JP2507921B2 - 球状炭素−ホウ化物系セラミックス複合体およびその製造方法 - Google Patents

球状炭素−ホウ化物系セラミックス複合体およびその製造方法

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JP2507921B2 JP6071396A JP7139694A JP2507921B2 JP 2507921 B2 JP2507921 B2 JP 2507921B2 JP 6071396 A JP6071396 A JP 6071396A JP 7139694 A JP7139694 A JP 7139694A JP 2507921 B2 JP2507921 B2 JP 2507921B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は粒子径が10〜1500
μmの表面が炭素であり、内部は炭素とホウ化チタン、
ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタル、ホウ化モリブデ
ン、ホウ化ニオブ、ホウ化タングステン、ホウ化ハフニ
ウム、ホウ化バナジウムおよびホウ化ランタンの1種ま
たは2種以上のホウ化物系セラミックスが混在した状態
で存在する球状炭素−ホウ化物系セラミックス複合体と
その製造方法に関するものであり、従来、全く知られて
いなかった新規な炭素とセラミックスが複合化した多角
球状体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素とセラミックスを複合化した炭素−
セラミックス複合材は軽量、耐酸化性、耐摩耗性に優れ
た材料として使用されている。この材料は炭素の持つ軽
量、高温特性、化学的安定性等の優れた点とセラミック
スの耐熱性、耐酸化性の優れた点を合わせ持つ特徴を有
している。そのため、多くの製造方法が提案されてい
る。すなわち、特公昭61−27352号公報記載の発
明ではコークス等の炭素粉末に炭化ホウ素粉末とチタ
ン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、タングステン、
シリコンなどの金属炭化物またはホウ化物粉末を添加
し、加圧下で焼成する方法、また、特公平2−7907
号公報記載の発明では生コークスとセラミックス粉末を
摩砕し、混合した粉末を800℃以上の温度で焼成し、
これを成形してさらに焼成する方法が開示されている。
後者の発明で用いれらるセラミックス粉末として炭化
物、ホウ化物、窒化物および酸化物となっているが、ホ
ウ化物としての具体的な化合物は示されていない。な
お、この発明の先願発明である特公昭58−38386
号公報においてもホウ化物が用いられているが、ここで
も具体的な化合物は示されていない。これらの発明では
いずれもセラミックスとしてホウ化物セラミックスが用
いられているが、製造される炭素−セラミックス複合材
はブロック状の成形体であり、炭素とセラミックスの特
徴を生かし、かつ高い強度を持つ成形体の製造を主眼と
して開発されてきたといえる。
【0003】一方、活性炭、カーボンブラックの多孔質
炭素や微細球状炭素にホウ素化合物を添加し、2200
℃以上の温度で加熱することにより球状黒鉛体を製造す
る方法が特公平4−15167号公報に記載されてい
る。この方法によると、ホウ素化合物としてホウ酸、ホ
ウ酸のアルカリ金属塩または酸化ホウ素が用いられてお
り、しかも得られるものは球状体である。しかし、この
球状体は黒鉛であって、セラミックスとの複合体ではな
い。また、この発明に関連して、カーボンブラックとホ
ウ酸の混合物を2800℃で熱処理することにより炭化
ホウ素の球状体が生成するという報告がある(第20回
炭素材料学会年会要旨集、236ページ、1993
年)。さらに、球状黒鉛としてよく知られているもの
に、黒鉛鋳鉄中の球状黒鉛がある。これは鋳鉄中に溶解
した炭素が球状に析出したものであるが、球状に析出す
るためにはカルシウムやマグネシウム等の存在が必要で
ある。この球状黒鉛は中心にこれらの金属が存在し、そ
の周囲からラセン転移によって成長した柱状黒鉛が集合
した構造である(例えば、日本鋳物協会「鋳鉄研究50
年の歩み」技術講習会テキスト、昭和57年5月)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ブロック状の成形体で
ある従来の炭素−セラミックス複合材は炭素とセラミッ
クスの特徴を合わせ持つ材料であり、工業的に有用な材
料である。しかしながら、高強度の成形体であることは
主として構造材料として使用されるもので、複合化によ
って耐酸化性の向上や耐摩耗性に優れた摺動特性等の機
能の発現が認められているとしても機能性材料とはいい
がたい。さらに、これを使用するためにはそれぞれの用
途に合わせた形状に加工しなければならないという制約
もある。
【0005】本発明者らは従来の炭素−セラミックス複
合材の持つ特性を十分に生かした機能性材料とするため
にはブロック状の成形体以外の形態を持つ複合材を製造
することが重要であるとの認識を持つに至った。機能性
材料として形態を見た場合、微粉末、球状、繊維状およ
び薄膜が考えられる。もし、これらの形態を有する炭素
−セラミックス複合材の製造が可能であるならば、成形
体においても有していた機能を十分発揮できると共に、
新たな機能の発現も期待できる。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような観点から、種
々の形態の内、まず、球状の形態を持つ炭素−セラミッ
クス複合材の製造を取り上げた。すなわち、第1に球状
の炭素−セラミックス複合材を製造すること、第2に製
造される球状複合材の構造が黒鉛鋳鉄中の球状黒鉛のよ
うな球の中心に金属やセラミックスが存在するのではな
く、炭素とセラミックスが混在した状態で存在する構造
のものであることを目的とした。この第2の目的は球の
中心に金属やセラミックスが存在するよりも、これらが
炭素と混在していた方が両者間の相互作用を容易に持つ
ことが予想され、機能性を発揮する点で有利であると考
えられる。
【0007】この目的を達成するため種々の実験を行っ
た結果、カーボンブラック、活性炭、コークスおよび天
然黒鉛粉末とホウ化物系セラミックス粉末を混合し、2
400℃以上の高温で熱処理することにより、炭素とセ
ラミックスが混在した構造であり、かつ、球状の炭素−
セラミックス複合材が製造可能であることを見い出し、
本発明をなすに至った。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
用いられる炭素材はカーボンブラック、活性炭、コーク
スおよび天然黒鉛であり、カーボンブラック、活性炭お
よびコークスはあらかじめ約2800℃の高温で熱処理
したものも用いることが出来る。カーボンブラックは粒
子径が10〜100nmの微細粒子であるが、粒子径に
よらずいずれのカーボンブラックでも用いることが出来
る。また、カーボンブラックは造粒されているものがあ
るが、この場合にはあらかじめ粉砕するか、あるいは、
ホウ化物系セラミックス粉末を添加後、粉砕、混合して
もよい。活性炭は原料として木質系と石炭系があるが、
いずれも用いられる。さらに、コークスはピッチコーク
スと石油コークスであり、天然黒鉛は泥状とリン片状が
あるが、いずれも用いることができる。これらはいずれ
も約10μm以下になるまで微粉末にすることが好まし
い。
【0009】ホウ化物系セラミックスとしては二ホウ化
チタン(TiB2)、ニホウ化ジルコニウム(ZrB2)、ホウ化モ
リブデン(MoB)、五ホウ化二モリブデン(Mo2B5)、二ホウ
化タンタル(TaB2)、ホウ化タングステン(WB)、二ホウ化
ニオブ(NbB2)、二ホウ化バナジウム(VB2)、二ホウ化ハ
フニウム(HfB2)、六ホウ化ランタン(LaB6)である。これ
らのホウ化物系セラミックス粉末の1種または2種以上
混合したものを用いることが出来る。なお、粒子径は
0.5〜10μmのものが望ましい。以下、これらのホ
ウ化物系セラミックスを単にホウ化物と略記する。
【0010】炭素材粉末に対してホウ化物粉末を20〜
60重量%添加し、混合する。ホウ化物粉末の添加量が
20重量%以下であると収率が低下し、60重量%以上
になると、ホウ化物粉末が熱処理に用いる容器に融着
し、球状の形状でなくなるため球状体の収率が低下す
る。さらに、混合の方法は球状体の収率や粒子径に影響
するので重要である。すなわち、V型混合機や容器中で
単純に混合させたときはホウ化物の種類によるが、一般
には得られる球状体の粒子径は大小様々なものになる。
らいかい機のように、摩砕を伴う混合では粒子径が均一
なものになる傾向があり、しかも、摩砕、混合の状態に
よっては球状体が全く生成しない場合がある。例えば、
らいかい機による摩砕、混合時間が1時間では球状体が
生成するのに対し、3時間では全く球状体が生成しない
という現象が認められ、これはメカニカルアロ−イング
と同様の現象が生じているためと考えられる。一方、活
性炭やコークスの場合、ホウ化物と共にらいかい機で摩
砕、混合すると、球状体の生成量は少なく、大部分塊状
物となる。この塊状物の生成はあらかじめ粉砕した炭素
材粉末と単純に混合することによって防ぐことが出来
る。
【0011】炭素材とホウ化物粉末を混合したものを不
活性ガス中、2400〜3000℃の温度範囲で熱処理
する。用いられる不活性ガスは窒素、ヘリウム、アルゴ
ンである。ただし、ホウ化物が二ホウ化チタンの場合、
窒素ガスは熱処理過程で窒素と反応してシアン化チタン
を生成するため用いることはできない。
【0012】熱処理温度は2400〜3000℃であ
る。この温度はホウ化物の種類によって決める必要があ
り、その融点で決めることが出来ない。その詳細は実施
例で述べるが、ホウ化物の融点よりもはるかに低い温度
で球状体が生成する場合がある。例えば、融点が292
0℃のホウ化チタンでは2800℃以上の温度で球状体
が生成するのに対し、融点が3100℃のホウ化タンタ
ルでは2600℃ですでに生成するのである。ところ
が、融点が2180℃のホウ化モリブデンでは融点より
高い2400℃以上の温度で加熱しないと球状体は生成
しない。すなわち、ホウ化物の融点によらず、球状体が
生成する最低温度は約2400℃である。このような現
象を考えると、球状体が生成するためにはホウ化物と炭
素材との相互作用も考慮する必要のあることが分かる。
なお、最高温度は3000℃であるが、これは通常の黒
鉛を発熱体とするタンマン形式の炉や高周波加熱炉で得
られる最高温度がほぼこの温度であること、本発明で用
いたホウ化物ではその種類によらず2800℃以上の熱
処理温度でいずれも球状体が生成することによる。
【0013】以上の操作によって熱処理したものは球状
体と炭素材粉末との混合物となる。この混合物から球状
体を分離することは容易である。例えば、わずかに傾斜
した板上の上部に混合物を置き、板を振動させることに
よって下部に移動した球状体を回収する。このとき球状
体の表面に炭素材粉末が付着しているので、エタノール
等のアルコールやそれと水との混合液で洗浄すると付着
している炭素材粉末は容易に脱離する。他の方法として
はエタノール等のアルコールを比重液とした比重分別法
も用いられる。すなわち、アルコール中に混合物を入
れ、機械的に攪拌するか、あるいは超音波振動を与えて
分散させた後、傾斜法でアルコールを除去するか、下部
から球状体を分離する。
【0014】このようにして得られた球状体は銀色光沢
のある10〜1500μmの球である。この球状体を走
査型電子顕微鏡で観察すると、大部分真球に近い形状で
あるが、中には楕円に近い形状のもの、あるいはヘソ状
の凹を持つものもある。球の表面は平滑ではなく、三角
形、四角形、六角形などの多角形である。この表面を波
長分散型X線分析装置やエネルギー分散型X線分析装置
で分析すると、検出される元素は主として炭素であっ
て、その他、非常に少量の金属とホウ素が検出される。
これらの元素の分布を調べると、金属とホウ素は同一場
所に共存し、しかもこれらは多角形が接して形成する線
上の途切れた欠陥と思われるところに存在する。このよ
うな欠陥と思われるところに金属とホウ素が共存して存
在するのは全ての球状体に存在するのではない。また、
存在していたとしてもほとんど1箇所であり、多くて3
箇所程度で、球全体としては5〜6箇所程度であると考
えられる。このことから、表面は主として炭素であると
いえる。
【0015】この球状体を樹脂に埋め込み、研磨して断
面を観察したところ、空孔は認められず、ち密質であっ
た。また、元素分析を行うと、炭素、金属、ホウ素であ
り、これらの元素の分布を調べると炭素の領域と金属と
ホウ素が共存する領域に分かれた構造である。さらに、
粉砕した球状体をX線回折装置で測定し、その各回折線
を調べると炭素とホウ化物であった。炭素に属する回折
線から格子定数を求めると、その値は黒鉛のそれに近い
値であることから、球の内部は炭素とホウ化物が混在し
た構造であり、炭素は結晶性に優れた黒鉛に近いもので
あった。以上のことから、この球は表面が炭素で覆わ
れ、内部は炭素とホウ化物が混在する複合体であるとい
える。
【0016】球状体を粘着テープに貼付け、転がすとテ
ープ上に連続した薄膜状に剥離する。ある程度剥離させ
たものを走査型電子顕微鏡で観察すると、球の表面は剥
離させない球と同様に多角形であり、剥離した薄膜の切
断したと思われる箇所の厚さは約0.2μmであった。
この剥離した薄膜を採取し、透過型電子顕微鏡で観察し
たところ、電子線が透過する中に、角状板状体の透過し
ないものがあった。透過するところを電子回折を行った
ところ、スポットとなり、この距離から格子間距離を求
めると、黒鉛のab面のそれとほぼ一致する。また、電
子線が透過しない角状物の電子回折は同様にスポットで
あった。これからも、炭素、ホウ化物共に結晶性に優れ
たものであるといえる。
【0017】以上のことは2種以上のホウ化物粉末を用
いた場合についても同様である。異なる点は球状複合体
中の金属とホウ素が共存する領域の元素の種類である。
すなわち、2種のホウ化物を混合して生成した球状複合
体の場合、この領域には2種の金属とホウ素が同一場所
に存在する。多種のホウ化物の場合でも多種の金属とホ
ウ素が同一場所に存在するのである。しかもこれらの金
属とホウ素はホウ化物ではあるが、単一のホウ化物では
なく、複合化したもの、つまり、固溶体を形成している
ように思われる。この固溶体が球状複合体中に炭素と混
在している構造である。
【0018】この球状複合体内部の炭素の含有量はその
断面を波長分散型X線分析装置による面分析で得られる
炭素の分布から、一定面積中に占める割合(容量%)を
計算し、その値とした。その結果、炭素の含有量はホウ
化物の種類によって異なり、その範囲は5〜65容量%
であった。多くのホウ化物からのものは20〜30容量
%の範囲にあり、炭素よりホウ化物を多く含むものであ
った。なお、球状体全体の炭素とホウ化物の量を求める
ことは困難であった。それは炭素は酸素中、約800℃
で酸化消耗するので、その量を測定することで求められ
るが、ホウ化物も約700℃で酸化され、それによる重
量増加が重なるためである。
【0019】以上、述べたように、炭素材粉末とホウ化
物粉末を混合し、2400〜3000℃で熱処理するこ
とにより、表面が炭素で覆われ、内部は炭素とホウ化物
が混在した10〜1500μmの球状炭素−ホウ化物系
セラミックス複合体が生成する。このような構造の球状
複合体は従来見いだされていない新しい材料であると考
えられる。
【0020】この球状複合体が生成する理由は今の所、
よく分からない。特に、炭素の挙動が理解できない。す
なわち、炭素はよく知られているように、化学的に安定
な物質であるが、多くの金属と反応して炭化物となる。
この炭化物が高温で分解すると黒鉛を生成する。一方、
鉄のような一部の金属とは炭素は金属中に溶解し、過飽
和状態から析出するが、この炭素も黒鉛として析出す
る。これは前述の黒鉛鋳鉄中の球状黒鉛が1つの例であ
る。本発明の場合において、ホウ化物が炭素と反応して
炭化物となり、これが分解して黒鉛を析出すると考える
と、球状複合体中に炭化物が存在していてもよいと考え
られるが、炭化物の存在は認めれらていない。一方、ホ
ウ化物は鉄と同様に炭素を溶解し、析出したとも考えら
れる。この溶解−析出機構によるとすると、黒鉛鋳鉄中
の球状黒鉛と同様に球の中心に金属が存在し、その周囲
に柱状黒鉛が集合した構造であると考えられるが、本発
明の球状複合体の構造はこれとは全く異なるものであ
る。この他、いくつかの生成機構が考えられるが、いず
れも十分説明できない。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。なお、以下の実施例において走査型電子顕微鏡を
SEM、透過型電子顕微鏡をTEM、エネルギー分散型
X線分析装置をEDX、波長分散型X線分析装置をWD
Xと略記する。
【0022】実施例1 カーボンブラックとして三菱化成(株)製ファーネスブ
ラックである#2300(粒子径15nm)を用いた。
このカーボンブラック1.5gに二ホウ化ジルコニウム
粉末(日本新金属(株)製、粒子径1.0〜2.0μ
m)1.5g(配合量50重量%)を加え、ビーカー中
で十分混合した。これを黒鉛製ルツボに入れ、黒鉛管を
発熱体とするタンマン炉でアルゴン気流中、2800℃
まで加熱し、60分間熱処理した。冷却後、熱処理物の
2.51gをビーカーに移し、エタノール200mlを
加え、攪拌し、さらに、超音波洗浄器中で約3分間分散
させた。ついで、上澄みを取り除き、沈降物に新しいエ
タノール200ml加え、超音波洗浄器中で約3分間分
散させた。この操作を5回繰り返し、エタノールがほと
んど無色であることを確かめた。大部分のエタノールを
除去したビーカーをホットプレート上で加熱し、残りの
エタノールを蒸発させ、沈降物を採取した。沈降物の量
は1.38gであり、熱処理物を基準にした沈降物の収
率は55.0重量%であった。このようにして得られた
沈降物は銀色光沢を持つ大小の球状体であった。大きい
球を取り出し、マイクロメーターで計測すると、0.8
〜1.2mmであった。小さい球をSEMで観察する
と、大小の球状体であり、その粒子径は約13〜500
μmに分布していた。その1例として、SEMによる2
次電子像写真を図1に示す。
【0023】
【図1】
【0024】これらの球状体はほとんど真球に近い形状
であるが、やや歪んだ楕円体に近い球や球の1部にへそ
状の凹があるものも認められた。さらに、1個の球状体
を拡大して観察すると、盛り上がった線で区分される三
角形、四角形あるいは六角形の平板状の多角体であっ
た。その様子を図2に示す。
【0025】
【図2】
【0026】図2の球状体の表面をSEMに付属してい
るEDX(フィリップ社製、EDAX、PV9900)
で元素分析すると、炭素とジルコニウムが検出された。
そこで、WDX(日本電子(株)製、JXA−733)
で炭素、ジルコニウムおよびホウ素の3元素について面
分析による分布を調べた。ジルコニウムとホウ素は多角
平板が互いに接して形成している線が途切れた欠陥部分
と思われる箇所の同一場所に存在しており、他は炭素で
あった。球状体の他の場所および他の球状体についても
同様にして調べた結果、ジルコニウムとホウ素は上記の
欠陥部分と思われる箇所に存在し、その箇所は1〜2箇
所であった。これから球全体としては多くても5〜6箇
所であろうと推定される。このことから、球状体の表面
は主として炭素で覆われており、わずかにジルコニウム
とホウ素が同一場所に存在するといえる。
【0027】球状体を樹脂に埋め込み、研磨した断面を
WDXとEDXで元素組成と面分析による元素の分布状
態を調べた。EDXによって検出された元素は炭素とジ
ルコニウムであった。WDXによる炭素、ジルコニウム
およびホウ素の分布はジルコニウムとホウ素は同一場所
に存在し、この2つの元素がある領域を占め、その領域
が炭素の領域と混在していた。この様子を図3に示す。
これらの結果から、球状体の内部は炭素とジルコニウ
ム、ホウ素で構成されており、しかも炭素の領域とジル
コニウムとホウ素とで構成される領域が混在する構造で
あるといえる。
【0028】
【図3】
【0029】さらに、図2bに示した球状体内部のWD
Xによる炭素の分布から、炭素の占める領域を白色と
し、その他を黒色として2値化し、画像処理によって白
色の占める割合を計算し、この値を炭素量(容量%)と
した。同様にして他の2個の球状体についても計算し、
この3個の平均値を求めた。その結果、球状体内部の炭
素量は43容量%であり、残りをホウ化ジルコニウムと
した量は57容量%となった。
【0030】一方、球状体全体の炭素量を知るために、
粉砕した球状体を熱天秤によって空気中、1000℃ま
での温度範囲で重量変化を調べたところ、約720℃か
ら重量増加が生じ、ついで、約810℃から減量した。
そこで、天然黒鉛およびホウ化ジルコニウムを同様にし
て重量変化を調べると、約720℃の重量増加はホウ化
ジルコニウムの酸化による酸化ジルコニウムとホウ酸の
生成であり、約810℃の減量は天然黒鉛の酸化消耗で
あることが分った。この両者の温度が近接しているた
め、この方法で炭素量を求めることはできなかった。以
上のことから、球状体内部の炭素量は43容量%であっ
たが、表面は炭素で覆われているので、球状体全体の炭
素量はこの値より多くなる。
【0031】球状体を粉砕し、これをX線回折装置(リ
ガク製、ローターフレックス)を用い、加速電圧50k
v、電流100mA、ターゲットCukα(Niフィル
ター)、2θ=10〜90度、走査速度1度/分の条件
でX線回折図形を測定し、得られた各回折線から同定を
行った。その結果、2θ=26.5、51.7度の炭素
と2θ=25.2、32.6、41.6、58.2度の
ホウ化ジルコニウムに帰属される回折線が得られ、この
回折線は出発原料として用いた二ホウ化ジルコニウムの
それと一致した。また、炭素の(002)回折線から、
c軸方向の面間隔を求めると、その値は0.671nm
であり、(110)回折線から求めた面の広がり(L
a)は100nm以上であり、天然黒鉛に近い値であっ
た。以上の結果から、球状体はその表面は主として炭素
で覆われ、その炭素は結晶が発達した黒鉛に近い構造で
あり、内部は炭素とホウ化ジルコニウムが互いに混在し
た構造の球状複合体であるといえる。
【0032】この球状複合体を粘着テープに貼付け、転
がすと連続的な帯状に剥離する。ある程度剥離させた球
状複合体の形状と表面の状態をSEMで観察すると、球
であり、表面は多角状であった。また、この球の表面に
は剥離した帯状のものが切断したと考えられる薄膜が存
在するが、その薄膜の厚さは約0.2μmであった。
【0033】粘着テープ上の剥離した帯状物をアセトン
中で粘着テープを除去し、帯状物をTEMで観察する
と、電子線が透過する部分とその中に透過しない所があ
り、透過しない所のものは角のある板状体であった。透
過する部分に電子線を当て、電子回折を測定したとこ
ろ、スポットとなり、中心からスポットまでの長さ、つ
まり、格子間距離を計算すると、この距離は0.213
nmと0.123nmであり、前者は黒鉛の(100)
回折線に、後者は(110)回折線に相当し、黒鉛のa
b面とほぼ一致した。同様にして、角のある板状体につ
いても電子回折を測定したところ、スポットであり、計
算した格子間距離は0.352nmと0.272nmで
あり、前者はホウ化ジルコニウムの(001)回折線、
後者は(100)回折線に相当した。
【0034】これらのことから、炭素は結晶性に優れた
ものであり、それが積層して層構造をなし、その層間に
板状のホウ化ジルコニウムが存在する。そして、球状複
合体の中心に対して炭素のab面が垂直方向に配向して
いる構造であると考えられた。
【0035】実施例2 本実施例はホウ化ジルコニウムおよび他のホウ化物粉末
を用いた場合に球状複合体が生成する温度を調べたもの
である。実施例1で用いたカーボンブラック5gに二ホ
ウ化ジルコニウム(ZrB2、融点3000℃)、二ホウ化
チタン(TiB2、融点2920℃)、二ホウ化タンタル
(TaB2、融点3100℃)、ホウ化モリブデン(MoB、
融点2180℃)、五ホウ化二モリブデン(Mo2B5、融
点2100℃)、二ホウ化ニオブ(NbB2、融点3000
℃)、ホウ化タングステン(WB、融点2900℃)、二
ホウ化バナジウム(VB2、融点2400℃)、二ホウ化
ハフニウム(HfB2、融点3250℃)および六ホウ化ラ
ンタン(LaB6、融点2500℃)の1種のホウ化物粉末
5gを加え、ビーカー中で十分混合した。なお、これら
のホウ化物粉末の粒子径はいずれも0.5〜10.0μ
mである。
【0036】この混合物の一部分を黒鉛製ルツボに入
れ、タンマン炉で、アルゴン気流中、2200〜300
0℃まで加熱し、それぞれの温度で60分間保持して熱
処理した。冷却後、ビーカーに移し、エタノールを加え
て攪拌して分散させ、さらに超音波振動で分散させた。
上澄みを除去し、沈澱物に新たなエタノールを加え、分
散、上澄み除去の操作を繰り返し行い、沈澱物を洗浄し
た後、乾燥して沈澱物を得た。この沈澱物をSEMで形
状を観察すると共に、EDXとWDXで表面の元素組成
を分析し、さらに、樹脂に埋め込み、研磨した断面の元
素組成とその分布をWDXで調べた。得られた結果をま
とめて表1に示す。なお、この表中の「HTT」は熱処
理温度(℃)を、形状の「粉末」は角状の粉末状態であ
ることを、「球状体」は多角球状体であることを意味す
る。また、元素組成は球状体断面のWDXで検出された
元素を元素記号で示した。さらに、上記のホウ化物の融
点は文献値(出典:日本化学会編「化学便覧 基礎編
I」丸善(昭和59年発行)、粉末冶金技術協会編「粉
末冶金技術講座3 金属粉の生成」日刊工業新聞社(昭
和39年発行))である。
【0037】
【表1】
【0038】この表から知られるように、球状体が生成
する温度はホウ化物の種類によって異なることが分かっ
た。生成した球状体の表面はいずれのホウ化物の場合で
も図2と同様に、多角状の主として炭素であり、その内
部は実施例1で述べたホウ化ジルコニウムの場合と同様
に、炭素とホウ化物が混在する複合体であった。
【0039】実施例3 本実施例はカーボンブラックに2種以上のホウ化物粉末
を混合、熱処理することにより球状体の生成とその構造
を調べたものである。実施例1で用いたカーボンブラッ
ク5gに対して、ホウ化チタン2.5gとホウ化ジルコ
ニウム2.5gを加え、ビーカー中で十分混合した。こ
れを黒鉛製ルツボに入れ、アルゴン気流中、2800℃
で60分間熱処理した。この熱処理物を実施例1と同様
にしてエタノールで分別した。沈降物中の大きな球状体
を取り出し、マイクロメーターで直径を測定したとこ
ろ、最大で1.3mmであった。小さいものをSEMで
観察したところ、図1および図2と同様の約15μm以
上の大小様々な粒子径の多角球状体であり、EDXで元
素分析した結果、炭素と微量のチタンおよびジルコニウ
ムが検出された。
【0040】また、この球状体を樹脂に埋め込み、研磨
した断面をEDXで元素組成を調べたところ、炭素、チ
タンおよびジルコニウムが検出された。そこで、WDX
で各元素の分布を調べた結果、図4および図5に示した
ように、炭素とチタン、ジルコニウムおよびホウ素は分
離していたが、チタン、ジルコニウムおよびホウ素の3
元素は同一場所に存在した。さらに、球状体を粉砕し、
X線回折装置で測定した回折線から、炭素以外にいくつ
かの回折線が観測されたが、これらの回折線はいずれも
ホウ化チタンとホウ化ジルコニウムとは一致しなかっ
た。これから、ホウ化物は単一の化合物ではなく、他の
化合物、すなわち、ホウ化チタンとホウ化ジルコニウム
から成る固溶体ではないかと考えられた。これらのこと
から、この多角球状体は表面が炭素で覆われ、内部はチ
タン、ジルコニウムおよびホウ素から成る固溶体を形成
し、これが炭素と混在している構造であると考えられ
た。
【0041】
【図4】
【0042】
【図5】
【0043】ホウ化物の他の組合せ、すなわち、ホウ化
チタンとホウ化タンタル、ホウ化モリブデン、ホウ化ジ
ルコニウムとホウ化タンタル、ホウ化モリブデン、ホウ
化タンタルとホウ化モリブデンで上記と同様にして熱処
理し、カ−ボンブラックから分離した沈降物を調べた。
その結果、いずれの組合せの場合も多角球状体であり、
表面は炭素で覆われ、内部は炭素と2種の集合したホウ
化物が混在した構造であった。
【0044】さらに、カーボンブラック5gにホウ化チ
タン1g、ホウ化ジルコニウム1g、ホウ化タンタル1
g、ホウ化モリブデン1g、ホウ化タングステン1gを
加え、ビーカー中で十分混合したものを上記と同様にし
て、2400℃と2800℃で60分間熱処理し、エタ
ノールで分別して沈降物を得た。この沈降物をSEMで
観察したところ、いずれの熱処理温度でも大小の粒子径
の多角球状体であった。2800℃で生成した球状体を
粉末にし、X線回折法で観測した回折線から化合物の同
定を行ったところ、ホウ化タングステンは単一の化合物
であったが、他のホウ化物とは一致する回折線は得られ
なかった。このことから、ホウ化タングステンは独立し
て、他のホウ化物は固溶体として混在すると考えられ
た。
【0045】実施例4 本実施例は実施例2および3において、2800℃の熱
処理で得られた球状複合体内部の炭素量を測定した結果
である。樹脂に埋め込み、研磨した球状体をWDXによ
って観察し、異なる3個の球状体について、150×1
50μmの面積中の炭素の分布を写真に撮影した。この
写真から、炭素の領域を白色に、他は黒色に2値化し、
イメージスキャナによって画像を取り込み、白色の占め
る割合を計算し、この量の平均値を炭素量とした。な
お、この方法で求められる値は方法の原理から見て、正
確な値を示してはいないので、概略値であると共に、容
量%であって重量%ではない。このようにして得られた
炭素量をまとめて表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】この表から、球状複合体内部の炭素量はホ
ウ化物の種類によって異なることが分る。その範囲は5
〜65容量%であり、多くのホウ化物では20〜30容
量%の範囲にあった。
【0048】実施例5 本実施例は炭素材として活性炭粉末を用いた場合の球状
体の生成の有無を調べたものである。活性炭として、石
炭粉末を造粒し、賦活して製造された市販の粒状活性炭
(粒子径約3mm、比表面積767m2/g)をらいか
い機で3時間粉砕した。この粉末の粒子径は1〜10μ
mであった。活性炭粉末7gにホウ化チタン、ホウ化ジ
ルコニウム、ホウ化タンタルまたはホウ化モリブデン3
gを添加し、ビーカー中で十分混合した。これを黒鉛製
ルツボに入れ、アルゴン気流中、タンマン炉で2800
℃まで加熱し、60分間保持して熱処理した。
【0049】この熱処理物をSEMで観察した結果、活
性炭粉末中に球状体が存在しているのが認められた。そ
こで、熱処理物をビーカーに採取し、エタノールを加
え、攪拌し、超音波振動で分散させた後、上澄みを除去
する実施例1と同様の方法で沈降物を得た。この沈降物
をSEMで観察したところ、図2と同様の多角球状体で
あった。それと共に、活性炭粉末と思われる角状の粒子
が少量混在していた。そこで、約10度に傾斜させた幅
200mm、長さ300mmのガラス板の上部に分離し
た沈降物を置き、手で振動を与えながら、下部に落ちる
ものを採取し、再びSEMで観察した。その結果、いず
れのホウ化物粉末の場合でも多角球状体であった。
【0050】比較例1 実施例3で用いた粒状活性炭7gにホウ化チタン、ホウ
化ジルコニウム、ホウ化タンタルまたはホウ化モリブデ
ン3gを加え、らいかい機で3時間摩砕、混合した。こ
れを黒鉛製ルツボに入れ、タンマン炉でアルゴン気流
中、2800℃まで加熱し、60分間保持して熱処理し
た。
【0051】この熱処理物をSEMで観察したところ、
ホウ化物の種類によらず、いずれの場合も活性炭と思わ
れる角状の粉末中に多くの多角体が生成していたが、球
状体は非常に少なく、大部分丸い角を持つ塊状物であっ
た。この塊状物は角が丸みである以外、一定ではなく、
大小の様々な形状のものであったが、その表面は図2に
示した球状体と同様に多角体であった。
【0052】熱処理物を実施例5と同様にしてエタノー
ルで分離した沈降物をさらに傾斜させたガラス板上で分
離を試みたが、転がり落ちるものは非常に少なく、大部
分上部に留まっていた。この中の銀色光沢を持つものを
ピンセットで取り出し、ノギスで計測したところ、大き
いもので約2mmであった。これをSEMで観察する
と、表面は多角であり、EDXによる分析から、炭素と
ホウ化物の種類に相当する金属がわずかに存在すること
が分かった。したがって、この塊状物は球状複合体と同
様に炭素とホウ化物との複合体であると考えられた。
【0053】実施例6 本実施例は粒子径の異なるカーボンブラックを用いた場
合の球状体の生成の有無を調べたものである。カーボン
ブラックとして、粒子径が45nmのFF、84nmの
10B(いずれも三菱化成(株)製、ファーネスブラッ
ク)を用いた。この5gにホウ化チタン5g加え、ビー
カー中で十分混合した後、黒鉛製ルツボに入れ、タンマ
ン炉でアルゴン気流中、2800℃で60分間熱処理し
た。この熱処理物をエタノールで分離し、沈降物を得
た。この沈降物はいずれのカーボンブラックの場合でも
銀色光沢を持つ球状体であった。SEMで観察したとこ
ろ、粒子径は約15〜300μmであり、表面は多角体
であり、EDXによる分析では炭素と微量のチタンが検
出された。
【0054】実施例7 本実施例は2800℃で熱処理したカーボンブラックを
用いたときの球状体の生成の有無を調べたものである。
実施例1と同様のカーボンブラック#2300を円筒型
黒鉛製容器に入れ、アルゴン気流中、2800℃で60
分間熱処理した。このカーボンブラック5gにホウ化チ
タン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタルおよびホウ
化モリブデンをそれぞれ5g加え、ビーカー中で十分混
合した。これを黒鉛製ルツボに入れ、アルゴン気流中、
2800℃で60分間熱処理した。ついで、エタノール
を用いて分別し、沈降物を得た。この沈降物をSEMで
観察した結果、いずれのホウ化物の場合でも多角球状体
であった。その大きさはホウ化チタンでは約50〜10
0μmとほぼ同じ大きさであったが、ホウ化ジルコニウ
ム、ホウ化タンタルおよびホウ化モリブデンでは約12
〜300μmであり、大きいものは1.2mmのものも
存在した。
【0055】実施例8 本実施例は炭素材としてコークスおよび天然黒鉛を用い
た場合の球状体の生成状況を調べたものである。コーク
スとしてピッチコークス、石油コークスおよびこれらを
2800℃で黒鉛化処理したものを用い、これらのコー
クスをらいかい機で平均粒子径が3μmになるまで粉砕
した。また、天然黒鉛としてリン片状黒鉛を平均粒子径
が6μmに粉砕した日本黒鉛工業(株)製ACP−10
00を用いた。これらの炭素材粉末5gにホウ化チタン
またはホウ化ジルコニウムをそれぞれ5g加え、ビーカ
ー中で十分混合した。これを黒鉛製ルツボに入れ、アル
ゴン気流中、2800℃で60分間熱処理した。つい
で、エタノールで分別し、沈澱物を得た。得られた沈澱
物はいずれも銀色光沢を呈し、SEMで観察したとこ
ろ、ホウ化チタンの場合は15〜30μm、ホウ化ジル
コニウムの場合は21〜500μmの多角球状体であっ
た。表面をEDXで分析したところ、主として炭素であ
り、わずかにチタンまたはジルコニウムが検出された。
【0056】実施例9 本実施例はカーボンブラックとホウ化物粉末を混合する
ときの混合方法による球状体生成の影響を調べたもので
ある。実施例1と同じカーボンブラック5gにホウ化ジ
ルコニウム粉末5gを加え、らいかい機で1時間と3時
間摩砕、混合した。これを黒鉛製ルツボに入れ、アルゴ
ン気流中、2800℃で60分間熱処理した。ついで、
エタノールを用いて分別し、沈降物を得た。この沈降物
をSEMで観察したところ、1時間摩砕、混合した場合
では約15〜200μmの多角球状体であったが、3時
間摩砕、混合した場合は大部分は数μmの角が丸みを帯
びた粒子の集合体であり、わずかに多角球状体があっ
た。この丸みを帯びた粒子集合体をWDXで分析したと
ころ、ジルコニウムとホウ素であった。
【0057】
【発明の効果】従来の炭素−セラミックス複合材がブロ
ック状であるために、炭素とセラミックスの特性を兼ね
備えているにもかかわらず、その特性を十分に発揮する
ことが出来なかった。本発明は従来のブロック状である
という形態を球状にすることによりその利用範囲を拡大
することが出来る。さらに、球状複合体は結晶性に優れ
た黒鉛類似の炭素とホウ化物が混在し、しかも炭素の層
面が球の中心に対して垂直に配列をしている特異的な構
造であり、この構造によって従来の炭素−セラミックス
複合材では見い出されていない機能の発現も期待でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた球状体の形状を示
す顕微鏡写真(倍率47倍)。
【図2】 実施例1で得られた1個の球状体の
状を示す顕微鏡写真(倍率400倍)。
【図3】 実施例1で得られた球状体断面である
セラミック材料の組織を示す顕微鏡写真。aは2次電子
像、bは炭素、cはジルコニウム、dはホウ素のX線像
である(倍率600倍)。
【図4】 実施例3で得られた球状体断面の顕微
鏡写真(倍率600倍)。
【図5】 図4の球状体断面であるセラミック材
料の組織を示す顕微鏡写真。aは炭素、bはチタン、c
はジルコニウム、dはホウ素のX線像である(倍率60
0倍)。
【表1】
【表2】

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粒子径が10〜1500μmの表面が炭
    素であり、内部は5〜65容量%の炭素と35〜95容
    量%のホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タン
    タル、ホウ化モリブデン、ホウ化ニオブ、ホウ化タング
    ステン、ホウ化ハフニウム、ホウ化バナジウムおよびホ
    ウ化ランタンの1種または2種以上のホウ化物系セラミ
    ックスが混在した構造である球状炭素−ホウ化物系セラ
    ミックス複合体。
  2. 【請求項2】 カーボンブラック、活性炭、コークスお
    よびそれらの熱処理物または天然黒鉛とホウ化チタン、
    ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタル、ホウ化モリブデ
    ン、ホウ化ニオブ、ホウ化タングステン、ホウ化ハフニ
    ウム、ホウ化バナジウムおよびホウ化ランタンの1種ま
    たは2種以上のホウ化物系セラミックス粉末を20〜6
    0重量%混合し、不活性ガス中、2400〜3000℃
    で熱処理することを特徴とする球状炭素−ホウ化物系セ
    ラミックス複合体の製造方法。
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