【発明の詳細な説明】
細胞−ゲル
発明の分野
本発明は、架橋マトリックス物質(例えば、架橋コラーゲン)内に含有される複
数の生存細胞を含有する、生体組織を増強するに適した新規の「細胞−ゲル」処
方物および組成物に関する。
発明の背景
組織を増強または修復する多くの方法は、当該技術分野において周知である。
初期の方法は、生体適合性の移植片を使用しており、これは、移植後、細胞の移
入、内殖、および遊走により、宿主細胞に入植される。
例えば、Danielsら(米国特許第3,949,073号)は、とりわけ、硬組織または軟組
織を増強するために、インサイチュで繊維状コラーゲン移植片を形成する繊維形
成促進剤(これは、本願特許では、重合促進剤として記載されている)を有する、
被験体の適当な位置への溶解性コラーゲン調製および注入を開示している。この
ような移植片は、宿主細胞に速やかに入植され、血管を形成する。この物質は、
CA)から市販されている。
類似の物質の細胞による入植が検討されている。例えば、ゼラチン、デキスト
ラン、セルロース、アクリルアミド、フルオロカーボン−ポリリジンおよびポリ
スチレンをベースにした広範な種々のマイクロキャリアが開発されている(例え
ば、Reuveny、Advances in Cell Culture、1985年、4巻、213〜247ページ;Wiss
emannら、In Vitro Cellular and Developmental Biology、1985年、21巻、7号
、391〜401ページおよびそこに挙げられた参考文献を参照のこと)。このような
マイクロキャリアの重要な応用は、足場依存細胞の培養にあり、ここで、このよ
うな細胞は、あらかじめ形成したマイクロキャリアの表面に結合し、そこで増殖
する。細胞の付着および増殖は、このマイクロキャリアの外部表面に限定され
得るが、多孔性のマイクロキャリアについては、内部の多孔空間内で内殖および
増殖が起こる場合がある。例えば、Nilssonら(Biotechnology、1986年、4巻、9
89〜990ページ)は、ゼラチン(変性コラーゲン)から多孔質のマイクロキャリアを
調製することを開示しており、これにより、細胞が、この多孔質のゼラチンビー
ズの内部で成長することが可能になる。同様に、Ademaら(BioPharm、1990年、第
3巻、7号、20〜23ページ)は、グルタルアルデヒドで架橋したコラーゲン−グ
リコサミノグリカン(GAG)共重合体から、強化した多孔性のマイクロキャリアを
調製することを開示している。
類似の物質は、組織代用物の調製に使用されている。例えば、Eisenberg(米国
特許第5,282,859号)は、とりわけ、市販の架橋ウシコラーゲンのスポンジ膜を接
種することにより調製される多孔性の架橋コラーゲンスポンジ中で培養した線維
芽細胞の皮膚層を含有する生体皮膚等価物を開示している。Saintignyら(Acta . Derm.Venereol.(Stockholm)
、1993年、第73巻、175〜180ページ)は、キトサン
−コラーゲン−グリコサミノグリカン共重合体を含有する多孔性の皮膚基質上に
、線維芽細胞を播種することによる上皮の再構築を開示している。
組織代用物に生存細胞を直接導入することにより、入植前の細胞の移動または
内殖の必要性が、低減または解消される(例えば、Nanchahalらによる総説、Brit ish Journal of Plastic Surgery
、1992年、第45巻、354〜363ページおよびそこ
に挙げられた参考文献を参照のこと)。
Yannasら(米国特許第4,418,691号;米国特許第4,458,678号;Proc.Natl.Aca
d.Sci.、1989年、第86巻、3号、933〜937ページ)は、とりわけ、創傷部位にお
ける細胞の成長または組織の発生を促進するために、外科的な、強制力を使用す
る(force utilizing)技術、または他の操作技術(これらは、全て、「接種」と呼
ばれている)により、生存細胞を繊維状格子に導入することを開示している。特
に、Yannasらは、グリコサミノグリカン(これは、とりわけ、結合組織に見出さ
れる多糖類成分である)で架橋したコラーゲンを含有する繊維状格子を開示して
おり、そこには、細胞が遠心力により包埋されている。
Bellら(Proc.Natl.Acad.Sci.、1979年、第76巻、1274〜1278ページ;Plast ic and Reconstructive Surgery
、1981年、第67巻、386〜392ページ;British J
ournal of Dermatology
、1986年、114巻、91〜101ページ)は、溶液中のコラーゲ
ンを細胞懸濁液と混合し、それに続いて、pHを調整してコラーゲンを原繊維の形
状で溶液から取り出し、細胞が多少均一に分布するゲルまたは格子を生産する方
法を開示している。数日間にわたり、この形造ゲル(cast gel)は、引き続いて、
この細胞の運動活性により緊密化して、堅固な組織を生じる。Rowlingら(Biomat erials
、1990年、第11巻、181〜185ページ)は、このような皮膚等価物が、培養
において20〜30日後に、酵素分解に対して改善された抵抗性を示すことを見出し
た。
Weinbergら(米国特許第4,837,379号)は、コラーゲン、フィブリン、および包
埋細胞(「収縮因子」として)を含有するフィブリン含有組織等価物を開示してい
る。さらに、この組織等価物は、フィブリンおよびコラーゲンを架橋し得る因子
(例えば、第XIII因子(天然に存在する血液凝固因子))をさらに含有し、強度およ
び安定性を高め得る。Weinbergはまた、とりわけ、コラーゲン、フィブリン(フ
ィブリノーゲンとトロンビンとの反応から、インサイチュで得られる)、および
細胞を同時に混合してゲルを形成する工程を包含する、組織等価物を調製する方
法を開示している。
Freeman(Methods in Enzymology、1987年、第135巻、216〜222ページ)は、と
りわけ、あらかじめ重合し架橋したポリアクリルアミド−ヒドラジドゲル内の全
細胞のゲル包括法による細胞の固定化を開示している。この包括法手順は、細胞
を、線状の水溶性合成重合体の水溶液に懸濁することに基づき、次いで、この重
合体は、細胞の存在下および穏やかな生理学的条件下にて、ジアルデヒド(例え
ば、グリオキサール)の添加により、架橋される。
Rheeら(米国特許第5,162,430号;米国特許第5,264,214号;Bovine Collagen M
odified by PEG、Poly(Ethylene Glycol)Chemistry :Biotechnical and Biomedi cal Applications
、J.Milton Harris編、Plenum Press、New York、1992年、18
3〜198ページ)は、コラーゲン−重合体抱合体を開示しており、ここで、コラー
ゲン(好ましくは、再形成されたアテロペプチドコラーゲン)は、合成の親水性重
合体(好ましくは、ポリエチレングリコール)と化学的に結合している。多官能性
の重合体を使用することにより、架橋コラーゲンが得られる。
発明の要旨
本発明の1つの局面は、合成の重合体架橋剤で架橋したマトリックス物質内に
含まれる複数の細胞を含有する細胞−ゲル組成物に関する。
本発明の他の局面は、細胞−ゲル組成物を製造する方法に関し、以下の工程を
包含する:
(a)細胞、マトリックス形成物質、および合成の重合体架橋剤の混合物を提供
する工程;および
(b)該混合物を、該マトリックス形成物質が該架橋剤により架橋される条件に
供する工程。
本発明のさらに他の局面は、生存哺乳動物内のある部位の組織を増強する方法
に関し、該方法は、上記細胞−ゲル組成物を該部位に配置することを包含する。
図面の簡単な説明
図1(a)は、実施例1のコラーゲン−SPEGの細胞−ゲルについて記録した、相
対吸光度データのグラフである。
図1(b)は、実施例1のコラーゲン−SPEGの細胞−ゲルについて記録した、規
格化した相対吸光度データのグラフである。
発明を実施するための態様
A.細胞−ゲル組成物および処方物
本明細書で使用する用語「細胞−ゲル」は、マトリックス物質内に含まれる複
数の生存細胞を含有する細胞−ゲル組成物および処方物に関し、このマトリック
ス物質は架橋剤で架橋され、これらの組成物および処方物は、生存組織を増強す
るのに有用である。
本明細書で使用する用語「増強する」は、欠陥(特に、硬組織または軟組織の
損失または不存在による欠陥)を、このような組織を提供し増強しまたは再配置
することにより、修復し予防しまたは緩和することに関する。
本明細書で使用する用語「マトリックス形成物質」は、架橋可能な重合体、す
なわち、架橋されることを可能にする官能基を有する重合体に関する。マトリッ
クス形成物質の例には、天然の供給源から得られるかまたは合成的に得られるか
にかかわらず、コラーゲン、フィブリン、フィブリノーゲン、キチン、キトサン
、それらの誘導体およびアナログ、およびそれらの混合物が包含される。
好ましくは、このマトリックス形成物質は、コラーゲンまたはコラーゲン誘導
体を含有する。コラーゲンは、動物の骨、軟骨、皮膚および結合組織の主要なタ
ンパク成分である。コラーゲンは、典型的には、天然の供給源(例えば、ヒト胎
盤、ウシの皮、軟骨または骨)から単離される。骨は、通常、乾燥され、脱脂さ
れ、粉砕され、そして無機分除去されて、コラーゲンを抽出されるのに対して、
皮および軟骨は、通常、細かく刻まれ、そして(コラゲナーゼ以外の)タンパク分
解酵素で分解される。コラーゲンは、大部分のタンパク分解酵素に抵抗性である
ので、この手順は、コラーゲンと共に見出される混入タンパクのほとんどを除去
するのに都合良く役立つ。コラーゲンは、沸騰させることにより変性され得、こ
れにより、周知の生成物であるゼラチンが生成される。
本明細書で使用する用語「コラーゲン」は、全ての形態のコラーゲンを意味し
、これらには、加工したまたはそうでなければ改変した天然コラーゲン、および
遺伝子工学により生成したコラーゲン(すなわち、組換えコラーゲン)が含まれる
。
適切なコラーゲンには、全てのタイプのコラーゲンが含まれ、好ましくは、I
型、II型およびIII型である。コラーゲンは、可溶性であり得(例えば、市販のVi
trogen(登録商標)100溶液コラーゲン)、テロペプチド領域を有し得るか、または
テロペプチド領域を省略し得る。好ましくは、このコラーゲンは、再構成した繊
維状アテロペプチドコラーゲン(例えば、Zyderm(登録商標)I Collagen Implant(
ZCI)、またはアテロペプチド溶液コラーゲン(CIS))である。種々の形態のコラー
ゲンが市販されているか、または、例えば、米国特許第3,949,073号;同第4,488
,911号;同第4,424,208号;同第4,582,640号;同第4,642,117号;同第4,557,764
号;および同第4,689,399号(これらの全ての内容は、本明細書中で参考として援
用されている)に記載のプロセスにより調製され得る。
本明細書で使用する用語「架橋マトリックス物質」は、1種またはそれ以上の
架橋可能な重合体が、1種またはそれ以上の架橋剤との化学反応により架橋され
て、共に共有結合を形成しているマトリックス物質に関する。
本明細書で使用する用語「架橋剤」は、(i)このマトリックス形成物質の官能
基と化学的に反応して共有結合を形成し得る官能基を有し、そして(ii)見かけ上
は非細胞障害性である化合物に関する。本明細書で使用する用語「化学的に反応
できる官能基」は、このマトリックス形成物質の官能基と化学的に反応して共有
結合を形成できるように、活性化または誘導体化し得る官能基を包含する。本明
細書で使用する用語「合成の架橋剤」は、天然に生じない架橋剤に関する。1つ
の実施態様では、この合成の架橋剤は、重合体化合物から誘導される。
合成の重合体架橋剤の例には、活性化した多官能性ポリエチレングリコールが
包含される。例えば、二官能性ポリエチレングリコール(dPEG)は、まず、無水ジ
カルボン酸(例えば、無水グルタル酸)と反応し、引き続いて、活性化剤(例えば
、N-ヒドロキシスクシンイミド)と反応して、合成の重合体架橋剤であるスクシ
ンイミジルポリ(エチレングリコール)グルタレート(本明細書中では、SPEGと表
わす)を形成する。現在では、約400〜約20,000の分子量、さらに好ましくは、約
1,000〜約7,000の分子量のPEGが好ましい。無水ジカルボン酸の例には、無水シ
ュウ酸、無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水
1,8-ナフタレンジカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物な
どが包含される。活性化剤は、カルボン酸と反応して活性化エステル−COOR(こ
こで、Rは、適切な脱離基である)を生じる化合物である。活性化基の例には、N-
ヒドロキシスクシンイミド、N,N'-ジスクシンイミジルオキサレート、N,N'-ジス
クシンイミジルカルボネートなどが包含される。この他の結合基については、ま
た、Davisに発行された米国特許第4,179,337号を参照のこと。
架橋剤は、このマトリックス形成物質と化学的に反応して、架橋を形成する。
この架橋剤およびマトリックス形成物質を誘導体化し、引き続いて、反応させて
架橋を形成するいずれの公知方法も使用され得る。例えば、コラーゲン分子(こ
れは、遊離アミノ基(-NH2)を持った、多くの利用可能なリシン基を有する)は、
活性エステル部分(例えば、スクシンイミジルポリ(エチレングリコール)グルタ
レートの活性エステル部分)で架橋されて、アミド結合(−CONH−)を形成し得る
。
この架橋度は、架橋に関与するマトリックス形成物質の(初期)分子1個あたり
の官能基の数として、表わされ得る。例えば、コラーゲンについては、架橋に関
与する利用可能なリシンの数は、このリシンの1つの残基から100%まで、好ま
しくは、10%〜50%、さらに好ましくは、20%〜30%で変わり得る。反応性のリ
シン残基の数は、標準的な方法、例えば、TNBS(2,3,4-トリニトロベンゼンスル
ホン酸)との反応により、測定され得る。
本明細書で使用する用語「見かけ上は非細胞障害性」は、架橋を起こすのに有
用な濃度で細胞環境(すなわち、細胞懸濁液)に添加したとき、細胞の生存率を実
質的に低下させず(例えば、7日間にわたって50%より多く細胞の生存率を低下
させず)、かつ生理学的に有害でない架橋剤に関する。
本明細書で使用する用語「細胞」は、生存細胞(好ましくは、例えば、ヒト細
胞を含めた哺乳類の細胞)に関する。細胞は、自原性、同種同系、同種異系また
は外因性であり得、さらに好ましくは、自原性または同種異系である。遺伝子的
に操作された細胞も含まれる。細胞−ゲルは、異なるタイプの細胞を含有し得、
これは、例えば、組織の形成において、相乗的に作用するように選択され得る。
細胞のタイプの例には、筋細胞、神経細胞、上皮細胞、結合組織細胞、および臓
器細胞が包含される。細胞の例には、線維芽細胞、平滑筋細胞、横紋筋細胞、心
筋細胞、神経細胞、上皮細胞、内皮細胞、骨細胞、骨始原細胞、骨髄細胞、血球
、脳細胞、腎細胞、肝細胞、肺細胞、膵細胞、脾細胞、胸細胞、包皮細胞、卵細
胞、精細胞、および前立腺細胞が包含される。他の哺乳類細胞も、本発明の実施
に有用であり、本明細書での考慮から除外されるものではない。あるいは、細胞
−ゲルは、哺乳類以外の真核細胞、原核細胞またはウイルスを用いても調製され
得る。
本発明の細胞−ゲル組成物および処方物は、さらに、それらが(i)見かけ上は
非免疫原性であり、そして(ii)生体腐食性であるという性質を有する。本明細書
で使用する用語「見かけ上は非免疫原性」は、それを投与したとき、実質的な免
疫応答、炎症または異物反応を起こさない物質に関する。本明細書で使用する用
語「生体腐食性」は、ある物質が、酵素(例えば、コラゲナーゼのようなプロテ
イナーゼを含めて)の作用または他の生物学的プロセスにより、腐食されるかま
たは分解されて、正常な体内プロセスに適合する非毒性物質または副生成物を生
じる可能性に関する。物質が生体腐食性である程度は、その生体腐食期間により
表わされ得る。
本明細書で使用する用語「生体腐食期間」は、この架橋マトリックス物質の実
質的な生体腐食が起こるまでの期間に関する。この生体腐食期間は、特定の指標
に対して変化し得、そして取り込まれた細胞を最初に配置し支持しそして収容す
る必要性、これらの細胞を成長し増殖させる必要性、および元の架橋マトリック
ス物質を最終的に完全にまたはほぼ完全に腐食させる必要性を反映する。細胞−
ゲルの生体腐食期間の例には、皮膚に関連した細胞−ゲルについては、20〜45日
間、骨に関連した細胞−ゲルについては、30〜90日間、神経に関連した細胞−ゲ
ルについては、10〜30日間が挙げられる。
本明細書で使用する用語「投与」は、一般には塗布する、付着させる、移植す
る、注射するなどの方法のことである。この細胞−ゲル物質が懸濁液である場合
、注射が好ましい投与方法である。
B. 細胞−ゲルの調製および使用
本発明の細胞−ゲル組成物および処方物は、マトリックス形成物質、架橋剤お
よび細胞懸濁液を同時に混合することを包含する一段階方法により、調製され得
る。
あるいは、この細胞−ゲル組成物および処方物は、多くの二段階方法(細胞懸
濁液およびマトリックス形成物質を予め混合し、続いて、架橋剤を添加する方法
;細胞懸濁液および架橋剤を予め混合し、続いて、マトリックス形成物質を添加
する方法;およびマトリックス形成物質および架橋剤を予め混合し、続いて、細
胞懸濁液を添加する方法)により、調製され得る。
得られる細胞−ゲル組成物または処方物の物理的特性(例えば、粘度、コンシ
ステンシーおよび触感(texture))は、反応物の濃度、反応条件、反応時間または
他の要因を変えることにより、調整され得る。本明細書で使用する用語「物理的
特性」には、例えば、粘度、コンシステンシー、触感、弾性率、表面特性、表面
粗さ、孔サイズ、孔形状、孔の相互経路などが包含される。
例えば、細胞−ゲルの粘度は、この反応混合物中のマトリックス形成物質の濃
度を上げることにより、増加し得る。例えば、コラーゲン−SPEGの細胞−ゲルで
は、好ましいコラーゲン濃度は、5〜100mg/mLであり、さらに好ましくは、約10
〜75mg/mL、最も好ましくは、30〜60mg/mLである。
細胞−ゲル中に存在する架橋の架橋度は、マトリックス形成物質の架橋剤に対
するモル比に従って、変えることができる。マトリックス形成物質の濃度に対し
て架橋剤の濃度を上げると、より高い粘度の細胞−ゲルが生じ、これは、ゲル様
、可塑性、半固体または固体として特徴づけられ得る。逆に、架橋剤の相対濃度
を下げると、より低い粘度の細胞−ゲルが生じ、これは、流体または液体として
特徴づけられ得る。種々の粘度、触感およびコンシステンシーの連続体(continu
um)が得られる。例えば、コラーゲン−SPEGの細胞−ゲルでは、コラーゲン:SPE
Gのモル比を約200:1〜約5:1にすると、流体で注射可能な細胞−ゲルが生じ
るのに対して、約5:1〜約1:10の比では、半固体の細胞−ゲルが生じ、そし
て、約1:10〜約1:75のより高い比では、より堅固で密に架橋された細胞−ゲ
ルが生じる。約1:50の比では、典型的には、コラーゲンの全ての利用可能なリ
シンが架橋に関与している細胞−ゲルが得られる。
細胞−ゲルに存在している架橋の架橋度は、反応温度および反応時間を調整す
ることにより、さらに制御され得る。反応温度を上げると(37℃までで、しかし3
7℃を大きく超えない)、架橋の形成速度が増す。逆に、反応温度を下げると、架
橋の形成速度が減少する。例えば、架橋を形成するためのコラーゲンとSPEGとの
反応は、室温では迅速に起こるが、5℃では、かなり遅くなる。反応中、反応時
間を増すと、架橋度が増大する。他の条件(例えば、濃度および温度)を調整する
ことにより、適切な反応速度(従って、反応時間)が得られ得る。
他の要因(例えば、pH)は、細胞−ゲル特性を変えるために調整できる。例えば
、溶液コラーゲンおよび活性化PEGを用いて得られる細胞−ゲルについては、こ
の反応混合物のpHを変えることにより、広範囲の繊維状コラーゲン含量が得られ
得る。さらに、例えば、架橋の際、溶液コラーゲンおよび活性化PEGを含有する
細胞−ゲル反応混合物をアジテートすることにより(例えば、撹拌するかまたは
注射筒間に通すことにより)、微粒子状のミクロゲル物質が得られ得る。この反
応混合物の塩濃度もまた、細胞−ゲル特性を制御するために調整し得る。
反応物(例えば、マトリックス形成物質、架橋剤および細胞懸濁液)は、混合前
に薬学的に受容可能なキャリアに懸濁され得る。例えば、SPEGは加水分解を受け
るので、典型的には、使用前に、−20℃で乾燥状態で保存され、使用直前に、水
性混合物として調製される。あるいは、SPEGは、(例えば、グリセロール、PEG、
トリグリセリド、DMSOなどを使用した)非水性懸濁液として、または水含量を減
らした懸濁液として、調製され得る。このような非水性懸濁液または減水水性懸
濁液は、反応速度および反応時間をさらに制御するために、使用され得る。同様
に、非水性の細胞懸濁液または減水した水性細胞懸濁液は、細胞−ゲル特性を制
御するために、調製され得る。
本明細書で使用する用語「細胞懸濁液」は、液体媒体(好ましくは、水性培地)
に懸濁した生存細胞に関する。適切な液体の例には、例えば、生理学的に緩衝化
した塩溶液および細胞培養培地が包含され、また、グリセロール、DMSO、トリグ
リセリドなどのような成分が包含され得、さらに、当該技術分野で公知の培地捕
足物(例えば、血清、成長因子、ホルモン、糖、アミノ酸、ビタミン、金属結合
タンパク質、リポタンパク質など)を含有し得る。生存細胞の凝集物を解離する
ことによる細胞懸濁液の調製方法は、充分に確立されており、当業者に周知であ
る(例えば、R.I.Freshney、Culture of Animal Cells −A Manual of Basic Tec hniques
、第2版、Alan R.Liss、Inc.、New Yorkを参照)。例えば、一般的な方
法には、細胞凝集物を、EDTA、またはトリプシン、コラゲナーゼのような酵素(
これは、ある細胞を他の細胞または固体表面から分離する)で処理することが包
含される。
細胞懸濁液の濃度は、細胞−ゲルの触感および粘度、このゲルの次の定着速度
、および/またはこのゲル内での細胞の生存率を最適化するように、選択され得
る。現在では、約1×104〜1×106細胞/mLの反応混合物濃度が得られる細胞懸
濁液濃度が好ましく、約1×105細胞/mLの反応混合物濃度が得られる細胞懸濁液
濃度は、さらに好ましい。
本発明の細胞−ゲルは、さらに、正常組織の治癒または再成長を促進するため
に、生物学的に活性な因子を含有し得る。例えば、以下のような因子を取り込ま
せ得る:ヘパリン、表皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子(TGF)-α、TGF-β(TG
F-β類の任意の組み合わせを含めて)、TGF-β1、TGF-β2、血小板由来成長因子
(PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB)、酸性線維芽細胞成長因子(FGF)、塩基性FGF、結
合組織活性化ペプチド(CTAP)、β-トロンボグロブリン、インスリン様成長因子
、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF類)、エリスロ
ポイエチン(EPO)、神経成長因子(NGF)、インターフェロン(IFN)、骨形成因子な
ど。このような因子の取り込みおよび因子の適切な組み合わせは、この細胞−ゲ
ルの形質転換を促進し得、また、負傷部位の治療に使用され得る。
成長因子を含有する本発明の細胞−ゲルは、負傷治癒促進の場合のように、因
子の持続的な投与に特に適している。骨形成因子およびコファクター(TGF-βを
含めて)は、骨の修復、増強および/または欠陥修復に使う予定の組成物に取り込
むのが有利な場合がある。
生物学的な成長因子(例えば、EGFおよびTGF-β)を含有する本発明の細胞−ゲ
ルは、この因子の適切な量をこの組成物と混合するか、または架橋剤で処理する
前に、この因子をこのマトリックス形成物質に取り込むことにより調製される。
生物学的な成長因子(例えば、EGFおよびTGF-β)を含有する本発明の細胞−ゲ
ルは、この因子の適切な量をこの組成物と混合することにより調製される。例え
ば、この細胞−ゲルの調製中に、適切な量の架橋剤を使用することにより、この
因子を、このマトリックス形成物質または架橋マトリックス物質に化学的に結合
し得る。例えば、この因子は、このマトリックス形成物質を架橋したのと同じ様
式で、このマトリックス形成物質に共有結合し得る。この因子の分子を、この架
橋マトリックス物質に束縛しておくことにより、この因子の有効量が、実質的に
低減される。用語「有効量」は、所望の効果を得るために必要な組成物の量を意
味する。それゆえ、成長因子を含有する組成物の「組織成長促進量」とは、検知
できる程度まで組織の成長を刺激するために必要な因子の量を意味する。本文脈
での組織とは、結合組織、骨、軟骨、表皮および真皮、血液、および他の組織を
含む。さらに、このマトリックス形成物質に共有結合的に束縛された因子は、有
効な制御された放出薬剤送達マトリックスとして、役立つ。
例えば、因子は、活性化PEGを用いたコラーゲンに化学的に結合し得る:この
因子を、まず、希釈剤溶液中にて、約5分間〜約1時間にわたって、過剰のモル
量の活性化PEGと反応させる。この因子は、好ましくは、約1μg/mL〜約5mg/m
Lの濃度で提供されるのに対して、この活性化PEGは、好ましくは、30〜80倍過剰
のモル量を提供する最終濃度で添加する。得られた結合因子を、次いで、pH7〜
8で、水性コラーゲン混合物(約1〜約60mg/ml)に添加し、さらに反応させる。
得られた組成物を、室温で一晩放置する。そのペレットを、遠心分離により集め
、結合していない因子を除去するために、PBSを用いて激しく撹拌することによ
り、洗浄する。得られたコラーゲン−因子物質を、次いで、細胞−ゲルを調製す
る際に、このマトリックス形成物質で使用する。
この他に、架橋後にて、さらに集塊しているかまたはより堅固な細胞−ゲルを
得るために、微粒子物質(例えば、ヒドロゲルまたはコラーゲン−dPEGビーズ、
ヒドロキシアパタイト/リン酸トリカルシウム粒子、ポリ乳酸/ポリグリコール酸
(PLA/PGA)微粒子、またはテフロンビーズ)を細胞−ゲル中に含有させ得る。
骨の欠陥または偽関節の修復に適切な処方物は、高濃度のマトリックス形成物
質および高濃度の架橋剤の細胞−ゲルを提供するか、または適切な微粒子物質と
混合することにより、調製され得る。本明細書で使用する用語「適切な微粒子物
質」は、実質的に水不溶性で生体適合性であり、かつマトリックス形成物質また
は架橋マトリックス物質と非混和性の微粒子物質を意味する。この微粒子物質の
粒子は、繊維状であり得、または直径約1〜500μmのサイズ範囲であり得、そし
て形状はビーズ状または不定形であり得る。例えば、注射可能な細胞−ゲル(例
えば、軟組織の増強に有用なもの)では、好ましい粒子サイズは、約150μm未満
である。骨に関連した増強に有用な細胞−ゲルでは、好ましい粒子サイズは、約
100μmより大きい。例示の微粒子物質には、繊維状の架橋コラーゲン、ゼラチン
ビーズ、架橋コラーゲン−PEG粒子、ポリテトラフルオロエチレンビーズ、シリ
コーンゴムビーズ、ヒドロゲルビーズ、炭化ケイ素ビーズ、ガラスビーズ、炭素
繊維、PLA/PGA繊維、およびポリエチレンテレフタレート(PET)繊維が挙げられる
が、これらに限定されない。現在好ましい微粒子物質には、ヒドロキシアパタイ
トおよびリン酸トリカルシウムがある。
注射可能な展性で可塑性の細胞−ゲル組成物は、上で示した反応パラメータを
調整するか、または充分な量の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、水または
グリセロール)を添加することにより、調製され得る。本明細書で使用する用語
「充分な量」は、本発明の細胞−ゲルと組み合わせて使用されるキャリアの量に
適用される。充分な量とは、この細胞−ゲルと混合したとき、それを物理的に望
ましい形態(例えば、注射可能な溶液、注射可能な懸濁液、可塑性移植片または
展性移植片、剛性移植片など)にする量である。本明細書で使用する用語「注射
可能な」は、典型的な注射圧力を使用することにより、適切な手術用注射針を通
って流動させ得る組織および粘度を有する物質に関する。例えば、注射可能な物
質は、通常の圧力下にて、32ゲージの注射針を通して押し出すことができる。こ
の混合物は、増強が必要な部位(例えば、腱または軟骨)に直接注射され、かつ検
出可能な炎症または異物反応を本質的に引き起こさない。
注射可能な細胞−ゲル処方物は、例えば、皮膚のひだに充填するためおよび皮
膚表面に支持を与えるための皮膚増強、括約筋増強(例えば、自制回復用の)、組
織の血管再生、デポー剤セルの送達、腫瘍血管の閉塞、治療、および避妊/不妊
などの治療に有用である。
あるいは、この細胞−ゲルは、架橋が完結する前に、注射により投与し得る。
例えば、このマトリックス形成物質および細胞懸濁液の水性混合物を、架橋剤を
含む低濃度の溶液と組み合わせ、混合し、そしてこの反応混合物を、注射が困難
になるほど充分な粘度増加が起こる前に(通常、約10分間)、注射するかまたは付
与する。混合は、ルアーロックハブを備えた2本の注射器間、または二重の小室
(例えば、ダブルバレル)を有する単一の注射器に通すことにより、行うことがで
きる。この反応混合物は、反応して、その場で(すなわち、増強の必要な部位で)
架橋を形成するか、または内因性の組織に別に架橋して、この細胞−ゲルを適当
な場所に係留し得る。
同様に、増強の必要な部位に、細胞およびマトリックス形成物質を含有する混
合物を注射し、引き続いて、同じ部位にて、架橋剤を含有する混合物を注射し得
る。あるいは、増強の必要な部位に、細胞および架橋剤を含有する混合物を注射
し、引き続いて、マトリックス形成物質を含有する混合物を注射し得る。
所望される場合、密度が高くより粘稠な処方物を、任意の所望形状(例えば、
シートまたは膜、メッシュ、管またはシリンダー、ホック、コードまたはロープ
など)に形造(cast)するかまたは成形し得る。
柔軟性のシート形態または膜形態の細胞−ゲルは、ゲル膜を調製するための当
該技術分野で公知の方法と類似の方法により、調製され得る(例えば、米国特許
第4,600,533号;同第4,412,947号;および同第4,242,291号を参照のこと)。例え
ば、高濃度(10〜100mg/mL)のCISまたは繊維状コラーゲン(好ましくは、アテロペ
プチド繊維状コラーゲン(例えば、ZCI))、活性化PEG(約3,400の分子量を有する)
、および細胞懸濁液の混合物を、平らなシート容器に形造し、37℃で2〜3時間
反応させる。得られるコラーゲン−細胞−ゲルを、無菌のスパチュラなどを用い
て、過剰の反応溶液から除去し、これは、過剰の未反応架橋剤を除去するために
、PBSで洗浄し得る。さらに柔軟性の膜形態は、出発物質として、より低いコラ
ーゲン濃度およびより高い架橋剤濃度を用いることにより、得られる。
同様に、鞘または管形態の細胞−ゲル組成物を調製し得、これらは、脈管構造
物(例えは、血管または神経組織鞘)を修復するか増強するのに、有用である。
本発明の組成物は、軟骨または重量のかからない骨(例えば、指の骨)を置換す
るのに充分な密度および剛性のある形態で、調製され得る。これらの組成物は、
例えば、鼻、耳、膝、喉頭、気管リングおよび関節表面の再構築において、ある
程度の構造を要する組織を修復し支持するのに有用である。また、適切に形成し
た軟骨質の物質を用いて、鍵、靭帯および血管を交換できる。これらの用途では
、この細胞−ゲルは、一般に、一定形状に形造または成形される:健および靭帯
の場合には、コードまたはロープに織るためのフィラメントを形成するのが好ま
しいこともある。
本明細書で引用した全ての公報、特許、および特許出願の内容は、個々の各公
報または特許出願の内容が、具体的かつ独立して援用されているかのように、本
明細書中で参考として援用されている。
C.実施例
本発明は、以下の実施例を参照して、さらに理解されるが、これらの実施例は
、本来単なる例示であり、本発明の範囲を限定するために使用されることを意図
していない。実施例1 コラーゲン−SPEG−細胞−ゲルの調製
5代目の継代のヒト皮膚線維芽細胞を使用した。このヒト皮膚線維芽細胞を、
American Type Culture Collection(12301 Parklawn Drive、Rockville、MD 208
52、USA)にATCC受託番号CRL 1885で寄託した細胞から継代培養した。
0日目に、細胞を、EDTA(2mM)中のトリプシン25 mg/mLを用いてトリプシン処
理し、この細胞を、室温にて150〜200gで10分間遠心分離することによりペレッ
ト化した。その上清は捨て、ペレットをDME培地(4.00 mMのL-グルタミン、1000
mg/Lのグルコース、100 mg/Lのピルビン酸ナトリウムを含むダルベッコ改変イー
グル培地)5mLに再懸濁した。この細胞の濃度を、血球計を用いて測定した。こ
の細胞懸濁液を、1×105細胞/mLの濃度までDME培地で希釈した。
ストック細胞懸濁溶液の1μL、10μLおよび100μLのアリコートを用いてコン
トロールを調製し、これらをこの培養研究において、DME培地中で100細胞/ウェ
ル(1A1、1A2、2A1、2A2)、1,000細胞/ウェル(1A3、1A4、2A3、2A4)、および10,0
00細胞/ウェル(1A5、1A6、2A5、2A6)の濃度を得るために使用した。(1A3のよう
な表示は、プレート1のA列3欄を表わす)。
異なるZyderm Iのサンプル(Collagen Corporation、Palo Alto、CA)を全体で
12 mlで配合し、そして均一にするために無菌ブリッジ(sterile bridge)(例えば
、止め栓)を通して混合することにより、Zyderm Iコラーゲンのプールを調製し
た。Zyderm Iは、35 mg/mL(すなわち、1.17×10-4mol/L)の濃度で調製した繊維
状コラーゲン(300,000g/mol)の水性混合物である。
45.0 mgの活性化PEGを10 mLのPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)に溶解して、4.5
mg/mL(すなわち、約1.32×10-3mol/L)の濃度にすることにより、グルタル酸スク
シンイミジルポリ(エチレングリコール)(SPEG、3,400g/mol)のストック溶液を調
製した。
Zyderm Iプールの0.5 mLのアリコートを用いて、Zyderm Iのコントロール(1
B4、1B5、1B6)を調製した。
1.5 mLのZyderm Iを30μLのストック細胞懸濁液と混合することにより、Zyde
rm I/細胞培養液を調製した。各ウェル(1B1、1B2、1B3)に0.5 mLのアリコート
を入れて、1000細胞/ウェルにした。
2 mLのZyderm Iプール、10μLの活性化PEG溶液、および40μLのストック細
胞懸濁液を混合することにより、コラーゲン/SPEG(10:1)の細胞−ゲルを調製
した。各ウェル(1C1、1C2、1C3)に0.5 mLのアリコートを入れて、1000細胞/ウェ
ルを得た。
2 mLのZyderm Iプールと10μLのSPEGストック溶液を混合することにより、
コラーゲン/SPEG(10:1)コントロールを調製した。各ウェル(1C4、1C5、1C6)に
0.5 mLのアリコートを入れた。
2 mLのコラーゲンストック溶液、1μLの活性化PEG溶液、および40μLのスト
ック細胞懸濁溶液を混合することにより、コラーゲン/SPEG(100:1)の細胞−ゲ
ルを調製した。各ウェル(1D1、1D2、1D3)に0.5 mLのアリコートを入れて、1000
細胞/ウェルにした。
2 mLのコラーゲンストック溶液と10μLのSPEGストック溶液を混合することに
より、コラーゲン/SPEG(100:1)コントロールを調製した。各ウェル(1D4、1D5
、1D6)に0.5 mLのアリコートを入れた。
培養プレートを、4℃にて、150〜200gで2分間にわたって、遠心分離した。
0日目、1日目、3日目および5日目に、1 mLのDME−完全培地(10%のウシ胎
児血清および1%のペニシリンまたはストレプトマイシンをさらに含有するDME
培地)を各ウェルに添加することにより、栄養補給を行った。
3日目および7日目に、Alamar Blue Assayを行った:1 mLの培地あたり、10
0μLのAlamar Blueを各ウェルに添加し、引き続いて、インキュベーションの3
時間後および6時間後に、Cambridge Fluorometer EX 550 EM 590を用いて、590
nmでの吸光度を記録した。6時間目の測定値を記録した後、この培地を除去し
、1 mLの新鮮な培地を添加した。そのデータを表1に要約する。分析したデー
タを表2に提示する。細胞含有試料に対して示されている「規格化した」強度は
、この細胞含有試料について記録した平均吸光度と、細胞のない類似試料につい
て記録した平均吸光度との間の差異を反映している。規格化した細胞増殖のデー
タを、図1にグラフで示す。この増殖のデータは、細胞の生存率がこの架橋コラ
ーゲン−SPEGの細胞−ゲル内での増殖によって悪影響を受けていないことを示し
ている。
7日目の最後のAlamar Blue Assayの後、この細胞培養液のコントロール(1A1
〜1A6、2A1〜2A6)をトリプシンで処理し、血球計を用いて計数した。102細胞/ウ
ェルコントロールは、細胞が少なすぎるため計数できなかった。103細胞/ウェル
コントロールは、9.1×103細胞/ウェルの平均総数を有していた。104細胞/ウェ
ルは、3.9×104細胞/ウェルの平均総数を有していた。
7日目のAlamar Blue Assayを行った後、コラーゲンを含有する全てのウェル
を、10%の緩衝化ホルマリンで一晩固定した。予備の組織学的な検査の結果は、
このコラーゲン/細胞およびコラーゲン−SPEGの細胞−ゲル物質全体にわたって
細胞が存在しており、この架橋コラーゲンマトリックスによって悪影響を受けて
いないことを示した。