JP2526833B2 - 遮光羽根用板材 - Google Patents

遮光羽根用板材

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、カメラのフォーカルプレンシャッターやレ
ンズシャッターのシャッター羽根または絞り羽根のよう
に、高速で運動する事が要求される遮光羽根用の板材に
関する。
〔従来の技術〕
上記の如き遮光羽根は、作動力量を小さくし、かつ曲
げ剛性も十分に保ちながら高速に作動させることが望ま
しい。
そのためには軽量、高強度高弾性の遮光羽根が必要と
なる。
本発明者は、以前より、一方向に揃えられた炭素繊維
で強化された強化樹脂シート（以下、単にCFRPと略す）
に着目し、その繊維方向を互いに直交又はほぼ直交する
ように複数枚積層させて構成した遮光羽根用板材が、重
量、強度、製造の簡便さの点から、高速走行可能な遮光
羽根の材料として、好適であると判断していた（特開昭
59−61827号公報参照）。
この場合、前記板材は、CFRPの前駆体であるプリプレ
グ・シート（Prepreg・sheet）を複数枚積層（その繊維
方向は互いに直交又はほぼ直交するように積層する）
し、この積層物全体をプレスしたまま加熱して硬化させ
ることにより製造する。
このプリプレグ・シートというのは、炭素繊維を一方
向に揃えて薄く板状に並べ、これにマトリックス樹脂の
前駆体である熱硬化性樹脂液（例えばエポキシ樹脂や不
飽和ポリエステルの未硬化液状物）を含浸させ、該樹脂
液をＢステージ状態（一応固化しており明白な流動性は
ないが、加熱すれば最終的な硬化が可能な状態）にした
ものであり、樹脂分はわずかで外観上は髪の毛の如き炭
素繊維１本１本を糊の如き樹脂液で薄くコートし、この
コートした炭素繊維を寄せ集めたような景観を呈してい
る。
しかしながら、こうして製造した前記板材は、その薄
さに起因して、炭素繊維だけで完全な遮光を得る事は極
めて難しく、ピンホールの如き遮光性のない部分が点在
しており、この板材を所定形状に切断して遮光羽根を製
造するときに使用できずに捨てる部分が多く、そのため
羽根の生産コストが高くなる欠点があった。
そのためにCFRPのマトリックス樹脂中に黒色顔料（カ
ーボンブラック）を炭素繊維と共に充填し、繊維間の隙
間を顔料で埋めて遮光性を向上させるのは有力な方法で
ある。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、マトリックス樹脂中に黒色顔料を分散させた
シートを積層した板材は、平面性が悪い問題点があっ
た。
また板材中にマイクロクラック、空孔等が発生しやす
く局部的な強度低下が発生し、駆動系との連結部分で連
結不良を起こす事がしばしば生じた。外観的にも微細ク
ラックの発生や、縞模様の発生があった。
このような外観のものは、後工程で耐摩耗性、耐擦傷
性、潤滑性、遮光性、美観を主目的として潤滑性黒色塗
装（以下DL塗装と言う）を施すが、このDL塗装性が悪い
という欠点があった。
従って、本発明の目的は、このようなCFRPを積層して
なる遮光羽根用板材の欠点を解消し、遮光性が十分で、
平面性が良く、DL塗装性を改良した遮光羽根用板材を提
供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
そのため、本発明は、表皮層のシートにはカーボンブ
ラックを配合せず、中間層（表裏両面の表皮層を除いた
部分）にはカーボンブラックを配合したものである。
〔作用〕
本発明の板材を得るには、少なくとも表皮層に２枚の
プリプレグ・シート、中間層に１枚のプリプレグ・シー
トを用意する必要がある。
中間層に使用するプリプレグ・シートを作成する際
に、カーボンブラックをマトリックス樹脂の前駆体とな
る樹脂液中に添加分散させておく。カーボンブラック
は、平均粒子径0.07μｍ以下のものが好ましく、添加量
は樹脂液（固形分100重量部）に対し５〜15重量％が好
ましい。
表皮層に使用するプリプレグ・シートには、もちろん
カーボンブラックを添加しない。
表皮層と中間層とが炭素繊維の方向が互いに直交又は
ほぼ直交するように、かつ中央面から面対称となるよう
に、前記シート（２種）を重ね合わせ、その上でプレス
成形して、板材とする。
板材の厚さは、用途の都合で60〜120μｍとなるよう
にする。従ってプリプレグ・シート１層は10〜60μｍ程
度のものであり、炭素繊維目付（1m2当り何ｇの炭素繊
維が含まれるか）では10g/m2〜60g/m2のものを用いる。
なお、プリプレグ・シートは全て同じ板厚である必要
はなく、中立面に対して対称になるように使用すればい
ろいろな板厚を組み合わせることも可能である。
こうして得られた板材は、表皮層は顔料を含まないの
で樹脂液の粘度が増加せず、そのため、繊維の配列が乱
れず、平面性が良いものと推定される。顔料をプリプレ
グ・シートに入れると、どうしても繊維が乱れやすくな
る。乱れたシートを外側に使用すると、複合材の平面性
が悪化して良品率が極端に下がるので、好ましくない。
また、本発明の板材は、表皮層が顔料を含まないので、
樹脂液の粘度が適当に低下するため、空孔や微細クラッ
クの発生がみられず、塗装性が良好である。もし表皮層
にカーボンブラック入りプリプレグ・シートを使用する
と、樹脂が表面を完全に覆うことができないことが多い
（微細クラックの発生）ためにDL塗装を施すと凹凸にな
りやすく、またその外観も凹凸があるため、耐摩耗性、
潤滑性、及び美観的にも都合の悪いものとなってしま
う。また、樹脂フローの際、顔料を含んでいると縞模様
となって現れる事があり、これも外観上好ましくない。
なお表皮層のマトリックス樹脂には、顔料が全く含ま
れていないことが望ましいが、樹脂100重量部当り５重
量％未満で有れば添加されていても、本発明の板材に含
まれる。
また、中間層の顔料添加は、５重量％未満では遮光効
果を十分発揮できず15重量％以上では中間層といえど
も、繊維の配列が悪くなりすぎ、平面性に悪影響を及ぼ
す。また樹脂液の流動性も悪くなりすぎるため内部に空
孔が発生したり、層間剥離が起きたりするので、５〜15
重量％（当樹脂100重量部当り）添加することが好まし
い。
（実施例１） 一方向に揃えた炭素繊維を含有するプリプレグ・シー
トのマトリックス樹脂液に平均粒子径0.01μｍのカーボ
ンブラックを樹脂100重量部に対して10重量％添加した
炭素繊維目付15g/m2〜60g/m2の１層を中間層とし、カー
ボンブラックを添加しないプリプレグ・シート（炭素繊
維目付10g/m2〜40g/m2）２枚（同じ目付のもの）を表皮
層として用意し、この３枚を面対称にその繊維方向が直
交するように積層し、120℃〜150℃の温度で５〜15kg/m
2の圧力をかけ１〜２時間で硬化させ、その後徐冷させ
て、板厚60〜120μｍの板材を得た（第１図参照）。
この板材は平面性、外観に優れたものであり、遮光性
も良好であった。
この板材から打抜いて得られた遮光羽根を使用してシ
ャッター耐久試験をしたところ、材料内部に空孔等もな
く強度的に優れたものとなっているため、駆動力を伝達
するための連結部の強度が向上し、耐久性能が向上し
た。
（実施例２） 実施例１と同様に平均粒子径0.015μｍのカーボンブ
ラックを５重量％添加した炭素繊維目付10g/m2〜30g/m2
のプリプレグ・シートを３枚面対称にほぼ直交に積層さ
せ中間層とし、カーボンブラックを添加しないプリプレ
グ・シート（目付10g/m2〜40g/m2）２枚を表皮層とし
て、さらに繊維方向が直交するように、すなわち、中間
層の中心層と同方向になるように積層し、実施例１と同
様に硬化し、板厚80μｍ〜120μｍの板材を得た（第２
図参照）。
これも、遮光性を十分に確保し、かつ平面性も良く、
外観的にも優れ、DL塗装性が良好で強度上も向上したも
のであった。
〔発明の効果〕
本発明の板材は平面性、外観、DL塗装性に優れたもの
であり、遮光性も良好である。
この板材から打抜いて、得られた遮光羽根は、板材内
部に空孔等もなく強度的に優れたものとなっているた
め、駆動力を伝達するための連結部の強度が向上し、耐
久性能が高い。
また、良品率が著しく向上したため、低コスト化がは
かれ、超高速（1/8000秒）遮光羽根の実用化に大きく寄
与する。そのほか、顔料入りのプリプレグ・シートは手
間もかかり高価となるが、これの使用量が半減したこと
もコストの低減に好影響を与える。
【図面の簡単な説明】
第１図、第２図は本発明の実施例に係る遮光羽根用板材
の垂直断面を概略的に示す部分断面図である。 〔主要部分の符号の説明〕 １……炭素繊維（３） ２……マトリックス樹脂（３） ３……強化樹脂シート（CFRP） ４……カーボンブラック

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】一方向に揃えられた炭素繊維と、これを包
    含するマトリックス樹脂と、からなる強化樹脂シート複
    数枚を、その繊維方向が互いに直交又はほぼ直交するよ
    うに、面対称に積層してなる、板厚が60〜120μｍの炭
    素繊維強化樹脂製板材に於いて、 中間層のシートにはカーボンブラックが樹脂100重量部
    当り５〜15重量％添加され、表皮層のシートにはカーボ
    ンブラックが樹脂100重量部当り５重量％未満の添加量
    となっていることを特徴とする遮光羽根用板材。
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