JP2526589B2 - ペプチド含有マイクロカプセルおよびその製造法 - Google Patents

ペプチド含有マイクロカプセルおよびその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はペプチド含有マイクロカプセルおよびその製
造法に関する。
従来の技術 既に種々のマイクロカプセル剤が提唱されている。例
えば、特開昭57−118512号公報には、鉱物油,植物油な
どのコアセルベーション剤を用いた相分離法によるマイ
クロカプセル剤が記載されている。
しかし、この方法で得られたマイクロカプセルは製造
の過程で粒子同志の粘着による合一、割断面の生成など
が起り易く、再分散性の低下、初期バーストの増大につ
ながる恐れがある。また、用いる有機溶媒が複数であ
り、調製したマイクロカプセル中の残留溶媒の問題があ
る。
特開昭60−100516号公報には、水中乾燥法によるマイ
クロカプセルの調製法が開示されており、この方法によ
ると、マイクロカプセル中に薬物を効率よく取り込ませ
ることができ、その徐放性による薬物効果が期待でき
る。
発明が解決しようとする問題点 マイクロカプセル剤として薬物を生体に投与する場合
において、生体本来の機能との相互作用に依存する要素
が高いマイクロカプセル剤に対する要望は多面的であ
り、またこと医薬品に関するものであるので、これら多
面的な要件をできるだけ満足しうるマイクロカプセルの
提供が求められている。
上記状況下、公知のマイクロカプセル剤によっては、
満足しうる効果が技術的に達成されているとはいいがた
い。
例えばいくつかの薬物において、マイクロカプセル壁
膜の構造が比較的疎となる場合が生じ、初期に必要以上
の大きな薬物放出を見ることがあり、一定速度の放出か
ら大きく離れることがある。
また薬物のマイクロカプセル中へのトラップ率(取込
み率)においても、ある種の薬物においては通常用いる
濃度範囲で、低下する事実が見られ、事用上困難を生じ
る。
問題点を解決するための手段 このような事情に鑑み、本発明者らは、水溶性のペプ
チドの徐放性製剤を開発するため、鋭意研究を行ない、
マイクロカプセルの良好な性状と用いる薬物の物理化学
的性状および薬物の濃度との間に強い相関関係が存在す
ることを見い出し、さらに研究を重ね本発明を完成し
た。
すなわち本発明は、高分子重合物に対して2〜15重量
%に相当するTRH,そのアナログまたはそれらのpKa4.0以
上の弱酸との塩と該高分子とからなるマイクロカプセ
ル、および高分子重合物を含む油層と、該高分子重合物
に対して2〜15重量%に相当するTRH,そのアナログまた
はそれらのpKa4.0以上の弱酸との塩を含む水層とでW/O
型乳化物を形成せしめ、これと分散剤水溶液とを混合し
てW/O/W型乳化物を形成せしめ、ついで油層溶媒を留去
することを特徴とするマイクロカプセルの製造法を提供
するものである。
上記TRH(甲状腺ホルモン放出ホルモン)およびその
アナログとして、例えば式 [式中、Xは4,5,6員複素環基を、Yはイミダゾール−
4−イルまたは4−ヒドロキシフェニルを、R1,R2は同
一または異なって水素もしくは低級アルキルを、R3は水
素または置換基を有していてもよいアラルキルを示す]
で表わされる化合物が挙げられる。
Xで示される4,5,6員複素環基は窒素,酸素または
(および)硫黄原子を有していてよく、例えば などが挙げられる。
R1およびR2で表わされる低級アルキルとしては、C1-3
アルキル(例、メチル,エチル,プロピル,イソプロピ
ル)が挙げられる。
R3で表わされる置換基を有していてもよいアラルキル
としては、フェニルC1-2アルキルなど例えば3,4−ジヒ
ドロキシフェニルエチルが挙げられる。
化合物(I)は2〜4のアミノ酸または誘導体もしく
は類似体からなる場合が好ましい。
化合物(I)に包含される化合物として、ピロGlu−H
is−ProNH2(TRH),α−ブチロラクトンカルボニル−H
is−ProNH2(DN−1417),オロチル−His−ProNH2(CG
−3509),2−メチルテトラヒドロチアジン−3−オン−
5−イルカルボニル−His−ProNH2(CG−3703),ピロG
lu−Tyr−ProNH2(Ro10 2928),ピロGlu−His−ProNH
(3,4−ジヒドロキシフェニルエチル)Ro10 9430),ピ
ロGlu−His−(3,4−ジヒドロキシフェニルエチルアミ
ノカルボニル)(Ro10 8802),ピロ−2−アミノアジ
ピル−His−チアゾリジン−4−カルボアミド(MK−77
1),ピロGlu−His−(3−モノメチル)ProNH2(RX743
55),ピロGlu−His−(3,3−ジメチル)ProNH2(RX773
68),アゼチジノン−4−イルカルボニル−His−ProNH
2など[これらの化合物の性状についてはニューロファ
ーマコロジー(Neuropharmocology),20,947−957(19
81)および同誌,23,339−348(1984),ブレーン・リ
サーチ・レビュー(Brain Research Reviews),4,389
−403(1982),EP公開第123,444号公報参照]が挙げら
れる。
とりわけ化合物(I)としてTRH,DN−1417,CG−3509
が好ましい。
上記化合物(ペプチド)と塩を形成しうるpKa(電離
指数)4.0以上の弱酸としては無機酸および有機酸のい
ずれでもよく、例えば無機酸としては炭酸,重炭酸,ホ
ウ酸などが挙げられ、また有機酸としてはモノカルボン
酸,とりわけ低級(C1-3)アルカンモノカルボン酸が好
ましく、例えば酢酸,プロピオン酸などが挙げられる。
これらの弱酸は、とりわけpKa 4.5以上が好ましく、
上限としてはpKa 13以下とりわけpKa 9.5以下のものが
好ましい。
本発明方法における油層に含有される高分子重合物と
しては、水に難溶または不溶で、生体適合性のある高分
子重合物を示し、その例としては酸性残基を有するもの
が好ましく、たとえば、生体内分離型としてポリ脂肪酸
エステル(例、ポリ乳酸,ポリグリコール酸,ポリ乳酸
−グリコール酸,ポリ−ε−カプロラクトン,ポリクエ
ン酸,ポリリンゴ酸など),ポリアルキル−α−シアノ
アクリル酸エステル(例、ポリブチル−2−シアノアク
リレート),ポリ−β−ヒドロキシ酪酸,ポリアルキレ
ンオキサレート(例、ポリトリメチレンオキサレート,
ポリテトラメチレンオキサレートなど),ポリオルソエ
ステル(例、ポリ(3,9−ジアルコキシ−3,9−ジアルキ
ル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
など),ポリオルソカーボネートあるいはその他のポリ
カーボネート(例、ポリエチレンカーボネート,ポリエ
チレンプロピレンカーボネートなど),ポリアミノ酸
(例、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸,ポリ−
L−アラニン,ポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸な
ど)などが挙げられる。さらに、生体適合性を有するそ
の他の高分子重合物として、ポリアクリル酸,ポリメタ
アクリル酸,アクリル酸とメタアクリル酸との共重合
物,デキストランステアレート,メチルセルロース,エ
チルセルロース,アセチルセルロース,ニトロセルロー
ス,無水マレイン酸系共重合物などが挙げられる。これ
らの重合物は一種でもよく、また二種以上の共重合物、
あるいは単なる混合物でもよい。
これらの重合物の中で、特に、注射剤として用いる場
合は生体内分解型高分子重合物が好ましく、最も好まし
いものとしては、ポリ乳酸,乳酸とグリコール酸との共
重合物、あるいはその混合物が挙げられる。この共重合
物中の乳酸とグリコール酸との比は乳酸が約40〜95モル
%,グリコール酸が約60〜5モル%がよく、好ましくは
乳酸が約50〜95モル%,グリコール酸が約50〜5モル%
がよく、さらに好ましくは乳酸が約60〜90モル%,グリ
コール酸が約40〜10モル%がよい。
本発明に使用されるこれらの高分子重合物の平均分子
量は約1000ないし100000のものが好ましく、より好まし
くは約2000ないし50000、とりわけ約5000ないし30000の
範囲から選択される。
上記高分子重合物を含む溶液(油層)は、高分子重合
物を有機溶媒中に溶解したものが用いられる。
該有機溶媒としては、沸点が約120℃以下で、かつ水
と混和しにくい性質のもので、高分子重合物を溶解する
ものであればよく、たとえばハロゲン化アルカン(例、
ジクロロメタン,クロロホルム,クロロエタン,トリク
ロロエタン,四塩化炭素など),酢酸エチル,エチルエ
ーテル,シクロヘキサン,ベンゼン,n−ヘキサン,トル
エンなどが挙げられ、これらは2種以上混合して用いて
もよい。
極性を比較的有し、低沸点であるジクロロメタン,ク
ロロホルムが特に好ましい。
本発明のマイクロカプセルの製造法は、まずTRHもし
くはそのアナログの遊離体あるいは弱酸の塩を高分子重
合物に対して2〜15重量%に相当する量、好ましくは5
〜12%、とりわけ7.5〜12%に相当する量を水に溶解し
内水層とする。所望により薬物と高分子重合物の相互作
用を防害しない範囲で薬物保持物質、あるいはpH調整
剤、薬物の安定化剤,保存剤を添加してもよい。
上記薬物保持物質としては、水溶性で、油層の有機溶
媒に溶解し難いもので、水に溶解した状態で、すでに粘
性の高い半固体状となるか、あるいは、何かの外的因
子、たとえば温度,pH,金属イオン(例、Cu++,Al+++,Z
n++など),化学縮合剤(例、グルタルアルデヒド,ア
セトアルデヒドなど)などの作用を与えることによっ
て、より著しく粘度が増大し、半固体状ないし固体状の
マトリックスとなる性質を有する物質が挙げられる。
該薬物保持物質の例としては、天然あるいは合成ガム
あるいは高分子化合物があげられる。
pH調整剤としては、たとえば炭酸,酢酸,シュウ酸,
クエン酸,酒石酸,またはそれらのナトリウム塩あるい
はカリウム塩,塩酸,水酸化ナトリウムなどを添加して
もよい。
安定化剤としてはたとえばアルブミン,ゼラチン,ク
エン酸,エチレンジアミン四酢酸ナトリウム,デキスト
リン,ブドウ糖,ソルビトールなどの糖類,グリセリン
などのポリオール類,亜硫酸水素ナトリウムなどを、あ
るいは保存剤として、たとえばパラオキシ安息香酸エス
テル類(例、メチルパラベン,プロピルパラベンな
ど),ベンジルアルコール,クロロブタノール,チメロ
サールなどを添加してもよい。
本発明においては、内水層中のペプチドの重量比
[%;(ペプチド重量×100)/(ペプチド重量+水の
重量)]として約5〜80%(W/W)、好ましくは15〜70
%(W/W)とするのがよい。
このようにして得られた内水層用水溶液を、高分子重
合物を含む溶液(油層)中に加え、ついで乳化操作を行
い、W/O型乳化物をつくる。
該乳化操作は、公知の分散法が用いられる。該方法と
しては、たとえば、断続振とう法、プロペラ型攪拌機あ
るいはタービン型攪拌機などのミキサーによる方法、コ
ロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法などが
挙げられる。
ついで、このようにして調製されたW/O型エマルジョ
ンをW/O/Wの三層に乳化し水中乾燥法に付す。すなわ
ち、該W/O型エマルジョンをさらに第3層目の水層中に
加え、W/O/W型乳化物を形成させた後、油層中の溶媒を
除去し、マイクロカプセルを調製する。このW/O/W型エ
マルジョンを調製する際に、内水層およびW/O型エマル
ジョンの粘度が目的とするマイクロカプセルの形状、薬
物のトラップ率などに影響し、適切な粘度範囲内に設定
することが好ましい。特にW/O型エマルジョンの粘度は
薬物のトラップ率に対する影響は大きく、その粘度を15
0〜10000cp(1.5×102〜1×104cp)とすることが好ま
しい。
しかし、この過程、およびW/O/W型エマルジョンとし
て水中乾燥する際に、マイクロカプセルの形状、薬物ト
ラップ率、薬物の初期放出量に影響を与えるもう一つの
重要な因子として、薬物と高分子重合物の相互作用があ
り、これを考慮した前記の条件内に設定することによっ
て、さらに優れた薬物放出機能を持ったマイクロカプセ
ルの調製が可能となった。
すなわち、前記の条件で溶解したペプチド水溶液を上
記の薬物/高分子重合物の配合比率で、所定の容積比率
のW/O型エマルジョンとした後、一定の温度範囲に設定
し、これも一定の温度に保たれた外水層中に注入し、脱
有機溶媒してマイクロカプセルとする。この場合、薬物
と高分子重合物の相互作用にも、W/Oの容積比率、W/O型
エマルジョンの温度、さらには外水層の温度なども影響
するので、薬物、高分子重合物の種類、量によってある
至適条件に設定する必要がある。
油層の高分子重合物の濃度は、その種類によって異な
るが、およそ5%ないし80%(W/W)、とりわけおよそ2
0%ないし60%が好ましい。
W/O型エマルジョンの容積比は用いる薬物、重合物、
溶媒の種類、量によって異なるが、水層1に対して1な
いし200、より好ましくは1ないし100の範囲内に入るよ
うにする。
W/O型エマルジョン、および外水層の温度は約−10℃
から用いる有機溶媒の沸点までで行うことが出来るが、
通常、約0℃から35℃の範囲内で乳化するのが好まし
い。
外層の水層中には乳化剤を加えてもよく、その例とし
ては、一般に安定なO/W型エマルジョンを形成するもの
であればいずれでもよいが、たとえば、アニオン界面活
性剤(例、オレイン酸ナトリウム,ステアリン酸ナトリ
ウム,ラウリル硫酸ナトリウムなど),非イオン性界面
活性剤[ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
(Tween 80,Tween 60,アトラスパウダー社製,米国),
ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(HCO−60,HCO−50,
日光ケミカルズ社製)など]、あるいはポリビニールピ
ロリドン,ポリビニールアルコール,カルボキシメチル
セルロース,レシチン,ゼラチンなどが挙げられ、これ
らの中の一種類か、いくつかを組み合せて使用してもよ
い。とりわけポリビニールアルコール,カルボキシメチ
ルセルロース,ゼラチンの一種類または二〜三種類を組
合せて使用するのが好ましい。使用の際の濃度は約0.01
%から20%の範囲から適宜、選定でき、より好ましくは
約0.05%から10%の範囲で用いられる。
水中乾燥法における油層の溶媒の除去は、通常用いら
れる方法が採用される。該方法としては、たとえば単に
W/O/W型乳化物をプロペラ型攪拌機、あるいはマグネチ
ックスターラーなどで攪拌しながら放置するか、加温す
るか、窒素ガスなどを吹きつけるかすることなどによ
る。また、徐々に減圧して行なうか、ロータリーエバポ
レーターなどを用いて、真空度を調節しながら除去して
もよい。溶媒の除去工程において、高分子重合物の固化
がある程度進行した時点で、溶媒の除去をより完全にす
る目的で、W/O/W型乳化物を徐々に加温して行うと所要
時間を短縮することができる。
このようにして得られたマイクロカプセルは遠心分離
あるいはろ過して分取した後、マイクロカプセルの表面
に付着している遊離の水溶性薬物などを、蒸留水で数回
繰り返し洗浄し、必要に応じ、凍結乾燥、あるいは加温
し減圧下でマイクロカプセル中の水分の除去およびマイ
クロカプセル膜中の溶媒の除去をより完全に行なう。
上記で得られたマイクロカプセルは、必要であれば篩
過などによって、大きすぎるマイクロカプセル部分の除
去など、必要とする粒子径部分の分取を行なう。マイク
ロカプセルの粒子径は、徐放性の程度により、懸濁剤と
して使用する場合には、その分散性,通針性を満足させ
る範囲であればよく、たとえば、平均径として約0.5〜4
00μmの範囲が挙げられ、より好ましくは約2〜100μ
mの範囲にあることが望まれる。
このように、本発明の方法によれば、主薬であるペプ
チドのマイクロカプセルへのトラップ率を高めることが
でき、初期過剰放出の少ない強固な壁膜を有するマイク
ロカプセルを製造することができる。
また、本発明方法によって製造されたマイクロカプセ
ルは、製造工程中でマイクロカプセル同志の凝集が少な
く、球形状のよく整ったマイクロカプセルを得ることが
できること、また、油層中の溶媒の除去工程の制御が容
易で、それによつて、薬物放出速度を左右するマイクロ
カプセルの表面構造(たとえば薬物の主な放出経路とな
る細孔の数および大きさなど)を調節することが出来る
ことなど多くの長所を有している。
本発明方法によって製造されたマイクロカプセルは、
そのまま埋込剤として生体に投与することができる。ま
た、種々の製剤に成形して投与することもでき、そのよ
うな製剤を製造する際の原料物質としても使用され得
る。
上記製剤としては、注射剤,経口投与剤,経鼻投与
剤,直腸,尿道,膣坐剤などが挙げられる。
たとえば、本発明のマイクロカプセルを注射剤とする
には、本発明のマイクロカプセルを分散剤(例、Tween
80,HCO−60,,カルボキシメチルセルロース,アルギン酸
ナトリウムなど),保存剤(例、メチルパラベン,プロ
ピルパラベンなど),等張化剤(例、塩化ナトリウム,
マンニトール,ソルビトール,ブドウ糖など)などと共
に水性懸濁剤とするかゴマ油,コーン油などの植物油と
共に分散して油性懸濁剤として実際に使用できる徐放性
注射剤とする。
さらに、上記のマイクロカプセルの徐放性注射剤は、
懸濁剤として、上記の組成以外に、賦形剤(たとえば、
マンニトール,ソルビトール,ラクトース,ブドウ糖な
ど)を加えて、再分散した後、凍結乾燥もしくは噴霧乾
燥して固型化し、同時に、注射用蒸留水あるいは適当な
分散媒を加えると、より安定した徐放性注射剤が得られ
る。
本発明の徐放性製剤の投与量は、主薬であるペプチド
の種類と含量,剤形,薬物放出の持続期間,投与対象動
物[例、温血哺乳動物(例、マウス,ラット,ウマ,ウ
シ,人)],投与目的により種々異なるが、該主薬の有
効量であればよい。たとえば、上記温血哺乳動物に1回
あたり投与量として、マイクロカプセルの重量が好まし
くは約0.1mgないし100mg/kg体重、より好ましくは約0.2
mgないし50mg/kg体重の範囲から、適宜選択することが
できる。なお、上記注射剤として投与する場合の懸濁溶
液の容量は、約0.1ないし5ml、好ましくは約0.2ないし3
mlの範囲から適宜選ぶことができる。
このようにして、通常の一回投与量より多い有効量の
水溶性薬物,および生体適合性のある高分子重合物より
なり、長期間にわたって薬物を持続的に放出させること
ができるマイクロカプセルとして調製された医薬組成物
が得られる。
本発明においては、酸性残基を有する高分子が上記の
塩基性残基を有するペプチドとその残基同志の相互作用
によって、強固なマイクロカプセル壁の形成、およびマ
イクロカプセルの比較的表層に近い部における拡散速度
の低下による、トラップ率の向上、不必要な初期放出の
抑制が得られると考えられる。従って、塩基性残基を有
するペプチドのうち、その残基の塩基性が高い程、また
残基の数が多い程過剰な初期放出を防げるし、トラップ
率も高くなる。すなわち、既存のペプチドにリジン,ア
ルギニン,ヒスチジン残基などを化学的に付加してもよ
く、さらにはペプチド以外の生理活性を有する有機化合
物に、この塩基性残基を有するペプチド鎖を化学結合さ
せることによって、同様の優れたマイクロカプセルを製
造することができる。
本発明により製造された徐放性製剤は、たとえば次の
特徴を有する。
(1)種々の投与剤形でペプチドの良好な徐放性が得ら
れ、特に注射剤においては期待される治療を行なうの
に、長期間投与が必要な場合、毎日投与するかわりに、
一週間に一回,一月間に一回,あるいは一年間に一回の
注射で、所望の薬理効果が安定して得られ、従来の徐放
性製剤に比較して、より長期にわたる徐放性が得られ
る。
(2)生体内分解型高分子重合物を用い注射剤として投
与する場合、埋込みなどの外科手術が一切不用で、一般
の懸濁注射剤とまったく同様に容易に皮下および筋肉内
に投与でき、再び取り出す必要がない。
(3)従来のW/O/W型の三層エマルジョンをつくり、こ
れを水中乾燥に付す製造法よりも、内水層に特に薬物保
持物質を添加することなくマイクロカプセル中に主薬で
あるペプチドを効率よく取込ませることができ、しかも
微細な、球状の整ったマイクロカプセルを得ることがで
きる。
(4)従来のW/O/W型エマルジョンを調製しこれを水中
乾燥に付す製造法よりも必要以上な初期放出を減少させ
たマイクロカプセルが得られ、より一定速度の安全な優
れた徐放性製剤となり得る。
作用および実施例 以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明
する。
実施例1 TRH(遊離体)50mg〜1000mgを水0.625mlに溶解し、乳
酸・グリコール酸共重合物(乳酸/グリコール酸:75/2
5,重量平均分子量14000,以下、PLGAと略称)5gをジクロ
ロメタン6.25mlに溶解した液に加え、小型ホモジナイザ
ー(ポリトロン キネマチカ社製,スイス)で30〜60秒
間混合し、W/O型エマルジョンを得た。このエマルジョ
ンを18℃に冷却した後、あらかじめ18℃に調整しておい
た0.25%ポリビニルアルコール(PVA)水溶液1250ml中
に注入しタービン式ホモミキサーを使用してW/O/W型エ
マルジョンとした。この後、W/O/W型エマルジョン液を
攪拌しつつジクロロメタンの揮散によって内部のW/O型
エマルジョンを固化させた後、遠心分離器で捕集した。
これを再び蒸留水に分散しさらに遠心分離を行ない遊離
薬物等を洗滌した。
捕集されたマイクロカプセルは凍結乾燥によって脱溶
媒および脱水をより完全とした後、粉末として得られ
た。
上記の方法で、PLGAに対して1〜20%のTRHを仕込ん
だマイクロカプセルの薬物トラップ率(仕込み量に対し
て実際に取込まれた量の%),および37℃で、pH7.0リ
ン酸緩衝液中で行なつたin vitro溶出試験の中で、1日
後のマイクロカプセル中に残存する量を測定し表−1に
示す。
TRHのPLGAに対する濃度が1%の時は、マイクロカプ
セル中への薬物トラップ率も少し低下し、1日後の放出
が65.7%と著しく大きかった。しかし、2.5〜15%にお
いては極めて高いトラップ率と、1日後における放出
(初期放出)も比較的少なく、良好なマイクロカプセル
を調製することができた。また、PLGAに対する濃度が20
%では、トラップ率は逆に低下し、初期放出も増大し
た。これは、親水性薬物の増大によって、水中乾燥をす
る際のW/O型エマルジョンの破壊と、形層された高分子
重合物カプセル壁中の細孔水路(aqueous channel)の
増大に基づくものと考えられる。
また、本実施例の中でTRH53mgを0.5mlの水に溶解し、
ジクロロメタン4.5ml中にPLGAを4gおよび6gと増加さ
せ、従来の水中乾燥法にあるようにW/O型エマルジョン
の粘性を2000cp程度に増大させ、以下、本実施例と同様
にして調製した場合、TRHのPLGAに対するそれぞれ1.33
%,0.88%のマイクロカプセルはトラップ率がそれぞれ7
7%,98%で良好であつたが、初期放出は、それぞれ71
%,67%で、まったく改善することができなかった。
実施例2 TRHの遊離体100mgを0.5ml蒸留水,あるいはこれと等
モルの酒石酸,クエン酸,酢酸あるいは塩酸を加えた0.
5ml水溶液に溶解し、これにPLGA 5gを5mlジクロロメタ
ンに溶解したものを加え、以下、実施例1と同様にし
て、TRHあるいはその塩のマイクロカプセルが得られ
た。なお、3層エマルジョン調製時の両液層の温度は15
℃に設定した。
得られたマイクロカプセルのトラップ率,初期バース
トを表−2に示す。
まず、W/Oエマルジョンの粘度を高くしたのでTRHの取
込みはいずれも良好であった。一方、この実施例はTRH
の仕込み量がPLGAに対して2%で、比較的低く、塩種の
影響が出やすいところではあるが、添加酸の効果は顕著
で、遊離体の場合1日後の放出が15.8%しか見られない
のに、酒石酸、クエン酸、塩酸添加の場合98.8〜100%
とほとんど完全に初期に薬物を放出した。一方、弱酸の
酢酸塩では33.2%の初期放出で比較的少ないく、またTR
HがPLGAに対して5%の場合は22.6%と良好であった
が、遊離体の場合よりは少し増大した。
これらの結果から、薬物と高分子重合物の相互作用に
よって、安定なW/O、あるいはW/O/W型エマルジョンの形
成によるトラップ率の向上,マイクロカプセル壁の強
化,マイクロカプセル内での拡散、放出の抑制による初
期放出の減少がもたらされ、乳酸、あるいはグリコール
酸残基のpKaより小さい酸の添加によって、この相互作
用が防害されると考えられる。
実施例3 実施例1の方法で得られたマイクロカプセルのin vit
roおよびラット皮下に投与された後のin vivoの薬物放
出性(投与部位マイクロカプセル中の薬物残存量を測
定)を検討し、その結果を表−3および表−4に示す。
マイクロカプセルはPLGA(乳酸/グリコール酸比:75/
25,平均分子量14000)を用いたマイクロカプセルで、重
合物に対して5%のTRH遊離体を仕込み、調製したもの
であるが、in vivoにおいても、低い初期放出性の後、
0次放出に近い良好な放出制御を有するマイクロカプセ
ルが得られていることを示している。これらのマイクロ
カプセルは走査型電子顕微鏡による観察の結果、平均粒
子径が10〜40ミクロンのよく整ったきれいな球形をして
いた。また適当な分散媒を用いて23〜22ゲージの注射針
によってスムースに容易に注射可能であった。
実施例4 CG−3509(遊離体)50mg〜1000mgを水0.5mlに溶解し
(内水層)、一方PLGA 5gをジクロロメタン6.25mlに溶
解した(油層),内水層を、ポリトロン (キネマチカ
社製,スイス)で攪拌しつつ油層を添加しW/Oエマルジ
ョンを得た。このエマルジョンを15〜18℃に冷却し、あ
らかじめ18℃に冷却しておいた0.5%ゼラチン水溶液125
0ml中に注入しタービン式ホモミキサーを使用してW/O/W
型エマルジョンとした。その後W/O/Wを攪拌しつつ油層
のジクロロメタンを揮散させ、油層を固化させた。これ
を遠心分離機で捕集し、蒸留水で洗浄した後凍結乾燥に
より脱溶媒および脱水を十分に行ない粉末状のCG−3509
含有マイクロカプセルを得た。
このマイクロカプセルのCG−3509のトラップ率および
37℃でpH7.0リン酸緩衝液中で行ったin−vitro放出試験
のうち1日後のマイクロカプセル中に残存するCG−3509
量を測定した。結果を表−5に示す。
実施例1のTRHの場合と同様にCG−3509のPLGAに対す
る濃度が2.5〜10%のときトラップ率も高く1日後の放
出(初期放出)も少ない良好な徐放性マイクロカプセル
が得られた。
実施例5 TRHの遊離体600mgを0.36ml蒸留水に溶解し、これにPL
GA5.4gを6.7mlジクロロメタンに溶解したものを加え、
以下、実施例1と同様にして、TRHのマイクロカプセル
が得られた。なお、3層エマルジョン調製時の両液層の
温度は19℃に設定した。
発明の効果 本発明の製造法によれば、主薬のマイクロカプセルへ
の取込率が高く、初期過剰放出が少なく、長期にわたり
安定に主薬を放出する徐放性マイクロカプセルが得られ
る。

Claims (24)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高分子重合物に対して2〜15重量%に相当
    するTRH,そのアナログまたはそれらのpKa4.0以上の弱酸
    との塩と該高分子重合物からなるマイクロカプセル。
  2. 【請求項2】TRHもしくはそのアナログが、式 [式中、Xは4,5または6員複素環基を、Yはイミダゾ
    ール−4−イルまたは4−ヒドロキシフェニルを、R1
    R2は同一または異なって水素もしくは低級アルキルを、
    R3は水素または置換基を有していてもよいアラルキルを
    示す]で表わされる化合物である特許請求の範囲第1項
    記載のマイクロカプセル。
  3. 【請求項3】Xが、 である特許請求の範囲第2項記載のマイクロカプセル。
  4. 【請求項4】R1およびR2が、共に水素である特許請求の
    範囲第2項記載のマイクロカプセル。
  5. 【請求項5】R3が水素または3,4−ジヒドロキシフェネ
    チルである特許請求の範囲第2項記載のマイクロカプセ
    ル。
  6. 【請求項6】化合物が、ピロGlu−His−ProNH2,α−ブ
    チロラクトンカルボニル−His−ProNH2またはオロチル
    −His−ProNH2である特許請求の範囲第2項記載のマイ
    クロカプセル。
  7. 【請求項7】TRHもしくはそのアナログが、遊離体であ
    る特許請求の範囲第1項記載のマイクロカプセル。
  8. 【請求項8】TRHもしくはそのアナログが、無機酸また
    は有機酸との塩である特許請求の範囲第1項記載のマイ
    クロカプセル。
  9. 【請求項9】有機酸が、低級アルカンモノカルボン酸で
    ある特許請求の範囲第8項記載のマイクロカプセル。
  10. 【請求項10】高分子重合物が、ポリ脂肪酸エステルの
    ホモポリマーまたはコポリマーである特許請求の範囲第
    1項記載のマイクロカプセル。
  11. 【請求項11】高分子重合物が、乳酸とグリコール酸の
    コポリマーである特許請求の範囲第10項記載のマイクロ
    カプセル。
  12. 【請求項12】高分子重合物が、ポリオルソエステルで
    ある特許請求の範囲第1項記載のマイクロカプセル。
  13. 【請求項13】高分子重合物の平均分子量が、約1,000
    ないし100,000である特許請求の範囲第10項または第12
    項記載のマイクロカプセル。
  14. 【請求項14】平均径が約0.5〜400μmである特許請求
    の範囲第1項記載のマイクロカプセル。
  15. 【請求項15】高分子重合物を含む油層と、該高分子重
    合物に対して2〜15重量%に相当するTRH,そのアナログ
    またはそれらのpKa4.0以上の弱酸との塩を含む水層とで
    W/O型乳化物を形成せしめ、これと分散剤水溶液とで混
    合してW/O/W型乳化物を形成せしめ、ついで油層溶媒を
    留去することを特徴とするマイクロカプセルの製造法。
  16. 【請求項16】油層が、有機溶媒に溶解した高分子重合
    物である特許請求の範囲第15項記載の製造法。
  17. 【請求項17】有機溶媒が、ハロゲン化アルカンである
    特許請求の範囲第16項記載の製造法。
  18. 【請求項18】水層が、約5〜80%のペプチド重量比の
    TRH,そのアナログまたはそれらの塩と水である特許請求
    の範囲第15項記載の製造法。
  19. 【請求項19】W/O型乳化物形成を、分散法により行う
    特許請求の範囲第15項記載の製造法。
  20. 【請求項20】W/O型乳化物の粘度を、150〜10,000セン
    チポアーズとする特許請求の範囲第19項記載の製造法。
  21. 【請求項21】W/O型乳化物を温度調整下分散剤を含有
    する第三層目の水層に分散させてW/O/W型乳化物を形成
    させる特許請求の範囲第15項記載の製造法。
  22. 【請求項22】分散剤がポリビニルアルコール,カルボ
    キシメチルセルロースまたはゼラチンである特許請求の
    範囲第21項記載の製造法。
  23. 【請求項23】温度を約0℃〜35℃に調整する特許請求
    の範囲第21項記載の製造法。
  24. 【請求項24】油層の溶媒留去を攪拌により行う特許請
    求の範囲第21項記載の製造法。
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