JP2531701B2 - 分散強化型銅合金の製造方法 - Google Patents

分散強化型銅合金の製造方法

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【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は、導電率、強度、耐熱性の優れた分散強化型
銅合金の製造方法に関する。
(従来技術) 銅マトリックス中に酸化アルミニウムなどの硬質粒子
を分散させた分散強化型銅合金は、導電率が大きく、常
温および高温における強度が優れており、また焼鈍して
も軟化しないなどの特長を持つことが知られている。こ
のため、スポット溶接用の電極、リードフレーム、高温
用コイルなどに賞用されている。
この合金の分散強化の機構は、マトリックス中に分散
した微粒子が転位の移動を阻止することにより強化する
ものであるから、微細な粒子を均一に分散させること
が、常温および高温での強度を高める上で重要なポイン
トとなる。
従来の分散強化型銅合金の製造方法の一つとして、銅
粉末と微細な酸化アルミニウム等の硬質の分散粒子とを
混合し、この混合物を焼結する方法がある。しかし銅の
比重が8.94であるのに対し、酸化アルミニウムの比重は
3.3〜3.9程度であり、両者の比重差が大きいため両者を
均一に混合することが難しい。また銅は、軟質金属であ
るため、ボールミルなどを使用して混合すると薄く伸び
やすく、分散粒子が層状に偏在して微細かつ均一な分散
が困難となる。この結果、所望の強度や耐熱性を得るこ
とができない。
従来の別の方法として、内部酸化による方法が知られ
ている。この方法は、銅中にアルミニウムを固溶させた
合金粉末を酸素雰囲気中で加熱して表面を酸化させ、つ
いでこれを密閉容器に封入して加熱して表面の酸素を内
部に拡散させて酸化アルミニウムを銅粉末の内部に生成
させ、もって酸化アルミニウムを分散させた合金を得る
方法である。しかしこの方法は、粉末表面の酸素を内部
に拡散させるため拡散に長時間を必要とする欠点があ
り、そのプロセスも相当複雑なものとなる。また焼成後
に、銅マトリックス中に固溶したアルミニウムが少量な
がら残留するのを避けることが困難である。この結果、
残留アルミニウムにより銅合金の導電率が低下してしま
う。またこの内部酸化法では、当然ながら硬質の分散粒
子は酸化物に限定される。
また特開昭62−93321号は、母相となる金属酸化物
に、この酸化物より生成自由エネルギー的に十分安定し
た酸化物を混合して高エネルギーミルにより混練した
後、ガスまたは真空中で還元分解反応処理をおこなう粒
子分散型合金素材の製造方法を開示している。しかし、
この方法では、合金素材の表面のみが先に還元されてち
密化し、内部まで十分還元されずに酸化物が内部に残留
する可能性が高く、二次加工時に割れが発生しやすい。
また内部まで均一に還元させるために還元ガスの分圧を
下げると、還元に長時間を必要とするなどの欠点があ
る。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため
になされたもので、種々の分散粒子を微細かつ均一に分
散させ、導電率、強度、および耐熱性を兼ね備えた分散
強化型銅合金を容易に製造する方法を提供しようとする
ものである。
[発明の構成] (問題点を解決するための手段) 本発明は、銅マトリックス中に分散粒子を分散させた
分散強化型銅合金の製造方法において、マトリックスと
なる銅の原料である酸化銅粉末と、マトリックス中に分
散させる分散粒子と、酸化銅粉末を還元するに化学量論
的に必要な1当量に対して0.9〜1.15当量の炭素粉末を
添加混合し、この混合物を成形、焼結し、この焼結時に
酸化銅粉末を炭素粉末で還元して同マトリックス中に分
散粒子を分散させた分散強化型銅合金の製造方法であ
る。
本発明では、まずマトリックス原料となる酸化銅と、
分散粒子と、炭素粉末を用意する。酸化銅には、酸化第
一銅(Cu2O)と酸化第二銅(CuO)とが挙げられる。酸
化銅の粉末は、微細かつ均一に分散させるために5μm
以下、とくに1μm以下が好ましい。分散粒子は、焼結
あるいはホットプレス温度で炭素により還元されない粒
子であれば、特に制限されない。例えば、酸化アルミニ
ウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化トリウム、
酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化
クロム、酸化マンガン、酸化バナジウムなどの酸化物、
窒化アルミニウム、窒化チタニウム、窒化珪素、窒化ホ
ウ素、炭化チタニウム、炭化ホウ素、ホウ化チタニウム
などが挙げられる。これら分散粒子は、1種のみならず
2種以上の組合せでもよい。分散粒子の混合割合は、少
なすぎると合金の強度と耐熱性が得られず、多すぎると
導電率の低下が大きくなり、また二次加工が困難となる
ため、還元後の合金中に0.5体積%〜10体積%含まれる
ようにするのが好適である。分散粒子の粒径は、微細か
つ均一に分散させるために、1μm以下とくに0.05μm
以下が好適である。
炭素粉末の添加量は、酸化銅を化学量論的に還元する
に必要とされる量を1.0当量とすると、0.9〜1.1当量の
範囲とする。この範囲に限定した理由は、下限の当量未
満では、酸化銅を十分還元することができず、この結果
マトリックス中に酸化銅が残留し、合金の導電率が低下
するためである。また上限を越えるとマトリックス中に
炭素が残留し、二次加工時に割れが発生しやすいためで
ある。炭素粉末の粒度は、本発明ではとくに問題とはな
らない。炭素粉末は柔らかいため、混合時に容易に粉砕
され、銅粉末粒子の表面に均一に付着するためである。
ついで、これら酸化銅、分散粒子および炭素粉末を混
合する。混合方法は、ボールミル、アトライターなど公
知の混合装置を使用することができるが、容器およびボ
ールは非金属性であることが望ましい。金属性の場合、
混合物中に金属が混入して得られる合金の導電性を著し
く低下させるおそれがあるためである。
この混合物は、成形後還元雰囲気中で焼結され、この
ことにより焼結と同時に炭素粉末による酸化銅の還元が
おこなわれる。本発明では、混合粉末にホットプレスを
施すことによっても同様の結果が得られる。
(作用) この方法によれば、出発原料として比重の高い銅(比
重8.94)の代わりに比重の低い酸化銅(Cu2の比重6.04,
CuOの比重6.4)を使用しているので、分散粒子、たとえ
ば酸化アルミニウム(比重3.3〜3.9)や酸化ジルコニウ
ム(比重5.56)などと比較してその比重差が小さくな
る。この結果、両者の混合を均一におこなうことができ
る。さらに酸化銅は脆いので、容易に粉砕されて微粉末
となるので、酸化銅粉末と分散粒子とを微細かつ均一に
分散させることができる。またこれら粉末とともに混合
した炭素粉末も均一に分散されており、この混合物を真
空または還元性雰囲気で加熱すると、酸化銅は約300℃
から還元が開始し、同時に焼結が進行する。還元は800
℃付近で完了するが、必要によりさらに昇温することも
可能である。還元されたばかりの銅粉末は著しく活性で
あるため、850℃の焼結温度でも短時間(例えば30分)
で十分焼結する。成形と焼結を同時におこなうホットプ
レスの場合は、さらに低温の800℃でも十分成形され
る。
このようにして製造された分散強化型銅合金は、圧
延、押出し、加工等の二次加工により、用途に応じた種
々の形状の製品を得ることができる。この合金は、極め
て微細な分散粒子が均一に分散しているので、高い強度
および耐熱性を有している。また分散粒子が微細かつ均
一に分散しているため、少ない分散粒子で合金の強度、
耐熱性の向上を達成でき、この結果分散粒子の添加量を
相対的に少なくでき、合金の導電率の向上を図ることが
できる。
(実施例) 以下本発明の実施例を詳細に説明する。
実施例1 出発原料として酸化第二銅(CuO)粉末を使用した例 酸化第二銅(CuO)粉末220gに、分散粒子として平均
粒径0.05μmのAl2O3粉末1.95gと、還元剤として平均粒
径12μmの炭素粉末17.1gとをアルミナ製6インチボー
ルミルで2日間混合した。この場合、アルミナ粒子の体
積率は還元後の合金に換算して3%であり、また炭素の
添加量は化学量論的に還元に必要とされる量を1.0当量
として、1.03当量添加したことになる。
この混合物を内径40mmφの黒鉛型に挿入し真空ホット
プレスを用いて、100kg/cm2の圧力をかけながら、500℃
/時間の昇温速度で加熱した。約300℃から真空度が10
-1torrに低下しはじめ、反応が進行した。約700℃から
真空度が10-5torrに高まり、反応が完了した。さらに85
0℃まで加熱し200kg/cm2の圧力をかけて30分保持した後
冷却した。得られた試料の導電率は91%IACS、ピッカー
ス硬度は153、密度は8.75g/cc(密度比99.7%)であっ
た。この試料を700℃で1時間焼鈍しても硬度は全く変
化しなかった。さらにこの試料から板状試料10×10×30
mmを切り出し、圧下率70%の冷間圧延加工をおこなっ
た。この結果、試料の導電率は85%、IACSビッカース硬
度は190であった。これを700℃で1時間焼鈍したとこ
ろ、硬度は全く変わらず、導電率は86%となった。さら
に1000℃で1時間焼鈍したところ、硬度は182となり、
導電率は88%となった。以上の結果から、本発明に係わ
る分散強化型銅合金は、優れた導電率と硬度、耐熱性を
兼ね備えていることが分かる。
比較例1 出発原料として銅を使用した例 粒度−325メッシュの電解銅粉末176gと平均粒径0.05
μmのAl2O3粉末1.95gをアルミナ製ボールミルで4日間
混合した。この場合、アルミナ分散粒子の体積率は実施
例1の場合と同様に、還元された合金に対して3%とな
る。この混合物を内径40mmの黒鉛型に挿入し、実施例1
同じ方法でホットプレスした。得られた試料の導電率は
88%IACS、ビッカース硬度は74、密度は8.76g/cc(密度
比99.9%)であった。これを700℃で1時間焼鈍する
と、硬度は62に低下し、耐熱性が低いことが分った。
実施例2 分散粒子の体積割合による導電率および硬度の変化を
調べた例 分散粒子の種類と含有体積率のみを変化させて、実施
例1と同じ方法で分散強化型銅合金を製造し、圧下率70
%冷間圧延後の導電率とビッカース硬度を測定した。さ
らに1000℃で1時間焼鈍後のビッカース硬度も測定し
た。その結果を表1に示す。
表1から、硬度はあまり必要とせず導電率が要求され
る用途には、分散粒子の体積率が0.5%未満でもよく、
また導電率はさほど必要とされず硬度を必要とする用途
には、分散粒子の体積率が10%を越えてもよいが、両特
性を兼ね備えるためには、0.5〜10%の体積率のものが
よいことがわかる。
実施例3 炭素当量を本発明範囲内のものとした場合と、範囲外
のものとした場合の導電率、密度圧延時の割れの有無に
ついて調べた例。
本発明範囲内の炭素当量の炭素粉末(試料番号12〜1
6)と本発明の範囲外の炭素当量の炭素粉末(試料番号1
1および17)を用意し、この炭素粉末と酸化銅と分散粉
末を実施例1と同じ方法で混合し、この混合物をホット
プレスし、数種の試料を得、その導電率と密度比とを測
定した。さらに圧下率70%の圧延をおこなって、割れの
有無を調べた。その結果を表2に示す。
表2から炭素当量が0.9未満のものは、還元が不十分
で、導電率と密度が著しく低下しており、圧延時の割れ
も生じ、炭素当量が1.15を越えるものは、導電率と密度
の低下はそれほど大きくはないが、圧延時に割れが生じ
た。したがって、炭素当量が0.9〜1.15のものがよいこ
とが分る。
実施例4 出発原料として酸化第一銅(Cu2O)を使用した例 酸化第一銅(Cu2O)粉末2000gに、分散粒子として平
均粒径0.05μmのAl2O3粉末19.7gと、還元剤として平均
粒径12μmの炭素粉末88.1gとを粒径約5mmのアルミナ製
ボールを用いてアトライターで10時間混合した。この場
合アルミナ分散粒子の体積率は、還元後の合金中におい
て3%となり、また炭素の添加量は、化学量論的に還元
に必要とされる量を1.0当量として1.05当量添加したこ
とになる。この混合物を内径80mmφの金型を用いて2ton
/cm2の圧力で成形した。この成形体を水素炉中で500℃
/時間の昇温速度で加熱し、900℃にて30分焼結した。
焼結密度は8.07g/cc(密度比92%)であった。この焼結
体を700℃にて押出し比約20で熱間押出し加工し、15mm
φの丸棒を得た。この丸棒の密度は99.5%であり、導電
率は84%IACSであった。ビッカース硬度は179であっ
た。これを1000℃で1時間焼鈍したところ、硬度は17
1、導電率は85%IACSとなった。
[発明の効果] 以上詳述したように、本発明によれば、出発原料とし
て酸化銅を使用し、かつその還元剤として炭素粉末を使
用したので、混合物を焼結することにより同時に還元が
進行し、従来の内部酸化法のような複雑なプロセスを必
要としない。しかも、種々の分散粒子を極めて微細かつ
均一に分散させることができ、この結果、導電率、強
度、耐熱性を兼ね備えた分散強化型銅合金を製造するこ
とができる。このような優れた特性は、多くの分野から
期待されているところであり、その工業的価値は極めて
大きい。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銅マトリックス中に分散粒子を分散させた
    分散強化型銅合金の製造方法において、マトリックスと
    なる銅の原料である酸化銅粉末と、マトリックス中に分
    散させる分散粒子と、酸化銅粉末を還元するに化学量論
    的に必要な1当量に対して0.9〜1.15当量の炭素粉末と
    を添加混合し、この混合物を成形、焼結し、この焼結時
    に酸化銅粉末を炭素粉末で還元して銅マトリックス中に
    分散粒子を分散させる分散強化型銅合金の製造方法。
  2. 【請求項2】分散粒子は、酸化アルミニウム、酸化ジル
    コニウム、酸化チタニウム、酸化珪素、酸化マグネシウ
    ム、酸化イットリウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸
    化バナジウム、窒化アルミニウム、窒化チタニウム、窒
    化珪素、窒化ホウ素、炭化チタニウム、炭化ホウ素、ホ
    ウ化チタニウムの群から選択された1種または2種以上
    の粒子を、銅還元後の合金中に0.5〜10体積%含まれる
    ように添加されることを特徴とする特許請求の範囲第1
    項記載の分散強化型銅合金の製造方法。
  3. 【請求項3】成形と焼結をホットプレスにより同時にお
    こなう特許請求の範囲第1項記載の分散強化型銅合金の
    製造方法。
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