JP2516944Y2 - 平版印刷版の装着装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、湿し水に対して保水性の表面を有する可撓
性基板を、平版印刷機の版胴面に被覆固定し、この基板
上に平版印刷版（単に「刷版」ともいう）を固着させ、
刷版の大小にかかわらず、インキ汚れのない印刷物を得
ることのできる印刷方法に適用できる平版印刷版の装着
装置に関する。

（従来の技術およびその問題点） 平版印刷は、平版印刷版をマスターシリンダーと呼ば
れる版胴面に装着し、装着した版面に油性インキと湿し
水を供給して行われる。この場合、版面の親油性印刷画
像にインキが受容され、保水性非画像部には湿し水が受
容されるのでインキ反発性となり、版面のインキ受容性
とインキ反発性がうまくバランスすることによって平版
印刷が可能となる。

このような平版印刷に用いられる印刷機は、新聞印刷
に用いられるような大型機から、卓上型の小型印刷機ま
で印刷面積の異なる種々の大きさのものがある。これら
の印刷機の版胴の大きさは印刷機種に応じて固定されて
おり、一機種の印刷機で印刷できる印刷版のサイズは印
刷機毎に定められている。従って、種々のサイズの印刷
版で印刷する場合、種々のサイズの印刷機を準備するこ
とが考えられるが、そうすると、膨大な設備費と設置ス
ペースが必要となるため、通常は大サイズの印刷機を準
備し、１台で大サイズと小サイズの印刷が行われる。こ
の場合、印刷物が小サイズであっても、大サイズの印刷
版を使用する必要があり、印刷版に無駄が生じるという
問題がある。

これらの問題を解決する方法として、大型の印刷機を
使用し、砂目立て加工を施すとともに湿し水に対して保
水性の面を有する可撓性の基板で上記印刷機の版胴面の
全印刷有効面を被覆固定し、上記版胴の全印刷有効面積
よりも小さな面積の刷版を、上記保水性面上に位置合わ
せするとともに粘着剤により剥離自在に貼り付けて固定
することにより、刷版外の部分にインキ汚れを生じるこ
となく印刷できる方法が実開昭60-38740号公報に開示さ
れている。

この方法は、版胴の咬えと咬え尻の両クランプによ
り、保水性を有する基板を版胴面に固定して版胴面を被
覆するとともに、咬えのクランプに複数の位置合わせ用
ピンを把持し、刷版の咬え側端部には、上記位置合わせ
用ピンの位置と符合する位置に複数のピン孔を形成して
おき、このピン孔を上記位置合わせ用ピンに引っ掛けて
刷版の位置合わせを行うものである。

しかし、この方法によれば、刷版のピン孔は通常パン
チングにより円形状に形成されるのに対し、位置合わせ
用ピンは扁平な板状体で形成されているため、刷版をピ
ンに引っ掛ける際にピンとピン孔との位置がずれたり、
刷版が紙を基体とする紙版の場合は、刷版のピン孔が破
れて位置精度が悪くなり、不良印刷物を生じさせるとい
う問題がある。

そこで、本出願人等は、刷版の位置精度等を改良する
ために、実願昭63-90318号によって、刷版のピン孔に係
合する刷版位置合わせ用ピンを有し版胴に対し着脱する
ことができる第１のピンバーと、この第１のピンバーの
上記位置合わせ用ピンに係合するピン孔および刷版の位
置を固定することができる刷版固定用ピンを合わせもつ
第２のピンバーとを構成体とする平版印刷版の装着装置
を提案した。

しかしながら、上記出願にかかる平版印刷版の装着装
置にも、まだ改良の余地がある。それは、刷版の裏面を
上にしてそのピン孔を第２のピンバーの刷版固定用ピン
に係合させた後、刷版を第２のピンバーとともに裏返し
て第１のピンバーの刷版位置合わせ用ピンに係合させる
ものであるため、刷版が上記固定用ピンから外れやす
く、作業を慎重に繰り返す必要があることから、刷版装
着に長時間を要し、作業性が低下するという点である。

（考案の目的） 本考案は、上記のような問題点を解消するためになさ
れたもので、刷版を装着した状態での位置精度および刷
版装着時の作業性がよく、良質の印刷物を得ることがで
きる平版印刷版の装着装置を提供することを目的とす
る。

（考案の構成） 本考案は、上記目的を達成するために、刷版のピン孔
に係合する刷版位置合わせ用ピンを有し版胴に対し着脱
することができる第１のピンバーと、この第１のピンバ
ーの上記位置合わせ用ピンに係合するピン孔および刷版
の位置を固定することができる刷版固定用ピンを合わせ
もつ第２のピンバーとを有してなる平版印刷版の装着装
置において、上記第２のピンバーの刷版固定用ピンに、
この固定用ピンと刷版のピン孔との係合を許容しかつ係
合した状態を固定しうる機構を設けたことを特徴とす
る。

（実施例） 以下、図面を参照しながら本考案にかかる平版印刷版
の装着装置の実施例について説明する。

第１図は第１のピンバーの例を、第２図は上記第１の
ピンバーと組み合わせて用いる第２のピンバーの例を示
す。

第１図において、第１のピンバー１は、長尺の板状の
基体２と、この基体２の両端部寄りの位置の前面Ａ側に
設けられた２個の刷版位置合わせ用ピン３とを有してな
る。各刷版位置合わせ用ピン３は周溝3aを有している。

第２図において、第２のピンバー11は、長尺の板状の
基体12と、この基体12に設けられた８個の刷版固定用ピ
ン14とを有してなり、また、基体12には２個のピン孔13
が上記第１のピンバー１の刷版位置合わせ用ピン３と符
合する位置に形成されている。８個の刷版固定用ピン14
のうち６個は二つのピン孔13間に設けられ、他の２個は
二つのピン孔13よりも外側に設けられている。上記各ピ
ン孔13は、大径部13aとその側方に続く小径部13bからな
る。

第３図、第４図は、上記各刷版固定用ピン14の構成を
詳細に示す。第３図、第４図において、刷版固定用ピン
14は、円盤状の基台14bと、基台14bに対して起倒自在の
Ｖ字状ピン14aとを有してなる。上記基台14bにはその高
さ方向に一対の縦溝14cが対蹠位置に形成されるととも
に、この各縦溝14cの下端に連続する横溝14dが形成され
ている。基台14bを正面側から見たとき、各縦溝14c相互
が重なり、また、各横溝14d相互が重なりあうように形
成されている。図面には示されていないが、各縦溝14c
内には基台14bの半径方向に穴が形成されていて、この
各穴にＶ字状ピン14aの両端折曲部が嵌められている。
Ｖ字状ピン14aは基台14bの挾み込む方向にばね力が働い
ている。Ｖ字状ピン14aは、その両端部が上記縦溝14cに
嵌まっているときは第１図に示すように基台14bから垂
直方向に起き上がり、上記両端部が上記横溝14dに嵌ま
っているときは第２図に示すように水平方向に倒れるよ
うになっている。このようなＶ字状ピン14aの起倒は、
Ｖ字状ピン14aを直接つまんで操作することにより行わ
せることができる。Ｖ字状ピン14aの起倒動作の途中
で、縦溝14cと横溝14dで画される突起部分をＶ字状ピン
14aの両端部が乗り越え、ばね力で縦溝14cまたは横溝14
dに落ちこんで、第３図のような起き上がり態位または
第４図のような倒伏態位をとる。

第３図に示すＶ字状ピン14aの起き上がり態位は、刷
版を係合させる前の態位であり、刷版のピン孔と刷版固
定用ピン14との係合を許容している。第４図に示すＶ字
状ピン14aの倒伏態位では、刷版のピン孔と刷版固定用
ピン14とを係合させた状態で、Ｖ字状ピン14aにより刷
版を押さえることができ、これによって、上記刷版のピ
ン孔と刷版固定用ピン14との係合状態を固定することが
できるようになっている。各刷版固定用ピン14のＶ字状
ピン14aは一方向にのみ倒れ、また、一方向にのみ回転
して起き上がるように、各刷版固定用ピン14が基体12に
固定されているため、刷版の固定および刷版の取外し作
業が容易にできるという利点がある。

次に、上記実施例にかかる平版印刷版の装着装置を用
いて刷版を平版印刷機に装着する手順を説明する。

まず、砂目立てを施しかつ保水性表面を有する可撓性
アルミニウム板の咬え側端部と咬え尻側端部をそれぞれ
版胴のクランプに把持させ、締め付けることにより、上
記アルミニウム板を版胴面の全面に巻き付けて固着し、
版胴面を被覆する。この際、第１図に示す第１のピンバ
ー１をアルミニウム板の咬え側端部上に載置して、アル
ミニウム板の咬え側端部と第１のピンバーを一緒にクラ
ンプする。もっとも、前記実願昭63-90318号で開示した
ように、第１のピンバー１をアルミニウム板の下にして
もよいが、この場合は、上記出願で開示したように、ア
ルミニウム板に第１のピンバー１の２個の刷版位置合わ
せ用ピン３に符合する位置に切欠きを設ける。

次に、咬え側端部に複数（図示の例では８個）の円形
のピン孔がパンチングされた刷版40の表面42と、第２
図、第３図に示すように各刷版固定用ピン14のＶ字状ピ
ン14aを起こした状態の第２のピンバー11とを対向さ
せ、刷版40の８個のピン孔とピンバー11の８個の刷版固
定用ピン14とを係合させる。そして、各刷版固定用ピン
14のＶ字状ピン14aを第４図に示すように一方向に倒伏
させ、第５図に示すように、刷版40をピンバー11に固定
する。この状態では、刷版40に形成された２個のピン孔
43とピンバー11の２個のピン孔13とが重なっている。

こうして一体化された刷版40とピンバー11を、第６図
に示すように表裏反転させ、これを前記の状態で取り付
けられている第１のピンバー１に重ね合わせる。このと
き、上述のようにして重なりあっている刷版40のピン孔
43とピン孔13の大径部13aに、第１のピンバー１の２個
の刷版位置合わせ用ピン３を係合させ、さらに、ピンバ
ー11を刷版40とともに幅方向にずらして、ピン孔13の小
径部13bに上記刷版位置合わせ用ピン３の周溝3aを嵌
め、ピンバー11を固定する。

一方、刷版40の裏面41の全面に粘着剤を塗布し、砂目
立て加工が施された前記アルミニウム板の表面に、上記
刷版40の裏面41を上記粘着剤によって粘着させ、刷版40
を動かないように固定する。これにより印刷が可能な状
態となる。

刷版40は、版胴面に被覆固定されたアルミニウム板の
表面に粘着剤で固定され、刷版40の咬え尻をクランプに
把持させる必要がないため、版胴面よりも小さな刷版で
あっても印刷が可能である。

上記実施例によれば、刷版40のピン孔に係合する刷版
位置合わせ用ピン３を有し版胴に対し着脱することがで
きる第１のピンバー１と、第１のピンバー１の上記位置
合わせ用ピン３に係合するピン孔13および刷版40の位置
を固定することができる刷版固定用ピン14を合わせもつ
第２のピンバー11とを有してなる平版印刷版の装着装置
において、第２のピンバー11の刷版固定用ピン14に、こ
の固定用ピン14と刷版40のピン孔との係合を許容しかつ
係合した状態を固定しうるＶ字状ピン14aを設けたた
め、第２のピンバー11に刷版40を取り付けた状態でこれ
を裏返し、第１のピンバー１に係合させようとすると
き、刷版40が上記固定用ピン14から外れることはなくな
り、刷版40を装着した状態での位置精度および刷版装着
時の作業性がよくなり、良質の印刷物を能率よく得るこ
とができる。

なお、本考案装置に用いる第１のピンバーは、第１図
に示すようなクランプに固定するもののほか、前記実願
昭63-90318号で開示したような、咬えに着脱自在に固定
することができるものであってもよい。

第１図、第２図に示した第１、第２のピンバー1,11
は、以下の仕様を目安に設計するのが望ましい。

材質；ステンレス鋼製 第１のピンバー1;基体２の厚さ１〜5mm、前後幅２〜5c
m、長さ60〜120cm（印刷機サイズによる）、刷版位置合
わせ用ピン３の直径および高さそれぞれ４〜8mm、刷版
位置合わせ用ピン３の数２〜４個 第２のピンバー；基体12の厚さ１〜5mm、前後幅５〜15m
m、長さ60〜120cm、刷版固定用ピン14の基体14bの直径
４〜8mm、上記ピン14の基体14bの高さ１〜3mm、上記ピ
ン14の数５〜15個、Ｖ字状ピン14aの長さ１〜2cm 本考案装置の使用に際して用いられる湿し水に対して
保水性の面を有する可撓性基板としては種々のものがあ
るが、いわゆるPS版と呼ばれる平版印刷版の支持体とし
て入手することができ、また、市販のPS版を現像液でエ
ッチング処理して支持体上の感光層等を除去することに
より得ることができる。また、上記保水性面に刷版を着
脱自在に貼り付け固定する接着剤としては、例えば米国
3M社製の商品名デザインボンドとして入手することがで
きる。

（考案の効果） 本考案によれば、刷版のピン孔に係合する刷版位置合
わせ用ピンを有し版胴に対し着脱することができる第１
のピンバーと、第１のピンバーの上記位置合わせ用ピン
に係合するピン孔および刷版の位置を固定することがで
きる刷版固定用ピンを合わせもつ第２のピンバーとを有
してなる平版印刷版の装着装置において、第２のピンバ
ーの刷版固定用ピンに、この固定用ピンと刷版のピン孔
との係合を許容しかつ係合した状態を固定しうる機構を
設けたため、第２のピンバーに刷版を取り付けた状態で
これを裏返し、第１のピンバーに係合させようとすると
き、刷版が上記固定用ピンから外れることはなくなり、
刷版を装着した状態での位置精度および刷版装着時の作
業性がよくなり、良質の印刷物を能率よく得ることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案にかかる平版印刷版の装着装置に用いる
第１のピンバーの例を示す斜視図、第２図は同じく第２
のピンバーの例を示す斜視図、第３図は同上第２のピン
バーにおける刷版固定用ピンの部分を拡大して示す斜視
図、第４図は同上刷版固定用ピンの別の動作態様を第３
図に準じて示す斜視図、第５図は上記第２のピンバーに
刷版を固定して刷版の裏面側から見た状態を示す斜視
図、第６図は同じく刷版の表面側から見た状態を示す斜
視図である。 １……第１のピンバー、３……刷版位置合わせ用ピン、
11……第２のピンバー、13……第２のピンバーのピン
孔、14……刷版固定用ピン、40……刷版、43……刷版の
ピン孔。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 吉森 泰三 京都府長岡京市開田１丁目６番６号 三 菱製紙株式会社京都工場内 (56)参考文献 実開 平２−12836（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】刷版のピン孔に係合する少なくとも２個の
   刷版位置合わせ用ピンを有し、版胴に対し着脱すること
   ができる第１のピンバーと、この第１のピンバーの上記
   位置合わせ用ピンに係合するピン孔および刷版の位置を
   固定することができる少なくとも２個の刷版固定用ピン
   を合わせもつ第２のピンバーとを構成体として平版印刷
   版を版胴に装着するための装置において、 上記第２のピンバーの刷版固定用ピンに、この固定用ピ
   ンと刷版のピン孔との係合を許容しかつ係合した状態を
   固定しうる機構を設けたことを特徴とする平版印刷版の
   装着装置。