JP2514004B2 - 新規な電気絶縁油組成物 - Google Patents

新規な電気絶縁油組成物

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JP2514004B2 JP61208542A JP20854286A JP2514004B2 JP 2514004 B2 JP2514004 B2 JP 2514004B2 JP 61208542 A JP61208542 A JP 61208542A JP 20854286 A JP20854286 A JP 20854286A JP 2514004 B2 JP2514004 B2 JP 2514004B2
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    • Y10T29/00Metal working
    • Y10T29/43Electric condenser making

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は新規な電気絶縁油組成物に関する。さらに詳
しくは、油浸コンデンサーに含浸するに好適なジフェニ
ルメタン骨格の芳香族炭化水素の混合物からなる電気絶
縁油組成物に関するものである。
[従来の技術] 従来、電力用の高圧コンデンサー用の絶縁油は世界的
にPCB(ポリクロロビフェニル)が使用されていた。PCB
は誘電率が高いが、PCBの毒性が確認がされPCBの使用が
禁止された。その後も、同様に高誘電率の絶縁油を指向
した塩素化アルキルジフェニルエーテル、フタル酸エス
テル類と三塩化ベンゼンの混合物およびベンジルアルコ
ールと脂肪酸のエステル類などからなる電気絶縁油が開
発されている。
PCBなどの高誘電率の油は、固体絶縁体としての絶縁
紙と、または絶縁紙および二軸延伸ポリプロピレンフィ
ルムと組合せてコンデンサーに用いられているが、PCB
および紙の電力損失が大きいために、これらの組合せか
らなるコンデンサーは、コンデンサー全体としての電力
損失が特に低温において大きくなる特性を有していた。
たとえば、+10〜+20℃における損失は、およそ0.1%
であるが、−20℃〜−30℃では電力損失は急上昇し、10
倍に当る1%にも達した。このためコンデンサー内部の
電力損失に起因する発熱が無視できない程大きくなり、
コンデンサーの大きさ、固体絶縁体の種類、電極の形状
などにもよるが、+20℃〜+30℃もの温度上昇が認めら
れる。この結果、低温の環境でコンデンサーを作動させ
る場合、始動時には低温環境と同じ、たとえばその流動
点以下に絶縁油があっても、作動後にコンデンサー内部
からの発熱により徐々に絶縁油の温度が上昇することに
なる。そのため、絶縁油はやがてその温度が流動点を越
え、ついには粘度は低下して実質的に液体として作用す
ることになる。それ故、結果として、PCBはかなりの低
温の環境においても使用できるとされていた。すなわ
ち、本来は好ましくない電力損失による発熱が、低温環
境におけるPCBに対しては例外的に有利に働いていたわ
けである。
しかしながら、PCBの一方の代替品として登場してき
た1−フェニル−1−キシリルエタン(PXE)やモノイ
ソプロピルビフェニル(MIPB)などの二環芳香族炭化水
素は、その電力損失はPCBよりも格段に小さく、通常は
0.01〜0.02%とPCBコンデンサーの10分の1の値であ
り、−40℃に至っても電力損失は0.1%を越えることは
ない。従って、電力損失に起因するコンデンサー内部の
自己発熱は5℃にもならないのが通常である。したがっ
て、PCBコンデンサーのように低温になる程電力損失が
増大し、それに起因する自己発熱により環境の低温を補
償するような挙動を、前記二環芳香族炭化水素を含浸し
てなるコンデンサーに期待することはできない。
前記二環芳香族炭化水素の系列の絶縁油は、PCBおよ
び同系列の高誘電率の油と比較して部分放電特性に優れ
ており、またプラスチックフィルムなどの固体絶縁体へ
の含浸性に優れているので、電力コンデンサーの主流と
なっている。
それ故に、二環芳香族炭化水素の上記のような長所は
生かしつつも、それ自体十分に低温環境でも作動する二
環芳香族炭化水素の開発が望まれている。
[発明が解決しようとする問題点] 一般に、箔巻型のフィルムコンデンサーに含浸するに
適した二環芳香族炭化水素電気絶縁油が具備すべきもの
とされる条件としては次ぎのものがある。
(1) 分子中の芳香族炭素の比率が高いこと。芳香族
炭素の比率が高いと、水素ガス吸収性が高く、耐電圧特
性に優れたものとなる。
(2) 低温特性を向上させるために融点は低いほど好
ましい。
(3) 低温時においても低粘度の液体であること。分
子中の芳香族炭素の比率が最も高い二環芳香族炭化水素
は、非縮合型の二環芳香族炭化水素の中で最も炭素数の
小さい炭素数12および13の化合物が挙げられる。しかし
ながら、この炭素数12および13の二環芳香族炭化水素は
いずれも融点が高いか、または低分子量に起因して引火
点が低いので実用的な電気絶縁油にはなり得ない。
したがって、炭素数14またはそれ以上の炭素数の二環
芳香族炭化水素から選択せざる得ない。
低温特性の優れた絶縁油として具備すべき条件の一つ
として、低温における粘度に着目する理由は次の通りで
ある。フィルム、紙などの固体絶縁体に異物やフィルム
の結晶構造に欠陥がないか、または、絶縁油によってフ
ィルムが変質して弱点部を生ずるようなことがない限り
は、低温においてはまず部分放電が起り、次いで固体絶
縁体が損傷を受けるか、または放電の拡大によって破壊
に至るものである。
さらに部分放電の開始に至るまでの状態は、次のよう
に考えられる。まず前駆的な現象として、電極端の突起
部や固体絶縁体の弱点部等に電位が集中し、その局部を
覆っている絶縁油から水素ガスを主とするガスが発生す
る。発生個所は1ケ所に集中して起きることもあれば、
同時に複数のこともある。発生したガスは初期の状態で
は絶縁油中に溶存しており、ガスの濃度差または液の移
動によって拡散する。一方、二環芳香族炭化水素は概ね
課電下では水素ガス吸収性であるから、ガスを発生して
いない他の部位ではガスの吸収を行なっていると考えら
れる。ここでガスを発生している部位において発生する
ガスの量が、拡散もしくは吸収される量より多くなれ
ば、やがて飽和状態を越えて微小な気泡が発生して放電
に至ると考えられる。このような現象を支配するパラメ
ーターは、一つは絶縁油の有するガスの発生し難さであ
り、これは絶縁油の水素ガス吸収性と表裏一体の関係を
なすものと推定される。次には絶縁油中におけるガスの
拡散速度である。これはガスの濃度差によって拡散する
現象と、液体の流動に伴なってがすが移動する現象とが
複合して起きているものと思われるが、このふたつの現
象は共に粘度の関数であり、同じ温度では粘度が低い程
全体としての拡散速度が早くなって有利になると考えら
れる。
ベンジルトルエン類は炭素数14であるから、実際上、
芳香族性の最も高い二環芳香族炭化水素のひとつであ
る。しかも、ベンジルトルエン類は結晶が析出する前の
過冷却状態である−50℃における粘度を測定すると、異
性体混合物では200cSt以下であって、−50℃という低温
を考慮すると極めて低粘度である。通常、液の流動点あ
るいはその近傍における粘度は数万〜10万cStであるか
ら、ベンジルトルエン類は低温における粘度が極めて低
く、低温特性の優れた電気絶縁油と言えるものである。
ベンジルトルエン類については、特公昭55-5689号公
報には、o−ベンジルトルエン、p−ベンジルトルエ
ン、およびこれらとジベンジルトルエンとの混合物の例
が示されている。また、特開昭60-87231号公報には、塩
化ベンジルとトルエンとを塩化鉄系触媒で反応させたオ
リゴマー組成物、すなわち実質的にベンジルトルエンと
ジベンジルトルエンの混合物からなる電気絶縁油組成物
の例がある。
さらに、フランスのプロデレック社(ProdelecCo.)
からはJARYLEC C−100なる商品名でベンジルトルエンお
よびジベンジルトルエンの混合物からなる電気絶縁油が
商品化されている。
これらのベンジルトルエンは、前記公報で示されるよ
うなo−、p−配向性の高い塩化鉄系触媒を用いて、塩
化ベンジルとトルエンとをフリーデル・クラフツ反応に
より製造したものであるから、ベンジルトルエン類とし
てはo−およびp−ベンジルトルエンが主成分であり、
m−ベンジルトルエンは少ない。またジベンジルトルエ
ンはベンジルトルエン製造時に副生したものと考えられ
る。
ここで低温特性の優れた絶縁油であるためにはより融
点が低い方が好ましい。ベンジルトルエンの各位置異性
体の融点は文献によると次表の通りである。
上の表から、o−異性体およびp−異性体それ自体の
融点は高く、単独では温帯の気候の場所であっても使用
することはできない。また、前記特開昭60-87231号公報
および商品名JARYLEC C−100、C−101では小量成分(1
0%以下)であるm−ベンジルトルエンは、位置異性体
の中ではその単独の融点は最も低いが、それでも鉱油系
絶縁油の一般的な規格(たとえばJIS)で規定されてい
る流動点より高い融点を示している。
すなわち、ベンジルトルエン類は前述の如く低温にお
ける粘度は低いものの、必ずしも融点は満足できるもの
ではない。
このような問題を解決するために、前記特開昭60-872
31号公報においては、ベンジルトルエンに副生物である
ジベンジルトルエンを混合している。
たとえば、上記公報と同一内容と思われる前記商品JA
RYLEC C−100、C−101には、ベンジルトルエンにジベ
ンジルトルエンが約20重量%加えられている。氷点降下
現象として知られているように、氷点すなわち結晶の析
出点の降下の度合いは加えた物質のモル濃度に比例す
る。したがって、ジベンジルトルエン20重量%は、モル
濃度で14.3%に相当し、このモル濃度程度では析出点の
降下は6〜8℃程度にすぎない。即ち、ジベンジルトル
エンは分子量が大であるために、加えた重量の割に、析
出点を下げる効果が期待できない。その上、ジベンジル
トルエンはベンジルトルエンよりも高粘度であるから、
ジベンジルトルエンを加えることによりベンジルトルエ
ンの低粘度性という利点を相殺していることになる。
見かけ上過冷却状態により結晶の析出が妨げられると
しても、低温においてはより高粘度となり、むしろ好ま
しいものではない。
本発明者らは、前記特開昭60-87321号公報を次のよう
に追試して、このことを確認した。
すなわち上記公報の実施例と同様にして、塩化ベンジ
ルとトルエンとをFeCl3触媒により反応させ、それぞれ
蒸留することによりベンジルトルエンとジベンジルトル
エンとを得た。このベンジルトルエンとジベンジルトル
エンとを重量比で80:20の割合で混合した。得られた混
合物中のベンジルトルエンの異性体含有量はo−体39.1
wt%、m−体5.4wt%およびp−体35.5wt%であり、こ
れは前記商品JARYLEC C−100の分析値、o−体36.2wt
%、m−体5.9wt%およびp−体37.8wt%とほぼ一致し
ていた。
上記の合成したベンジルトルエン、上記のベンジルト
ルエン/ジベンジルトルエン混合物およびJARYLEC C−1
00をそれぞれ蓋付の試験管に入れて温度変化がプログラ
ムできる冷凍庫に放置し、結晶の析出状況を観察した。
温度は−40℃から−50℃の間を12時間かけて1サイクル
するようにした。
この結果によれば、ベンジルトルエンのみの場合は、
1〜3日後で結晶が析出し全体が固化したが、ベンジル
トルエン/ジベンジルトルエン混合物およびJARYLEC C
−100は4〜7日後に析出が始まり、徐々に結晶が成長
して、2週間後には試験管のほぼ全面に結晶が認められ
た。すなわち、ジベンジルトルエンを加えることによ
り、粘度が上昇し、過冷却状態が長く継続し、結晶の析
出し始めるまでに、より長時間を要するということであ
った。したがって、最終的には結晶は析出するとして
も、ジベンジルトルエンの添加により結晶の析出が抑制
されていることになる。
しかしながら、ジベンジルトルエンの添加物により、
明らかに粘度は上昇するのであるから、低温においても
低粘度である電気絶縁油を得るという本発明の目的とは
反するものと言ざるを得ない。
それ故、前記特開昭60-87231号公報の方法ではベンジ
ルトルエンの本質的な改良方法にはなり得ない。
[問題点を解決するための手段] すなわち、本発明は40重量%以上のベンジルトルエン
および残余が炭素数15ないし17のアルキルジフェニルメ
タンの混合物からなり、平衡温度において該混合物中の
各成分ごとに成立する下記式で表わされる固−液平衡式
に基づいて計算される、該混合物中の−40℃における固
相の割合が、45重量%以下であることを特徴とする低温
度性の改善された電気絶縁油組成物の発明に関する。
式: ここでxiは成分iの液相中の平衡モル分率、 Δ▲Hf i▼は該成分の純物質としての融解熱 (cal・mol-1)、 ▲Tf i▼は該成分の純物質としての融点(K)、 Tは系の温度(K)、 R気体定数(cal・mol-1・K-1)である。
以下に本発明を更に説明する。
対象とする化合物の融点および融解熱が与えられれ
ば、ある温度で該化合物の固体と平衡している該化合物
を含む溶液との間では、下記固−液平衡の一般式が成立
する。
ここでriは活量係数であり、xi、Δ▲Hf i▼、Rなど
は前記式と同じである。
したがって、多成分系において、液体状態では任意の
割合で混じるが、固体状態では混じらない。すなわち、
固溶体などを作らないとして、前記系における結晶の析
出温度、析出量、共晶点などを計算で求めることができ
る。
上記の計算は、活量係数の決定を除けば、固−液平衡
の通常の計算方法に従えばよい。成分数が多いときはコ
ンピューターを利用するのが便利である。たとえば、簡
単な2成分系の固−液平衡の計算についてはフィジカル
ケミストリー(Physical Chemistry、Walter J.Moore、
second edition、Prentice-Hall社発行)の第6章溶液
と相平衡に記載されている。
活量係数につては、活量係数の決定法、たとえばASOG
法などから決定した活量係数と、活量係数を1に等しい
場合とを比較すると、ベンジルトルエン異性体、後述の
C15〜C17のアルキルジフェニルメタンおよびこれらの混
合物の系では温度にして1℃以内で一致することが解っ
た。したがって、本発明では活量係数は1に等しいとし
て上記固−液平衡式を用いる。
ここで、簡略に固相に計算例を説明する。物質Aと物
質Bからなる液体の絶縁油があるとする。この2成分系
の共晶点は、Aについての前記固−液平衡式Bについて
の前記固−液平衡式を連立方程式として解くことにより
求められる。
系の温度が、上で求めた共晶点以下のときは、この組
成物は全て凝固するので、固相の割合は100%となる。
系の温度が、上で求めた共晶点を越えるときは、系の
温度を固−液平衡式に代入して求めたそれぞれの物質の
モル分率xA、xBと、液100%のときの同じくモル分率▲X
1 A▼,▲X1 B▼とをそれぞれ比較する。▲X1 A▼−XAの値
が正のとき、この値に対応する分のAが固体として析出
する。Bについても同様にしてBの析出分が計算でき
る。この合計がその系の温度における固相の量となる。
なお、各物質の析出量が解るから、逆算すればこのとき
の液相の組成も解る。
本発明においては、上記固−液平衡式に基づいて結晶
析出量などを計算で求めるのであるが、これらの値を実
際の実験で求めることは不可能ではないにしても、確率
の要素が入り、特に析出量の測定などは困難である。
何故ならば、たとえば過冷却状態の溶液から結晶が析
出する時期は半ば偶発的であり、その析出点も不規則で
あり一様ではない。一般に結晶が析出する時は、溶液中
に浮遊する微小な核となる物質や、電極、固体絶縁体、
内壁などの表面、あるいはガラス管のテストでは管内
壁、それも内壁表面の傷に沿って晶出することが多い。
しかしながら結晶の析出が偶発的であり、不規則である
ことに変りはない。
また結晶の析出の可能性、すなわち析出の有無のみを
確認するには、析出すべき化合物よりも高い融点を有
し、これと類似の化学構造を有する化合物の結晶を種と
して添加し、結晶の析出を確認するこは有効ではある
が、析出する結晶の量は、結晶の形や成長の仕方などに
よってその見掛け上の体積が異なるので、実験により定
量的に測定するとはできない。特に低温で測定しなけれ
ばならないのでさらに困難となる。
今、結晶の析出やその量の多少を論ずる時に、このよ
うに偶発的あるいは不明確な実験に基づいて商業生産さ
れる絶縁油の性能や信頼性を推し量ることは無謀と言わ
ざるを得ないところ、本発明では前記固−液平衡式に基
づいて計算される量によるのであるから、極めて正確で
あって信頼性が高いといえる。
ところで、低温特性を論ずる場合、その具体的な温度
としては、−40℃、好ましくは−50℃が挙げられる。
ここで、ベンジルトルエンは、既にのべたように低温
でも低粘度である。しかし、次に示すように、ベンジル
トルエン単独では、たとえその位置異性体の混合物にし
て融点を下げても、−40℃では液体として存在し得な
い。
すなわち、先に特開昭60-87321号公報の追試において
得られたベンジルトルエン異性体混合物(o−体48.9重
量%、m−体6.8重量%、p−体44.3重量%)につい
て、前記固−液平衡式に従い計算して求めた各温度にお
ける固相量は第1図の通りである。
同図を説明すいると、まずA−B間では、温度が低く
なるにつれo−体が析出し、B−C間ではo−体とp−
体が同時に析出する。C点ではこれにm−体の析出が加
わって、この点は共晶点(−38.9℃)となり、3成分が
同時に析出を完了し、全て固体となる。この図では、−
14〜−15℃の間でわずかであるが析出が開始することに
なる。そこで、実際に同じ組成のベンジルトルエン異性
体混合物を一度共晶点以下に冷却し、全て固体としてか
ら、徐々に温度を上昇させることにより、結晶が消滅し
た温度を観察すると、上記の温度と1〜2℃の範囲内で
良く一致した。
上記第1図からも明らかなように、ベンジルトルエン
の3種の位置異性体のみからなる系では、共晶点は−3
8.9℃となり、その温度以下ではどのような割合で3種
の異性体が混合されていようとも全て結晶として析出す
る。したがって、共晶点以下では液体として使用するこ
とはできないのであるから、前記の低温特性の具体的な
温度目標である−40℃には、ベンジルトルエン異性体の
みでは不適当であることは明らかである。
既に述べたように、特開昭60-87321号公報ではベンジ
ルトルエンにジベンジルトルエンを添加し用いている。
そこで、ベンジルトルエンに20重量%のジベンジルト
ルエンを混合し、ジベンジルトルエンは前記公報で述べ
ているように非結晶性、すなわち常に液体であるとする
と、この系の固−液平衡と温度の関係は第2図に示され
るようになる。
第2図によると結晶の析出開始温度は、前記第1図の
それよりも約5℃低くなっており、−20℃を越えてから
o−ベンジルトルエンおよびp−ベンジルトルエンが析
出を開始する。
固相の割合は、既に−30℃で50%を越えており、−45
℃では64.5wt%、−50℃では69.3wt%にもなる。
前記第3図と比較すると、−40℃や−50℃の低温でも
全て固相にならない。すなわち、液相が必ず存在すると
いう点では明らかに改善されている。しかしながら、、
液相部分の組成をみると、液相全体を100%として、ジ
ベンジルトルエンの割合は−30℃で42%、−40℃では56
%、−50℃に至っては65%に達っしている。このよう
に、低温になると好ましくはないが、融点を下げるため
には止むをえず混合しているジベンジルトルエンの割合
は、肝心の液相部分で過半数を越えてしまうのである。
そこで上記液相部分の組成に相当するように、別途ベ
ンジルトルエンとジベンジルトルエンを混合し、相当す
る組成の液を調製し、その粘度を測定した。その結果−
50℃では測定不能なほど高粘度であった。
このようにジベンジルトルエンを混合すことにより、
結晶の析出が妨げられるのは確かではあるが、この現象
も粘度の増大に起因するものであるから、いずれにして
も好ましくはない。
以上はジベンジルトルエンを20wt%混合したときの固
液平衡を基にしたものであるが、ジベンジルトルエンを
20wt%より減らすと融点を改善する効果が下り、20wt%
より増すと融点は下がるが、逆に粘度が増加してベンジ
ルトルエンの特徴がより相殺されてしまうことになる。
そこで、このような矛盾を解決するために、ベンジル
トルエンと類似の化合物を合成し、これらの低温におけ
る物性ならびに固液平衡とモデルコンデンサーを用いた
含浸油としての評価を繰り返した結果、問題点を解決す
るための重要な手段を見出すに至ったのである。
その一つは、ベンジルトルエンのようなジフェニルメ
タン骨格を有する二環芳香族炭化水素の優れた特性を生
かしながら、固液平衡を改善するために混合する化合物
に関するものであり、第2にはコンデンサー用の絶縁油
として低温で性能を発揮するための組成を選択する条件
に関するものである。
そこで、必要な基礎となる物性を測定し、併せてコン
デンサー用絶縁油としての性能を評価するために、表2
に記載の位置異性体組成を有するジフェニルメタン骨格
を有するアルキル基核置換のアルキルジフェニルメタン
類を合成した。同表に記載した組成は、合成後さらに精
密蒸留して得られたものである。
同表中、化合物AからEまでは、塩化ベンジルにそれ
ぞれトルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン
を、FeCl3触媒またはAlCl3触媒により反応させて合成し
たものである。但し、化合物Bは、塩化ベンジルにトル
エンを、それぞれ個別にFeCl3またはAlCl3触媒により反
応させ、さらに精密蒸留した後に混合することにより得
られた組成のものである。化合物Fは、ジフェニルメタ
ンを強酸性イオン交換樹脂触媒でプロピレンによりアル
キル化することにより合成したものである。
次の表3には、前記表2で合成した位置異性体につい
て、純物質のときの融点および融解熱を示した。但し、
ベンジルトルエンの位置異性体については前記表1に示
してあるので除いた。
表3のエチルジフェニルメタン類はいずれも文献値で
あり、また、イソプロピルジフェニルメタン類はいずれ
も各々の異性体別に別法で合成し、それぞれ精製した
後、本願の目的のために真空理工社製比熱測定装置(SH
-3000型)を用いて実測したものである。
上の表のデータを用いて固−液平衡式に従い、それぞ
れ3種の位置異性体混合物の共晶点を求めると、エチル
ジフェニルメタン類では−39.3℃であるから、この温度
以下ではエチルジフェニルメタン類はいかなる比率で位
置異性体が混合されていようとも、全て固体になる。し
たがって、−40℃または−50℃という低温においてエチ
ルジフェニルメタン類はそれ単独の位置異性体混合物で
は使用することが困難である。またイソプロピルジフェ
ニルメタン類は、各々の異性体の融点ではエチルジフェ
ニルメタン類とあまり変らないにもかかわらず融解熱が
低いために、その3種の位置異性体混合物の共晶点は−
50.2℃となる。このときの共晶組成は、およびo−体27
wt%、m−体45wt%、p−体28wt%である。エチルジフ
ェニルメタン類よりもイソプロピルジフェニルメタン類
の共晶点は低いので、低温において使用できる可能性は
ある。しかしながら、ベンジルトルエン類よりは1分子
当りの芳香族性が低く、このため水素ガス吸収性、コン
デンサーの耐電圧性などが劣り、イソプロピルジフェニ
ルメタン類は位置異性体の混合物としても、それ単独で
電気絶縁油、特にコンデンサー用の絶縁油として使用に
耐えるものではない。
次に二環芳香族炭化水素の中で、ジフェニルメタン骨
格以外の基本骨格、すなわち、ビフェニル骨格およびジ
フェニルエタン骨格を有する化合物とジフェニルメタン
骨格を有する前記ジフェニルメタン類との低温における
粘度を比較した。
炭素数15のジフェニルメタン骨格の化合物C(エチル
ジフェニルメタン位置異性体混合物、表2に記載)と、
同じ炭素数のビフェニル骨格を有するMIPBとの−50℃で
の粘度を比較すると、前者はわずか90cStであるが、後
者のそれは12,000cStと極めて高粘度である。
また、炭素数16のジフェニルメタン骨格の化合物D
(イソプロピルジフェニルメタン位置異性体混合物、表
2に記載)と、同じ炭素数のジフェニルエタン骨格を有
するPXEの−50℃での粘度を比較すると、前者は260cSt
であるが、後者のそれは約5万cStと極めて高粘度であ
る。
したがって、ジフェニルメタン骨格を有する二環芳香
族炭化水素は、同じ二環芳香族炭化水素の中でも他の基
本骨格を有する化合物と比較して、低温において極めて
粘度が低いものであるといえる。
それ故に、低温特性の優れた電気絶縁油組成物の一成
分として、上記のたとえば炭素数15または16のアルキル
基該置換のジフェニルメタンを採用することは有意義で
あると言える。
そこで本発明においては、前記特開昭60-87231号公報
の提案とは異なり、ベンジルトルエン類に前述の如き炭
素数17以下であるベンジルトルエン以外の核置換のアル
キルジフェニルメタンを混合するものである。炭素数が
18以上のアルキルジフェニルメタンは、ジフェニルメタ
ン骨格を有する化合物が低粘度であるとはいえ、分子量
が大き過ぎるので高粘度であり、したがって、ジベンジ
ルトルエンを添加する場合と同様になり好ましくない。
ベンジルトルエンは、混合物である本発明の組成物中
40重量%以上あることが必要である。40重量%未満で
は、ベンジルトルエン自体の高芳香族性に起因する高い
水素ガス吸収性、高い耐電圧特性などの利点が薄れ、た
とえ低温特性が優れているとしても、電気絶縁油、特に
コンデンサー用絶縁油としては好ましくない。
本発明において、ベンジルトルエンに加えるべき炭素
数17以下、好適には16以下のアルキル基核置換のアルキ
ルジフェニルメタンはベンジルトルエン以外の化合物で
あって、次の化合物が例示される。
すなわち、ジフェニルメタン、エチルジフェニルメタ
ン、イソプロピルジフェニルメタン、n−プロピルジフ
ェニルメタン、メチルエチルジフェニルメタン、ブチル
ジフェニルメタン、ジエチルジフェニルメタン、メチル
プロピルジフェニルメタンおよび存在するときは、これ
らの位置異性体が例示される。好適なものとしては、エ
チルジフェニルメタンおよびイソプロピルジフェニルメ
タンである。
ところで、ベンジルトルエンにアルキルジフェニルメ
タンを添加、混合した系の−40℃または−50℃という低
温における平衡時の固相の含有量(混合物全体に対する
析出した結晶の重量%)を、前記の固−液平衡式に従い
計算すると、下記表4に示す通りとなる。なお、同表中
の各化合物は前記表2の記載と同一である。
同表の値から明らかなように、低温特性の具体的な温
度目標として、−40℃または−50℃を設定した場合、ベ
ンジルトルエンとアルキルジフェニルメタンとの混合物
系には、低温において必ずとは言えないまでも、ほとん
どの系で固相が存在する、すなわち結晶が析出する系で
ある。
今ここで、低温特性に優れた電気絶縁油は、目標とす
る低温において固相を全く含まない、すなわち結晶が全
く析出しないものが好ましいと仮定するならば、ベンジ
ルトルエンとアルキルジフェニルメタンの混合物から、
低温特性の優れた電気絶縁油を得る可能性は全くないと
は言えないまでも、極めて困難と云わなければならな
い。
ここで、この問題をさらに敷衍して固相の存在と部分
放電との係わり合いについて考察するためにまず次のよ
うに仮定したとする。結晶の析出の開始は不規則な場所
から多発的に起こり、順次成長して行くとして、その結
晶が、電極の電位が集中する端部などの相対的な弱点部
や固体絶縁体の欠陥部をたまたま覆い、液体絶縁油とし
て作用しなくなることにより、低い電圧の印加で部分放
電が起り得る。このように仮定すると、晶出による部分
放電電圧の低下と結晶の析出量の関係は、相対的な弱点
部に結晶が存在することの確率に依存することになり、
少量でも晶出すればその確率は低いが起り得ることにな
る。したがって低温において固相が存在する可能性の高
いベンジルトルエンとアルキルジフェニルメタンは、低
温対策用の電気絶縁油には好ましくないという結論に至
る。
そこで、本発明者らは、ポリプロピレンフィルムのみ
を誘電体として用いた箔巻型のコンデンサーに、ベンジ
ルトルエンとアルキルジフェニルメタンとの混合物を含
浸させ、低温において繰り返して課電し、部分放電圧を
測定しその挙動を観察すると共に、低温における固相の
割合を前記固−液平衡式に従って計算で求めて、部分放
電の挙動と固相量との関係を詳細に検討した。
ベンジルトルエンとアルキルジフェニルメタンとの混
合物を含浸させてなるコンデンサーの、−40℃および−
50℃という低温における部分放電の挙動は、次の(ア)
から(ウ)の3種類の状態に分類できた。
(ア) 課電電圧は20〜50V/μの電位傾度で部分放電が
開始し、しかも、しばしば測定中にコンデンサー自体の
絶縁破壊に至ることがある。
(イ) 電圧傾度は40〜100V/μという比較的高いレベ
ルで部分放電が開始する。しかし、多数のコンデンサー
により、各々複数回測定してみると、測定値は非常に揺
れ幅が大きく、再現性がない。
(ウ) 固相が存在しても、部分放電の開始電圧のレベ
ルは、全て液相であり固相が存在しない温度領域と同様
の高いレベルを示し、しかも再現性も同様にある。した
がって、この状態ならばコンデンサーは液含浸の温度領
域と同様に動作し得る。
この分類に従って、コンデンサーについての測定デー
ターを整理すると、−40℃および−50℃という低温にお
ける上記の部分放電の状態と、該温度における固−液平
衡式から計算された固相の含有量との間に相関性がある
ことが見出された。
すなわち、ベンジルトルエンとアルキルジフェニルメ
タンの混合物系では、固相の存在量が、全混合物に対し
て45重量%を越えるが、全てが固相ではない系では、コ
ンデンサーの部分放電の状態は、上記(イ)の状態とな
り、部分放電の開始電圧の測定値は極めてが再現が劣る
ものとなる。しかしながら、固相の量が45重量%以下の
場合は、臨界的に(イ)の状態とはならず上記(ウ)の
状態、すなわち実質的に全て液相の場合と同様の部分放
電の状態を示すことが確認された。なお念のため、−50
℃よりもさらに冷却し、ほぼ100%固相の状態で、コン
デンサーの部分放電を測定した場合は、上記(ア)の状
態であった。
上述の如く、固相が45重量まで存在しても、コンデン
サーが十分に動作するという知見は、前述の確率的に析
出する結晶とコンデンサーの絶縁破壊とが関係するとす
る仮定と明らかに矛盾するが、本発明者らは次のように
解決する。
まず、含浸コンデンサー中の電気絶縁油において、固
相の割合が45重量%を越えると、液相の体積に比べて固
相の体積が多くなり、液相は孤立、分散し、所謂分散相
となるか、またはたとえ所謂連続相であっても、多数の
結晶の間隙を縫って液相が連続するような不十分な連続
相であって、特に物質移動の観点からは実質的に分散相
といえるような相にならざるを得ない。このような場
合、部分放電の前駆現象として、局部的に水素ガスを始
めとするガスが発生した場合に、発生ガスは充分に拡散
し、吸収されないことになる。含浸させた電気絶縁油が
この状態にあるとき、コンデンサーの部分放電を測定す
ると、充分なガスの移動を妨げている箇所から、低い印
加電圧でも部分放電が開始することになる。また微視的
には、実質的に孤立している液相のそれぞれの体積ない
しは形状は一様ではないであろうから、元々ガスを発生
し易い箇所と、物質移動の観点からガスの拡散、吸収し
にくい箇所とが重なれば、著しく低い電圧で部分放電が
開始することもあり得る。この結果前記(イ)の状態の
如く、部分放電の開始電圧の測定値は再現性に劣ること
になると考えられる。
一方、固相の割合が45重量%以下になると、固相と液
相の比重差から、容積では固相の割合はさらに小さくな
り、その結果実質的に液相は連続相となると考えられ
る。
前述の発生ガスの物質移動は、液中のガス拡散あるい
は液自体の移動などの要因に関係するが、いずれにしろ
低粘度の液である方が物質移動には有利である。本発明
においてはベンジルトルエンそれ自体の粘度も低く、さ
らにこれに加えるべきアルキルジフェニルメタンも極め
て粘度の低い炭化水素である。したがって、物質移動の
観点からも有利であって、固相が45重量%近く存在して
いたとしても、実質的に全てが液相である状態と同じ挙
動を示すものと考えられる。
また、偶発的にしろ析出したわずかな固体が、直接た
とえば電極端部に付着した場合の挙動はどうかといえ
ば、このような場合は余り問題はないと考える。
すなわち、電極箔端の形状を、たとえば箔端を折り曲
げて丸くすることにより、鋭角的な部分を少なくする
と、このような電極で構成したコンデンサーの電力損失
は減少することが知られており、このことから逆に電極
の変形あるいは鋭角的な部分には電位が集中し、電力が
消費される。すなわち発熱していることになる。したが
って、電極にわずかな結晶が付着し、該電極が見かけ状
変形すると、この変形した場所は発熱し、少なくとも電
極と接触している部分の結晶は融解し、液体になってい
るであろう。このようになると、実質的に電極は液体で
覆われることになり、部分放電については特に考慮する
必要がないと考えられる。
本発明の組成物は、ベンジルトルエンおよびベンジル
トルエン以外の炭素数17以下のアルキルジフェニルメタ
ンの混合物からなるものであるが、固−液平衡式に従い
計算された系の温度−40℃における該混合物中の固相の
割合が45重量%以下となるように、上記ベンジルトルエ
ンおよびアルキルジフェニルメタンをそれぞれの位置異
性体も含めてその種類および割合を選ぶことにおり得ら
れる。但し、この時混合物中のベンジルトルエンの量は
40重量%以上とすることが必要である。低温特性をより
向上させるためには、系の温度が−50℃において混合物
中の固相の量を45重量%以下になるようにすることが好
ましい。
本発明の電気絶縁油組成物を使用する際には、本発明
の目的の範囲内で、他の公知の電気絶縁油を任意の割合
で添加して用いることができる。このような他の絶縁油
としては、フェニルキシリルエタン、ジイソプロピルナ
フタレンなどが挙げられる。
本発明の電気絶縁油組成物を含浸する好適なコンデン
サーは所謂箔巻コンデンサーである。このコンデンサー
は、電極としてのアルミニウム箔などの金属箔と、誘電
体もしくは絶縁体としてのプラスチックフィルムとを重
ねて巻回してなるコンデンサー素子に、電気絶縁油を含
浸してなるものである。プラスチックフィルムと共に絶
縁紙を用いることもできるが、好ましくは全てプラスチ
ックフィルムを用いる。プラスチックフィルムとして
は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフ
ィンフィルムが好ましい。コンデンサー素子への電気絶
縁油組成物の含浸は常法に従い行なうことができる。
[発明の効果] ベンジルトルエンが40重量%以上含まれる水素ガス吸
収性の良い電気絶縁油が得られ、該絶縁油を含浸してな
るコンデンサーは極めて耐電圧特性の優れたものとな
る。
ベンジルトルエンもまた、それに加えるアルキルジフ
ェニルメタンも共に低温時の粘度が低く、したがって本
発明の混合物も極めて粘度が低い。それ故、低温時に絶
縁油中に45重量%に近いような多量の固相が存在してい
ても、十分に絶縁油として作動するような、低温特性の
優れた電気絶縁油が得られる。
さらに、低温における固相の割合と部分放電との関係
を見い出したことに基づき、固相の量を調節することに
より、−40℃または−50℃という低温時でも十分に液体
と同様に作動する絶縁油となる。
以下、実施例により本発明を詳述する。
[実施例] (実施例1) 実験に用いたコンデンサーは次の通りである。固体絶
縁体としてはチューブラー法で作られた信越フィルム製
の同時二軸延伸ポリプロピレンフィルムの易含浸タイプ
を用いた。
厚さ14μ(マイクロメーター法)のものを2枚使用
し、これをアルミ箔電極と共に巻回して、静電容量が0.
3から0.4μFの素子を作り、これをブリキ製の缶に入れ
た。缶は絶縁体油が低温で収縮したときに充分に対応で
きるように柔軟な構造にした。また、電極の端部はスリ
ットしたままで折り曲げてないものとした。
電極から端子までを結線する方法として、一般には素
子内部の電極面にリボン状のリード箔を挿入する方法が
用いられているが、この方法では、結晶が析出した場合
に、リード箔と電極面で接触不良を起こし、電極からの
部分放電が生じて測定できない恐れがある。このため本
実験以後では、高周波用に用いられる方法と同じく、電
極の一端をそれぞれフィルムよりはみ出した構造で巻
き、はみ出した部分をまとめてリード線とスポット溶接
する構造にした。
このようにして準備された缶型のコンデンサーを、常
法に従って真空乾燥した後、同じ真空下で絶縁油を含浸
し、封口した。次に含浸を一定にし安定化するために、
最高80℃の温度で2昼夜熱処理を施した。これを室温で
5日間以上放置した後、AC1400V(50V/μに相当)にて3
0℃の恒温槽で16時間課電処理をした後に実験に供し
た。
ここで、含浸させた電気絶縁油は、前記表2に記載し
たベンジルトルエン異性体混合物(B)と同じく記載さ
れているイソプロピルジフェニルメタン異性体混合物
(F)とを所定の割合で混合することにより調製したも
のである。
含浸させたコンデンサーは、昼間は測定温度で、夜は
測定温度より10℃低い温度という温度サイクルで一週間
冷却した後、測定温度で一昼夜放置し測定に共した。
測定時の課電する電源をONにすると、交流の電圧がゼ
ロになった時にスタートする機構(ゼロクロススター
ト)のものを使用した。
課電のスタートは、従来の測定法であるいわゆるラン
プテストで予想された部分放電開始電圧(PDIV)よりも
20V/μ高い電圧から始め、電圧を一定に保ち、部分放電
が開始されれるまでの時間(「PDST」と略す)を測定し
た。放電の検出おび時間の測定にはマイクロプロセッサ
ーを組み込んだデーター処理装置で、0.02秒まで測定で
きるものを用いた。次いで電圧を5V/μさげてPDSTを測
定し、以後同様に順次5V/μずつ下げて、測定時間が1
秒を越えるまで続けた。このようにして得られたPDSTか
ら「部分放電が1秒後に発生するための電圧」を内挿に
よって求め、これを「PDIV1秒値」とした。
各所定の割合の混合比において、5個のモデルコンデ
ンサーを用いて、それぞれのコンデンサーについて5回
測定し、合計25個の測定値を得た。
測定温度−50℃におけるPDIV1秒値の、各混合割合に
おける最大値と最小値を第3図に示す。
また、前記固−液平衡式に従い計算して求めた合計の
固相の組成物全体に対する割合(wt%)は第4図に示し
た。なお同図には系の温度が−40℃における固相の割合
(wt%)もあわせて示した。
第3図と第4図とをあわせてみると次のことが解る。
まず、PDIV1秒値の最大値、最小値と固相の割合の関
係を見ると、固相の割合が45重量%以下では、たとえ固
相が存在しても、PDIV1秒値の最大値と最小値の幅はほ
とんど変らない。すなわち固相が存在しても、全て液相
である場合とほぼ同様な挙動を示す。これは本文中で説
明した(ウ)の状態といえる。しかし、固相の割合が45
重量%を越えると、最大値と最小値の幅は大となり、再
現性が極端に低下する。この状態は前記(イ)である。
さらに、固相の割合が増して100%になると再現性はや
や改善されるもののPDIV1秒値それ自体は極めて低い値
を示す。ここは(ア)の状態といえる。
PDIV1秒値の値それ自体と、成分の混合割合をみる
と、固相の割合が45重量%以下となるような組成割合で
は、ベンジルトルエン含量が減少するにつれてPDIV1秒
値の再現性は変わらないものの、PDIV1秒値それ自体は
低下し、イソプロピルジフェニルエタン類単独ではかな
り低下している。また一方、ベンジルトルエン類単独で
は、3種類の位置異性体の混合物であるにもかかわら
ず、−50℃では極めて低いPDIV1秒値を示している。
以上のことから、高いPDIV1秒値と良好な再現性を達
成するには、ベンジルトルエンとイソプロピルジフェニ
ルメタンを混合すること、またその際固相の割合が45重
量%以下でなければならないことがわかる。
(実験例2) 前記表4の試料No.1〜8の電気絶縁油組成物を用い
て、実験例1と同様にして測定温度−40℃および−50℃
におけるPDIV1秒値の再現性を測定した。結果は次表に
示すが、部分放電状態(ウ)は、前記の通り全て液相の
ときほぼ同じ再現性を示し、同じく部分放電状態(イ)
は極めて再現性が劣る状態を示す。
【図面の簡単な説明】
第1図ベンジルトルエンの固液平衡を示すグラフ、第2
図はジベンジルトルエン混合物の固液平衡を示すグラ
フ、第3図はPDIV1秒値を示すグラフ、および第4図は
固相の存在量を示すグラフである。なお、第3図におい
て、図中の縦線はPDIV1秒値の変動幅を表わす。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】40重量%以上のベンジルトルエンおよび残
    余が炭素数17以下のベンジルトルエンを除く該置換アル
    キルジフェニルメタンの混合物からなり、下記式で表わ
    される固−液平衡式に基づいて計算される、系の温度−
    40℃における該混合物中の固相の割合が合計で45重量%
    以下であることを特徴とする低温特性の改善された電気
    絶縁油組成物。 固−液平衡式: xiは該混合物の液相中の成分iの平衡モル分率、 Δ▲Hf i▼は純物質としての成分iの融解熱(cal・mol
    -1)、 ▲Tf i▼は純物質としての成分iの融点(K)、 Tは系の温度(K)および Rは気体定数(cal・mol-1・K-1)である。
  2. 【請求項2】前記混合物中の計算された固相の割合が、
    系の温度が−50℃において45重量%である特許請求の範
    囲第1項記載の電気絶縁油組成物。
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