JP2506579Y2 - 渦流探傷装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は渦流探傷装置に係り、特に、被検査材を磁化
しつつその表面疵を探傷する渦流探傷装置の改良に関す
るものである。

従来の技術 （ａ）一中心線まわりに回転駆動される渦流探傷プロー
ブと、（ｂ）その渦流探傷プローブの近傍に設けられ、
前記一中心線まわりに巻回された直流磁化コイルとを備
え、前記一中心線上を相対移動させられる断面円形の被
検査材を磁化しつつその表面疵を検出する渦流探傷装置
が、例えば実開昭54-52289号公報等に記載されている。
このような渦流探傷装置によれば、直流磁化コイルによ
って被検査材が磁化されることにより、例えば矯正ロー
ラや送りローラによる局部的な押圧などに起因して生じ
る磁気むらが軽減されるため、渦流探傷時のノイズが低
減されてS/N比が向上し、高い精度で疵検出が行われる
ようになる。

考案が解決しようとする課題 しかしながら、かかる従来の渦流探傷装置において
は、渦流探傷プローブによる探傷位置における被検査材
の磁化の程度が直流磁化コイルからの距離に影響され、
その磁化力を高めることが難しいとともに、充分な磁化
力を得る上で直流磁化コイルと渦流探傷プローブとをで
きるだけ近接して配設する必要があった。また、直流磁
化コイルによる影響が遠くまで及び、探傷後に被検査材
の残留磁化を取り除く消磁コイルによる消磁作用が充分
に得られなかったり、その消磁作用を充分に得る上で消
磁コイルを直流磁化コイルや渦流探傷プローブから離間
させて配置すると、渦流探傷装置全体としての寸法が大
きくなるなどの不都合があった。

本考案は以上の事情を背景として為されたもので、そ
の目的とするところは、探傷位置における磁化力を容易
に高められるとともに消磁作用が充分に得られるコンパ
クトな渦流探傷装置を提供することにある。

課題を解決するための手段 かかる目的を達成するために、本考案は、前記（ａ）
渦流探傷プローブと（ｂ）直流磁化コイルとを備え、前
記一中心線上を相対移動させられる断面円形の被検査材
を磁化しつつその表面疵を検出する渦流探傷装置におい
て、（ｃ）一中心線方向において前記渦流探傷プローブ
および前記直流磁化コイルを挟んで両側に前記被検査材
に近接して配設された透磁率の高い一対の磁気回路形成
部材と、（ｄ）その一対の磁気回路形成部材を磁気的に
連結するように前記一中心線から離間して配設され、前
記渦流探傷プローブおよび前記直流磁化コイルの内側に
位置する部分の前記被検査材とそれ等一対の磁気回路形
成部材とを含んで、その直流磁化コイルによる閉ループ
の磁気回路を形成する透磁率の高い連結部材とを有する
ことを特徴とする。

作用および考案の効果 このようにすれば、被検査材のうち渦流探傷プローブ
および直流磁化コイルの内側に位置する部分と、一対の
磁気回路形成部材と、連結部材とによって、直流磁化コ
イルによる閉ループの磁気回路が形成されるため、渦流
探傷プローブの探傷位置における被検査材の磁化の程度
が直流磁化コイルからの離間距離に影響されることがな
くなり、直流磁化コイルの巻数や磁化電流の大きさによ
って探傷位置の磁化力を容易に高めることができるとと
もに、磁化効率が向上して直流磁化コイルの巻数や磁化
電流を小さくできる。また、このように渦流探傷プロー
ブと直流磁化コイルとの距離に関係なく磁化力を高めら
れるところから、直流磁化コイルと渦流探傷プローブと
を必ずしも近接して配置する必要がなく、それ等の配置
の自由度が高くなる。

一方、上記のように閉ループの磁気回路が形成される
と、それ以外の部分に対する直流磁化コイルの影響が低
減され、探傷後の被検査材の残留磁化を消磁コイルによ
って良好に消磁できるとともに、その消磁コイルを直流
磁化コイルや渦流探傷プローブに比較的近接して配設し
得るようになり、直流磁化コイルの巻数が少なくて済む
ことと相俟って渦流探傷装置がコンパクトに構成され得
るのである。

実施例 以下、本考案の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
する。

第１図において、基台10上には複数のガイドロッド12
を介してベース部材14が上下方向の移動可能に配設され
ており、ガイドロッド12と同心に設けられた圧縮コイル
スプリング16によって支持されている。ベース部材14は
透磁率の高い鉄鋼材料にて構成されているとともに、そ
の上部には、ガイド装置18,直流磁化コイル20,回転式渦
流探傷機22,ガイド装置24,および消磁コイル26が、図の
左側から右側に向かって順次配設されている。

ガイド装置18,24は被検査材としての断面円形の線材2
8を図の左側から右側へ送るためのもので、それぞれ上
記ベース部材14に固設されたケース30と、そのケース30
に支持された一対のガイドローラ32,34と、ケース30に
固設されたガイドブロック36とから構成されている。ケ
ース30は透磁率の高い鉄鋼材料にて構成されているとと
もに、その左右両側壁には上記線材28より僅かに大径の
円穴が設けられ、線材28がその円穴内を挿通させられる
ようになっている。一対のガイドローラ32,34は上下方
向から線材28を挟んで右方向へ送り出すもので、一方の
ガイドローラ32は図示しないモータによって回転駆動さ
れるようになっており、他方のガイドローラ34は図示し
ない付勢手段によってガイドローラ32側へ付勢されてい
る。また、ガイドブロック36は円環形状を成してケース
30の左側側壁の外側に設けられ、左側開口部に形成され
たテーパ内周面によって前記線材28をガイド装置18,24
の内部へ案内するようになっている。これ等のガイド装
置18,24は同一直線上を線材28が送られるように配置さ
れている。

前記直流磁化コイル20は、円環状のテフロン製ケース
38の外周側に形成されたコの字形状の凹所内にコイル40
を巻回したもので、前記べース部材14上に立設されたス
テンレス製（SUS304）のフレーム42にスリーブ44を介し
て固定されている。ケース38は、前記ガイド装置18,24
によって案内される前記線材28と同心に設けられている
とともに、その内径は線材28よりも僅かに大径で、線材
28はケース38の内部をスリーブ44によって案内されつつ
送られる。かかる直流磁化コイル20には図示しない電源
から直流の磁化電流が供給されるようになっており、こ
れにより、線材28の軸心方向に磁界が発生させられて、
その線材28が磁化される。

前記回転式渦流探傷機22は、ベース部材14上に固設さ
れた透磁率の高い鉄鋼材料製の支持フレーム46に配設さ
れている。支持フレーム46の上部には、前記直流磁化コ
イル20と同心に円筒穴48が設けられ、その円筒穴48内に
は一対のベアリング50を介して円筒形状を成す回転筒52
が回転可能に配設されているとともに、その回転筒52の
内部には更に、透磁率の高い鉄鋼材料製のガイドスリー
ブ54が配設されている。このガイドスリーブ54は、上記
回転筒52に対して相対回転可能に配設され、前記支持フ
レーム46に一体的に固設されている一方、前記線材28と
略同じ径寸法のガイド部が左端部に設けられ、線材28は
そのガイド部に案内されつつ回転筒52の回転中心線上を
送られる。

上記回転筒52の右端部にはＶプーリが設けられ、前記
支持フレーム46上に配設された駆動モータ56によって回
転駆動されるようになっている一方、左端部には外向き
フランジが設けられて渦流探傷プローブ58が取り付けら
れている。渦流探傷プローブ58は回転筒52の回転中心線
に向かって配設され、前記線材28の外周面に僅かな隙間
を隔てて対向させられるようになっている。また、かか
る渦流探傷プローブ58は、電磁誘導作用によって線材28
の表面に渦電流を生じさせる励磁用コイルと、その渦電
流の表面疵による変化を検出する検出用コイルとを備え
ており、それ等のコイルは前記円筒穴48と回転筒52との
間に設けられた回転トランスを介して図示しない測定回
路に接続されている。そして、上記検出用コイルからの
信号に基づいて、線材28の表面に存在する表面疵の有無
や深さが測定される。上記回転筒52の回転中心線は一中
心線に相当する。

前記消磁コイル26は前記直流磁化コイル20と同様に構
成されており、円環状のテフロン製ケース60の外周側に
形成されたコの字形状の凹所内にコイル62を巻回したも
ので、前記ベース部材14上に立設されたフレーム64にス
リーブ66を介して固定されている。ケース60は、前記ガ
イド装置18,24によって案内される前記線材28と同心に
設けられているとともに、その内径は線材28よりも僅か
に大径で、線材28はケース60の内部をスリーブ66によっ
て案内されつつ送られる。かかる消磁コイル26には図示
しない電源から交流電流が供給されるようになってお
り、これにより、前記直流磁化コイル20によって磁化さ
れた線材28の残留磁化が消磁される。

ここで、以上のように構成された渦流探傷装置におい
ては、前記直流磁化コイル20を支持しているフレーム42
がSUS304にて構成され、その透磁率が低い一方、線材28
の送り方向において直流磁化コイル20および渦流探傷プ
ローブ58の両側に位置するガイド装置18のケース30およ
び回転式渦流探傷機22のガイドスリーブ54が透磁率の高
い鉄鋼材料製であるとともに、それ等ケース30およびガ
イドスリーブ54は透磁率の高い鉄鋼材料製のベース部材
14,支持フレーム46によって磁気的に連結されているた
め、直流磁化コイル20に磁化電流が供給されることによ
り、図において一点鎖線で示されているように、線材28
のうち直流磁化コイル20および渦流探傷プローブ58の内
側に位置する部分，ガイドスリーブ54,支持フレーム46,
ベース部材14,およびケース30を通る閉ループの磁気回
路が形成される。このため、渦流探傷プローブ58の探傷
位置における線材28の磁化の程度が直流磁化コイル20か
らの離間距離に影響されることがなくなり、直流磁化コ
イル20の巻数や磁化電流の大きさによって磁化力を容易
に高めることができるとともに、磁化効率が向上して直
流磁化コイル20の巻数や磁化電流を小さくできる。な
お、第１図における磁気回路の矢印は磁力線の向きを表
したものであるが、この磁力線の向きは逆向きであって
も差支えない。

また、このように渦流探傷プローブ58と直流磁化コイ
ル20との距離に関係なく磁化力を高められるところか
ら、直流磁化コイル20と渦流探傷プローブ58とを必ずし
も近接して配置する必要がなく、それ等の配置の自由度
が高くなるのである。

一方、上記のように閉ループの磁気回路が形成される
と、それ以外の部分に対する直流磁化コイル20の影響が
少なくなるため、探傷後の線材28の残留磁化を消磁コイ
ル26によって良好に消磁できるとともに、その消磁コイ
ル26を直流磁化コイル20や渦流探傷プローブ58に比較的
近接して配設し得るようになり、上記直流磁化コイル20
の巻数を少なくできることと相俟って渦流探傷装置がコ
ンパクトに構成され得るのである。因に、上記のような
磁気回路が形成されない従来の渦流探傷装置によりφ1
7.8×650mmの線材を渦流探傷した場合、消磁後において
もその両端部に12〜13ガウス程度の磁力が残存していた
のに対し、本実施例のように閉ループの磁気回路が積極
的に形成されるようにした渦流探傷装置においては、残
留磁気が５〜６ガウス程度まで低減されたのである。

この実施例では上記ケース30,ガイドスリーブ54が一
対の磁気回路形成部材に相当し、ベース部材14および支
持フレーム46が連結部材に相当する。

以上、本考案の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
したが、本考案は他の態様で実施することもできる。

例えば、前記実施例では直流磁化コイル20が線材28の
送り方向において渦流探傷プローブ58よりも上流側に配
置されているが、回転式渦流探傷機22の向きを反対にし
てその回転式渦流探傷機22とガイド装置24との間に直流
磁化コイル20を配置するようにしても差支えない。

また、前記実施例ではガイド装置18のケース30および
回転式渦流探傷機22のガイドスリーブ54が磁気回路形成
部材として用いられているが、例えば直流磁化コイル20
をフレーム42の右側に固定するとともにそのフレーム42
を透磁率の高い鉄鋼材料等にて構成することにより、そ
のフレーム42を磁気回路形成部材として利用するなど、
他の部材を磁気回路形成部材として用いることも可能で
ある。このことは連結部材についても同様である。

また、前記実施例では回転筒52に渦流探傷プローブ58
が１個設けられているだけであるが、等角度間隔で２個
或いは３個以上設けても良いことは勿論である。

その他一々例示はしないが、本考案は当業者の知識に
基づいて種々の変更，改良を加えた態様で実施すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例である渦流探傷装置の構成を
説明する縦断面図である。 14:ベース部材（連結部材） 46:支持フレーム（連結部材） 20:直流磁化コイル、28:線材（被検査材） 30:ケース（磁気回路形成部材） 54:ガイドスリーブ（磁気回路形成部材） 58:渦流探傷プローブ

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】一中心線まわりに回転駆動される渦流探傷
   プローブと、該渦流探傷プローブの近傍に設けられ、前
   記一中心線まわりに巻回された直流磁化コイルとを備
   え、前記一中心線上を相対移動させられる断面円形の被
   検査材を磁化しつつその表面疵を検出する渦流探傷装置
   において、 前記一中心線方向において前記渦流探傷プローブおよび
   前記直流磁化コイルを挟んで両側に前記被検査材に近接
   して配設された透磁率の高い一対の磁気回路形成部材
   と、 該一対の磁気回路形成部材を磁気的に連結するように前
   記一中心線から離間して配設され、前記渦流探傷プロー
   ブおよび前記直流磁化コイルの内側に位置する部分の前
   記被検査材と該一対の磁気回路形成部材とを含んで、該
   直流磁化コイルによる閉ループの磁気回路を形成する透
   磁率の高い連結部材と を有することを特徴とする渦流探傷装置。