JP2524622B2 - 超微粒子膜の形成方法 - Google Patents

超微粒子膜の形成方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、電子材料、機能材料または構造材料等の分
野に使用できる超微粒子膜の形成方法及び装置に関する
ものである。
[従来の技術] この種の従来技術としては特開昭60−106964号公報に
記載のものを挙げることができ、この公開公報には、非
酸化性ガス雰囲気の金属蒸気生成用容器内で生成した金
属材料の超微粒子を非酸化性ガスと共に搬送管を介して
蒸着処理容器に導入し、この蒸着処理容器内で搬送管の
先端に装着したノズルより超微粒子を非酸化性ガスの噴
流で被処理ベース面に吹き付け、この処理ベース面に超
微粒子の膜を形成するようにした超微粒子膜の形成方法
及び装置が開示されており、この場合超微粒子はおよそ
100Torr〜約1気圧の圧力で生成され、蒸着処理容器
(約0.1Torr)との圧差(100Torr〜1気圧)を利用して
ガスで蒸着処理容器へ搬送され、ノズルより高速噴射せ
ることにより超微粒子膜を形成している。この従来の方
法で得られる超微粒子及びガスの速度の一例を添付図面
の第7図に示す。金属蒸気生成用容器と蒸着処理容器と
の差圧が100Torrの場合のAg超微粒子の速度は計算によ
れば約350m/sと見積られ、その運動エネルギ(1/2mv2
3/2KT)は、約5×10-2eV/atomと計算される。
なお、この明細書で用語“超微粒子”は、粒径0.1μ
m以下のものを意味するものとする。
[発明が解決しようとする課題] ところで、上記従来の超微粒子膜の形成技術では、金
属蒸気生成用容器と蒸着処理容器との差圧が100Torr〜
1気圧程度であるため、例えば差圧100Torrを例に採っ
て見ると、ノズルから噴出される超微粒子の運動エネル
ギは上述のように約5×10-2eV/atomと見積られ、真空
蒸着の場合(約0.1eV/atom)に比べて低くなっていた。
そのため、形成された超微粒子膜は、基板すなわち被処
理ベース面との付着力が弱く、常温で噴射堆積させた超
微粒子はテープテストで剥離してしまうという問題があ
る。
本発明は、このような問題を解決して膜の付着力を大
幅に改善できしかも形成される膜の密度を制御できる超
微粒子膜の形成方法を提供することを目的としている。
[課題を解決するための手段] 上記の目的を達成するために、本発明の第1の発明に
よれば、超微粒子供給室内の超微粒子を搬送管を介して
ガスと共に膜形成室に導入し、膜形成室内で搬送管の先
端に採り付けられたノズルから超微粒子をガスと共に高
速で噴射し、被膜形成基板に超微粒子を形成する超微粒
子膜の形成方法において、上記超微粒子供給室の圧力を
1気圧〜10気圧の中圧にして上記膜形成室との差圧を増
大させ、超微粒子の上記ノズルからの噴射速度を高く
し、超微粒子の噴射堆積エネルギを増大させて膜形成を
行うことを特徴としている。
また本発明の第2の発明による超微粒子膜の形成方法
は、第1の発明による方法において被膜形成基板を加熱
しながら膜形成を行うことを特徴としている。
上記第1または第2の発明において、超微粒子と共に
膜形成室に導入されるガスは音速値の高いガスであり得
る。
[作用] このように構成した本発明の第1の発明においては、
超微粒子生成室または超微粒子供給室と膜形成室との圧
力差が大きく、1気圧〜10気圧と大きくとられ、それに
より超微粒子搬送管の先端部に装着されたノズルからの
超微粒子の噴射速度は増大し、その結果噴射堆積エネル
ギが増大される。ところで、同一ポンプ能力でほぼ同じ
流量のガスを流す場合には、ノズルの径を細くして流速
を増大させるようにされる。
また、本発明の第2の発明のように基板加熱処理を付
加すれば、噴射堆積エネルギの増大は更に助長される。
[実 施 例] 以下添付図面を参照して本発明の実施例について説明
する。
第1図には本発明の超微粒子膜の形成方法を実施して
いる装置の一例を概略的に示し、1は10気圧程度までの
圧力に耐え得る超微粒子供給室を成す超微粒子生成室
で、その内部には金属材料の蒸発源2が設けられ、この
蒸発源2は通常の構成のものであり得、そして外部電源
3により加熱される。また超微粒子生成室1にはガス供
給系4が連結され、音速値の高い、例えばHe、H2等の非
酸化性ガスを超微粒子生成室1内に導入する。
5は膜形成室で、搬送管6を介して超微粒子生成室1
に連通している。膜形成室5内に位置した搬送管6の先
端部には噴射ノズル7が取り付けられている。また膜形
成室5内には超微粒子の膜を形成すべき基板8が配置さ
れ、この基板8は噴射ノズル7に対して相対的に動き得
るようにされている。膜形成室5内は、真空排気系9に
より通常0.1Torrの真空度に保持される。なお、図面に
は示してないが、安全のため、超微粒子生成室1には安
全弁が取り付けられる。また膜形成室5内に配置される
基板8に対して基板加熱手段(図示してない)も設けら
れ得る。
このように構成した図示装置を用いてAg膜を形成した
例について説明する。
超微粒子生成室1内の圧力は約100Torr〜10気圧と
し、超微粒子生成室1内の蒸発源2におけるアルミナコ
ートのWバスケットへ投入電力はおよそ180VAとし、基
板8としてアルミナを使用した。
超微粒子生成室1と膜形成室5との圧力差を3気圧に
した場合、Agの超微粒子の平均粒子径を300Åとし、ガ
スとしてHeガス(2.3×104Torr・cc/sec)を使用し、ノ
ズル7の寸法を、口径0.3mm、長さ130mmとした時のAg超
微粒子とHeガスの流速を第2図に示す。この場合、音速
以上での衝撃波の影響は無視している。Heガスの音速は
約970m/sであり、またAgの超微粒子は1000m/s以上と計
算されるが、少なくとも音速までは加速される考え、運
動エネルギを計算すると、約0.35eV/atomであると見積
られる。これは、真空蒸着法(0.1eV/atom)の場合と同
じオーダである。第3図には形成されたAg膜の付着力の
測定結果を示す。図からわかるように超微粒子生成室1
の圧力の増加と共にAg膜の付着力は増大し、超微粒子生
成室1の圧力が2気圧及び3気圧では、Ag膜の付着力は
それぞれ180kgf/cm2及び430kgf/cm2の値を示した。
またAgの超微粒子の粒子径は100Torr、2気圧及び3
気圧共大差なく、平均600Åであった。第4図及び第5
図にはそれぞれ100Torr及び3気圧のHeガス中で生成し
たAgの超微粒子の透過電子顕微鏡写真を示す。これらの
写真の倍率は、×135000であり、13.5mmが1000Åに相当
する。また超微粒子生成室1の圧力が100Torrの場合に
は、Ag膜の表面の色は黒灰色であるが、3気圧の場合に
は、銀白色となり、圧力の増加と共に超微粒子の粒成長
化の傾向が見られる。
次に基板8の加熱手段を併用した例について説明す
る。
超微粒子生成室1内においてAgの超微粒子を2気圧の
Heガス中で生成し、口径0.3mm、長さ130mmのノズル7を
用いて約0.1Torrの膜形成室5においてAg膜をアルミナ
セラミック基板に堆積させた。堆積時の基板の温度は常
温〜400℃とした。この場合のAg膜の基板加熱温度に対
する付着力を第6図に示す。基板加熱温度の上昇と共に
Ag膜の付着力は増大することが認められる。
ところで、図示実施例では、超微粒子生成室で超微粒
子を生成しながら、膜形成室へ供給して膜形成を行うよ
うに構成しているが、当然本発明は、予め生成しておい
た超微粒子を非酸化性ガスと混合して膜形成室へ供給し
て膜形成を行うように実施することもできる。また上記
例ではAgの超微粒子膜の形成について例示してきたが、
Ag以外の金属材料やセラミックスのような他の材料の超
微粒子膜の形成について同様に応用できる。
[発明の効果] 以上説明してきたように本発明の各発明によれば、超
微粒子供給室内の圧力と膜形成室内の圧力との差圧を大
きく(10気圧程度まで)しているので、ノズルからガス
と共に噴射される超微粒子の速度が速くなり、堆積エネ
ルギを増大させることができ、その結果、基板に対する
超微粒子の堆積膜の付着力が大幅に増大され得る。
また、本発明の第2の発明によれば、膜形成室内に配
置された基板を加熱しながら膜形成を行っているので、
堆積エネルギの増大が助長され、一層強い付着力が得ら
れる。
更に、本発明の各発明において堆積エネルギの制御が
可能となり、その結果ポーラスな膜形成から密な膜形成
まで自在に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の方法を実施している装置の一例を示す
概略線図、第2図は本発明の方法によって得られるガス
及びAg超微粒子の速度を例示するグラフ、第3図は本発
明の方法に従って形成されたAg超微粒子膜の付着力と超
微粒子生成室の圧力との関係を例示するグラフ、第4図
及び第5図はそれぞれ本発明による方法を実施した際の
異なった超微粒子生成室圧力でのAg超微粒子の透過電子
顕微鏡写真、第6図は本発明の方法に従って形成したAg
超微粒子膜の付着力と基板の温度との関係を例示するグ
ラフ、第7図は従来の方法によつて得られるガス及びAg
超微粒子の速度を例示するグラフである。 図中 1:超微粒子生成室 2:蒸発源 3:外部電源 4:ガス供給系 5:膜形成室 6:搬送管 7:噴射ノズル 8:基板 9:真空排気系

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】超微粒子供給室内の超微粒子を搬送管を介
    してガスと共に膜形成室に導入し、膜形成室内で搬送管
    の先端に取り付けられたノズルから超微粒子をガスと共
    に高速で噴射し、被膜形成基板に超微粒子膜を形成する
    超微粒子膜の形成方法において、上記超微粒子供給室の
    圧力を1気圧〜10気圧の中圧にして、上記膜形成室との
    差圧を増大させ、超微粒子の上記ノズルからの噴射速度
    を高くし、超微粒子の噴射堆積エネルギを増大させて膜
    形成を行うことを特徴とする超微粒子膜の形成方法。
  2. 【請求項2】超微粒子と共に膜形成室に導入されるガス
    が音速値の高い非酸素性ガスである請求項1に記載の超
    微粒子膜の形成方法。
  3. 【請求項3】超微粒子供給室内の超微粒子を搬送管を介
    してガスと共に膜形成室に導入し、膜形成室内で搬送管
    の先端に取り付けられたノズルから超微粒子をガスと共
    に高速で噴射し、被膜形成基板に超微粒子膜を形成する
    超微粒子膜の形成方法において、上記超微粒子供給室の
    圧力を1気圧〜10気圧の中圧にして、上記膜形成室との
    差圧を増大させ、超微粒子の上記ノズルからの噴射速度
    を高くし、超微粒子の噴射堆積エネルギを増大させると
    共に被膜形成基板を加熱しながら膜形成を行うことを特
    徴とする超微粒子膜の形成方法。
  4. 【請求項4】超微粒子と共に膜形成室に導入されるガス
    が音速値の高い非酸化性ガスである請求項3に記載の超
    微粒子膜の形成方法。
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