JP2514253B2 - シリコンカ―バイド系成形物及びその製造法 - Google Patents

シリコンカ―バイド系成形物及びその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、有機珪素ポリマーを前駆体とする新規なシ
リコンカーバイド系成形物(繊維,テープ,フイルム,
シート,薄葉体等)並びに該成形物を製造する方法に関
するものである。更に詳しくは、有機珪素ポリマーを前
駆体とする良好な力学的特性及び耐熱性を有する新規な
シリコンカーバイド系成形物並びに特殊な不融化方法を
含む新規な方法により該成形物を工業的に製造する方法
に関するものである。
〈従来技術〉 シリコンカーバイド(SiC)から実質的になる繊維,
テープ,フイルム,シート,薄葉体等の成形物は、空気
中における耐熱性が優れ、かつ耐薬品性や力学的特性に
も優れているという、炭素材料やガラス材料に見られな
い利点を有し、各種マトリックスの補強材料や耐熱材料
として有用な素材である。
従来、シリコンカーバイド系成形物としては、(a)
炭素,タングステン等を芯材としてその周囲にCVD法に
よりSiC結晶を析出させて得られる非常に発達したSiC結
晶より成るシリコンカーバイド系成形物、及び、(b)
有機珪素ポリマーを、フイルム,テープ,繊維等に成形
後、空気中で熱処理して架橋・不融化させた後、不活性
ガス雰囲気中で焼成することによって製造されるアモル
ファス状に近い未発達の微細なSiC結晶より成るシリコ
ンカーバイド系成形物、が知られている。
前者は、その製法及び特質から、SiC以外の不純物、
例えば遊離炭素(フリーカーボン)及び珪素酸化物の含
有量が少なく、このため1300℃を上廻る空気中での耐熱
性を有し、また、450kg/mm2に達する優れた強度を有す
ると言われる反面、細い(薄い)成形物を得ることはき
わめて困難である。したがって、該成形物は、可撓性に
劣り、高次の加工に適さないという欠点を有する。ま
た、発達したSiC結晶より成るため、その比重は3.2近く
に達し、炭素の2付近に比べて重く、比強度に相当する
g/de表示強度では、15g/deと比較的低い値にとどまると
いう欠点を有している。
一方、後者の有機珪素ポリマーを所定形状に成形し、
空気中で架橋・不融化処理した後、不活性ガス雰囲気中
で焼成したシリコンカーバイド系成形物は、溶融成形,
乾湿成形が可能で、薄い(細い)成形物を得やすく、高
次の加工に適し、比重も2.3〜2.5と比較的軽い反面、そ
の製法及び特質から、SiC以外の不純物である遊離炭素
(フリーカーボン)及び珪素酸化物の含有量が多く、こ
のため、該成形物の空気中耐熱性は1000℃以上において
明確な劣化が生じ、1200℃で初期強度の半分近くまで劣
化が進行し、1300℃においては、その形状は保つものの
もはや使用に耐えないという欠点を有する。また繊維等
の成形物の強度も高々250〜300kg/mm2であり、比重が軽
いもののg/de表示強度でも12〜14g/deとCVD法によるSiC
成形物(繊維)より劣ったものとなっている。
この有機珪素ポリマーを前駆体とするシリコンカーバ
イド系成形物の元素分析を実施すると、前駆体となる有
機珪素ポリマーの種類や成形物の製法により珪素原子に
対する炭素原子の比率は1.2〜3.0と広範囲に分布する。
しかしながら、窯業協会法で定義されている、800℃酸
素中で燃焼する遊離炭素を全炭素から差し引いた炭素
(以後便宜上「固定炭素」と称する)の原子と珪素原子
との比を採ると、1.0〜1.3の範囲に入ることから、有機
珪素ポリマーより得られるシリコンカーバイド系成形物
は、厳密にはSiCとCと珪素酸化物との混合物から構成
されるものと考えられる。
〈発明の目的〉 本発明の第1の目的は、有機珪素ポリマーを前駆体と
して製造される従来のシリコンカーバイド系成形物のも
つ上記の欠点を克服した、可撓性と耐熱性、力学物性を
兼ねそなえた新規なシリコンカーバイド系成形物を提供
することにある。本発明の第2の目的は、かかる新規な
シリコンカーバイド系成形物を工業的に効率よく製造す
る方法を提供することにある。
〈発明の構成〉 本発明者らは、有機珪素ポリマーを前駆体とするシリ
コンカーバイド系成形物について、従来のシリコンカー
バイド系成形物に比較して強度,モジュラスなどに於て
優れた特性を有し、かつ良好な耐熱性を兼ねそなえた成
形物を提供すべく、鋭意研究を重ねた結果、従来のシリ
コンカーバイド系成形物とは異なる特定の元素組成を有
し、かつ低い酸素含有量のシリコンカーバイド系成形物
が上記の目的を達成するとの知見を得また、有機ケイ素
ポリマーを成形後、該成形物に後述する特殊な不融化法
を適用し、これを焼成することにより上記目的を達成す
る新規なシリコンカーバイド系成形物が得られることを
見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る新規なシリコンカーバイド系
成形物は、有機珪素ポリマーを前駆体とする成形物であ
って、該成形物における本発明で定義する固定炭素と珪
素との原子比(Cf/Si)が1.5〜2.5であり、かつ酸化珪
素化合物の含有量が酸素原子に換算して10%(重量)以
下であることを特徴とするシリコンカーバイド系成形物
である。
ここで、本発明で言う「固定炭素」とは、成形物中に
含有される全炭素成分から遊離炭素(フリーカーボン)
を除いた炭素成分という。すなわち、固定炭素=全炭素
成分−遊離炭素で求められる。「遊離炭素」とは、シリ
コンカーバイド系成形物を800℃にて30分間酸素中で熱
処理する際に燃焼する炭素成分と定義され、燃焼炭素は
二酸化炭素に変換された後、水酸化ナトリウム水溶液に
吸収され逆滴定によって定量される。
なお、成形物中における珪素,酸素及び炭素(全炭素
成分)の定量法は次の通りである。
珪素の定量法 一定量の試料(約50mg)を白金ルツボに秤取し、炭酸
ソーダ(Na2CO3)約0.5gと水約5mlを加え試料とよく混
合するよう加熱乾固する。次に、これを電気中で約85
0℃にて3分間加熱融解する。放冷後、内容物を水に溶
解し100mlナスフラスコに入れ正確に標線に合わせる。
この溶液10mlを計り取り50mlに希釈した後、ICP分光分
析による測定を行ない珪素を定量する。
酸素の定量法 一定量の試料(約20mg)を錫(Sn)カプセルに秤取し
黒鉛ルツボに入れる。これに一定量のフラックス成分
(亜鉛,ニッケル)を添加した後、不活性ガス(He)気
流中で黒鉛ルツボに大電流を流してルツボを加熱し試料
を瞬時に融解させる。試料中の酸素が、黒鉛(炭素)と
反応した結果生じる一酸化炭素(COを酸化銅触媒層に通
して二酸化炭素に変換した後、赤外線検出器で測定して
酸素の定量を行う。
炭素の定量法 線維長15mmに切断した一定量の試料(約20〜100mg)
を磁性ルツボに秤取し、助燃材(銅,錫,鉄,タングス
テン等)を添加した後、酸素気流中で高周波誘導加熱を
行なうことにより試料を完全酸化させる。試料中の炭素
の酸化によって生じた燃焼気体(二酸化炭素、一部一酸
化炭素)を酸化銅あるいは白金触媒層に通して全て二酸
化炭素に変換した後、赤外線検出器あるいは熱伝導検出
器で測定して炭素(全炭素成分)の定量を行なう。
本発明のシリコンカーバイド系成形物の第1の特徴
は、従来のシリコンカーバイド系成形物に比して、固定
炭素原子と珪素原子の比率(Cf/Si)が異なっている新
規な組成を有することである。しかしながら、この組成
がいかなる物質構成比でなりたっているかその詳細は現
在のところ定かではないが、後述する如く、本発明のシ
リコンカーバイド系成形物を製造する際に好ましく採用
されるハロゲンと塩基性物質を逐次使用する特殊な不融
化法に起因するものと考えられる。
本発明において、固定炭素と珪素の原子比(Cf/Si)
が1.5〜2.5の範囲にあることは、本発明の目的とする有
機珪素ポリマーを前駆体として可撓性と力学物性及び耐
熱性を兼備するシリコンカーバイド系成形物を得る上で
極めて重要である。この理由も明確ではないが、次の要
に推測される。
即ち、有機珪素ポリマーからシリコンカーバイド系成
形物を得る場合、必然的に無機化過程を通過する。この
過程においては、有機珪素ポリマーから多量の炭化水素
系有機物等をはじめとする分解ガスが放出れる。この放
出ガスは成形物中に空孔を形成し該成形物の力学的性質
の低下の一因になると考えられる。かくして良好な力学
的性能の成形品を得るには有機珪素ポリマーから放出さ
れるガス量を減少させることが重要となる。この実現方
法としては、前駆体の有機珪素ポリマーをできるだけSi
−Cのみの結合からなるポリマーに近づけることが考え
られるが、成形物の可撓性につながるポリマー形成性を
保つ上で自ずと限界がある。この為、例えば、特公昭63
−25083号公報記載の方法では、加圧下で不融化無機化
初期過程を実現することにより、放出ガス量を抑え、焼
成収率の向上と力学物性の向上を図っている。しかしな
がら、その改善程度は焼成収率75%と不充分であり、25
%もの物質がガス化放出されている。この様に従来知ら
れているシリコンカーバイド系成形物では、特別な加圧
設備を要すると言う製造上大きな負担を併う方法でも、
その改善幅に限界があり、かつ耐熱性等にとって好まし
くない遊離炭素の増大と言う問題にも配慮が必要であっ
た。
これに対し、本発明の成形物は、従来の有機珪素ポリ
マーを原料とするシリコンカーバイド系成形物と異な
り、固定炭素と珪素の原子比(Cf/Si)が1より大きく
上まわっている事実からも明らかなように、無機化過程
に於て原料有機珪素ポリマーに含有されている炭素成分
が効果的に固定化されている。即ち、無機化過程におけ
る放出ガス量が減少し、且つ遊離炭素の生成が抑制され
る結果、優れた力学的性質と耐熱性とを兼ね備えた可撓
性良好なシリコンカーバイド系成形物が実現可能とな
る。
上記の説明より明らかな様に、成形物のCf/Siが1.5よ
り小さいものは無機化過程での放出ガスが多く、力学的
性質が低下する。一方Cf/Siが2.5より大きいと、炭素の
固定化状態が緩くなり、遊離炭素の増大を招きやすく、
耐熱性が低下する。したがって、本発明のシリコンカー
バイド系成形物はCf/Siが1.5〜2.5の範囲内にあること
が必要である。
本発明に係るシリコンカーバイド系成形物の今一つの
特徴は、従来の有機珪素ポリマーを前駆体とするシリコ
ンカーバイド系成形物に比べて、成形物中の酸化珪素化
合物の量が非常に少ないことである。
すなわち、本発明に係るシリコンカーバイド系成形物
中の酸化珪素化合物の含有量は酸素原子に換算して10
(重量)%以下、好ましくは0.5〜7(重量)%であ
る。従来のものは10(重量)%を大きく上廻っている
が、このような酸素含有量が10(重量)%を超える成形
物は高温における強度劣化が著しく進行するため好まし
くない。
以上のような特殊な組成で特徴づけられる本発明のシ
リコンカーバイド系成形物は、従来の同種成形物(例え
ば繊維)が高々250kg/mm2あるいはそれより若干大きな
引張り強度しか有していなかったのに対して、300kg/mm
2以上、好ましくは350〜500kg/mm2という驚くべき高強
度を発現する。
しかも、従来の成形物(例えば繊維)が1200℃の空気
中では著しい強度劣化を生じ、1時間で初期強度の50〜
60%にまで強度が低下してしまうのに対して、本発明に
係る成形物では、1200℃の空気中に1時間放置しても90
%以上の強度保持率を示し、殆んどの場合全く強度の低
下が認められず(強度保持率100%)、非常に良好な耐
熱特性を備えていることが判明した。
次に、かかる特徴を有する成形物の製造方法について
説明する。
本発明に係るシリコンカーバイド系成形物は、有機珪
素ポリマーを原料とし、これを所定形態に成形後、特殊
な不融化行程を経た後、焼成してシリコンカーバイド化
することによって得ることができる。すなわち、有機珪
素ポリマーを、繊維,テープ,フイルム、シート、薄葉
体等に成形後、該有機珪素ポリマー成形物に、ハロゲン
を0.01〜150(重量)%吸着及び/又は作用させ、次い
で塩基性物質を作用させた後、必要により予備焼成した
後、不活性ガス雰囲気中で焼成を行って有機珪素ポリマ
ーをシリコンカーバイドに転換させる方法により製造さ
れる。
これら成形物の原料ポリマーとしては、シリコンカー
バイドの前駆体となる可溶可融性の有機珪素ポリマーが
用いられ、例えばポリシラスチレン類,ポリカルボシラ
ン類,ポリカルボシラスチレン共重合体等が使用され
る。これらの中でも特公昭63−39617号に記載のポリカ
ルボシラスチレン共重合体が好適であり、カルボシラン
結合とシラスチレン結合との割合が3:7〜7:3の範囲にあ
り、かつ平均分子量が1000〜50000であるものが特に好
適に使用される。
これらのポリマーには、必要に応じ少量の−TiO−,
−ZrO−等の結合を含んでもよい。また、上記ポリマー
に、有機潤滑剤,改質剤,架橋剤,安定剤,その他の添
加剤を含んでよい。また、成形性を損わない範囲内で少
量のSi,Ti,TiC等の微粉末を含んでもよい。
上述の如き有機珪素ポリマーを、繊維,テープ,フイ
ルム、シート、薄葉体等への成形方法は、溶融法,乾式
法(溶液法)のいずれでもよい。溶融法の場合は、有機
珪素ポリマーはノズル,スリット等から冷却雰囲気中に
吐出して冷却固化させる方法が採用され、乾式法の場合
は、有機珪素ポリマーを有機溶媒に溶解したドープをノ
ズル,スリット等から押出し、ドープ中の溶媒を蒸発除
去して凝固させる方法が採用される。工業的には溶融法
が好ましく、かかる溶融法については本発明者らの提案
した米国特許第4,743,411号に詳しく記載されている。
かかる成形物は、不融化処理後、焼成することにより
シリコンカーバイド成形物となるが、本発明の成形物を
得るための不融化方法としては、従来用いられている空
気中で加熱する不融化方法は不適切である。かかる不融
化方法ではCf/Siの値が1.0に近づくのみならず、不融化
行程で大量の酸素がポリマー中に取り込まれ、耐熱性を
低下させる。このため本発明のシリコンカーバイド系成
形物を製造するには、前駆体成形物に対し、ハロゲン処
理と塩基性物質による処理とを逐次的に実施することに
より、実質上酸素不在下で効率的に不融化を行なう新規
な不融化方法が採用される。これにより、本発明に係る
良好な物性及び耐熱特性を兼ねそなえた新規なシリコン
カーバイド系成形物の製造が可能となる。
この不融化方法を詳しく述べると下記の如くである。
この不融化方法では、例えば有機珪素ポリマーからな
る繊維等の成形物を、不活性雰囲気中で沃素,塩素又は
臭素等のハロゲンを吸着及び/又は作用せしめ、次いで
アンモニア,メチルアミン,エチレンジアミン,水酸化
ナトリウム等の塩基性物質を、非酸化性ガス中で作用せ
しめることにより、実質的に酸素の作用なしに不融化を
完結させることができる。このため、不融化後に焼成し
て得られるシリコンカーバイド系成形物の酸素含有率を
極めて低いレベルに抑えることが可能となり、成形物の
物性及び耐熱性等の諸特性が飛躍的に向上する。
この不融化法に使用するハロゲンとしては、塩素,臭
素,沃素があげられるが、就中、沃素が最も効果的であ
り、好ましい。
吸着及び/又は作用させるハロゲンの量は、成形物
(例えば紡糸直後の繊維)の重量を基準にして0.01〜15
0(重量)%の範囲内に選択されるが、0.1〜50(重量)
%が好ましく、とりわけ1〜20(重量)%が特に好まし
い。
ハロゲンを吸着及び/又は作用させる方法としては、
(a)ハロゲンを含むガス中に有機珪素ポリマー成形物
(例えば紡糸直後の繊維)を置く方法、(b)ハロゲン
を溶解した溶液(例えば、水溶液等)中に有機珪素ポリ
マー成形物を浸漬する方法、(c)ハロゲンを含む処理
剤を有機珪素ポリマー成形物に塗布する方法等、任意の
手段を採用することができるが、工業的には上記(a)
の方法が好ましい。
ハロゲンを吸着及び/又は作用させる雰囲気として
は、不活性ガス雰囲気,真空雰囲気が好ましい。このこ
とは、かかる雰囲気ではハロゲンを吸着/作用させる時
に付随して生じるO2の作用を減少せしめるためと理解
できる。
本発明方法において、ハロゲンを成形物に吸着/作用
させる処理温度としては、50℃以上、好ましくは100℃
〜(ポリマーの融点−10℃)の温度が採用される。この
ような高温が好ましい理由は定かではないが、100℃を
超える温度において成形物に付与されたハロゲン特有の
色が速やかに消失することより、該温度以上でハロゲン
と有機珪素ポリマーとの間で何らかの作用(反応)が生
ずるためと推定される。
そして、本発明者らの研究によれば、ハロゲンを吸着
及び/又は作用させた有機珪素ポリマーは、驚くべきこ
とに、ハロゲンを吸着及び/又は作用させない有機珪素
ポリマーに比べてはるかに低温より高次の架橋重合を開
始することが明らかとなった。両者の架橋重合開始温度
差はポリマーの種類等によって異なるが100℃を超える
場合がある。
このようにしてハロゲンを吸着及び/又は作用せしめ
た有機珪素ポリマー成形物は、次いで、塩基性物質を作
用させる。ここで用いる好適な塩基性物質としては、例
えば、アンモニア,水酸化ナトリウム,水酸化カリウ
ム,メチルアミン,エチレンジアミン等があげられる
が、就中アンモニアが最も好ましい。
塩基性物質を作用させる雰囲気としては、非酸化性雰
囲気が好ましい。このような雰囲気は、使用する塩基性
物質がガス状で供給されるか、液状で供給されるかによ
り実現方法が異なる。即ち、ガス状で供給される場合
は、該塩基性物質の気体のみ、もしくは、該塩基性物質
の気体と、窒素,水素,アルゴン,ヘリウム等の不活性
ガスの混合気が使用される。一方、液状で供給される場
合は、通常該塩基性物質の水溶液が使用されるが、かか
る場合においては、過剰の塩基性物質は水洗等で除去す
ることが好ましく、また、引き続く乾燥行程も含めて、
酸素の取込みを防ぐため、不活性ガス雰囲気下もしくは
低温下で操作することが好ましい。
塩基性物質を作用させる量は、前もって吸着及び/又
は作用させたハロゲンの量により異なるが、該ハロゲン
量に対し、充分過剰に作用させることが好ましい。一般
に作用したハロゲンに対し等当量〜400当量の範囲が好
適に採用される。
塩基性物質を作用させる温度には、特に制限はない。
すなわち、ハロゲンを吸着及び/又は作用させた有機珪
素ポリマーと塩基性物質の作用は、極めて速やかに開始
するからである。しかし、一般的には、操作性の観点よ
り、室温〜200℃にて実施される。
このようにしてハロゲンを、次いで塩基性物質を作用
させた有機珪素ポリマー成形物は、驚くべきことに、酸
素の作用がないにもかかわらず、融点が元の(処理前
の)ポリマーに比べ著しく上昇し易く、該成形物は、元
のポリマーが熱的に高次の重合・架橋を開始しその融点
が速やかに上昇し始める温度、(例えば350℃〜400℃の
温度)に於ては、その熱重合速度の速さのため、もはや
溶融しなくなる。すなわち、上記温度で成形物の形状を
保持し、相互に融着することなく、無機質に転換できる
状態となり、不融化の目的は達せられる。また、本発明
者らの実験によれば、上記の処理を施した有機珪素ポリ
マーは、たとえ塩基性物質による処理が室温で実施され
ても、トルエンのような元のポリマーに対する良溶剤に
対し一部不溶化しており、すでに架橋結合が生成してい
るものと考えられる。
このような理由により、ハロゲンを吸着及び/又は作
用せしめた後に塩基性物質を作用せしめた有機珪素ポリ
マー成形物は、驚くべきことに、従来必須であった酸素
による架橋不融化行程を省略でき、そのままで高温焼成
に供しシリコンカーバイド系成形物にすることができ
る。
しかし、これを先ず、200〜800℃特に好ましくは250
〜600℃の不活性ガス(窒素等)雰囲気中で、1分〜3
時間予備焼成(熱処理)した後、800〜1400℃の不活性
ガス(窒素,アルゴン等)雰囲気中で1分〜2時間焼成
し、シリコンカーバイド系成形物にすることが一層好ま
しい。
また本発明に係るシリコンカーバイド系成形物では、
酸素含有率の上限が前駆体ポリマー中に含まれる酸素を
焼成収率で除した値に5(重量)%を加えた範囲内に入
る。この絶対的な値はポリマーの種類により異なってく
るが、通常は10(重量)%以下、好ましくは7(重量)
%以下、さらに好ましくは5(重量)%以下である。
〈発明の効果〉 かくして得られる本発明のシリコンカーバイド系成形
物は、本発明で定義する固定炭素が多く、しかもごく僅
かの酸素しか含まないため、前述の如く空気中での耐熱
特性及び機械物性が顕著に改善される。さらに、同一ロ
ット内での物性のバラツキも減少しており、高品質のシ
リコンカーバイド繊維,テープ,フイルム等として供さ
れ、工業的にきわめて有用である。また、本発明方法に
よれば、これら成形物は製造上の困難が少なくかつ良好
な生産性で製造できるため、従来品と比較して生産コス
ト的にも有利である。
〈実施例〉 次に、本発明の実施例及び比較例を掲げさらに詳細に
説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるもので
はない。なお、本明細書中の繊維強度はJIS R−7601の
方法に準じて測定される値である。また、本実施例にお
いて単に「%」とあるは、特にことらない限り、重量%
を表わす。
実施例1 ジクロロジメチルシランとジクロロメチルフェニルシ
ランの等モルを使い、トルエン溶媒中、ナトリウム分散
触媒を用いて110℃で重合反応させて得られたポリシラ
スチレン(軟化点86〜94℃)を400℃で30分間不活性ガ
ス(窒素)中で熱処理し、次いで5分間減圧下で同温度
で処理して、軟化点230〜240℃のポリカルボシラスチレ
ン共重合体を得た。その平均分子量は4600で、カルボシ
ラン結合とシラスチレン結合との割合は45/55であっ
た。
この共重合体を280℃で600m/分にて溶融紡糸したポリ
カルボシラスチレン共重合体繊維を、該原糸重量基準で
5%の沃素と共に耐圧容器に入れ、0.2Torrまで真空に
引き、これを高純度窒素でブレークする操作をくり返
し、内部の酸素を完全に置換した後、窒素雰囲気とし、
180℃で1時間、沃素をポリカルボシラスチレン共重合
体繊維に吸着/作用せしめた。沃素は全量繊維に吸着さ
れた。しかる後、該容器内を窒素で完全に置換した後、
アンモニアガスで置換し、そのまま、室温で1時間繊維
にアンモニアを作用せしめた。ひきつづき、該容器内を
窒素で置換し、不活性雰囲気とした後、室温より90分か
けて350℃まで昇温し、そのまま該温度で1時間保ち、
予備焼成を行った。しかる後、処理繊維をとり出し、荷
重下1200℃で窒素中で焼成し、シリコンカーバイド系繊
維に転換せしめた。かくして得られたシリコンカーバイ
ド系繊維の糸径は5.2μmであり、引張り強度は430kg/m
m2を示した。
該シリコンカーバイド系繊維を1200℃,1時間空気中に
さらした後、強度保持率を測定した結果、全く劣化を示
さず強度保持率は100%であった。
また該シリコンカーバイド系繊維の元素分析を実施し
たところ、酸素含有率は5%,固定炭素(結合炭素)
は、Si原子に対する比(Cf/Si)で2.15であった。
実施例2 作用沃素量を原子重量基準で10%に変更した以外は、
実施例1と同様の操作を行なうことによりシリコンカー
バイド系繊維を得た。該シリコンカーバイド系繊維の糸
径は5.5μmであり、引張り強度は384kg/mm2を示した。
該シリコンカーバイド系繊維を1200℃,1時間空気中に
さらした後、強度保持率を測定した結果、全く劣化を示
さず、100%であった。
また該シリコンカーバイド系繊維の元素分析を実施し
たところ酸素含有率は5.8%,結合炭素は、Si原子に対
する比(Cf/Si)で2.06であった。
実施例3 ジクロロジメチルシランを、キシレン溶媒中ナトリウ
ム分散触媒を用いて110〜120℃で重合反応を行ない白色
粉末状のポリシランを得た。この原料を加圧下で攪拌下
にて、430℃で24時間加熱処理し、次いで減圧下にて300
℃で処理して低沸点物を除去してポリカルボシランを得
た。この原料ポリマーを一度トルエン溶媒に溶解させた
後、過によってトルエン不溶分を除去し、さらに濾液
からトルエンを減圧下で除いて異物を含まないポリマー
を得た。この精製ポリマーを280℃で300m/分にて溶融紡
糸してポリカルボシラン繊維とした。この繊維を該原糸
基準で10%の沃素と共に耐圧容器に入れ、0.2Torrまで
真空に引き、これを高純度窒素でブレークする操作をく
り返し、内部の酸素を完全に置換した後窒素雰囲気と
し、180℃で1時間沃素をポリカルボシラスチレン共重
合体繊維に吸着/作用せしめた。しかる後、該容器内を
窒素で完全に置換した後、アンモニアガスで置換し、そ
のまま、室温で1時間作用せしめた。
ひきつづき、該容器内を窒素で置換し不活性雰囲気と
した後、室温より90分かけて350℃まで昇温し、そのま
ま該温度で3時間保ち予備焼成をおこなった。しかる
後、処理繊維を取り出し荷重下、窒素中1200℃で焼成し
シリコンカーバイド系繊維に転換せしめた。かくして得
られたシリコンカーバイド系繊維の糸径は8.7μmであ
り、引張り強度は400kg/mm2を示した。また該シリコン
カーバイド系繊維を1200℃,1時間空気中にさらした後、
強度を測定したところ、全く劣化を示さず強度保持率は
100%であった。また該シリコンカーバイド系繊維の元
素分析を実施したところ酸素含有量は5.1%,固定炭素
はSi原子に対する比(Cf/Si)で1.7であった。
実施例4 実施例1の合成法と同様の方法で合成したポリカルボ
シラスチレン共重合体を、280℃で600m/分にて溶融紡糸
してポリカルボシラスチレン共重合体繊維を得た。該繊
維を耐圧容器に入れ、0.2Torrまで減圧し、これを高純
度窒素でブレークする操作をくり返し、内部の酸素を完
全に置換した。再度0.2Torrまで減圧した後、高純度窒
素とともに該繊維基準で10%(重量)の臭素を耐圧容器
内に吸引し、180℃で1時間臭素をポリカルボシラスチ
レン共重合体繊維に吸着/作用せしめた。しかる後、該
容器内を窒素で完全に置換した後、アンモニアガスで置
換し、そのまま、室温で1時間作用せしめた。
ひきつづき、該容器内を窒素で置換し不活性雰囲気と
した後、室温より90分かけて350℃まで昇温し、そのま
ま該温度で1時間保ち予備焼成をおこなった。しかる
後、処理繊維をとり出し荷重下、窒素中1200℃で焼成し
シリコンカーバイド系繊維に転換せしめた。
かくして得られたシリコンカーバイド系繊維の糸径は
7.9μmであり、強度は350kg/mm2を示した。該シリコン
カーバイド系繊維の酸素含有率は7.0%であり、固定炭
素はSi原子に対する比(Cf/Si)で2.08であった。ま
た、1200℃,空気中1時間放置後の強度保持率は90%以
上であった。
比較例1 実施例1の合成法と同様の方法で合成したポリカルボ
シラスチレン共重合体を280℃で600m/分にて溶融紡糸し
ポリカルボシラスチレン共重合体繊維を得た。該繊維を
空気中で120℃、3時間加熱処理した後、ひきつづき空
気中で180℃にて3時間加熱処理した。しかる後、該繊
維を荷重下、350℃にて2時間、窒素気流を通じた容器
内で予備焼成をおこなった。しかる後、処理繊維を荷重
下、1200℃で窒素中で焼成しシリコンカーバイド系繊維
に転換した。
かくして得られたシリコンカーバイド繊維の糸径は8.
8μmであり、強度は200kg/mm2を示した。また、該シリ
コンカーバイド繊維を1200℃、1時間空気中にさらした
後、強度を測定したところ、強度保持率は40%であっ
た。該シリコンカーバイド繊維の元素分析を実施したと
ころ、酸素含有率は18%,固定炭素はSi原子に対する比
で1.1であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 節 山口県岩国市日の出町2番1号 帝人株 式会社生産技術研究所内

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有機珪素ポリマーを前駆体とするシリコン
    カーバイド系成形物であって、該成形物における固定炭
    素と珪素の含有量が両者の原子比(Cf/Si)で表わして
    1.5〜2.5の範囲内にあり、かつ、酸化珪素化合物の含有
    量が酸素原子に換算して10(重量)%以下であることを
    特徴とする、力学的特性及び耐熱性の改善されたシリコ
    ンカーバイド系成形物。
  2. 【請求項2】酸化珪素化合物の含有量が酸素原子に換算
    して0.5〜7(重量)%である請求項(1)に記載のシ
    リコンカーバイド系成形物。
  3. 【請求項3】成形物の形態が繊維であり、かつ、該繊維
    の引張り強度が300kg/mm2以上であって、1200℃空気中
    で1時間処理後の強度保持率が90%以上である請求項
    (1)又は(2)に記載のシリコンカーバイド系成形
    物。
  4. 【請求項4】有機珪素ポリマーを、繊維,テープ,フイ
    ルム,シート,薄葉体等の形状に成形後、該有機珪素ポ
    リマー成形物に、該成形物の重量当り0.01〜150(重
    量)%のハロゲンを吸着及び/又は作用させ、次いで塩
    基性物質を作用させ、必要により予備焼成した後、不活
    性ガス雰囲気中で焼成を行うことを特徴とするシリコン
    カーバイド系成形物の製造法。
  5. 【請求項5】有機珪素ポリマーがポリカルボシラスチレ
    ン共重合体である請求項(4)に記載の製造法。
  6. 【請求項6】ハロゲンが沃素である請求項(4)又は
    (5)に記載の製造法。
  7. 【請求項7】ハロゲンを不活性雰囲気中で有機珪素ポリ
    マー成形物に吸着及び/又は作用させる請求項(4)〜
    (6)のいずれかに記載の製造法。
  8. 【請求項8】ハロゲンを50℃以上の温度で有機珪素ポリ
    マー成形物に作用させる請求項(4)〜(7)のいずれ
    かに記載の製造法。
  9. 【請求項9】塩基性物質が、アンモニアである請求項
    (4)〜(8)のいずれかに記載の製造法。
  10. 【請求項10】ハロゲンを吸着及び/又は作用せしめた
    有機珪素ポリマー成形物に、塩基性物質を非酸化性雰囲
    気中で作用させる請求項(4)〜(9)のいずれかに記
    載の製造法。
  11. 【請求項11】有機珪素ポリマー成形物にハロゲンを吸
    着及び/又は作用させ、次いで塩基性物質を作用させた
    後、不活性ガス雰囲気中で200〜800℃の温度にて予備焼
    成し、続いて不活性ガス雰囲気中で800〜1400℃の温度
    にて焼成する請求項(4)〜(9)のいずれかに記載の
    製造法。
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