気の透過量を前記凹部および前記貫通孔で制御すること
ができる。具体的には、酸素ガス、炭酸ガス等のガスは
前記有機系フィルムの微細な凹部および前記凹部底部の
前記貫通孔を通して前記凹部の開口側の面と反対の面に
拡散するため、前記ガスの透過量が大幅に増大される。
また、水蒸気は前記有機系フィルムの多数の微細かつ内
面が親和性を示す凹部に付着し、前記凹部底部の前記残
存薄膜部に穿孔され、前記開口幅より小さい径を有し、
内面が親和性を示す貫通孔を通して拡散する。その結
果、前述した凹部のみを形成した多孔質フィルムに比べ
て水蒸気の透過量を著しく増大することができる。した
がって、前記凹部の開口幅、それら凹部の数、前記凹部
底部に位置する前記フィルムの残存薄膜部部の厚さや前
記残存薄膜部に形成される貫通孔の径を制御することに
より、前記酸素ガスおよび炭酸ガスの透過量や水蒸気の
透過量が制御された機能性を有する多孔質フィルムが得
られる。
【0059】このような機能性を有する多孔質フィルム
は、前述した青果物鮮度保持用包装材、脱酸素剤用包装
材などの各種包装材、はっぷ剤の伸縮性ベースフィル
ム、手術用の手袋に利用できる。
【0060】特に、青果物鮮度保持用包装材として使用
されるポリエチレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレン
フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレ
フタレートフィルムなどは、本来的にエラストマーフィ
ルムやポリウレタンフィルムに比べて水蒸気透過量が極
端に少ない。このような有機系フィルムに親和性をそれ
ぞれ示す多数の微細な凹部および前記凹部底部に繋がる
貫通孔を形成することによって、既述した作用ににより
水蒸気量が大幅に増大される。例えば、二軸延伸ポリプ
ロピレンフィルムに前記凹部、貫通孔を形成した多孔質
フィルムは未処理の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに
比べて水蒸気透過量が3桁程度増大される。その結果、
前記多孔質フィルムは、水蒸気による曇りおよび結露の
発生を効果的に防止することが可能な青果物鮮度保持用
包装材として有効に利用することができる。
【0061】また、前記多孔質フィルムにおいて前記凹
部の開口幅、それら凹部の数、前記凹部底部に位置する
前記フィルムの残存薄膜部部の厚さや前記残存薄膜部に
形成される貫通孔(例えば円柱形状の貫通孔)の径、と
りわけ前記残存薄膜部部の厚さおよび前記貫通孔の径、
を制御することにより、前記貫通孔を透過しようとする
ガスの平均自由行程を制御できる。その結果、例えば空
気中の酸素ガスのみを選択的に透過する酸素ガスフィル
タ、または炭酸ガスのみを選択的に透過する炭酸ガスフ
ィルタ等として利用することができる。
【0062】さらに、本発明に係わる別の多孔質フィル
ムの製造方法は鋭い角部を有する多数のモース硬度5以
上の誘電体粒子が表面に付着された第1ロールと表面に
誘電体層が被覆された第2ロールとを対向配置し、前記
第1、第2のロールを互いに反対方向に回転させ、前記
第1、第2のロール間に長尺有機系フィルムを通過させ
ると共に、前記各ロール間を通過する前記長尺有機系フ
ィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフィルム面
全体に亘って均一となるように調節し、同時に前記第1
ロールに高電圧を供給するものである。かかる方法によ
れば、前記第1ロール表面の多数の誘電体粒子の鋭い角
部を前記長尺有機系フィルムに喰い込ませて前記長尺有
機系フィルム本来の特性(例えば透明性、強度、ソフト
感等)を殆ど損うことなく、多数の微細な開口幅を有す
る凹部を形成することができる。同時に、前記第1ロー
ルに高電圧を供給することにより前記第1ロール表面の
多数の誘電体粒子の鋭い角部において電界が大きくな
り、放電の集中(周辺効果)により前記各誘電体粒子の
角部から前記第2ロールに向けて高エネルギーのコロナ
が放電される。その結果、前記フィルムに食い込んだ前
記多数の誘電体粒子の鋭い角部から前記凹部底部に位置
する前記フィルムの残存薄膜部に前記高エネルギーのコ
ロナが照射されるため、前記開口幅に比べて小さい径を
有する貫通孔を前記残存薄膜部に形成することができ
る。また、前記コロナ放電により前記第1ロールの多数
の誘電体粒子の鋭い角部が食い込まれた前記凹部内面お
よび前記貫通孔の内面を親和化処理することができる。
【0063】したがって、本発明の方法によれば前述し
た塗布膜形成用ベースフィルムやガス透過量または水蒸
気透過量の制御が可能な種々の機能性フィルムとして有
用な多孔質フィルムを容易かつ量産的に製造することが
できる。
【0064】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細
に説明する。
【0065】図1は、本実施例1〜7の多孔質フィルム
の製造に用いられる製造装置を示す正面図、図2は図1
の製造装置の要部を示す側面図、図3は図2の III− I
II線に沿う断面図、図4は後述する実施例1において長
尺有機系フィルムに穿孔およびコロナ放電処理を施す工
程を示す要部拡大断面図である。
【0066】図中の1は、ベッドである。前記ベッド1
の右端付近を除く上面には、テーブル2が設けられてい
る。前記テーブル2上には、2つのカギ型のフレーム3
が前記テーブル2の幅方向にそれぞれ所定の間隔をあけ
て設置されている。前記フレーム3は、下板3a、側板
3b及び上板3cから形成されでいる。前記各フレーム
3の側板3bには、レール4が上下方向に亘ってそれぞ
れ形成されている。前記各レール4には、図3に示すよ
うに第1スライダー5(他方のスライダーは図示せず)
が上下動自在にそれぞれ配置されている。前記各スライ
ダー5には、軸受6を内蔵した第1ボックス7がそれぞ
れ固定されて、前記レール4に沿って上下動できるよう
になっている。前記各軸受6の周囲には、前記第1ボッ
クス7に対して絶縁するための例えばポリカーボネート
樹脂からなる絶縁環体8(他方の絶縁環体は図示せず)
がそれぞれ嵌合されいる。前記各フレーム3間には、第
1ロール9が配置されている。前記第1ロール9は、図
2および図4に示すように例えば50〜60μmの粒径
で鋭い角部を有する多数のモース硬度5以上の誘電体粒
子(例えば合成ダイヤモンド粒子;誘電率5.7)10
が表面に70%以上の面積率でNi製の電着層11aを
介して付着された銅製のロール本体11と、前記本体1
1の中心を貫通して前記本体11の両端面から突出され
た軸12とから構成されている。前記軸12の突出した
両端部は、前記第1ボックス7内の軸受6にそれぞれ軸
支されている。従って、前記第1ロール9は前記第1ボ
ックス7及び前記第1スライダー5により前記レール4
に沿って上下動自在に配置される。なお、前記第1スラ
イダー5に対応する前記レール4部分には2つのストッ
パ(図示せず)がそれぞれ設けられ、前記第1スライダ
ー5の上下動作を前記2つのストッパで例えば5mmの
範囲に規制するようになっている。
【0067】前記第1ボックス7の下方に位置する前記
各側板3bのレール4部分には、図3に示すように第2
スライダー13(他方のスライダーは図示せず)が上下
動自在にそれぞれ配置されている。前記各スライダー1
3には、軸受14を内蔵した第2ボックス15がそれぞ
れ固定され、前記レール4に沿って上下動できるように
なっている。また、前記各フレーム3間には第2ロール
16が前記第1ロール9の下方に位置するように対向し
て配置されている。前記第2ロール16は、図3および
図4に示すように例えば厚さ約3mmのアルミナからな
る誘電体層17が表面に被覆された鉄製のロール本体1
8と、前記本体18の中心を貫通して前記本体18の両
端面から突出された軸19とから構成されている。な
お、前記誘電体層17は前記ロール本体18表面にアル
ミナを溶射した後、溶射アルミナ層の表面を研摩するこ
とにより形成される。前記軸19の突出した両端部は、
前記第2ボックス15内の軸受14にそれぞれ軸支され
ている。従って、前記第2ロール16は前記第2ボック
ス15及び前記第2スライダー13により前記レール4
に沿って上下動自在に配置される。前記第2ロール16
の一端側(例えば左端側)の軸19部分は、前記第2ボ
ックス15を貫通して突出しており、かつ前記軸19の
突出部分には図示しないモータの駆動軸の歯車(図示せ
ず)と噛合する歯車20が軸着されている。
【0068】前記第1ボックス7の上方に位置する前記
各側板3bのレール4部分には、図3に示すように第3
スライダー21(他方のスライダーは図示せず)が上下
動自在にそれぞれ配置されている。前記各スライダー2
1には、軸受22を内蔵した第3ボックス23がそれぞ
れ固定され、前記レール4に沿って上下動できるように
なっている。また、前記各フレーム3間には第3ロール
24が前記第1ロール9の上方に位置するように対向し
て配置されている。前記第3ロール24は、図3に示す
ように例えば厚さ約3mmのアルミナからなる誘電体層
25が表面に被覆された鉄製のロール本体26と、前記
本体26の中心を貫通して前記本体26の両端面から突
出された軸27とから構成されている。前記軸26の突
出した両端部は、前記第3ボックス23内の軸受22に
それぞれ軸支されている。従って、前記第3ロール24
は前記第3ボックス23及び前記第3スライダー21に
より前記レール4に沿って上下動自在に配置される。前
記第3ロール24の一端側(例えば左端側)の軸27部
分は、前記第3ボックス23を貫通して突出しており、
かつ前記軸27の突出部分には前記モータの駆動軸の歯
車(図示せず)と噛合する歯車28が軸着されている。
後述する第1圧力調節手段により前記第2ロール16を
前記第1ロール9に押圧し、後述する第2圧力調節手段
により前記第3ロール24を前記第1ロール9に押圧し
た状態で、前記モータにより前記第2ロール16の軸1
9および前記第3ロール24の軸26を例えば時計回り
方向に回転すると、前記第2、第3のロール16、24
間に上下動自在に配置される前記第1ロール9が反時計
回り方向に回転されるようになっている。
【0069】前記2つのフレーム3、前記2つの第1ボ
ックス7、前記第1ロール9、前記前記2つの第2ボッ
クス15、前記第2ロール16、前記2つの第3ボック
ス23、前記第3ロール24、前記各スライダー5、1
3、21により穿孔用ユニット29を構成している。
【0070】前記各第1ボックス7の前面壁部には、図
3に示すようにねじ穴30がそれぞれ形成されている。
前記ねじ穴30には、前記ボックス7前面に当接される
フランジ部31を有する例えばポリカーボネート樹脂か
らなる絶縁筒体32がそれぞれ螺着され、かつ前記各絶
縁筒体32の先端は前記第1ボックス7に内蔵された前
記軸受6周囲の絶縁環体8を貫通して前記軸受6外周面
に達している。前記各絶縁筒体32内には、前記フラン
ジ31に当接する鍔部33を有する高電圧供給端子34
がそれぞれ挿入され、前記各端子34の先端は前記軸受
6に接続されている。前記各端子34の鍔部33には、
ケーブルを通して例えば高圧トランス(図示せず)がそ
れぞれ接続され、さらに前記各トランスには交流電源
(図示せず)がそれぞれ接続されている。前記交流電源
および高圧トランスから高電圧をケーブルを通して前記
各端子34に供給すると、前記各端子34は前記各第1
ボックス7に対して前記各絶縁筒体32で絶縁され、か
つ前記各端子34の先端は前記軸受6に接触しているた
め、前記第1ロール9のみに高電圧を供給することがで
きる。
【0071】前記各第2ボックス15の下壁には、上下
にフランジ35、36を有する円筒体37がそれぞれ配
置されている。前記各円筒体37は、図3に示すように
前記上部フランジ35から前記第2ボックス15の下壁
に螺着された複数のネジ38により前記第2ボックス1
5にそれぞれ固定されている。前記各円筒体37の下部
フランジ36には、中央に穴39を有する円板40がそ
れぞれ配置され、かつ前記各円板40は前記各円板40
から前記下部フランジ36に螺着された複数のネジ41
によりそれぞれ固定されている。前記各円筒体37内に
は、コイルバネ42がそれぞれ上下方向に弾性力を付与
するように収納されている。前記各円筒体37内には、
上端に圧力センサ43を取着したロッド44がそれぞれ
前記円板40の穴39を通して挿入されている。前記各
圧力センサ43は、前記各コイルバネ42の下端に当接
され、前記各ロッド44の上昇による前記コイルスバネ
42への押圧力を検出できるようになっている。前記各
センサ43下方の前記ロッド44部分には、前記ロッド
44を円滑に上下動させるための円板状ガイド45がそ
れぞれ取り付けられている。前記各ロッド44の下端部
には、ボールスクリュー46それぞれ螺着されている。
前記各ボールスクリュー46は、前記フレーム3の下板
3aを貫通して前記テーブル2の窪み部(図示せず)に
それぞれ突出している。前記窪み部内には、ネジ加工さ
れた係合板(図示せず)を内蔵したケーシング(他方の
ケーシングは図示せず)47がそれぞれ設けられてい
る。前記各ケーシング47内の前記係合板には、前記ボ
ールスクリュー46の下端突出部が螺合されている。前
記各ケーシング47内には、前記ボールスクリュー46
の下端突出部と係合するウォーム軸(図示せず)が水平
方向からそれぞれ挿入され、かつ前記各ウォーム軸の一
端にハンドル(他方のハンドルは図示せず)48がそれ
ぞれ設けられている。従って、前記ハンドル48を回転
することにより前記ハンドル48のウォーム軸と係合す
る前記ボールスクリュー46が回転し、前記ボールスク
リュー46が螺着された前記ロッド44を上昇(または
下降)するようになっている。この場合、前記ロッド4
4をある距離以上に下降させると、前記ロッド44に取
り付けられた前記円板状ガイド45が前記円筒体37下
部の円板40内面に当接して前記円筒体37自体を下降
させる。このため、前記円筒体37の上端に固定された
前記第2ボックス15が前記スライダー13により前記
レール4に沿って下降される。
【0072】前記2つの円筒体37、前記2つの円板4
0、前記2つのコイルバネ42、前記2つの圧力センサ
43、前記2つのロッド44、前記2つの円板状カイド
45、前記2つのボールスクリュー46、前記2つのケ
ーシング47、前記2つのウォーム軸(図示せず)およ
び前記2つのハンドル48により前記第1、第2のロー
ル9、16間を通過するフィルムへの押圧力を調節する
第1圧力調節手段49を構成している。
【0073】前記第3ボックス23の上壁には、上下に
フランジ50、51を有する円筒体52がそれぞれ配置
されている。前記各円筒体52は、図3に示すように前
記下部フランジ51から前記第3ボックス23の上壁に
螺着された複数のネジ53により前記第3ボックス23
にそれぞれ固定されている。前記各円筒体52の上部フ
ランジ50には、中央に穴54を有する円板55がそれ
ぞれ配置され、かつ前記各円板55は前記各円板55か
ら前記上部フランジ50に螺着された複数のネジ56に
よりそれぞれ固定されている。前記各円筒体52内に
は、コイルバネ57がそれぞれ上下方向に弾性力を付与
するように収納されており、かつ前記各コイルバネ57
の下端は前記第3ボックス23の上壁にそれぞれ当接さ
れている。前記各円筒体52内には、下端に圧力センサ
58を取着したロッド59がそれぞれ前記円板55の穴
54を通して挿入されている。前記各圧力センサ58
は、前記各コイルバネ57の上端に当接され、前記各ロ
ッド59の下降によるコイルバネ57への押圧力を検出
できるようになっている。前記各センサ58上方の前記
ロッド59部分には、前記ロッド59を円滑に上下動さ
せるための円板状ガイド60がそれぞれ取り付けられて
いる。前記各ロッド59の上端部には、ボールスクリュ
ー61がそれぞれ挿着されている。前記各ボールスクリ
ュー61は、前記フレーム3の上板3cを貫通して前記
上板3cの上方にそれぞれ突出している。前記各上板3
cの上面には、ネジ加工された係合板(図示せず)を内
蔵したケーシング(他方のケーシングは図示せず)62
がそれぞれ設けられている。前記各ケーシング62内の
前記係合板には、前記ボールスクリュー61の上端突出
部が螺合されている。前記各ケーシング62内には、前
記ボールスクリュー61の上端突出部と係合するウォー
ム軸(図示せず)が水平方向からそれぞれ挿入され、か
つ前記各ウォーム軸の一端にハンドル(他方のハンドル
は図示せず)63がそれぞれ設けられている。従って、
前記ハンドル63を回転することにより前記ハンドル6
3のウォーム軸と係合する前記ボールスクリュー61が
回転し、前記ボールスクリュー61が螺着された前記ロ
ッド59を下降(または上昇)するようになっている。
この場合、前記ロッド59をある距離以上に上昇させる
と、前記ロッド59に取り付けられた前記円板状ガイド
60が前記円筒体52上部の円板55内面に当接して前
記円筒体52自体を上昇させる。このため、前記円筒体
52の下端に固定された前記第3ボックス23が前記ス
ライダー21により前記レール4に沿って上昇される。
【0074】前記2つの円筒体52、前記2つの円板5
0、前記2つのコイルバネ57、前記2つの圧力センサ
58、前記2つのロッド59、前記2つの円板状カイド
60、前記2つのボールスクリュー61、前記2つのケ
ーシング62、前記2つのウォーム軸(図示せず)およ
び前記2つのハンドル63により前記第1、第3のロー
ル9、24間を通過するフィルムへの押圧力を調節する
第2圧力調節手段64を構成している。
【0075】前記穿孔用ユニット29の前段には、長尺
有機系フィルムの巻回ロール(図示せず)が配置されて
いる。前記巻回ロールの長尺有機系フィルム65は、例
えば2つの送りロール66を経由して前記ユニット29
の前記第1、第2のロール9、16間に供給され、さら
に送りロール66を経て前記第1、第3のロール9、2
4間に供給される。前記ユニット29の後段には、静電
除去手段67が配置されている。前記静電除去手段67
は、前記テーブル2上に設置され、純水を収容した容器
68と、前記純水に超音波を付与するための超音波発生
部材(図示せず)とから構成されている。前記ユニット
29と前記静電除去手段67の間、前記容器68内およ
び前記容器68の後段には、前記第1、第3のロール
9、24間を通過した前記長尺有機系フィルム65を搬
送するための5つの送りロール66がそれぞれ配置され
ている。なお、前記容器68の前後段に位置する前記2
つの送りロール66には当てロール69がそれぞれ配置
されている。前記静電除去手段67の後段には、前記送
りロール66、当てロール69間を通過した前記フィル
ム65を乾燥するための複数の熱風噴射部材(図示せ
ず)および巻取ロール(図示せず)が順次配置されてい
る。 実施例1
【0076】次に、前述した構成の多孔質フィルムの製
造装置により例えば厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピ
レン(OPP)からなる長尺有機系フィルム65を穿孔
およびコロナ放電処理を施して多孔質フィルムを製造す
る方法を説明する。
【0077】まず、第1、第2の圧力調節手段49、6
4のハンドル48、63等を操作することによって図示
しないストッパにより下方への移動が規制された第1ロ
ール9に対して第2ロール16および第3ロール24を
十分な間隔をあけて離し、巻回ロール(図示せず)から
OPPからなる長尺有機系フィルム65を2つの送りロ
ール66により前記穿孔用ユニット29の前記第1、第
2のロール9、16間を通過させた後、送りロール66
により静電除去手段67の容器内68内を通過させ、さ
らに複数の熱風噴射部材(図示せず)を通過させて巻取
ロール(図示せず)に前記長尺有機系フィルム65の先
端を巻く。
【0078】前記長尺有機系フィルム65の先端を巻取
ロールに巻き取った後、前記第1圧力調節手段49の2
つのハンドル48を時計回り方向に回転させることによ
り、各円筒体37の上端に連結された各第2ボックス1
5をスライダー13により各フレーム3の各レール4に
沿ってそれぞれ上昇させ、前記各第2ボックス15内の
軸受14に軸支された軸19を有する第2ロール16
を、その上の第1ロール9に前記長尺有機系フィルム6
5を挟んで当接させる。更に、前記各ハンドル48を同
方向に回転させることにより、各ロッド44上端の各セ
ンサ43でその上の各コイルバネ42を圧縮させる。か
かる前記各コイルバネ42の圧縮により、前記各第2ボ
ックス15の下壁に押圧力が付与され、前記各第2ボッ
クス15内の軸受14に軸支された前記軸19を有する
前記第2ロール16と前記第1ロール9の間の押圧力が
上昇する。この際、前記各圧力センサ43により前記第
2、第1のロール16、間の押圧力(圧縮力)を検出し
て、前記各ハンドル47を正逆方向に回転を調節するこ
とにより、前記第2、第1のロール16、9間に位置す
る前記長尺有機系フィルム65への押圧力が調節され
る。
【0079】次いで、前記第2圧力調節手段64の2つ
のハンドル63を反時計回り方向に回転させることによ
り、各円筒体52の下端に連結された各第3ボックス2
3をスライダー21により各フレーム3の各レール4に
沿ってそれぞれ下降させ、前記各第3ボックス23内の
軸受22に軸支された軸27を有する第3ロール24
を、その下の第1ロール9に当接させる。更に、前記各
ハンドル63を同方向に回転させることにより、各ロッ
ド59下端の各センサ58でその下の各コイルバネ57
を圧縮させる。かかる前記各コイルバネ57の圧縮によ
り、前記各第3ボックス24の上壁に押圧力が付与さ
れ、前記各第3ボックス23内の軸受22に軸支された
前記軸27を有する前記第3ロール24と前記第1ロー
ル9の間の押圧力が上昇する。この際、前記各圧力セン
サ58により前記第3、第1のロール24、9間の押圧
力(圧縮力)を検出して、前記各ハンドル63を正逆方
向に回転を調節することにより、前記第3ロール24の
第1ロール9間に対する押圧力が調節される。
【0080】以上のような前記第1圧力調節手段49に
よる前記穿孔用ユニット29への押圧調節により、前記
第2、第1のロール16、9間に位置する前記長尺有機
系フィルム65の幅方向全体に亘って均一な押圧力(例
えば200kg/cm)が付与される。さらに、前記第
1、第2の圧力調節手段49、64により前記第2、第
3のロール16、24を前記スライダー5およびストッ
パ(図示せず)で所望の距離範囲内にて上下動する前記
第1ロール9を押圧することによって、前記第1ロール
9の長さ方向への撓み発生が防止される。このような前
記第1、第2の圧力調節手段49、64の操作により穿
孔の準備が完了する。
【0081】穿孔操作の準備が完了した後、前記静電除
去手段67の容器68に収容された純水に図示しない超
音波発生部材により超音波を付与する。つづいて、前記
巻取ロールを回転させると同時に、図示しないモータの
駆動軸を回転させることにより、前記駆動軸の歯車に噛
合した前記第2、第3のロール16、24の軸19、2
7の歯車20、28を時計回り方向に回転させる。前記
第2、第3のロール16、24が回転すると、それらロ
ール16、24間に位置すると共に、それらロール1
6、24で押圧された前記第1ロール9が反時計回り方
向に回転される。同時に、交流電源および高圧トランス
(いずれも図示せず)から交流高電圧(例えば電圧値;
3000V、電流値;約0.26Aの高電圧)をケーブ
ルを通して前記各第1ボックス7の前面に各絶縁筒体3
2で絶縁して取付けた各供給端子34の各鍔部33に供
給し、前記各供給端子34、前記各第1ボックス7に内
蔵された各軸受12を経由して前記第1ロール9に高電
圧を印加する。このように前記第1〜第3のロール9、
16、24を回転させると共に、前記第1ロール9に高
電圧を印加することにより、前記第1、第2のロール
9、16間を通過する前記OPPからなる長尺有機系フ
ィルム65に多数の凹部が穿孔されると共にそれらの内
面が親和化処理される。
【0082】すなわち、前記第1ロール9は図2および
図4に示すように鋭い角部を有する多数の合成ダイヤモ
ンド粒子10が表面に例えば70%以上の面積率で電着
層11aを介して付着された銅製のロール本体11を備
えた構造になっていおり、かつ前記第2ロール16は表
面に誘電体層17が被覆された鉄製のロール本体18を
備えた構造になっている。このため、前記長尺有機系フ
ィルム65が前記第1、第2のロール9、16間を通過
する時に、図4に示すように前記第1ロール9表面の多
数の合成ダイヤモンド粒子10の鋭い角部が前記長尺有
機系フィルム65に一様に食い込んで機械的な穿孔がな
され、多数の逆円錐形状の凹部70が形成される。同時
に、交流高電圧が供給された前記第1ロール9は前記長
尺有機系フィルム65を挟んで表面に前記誘電体層17
が被覆された第2ロール16に対向されているため、前
記第1ロール9表面の誘電体である多数の合成ダイヤモ
ンド粒子10と前記第2ロール16の誘電体層17の間
でコロナ放電が一様に発生する。その結果、同図4に示
すように前記第1ロール9の多数の合成ダイヤモンド粒
子10が食い込まれた前記長尺有機系フィルム65に前
記コロナが一様に照射されるため、前記長尺有機系フィ
ルム65に穿孔された多数の凹部70の内面が前記コロ
ナ放電により親和化処理される。
【0083】また、前記第1、第2の圧力調節手段4
9、64により前記第2、第3のロール16、24を上
下動可能、つまりフリーな状態で配置された前記第1ロ
ール9を押圧することによって、前記第1ロール9の長
さ方向への撓み発生が防止されているため、長時間の運
転においても前記第1ロール9表面に付着された多数の
合成ダイヤモンド粒子10の鋭い角部による機械的な穿
孔と多数の合成ダイヤモンド粒子10からの一様なコロ
ナ放電が維持される。
【0084】前記穿孔用ユニット29による穿孔がなさ
れた前記長尺有機系フィルム65は、5つの送りロール
66および2つの当てロール69により前記静電除去手
段67の容器68内を通過、搬送される。前記ユニット
29による前記長尺有機系フィルム65への穿孔は、前
記第1、第2のロール9、16間の摩擦およびコロナ放
電によりなされるため、穿孔処理後の前記フィルム65
表面に大量の静電気が発生し、周囲のダストを付着させ
る。穿孔処理後の前記長尺有機系フィルム65を前記静
電除去手段67の純水が収容された容器68を通過させ
ると共に、図示しない超音波発生部材により前記純水に
超音波を付与することにより、前記長尺有機系フィルム
65に付着したダストが容易に洗い流される。ダストが
洗い流された多数の貫通孔が形成された前記長尺有機系
フィルム65は、図示しない複数の熱風噴射部材を通過
して表面の水が揮散除去され、更に巻取ロールに巻き取
られる。
【0085】以上のような本実施例1の方法により製造
された長尺多孔質OPPフィルム71は、図5に示すよ
うに厚さ20μmのOPPからなる長尺有機系フィルム
65に開口幅(W)の平均値が約20μmの微細寸法の
逆円錐形状をなす凹部70が10,000個/cm2
密度で多数かつ一様に穿孔され、かつ前記各凹部70の
内面が親和性を示していた。また、前記凹部70底部に
位置する前記フィルムの残存薄膜部72の平均厚さは、
約5μmであった。 実施例2、3
【0086】前記第1、第2のロール9、16間を通過
する前記OPPからなる長尺有機フィルムへの押圧力を
500kg/cm、50kg/cmとした以外、実施例
1と同様な処理を施すことにより前述した実施例1とほ
ぼ同様な構造の2種の長尺多孔質OPPフィルムを製造
した。なお、押圧力を500kg/mに設定することに
より得られた長尺多孔質OPPフィルムの残存薄膜部の
平均厚さは約2μm、押圧力を50kg/mに設定する
ことにより得られた長尺多孔質OPPフィルムの残存薄
膜部の平均厚さは約10μmであった。 実施例4
【0087】前記第1、第2のロール9、16間を通過
する前記OPPからなる長尺有機フィルムへの押圧力を
200kg/cmとし、前記交流電源および高圧トラン
ス(いずれも図示せず)から例えば電圧値10kV、電
流値1.5Aの交流高電圧を前記第1ロール9に供給し
た以外、実施例1と同様な処理を施した。なお、前記長
尺有機系フィルム65が前記第1、第2のロール9、1
6間を通過する時に、図6に示すように前記第1ロール
9表面の多数の合成ダイヤモンド粒子10の鋭い角部が
前記長尺有機系フィルム65に一様に食い込んで機械的
な穿孔がなされ、多数の逆円錐形状の凹部70が形成さ
れる。同時に、前記条件の交流高電圧が供給された前記
第1ロール9は前記長尺有機系フィルム65を挟んで表
面に誘電体層17が被覆された第2ロール16に対向さ
れているため、前記第1ロール9表面の誘電体である多
数の合成ダイヤモンド粒子10の鋭い角部と前記第2ロ
ール16のアルミナ層17の間で高エネルギーのコロナ
放電が発生する。その結果、同図6に示すように前記多
数の合成ダイヤモンド粒子10が食い込まれた前記長尺
有機系フィルム65に形成された凹部70の底部に位置
する残存薄膜部72にコロナ73が主に集中して照射さ
れて穿孔がなされるため、残存薄膜部72に前記凹部7
0の開口幅より小さい径の円柱形状の貫通孔が形成され
る。また、前記長尺有機系フィルム65に穿孔された多
数の凹部70の内面および前記貫通孔の内面は前記コロ
ナ放電により親和化処理される。
【0088】以上のような本実施例4の方法により製造
された長尺多孔質OPPフィルム74は、図7に示すよ
うに厚さ20μmのOPPからなる長尺有機系フィルム
65に開口幅(W)の平均値が約20μmの微細寸法の
逆円錐形状をなす凹部70が10,000個/cm2
密度で多数かつ一様に穿孔され、かつ前記各凹部70の
底部に位置する平均厚さが約5μmの残存薄膜部72に
平均径3.5μmの円柱状をなす貫通孔75が形成され
ていた。また、前記凹部70内面および前記貫通孔75
の内面はそれぞれ親和性を示していた。 実施例5、6
【0089】前記第1、第3のロール9、16間を通過
する前記OPPからなる長尺有機フィルムへの押圧力を
500kg/cm、50kg/cmとし、前記交流電源
および高圧トランス(いずれも図示せず)から例えば電
圧値10kV、電流値1.5Aの交流高電圧を前記第1
ロール9に供給した以外、実施例1と同様な処理を施す
ことにより前述した実施例2とほぼ同様な構造の2種の
長尺多孔質OPPフィルムを製造した。なお、押圧力を
500kg/mに設定することにより得られた長尺多孔
質OPPフィルムの残存薄膜部の平均厚さは約2μm、
押圧力を50kg/mに設定することにより得られた長
尺多孔質OPPフィルムの残存薄膜部の平均厚さは約1
0μmであった。 参照例1〜3
【0090】前記第1、第2のロール9、16間を通過
する前記OPPからなる長尺有機フィルムへの押圧力を
200kg/cm、500kg/cm、50kg/cm
とし、前記交流電源および高圧トランス(いずれも図示
せず)からの交流高電圧の供給を行わない以外、実施例
1と同様な処理を施すことにより前述した実施例1とほ
ぼ同様な構造の3種の長尺多孔質OPPフィルムを製造
した。ただし、これら長尺多孔質OPPフィルムは凹部
へのコロナ放電がなされていないために、その内面は親
水化されていない。
【0091】実施例1〜6および参照例1〜3により得
られた厚さ20μmの各長尺多孔質OPPフィルムにつ
いて、酸素ガス透過量、炭酸ガス透過量および水蒸気透
過量を測定した。その結果を下記表1および表2に示
す。なお、表2には各長尺多孔質OPPフィルムの残存
薄膜部の平均厚さを併記した。また、比較例として実施
例1〜9で使用したの同様で、未処理のOPPフィルム
(厚さ20μm)の酸素ガス透過量、炭酸ガス透過量お
よび水蒸気透過量の測定結果を同表2にそれぞれ併記し
た。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】前記表1および表2から明らかなように本
実施例1〜6の長尺多孔質OPPフィルムは通常のOP
Pフィルムに比べて酸素ガス透過量、炭酸ガス透過量お
よび水蒸気透過量がいずれも大幅に多くなっていること
がわかる。特に、本実施例1〜3の長尺多孔質OPPフ
ィルムのように凹部に対応する残存薄膜部の厚さを調節
することにより酸素ガス透過量、炭酸ガス透過量および
水蒸気透過量を制御できることがわかる。また、本実施
例4〜6の長尺多孔質OPPフィルムのように貫通孔が
形成された残存薄膜部の厚さを調節することにより酸素
ガス透過量、炭酸ガス透過量および水蒸気透過量を制御
できることがわかる。さらに、本実施例1〜6の長尺多
孔質OPPフィルムは内面が親和性を示さない凹部を多
数形成した参照例1〜3に比べて水蒸気透過量を増大で
き、中でも凹部底部に位置する残存薄膜部に貫通孔を形
成した実施例4〜6の長尺多孔質OPPフィルムは水蒸
気透過量を著しく増大できることがわかる。
【0095】また、前記実施例1および実施例4の長尺
多孔質OPPフィルムを青果物鮮度保持用包装材として
用い、前記包装材にほうれん草の束を収納し、開口部を
密閉した。また、比較のために通常のOPPフィルムか
らなる包装材に同様なほうれん草の束を収納し、開口部
を密閉した。前記ほうれん草の束が収納・密閉された包
装材を室温で1週間放置した後に前記ほうれん草の状態
を観察した。その結果、比較例の包装材に収納されたほ
うれん草は、大部分が黄変して腐敗寸前の状態であっ
た。これに対し、本実施例1、4の多孔質OPPフィル
ムからなる包装材に収納されたほうれん草は、前記包装
材に収納される前の新鮮な緑色を帯びたものであった。
特に、実施例4の多孔質OPPフィルムからなる包装材
はほうれん草から放出される水蒸気を良好に外部に逃散
でき、水蒸気による曇りおよび結露の発生が防止される
ため、より良好な鮮度保持を達成できた。 実施例7
【0096】長尺有機系フィルム65として、厚さ50
μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフ
ィルム)を用い、第1ロール9として鋭い角部を有する
粒径30〜35μmの多数の合成ダイヤモンド粒子が表
面に電着層を介して付着された銅製のロール本体を有す
るものを用い、かつ前記長尺有機系フィルム65をそれ
ぞれ押圧調節された前記第1、第2のロール9、16間
および前記第1、第3のロール9、24間を通過させた
以外、実施例1と同様な処理を施した。
【0097】このように前記第1、第2のロール9、1
6間および前記第1、第3のロール9、24間を通過さ
せて2度の穿孔操作およびコロナ放電を行うにより平均
開口幅が約10μm、平均深さが約10μmの微細寸法
の凹部が約180,000個/cm2 の密度で多数かつ
一様に形成された長尺多孔質フィルムが製造された。ま
た、前記各凹部内面は親和性を示していた。
【0098】実施例7により得られた長尺多孔質PET
フィルムの濡れ張力を測定した。その結果、40dyn
e/cm以上であり、凹部が形成されていない通常のP
ETフィルム(濡れ張力;35dyne/cm)に比べ
て濡れ性が格段に向上されていた。このような高い濡れ
性を有する前記長尺多孔質PETフィルムは、インク、
磁性粉末を含む磁性層等の塗布膜形成用ベースフィル
ム、積層用フィルムとして利用することができた。
【0099】図8は、本実施例8、9の多孔質フィルム
の製造に用いられる装置を示す概略断面図、図9は図8
の製造装置に用いられるプレス機構を構成する電極体の
下面側から見た斜視図、図10は図8の製造装置に用い
られるプレス機構を示す斜視図、図11は図10の要部
断面図、図12は後述する実施例8において長尺有機系
フィルムに穿孔およびコロナ放電処理を施す工程示す要
部拡大断面図である。
【0100】基台101は、ベッド102とこのベッド
102の上部に埋設された例えば鉄製の受板103とか
ら構成されている。前記受板103は、後述する幅が2
00mmの長尺有機系フィルムと同様な幅を有する。前
記受板103上面には、例えばアルミナからなる厚さ3
mmの誘電体層104が被覆されている。例えば4本の
支柱105は、前記ベッド102上に立設されている。
支持板106は、前記4本の支柱105上に固定されて
いる。ピストンロッド107を有するエアーシリンダ1
08は、前記支持板106に支持され、前記ピストンロ
ッド107は前記支持板105に開孔された穴109を
通して下方に延出されている。
【0101】プレス機構110は、前記ピストンロッド
107の下端に着脱自在に取り付けられている。前記プ
レス機構110は、次のような構造になっている。すな
わち、図10に示すように前記プレス機構110は下面
に帯状の凹部111が形成された鉄製の本体112を備
えいている。上面に帯状の凸部113、下面に帯状の凹
部114を有する例えばポリカーボネート樹脂からなる
絶縁板115は、前記本体112の下面に接着剤等を介
して一体的に固定されている。銅製の電極体116は、
前記絶縁板115下面の凹部114に接着剤等を介して
固定され、かつ前記絶縁板115の下面から所定の高さ
突出している。前記電極体116は、後述する長尺有機
系フィルムの幅と同様な幅を有する。前記電極体116
の前記受板103と対向する面には、図9および図12
に示すように鋭い角部を有する多数のモース硬度5以上
の誘電体粒子である合成ダイヤモンド粒子117が電着
層118を介して付着されている。前記合成ダイヤモン
ド粒子117は、例えば50〜60μmの粒径を有し、
前記電極体116の面に70%以上の面積率で電着され
ている。
【0102】前記プレス機構110の本体112から前
記絶縁板115を貫通して電極端子取出穴119が穿設
されている。例えばポリカーボネート樹脂からなる絶縁
筒体120は、前記穴119に前記本体112表面から
突出するように嵌入されている。高電圧供給端子121
は、前記絶縁筒体120に挿入され、前記端子121の
先端は前記穴119底面に露出した前記電極体116に
接続されている。図しない高圧トランスは、前記端子1
21の後端にケーブルを通して接続されている。交流電
源(図示せず)は、前記高圧トランスにケーブルを通し
て接続されている。前記交流電源および高圧トランスか
ら交流高電圧をケーブルを通して前記高電圧供給端子1
21に供給すると、前記供給端子121の周面は前記本
体112に対して前記各絶縁筒体120で絶縁され、か
つ前記供給端子121の先端は前記電極体116に接触
しているため、前記電極体116のみに交流高電圧を供
給することができる。
【0103】長尺積層フィルム供給手段としての間欠動
作する供給ロール(図示せず)は、前記受板103の前
段に配置されている。前記供給ロールの長尺有機系フィ
ルム122は、2つの送りロール123a、123bを
経由して前記受板103上面の誘電体層104に沿って
供給され、さらに前記受板103後段の2つの送りロー
ル124a、124bを経由して巻取ロール(図示せ
ず)に巻回される。 実施例8 前述した構成の多孔質フィルムの製造装置により長尺有
機系フィルム122を穿孔処理して多孔質フィルムを製
造する方法を説明する。
【0104】まず、巻回ロール(図示せず)から例えば
厚さ20μmのポリエチレン(PE)フィルムに厚さ1
2μmのPETフィルムを接着剤を介して積層した幅が
200mmの積層フィルムからなる長尺有機系フィルム
122を2つの送りロール123a、123bを経由し
て前記受板103の誘電体層104に沿って供給し、さ
らに前記受板103後段の2つの送りロール124a、
124bを経由して前記長尺有機系フィルム122の先
端を巻取ロール(図示せず)に巻く。なお、前記長尺有
機系フィルム122を前記受板103と前記プレス機構
110の間に供給する際、前記長尺有機系フィルム12
2の前記PETフィルム側が前記プレス機構110に対
向するように供給した。
【0105】前記長尺有機系フィルム122の先端を巻
取ロールに巻き取った後、前記エアーシリンダ108を
作動して前記ピストンロッド107を下方に移動させ、
前記ピストンロッド107下端に取り付けられた前記プ
レス機構110を前記受板103に向けて移動させ、前
記プレス機構110の電極体116と前記受板103上
面の誘電体層104との間に位置される前記長尺有機系
フィルム122を加圧する。同時に、交流電源および高
電トランス(いずれも図示せず)から例えば3000
V、約0.26Aの交流高電圧をケーブルおよび高電圧
供給端子121を通して前記プレス機構110の前記電
極体116に供給する。その結果、前記受板103と前
記プレス機構110の間に供給された前記長尺有機系フ
ィルム122に多数の凹部が穿孔されると共にそれらの
内面が親和化処理される。
【0106】すなわち、前記プレス機構110は図10
および図12に示すように前記受板103との対向面に
鋭い角部を有する多数の合成ダイヤモンド粒子117が
例えば70%以上の面積率で電着層118を介して付着
された銅製の電極体116を備えた構造になっていお
り、かつ前記受板103は表面に誘電体層104が被覆
された構造になっている。このため、前記受板103と
前記プレス機構110の電極体116との間で前記長尺
有機系フィルム112を加圧すると、図12に示すよう
に前記電極体116の多数の合成ダイヤモンド粒子11
7の鋭い角部が前記長尺有機系フィルム122のPET
フィルム122b側からPEフィルム122aに向けて
一様に食い込んで機械的な穿孔がなされ、多数の逆円錐
形状の凹部125が形成される。同時に、交流高電圧が
供給された前記プレス機構110の前記電極体116は
前記長尺有機系フィルム112を挟んで表面に誘電体層
104が被覆された受板103に対向されているため、
前記電極体116表面の誘電体である多数の合成ダイヤ
モンド粒子117と前記受板103の誘電体層104の
間でコロナ放電が一様に発生する。その結果、同図12
に示すように前記電極体116の多数の合成ダイヤモン
ド粒子117が食い込まれた前記長尺有機系フィルム1
22に前記コロナが一様に照射されるため、前記長尺有
機系フィルム122に穿孔された多数の凹部125の内
面が前記コロナ放電により親和化処理される。
【0107】前記穿孔およびコロナ処理を行った後、前
記エアーシリンダ108を動作して前記プレス機構11
0を上昇させ、前記長尺有機系フィルム122を前記プ
レス機構110の幅(前記長尺有機系フィルム122の
移動方向に沿う辺の長さ)に相当する長さ移動させ、再
度、同様な穿孔およびコロナ放電処理を行う。
【0108】以上のような本実施例8において、前記受
板103と前記プレス機構110の電極体116間で加
圧された前記長尺有機系フィルム部分を切出して得られ
た多孔質積層フィルム(寸法;200mm×200m
m)126は、図13に示すように厚さ12μmのPE
Tフィルム122b側からPEフィルム122aに亘っ
て平均開口幅が約20μmの逆円錐形状をなす凹部12
5が10,000個/cm2 の密度で多数かつ一様に穿
孔され、かつ前記各凹部125の内面が親和性を示して
いた。また、前記凹部125底部に位置する前記PEフ
ィルム122aの残存薄膜部127の平均厚さは、約5
μmであった。
【0109】前記多孔質積層フィルムは、1×107
c/m2 ・24hr・25℃のガス透過量を有してい
た。このような酸素ガス透過量を有する多孔質積層フィ
ルムは、脱酸素剤の包装材として利用することができ
た。 実施例9
【0110】長尺有機系フィルム122として、厚さ3
0μmのエラストマーフィルムを用い、前記プレス機構
110として鋭い角部を有する粒径60〜75μmの多
数の合成ダイヤモンド粒子117が表面に電着層118
を介して付着された銅製の電極体116を有するものを
用い、交流電源および高圧トランスから例えば10k
V、約1.5Aの交流高電圧を前記プレス機構110の
電極体116に供給した以外、実施例8と同様な処理を
施した。なお、前記長尺有機系フィルム122が前記受
板103と前記プレス機構110の間で加圧されると、
図14に示すように前記電極体116表面の多数の合成
ダイヤモンド粒子117の鋭い角部が前記エラストマー
からなる長尺有機系フィルム122に一様に食い込んで
機械的な穿孔がなされ、多数の逆円錐形状の凹部125
が形成される。同時に、前記条件の交流高電圧が供給さ
れた前記プレス機構110の電極体116は前記長尺有
機系フィルム122を挟んで表面に誘電体層104が被
覆された受板103に対向されているため、前記電極体
116表面の多数の良導電性の合成ダイヤモンド粒子1
17の鋭い角部と前記受板103の誘電体層104の間
で高エネルギーのコロナ放電が発生する。その結果、同
図14に示すように前記多数の合成ダイヤモンド粒子1
17が食い込まれることにより前記長尺有機系フィルム
122に形成された凹部125の底部に位置する残存薄
膜部127にコロナ128が主に集中して照射されて穿
孔がなされるため、前記残存薄膜部127に前記凹部1
25の開口幅より小さい径の貫通孔が形成される。ま
た、前記長尺有機系フィルム122に穿孔された多数の
凹部125の内面および前記貫通孔の内面が前記コロナ
放電により親和化処理される。
【0111】以上のような本実施例9の方法において、
前記受板103と前記プレス機構110間で加圧された
前記エラストマーからなる長尺有機系フィルム部分を切
出して得られた多孔質エラストマーフィルム(寸法;2
00mm×200mm)129は、図15に示すように
厚さ30μmのエラストマーフィルム122に平均開口
幅が約30μmの逆円錐形状をなす凹部125が10,
000個/cm2 の密度で多数かつ一様に穿孔され、か
つ前記各凹部125の底部に位置する平均厚さが約5μ
mの残存薄膜部127に平均径3μmの円柱状をなす貫
通孔130が形成されていた。また、前記凹部125内
面および前記貫通孔130の内面はそれぞれ親和性を示
していた。
【0112】実施例9により得られた多孔質エラストマ
ーフィルムの水蒸気透過量を測定した。その結果、20
00g/m2 ・24hr・40℃・90%RHであり、
前記実施例9で使用した未処理のエラストマーフィルム
(水蒸気透過量;300g/m2 ・24hr・40℃・
90%RH)に比べて水蒸気透過量が著しく増大されて
いた。このような高い水蒸気透過量を有する前記多孔質
エラストマーフィルムは、発汗防止はっぷ剤のベースフ
ィルムを始めとする医療素材に利用することができた。
【0113】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば有
機系フィルム素材本来の性質(例えば透明性、ソフト
感、強度等)を保持すると共に、良好な濡れ性、酸素ガ
ス、炭酸ガスなどのガスの透過量、水蒸気透過量が制御
され、塗布膜形成用ベースフィルム、各種のガスフィル
タ、医療素材、青果物鮮度保持用包装材などの機能性フ
ィルムとして有用な多孔質フィルムを提供できる。ま
た、本発明によれば前記多孔質フィルムを簡単かつ量産
的に製造し得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1〜7の多孔質フィルムを製造
するための製造装置を示す正面図。
【図2】図1の製造装置の要部を示す側面図。
【図3】図2の III− III線に沿う断面図。
【図4】実施例1において長尺有機系フィルムに穿孔お
よびコロナ放電を施す工程を示す要部拡大断面図。
【図5】実施例1により得られた長尺多孔質OPPフィ
ルムを示す拡大断面図。
【図6】実施例4において長尺有機系フィルムに穿孔お
よびコロナ放電を施す工程を示す要部拡大断面図。
【図7】実施例4により得られた長尺多孔質OPPフィ
ルムを示す拡大断面図。
【図8】本発明の実施例8、9の多孔質フィルムを製造
するための製造装置を示す概略断面図。
【図9】図8の製造装置に組み込まれるプレス機構の電
極体を下面側から見た斜視図。
【図10】図8の製造装置に用いられるプレス機構を示
す斜視図。
【図11】図10のプレス機構における高電圧供給端子
付近の拡大断面図。
【図12】実施例8において長尺有機系フィルムに穿孔
およびコロナ放電を施す工程を示す要部拡大断面図。
【図13】実施例8により得られた多孔質積層フィルム
を示す拡大断面図。
【図14】実施例9において長尺有機系フィルムに穿孔
およびコロナ放電を施す工程を示す要部拡大断面図。
【図15】実施例9により得られた多孔質エラストマー
フィルムを示す拡大断面図。
【符号の説明】
1…ベッド、7…第1ボックス、8…絶縁環体、9…第
1ロール、10、117…合成ダイヤモンド粒子、15
…第2ボックス、16…第2ロール、17、25…誘電
体層、23…第3ボックス、24…第3ロール、29…
穿孔用ユニット、32、120…絶縁筒体、34、12
1…高電圧供給端子、42、57…コイルバネ、46、
61…ボールスクリュー、48、63…ハンドル、4
9、64…圧力調節手段、65、122…長尺有機系フ
ィル、67…静電除去手段、70、125…凹部、7
1、74、126、129…多孔質フィルム、72、1
25…残存薄膜部、75、130…貫通孔、101…基
台、103…受板、107…エアーシリンダ、110…
プレス機構、116…電極体。

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機系フィルムと、前記有機系フィルム
    に多数形成され、微細な開口幅を有し、かつ内面が親和
    性を示す凹部とを具備したことを特徴とする多孔質フィ
    ルム。
  2. 【請求項2】 前記有機系フィルムは、5μm〜3mm
    の厚さを有することを特徴とする請求項1記載の多孔質
    フィルム。
  3. 【請求項3】 前記凹部は、0.5〜300μmの平均
    開口幅を有することを特徴とする請求項1記載の多孔質
    フィルム。
  4. 【請求項4】 前記凹部は、前記有機系フィルムに1c
    2 当たり500〜200,000個形成されているこ
    とを特徴とする請求項1記載の多孔質フィルム。
  5. 【請求項5】 前記凹部底部に位置する前記有機系フィ
    ルムの残存薄膜部の厚さは、10μm以下であることを
    特徴とする請求項1記載の多孔質フィルム。
  6. 【請求項6】 鋭い角部を有する多数のモース硬度5以
    上の誘電体粒子が表面に付着された第1ロールと表面に
    誘電体層が被覆された第2ロールとを対向配置する工
    程;前記第1、第2のロールを互いに反対方向に回転さ
    せ、前記第1、第2のロール間に長尺有機系フィルムを
    通過させると共に、前記各ロール間を通過する前記長尺
    有機系フィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフ
    ィルム面全体に亘って均一となるように調節し、同時に
    前記第1ロールに高電圧を供給することにより、前記第
    1ロール表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部を前記長尺
    有機系フィルムに喰い込ませて多数の微細な開口幅を有
    する凹部を形成すると共に、前記第1ロール表面の多数
    の誘電体粒子の鋭い角部と前記第2ロールの間でコロナ
    放電を発生させて前記誘電体粒子の鋭い角部が食い込ま
    れた前記凹部内面を親和化処理する工程;を具備した多
    孔質フィルムの製造方法。
  7. 【請求項7】 有機系フィルムと、前記有機系フィルム
    に多数形成され、微細な開口幅を有し、かつ内面が親和
    性を示す凹部と、前記凹部底部に位置する前記フィルム
    の残存薄膜部に形成され、前記開口幅に比べて小さい径
    を有し、かつ内面が親和性を示す貫通孔とを具備したこ
    とを特徴とする多孔質フィルム。
  8. 【請求項8】 前記有機系フィルムは、1μm〜10m
    mの厚さを有することを特徴とする請求項7記載の多孔
    質フィルム。
  9. 【請求項9】 前記凹部は、5〜300μmの平均開口
    幅を有することを特徴とする請求項7記載の多孔質フィ
    ルム。
  10. 【請求項10】 前記凹部は、前記有機系フィルムに1
    cm2 当たり500〜200,000個形成されている
    ことを特徴とする請求項7記載の多孔質フィルム。
  11. 【請求項11】 前記貫通孔は、円柱形状を有すること
    を特徴とする請求項7記載の多孔質フィルム。
  12. 【請求項12】 前記貫通孔の平均径は、0.05〜2
    0μmであることを特徴とする請求項7記載の多孔質フ
    ィルム。
  13. 【請求項13】 鋭い角部を有する多数のモース硬度5
    以上の誘電体粒子が表面に付着された第1ロールと表面
    に誘電体層が被覆された第2ロールとを対向配置する工
    程;前記第1、第2のロールを互いに反対方向に回転さ
    せ、前記第1、第2のロール間に長尺有機系フィルムを
    通過させると共に、前記各ロール間を通過する前記長尺
    有機系フィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフ
    ィルム面全体に亘って均一となるように調節し、同時に
    前記第1ロールに高電圧を供給することにより、前記第
    1ロール表面の多数の誘電体粒子の鋭い角部を前記長尺
    有機系フィルムに喰い込ませて多数の微細な開口幅を有
    する凹部を形成すると共に、前記第1ロール表面の多数
    の誘電体粒子の鋭い角部と前記第2ロールの間でコロナ
    放電を発生させて前記誘電体粒子の鋭い角部が食い込ま
    れた前記凹部内面を親和化処理し、同時に前記凹部底部
    に位置する前記フィルムの残存薄膜部を前記コロナで穿
    孔して内面が親和化処理された前記開口幅に比べて小さ
    い径を有する貫通孔を形成する工程;を具備した多孔質
    フィルムの製造方法。
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