JP2519982B2 - 面内磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

面内磁気記録媒体の製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、ガラス基板上に磁性記録膜等を形成する面
内磁気記録媒体の製造方法に関するものである。更に詳
しく述べると、ガラス基板と下地膜との間に、ガラス基
板から放出されるガスを閉じ込めうる非磁性中間膜を設
けて、下地膜が成膜初期の過程においても酸化され難く
する面内磁気記録媒体の製造方法に関するものである。
[従来の技術] 磁気ディスク装置の面内(水平)磁気記録媒体は様々
な技術を利用して製造されているが、近年、ガラス基板
の表面をスパッタ技術により磁性薄膜を形成したガラス
ディスが開発されている。このような磁気記録媒体とし
ては、例えば第5図に示すように、ガラス基板10上にCr
下地膜12とCoNiCrやCrNi等の記録膜14とC保護膜16を順
次積層した構造がある。
磁気記録媒体は第6図に示すようにインライン型スパ
ッタ装置により効率よく製造される。プロセス室20の入
口側と出口側にそれぞれ搬入室22と搬出室24とが設けら
れる。プロセス室20の内部を高真空状態に維持するた
め、搬入室22及び搬出室24との間はそれぞれアイソレー
ション・バルブ26,28で仕切られる。ガラス基板はパレ
ットと呼ばれる搬送用の治具に装着されて装置内部を矢
印方向に移動する。プロセス室20内では先ずヒータによ
りガラス基板を所定温度に加熱し、次いでCrターゲット
を持つスパッタステージ30、CoNiCrターゲットを持つス
パッタステージ32、Cターゲットを持つスパッタステー
ジ34で順次成膜が行われる。
特性の良好な磁気記録媒体を得るために次のような点
に注意が払われている。
プロセス室内の到達真空度の向上 スパッタガスの高純度化 スパッタリングターゲット材の高純度化 [発明が解決しようとする課題] このような工程管理を厳重に行うのは、下地膜や記録
膜の成膜過程においてそれらの酸化をできる限り抑制す
るためである。特に下地膜の酸化は磁気特性を大幅に低
下させるので、いかにして酸化の少ない下地膜を形成す
るかが極めて重要である。
しかしガラス基板の場合、基板の表面にはH2O,O2,OH
基等が付着している。そして一般に下地膜形成時には下
地膜の結晶性を向上させるため基板加熱を行う。即ちCr
下地膜はガラス基板を加熱した直後に形成される。する
と基板加熱によってガラス基板に吸着していたH2O,O2,O
H基等の一部はガラス基板から解離してプロセス室内に
拡散し、Cr成膜時の雰囲気ガス(Arガス)中の炭素分圧
が高くなる。そのためCrターゲットからスパッタされた
Cr原子は基板表面に到達する前に酸化したり、基板に到
達した段階で雰囲気中の酸素を取り込み酸化する問題が
生じる。
またガラス基板の表面にはH2O,O2,OH基等の一部が残
留したままになっているから、基板表面に飛来してくる
Cr粒子がCr粒子自身の運動エネルギー及び基板加熱によ
る熱エネルギーによって基板上の酸素と反応し酸化する
問題もある。
何れにしてもこのようなCrの酸化は下地膜として最も
望ましいとされる金属Crの体心立方格子の結晶成長を妨
害し、磁気記録媒体としての特性を大幅に低下させる要
因となる。
本発明の目的は、下地膜が成膜初期の過程においても
酸化され難く、そのため磁気特性が良好で下地膜を薄く
できるような面内磁気記録媒体の製造方法を提供するこ
とにある。
[課題を解決するための手段] 本発明は、ガラス基板上に、該ガラス基板表面に吸着
しているH2O,O2,OH基を閉じ込めうるTi金属からなる非
磁性中間膜をスパッタ法により形成し、次にガラス基板
を加熱して、前記非磁性中間膜上に、Cr下地膜、CoNiCr
又はCoNiからなる記録膜、保護膜を順次スパッタ法によ
り形成する面内磁気記録媒体の製造方法である。
また本発明は、ガラス基板を加熱し、加熱したガラス
基板上に、Ti金属をスパッタすることにより雰囲気中の
H2O,O2,OH基を取り込みつつ堆積させてガラス基板表面
に残留しているH2O,O2,OH基を閉じ込めうる非磁性中間
膜を形成し、引き続きCr下地膜、CoNiCr又はCoNiからな
る記録膜、保護膜を順次スパッタ法により形成する面内
磁気記録媒体の製造方法。
[作用] ガラス基板上に形成したTi金属からなる非磁性中間膜
は、ガラス基板表面に吸着しているH2O,O2,OH基等を閉
じ込め、加熱時にガスが放出されないようにする。また
加熱後にTi金属をスパッタした場合は、スパッタされた
Ti金属が雰囲気中のH2O,O2,OH基等を取り込みつつ堆積
し、それによって形成された非磁性中間膜は、ガラス基
板表面に残留しているH2O,O2,OH基等を閉じ込める。
これによって下地膜は酸化され難くなり、磁気記録媒
体として必要な特性が向上する。また下地膜の初期成膜
過程において酸化が極めて少ないために、膜厚が薄くて
も良好な下地膜を形成できる。例えば下地膜材料として
Crを用いると、下地膜として好ましい金属Crの体心立方
格子の結晶が初期成膜過程から生成される。
特にガラス基板を加熱する前に非磁性中間膜を形成す
ると、基板加熱によってH2O,O2,OH基等が雰囲気中に拡
散するのを防止でき、プロセス室内の真空度の低下が生
じず、ターゲットからスパッタされた下地材粒子が基
板表面に到達する前に酸化されるのを防止し、又同時に
基板表面に形成された下地材層が酸化されるのを防止
できる。
[実施例] 第1図は本発明方法により製造した面内磁気記録媒体
の一実施例を示す拡大断面図である。磁気記録媒体40
は、ガラス基板42上に先ずTi中間膜44を設け、その上に
順次Cr下地膜46、CoNiCr記録膜48、C保護膜50を形成し
た構造である。
このような磁気記録媒体40は例えば第2図に示すイン
ライン型スパッタ装置を使用して製造する。このスパッ
タ装置では、基本的には従来の場合と同様、プロセス室
60の入口側及び出口側にそれぞれガラスディスク基板の
搬入室62と搬出室64とが設けられ、それらの間にアイソ
レーション・バルブ66,68が取り付けられている。プロ
セス室60内には搬入側から搬出側に向かって順次Tiター
ゲットを持つ第1のスパッタステージ70、基板加熱用の
ヒータを有する加熱部72、Crターゲットを持つ第2のス
パッタステージ74、CoNiCrターゲットを持つ第3のスパ
ッタステージ76、Cターゲットを持つ第4のスパッタス
テージ78が配列されている。
ガラス基板は矢印に示す方向に送られる。先ず第1の
スパッタステージ70でTi中間膜が形成され、次いで加熱
部72で所定基板温度まで加熱された後、第2のスパッタ
ステージ74でCrの成膜が行われ、次いでCoNiCrの成膜、
Cの成膜が行われて搬出される。
次にこのような製造方法によって試作した磁気記録媒
体の静磁気特性を第1表及び第2表に示す。以下の表に
おいて、符号(⊥)は成膜中のディスク搬送方向と垂直
に磁界を印加した場合、符号()は成膜中のディスク
搬送方向の平行に磁界を印加した場合の測定値を示して
いる。
試料の作成条件は次の通りである。
基板加熱温度…350℃ 基板搬送温度…180mm/分 Crターゲット投入パワー…5.6〜6.0W/cm2 CoNiCrターゲット投入パワー…1.9W/cm2 Cターゲット投入パワー…5.6W/cm2 Tiターゲット投入パワー…3.0W/cm2 到達真空度…5.0×10-7Torr以下 スパッタArガス圧力…10mTorr 第1表はTi中間膜の有無の効果を比較した結果であ
り、従来品AはTi中間膜が無い場合、本発明品Aは600
ÅのTi中間膜を有する例である。それ以外の膜厚構成は
同一である。
この第1表からCr膜厚を同一にした場合にはTi中間膜
が有する本発明品Aの方が高保磁力になることが判る。
第2表はCr下地膜の厚さを変えた場合である。本発明
品Bは450ÅのTi中間膜を有し且つCr下地膜を薄くして
いる。
第2表から本発明品Bは従来品Bに比べて薄いCr膜厚
で同程度の静磁気特性が得られることが判る。
上記の実施例のように、先ずガラス基板にTi膜を形成
し、次いで基板加熱を行ってそれぞれ成膜する方法は、
プロセス室内の真空度を高く維持することができる点で
好ましい。その様子を第3図に示す。第3図はTi中間膜
の有無に対するガラス基板からのガス放出量を比較した
ものである。ヒータ加熱中及び加熱後の経過時間に対す
る真空度の変化をプロットすると、Ti中間膜のある場合
にはTi中間膜が無い場合に比べて到達真空度を約1桁低
くできる。このことはその後のCr下地膜のスパッタリン
グ工程においてCrの酸化を防止でき、磁気特性を向上さ
せることができることを意味している。
しかしTi成膜と基板加熱の順序を入れ換えてもTi中間
膜の効果は生じる。第4図に示すインライン型スパッタ
リング装置では、プロセス室60内に搬入されたガラス基
板を先ず加熱部72で加熱し、次いでTiターゲットを有す
る第1のスパッタステージ70でTi成膜を行い、引き続い
てCr成膜、CoNiCr成膜、C成膜を行っている。Tiターゲ
ットを有する第1のスパッタステージ70と加熱部72との
位置を入れ換えたこと以外は第2図に示すものと同様で
あるから、対応する部分には同一符号を付しそれらにつ
いての説明は省略する。
このような手順によって製作した試料の静磁気特性を
第3表に示す。またそれと同一試料についての動特性を
第4表に示す。
動特性の測定条件は次の通りである。
ディスク回転数…3600rpm 使用ヘッド …薄膜ヘッド ヘッド浮上高さ…0.15μm 動特性を示す評価項目の定義は次の通りである。
ピークシフト…B6D9(16進数表示)書込みパターンにお
ける信号ピークのシフト量 高周波出力…5MHz書込み信号における平均再生出力 分解能…1.88MHzと5MHz書込み時の平均再生出力比(高
周波出力/低周波出力) 重ね書き特性…1.88MHzで信号を書込み、更に5MHzで信
号を重ね書きした後の残留低周波信号を出力と低周波出
力の比 信号対雑音比…信号消去時雑音と再生出力の比 第3表及び第4表から、加熱した後でTi成膜を行った
場合でもTi中間膜が無い信号と比較すると高保磁力、高
角形比が得られ、磁気ディスクとしての動特性も向上す
ることが判る。
本発明において、ガラス基板と下地膜との間に設けら
れる中間膜の膜厚は50Å以上でクラックが発生しない膜
厚までならよく、特に望ましい値は200〜1000Å程度で
ある。
[発明の効果] 本発明は上記のように、まずガラス基板上にTi金属か
らなる非磁性中間膜を設けるから、加熱時にガラス基板
から放出されるガス(ガラス基板表面に吸着しているH2
O,O2,OH基など)を閉じ込めることができ、中間膜の上
に、酸化がないCr下地膜を形成できる。また本発明は、
加熱した後にスパッタ法でTi金属からなる中間膜を形成
し、Cr下地膜を成膜した場合でも、ガラス基板の加熱に
よって雰囲気中に拡散したH2O,O2,OH基等をスパッタさ
れるTi金属が取り込み、そのまま堆積した非磁性中間膜
がガラス基板表面に残留しているH2O,O2,OH基等を閉じ
込めるため、ほとんど酸化がないCr下地膜を形成でき
る。これらによって中間膜を形成しない従来構造の磁気
記録媒体に比べて高保磁力で高角形比が得られ、磁気デ
ィスクての動特性が向上する。
また本発明では下地膜の初期成膜過程においても酸化
が極めて少ないために、目的とする保磁力を得るのに必
要な下地膜が薄くて済む。因に中間膜を形成しない場合
に比べて約半分のCr膜厚でほぼ同一の保磁力が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法により製造した面内磁気記録媒体の
一実施例を示す拡大断面図、第2図はその製造に用いる
インライン型スパッタリング装置の説明図、第3図は基
板加熱後の真空度変化を示すグラフ、第4図は本発明で
用いるスパッタリング装置の他の例を示す説明図であ
る。 また第5図は従来の磁気記録媒体の拡大断面図、第6図
はその製造に用いるインライン型スパッタリング装置の
説明図である。 40……磁気記録媒体、42……ガラス基板、44……非磁性
中間膜、46……下地膜、48……記録膜、50……保護膜。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラス基板上に、該ガラス基板表面に吸着
    しているH2O,O2,OH基を閉じ込めうるTi金属からなる非
    磁性中間膜をスパッタ法により形成し、次にガラス基板
    を加熱して、前記非磁性中間膜上に、Cr下地膜、CoNiCr
    又はCoNiからなる記録膜、保護膜を順次スパッタ法によ
    り形成することを特徴とする面内磁気記録媒体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】ガラス基板を加熱し、加熱したガラス基板
    上に、Ti金属をスパッタすることにより雰囲気中のH2O,
    O2,OH基を取り込みつつ堆積させてガラス基板表面に残
    留しているH2O,O2,OH基を閉じ込めうる非磁性中間膜を
    形成し、引き続きCr下地膜、CoNiCr又はCoNiからなる記
    録膜、保護膜を順次スパッタ法により形成することを特
    徴とする面内磁気記録媒体の製造方法。
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