JP2520858B2 - コラ―ゲンの架橋を容易にするためのコラ―ゲン処理方法 - Google Patents

コラ―ゲンの架橋を容易にするためのコラ―ゲン処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、特にコラーゲンの架橋を容易にして、安定
性があり、機械的特性が改良された架橋コラーゲンを得
ることのできるコラーゲンの処理方法に関するものであ
る。
従来の技術 医学、生物医学に応用するコラーゲンは、機械的、物
理化学的、生物学的な極めて厳しい条件を満たしている
必要がある。
コラーゲンを上記の用途に用いる場合の問題点の1つ
は、生物分解性に対する抵抗力が十分でなく、しかも機
械的に弱いため手での取扱いが難しいことである。
コラーゲンの生物分解に対する抵抗力は、主として架
橋の程度と架橋の形成法により変化する。生物組織固定
操作を施していないコラーゲンは数日で生物分解してし
まうのに対し、強固に架橋したコラーゲンは数ヵ月は生
物分解することはない。コラーゲンが架橋するとポリペ
プチド鎖内およびポリペプチド鎖間に架橋がかなりの数
形成されて溶解性が低下する。
コラーゲンを架橋させるには、生物組織固定剤、例え
ばグルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、またはジイ
ソシアネートを用いて化学的に行う方法と、物理的手
段、例えばγ線、β線、または紫外線を用いる方法とが
ある。しかし、物理的手段を用いるときには大がかりな
装置が必要であり、しかも実施が難しい場合がある。さ
らに、この物理的手段を用いる場合には架橋が形成され
るだけでなく亀裂も発生する。
コラーゲンを架橋するための処理にはグルタルアルデ
ヒドが最もよく使用される。このグルタルアルデヒドに
よる処理は、グルタルアルデヒド溶液中にコラーゲン粉
末、コラーゲンフィルム、コラーゲンゲルまたは多少濃
縮したコラーゲンを浸すことにより実施する。このグル
タルアルデヒドによる処理には、応用する分野によって
はかなりの問題点がある。例えば水性のコラーゲン構造
(ゲルまたはスポンジ)内にグルタルアルデヒドを導入
すると非常に分子量の大きなグルタルアルデヒドのポリ
マーが形成される。単に洗浄しただけではこのポリマー
を除去することは難しい。さらに、このポリマーが加水
分解してグルタルアルデヒドが塩析する場合や、コラー
ゲン部分が消えてしまった後にこのポリマーがそのまま
自由状態で残る場合がある。
処理したコラーゲンを特殊な酸化酵素を用いて架橋さ
せることも既に行われている。しかしこのような処理法
はコストがかさむ。さらに、この処理法は非常に微妙で
あるため、特定の条件でしか実施することができない
(処理の終わりにリシル酸化酵素を除去するのが難し
い)。
発明が解決しようとする問題点 本発明は、上記の問題点を解決して、化学試薬による
共有結合を導入することなく大量かつ均一にコラーゲン
を架橋させることのできるコラーゲン処理法を提供する
ことを目的とする。
本発明の目的の1つは、均一で安定性のある架橋した
コラーゲンゲルを提供することである。
本発明の別の目的は、コラーゲンを架橋させるための
従来よりも自由度の大きい方法、すなわち、まず最初に
(pHを酸性の値にして)コラーゲンをあまり架橋させる
ことなく適度に酸化し、次に、pHを中性またはアルカリ
性の値にしてコラーゲン分子を架橋させることのできる
方法を提供することである。
本発明の別の目的は、酸性pH下でも安定性があり、特
性、特に不溶性が向上したコラーゲン粉末またはコラー
ゲンフィルムを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、コラーゲンと生物学的に
活性のある分子とが結合することができるよう、反応性
のある基を表面に備えるコラーゲン粉末またはコラーゲ
ンフィルムを提供することである。
問題点を解決するための手段 本発明のコラーゲン処理方法は、コラーゲンを過ヨウ
素酸溶液または過ヨウ素酸塩、特に過ヨウ素酸ナトリウ
ムの溶液を用いて適度に酸化することを特徴とする。
過ヨウ素酸塩を用いた処理は、コラーゲン溶液や既に
形成されたコラーゲンゲルのほか、コラーゲンフィルム
やコラーゲン粉末に対して行う。
コラーゲンゲルを製造する目的でコラーゲン溶液を過
ヨウ素酸塩を用いて処理する場合を考える。使用するコ
ラーゲン溶液は一般にコラーゲンの濃度が0.1〜20%で
ある。このコラーゲン溶液に対して過ヨウ素酸、または
過ヨウ素酸塩、特に過ヨウ素酸ナトリウムを濃度が0.1
〜0.0001モルになるまで添加する。pHは2〜8にする。
ただし、このpHは処理の第1段階では酸性の値であり、
処理の第2段階では中性またはアルカリ性の値であるこ
とが好ましい。コラーゲンはこの処理を行う前は酸性pH
下で可溶性があるが、この処理を行うことにより、酸性
pHも含めて非常に広い範囲のpHの範囲で不溶性のコラー
ゲンゲルを素早く製造することができるようになる。
コラーゲン分子上に過剰に形成されたアルデヒド基
は、例えばグリココル溶液、エタノールアミン溶液およ
び/またはヒドロ硼化ナトリウム溶液を用いて中和す
る。あるいは、この過剰なアルデヒド基は、タンパク
質、フィブロネクチン、増殖因子、グリコサミノグリカ
ン、酵素、殺菌剤、細菌発育阻止剤、抗生物質、また
は、生体適合性にすぐれ、生物分解に対して大きな抵抗
力を有する他のあらゆる物質との結合に使用される。
過ヨウ素酸塩による処理の後に表面の生物組織固定処
理を行うこともある。生物組織固定処理にはNaIO4溶液
を用いる場合とジポリアルデヒド溶液またはポリアルデ
ヒド溶液を用いる場合がある。
必要な場合には表面の生物組織固定処理を処理の第2
段階において行うこともできる。この場合には、濃度が
0.1〜0.001モルの過ヨウ素酸溶液、過ヨウ素酸ナトリウ
ム溶液、ジポリアルデヒド溶液またはポリアルデヒド溶
液を用いてコラーゲンゲルを処理する。これと同時に、
またはこれより後にpHの値を5〜8にして、コラーゲン
鎖が架橋しやすくなる。
過ヨウ素酸または過ヨウ素酸塩を用いて処理したコラ
ーゲン溶液は、繊維状、粉末状、ボール状、フィルム状
のコラーゲン等を製造するのに使用される。製造方法は
公知であるが、得られたコラーゲン製品の機械的特性は
向上している。このようにして得られたコラーゲンの繊
維、粉末、ボール、フィルムは、生物学的に活性な分子
と結合させることができる。
先に説明したように、既に形成されたコラーゲンゲル
を過ヨウ素酸または過ヨウ素酸塩を用いて処理すること
により安定性を向上させることもできる。
この点に関しては、過ヨウ素酸または過ヨウ素酸塩は
分子のサイズが小さいためにコラーゲンゲルの内部に容
易に侵入して拡散し、その結果として架橋が均一に形成
されるからであることを指摘しておく必要があろう。
上記のコラーゲンゲルは、濃度が10-1〜10-4モルの過
ヨウ素酸溶液または過ヨウ素酸塩溶液を用いて室温で3
〜20時間処理する。このときpHは、このコラーゲンゲル
が反応前に再び溶解することがないように5よりも大き
な値にする。
本発明の処理方法をフィルム状または粉末状のコラー
ゲンに対して実施して安定性を向上させることや、後の
結合に備えて表面に反応性のある基を生成させることも
できる。
このフィルム状または粉末状のコラーゲンは、濃度が
0.1〜0.0001モルの過ヨウ素酸溶液または過ヨウ素酸塩
溶液を用いて処理する。このときpHは、処理の第2段階
でpHを5〜8にして架橋形成を促進させて不溶性を高め
るまでにこのフィルム状または粉末状のコラーゲンが溶
解しない値にする。
一般に、架橋が形成されたコラーゲンの安定性と機械
的特性を向上させたい場合および/またはこのコラーゲ
ンと生物学的に活性な分子とを結合させたい場合には、
そのたびごとに本発明の方法を実施することが望まし
い。
実施例 本発明の他の利点および特徴は、以下の様々な実施例
の中に現れるであろう。
実施例1には、コラーゲン溶液から移植組織片または
レンズを製造する方法が示されている。この実施例で
は、過ヨウ素酸塩を用いて既に形成されたコラーゲンゲ
ルの処理を行う。
実施例2には、コラーゲン溶液から移植組織片または
レンズを製造する方法が示されている。この実施例で
は、過ヨウ素酸を用いてコラーゲン溶液の処理を行う。
実施例3と4には、コラーゲン溶液から移植組織片ま
たはレンズを製造する方法が示されている。この実施例
では、過ヨウ素酸塩を用いてコラーゲン溶液を処理した
後に、過ヨウ素酸ナトリウム溶液またはグルタルアルデ
ヒド溶液を用いて表面の生物組織固定処理を行う。
実施例5と6は、過ヨウ素酸塩を用いて前処理を施し
たコラーゲン溶液から不溶性コラーゲンゲルを製造する
方法に関するものである。
実施例7は、生物学的に活性な分子(フィブロネクチ
ン)と結合した不溶性コラーゲンゲルの製造方法に関す
る。
実施例8〜10には、過ヨウ素酸塩を用いて処理したコ
ラーゲン溶液から、生物学的に活性な分子(フィブロネ
クチン)が結合した不溶性コラーゲン繊維を製造する方
法が記載されている。
実施例11は、過ヨウ素酸塩を用いて処理したコラーゲ
ン溶液から不溶性コラーゲン粉末を製造する方法に関す
る。
実施例12は、過ヨウ素酸塩を用いて処理したコラーゲ
ン溶液から、生物学的に活性な分子(フィブロネクチン
またはグリコサミノグリカン)が結合した不溶性コラー
ゲン粉末を製造する方法に関する。
実施例13には、過ヨウ素酸塩を用いて処理したコラー
ゲン溶液から不溶性コラーゲンフィルムを製造する方法
が記載されている。
実施例14には、過ヨウ素酸塩を用いて処理したコラー
ゲン溶液から不溶性コラーゲンボールを製造する方法が
記載されている。
実施例15と16は、過ヨウ素酸塩を用いて処理したコラ
ーゲン溶液から、生物学的に活性な分子(グリコサミノ
グリカン)が結合した不溶性コラーゲンからなるゲル、
フィルム、繊維、またはボールを製造する方法に関す
る。
実施例17には、過ヨウ素酸塩を用いてコラーゲン粉末
を処理する方法が記載されている。
実施例1 IV型コラーゲンを豊富に含むヒトの胎盤のコラーゲン
が15%蒸留水中に含まれる酸性溶液を以下のようにして
調製する。
凍結したヒトの胎盤300kgを粉砕して、それぞれが数c
m3の体積を有する破片にする。次に、エタノールを8%
と、6g/の割合のNaClと、セルロースを10kg含む水溶
液300に全破片を混合する。この水溶液を10℃で攪拌
した後、マビーユ(MABILLE)型プレスを用いて圧搾し
て血液と胎盤組織とを分離する。すると、水分を65%含
む胎盤組織が102kg得られる。
プレス機で圧搾することにより抽出した胎盤組織を濃
度0.05モル、pH7.2の洗浄用クエン酸ナトリウム溶液500
の中で10℃にて30分間攪拌する。次にこの洗浄用溶液
を圧搾して溶液部分を取り除くことにより胎盤組織を回
収する。NaClを30g/の割合で添加した濃度0.05モル、
pH7.2のクエン酸ナトリウム溶液500を用いて2回目の
洗浄を行う。次に、濃度0.05モル、pH7.2のクエン酸ナ
トリウム溶液500を用いて3回目の洗浄を行う。続い
て、中性pHの溶液を用いてこのように3回洗浄した胎盤
組織を、10℃、酸性pHの条件で以下のようにして3回続
けて洗浄する。
− 2NのHClを添加することにより最終pHを2.8に調整
した濃度が0.05モルのクエン酸500で洗浄する。圧搾
する前に30分間攪拌する。
− 濃度0.5モルの蟻酸500を用いて15時間洗浄する。
− NaClを20g/の割合で添加した濃度0.05モルのクエ
ン酸500を用いて30分間洗浄する。
酸性pHの溶液を用いてこのように洗浄した胎盤組織は
白色である。これは、胎盤の血液にもともと含まれてい
た血液色素がきれいに除去されたことを示している。得
られる胎盤組織の重量は82kgである。
ペプシンを300g含む濃度0.05モル、pH2.8のクエン酸5
00の中にこの胎盤組織を入れてペプシン酵素による消
化を10℃で15時間行わせる。この結果得られる分散液
を、水500を10℃で加えて希釈する。4NのNaOHを添加
してpHを7.5に調節することによりペプシンを変性させ
てこのペプシンのタンパク質分解作用を抑制する。この
分散液を10℃で15時間放置した後、連続遠心分離機(ウ
エストファリア ケイジー10006(Westfalia KG1000
6))を用いて胎盤組織残留物を分離する。この残留物
中には可溶化しないI型とIII型のコラーゲンが主とし
て含まれている。残留物の重量は103kgである。この残
留物の消化酵素処理を第1回目とまったく同様に行う。
続いて、文献に記載の公知の方法を用いてI型とIII型
のコラーゲンを抽出し、分離する。
第1回目の消化酵素処理後の上澄液には、ペプシンの
作用が止まって中性pHとなったときに可溶性のあるコラ
ーゲンとその他の巨大分子が含まれている。この上澄液
には特にIV型コラーゲンが含まれている。
2NのHClを用いてこの上澄液のpHを5に調節する。10
℃で15時間放置すると沈澱物が得られる。この沈澱物
は、アルファ ラヴァル(Alfa Laval)社の遠心分離機
「バクトフュージュ(Bactofuge)」を用いて連続遠心
分離することにより除去する。
この結果回収される上澄液は非常に透明である。この
上澄液に4NのNaOHを添加してpHを7.5に調節し、NaClの
最終濃度を1.2モルにする。16℃で15時間放置するとコ
ラーゲン沈澱物が得られる。このコラーゲン沈澱物は、
遠心分離機「バクトフュージュ」を用いて連続遠心分離
することにより回収する。
この結果コラーゲン沈澱物が13kg得られる。このコラ
ーゲン沈澱物を0.01NのHCl600の中に溶解させ、次い
で4NのNaOHを添加してpHを7.5に調節する。4℃で15時
間放置した後に得られる沈澱物を遠心分離機「バクトフ
ュージュ」を用いて除去する(得られる重量は10kg)。
この結果得られる透明な上澄液に2NのHClを添加して
pHを2.8と酸性の値にし、4℃でNaClを最終濃度が0.6モ
ルになるまで加える。
15時間放置した後にコラーゲン沈澱物が得られる。こ
のコラーゲン沈澱物を遠心分離機(バクトフュージュ」
を用いて回収する。回収されるコラーゲン沈澱物は液体
状で、その重量は6.5kgである。このコラーゲン沈澱物
にゆっくりとアセトンを7添加する。この結果コラー
ゲン繊維が形成される。このコラーゲン繊維はふるいを
用いて濾過することにより回収する。回収したコラーゲ
ン繊維をアセトンを用いて何回か洗浄し無菌の暖かい空
気流中で乾燥させると、最終生成物である乾燥したコラ
ーゲン繊維が180g得られる。
このコラーゲン繊維を水に溶解させると溶液は酸性に
なる。
この溶液を蒸留水中に入れてコラーゲンの割合を15%
にした後45〜60℃に加熱してこの温度を30分間維持す
る。この溶液は完全に均質で流動性がある。この加熱温
度においてこの溶液を孔の径が0.8〜8ミクロンの膜を
用いて濾過し、前もって45〜60℃に加熱しておいた鋳型
内に流し込んでレンズまたは眼科用の移植組織片を製造
する。全体をただちに+4℃に冷却し、この温度を15時
間維持する。レンズまたは移植組織片を鋳型から取り出
して濃度0.01モル、pH7.5の過ヨウ素酸ナトリウム溶液
に入れ、室温で15時間放置する。次に、このレンズまた
は移植組織片を、グリココルを20g/の割合で含むpHが
7.5の緩衝液、または濃度0.05モルのエタノールアミン
緩衝液および/または濃度0.02モルのヒドロ硼化ナトリ
ウム溶液内に移し、室温で3時間放置する。
得られるレンズまたは移植組織片は完全に透明であ
り、柔軟性が大きく、吸水性が非常にすぐれている。さ
らに、このレンズまたは移植組織片は取扱いが従来より
も簡単であり、機械的により強く、安定性が極めてすぐ
れており、中性pHの緩衝液を95℃に加熱した中での1時
間の熱処理に対する耐性がある。これに対して過ヨウ素
酸ナトリウム処理をしていないレンズまたは移植組織片
は急速に加水分解する。
実施例2 実施例1に記載した完全に均質で流動性のあるコラー
ゲンを15%含む酸性溶液中に過ヨウ素酸溶液を添加して
その最終濃度を0.0001モルにする。この溶液を均質化し
て泡を除いた後、前もって45〜60℃に加熱した鋳型に流
し込む。全体をただちに+4℃に冷却して、15時間この
温度を維持する。
レンズまたは移植組織片を鋳型から取り出し、NaClを
10g/の割合で含む濃度0.01モル、pH7.5のリン酸塩系
緩衝液に浸す。次に、このレンズまたは移植組織片を、
グリココルを20g/の割合で含みpHが7.5の緩衝液、ま
たは濃度0.05モルのエタノールアミン緩衝液および/ま
たは濃度0.02モルのヒドロ硼化ナトリウム溶液に浸し、
室温で3時間放置する。
得られたレンズまたは移植組織片は実施例1に記載し
た特性と同じ特性を示す。
実施例3 実施例2の方法で製造したレンズまたは移植組織片を
鋳型から取り出し、濃度0.01モル、pH7.5の過ヨウ素酸
ナトリウム溶液に室温で15時間浸す。次に、このレンズ
または移植組織片を、グリココルを20g/、NaClを10g/
の割合で含むpH7.5の緩衝液、または濃度0.05モルの
エタノールアミン緩衝液および/または濃度0.02モルの
ヒドロ硼化ナトリウム溶液に浸して室温で3時間放置す
る。
得られたレンズまたは移植組織片は実施例1に記載し
た特性と同じ特性を示す。
実施例4 実施例2の方法で製造したレンズまたは移植組織片を
鋳型から取り出し、濃度0.2%、pH7.5のグルタールアル
デヒド水溶液に室温で15時間浸す。
次に、このレンズまたは移植組織片を、グリココルを
20g/、NaClを10g/の割合で含むpH7.5の緩衝液、ま
たは濃度0.05モルのエタノールアミン緩衝液および/ま
たは濃度0.02モルのヒドロ硼化ナトリウム溶液に浸して
室温で3時間放置する。
実施例5 ヒトのコラーゲン(III型、I型、またはIV型)また
は牛の酸性コラーゲン(I型)0.2%を蒸留水中に含む
溶液を濃度0.001モルの過ヨウ素酸ナトリウムを用いて
室温で2時間処理する。次に、0.01Nの塩酸を用いてこ
の溶液を20時間透析する。
この溶液に0.1NのNaOHを添加してpHを7.5に調節す
る。10分間室温で放置するとコラーゲンゲルが形成され
る。このコラーゲンゲルをグリココル緩衝液またはエタ
ノールアミン緩衝液を用いて洗浄し培地と平衡状態にし
たものは、細胞培養として、または傷の充填材として用
いることができる。
このようにして、極端なpH(0.01NのHCl)に対する
耐性があり、非常に安定で、取扱いが極めて簡単なコラ
ーゲンゲルを室温で製造することができる。また、酸に
対して可溶性のあるコラーゲンのほか酵素処理またはア
ルカリ処理により可溶化させたコラーゲンからこのよう
なコラーゲンゲルを得ることもできる。このコラーゲン
ゲルにはテロペプチドが含まれている場合と含まれてい
ない場合がある。
実施例6 実施例5の方法で酸化させたコラーゲン1容積部と、
処理を施していない普通のコラーゲンを0.6%含む蒸留
水1容積部とからなり0.1NのNaOHを用いてpHを7.5に調
節した混合物を室温で10分間放置するとゲルになる。
実施例7 ・実施例5の方法で酸化させたコラーゲンを1容積部
と、 ・普通のコラーゲンを0.6%含む蒸留水を1容積部と、 ・濃度10g/の血漿フィブロネクチンを0.2容積部とか
らなる混合物を中性pHのもとに室温で10分間放置すると
ゲルになる。上記各成分の割合は大きく変えることが可
能である。必要な場合にはさらに多くの血漿フィブロネ
クチンが含まれるようにする。
実施例8 実施例5の方法で酸化させたコラーゲン溶液を攪拌し
ながら、温度37℃、濃度0.04モル、pH7.2のリン酸塩系
緩衝液中に注ぎ込む。するとただちにコラーゲン繊維が
形成される。2時間後、グリココル緩衝液またはエタノ
ールアミン緩衝液および/または濃度0.02モルのヒドロ
硼化ナトリウム溶液を用いて室温で3時間このコラーゲ
ン繊維を洗浄する。
このコラーゲン繊維は非常に安定性がよく、酸性媒質
にも溶けない。従って、このコラーゲン繊維を傷の充填
材またはタンパク質(フィブロネクチン等)の吸着用に
使用することができる。
実施例9 実施例6と7の混合物を攪拌しながら、温度37℃、濃
度0.04モル、pH7.5のリン酸塩系緩衝液中に注ぎ込む。
するとただちにコラーゲン繊維が形成される。2時間
後、グリココル緩衝液またはエタノールアミン緩衝液お
よび/または濃度0.02モルのヒドロ硼化ナトリウム溶液
を用いて室温で3時間このコラーゲン繊維を洗浄する。
実施例10 実施例5の方法で酸化させたコラーゲン溶液を、濃度
0.04モル、pH7.5のリン酸塩系緩衝液中で血漿フィブロ
ネクチンの濃度が0.01g/となっている溶液に注ぎ込
む。するとだたちに血漿フィブロネクチンを含むコラー
ゲン繊維が形成される。
実施例11 実施例5の方法で酸化させたコラーゲン溶液のpHを3
に調節してから、このコラーゲン溶液に塩化ナトリウム
を加えてその最終濃度を1モルにする。15時間後に得ら
れる沈澱物を遠心分離により回収する。この沈澱物は10
0%アセトンを用いて脱水した後、空気流中で乾燥さ
せ、粉砕する。すると、反応性のある基を備える不溶性
コラーゲン粉末が得られる。反応性のある基は、後に結
合させる際に役に立つ。また、このコラーゲン粉末は骨
の充填材として用いることができる。
実施例12 実施例5の方法で酸化させたコラーゲン溶液のpHを4
に調節してから、このコラーゲン溶液に濃度0.01g/の
血漿フイブロネクチンおよび/または濃度0.1%のグリ
コサミノグリカンを添加する。2時間上記溶液を互いに
接触させた後、塩化ナトリウム溶液を添加してその最終
濃度を1モルにする。15時間後に得られる沈澱物を遠心
分離により回収する。回収される沈澱物は極めて固い。
この回収物は、組織の外傷の治療に用いることができ
る。
実施例13 実施例5の方法で酸化させたコラーゲン溶液または実
施例6の混合物にグリセリンを添加してその最終濃度を
1.5%にした後、この溶液または混合物を疏水性の支持
体上に注ぐ。室温で無菌空気流を用いてこの支持体を乾
燥させるとコラーゲンフィルムが得られる。このコラー
ゲンフィルムを95%アルコール中で30分間処理し、次い
で100%アセトン浴中で脱水すると、柔軟な不溶性コラ
ーゲンフィルムが得られる。この不溶性コラーゲンフィ
ルムの厚さと抵抗力は、コラーゲンとグリセリンの濃度
により変わる。
実施例14 実施例5の方法で酸化させたコラーゲン溶液または実
施例6の混合物をアセトン9容積部と0.1NのNaOH1容積
部との混合物中に1滴ずつ滴下する。滴下する溶液また
は混合物は滴下後ただちにゲル化して完全な球形を保
つ。次に、このようにして得られた分散液を無菌生理的
溶液を用いて洗浄してアセトンを除去するとともにpHを
完全に中性の値にする。
この結果コラーゲンボールが得られる。このコラーゲ
ンボールは細胞の培養に使用することができる。
小さなコラーゲンボールを大量に製造するにはもちろ
ん別の方法を用いることもできる。このためには、特
に、微小な液滴からなる乳濁液を製造するための公知の
任意の方法を応用することが可能である。
実施例15 ・ 実施例5の方法で酸化させたコラーゲン溶液を1容
積部と、 ・ 0.1NのNaOHを用いてpHを7.5に調節した濃度0.1%の
グリコサミノグリカン(コンドロイチン6−硫酸または
コンドロイチン4−硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫
酸、ヒアルロン酸)とからなる混合物からコラーゲンゲ
ル、コラーゲン繊維、またはコラーゲンボールを製造す
ることができる。
実施例16 酸化させたコラーゲン0.5%を含む溶液1容積部と、p
Hを7.5に調節した濃度0.2%のグリコサミノグリカン溶
液1容積部とを混合する。この混合物をただちに鋳型内
に注ぎ込み、深さが約1cmとなるようにする。このシー
ト状の混合物を室温で2時間放置した後、凍結乾燥させ
る。すると、生成分解に対して抵抗力がある湿布が得ら
れる。この湿布は充填材として用いることができる 実施例17 コラーゲンを生理的食塩水を用いて沈澱させ、アセト
ンで脱水し、空気流中で乾燥させ、粉砕すると、コラー
ゲン粉末が得られる。
NaIO40.001モルを95%アルコール中に含む溶液にこの
コラーゲン粉末を添加して濃度を0.2%にする。室温で
このコラーゲン粉末とこの溶液を攪拌しながら2時間接
触させた後、ナイロン布上で95%アルコールを用いて洗
浄し、次いで100%アセトンを用いて洗浄し、空気流中
で乾燥させ、粉砕する。
この結果得られるコラーゲン粉末は不溶性である。こ
のコラーゲン粉末はシッフ試薬に反応する。テロペプチ
ドを含まないこのコラーゲン粉末(サデュック(SADU
C)社のトリラジェン(Trillagene))は相変わらず水
に対して溶ける。この溶液のpHを7.5に調節するとただ
ちにこのコラーゲン粉末はゲル化する。
このようにして得られたコラーゲン粉末と実施例11で
得られた不溶性コラーゲン粉末を酸化していないコラー
ゲンおよび/またはグリコサミノグリカンおよび/また
は抗生物質と混合すると均質なペーストが得られる。こ
のペーストは骨の充填材として用いることができる。

Claims (19)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】未架橋のコラーゲンを過ヨウ素酸溶液また
    は過ヨウ素酸塩の溶液で処理して適度に酸化させること
    を特徴とする、コラーゲンの架橋を容易にし、安定性お
    よび機械的特性が改良された架橋コラーゲンを得るため
    のコラーゲンの処理方法。
  2. 【請求項2】未架橋のコラーゲンがコラーゲン溶液であ
    る特許請求の範囲第1項に記載の方法。
  3. 【請求項3】未架橋のコラーゲンが予め形成されたコラ
    ーゲンゲルである特許請求の範囲第1項に記載の方法。
  4. 【請求項4】未架橋のコラーゲンが粉末またはフィルム
    状のコラーゲンである特許請求の範囲第1項に記載の方
    法。
  5. 【請求項5】未架橋のコラーゲンがコラーゲン溶液であ
    り、このコラーゲン溶液に対して過ヨウ素酸ナトリウム
    溶液を10-1〜10-4モルの濃度となるまで添加し、pHを2
    〜8にする特許請求の範囲第2項に記載の方法。
  6. 【請求項6】処理を2段階で行い、第1段階での処理は
    酸性pHで処理し、第2段階での処理は中性pHまたはアル
    カリpHで処理する特許請求の範囲第5項に記載の方法。
  7. 【請求項7】未架橋のコラーゲンが予め形成されたコラ
    ーゲンゲルであり、このコラーゲンゲルを濃度が10-1
    10-4モルの過ヨウ素酸ナトリウム溶液を用い、室温で3
    〜20時間処理する特許請求の範囲第3項に記載の方法。
  8. 【請求項8】未架橋のコラーゲンが粉末またはフィルム
    状のコラーゲンであり、このコラーゲンゲルを濃度が10
    -1〜10-4モルの過ヨウ素酸ナトリウム溶液を用い、pH5
    〜8で室温で3〜20時間処理する特許請求の範囲第4項
    に記載の方法。
  9. 【請求項9】上記の酸化処理の後に、洗浄または中和操
    作を行う特許請求の範囲第1〜8項のいずれか一項に記
    載の方法。
  10. 【請求項10】上記洗浄操作はグリシン溶液を用いて行
    う特許請求の範囲第9項に記載の方法。
  11. 【請求項11】上記洗浄操作をエタノールアミン溶液を
    用いて行う特許請求の範囲第9項に記載の方法。
  12. 【請求項12】上記洗浄操作をヒドロ硼化ナトリウム溶
    液を用いて行う特許請求の範囲第9項に記載の方法。
  13. 【請求項13】上記の酸化処理、洗浄操作または中和操
    作の後に、表面の生物組織固定処理を行う特許請求の範
    囲第1、2、5、9〜12項のいずれか一項に記載の方
    法。
  14. 【請求項14】上記の表面の生物組織固定処理を過ヨウ
    素酸ナトリウム溶液を用いて行う特許請求の範囲第13項
    に記載の方法。
  15. 【請求項15】上記の表面の生物組織固定処理をジアル
    デヒド溶液またはポリアルデヒド溶液を用いて行う特許
    請求の範囲第13項に記載の方法。
  16. 【請求項16】上記の表面の生物組織固定処理を濃度が
    10-1〜10-4モルの過ヨウ素酸ナトリウム溶液を用いてpH
    5〜8で3〜20時間行う特許請求の範囲第14項に記載の
    方法。
  17. 【請求項17】上記の表面の生物組織固定処理を濃度が
    0.1〜0.001モルのジアルデヒド溶液またはポリアルデヒ
    ド溶液を用いてpH5〜8で3〜20時間行う特許請求の範
    囲第15項に記載の方法。
  18. 【請求項18】上記の酸化処理、洗浄操作または中和操
    作の後に、表面に形成された反応性のある基に生物活性
    分子を結合させる特許請求の範囲第1〜8項のいずれか
    一項に記載の方法。
  19. 【請求項19】反応性のある上記の基がタンパク質、フ
    ィブロネクチン、増殖因子、グリコサミノグリカン、酵
    素、殺菌剤、細菌発育阻止剤、抗生物質または生体適合
    性に優れ且つ耐生物分解性に優れた物質と結合される特
    許請求の範囲第18項に記載の方法。
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