JP2518720Y2 - 複流吐出型油圧ピストンポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は複流吐出型油圧ピストンポンプに関し、特に
その自吸性能を改善したものに関する。

〔従来技術〕

従来より、ハウジングと、ハウジングに収容されシャ
フトで回転駆動されるシリンダバレルの複数のシリンダ
穴に夫々軸方向摺動自在に装着された複数のピストン
と、ハウジングの端壁部に形成された吸入ポート及び吐
出ポートとを備えた斜板式油圧ピストンポンプが広く実
用化されている。

ところで、１台の油圧ピストンポンプで２系統の油圧
供給系を構成することが出来れば、ポンプの設置台数と
設置スペースと設備コストとを節減し得るので極めて有
利であることから、上記斜板式油圧ピストンポンプの吐
出ポートを、所定の第１グループのシリンダ穴から圧油
が吐出される第１吐出ポート及び残りの第２グループの
シリンダ穴から圧油が吐出される第２吐出ポートで構成
してなる複流吐出型油圧ピストンポンプが知られてい
る。

例えば、特開平1-267367号公報及び特開平1-267368号
公報に記載の複流吐出型油圧ピストンポンプにおいて
は、ハウジングの端壁内面に取付けられるバルブプレー
トに内外１対の円弧状の第１及び第２吐出ポートを形成
し、何れかのシリンダ穴を第１番目のシリンダ穴とした
ときに奇数番目の第１グループのシリンダ穴から第１吐
出ポートに吐出されるとともに偶数番目の第２グループ
のシリンダ穴から第２吐出ポートに吐出させる構造とな
っている。

〔考案が解決しようとする課題〕

従来の複流吐出型油圧ピストンポンプにおいては、バ
ルブプレートに形成される吸入ポート及び吐出ポート
（第１及び第２吐出ポート）の開口面積を十分に大きく
形成することが出来ないので、自吸性能を十分に向上さ
せることが出来ず、高速回転駆動したときにはキャビテ
ーションの発生により騒音が激しくなることからまたそ
のポンプの耐久性が低下することから、その上限回転数
が比較的低く制約されていた。

尚、参考までに、自吸性能の向上の為、斜板側からシ
ュー及びピストンに形成した油路を介して吸入可能にし
た構成も知られているが、この場合ハウジング内のドレ
ン油を吸入することになるので、摺動部が摩耗しやすく
なり耐久性の低下を招くので好ましくない。

本考案の目的は、自吸性能に優れ高速回転に供し得る
複流吐出型油圧ピストンポンプを提供することである。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係る複流吐出型油圧ピストンポンプは、ハウ
ジングと、ハウジング内に収容されシャフトで回転駆動
されるシリンダバレルと、シリンダバレルの複数のシリ
ンダ穴に夫々軸方向摺動自在に装着された複数のピスト
ンと、ハウジングに形成された吸入ポートと、所定の第
１グループのシリンダ穴から圧油が吐出される第１吐出
ポート及び残りの第２グループのシリンダ穴から圧油が
吐出される第２吐出ポートとを備えた複流吐出型ピスト
ンポンプにおいて、上記ハウジングの端壁部の外端面に
副ハウジングを固定し、この副ハウジングに上記外端面
に開口したインペラ収容穴を形成し、このインペラ収容
穴に上記シャフトで回転駆動されるインペラポンプをそ
のインペラ部材のインペラが上記ハウジングと反対側に
位置する状態に組込み、このインペラポンプの吐出ポー
トを上記吸入ポートに連通する吸入油路及びインペラポ
ンプへの吸入の為のメイン吸入ポートを設け、上記イン
ペラ部材のうちの上記外端面に臨む面にインペラポンプ
の吐出路及び吐出ポートに連通する複数の受圧溝を形成
したことを特徴とするものである。

〔作用〕

本考案に係る複流吐出型油圧ピストンポンプにおいて
は、シャフトの回転駆動力でシリンダバレルを回転駆動
し、斜板機構又は斜軸機構を介してピストンをシリンダ
穴内で軸方向に駆動し、吸入ポートからシリンダ穴に吸
入した油をシリンダ穴内でピストンで加圧し、所定の第
１グループのシリンダ穴内に加圧した油は第１吐出ポー
トへ吐出され、また残りの第２グループのシリンダ穴内
に加圧した油は第２吐出ポートへ吐出される。

上記吸入ポートはハウジングの端壁部に形成される
が、その端壁部の外端面に副ハウジングが固定され、こ
の副ハウジングにシャフトで回転駆動されるインペラポ
ンプが組込まれ、このインペラポンプの吐出ポートを上
記吸入ポートに連通する吸入油路とインペラポンプへの
吸入の為のメイン吸入ポートとが設けられているので、
メイン吸入ポートから吸入された油はインペラポンプで
加圧され、その加圧された油は吸入油路から吸入ポート
へ供給されることになる。

このように、インペラポンプで加圧した油を吸入ポー
トへ供給するので、油圧ピストンポンプの自吸性能を著
しく向上させ、上限回転数を高めて高速回転駆動可能と
し、吐出量を高めることが出来る。

しかも、この副ハウジングに上記外端面に開口したイ
ンペラ収容穴を形成し、このインペラ収容穴にインペラ
ポンプをそのインペラ部材のインペラが上記ハウジング
と反対側に位置する状態に組込んだので、そのインペラ
ポンプで油圧ポンプが軸方向に大型化するのを抑制する
ことができる。また、上記インペラ部材のうちの上記外
端面に臨む面にインペラポンプの吐出路及び吐出ポート
に連通する複数の受圧溝を形成したので、簡単な構造の
受圧溝により、インペラ部材にスラスト圧が作用するの
を防止し、耐久性を高めることができる。また、インペ
ラ収容穴をハウジングの外端面で塞ぐ構造であるので、
インペラ収容穴を塞ぐカバー部材を設ける必要がなく、
部材数を節減することができる。

〔考案の効果〕

本考案に係る複流吐出型油圧ピストンポンプによれ
ば、上記〔作用〕の項で説明したように、インペラポン
プと吸入油路とメイン吸入ポートとを設けたことによ
り、自吸性能を著しく向上させ得ること、上限回転数を
高め高速回転駆動し得ること、吐出量を大きくし得るこ
と、などの効果が得られる。

また、副ハウジングに上記外端面に開口したインペラ
収容穴を形成し、このインペラ収容穴にインペラポンプ
をそのインペラ部材のインペラが上記ハウジングと反対
側に位置する状態に組込んだので、そのインペラポンプ
で油圧ポンプが軸方向に大型化するのを抑制することが
できる。簡単な構造の受圧溝により、インペラ部材にス
ラスト力が作用するのを防止し、耐久性を高めることが
できる。また、インペラ収容穴をハウジングの外端面で
塞ぐ構造であるので、インペラ収容穴を塞ぐカバー部材
を設ける必要がなく、部材数を節減することができる。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例について図面に基いて説明す
る。

本実施例は、複流吐出型斜板式油圧ピストンポンプ
（以下、油圧ポンプという）に本考案を適用した場合の
一例である。

第１図に示すように、油圧ポンプＰのハウジング本体
１内にシリンダバレル３と斜板４とが収容され、ハウジ
ング本体１の左端に分割ハウジング２が固定され、シリ
ンダバレル３には例えば円周８等分位置に８個のシリン
ダ穴５が軸方向に向けて左端より凹設され、各シリンダ
穴５にピストン６が軸方向に摺動自在に装着されてい
る。

上記分割ハウジング２と斜板４とシリンダバレル３と
を挿通する駆動軸７が設けられ、駆動軸７のスプライン
軸部7aがシリンダバレル３のスプライン軸孔3aに係合さ
れ、シリンダバレル３は駆動軸７で回転駆動される。

上記斜板４の傾転角を調節し得るように、駆動軸７に
は球面座部材８がスプライン嵌合され、斜板４の右端面
に８個のシュー９を保持するホルダ10は球面座部材８の
球面座8aに傾転可能かつ回転可能に外嵌装着され、各ピ
ストン６の左端部のボール部6aは対応するシュー９に自
在継手式に連結され、斜板４の左端面には１対のクレイ
ドル式の摺動部が形成されるとともに分割ハウジング２
には上記摺動部に摺接する１対のクレイドル式の摺動支
持部が形成され、斜板４は分割ハウジング２と球面座部
材８に傾転可能かつ駆動軸７回りに回転不能に支持さ
れ、８個のシュー９は斜板４の右端面の摺動面11に摺接
しつつ回転するようになっている。

尚、傾転角レギュレータ12の出力操作部材13の下端部
が斜板４の上端部に係合され、この傾転角レギュレータ
12により斜板４の傾転角が調節される。

上記ハウジング本体１の右端壁14の左内面側に円形の
バルブプレート15が固定され、バルブプレート15の左端
面の部分球面状の支持面とシリンダバレル１の右端面の
部分球面状の被支持面とは油膜を介して殆ど隙間なしに
当接している。

第１図・第２図に示すように、上記油圧ポンプＰの吸
入側において、上記ハウジング本体１の右端壁14とバル
ブプレート15には円弧状の吸入ポート16が形成されてい
る。上記バルブプレート15は右端壁14に固定されるもの
で、ハウジングの一部に相当するものである。また、上
記油圧ポンプＰの吐出側において上記右端壁14とバルブ
プレート15には内外１対の相互に独立の円弧状の第１吐
出ポート17及び第２吐出ポート18が形成され、第１吐出
ポート17は吸入ポート16の内周側の約半幅部分に対応す
る半径方向位置に形成されまた第２吐出ポート18は吸入
ポート16の外周側の約半幅部分に対応する半径方向位置
に形成され、何れかのシリンダ穴を基準として、第（2i
＋１）番目（ｉ＝０、１、２、３）のシリンダ穴5a・5c
・5e・5gに関しては、吸入ポート16の内周側部分に連通
可能でかつ第１吐出ポート17に連通可能な吸入兼吐出孔
19がシリンダバレル１に形成され、また第２（ｉ＋１）
番目のシリンダ穴5b・5d・5f・5hに関しては、吸入ポー
ト16の外周側部分に連通可能でかつ第２吐出ポート18に
連通可能な吸入兼吐出孔20がシリンダバレル１に形成さ
れている。つまり、奇数番目のシリンダ穴5a・5c・5e・
5gでは吸入兼吐出孔19より吸入し第１吐出ポート17へ吐
出し、また偶数番目のシリンダ穴5b・5d・5f・5hでは吸
入兼吐出孔20より吸入し第２吐出ポート18へ吐出するこ
とになる。

上記ハウジング本体１の右端壁14の下部には第１吐出
ポート17に連なる第１吐出路21と第２吐出ポート18に連
なる第２吐出路22とが形成されている。

第１図・第３図・第４図に示すように、上記ハウジン
グ本体１の右端壁14の外端面に副ハウジング31が固定さ
れ、副ハウジング31の左端部にはインペラポンプ30が組
込まれている。即ち、副ハウジング31の左端部にはイン
ペラ収容穴32が左端より凹設され、インペラ収容穴32に
インペラ部材33が配設され、上記駆動軸７の右端側部分
はインペラ部材33及び副ハウジング31を挿通しており、
インペラ部材33は駆動軸７にスプライン嵌合され駆動軸
７で回転駆動される。

上記インペラ部材33の右端面に例えば６つのインペラ
34が一体形成され、インペラ収容穴32の外周側には略環
状の吐出路35とこの吐出路35の下流端に連なる吐出ポー
ト36とが形成され、副ハウジング31の下部にはメイン吸
入ポート37が形成され、メイン吸入ポート37はインペラ
収容穴32の右端側中央部分に連通されている。更に、イ
ンペラ部材33の左端面はハウジング本体１の右端面に対
面しているが、インペラ部材33の左方へのスラスト力を
緩和する為、インペラ部材33の左端面には吐出路35と吐
出ポート36に連通する複数の受圧溝38が放射状に形成さ
れ、上記スラスト力が殆ど発生しないように構成されて
いる 上記インペラポンプ30で加圧した油を吸入ポート16へ
供給する為、ハウジング本体１の右端壁14の上部には吐
出ポート36を吸入ポート16に連通する吸入油路39が形成
されている。

一方、副ハウジング31の右端部分には駆動軸７で回転
駆動される小型のトロコイドポンプ40が組込まれ、トロ
コイドポンプ40の右端側はカバープレート41で塞がれ、
上記インペラポンプ30の吐出ポート36をトロコイドポン
プ40の吸入ポート42に連通する吸入通路43が副ハウジン
グ31内に形成され、またトロコイドポンプ40の吐出ポー
ト44が副ハウジング31に形成されている。

以上説明した油圧ポンプＰの作用について説明する。

駆動軸７を回転駆動しているときには、メイン吸入ポ
ート37から吸入された油はインペラポンプ30で加圧され
てから、その吐出ポート36から吸入油路39を通って吸入
ポート16へ供給され、吸入ポート16から吸入兼吐出孔19
を介して奇数番目のシリンダ穴5a・5c・5e・5g内へ或い
は吸入兼吐出孔20を介して偶数番目のシリンダ穴5b・5d
・5f・5h内へ夫々吸入され、シリンダ穴５内でピストン
６により加圧されてから、奇数番目のシリンダ穴5a・5c
・5e・5gから吸入兼吐出孔19を介して第１吐出ポート17
とこれに連なる第１吐出路21へ吐出されまた偶数番目の
シリンダ穴5b・5d・5f・5hから吸入兼吐出孔20を介して
第２吐出ポート18とこれに連なる第２吐出路22へ吐出さ
れる。

このように、インペラポンプ30で加圧した油を吸入ポ
ート16へ供給するように構成したので、油圧ポンプＰの
自吸性能が著しく向上する。その結果、従来のものより
も格段に高速で回転駆動してもキャビテーションが発生
しないので、騒音及び耐久性の面で有利であるだけでな
く、吐出量の増大を実現し得る。

インペラ部材33の左端面に受圧溝38を形成したので、
インペラ部材33のスラスト力を極めて小さくすることが
出来、これによりインペラポンプ30の抵抗を小さくし耐
久性を向上させることが出来る。

一方、インペラポンプ30で加圧した油をトロコイドポ
ンプ40の吸入ポート42へ供給するようにしたので、トロ
コイドポンプ40の自吸性能と効率を高め、吐出量の増大
を図ることが出来る。

尚、上記実施例の一部を変更し、２台の斜板式油圧ピ
ストンポンプを同軸上に対称に配設してなるタンデム型
の油圧ピストンポンプにも本考案を適用し得るし、或い
は斜軸式油圧ピストンポンプにも本考案を適用すること
が出来る。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図は複流吐出
型斜板式油圧ピストンポンプの縦断面図、第２図は第１
図II-II線断面図、第３図は第１図III-III線断面図、第
４図は第１図IV-IV線断面図である。 １……ハウジング本体、２……分割ハウジング、５……
シリンダ穴、６……ピストン、７……駆動軸、14……右
端壁、16……吸入ポート、17……第１吐出ポート、18…
…第２吐出ポート、30……インペラポンプ、31……副ハ
ウジング、32……インペラ収容穴、33……インペラ部
材、34……インペラ、35……吐出路、36……吐出ポー
ト、38……受圧溝、36……吐出ポート、37……メイン吸
入ポート、39……吸入油路。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ハウジングと、ハウジング内に収容されシ
   ャフトで回転駆動されるシリンダバレルと、シリンダバ
   レルの複数のシリンダ穴に夫々軸方向摺動自在に装着さ
   れた複数のピストンと、ハウジングに形成された吸入ポ
   ートと、所定の第１グループのシリンダ穴から圧油が吐
   出される第１吐出ポート及び残りの第２グループのシリ
   ンダ穴から圧油が吐出される第２吐出ポートとを備えた
   複流吐出型ピストンポンプにおいて、 上記ハウジングの端壁部の外端面に副ハウジングを固定
   し、 この副ハウジングに上記外端面に開口したインペラ収容
   穴を形成し、このインペラ収容穴に上記シャフトで回転
   駆動されるインペラポンプをそのインペラ部材のインペ
   ラが上記ハウジングと反対側に位置する状態に組込み、 このインペラポンプの吐出ポートを上記吸入ポートに連
   通する吸入油路及びインペラポンプへの吸入の為のメイ
   ン吸入ポートを設け、 上記インペラ部材のうちの上記外端面に臨む面にインペ
   ラポンプの吐出路及び吐出ポートに連通する複数の受圧
   溝を形成した、 ことを特徴とする複流吐出型油圧ピストンポンプ。