JP2518493C - - Google Patents

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JP2518493C
JP2518493C JP2518493C JP 2518493 C JP2518493 C JP 2518493C JP 2518493 C JP2518493 C JP 2518493C
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、梱包材等として多用される発泡ポリスチレン成形体の体積を収縮さ
せ回収を容易とするための安全な収縮剤、およびこれを用いた簡便な回収方法、
ならびに回収システムに関する。 【0002】 【従来の技術】 家電製品やAV(オーディオ・ビジュアル)機器等の梱包には、発泡ポリスチ
レン(いわゆる発泡スチロール)の成形体が大量に使用されている。発泡ポリス
チレンは、衝撃緩衝性に優れ、任意の形状に加工することが容易で、価格が安く
、しかも外観も良い等の特長を有している。しかしその反面、焼却時に高熱を発
生して焼却炉の寿命を縮めること、投棄されても土壌中で分解されないこと等の
問題点を有しており、近年の環境保護,省資源化の機運が高まる中で、その大量
使用に疑問が投げかけられている。 【0003】 発泡ポリスチレンの代替材料として、牛乳パック,段ボール,新聞紙等を再生
して製造したパルプモールド材料が、一部で使用され始めている。しかし、発泡
ポリスチレンが自身の弾性によって優れた衝撃緩衝性を発揮するのに対し、パル
プモールド材料は紙を凹凸形状に加工することにより緩衝性を付与されているた
め、強度や緩衝性に限界があり、特性のバラつきも大きい。したがって、冷蔵庫
,洗濯機,テレビ等の大型製品については、当面はやはり発泡ポリスチレンが梱
包材の主役とならざるを得ない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 そこで、発泡ポリスチレン成形体を回収し、リサイクル使用することも試みら
れている。しかし、発泡ポリスチレン成形体の回収率は現状では紙に比べて極め
て低い。新聞・雑誌等の古紙は回収業者が多く紙の価格も安定しているが、発泡 ポリスチレンは比重が約0.02と小さいことからも明らかなように重量の割に
体積が大きく、保管場所が無かったり回収コストに見合わないのがその大きな理
由である。 【0005】 発泡ポリスチレン成形体を熱で溶融しブロック化する装置も一部の工場等に導
入されているが、一般の小売店にまで遡ってかかる装置を導入することは、コス
ト、設置場所、ポリスチレンの熱分解に伴う臭気発生等を考慮すると、必ずしも
容易ではない。また、得られたポリスチレン・ブロック中ではポリスチレン分子
の分子量が熱分解により大幅に低下するため、再利用することも難しい。 【0006】 また、加熱以外の手段で発泡ポリスチレン成形体の体積を収縮させる最も簡便
な方法としては、ベンゼン系,ケトン系等の汎用の有機溶媒に溶解することも考
えられる。しかし、これらの有機溶媒は人体,環境等に少なからず悪影響を与え
るものであり、大量使用は望ましくない。そこで本発明は、発泡ポリスチレン成
形体の体積を収縮させて回収率を向上させるための安全な収縮剤、およびこれを
用いた回収方法、ならびにこの回収方法を実現するための回収システムを提供す
ることを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明は上述の目的を達成するために提案されるものである。まず、本発明の
発泡ポリスチレン収縮材は、リモネン,酢酸イソアミル,プロピオン酸ベンジル
,酪酸エチルから選ばれる少なくとも1種類の化合物を含む液体組成物からなる
ことを特徴とする。 【0008】 本発明の発泡ポリスチレン収縮材はまた、リモネンと、該リモネンに対して1
〜6体積%のエタノールとを含む液体組成物からなることを特徴とする。 【0009】 本発明の発泡ポリスチレンの回収方法は、上述のいずれかの発泡ポリスチレン
収縮材を密閉空間内で発泡ポリスチレン成形体と接触させてポリスチレン組成物 に変化させることを特徴とする。 【0010】 本発明の発泡ポリスチレンの回収方法はまた、前記発泡ポリスチレン成形体を
予め破砕しておくことを特徴とする。 【0011】 本発明の発泡ポリスチレンの回収方法はまた、前記ポリスチレン組成物の固形
分を1〜60重量%の範囲に制御することを特徴とする。 【0012】 本発明の発泡ポリスチレンの回収方法はさらに、前記ポリスチレン組成物に有
機ポリマーもしくは有機モノマーの少なくとも一方を添加し、かつ得られる混合
組成物の固形分を1〜60重量%の範囲に制御することを特徴とする。 【0013】 本発明の発泡ポリスチレンの回収システムは、発泡ポリスチレン成形体を破砕
する破砕手段と、上述のいずれかの発泡ポリスチレン収縮剤を供給する収縮剤供
給手段と、この発泡ポリスチレン収縮剤と破砕された発泡ポリスチレン成形体と
を接触させてポリスチレン組成物とするための密閉容器とを備えることを特徴と
する。 【0014】 本発明の発泡ポリスチレンの回収システムはまた、発泡ポリスチレン成形体を
破砕する破砕手段と、上述のいずれかの発泡ポリスチレン収縮剤を供給する収縮
剤供給手段と、この発泡ポリスチレン収縮剤と破砕された発泡ポリスチレン成形
体とを接触させてポリスチレン組成物とするための密閉容器とを備える回収装置
が移動体上に積載されてなることを特徴とする。 【0015】 本発明の発泡ポリスチレンの回収システムはさらに、上記破砕手段、収縮剤供
給手段、密閉容器及び収縮剤分離装置が移動体上に積載されていることを特徴と
する。 【0016】 本発明者は、発泡ポリスチレンを溶解し得る化合物を、汎用の有機溶媒の中か らではなく、天然物もしくは食品添加物として用いられているエステル系化合物
の中から選択することを考え、検討の結果、特に優れた溶解性を示す化合物を見
出し、本発明を提案するに至ったものである。リモネンは、植物界に広く存在す
るモノテルペン炭化水素のひとつであり、d型,l型,dl型が知られている。
特にd型は、オレンジ様の快香を有する沸点176℃の無色液体であり、食品添
加物として認可され香料の原料として広く用いられている。 【0017】 他の3者は、食品添加物として使用されている合成エステル系化合物である。
酢酸イソアミルは、バナナ,リンゴ,ナシ等の芳香成分として用いられ、沸点1
41℃の無色液体である。プロピオン酸ベンジルはジャスミン様香気を有する沸
点222℃の無色液体である。酪酸エチルは、果実およびジャスミン様香気を有
する沸点120℃の無色液体である。 【0018】 本発明の発泡ポリスチレン収縮剤は単一組成である必要はなく、前述の4種類
の化合物をブレンドしたり、あるいは沸点や調香の目的で他の天然物や人工香料
等を適宜添加しても良い。この場合、沸点は取り扱い性を考慮しておおよそ10
0〜200℃に設定されることが望ましい。 【0019】 このうちd−リモネンについては、1〜6体積%のエタノールを混合すると特
に優れた発泡ポリスチレンの収縮効果が得られることが明らかとなった。上記の
混合範囲は実験的に求められたものであり、この範囲外では収縮効果に顕著な改
善がみられないばかりか、場合によっては低下する傾向がみられる。 【0020】 また、本発明の発泡ポリスチレンの回収方法において、得られたポリスチレン
組成物の固形分を1〜60重量%に制御するのは、このポリスチレン組成物を他
の用途に再利用することを念頭におき、該組成物の均一性、粘度、乾燥時間等を
最適化するためである。上記制御は、適当な溶媒を添加することにより行うこと
ができる。この場合の溶媒としては、汎用の有機溶媒を選択することも不可能で
はないが、人体や環境への安全性を重視する本発明の趣旨にもとづき、上述の発 泡ポリスチレン収縮剤をそのまま用いることが特に望ましい。上記固形分が1重
量%未満である場合には、流動性が高くなりすぎて取扱性が損なわれる虞れが大
きい。また、上記固形分が60重量%より大きい場合には、流動性が低くなりす
ぎ、やはり取扱性が低下する。特に接着剤としての再利用を想定した場合には、
固形分が低すぎると過剰の溶媒により被接着物が軟化したり汚染されたりする虞
れがあり、逆に固形分が高すぎると乾燥に時間が掛かりすぎるという問題が発生
する。上記固形分のより好ましい含有範囲は、2〜50重量%である。 【0021】 また、上記ポリスチレン組成物には、諸特性の改善を目的として有機ポリマー
または有機モノマーの少なくとも一方を添加しても良い。かかる有機ポリマーと
しては、まずスチレンの共重合体を挙げることができる。一例を挙げれば、スチ
レン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−
ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等である。 【0022】 また、スチレンを構成モノマーとして含まない有機ポリマーとしては、天然ゴ
ム、ネオプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム、尿素樹脂、メラミン樹脂
、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹
脂、繊維素系樹脂、ポリアミド樹脂等を用いることができる。さらに有機モノマ
ーとしては、スチレンと共重合し得るものが望ましく、たとえば酢酸ビニル、ビ
ニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、炭素数30以下の飽和アルコール
とアクリル酸またはメタタリル酸とのエステル、ビニルメチルエーテル、ビニル
エチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルアルコール、アクリル酸ア
ミド、メタクリル酸アミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキ
シエチルメタクリメート等が使用できる。 【0023】 これらの有機ポリマーもしくは有機モノマーをポリスチレン組成物に添加して
得られる混合組成物は、やはりその固形分を1〜60重量%の範囲に制御する。
この理由については、上述したとおりである。 【0024】 【作用】 本発明で発泡ポリスチレン収縮剤の主成分として用いられるリモネンはテルペ
ン系天然有機化合物であり、また酢酸イソアミル、プロピオン酸ベンジル、酪酸
エチルは食品添加物として認可されている合成エステル系化合物である。したが
って、人体,環境に対して無害である。これら4種類の化合物は、ポリスチレン
に対して優れた溶解性を発揮する。発泡ポリスチレンの体積の大部分は気泡で占
められているため、個々の気泡の隔壁を構成するポリスチレン薄膜が少量の上記
化合物を含む液体組成物で溶解されれば、該発泡ポリスチンの体積を容易に減少
させることができる。 【0025】 特に、リモネンに対して1〜6体積%のエタノールを添加した液体組成物は、
優れた体積収縮効果を示す。 【0026】 上記の発泡ポリスチレン収縮剤を用いて発泡ポリスチレンを回収するためには
、密閉空間内で発泡ポリスチレン収縮剤と発泡ポリスチレンとを接触させる。上
記発泡ポリスチン収縮剤を構成する前述の化合物は、芳香を放つことからも明ら
かなようにいずれも常温下ではある程度高い蒸気圧を有している。そこで、密閉
空間内で噴霧または浸漬等の接触操作を行うことにより、蒸発による上記化合物
の散逸を防止して効率良い処理を行うと共に、周辺環境への過剰な香気の拡散を
防止するわけである。収縮された発泡ポリスチレンは、液状のポリスチレン組成
物として回収される。 【0027】 ところで、通常の梱包材等として使用されている発泡ポリスチレン成形体の中
には、かなり大型のものも多い。そこで、予めこの成形体を破砕し、発泡ポリス
チレン収縮材との接触面積を増大させておくと、収縮効率を飛躍的に増大させる
ことができる。また、得られる液状ポリスチレン組成物は、溶媒を添加したり他
の有機材料と混合して固形分を1〜60重量%の範囲に調節しておけば、接着剤
等を調製する原料として再利用することが可能となる。 【0028】 本発明の発泡ポリスチレンの回収システムは、上述の回収方法をシステムとし
て具体化したものである。すなわち、破砕手段により破砕した発泡ポリスチレン
成形体を密閉容器内へ送り込み、ここで収縮剤供給手段から供給される発泡ポリ
スチレン収縮剤と接触させて、効率良い回収を行うのである。このように破砕手
段、収縮剤供給手段、密閉容器が一体化されることにより、コンパクトな回収装
置で破砕→収縮→回収の一連の操作が実現でき、また自動化や大量処理も容易と
なる。 【0029】 この回収装置をトラック等に積載すれば、不要となった発泡ポリスチレン成形
体の廃棄現場を巡回しながら機動性に優れた回収を行うことが可能な移動式回収
システムを構築することができる。 【0030】 さらに、本発明の発泡ポリスチレンの回収方法は、従来の熱収縮による回収方
法と異なり、ポリスチレンの分子量を大きく低下させないという優れた特長を有
している。そこで、収縮後に得られる液状のポリスチレン組成物から発泡ポリス
チレン収縮剤とポリスチレンとを相互に分離する収縮剤分離装置を上記の回収装
置と共にトラック等に積載すれば、回収と再生とを一貫して行う回収システムを
構築することができる。 【0031】 【実施例】 以下、本発明の具体的な実施例について説明する。 【0032】 実施例1 本実施例では、d−リモネン、酢酸イソアミル、プロピオン酸ベンジル、酪酸
エチルの各々からなる単一組成の液体組成物を発泡ポリスチレン収縮剤として使
用し、その一定量を所定の体積を有する発泡ポリスチレンに噴霧した場合の体積
収縮率を比較した。 【0033】 実験方法を、図1に模式的に示す。すなわち、ポリエチレン袋2の中に体積5 0ccの発泡ポリスチレン・ブロック1を入れ、ポリエチレン袋2の入口を絞っ
て内部を密閉状態とした。上記発泡ポリスチレン・ブロック1の重量は1g、比
重は0.02(50倍発泡)である。ここで、ポリエチレン袋2の入口に発泡ポ
リスチレン収縮剤3を入れた注射器4の針の部分を挿入し、発泡ポリスチレン・
ブロック1の向きを適当に変えながら1mlの発泡ポリスチレン収縮剤3を段階
的に噴霧した。噴霧後の発泡ポリスチレン・ブロック1の体積および体積収縮率
を表1にまとめる。 【0034】 【表1】 【0035】 表1より、いずれの発泡ポリスチレン収縮剤を使用した場合にも、体積を50
%以下に減少できることが明らかとなった。特にプロピオン酸ベンジルを使用し
た場合には、80%もの高率で体積を収縮させることができた。なお、これは発 泡ポリスチレン収縮剤の使用量を1mlに規定した場合の結果であり、いずれの
化合物についても、使用量を増やせばより一層の収縮が可能である。 【0036】 なお、上述の実験では注射器4を用いて発泡ポリスチレン収縮剤3を噴霧した
が、密閉空間内で発泡ポリスチレンとの接触を図れる方法であれば、いかなる方
法であっても構わない。たとえば、図2に示されるように、ポリエチレン袋1の
中に発泡ポリスチレン収縮剤3を満たした適当な貯液槽5を収納し、該発泡ポリ
スチレン収縮剤3中に発泡ポリスチレン・ブロック1を浸漬させても良い。また
、密閉空間を作り出す部材も上記ポリエチレン袋2に限られるものではなく、発
泡ポリスチレン収縮剤3により溶解されない材料により構成される部材であれば
、その構成,形状等は任意である。 【0037】 実施例2 本実施例では、特にd−リモネンについて、その使用量と発泡ポリスチレン成
形体の体積変化について検討した。実験は、ポリスチレン袋中で発泡ポリスチレ
ン・ブロックにd−リモネンを滴下することにより行った。ここで使用した発泡
ポリスチレン・プロックの比重は0.02(50倍発泡)である。 【0038】 結果を図3に示す。図中、横軸は発泡ポリスチレン1g当たりのd−リモネン
使用量(g)を表し、縦軸は収縮前の体積を1とした場合の収縮後の発泡ポリス
チレンの規格化体積、および体積収縮率(%)を示す。この図より、発泡ポリス
チレン1kg(体積約50リットル)に対してd−リモネンを0.75kg滴下
すれば体積は約1/10の5リットルに、また1kg滴下すれば約1/25の2
リットルに収縮できることがわかった。 【0039】 実施例3 本実施例では、発泡ポリスチレン・ブロックの破砕による溶解速度の向上につ
いて、簡単な実験により検討した。まず、100mlのd−リモネンをビーカー
中で300rpmの速度で攪拌し、この中に重さ1gの発泡ポリスチレン成形体 をブロック状のまま、もしくは個々のビーズにほぼ等しい大きさまで破砕した状
態でそれぞれ添加し、溶解速度を比較した。この実験の結果、破砕物はブロック
に比べて約2/3の時間で完全に溶解できることがわかった。 【0040】 実施例4 本実施例では、d−リモネンによる発泡ポリスチレンの収縮速度に及ぼすエタ
ノールの添加効果について検討した。実験は、100mlのリモネンに所定量の
エタノールを添加し、300rpmの速度で攪拌しながら1gの発泡ポリスチレ
ンの破砕物(体積約50ml)を加えてこれが完全に溶解するまでの時間を測定
した。 【0041】 結果を図4に示す。図中、横軸はd−リモネンに対するエタノール添加量(体
積%)、縦軸は溶解時間(秒)をそれぞれ表す。この図より、エタノール添加量
が1〜6体積%である場合に溶解時間が短縮されており、特に3〜5体積%の範
囲において顕著な効果が現れていることがわかった。 【0042】 実施例5 本実施例では、発泡ポリスチレン成形体にd−リモネンを噴霧して得られたポ
リスチレン組成物、あるいはこれに添加物を加えた混合組成物の固形分を1〜6
0重量%の範囲に調節し、接着剤としての転用を試みた。本実施例では、3種類
の組成A,B,Cを有する組成物について検討した。 【0043】 組成Aと組成Bはポリスチレンとd−リモネンのみを構成成分とする。組成A
は、噴霧後に得られるポリスチレン組成物そのものであり、固形分は約50重量
%、性状は透明で粘稠な液体である。組成Bは、この組成Aのポリスチレン組成
物をさらにd−リモネンで希釈し、固形分を5重量%としたものである。性状は
やはり透明であるが、粘度は組成Aよりも減少しており、取り扱いが容易である
。 【0044】 組成Cは、組成Aのポリスチレン組成物(固形分約50重量%)50重量部と
、 スチレン−ブタジエン共重合体のd−リモネン溶液(固形分約5重量%)20重
量部とを混合したものである。性状はやや白濁した液体であり、ブタジエンがミ
クロな相分離を起こしていることが示唆された。 【0045】 これらの組成物を一対のポリスチレン試験片に塗布したところ、いずれも10
分以内でほぼ固着状態となり、容易に位置ずれを起こさない状態となった。さら
に12時間後に引っ張り試験を行ったところ、いずれの試験片も接着剤層の部分
では破断せず、ポリスチレン試験片の本体部分で破断した。したがって、上記の
ポリスチレン組成物および混合組成物のポリスチレン接着力は、ポリスチレンの
破断強度よりも高いことが確認された。 【0046】 なお、ポリスチレン組成物を原料とする接着剤は、当然のことながらポリスチ
レン系樹脂の接着に優れた効果を発揮する。このポリスチレン系樹脂は、たとえ
ば一般にプラモデルと称される模型玩具のほとんどに用いられている。従来のポ
リスチレン系樹脂の接着には、主としてゴム系高分子をトルエンに溶解したもの
が用いられているが、本実施例の接着剤はこれに比べてはるかに安全性が高い。
しかも、木材、ガラス、金属、セラミクス等の接着にも適用できる。 【0047】 実施例6 これまでの実施例で上述したように、発泡ポリスチレン・ブロックを破砕し、
かつd−リモネンあるいはこれにエタノールを添加した収縮剤を噴霧することに
より、優れた収縮効果が得られることがわかった。本実施例では、これらの技術
を用いて回収装置を構築した。 【0048】 本実施例の回収装置の概略的な構成を、図5に示す。この回収装置100は、
コンテナ10の上部に設けられた投入孔11から投入された発泡ポリスチレン・
ブロック24を破砕機12で破砕し、得られた破砕物24aをホッパ13で収集
して帯電除去部14を通過させることにより除電し、開閉シャッタ15を介して
落下させ、その落下途中で側方から噴霧される発泡ポリスチレン収縮剤18と接 触させ、得られるポリスチレン組成物19を貯液槽23に貯蔵する構成となって
いる。 【0049】 発泡ポリスチレンのような弾性体の破砕は、剪断、切断、もしくはこれらの組
合せによる方法が一般的である。図示されるような横2軸式の破砕機12におい
ては、異速度で対向方向に回転する刃同士の連続剪断力を主な破砕力としており
、動力源が比較的小型のモータであっても、低速回転で大きなトルクが得られる
。また、被加工物の流れが通過型であり、大きな処理能力を有する。 【0050】 上記帯電除去部14は、発泡ポリスチレンの破砕物24aから静電気を除去す
る部分である。除電設備としてはイオン・シャワー、導電性ブラシ等も可能であ
るが、ここでは電圧印加式除電器を使用した。これは、コロナ放電により除電に
必要なイオンを生成させ、破砕物24aの電荷を電気的に中和する装置であり、
送風装置を備えた防爆設計とされている。 【0051】 なお、帯電除去は破砕物24aのみならず、回収システム全体としても考慮す
る必要があり、たとえば貯液槽23の壁面やホッパ13等、帯電の可能性の高い
部材は適宜アースされている。 【0052】 発泡ポリスチレン収縮剤18は、コンテナ10の外部に設置される収縮剤貯蔵
タンク16に貯蔵されており、ここからノズル17を介して噴射される。上記コ
ンテナ10の底部には貯液槽23が接続されており、発泡ポリスチレン収縮剤1
8とポリスチレンの混合物であるポリスチレン組成物19を貯蔵するようになさ
れている。このポリスチレン組成物19は、破砕物24aの迅速な溶解を可能と
するために、攪拌子20により常に攪拌されている。本発明の発泡ポリスチレン
収縮剤18を用いれば、実施例2でも述べたように、発泡ポリスチレン・ブロッ
ク24の体積を1/25程度まで減少させることができる。したがって、たとえ
ばわずか25リットルの容積の貯液槽23があれば、625リットルもの発泡ポ
リスチレン・ブロック24を処理することができる。 【0053】 貯液槽23の下方側壁面には排出口21が設けられており、所定量が溜まった
時点で適宜、ポリスチレン組成物19を抜き取ることができる。抜き取られたポ
リスチレン組成物19は、実施例5で上述したように固形分を調整して接着剤等
の用途に転用することもできるが、ここでは矢印A方向にポンプ等を用いて圧送
出し、収縮剤分離装置へ搬入する。この収縮剤分離装置については、実施例7で
後述する。 【0054】 この回収装置100はコンパクトに構成できるため、たとえば貯液槽23の底
面にキャスタ22等を取り付ければ、機動性の高い発泡ポリスチレンの回収処理
を行うことができる。しかも、従来の市販の発泡ポリスチレンの加熱収縮装置が
消費電力200kWクラスの電気ヒータを熱源としているのに対し、本実施例の
回収装置100の消費電力はその1/10程度である。 【0055】 さらに、この回収装置100はポリスチレンを化学的に溶解する方式をとって
いるため、従来の加熱収縮で問題となっていた酸化や分解によるポリスチレンの
劣化、すなわち分子量低下、臭気の発生、着色等が生じない。ここで、ポリスチ
レンの物性に大きく影響する分子量変化について、上記回収装置100を用いた
回収方法と従来の加熱収縮法とを比較した。分子量測定は、ゲル浸透クロマトグ
ラフィにより行った。 【0056】 クロマトグラフィのサンプルは、次の手順により調製した。まず、上記回収装
置100により回収されたポリスチレン組成物19は、をO2を遮断した雰囲気
下で加熱し、d−リモネンを除去した。このときの加熱は、180℃,200℃
,225℃の温度にてそれぞれ10分間ずつ行った。なお、比較のために加熱を
行わなずにd−リモネンを減圧除去したサンプルも用意した。 【0057】 一方、加熱収縮についてはホットプレートによる加熱をモデルとして検討し、
発泡ポリスチレンの破砕物を180℃,200℃,225℃の温度でそれぞれ1 0分間ずつ加熱したものをサンプルとした。比較のために、加熱を行わない発泡
ポリスチレンもテトラヒドロフランに溶解してサンプルとした。これらのサンプ
ルをゲル・カラムに乗せ、テトラヒドロフランで溶出した。 【0058】 このゲル浸透クロマトグラフィの結果を図6に示す。図中、縦軸はポリスチレ
ンの重量平均分子量MW 、横軸は加熱時間(分)を表す。また、白色のプロット
は本発明で回収されたポリスチレン、黒色のプロットは加熱収縮により回収され
たポリスチレンのデータを表し、四角形のプロット(□,■)は加熱温度180
℃、円形のプロット(○,●)は加熱温度200℃、三角形のプロット(△,▲
)は加熱温度225℃の場合をそれぞれ表す。 【0059】 加熱を行わない(加熱時間ゼロ)ポリスチレン・サンプルの重量平均分子量M
W は、31.6×104である。加熱収縮により回収されたポリスチレンでは、
加熱時間の延長と共に、また加熱温度の上昇と共に重量平均分子量Mwが顕著に
低下した。これに対し、本発明で回収されたポリスチレンではこのような現象は
みられなかった。特に、180℃,200℃程度の加熱ではむしろ分子量が増大
する傾向もみられ、d−リモネン自身にポリスチレンの酸化分解を抑制する効果
があることがわかった。 【0060】 このように、d−リモネンによる回収は、ポリスチレンの再利用の観点からも
極めて有利である。 【0061】 実施例7 本実施例では、実施例6で述べた回収装置100を収縮剤分離装置と共にトラ
ックに積載して、車載型の移動式回収システムを構成した。本実施例の移動式回
収システムの概念図を、図7に示す。このシステムは、トラック102の荷台上
に回収装置100と収縮剤分離装置101とを積載したものである。上記回収装
置100と上記収縮剤分離装置101とは配管24で接続されており、貯液槽2
3(図5参照。)の排出口21から送出されるポリスチレン組成物19(図5参 照。)がこの配管24を通過し、供給口30を経て収縮剤分離装置101へ供給
されるようになされている。 【0062】 上記収縮剤分離装置101としては、たとえば日本プラント技術株式会社等か
ら樹脂・溶媒分離回収装置が既に市販されているので、この種のものを使用すれ
ば良い。概略的な構成を示すと、図8のようになる。この装置において、コンテ
ナ31内には脱揮槽32、およびこれに接続するd−リモネン回収系統とポリス
チレン回収系統が収納されている。 【0063】 上記脱揮槽32は、重油を燃料とするボイラ33により加熱され、供給口30
から矢印B方向に送入されるポリスチレン組成物19中のd−リモネンがここで
気化する。気化したd−リモネンは、真空ポンプ38により排気されるd−リモ
ネン回収系統に入り、まず水冷式のコンデンサ36を通過する際にほぼ99%が
凝縮され、回収される。上記コンデンサ36の後段にあるトラップ37は、残留
蒸気による真空ポンプのオイル劣化等を防止するために設けられているものであ
る。 【0064】 一方、脱揮槽32内に残ったポリスチレンは、スクリュー押出機34に移送さ
れ、棒状の再生ポリスチレン35として回収される。もちろんこの再生ポリスチ
レン35は、ペレット状等の他の形状に加工することもできる。 【0065】 かかる収縮剤分離装置101は、設置面積がほぼ2m四方と小さく、約1kg
/時間の処理能力がある。したがって、この収縮剤分離装置101を上述の回収
装置100と組み合わせれば、ポリスチレン専用の回収工場までポリスチレン組
成物を輸送する手間を省くことができる。また、成形し易いペレットとして回収
すれば再生ポリスチレンの付加価値も上昇する等のメリットが得られる。 【0066】 さらに、これら回収装置100および収縮剤分離装置101をトラック102
に積載すれば、不要な発泡ポリスチレン成形体が発生する現場を随時巡回しなが ら回収処理を行うことができ、回収処理の機動性が飛躍的に向上する。 【0067】 【発明の効果】 以上の説明からも明らかなように、本発明の発泡ポリスチレン収縮剤は天然物
もしくは食品添加物から構成され、人体や地球環境に対して安全性が高い。しか
も、発泡ポリスチレン成形体の体積を極めて効果的に減少させるため、回収率を
向上させることができる。 【0068】 本発明の発泡ポリスチレンの回収方法は、何ら特殊な設備や多大な投資を要す
るものではない。たとえば、本発明の発泡ポリスチレン収縮剤を噴射剤と共にエ
ーロゾル容器等に封入すれば、家電製品の小売店や一般消費者のレベルでも容易
に本法を実施することができる。しかも、回収形態が再利用に適しており、省資
源の観点からも極めて意義が大きい。 【0069】 本発明の回収システムは、小型で省エネルギー設計である。特に車載型の移動
回収システムが発泡ポリスチレン成形体の廃棄現場を巡回するようになれば、回
収率そのものが向上することはもちろん、発生現場側にとってもかさ張る成形体
を長期間保管する場所やコストが不要となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の発泡ポリスチレン収縮剤を用いた回収方法の一例を説明する模式図で
ある。 【図2】 本発明の発泡ポリスチレン収縮剤を用いた回収方法の他の例を説明する模式図
である。 【図3】 d−リモネンの使用量による発泡ポリスチレンの体積収縮効果の変化を示すグ
ラフである。 【図4】 d−リモネンに対するエタノール添加量と発泡ポリスチレンの溶解時間との関
係を示すグラフである。 【図5】 本発明の回収システム中、回収装置の一構成例を示す概略断面図である。 【図6】 本発明と従来の加熱収縮法により回収されるポリスチレンの分子量変化を示す
グラフである。 【図7】 本発明を適用した車載型の移動式回収システムの概念的な構成を示す模式図で
ある。 【図8】 上記移動式回収システム中、収縮剤分離装置の一構成例を示す概略断面図であ
る。 【符号の説明】 1,24 ・・・発泡ポリスチレン・ブロック 2 ・・・ポリエチレン袋 3,18 ・・・発泡ポリスチレン収縮剤 4 ・・・注射器 5 ・・・貯液槽 10,31・・・コンテナ 12 ・・・破砕機 14 ・・・帯電除去部 16 ・・・収縮剤貯蔵タンク 17 ・・・ノズル 19 ・・・ポリスチレン組成物 23 ・・・貯液槽 24a ・・・(発泡ポリスチレン・ブロック24の)破砕物 32 ・・・脱揮槽 33 ・・・ボイラ 34 ・・・スクリュー押出機 35 ・・・再生ポリスチレン 36 ・・・コンデンサ

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 酢酸イソアミル,プロピオン酸ベンジル,酪酸エチルから選ば
    れる少なくとも1種類の化合物を含む液体組成物からなる発泡ポリスチレン収縮
    剤。 【請求項2】 リモネンと、該リモネンに対して1〜6体積%のエタノールと
    を含む液体組成物からなる発泡ポリスチレン収縮剤。 【請求項3】 請求項1または請求項2のいずれか1項に記載される発泡ポリ
    スチレン収縮剤を密閉空間内で発泡ポリスチレン成形体と接触させてポリスチレ
    ン組成物に変化させることを特徴とする発泡ポリスチレンの回収方法。 【請求項4】 前記発泡ポリスチレン成形体を予め粉砕しておくことを特徴と
    する請求項3記載の発泡ポリスチレンの回収方法。 【請求項5】 前記ポリスチレン組成物に有機ポリマーもしくは有機モノマー
    の少なくとも一方を添加し、かつ得られる混合組成物の固形分を1〜60重量%
    の範囲に制御することを特徴とする請求項3記載の発泡ポリスチレンの回収方法
    。 【請求項6】 発泡ポリスチレン成形体を破砕する破砕手段と、請求項1また
    は請求項2のいずれか1項に記載される発泡ポリスチレン収縮剤を供給する収縮
    剤供給手段と、この発泡ポリスチレン収縮剤と破砕された発泡ポリスチレン成形
    体とを接触させてポリスチレン組成物とするための密閉容器とを備える発泡ポリ
    スチレンの回収システム。 【請求項7】 発泡ポリスチレン成形体を破砕する破砕手段と、請求項1また
    は請求項2のいずれか1項に記載される発泡ポリスチレン収縮剤を供給する収縮
    剤供給手段と、この発泡ポリスチレン収縮剤と破砕された発泡ポリスチレン成形
    体とを接触させてポリスチレン組成物とするための密閉容器とを備える回収装置
    が移動体上に積載されてなる発泡ポリスチレンの回収システム。 【請求項8】 上記破砕手段、収縮剤供給手段、密閉容器及び収縮剤分離装置
    が移動体上に積載されていることを特徴とする請求項7記載の発泡ポリスチレン の回収システム。

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