JP2530909Y2 - 溶融めっきのエッジオーバーコート防止装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、連続溶融亜鉛メッキ、
連続溶融アルミニウムメッキ等の溶融メッキ設備におい
て、鋼帯エッジ部のメッキ付着量が鋼帯中央部より多く
なるエッジオーバーコートを防止する装置に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】近年、防錆鋼板としての溶融亜鉛めっき
鋼板の需要増に伴い連続溶融めっき設備では、生産性の
向上およびコスト低減を目的として高速化、自動化およ
び薄目付化が要求されるとともに、めっき厚さの均一
化、美麗化が要求されている。通常、連続溶融メッキに
おけるめっき付着量の制御は、メッキ浴から引き上げら
れたストリップに向けて、鋼帯の表裏面にそれぞれ対向
して設置された２つのワイピングノズルからワイピング
ガスを吹き付けることにより行われているが、前記ワイ
ピングノズルから噴射されたガスは、ストリップエッジ
部近傍で衝突しガスの乱流を起こし、鋼帯エッジ部での
溶融金属の絞り力を低下させるため、ストリップエッジ
部に過剰な溶融金属が付着するいわゆるエッジオーバー
コートを発生させる。さらに、前記ワイピングガスの乱
流現象は高速通板時のスプラッシュ飛散などの原因とも
なっている。

【０００３】前記エッジオーバーコートは、めっき直後
に行われる加熱合金化処理においては、エッジ部の過剰
めっきにより合金化が遅れるエッジ部未処理や、ゼロス
パングル処理におけるエッジ部のスパングル残りの原因
になるとともに、コイル巻取り時のビルトアップの原因
ともなっている。

【０００４】従来より、かかるエッジオーバーコートを
防止し、表面を美麗化するために種々の防止対策が採ら
れてきた。たとえば、第１の装置としては、図７に示さ
れるように、ワイピングノズル５１のスリットギャップ
５２において、ストリット５０の幅より若干狭い位置よ
りノズルの両端に向かって漸次スリットギャップを大き
くし、スリットエッジ部に衝突するワイピングジェット
の動圧を大きくした装置がある。また、第２の装置とし
ては、たとえば特開昭６３−１５３２５４号公報に開示
される補助ノズルを設けた装置がある。この補助ノズル
付設装置は、図８に示されるように、ワイピングノズル
５３の上部であって、ストリップ５０のエッジ部の両側
にノズル幅方向に移動可能な補助ノズル５４、５４を設
けることによってストリップエッジ部における絞り力を
増加させたものである。さらに、第３の装置としては、
特開平２−３８５５１号公報に開示されるストリップエ
ッジ部の３方向を覆い材にて囲繞した装置がある。この
装置は、図９に示されるように、ストリップ５０面上の
ワイピングガス外向きの偏流流れを、エッジ覆い材５５
にて抑制し、表面張力によってエッジ部に過剰に付着し
た溶融金属を低減するものである。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、先ず第
１の装置の場合には、ストリップの幅が変わると、スト
リップのエッジ部にあたるワイピングノズルのスリット
ギャップの位置が異なるため、ストリップの幅方向の付
着量分布が不均一になり、エッジ部のオーバーコートを
充分に防止できない場合がある。また、ワイピングノズ
ル両端のスリットギャップが広く、ガス噴射量も多いた
め、スプラッシュの発生が著しく美麗化を図れないとと
もに、ワイピングノズルの汚染のために、ノズルの手入
れによる生産性の低下および品質の低下を招き、さらに
は騒音が激しいなどの問題点がある。第２の装置の場合
には、ストリップの幅変わりや蛇行に対しては追従機構
を備えた補助ノズルであればストリップの幅方向の付着
量分布を均一にすることができるが、第１の方法と同様
にスプラッシュの飛散と騒音については以前として問題
が残る。第３の装置の場合には、スプラッシュや騒音の
問題はかなり改善され、ストリップの幅変わりや蛇行に
対しては追従機構を備えることで対処し得るが、板厚が
薄く、目付量の少ないめっき鋼板の製造に際しては、ワ
イピングガスにより溶融金属が急激に冷やされるため
に、凝固が早く、期待する程の効果が上げられない場合
があった。また、パスラインの高速化によるスプラッシ
ュ飛散の増加に伴って、エッジ覆い材によりスプラッシ
ュの巻き込みが起こり、ストリップを汚す場合があっ
た。

【０００６】そこで本考案の主たる目的は、エッジオー
バーコートおよびスプラッシュを防止し、めっき厚の均
一化および表面の美麗化を図るとともに、前述した問題
を解決し、特に薄目付量のめっき鋼板の製造に有効なエ
ッジオーバーコート防止装置を提供するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記課題は、溶融めっき
鋼板を製造する際のストリップエッジ部のオーバーコー
ト防止装置であって、ワイピングノズルの略スリット位
置より搬送方向パスラインに沿って所要長さを有し、か
つストリップのエッジ部のみの三方向を囲繞するエッジ
覆い材と、このエッジ覆い材のストリップ幅方向への追
従機構とを具備してなる溶融めっきのエッジオーバーコ
ート防止装置において、前記エッジ覆い材を加熱式とし
たことで解決できる。

【０００８】

【作用】本考案者等は、従来技術に関し、各種の検討を
行った結果、前記特開平２−３８５５１号公報に開示さ
れるストリップエッジ部の３方向を覆い材にて囲繞し、
ワイピングガス流れの外向きの偏流を防止することが、
エッジオーバーコートを防止する上で、最も有効である
ことを知見した。しかし、この方法の場合にも、前述し
たように、特に薄板厚の薄目付量のめっき鋼板の場合
に、ワイピングガスのよってストリップおよび付着めっ
きが急激に冷却されてしまい、溶融金属の凝固により、
めっき厚さの均一化にも一定の限界があった。

【０００９】本考案者等は、より高いめっき厚の均一
化、美麗化を図るために、種々の検討を行った結果、前
記エッジ覆い材を加熱式とすることで、この問題を有効
的に解決し得ることを見出した。すなわち、エッジ部に
過剰に付着しためっき金属は、エッジ覆い材からの熱に
より流動性を増すため、ワイピングガスにより払拭され
均一厚さに付着することとなる。また、エッジ部に付着
したスプラッシュは、熱により再溶融されるため、スト
リップを汚すことが無くなる。さらに、エッジ部はめっ
き厚が均一になり、また加熱された状態で、合金化炉等
に送られるため、エッジ部の合金化未処理およびスパン
グル残りなどもなくなる。

【００１０】本考案装置は、特に板厚０．８mm以下、め
っき目付量１３０g/m²以下のめっき鋼板の製造に際し、
特に顕著な効果を奏する。

【００１１】

【実施例】以下、本考案を具体例に基づき詳説する。図
１において、ストリップ１は、図示されない溶融めっき
金属浴中に浸漬された後、一定の速度で上方に引き上げ
られた後、ストリップ１の表裏側にそれぞれ配設された
一対のワイピングノズル２、２からのガスジェットによ
り過剰に付着した溶融めっき金属が絞り取られ一定のめ
っき厚に制御される。ワイピングノズル２のスリット位
置の上方には、図２の横断面図にも示されるように、搬
送方向パスラインに沿って所要長さを有し、かつストリ
ップ１のエッジ部の三方向を囲繞する横断面コ字状のエ
ッジ覆い材１０が配設されている。なお、前記エッジ覆
い材１０の断面形状は、コ字状に限定されるものではな
く、たとえばＵ字状、π字状であってもよい。前記エッ
ジ覆い材１０をストリップ１のエッジ部に配設すること
により、図６に示されるように、ストリップ１の幅方向
外側に流れるガス流に対する抵抗材となり、ガス流をス
トリップ１の搬送方向と平行にすることができ、もって
溶融めっき金属がエッジ側へ流動するのを防止し、めっ
き厚の偏りを防止することができる。前記エッジ覆い材
１０のストリップ１の表裏側を覆うフランジ部には、ラ
イン方向に沿って誘導コイル１０ａ、１０ａ…が複数配
設されている。この誘導コイル１０ａ群により磁界を発
生させ、生起する誘導電流によりストリップ１のエッジ
部分を加熱している。なお、加熱温度は４００〜５００
℃の範囲とされる。前記誘導加熱方式によれば、均一に
ストリップ１を加熱できる点、加熱効率が高い点、応答
性が良い点および操作が簡便な点において優れるが、電
熱線による赤外ヒーター方式等、他の加熱方式を採用す
ることもできる。前記エッジ覆い材１０の材質として
は、特に限定されないが、防錆上の点よりステンレス材
とするのがよい。また、寸法は図２において、幅Ｓ₁ ；
１０〜８０mm、好ましくは２０〜５０mm程度、辺長
Ｓ₂ ；３０〜３００mm、好ましくは５０〜１５０mm程
度、長さ；３００〜３０００mm、好ましくは５００〜２
０００mm程度とされる。

【００１２】また、前記エッジ覆い材１０の背面には、
仕切りプレート１１が固着されている。この仕切りプレ
ート１１により、前記エッジ覆い材１０の補強が成さ
れ、高圧のガスジェットを受けても振動しないようにな
っている。また、ストリップ１の表裏側のガスジェット
が相互に干渉しないようになるため、騒音が防止される
他、エッジプレートとして機能を果たすため、エッジオ
ーバーコートの防止が助長される、などの効果がもたら
される。

【００１３】次に、前記エッジ覆い材１０のストリップ
１に対する追従機構について詳説する。ストリップ１の
表裏側に、ストリップ幅方向に沿う２本のガイドレール
８、８が配設され、このガイドレール８、８上を走行す
る走行体７、７を介して、前記エッジ覆い材１０を吊持
する移動ブロック４が跨設されている。前記ガイドレー
ル８および走行体７の組み合わせとしては、たとえば公
知のＬＭガイド（ＴＨＫ社製）などを好適に用いること
ができる。前記ガイドレール８、８には、使用環境を考
慮し、スライド性の維持のために走行体７、７以外の部
分を包囲する蛇腹の耐熱性レールカバー８ａを設けるの
が望ましい。前記移動ブロック４のストリップ１側面に
は、ストリップ１のエッジと当接する接触ローラー９が
固設されており、ストリップ１の走行ガイドとともに、
この接触ローラー９により前記エッジ覆い材１０とスト
リップエッジとの離間が調節されるようになっている。
また、前記走行体７の一方側には、コプリング用ローラ
ー６が取付けられ、このコプリング用ローラー６に巻か
れたコプリング５の他端が、図示されない一方のエッジ
オーバーコート防止装置のコプリング用ローラーと連結
されることにより、ストリップ１に対する一定の押圧力
を確保している。前記コプリング５は、ＯＮＫ（大阪熱
処理株式会社）社製の定荷重用の板バネであり、図３に
示されるように、ローラー６に密着渦巻状に巻かれた薄
板バネの他端を離間した位置に固定した状態で、その離
間距離Ｌを変化させても、図４に示されるように、伸び
にかかわらず一定荷重を作用させることができるため、
たとえばストリップ１の板幅に変化があっても、前記移
動ブロック４のストリップ１に対する押圧力を一定に保
持することができる。なお、前記コプリング５に代えて
ゼンマイおよび線巻バネ等を使用することもできるが、
図４に示されるように、ゼンマイおよび線巻バネは、伸
びの増加に伴って荷重が増加するため、押圧力は逐次変
化することとなる。

【００１４】前記走行体７、７の他方側は、主にストリ
ップ１の板幅急変による緊急退避用のために、連結材１
５を介して並設されたロッドレスシリンダー１２と連結
されている。このロッドレスシリンダー１２は、エアシ
リンダーの一種で、詳細には図５に示されるように、中
空のシリンダーボックス内部に移動自在の仕切り板１３
が収容されており、この仕切り板１３が、両端に設けら
れたエア吸入孔１２ａ、１２ｂからのエアの出し入れに
より移動し、この仕切り板１３の移動に伴って、シリン
ダーボックス外部に設けられた磁石板１４が左右に移動
するものである。したがって、この磁石板１４と前記連
結材１５を介して連結されている走行体７を、ひいては
エッジ覆い材１０をストリップ１から自由に離隔させる
ことができるようになっている。

【００１５】なお、前記移動ブロック４の上面側に固着
さてた把手３は、ワイピングノズル２の交換時にオーバ
ーコート防止装置を取外すためのものである。

【００１６】〔実施例〕 溶融亜鉛メッキ製造設備に、図１に示す本考案エッジオ
ーバーコート防止装置を付設して亜鉛めっき鋼板の製造
を行った。本実施例では、エッジ覆い材１０の寸法は幅
Ｓ₁ ；５０mm、辺長Ｓ₂ ；１００mm、長さ；６００mmと
し、ストリップ１との隙間は５mmとなるように設置し
た。上記条件の下で、ＧＩ処理（ゼロスパングル処
理）、ＧＡ処理（合金化処理）の亜鉛メッキ鋼板に対
し、ライン速度、ワイピングノズル圧力および開度、ス
トリップ寸法、両面目付量を種々変えながらめっきを施
し、エッジオーバーコートの状況（エッジ部目付／中央
部目付）を調査した。なお、従来例としては、図−７に
示される、ノズルのスリットギャップをノズル両端に向
かって大きくしたエッジオーバーコート防止装置によ
り、亜鉛めっき鋼板を製造した場合について示す。これ
らの結果を表１に示す。

【００１７】

【表１】

【００１８】表１より、本考案装置によれば、たとえ板
厚が薄く、めっき目付量の少ないめっき鋼板であって
も、めっき付着量が全体に渡って均一化し、エッジオー
バーコート現象が低減されていることが判明される。ま
た、外観上もエッジ部の形成されるサザ波が消失し、ス
プラッシュの飛散による表面汚れも無くなった。また、
亜鉛めっきの密着性についても、１８０°曲げ後のテー
プ剥離を行った結果、本考案と従来例とに品質の差異は
認められなかった。

【００１９】

【考案の効果】以上詳説のとおり、本考案によれば、特
に薄鋼板、薄めっきのめっき鋼板の場合であっても、エ
ッジオーバーコートおよびスプラッシュを防止し、めっ
き付着量の均一化および表面の美麗化を図ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案エッジオーバーコート装置の斜視図であ
る。

【図２】図１のII−II線矢視図である。

【図３】コプリングの拡大図である。

【図４】コプリングの荷重−伸び曲線図である。

【図５】ロッドレスシリンダーの拡大図である。

【図６】エッジ覆い材の作用説明図である。

【図７】第１の従来装置の斜視図である。

【図８】第２の従来装置の斜視図である。

【図９】第３の従来装置の斜視図である。

【符号の説明】

１…ストリップ、２…ワイピングノズル、３…把手、４
…移動ブロック、５…コプリング、６…コプリング用ロ
ーラー、７…走行体、８…ガイドローラー、１０…エッ
ジ覆い材、１１…仕切りプレート、１２…ロッドレスシ
リンダー

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】溶融めっき鋼板を製造する際のストリップ
   エッジ部のオーバーコート防止装置であって、ワイピン
   グノズルの略スリット位置より搬送方向パスラインに沿
   って所要長さを有し、かつストリップのエッジ部のみの
   三方向を囲繞するエッジ覆い材と、このエッジ覆い材の
   ストリップ幅方向への追従機構とを具備してなる溶融め
   っきのエッジオーバーコート防止装置において、 前記エッジ覆い材を加熱式としたことを特徴とする溶融
   めっきのエッジオーバーコート防止装置。
2. 【請求項２】エッジ覆い材の加熱は、誘導加熱または赤
   外ヒーターである請求項１記載のエッジオーバーコート
   防止装置。
3. 【請求項３】エッジ覆い材の背面に、実質的にストリッ
   プ面と同一平面を形成する仕切りプレートを固着した請
   求項１記載のエッジオーバーコート防止装置。