JP2526832B2 - 遮光羽根用板材 - Google Patents

遮光羽根用板材

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、カメラのフォーカルプレーンシャッターや
レンズシャッターのシャッター羽根又は絞り羽根のよう
に高速で運動する事が要求される遮光羽根に使用される
板材に関する。
(従来技術) 上記の如き遮光羽根は、作動力量を小さくし、かつ曲
げ剛性も十分に保ちながら高速に作動させることが望ま
しい。
そのためには軽量、高強度高弾性の遮光羽根が必要と
なる。
本発明者は、以前より、一方向に揃えられた炭素繊維
で強化された強化樹脂シート(以下、単にCFRPと略す)
に着目し、その繊維方向を互いに直交又はほぼ直交する
ように複数枚積層させて構成した遮光羽根用板材が、重
量、強度、製造の簡便さの点から、高速走行可能な遮光
羽根の材料として、好適であると判断していた(特開昭
59−61827号公報参照)。
この場合、前記板材は、CFRPの前駆体であるプリプレ
グ・シート(Prepreg・sheet)複数枚積層(その繊維方
向は互いに直交又はほぼ直交するように積層する)し、
この積層物全体をプレスしたまま加熱して硬化させるこ
とにより製造する。
このプリプレグ・シートというのは、炭素繊維を一方
向に揃えて薄く板状に並べ、これにマトリックス樹脂の
前駆体である熱硬化性樹脂液(例えばエポキシ樹脂や不
飽和ポリエステルの未硬化液状物)を含浸させ、該樹脂
液をBステージ状態(一応固化しており明白な流動性は
ないが、加熱すれば最終的な硬化が可能な状態)にした
ものであり、樹脂分はわずかで外観上は髪の毛の如き炭
素繊維1本1本を糊の如き樹脂液で薄くコートし、この
コートした炭素繊維を寄せ集めたような景観を呈してい
る。
そして、前記板材を所定の形状に加工(切断、穿孔な
ど)して遮光羽根とする。こうして、得られた遮光羽根
は、作動力量も小さく、かつ曲げ剛性も十分に保ちなが
ら高速で作動させる事が可能となる。
ところで、高速走行する遮光羽根は、0.12mm以下の板
厚で反りのない、平面性に優れたものに仕上がってなけ
ればならないが、さらに、環境変化に対しても安定した
性能、品質を保持している事が要求される。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、これまでに知られた遮光羽根は、見か
け上、平面性が良好であっても、環境(温度、湿度)が
変化すると、平面性が変化する(反りの発生)場合の多
い事が判明した。
そのため、この遮光羽根を用いたシャッターを備えた
カメラを市販した場合、反りの発生による走行ムラ、シ
ャッター速度の変化、遮光羽根の破損及び幕間露光等が
発生する危険があった。
従って、本発明の目的は、このようなCFRPを積層して
なる遮光羽根用板材の欠点を解消し、全体的に遮光性が
十分であり、平面性が良好かつ環境変化に対して安定な
品質を保持した板材を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 一般に、CFRPの成形は、ホットプレスあるいはオート
クレーブを使用して120℃〜130℃程度の温度で1〜2時
間加熱、加圧して行なうが、こうして成形された板材を
用いて、所定形状に加工して遮光羽根とし、シャッター
に組み立て駆動試験を行なうと、耐久性に大きなバラツ
キが生じた。原因追求の結果、材料の問題との知見を得
て、徹底的に調べた結果、繊維配列の乱れ等により強度
上のバラツキのある部分、マトリックス樹脂分布の違い
による内部応力の大きさのバラツキなど繊維強化プラス
チック製板材にとって特有の材料上のバラツキが存在し
ていた。
しかし、さらに根本的に材料上の問題があるはずと考
え、そのマトリックス樹脂の硬化状況を測定することを
着想した。硬化過程の評価法としては、誘電特性の評
価、動的粘弾性の評価、熱分析法によるTg(ガラス転移
温度)の評価があるが、炭素繊維を50重量%以上含んだ
樹脂をそのまま評価するのは、かなり難しく、また、測
定法によっては、バラツキの大きい値しか得られない事
が予想された。そのような状況で熱分析法のDSCやTMA、
DTAにより測定するTgに注目し、測定条件の検討を密に
行なった結果、バラツキのないTg値を得ることに成功し
た。
そこで実際に成形したCFRPのTgを測定したところ、80
℃〜130℃とバラツイていることがわかった。この原因
としては、いろいろ考えられた。成形条件のうち、加熱
加圧スケジュールの影響、成形に用いる治具、クッショ
ン材、離型剤など副資材の影響、作業環境の影響、また
マトリックス樹脂についても、主剤のオリゴマー鎖の長
さの分布や、硬化剤等のブレンド比率の調整上の幅等々
成形物のTgを左右する因子は大きいと考えられる。
また、この事は、遮光性能の向上を主目的としてカー
ボンブラックをマトリックス樹脂中に充填した時も同様
であった。なお、カーボンブラックは、平均粒子径が0.
07μm以下のものを、マトリックス樹脂に対して、2〜
15重量%充填するのが効果的である。また、炭素繊維目
付(1m2あたり何gの炭素繊維が含まれるか)が10g/m2
〜40g/m2と、変化しても同様であり、樹脂含有量も35重
量%〜55重量%の範囲において同様の事がいえた。
また、Tgのバラツキは、板厚が60〜120μmという極
薄板であるために起りうる問題であることも判った。こ
れは、薄い板材でありながら、極端に良好な平面性を出
すために特別な成形スケジュールをとるためと思われ
る。
更に、いろいろな角度から徹底的に研究検討を行なっ
た結果、前記諸問題と成形物中のマトリックス樹脂のTg
との間に因果関係があり、Tgが120℃以上であれば、問
題のないことが判明した。
また、Tgが120℃以上のものは、マトリックス樹脂と
して、例えば、エポキシ樹脂を使用した場合、架橋密度
が高くなり、板材をカメラ用遮光羽根としてシャッター
に組み立て駆動させた場合に、走行時の耐擦傷性、耐摩
耗性も向上した。
また、遮光羽根の駆動部との連結として、穴を開けて
加締ピンにより固定する加締方式がある。この方式で
は、材料に耐衝撃性、耐穴拡がり性が要求されるが、こ
れも改善され、シャッター耐久性を向上できた。
従って、本発明は「一方向に揃えられた炭素繊維とこ
れを包含するマトリックス樹脂とからなる強化樹脂シー
ト(CFRP)の複数枚(好ましくは対象的に3〜5枚)
を、その繊維方向が互いに直交又はほぼ直交するように
面対称に積層してなる、板厚が60〜120μmの遮光羽根
用板材に於いて、マトリックス樹脂のガラス転移温度
(Tg)が120℃以上である事を特徴とする遮光羽根用板
材」を提供する。
(実施例) 先ず、炭素繊維を一方向に揃え、熱硬化性樹脂を含浸
したプリプレグ・シートを作る。具体的には、主剤とし
てフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルダイト
EPN1138(日本チバ・ガイギー社製)の70重量部、ビス
フェノールA型エポキシ樹脂、エピコート1002(油化シ
エルエポキシ社製)20重量部、同エピコート838(同社
製)10重量部、硬化剤としてジシアンジアミド3重量部
(対樹脂100重量部当り)、かつ硬化促進剤に3,4−ジク
ロルフエニル−1,1−ジメチル尿素5重量部(対樹脂100
重量部当り)からなる樹脂組成物に平均粒子径0.01μm
のカーボンブラック10重量%を添加し十分混合したあ
と、単繊維7μm、構成本数3000本の炭素繊維束150本
を引き揃えて含浸させ、樹脂含有量45重量%、繊維目付
25g/m2のプリプレグ・シートとした。
このプリプレグ・シートを3枚面対称になるように、
その繊維方向が互いに直交又はほぼ直交する用に積層し
た。このような積層板を3枚用意し、ホットプレスにて
加圧、加熱硬化させ板材に成形した。成形の条件は各3
枚それぞれに変更した。すなわち、1枚目は110℃−30
分;10kg/cm2で硬化、2枚目は120℃−30分;10kg/cm2
硬化させ、3枚目は130℃−6時間;10kg/cm2で硬化させ
た。
成形して得られた板材は、いずれも厚さが約90μmで
あり、板材の一部分を使用して、そのTgをDSC法にて測
定した。測定に使用した装置は、セイコー電子製DSC−1
00である。
他方、この板材から所定形状にプレス加工し、塗装等
を施して遮光羽根とした。この羽根を用いて、耐久試験
仕様の縦走りフォーカルプレーンシャッターを組み立
て、 60℃−90%(相対湿度)の雰囲気 100℃−5%(相対湿度)の雰囲気 にて駆動試験を試みた。この結果を表1に示す。
このようにTg=120℃未満の場合には異常発生が顕著
となり、遮光羽根として使用が不適当であることがわか
った。
このように、成形された板材の一部分から事前にその
Tgを測定する事でその板材が遮光羽根に適当か否かの判
断が可能になった。
(発明の効果) 以上の通り、本発明の板材は、軽量、高強度高弾性の
遮光羽根を提供することができ、従来の諸問題を発生さ
せない。
CFRPを遮光羽根として使用する事は、その材料特性上
のバラツキのためシャッター組み立て後全数駆動試験の
必要があり、実用困難となっていたが、本発明により事
前に板材をふるい分けることが可能となりCFRP製シャッ
ターの実用化に大きく貢献した。また、板材段階でふる
い落とすことができるため、不良な板材を後工程に流し
て無駄な加工費を発生させることがなくなり、コスト低
減にもつながった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一方向に揃えられた炭素繊維と、これを包
    含するマトリックス樹脂と、からなる強化樹脂シート複
    数枚を、その繊維方向が互いに直交又はほぼ直交するよ
    うに、面対称に積層してなる、板厚が60〜120μmの炭
    素繊維強化樹脂製板材に於いて、 マトリックス樹脂のガラス転移点が120〜140℃であるこ
    とを特徴とする遮光羽根用板材。
JP63148262A 1988-06-17 1988-06-17 遮光羽根用板材 Expired - Lifetime JP2526832B2 (ja)

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