JP2506162B2 - 耐食性溶射材料およびその製造方法と、耐食性皮膜の形成方法 - Google Patents

耐食性溶射材料およびその製造方法と、耐食性皮膜の形成方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、耐食性溶射材料およびその製造方法と、そ
の溶射材料を使って所要の材料表面(被処理面)に耐食
性の皮膜を形成する方法に関し、特に塩化物イオンを含
む耐食性の強い環境下においても優れた耐食性を示す材
料とその応用技術についての提案である。
〔従来の技術〕
TiやTi合金(以下「Ti材」という)は、機械的性質お
よび耐食性に優れ、密度が小さいので比較的軽量となる
ことから、ジェットエンジン,水蒸気タービン,空気圧
縮機などのブレードをはじめ、海水,各種の酸,アルカ
リなどを取扱う塔槽類,機械構造部材などとして、広く
利用されている。
ところが、このTi材は、電気めっきや溶融めっきで得
られる一般の金属めっき膜のような薄膜化が困難なた
め、もっぱら材料そのものの形態で提供されている。し
たがって、材料の耐食性を向上させなければならないよ
うな場合に、本来なら外界と接触する界面のみを耐食性
の材料で被覆すれば足りるのに、このTi材に限ってはそ
のような被覆処理が困難であるから、クラッド材などの
形態をとらざるを得なかった。要するに、どうしても多
量のTi材を使用せざるを得ない状況にあり、経済的負担
が大きいという欠点があった。
このような欠点を克服するため、従来、蒸着法によっ
て、Ti材の薄膜を被処理面上に形成する試みが行われ
た。しかし、この蒸着法は、薄膜中に多くの気孔を含む
薄膜となるため、耐食皮膜として十分なものとはいえな
かった。しかも、この蒸着法による耐食皮膜の形成は、
真空容器中での処理となるため、被処理材のサイズに限
界があり、実用化を阻んでいた。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記したように、Ti材は素材そのものがもともと薄膜
化になじまないことに加え、皮膜形成の手段が蒸着法に
たよる限り耐食性が十分なものにならないことから、Ti
材そのものの材質上の改良と、耐食膜形成法の改善とが
必要である。
そこで本発明者らは、他の薄膜形成技術に着目し、ま
ず溶射法に着目しその実用化を検討した。たしかに、こ
の溶射法は、被処理体の寸法的な制約がないこと、およ
び蒸着法に比較すると極めて厚膜の処理が可能であるか
ら耐食性皮膜としては一応有効であると思われた。しか
しながら、Ti材をそのままの状態で溶射しただけでは、
溶射中にTi材の粒子が大気中の酸素と結合して酸化物に
変化するため、得られる皮膜が、酸化物と金属の混合体
となるうえ、多数の気孔を内在することになる。
以上要するに、被処理面に、通常の溶射技術によって
Ti材の皮膜を形成しただけでは、酸化物と金属との混合
体による多孔質皮膜になる。したがって、このような皮
膜では、これを耐食性環境下で使用すると、前記気孔部
から侵入する腐食成分によって、母材(被処理体)が簡
単に腐食されてしまう。また、溶射皮膜それ自体も耐食
性が十分でない。こうした理由で従来、Ti材溶射皮膜に
よる防食処理は殆んど行われていないのが実情である。
そこで、本発明の目的は、溶射法に適用するときのTi
材自身の耐食性能を改善する一方で、このTi材を使って
塩化物イオンを含むような強い腐食環境下でも、実用材
として十分な耐食性を示す皮膜を、被処理面上に形成す
るための技術を開発,提案するところにある。
このような目的に対し、本発明は、溶射材料として使
うTi材自身に防食機能をもたせることによって、多少の
気孔を含む皮膜となっても、優れた耐食性を発揮する溶
射皮膜得るのに好都合な技術を提供するものである。す
なわち、TiおよびTi合金粉末を、あらかじめパラジウム
(Pa)めっき処理し、これを溶射材料として溶射皮膜を
形成させる方法である。特に、溶射環境を実質的に酸素
を含まない減圧アルゴンガス雰囲気下でプラズマ溶射す
ることによって、緻密で酸化物のないPdを含む高度な耐
食性を有する皮膜を得る方法をより好ましい方法として
提案する。
このような考え方の下で、本発明は、上記目的による
適合する耐食性溶射材料として、粒子の表面がPdで被覆
されたTiもしくはTi合金粉末よりなるものを、 そしてその製造方法として、TiもしくはTi合金粉末の
粒子を、Pdを溶解しためっき液中に浸漬して化学めっき
することにより、その表面にPdめっき膜を被成する方法
を提案する。
さらに、前記溶射材料を利用した溶射皮膜を形成する
方法として、 第1に、被処理面に、粒子表面にPdめっき膜を有する
TiもしくはTi合金粉末よりなる耐食性溶射材料を、プラ
ズマ溶射することにより被着させる方法、 第2に、被処理面上に、粒子表面にPdめっき膜を有す
るTiもしくはTi合金粉末よりなる耐食性溶射材料を、実
質的に酸素を含まない減圧アルゴンガス雰囲気下におい
てプラズマ溶射することにより被着させる方法、 そして必要に応じて、プラズマ溶射することによって
得られる耐食性皮膜を、実質的に酸素を含まない減圧ア
ルゴンガス雰囲気下において加熱することにより、溶射
皮膜中のPdを合金化することを特徴とする耐食性被膜の
形成方法、 を提案する。
〔作 用〕
一般に、TiやTi合金の耐食性は、その表面に形成され
る緻密な耐食性の酸化膜(TiO2)に依存するものであ
り、ステンレス鋼の耐食機構と本質的に同じである。し
たがって、Ti材を使用する環境下では、多少の酸素が存
在する方がむしろ好ましいといえる。この点、例えば、
酸素のない還元状態でしかも塩化物イオン(Cl-)が存
在するような水溶液中におかれたTi材は、酸化膜(Ti
O2)がCl-によって腐食され、ひいては酸化膜直下の母
材も孔食状に腐食される。例えば、塩酸や海水を取扱う
パイプラインのフランジ部の隙間腐食などがそれであ
る。すなわち、パッキングを装着したフランジ部は、系
外から酸素の供給が殆んどないうえ、塩酸(HCl)や海
水(NaCl,MgCl2)の主成分であるCl-がこのパッキング
部に侵入し、激しい孔食(隙間腐食)を発生する。
この隙間腐食の対策としては、孔食の発生が予想され
る位置に、スペース状のパラジウム酸化物(PdO)を塗
布する方法がある。しかしこの方法は、塗布した酸化物
(PdO)によりTiの酸化が促進され、安定なTiO2皮膜を
生成する点で好ましい方法であるが、パッキングを取り
替えるたびに、PdOペーストを塗布する必要があり、プ
ラントの保守点検上の問題となっている。
このペースト状のPd酸化物塗布の代わりに、本発明
は、溶射用材料であるTiおよびTi合金の各粒子表面に、
あらかじめ化学めっき法によってPdを被覆しておき、こ
れを溶射材料として、被処理面に対してプラズマ溶射す
ることにより、Pdを含む溶射皮膜を直接形成させる技術
である。
したがって、本発明では、TiおよびTi合金の各粒子表
面にPdが被覆してあるので、溶射皮膜中の個々の粒子毎
にPdを付帯していることになるから、前記ペースト法の
ように、Pdの効果が表面に限定されることがない。すな
わち、本発明ではPdの効果が溶射皮膜の全体に及ぶ特徴
がある。
また、本発明における溶射用材料(Ti材)へのPd被覆
は、金属Pdの他、PdOのような酸化物であっても防食効
果に変わりがない。したがって、溶射中にPd被膜が酸化
物へと変化しても、その効果は変わらないので、溶射環
境が大気中でも効果がある。しかしながら、実質的に酸
素を含まない減圧のアルゴンガス環境下で溶射すれば、
皮膜が緻密になるうえ、Pdが金属として皮膜を構成する
ので、一段と高度な耐食皮膜を形成することになる。
このような粒子表面がPdで被覆されたTiおよびTi合金
粒子よりなる耐食性溶射材料は、Ti材の表面に、Pdを化
学めっき(無電解めっき)することにより製造する。こ
のめっき処理に当って、めっき液としては、塩化パラジ
ウムなどが用いられ、添加剤としてはヒドラジンや次亜
りん酸ナトリウム等を用いる。めっきは、例えばpH1〜1
3、温度20〜80℃の条件の下で行い、薄付け、本付けし
ながら所定の厚みの析出Pd層をTi材粒子表面に形成さ
せ、その後水洗,乾燥することにより被覆を完成させ
る。
次に、本発明における皮膜形成に当たっては、大気中
でプラズマ溶射する場合のみならず、減圧アルゴンガス
雰囲気中でのプラズマ溶射も行う。
第1図は、本発明のPd被覆Ti粉末を用いて減圧プラズ
マ溶射する装置を示したものである。この図において、
図示の符号1は溶射雰囲気を画成するためのチャンバー
である。このチャンバー1には、排気用バルブ2、吸気
用バルブ3が配設してあり、またチャンバー1内のガス
を吸引する真空ポンプ4が、雰囲気ガス中の粉塵類を除
去するためのマルチサイクロン5およびフィルター6を
介して接続してある。さらにこのチャンバー1には、内
圧保持用のアルゴンガス供給管7、被処理材冷却用のア
ルゴンガス冷却管8、および溶射ロボットモータ冷却の
ために用いるアルゴンガス冷却管9が取付けられてい
る。
上記チャンバー1内には、プラットフォーム10が設置
してあり、そのプラットフォーム10上には、溶射ロボッ
ト11と回転台12が設置してあり、その回転台12上には被
処理材13が設置される。そして、該被処理材13に対して
は、温度計測用の熱電対14が、また溶射ロボット11の先
端部には溶射ガン15がそれぞれ取付けてあり、いずれも
チャンバー1の外から制御できるように構成してある。
前記溶射ガン15には、雰囲気調整も考慮しプラズマ発生
ガスとしてアルゴン,水素,窒素などのガス類を用い
る。そして、この溶射ガン15と被処理材13とは、チャン
バー外にて接続され、両者は必要に応じて極性が変えら
れるようになっている。
次に、上記装置を用いて、本発明のPd被覆Ti粉末を被
処理面に向けて溶射する方法について具体的に説明す
る。
(1) チャンバー1に取付けられている吸・排気用バ
ルブ2,3およびアルゴンガス供給管7を閉とした後、真
空ポンプ4を作動させてチャンバー1内の空気を系外に
排出し、内圧を1×10-2〜10-3mbr(ミリバール)とす
る。
(2) 次に、アルゴンガス供給管7を開とし、チャン
バー1内に内圧:60mbr程度の希薄なアルゴンガス雰囲気
を構成する。
(3) その後、再び真空ポンプ4を作動させてチャン
バー1内のアルゴンガス圧力を20mbrとした後、溶射ガ
ン15を作動させてプラズマアークを発生させると共にそ
のアークの先端を被処理材の表面近傍へもって行き、該
被処理材を加熱する。
(4) この被処理材の加熱は、外部電源16の接続を、
極性切換スイッチ17を用いて、溶射ガン15の方を陰極と
し被処理材13の方を陽極として、プラズマアークを被処
理材13の表面を数回掃走させることにより行う。この処
理によって被処理材13の表面は清浄化されるとともに加
熱、昇温され、被処理材13の予熱が果たされる。
(5) なお、前記工程(3)と(4)の処理時、冷却
用のアルゴンガス供給管7は開とし、熱電対によって指
示される温度を監視しながら被処理材13が過熱されない
ように制御する。もっとも、たとえ過熱されても雰囲気
中には酸素が含まれていないため該被処理材13が酸化さ
れるおそれはないが、過熱による基質の冶金的変化を少
なくする意味で上記温度制御は必要である。
(6) 被処理材13の表面を清浄にするとともに予熱を
完了したら、再びアルゴンガス供給管7を開としてチャ
ンバー1内の圧力を200mbrとする。
(7) その後、溶射ガン15の極性を陰極から陽極へ、
また被処理材13の方を陽極から陰極へそれぞれ切換え、
本発明の前記溶射材料を被処理材13の表面へ所定の厚さ
に溶射する。
このようにして被覆形成したTi材とPdとからなる溶射
皮膜は、雰囲気中に酸素がないため酸化物をほとんど含
まず、無気孔で緻密な状態を呈し、大気中のプラズマ溶
射皮膜特有の微小金属粒子が堆積したような組織とは異
なったものになる。とくに、この溶射皮膜は、酸化物を
含まないため、被処理材13の基地との結合も緊密であ
り、被処理材13の予熱温度および硬質溶射材料の化学組
成の選択によっては両者を冶金的に結合させることもで
きる。
本発明の別の工程例として、上記(7)の処理後、引
き続き次のような処理を行えば、溶射皮膜の被処理材13
への冶金的結合は一層確実なものとなる。
すなわち、 (8) (7)の処理後、溶射材料の供給を中止してプ
ラズマアークだけを発生させ、これを再び溶射加工面へ
近づけて生成した溶射皮膜を加熱溶融させる。
(9) 溶射皮膜を厚くするには、(7)の処理によっ
て溶射厚さを大としてもよいが、(7)と(8)の処理
を繰返すことによっても可能である。
(10) 本発明のさらに別の工程例として、上記(8)
の処理後に再び(7)の溶射処理を繰返して溶射皮膜を
被成させてもよい。
(11) (7),(7)+(8)または(7)+(8)
+(10)の処理が終了すれば、真空ポンプ4と供給アル
ゴンガス量を調整して、チャンバー1内のガス圧力を10
mbr程度とした後、再びアルゴンガスをチャンバー1内
に導入して、100mbr圧力とし、このままの状態で30〜60
分間放置する。
この処理中は常に真空ポンプ4を動かし、新しいアル
ゴンガスを外部から供給しているため、被処理材13の温
度は次第に低下してくる。
(12) 30〜60分放置後、アルゴンガス供給量を大と
し、大気圧程度にするとともに真空ポンプ4の運転を中
止する。次いで、吸気用バルブ3および排気用バルブ2
を開として、大気とチャンバー1内の圧力差がなくなっ
たことを確認してから該チャンバー1の蓋を開き、被処
理材13を外に取り出す。
なお、上記溶射皮膜層をその後加熱して溶融させる処
理を施す場合、被処理材をマイナスに印加しておくと、
表面がより清浄化されるので、溶射時の必須工程である
ブラスト処理を施すまでもなく溶射作業の続行が可能で
ある。また、この溶射皮膜層の加熱溶融に際しては、被
処理材に熱電対を取付け、冷却用アルゴンガスを冷却管
8を通じて供給することによってその温度を制御すれ
ば、被処理材の材質に熱的な悪影響を与えることはな
い。
以上説明したような方法によって得られたPd被覆Ti材
溶射材料のプラズマ溶射皮膜は、他の単一材料の大気中
のプラズマ溶射法によって形成される皮膜とは全く異な
り、緻密で被処理材との密着性に優れたものとなるの
で、Pdを含むTi溶射皮膜の性能を長期間に亘って発揮す
ることができる。
なお、本発明は、大気中のプラズマ溶射法によっても
所望の耐食性皮膜の形成が可能であることは上述のとお
りであるが、ただし、この場合、得られる皮膜は、Tiお
よびPdとも金属と酸化物の混合物になっているうえ、多
孔質である。したがって、耐食性の点に着目した場合、
減圧アルゴンガス雰囲気中でのプラズマ溶射皮膜のそれ
と比較すると、やや皮膜特性が劣る。
〔実施例〕
実施例1 溶射材料としては、純度99.8%のTiおよびTi合金(6
%Al−4%V−残部Ti,粒子径:5〜45μm)の粒子に、
次のような方法でPd被覆処理を施したものを使用した。
上記粒子へのPd被覆処理に当り、次のような3種類の
混合薬液を準備した。
第一液…塩化第一錫 15 g/ 25℃ 塩酸(36%) 10 ml/ 第二液…塩化パラジウム 1.0g/ 25℃ 塩酸(36%) 3 ml/ 第三液…塩化パラジウム 2.0g/ 50〜80℃ アンモニヤ(28%)200 ml/ ヒドラジン(30%) 30 ml/ そして、先ず、Ti粒子を第一液の活性化剤中に5分間
浸漬してTi粒子表面を活性化させた後、第二液へ10〜50
分間浸漬した。その後、第三液に10〜15分間浸漬した
後、これを引き上げて純水で処理後のTi粒子を水洗し、
さらにエチルアルコールで脱水した後、真空乾燥してPd
被覆Ti粒子を得た。
その後、上記Pd被覆Ti粒子を用い、第1図に示す装置
による減圧アルゴンガス雰囲気中での溶射および大気下
プラズマ溶射を行い、SUS 304(寸法直径20mm×長150m
m)の試験片に、厚さ100μmとなるように溶射皮膜を形
成した。
一方、比較例として、無処理(Pd皮膜のない)のTiお
よびTi合金粉末を用い、第1図に示す装置によるアルゴ
ンガス雰囲気溶射、および大気下プラズマ溶射法によっ
て、同じ試験片を100μm厚の溶射皮膜を形成した。
このようにして得られた溶射皮膜付き試験片につい
て、次に示す3種類の無機酸中に240時間浸漬し、浸漬
前後の試験片の重量差から耐食性の良否を判定した。
酸の種類: 塩酸,硫酸,りん酸 酸の濃度: それぞれ2.5%(重量) 浸漬温度: 70℃一定 第1表は、酸浸漬による腐食減量を示したものであ
る。比較例にあるPd皮膜をもたない無処理の溶射材料を
用いたものは、平均的に腐食減量が多く、減圧プラズマ
溶射装置を用いた溶射皮膜でもかなりの腐食減量が認め
られた。
これに対し、本発明例にかかるPdを被覆したTiおよび
ti合金溶射材料を用いたものでは、優れた耐食性を示し
た。特に、減圧下のアルゴンガス雰囲気中でプラズマ溶
射したときの皮膜は、比較例で得られている皮膜に比べ
ると、塩酸中で12〜14%、硫酸中で6.8〜12%、りん酸
中で4〜5%程度の腐食減量にとどまった。
また、本発明例での溶射材料を大気中でプラズマ溶射
した場合でさえも、比較例に比べると、かなりの防食効
果を示しており、多少の気孔が存在することの明らかな
溶射皮膜であっても、必要な防食性能を発揮することが
判明した。
実施例2 この実施例では、食塩水中における耐食性を評価し
た。すなわち、SUS 304の板材(横50mm×縦100mm×厚さ
5mm)を比処理体とし、これを第2図に示すように2枚
を重ね合わせた。図において21および22はそれぞれ溶射
皮膜を形成した試験片であり、23は試験片が離れないよ
うに取付けたSUS 304製のボルトである。
上記試験片をこのような状態で食塩水中に浸漬する
と、該試験片が相互に接触している個所では、僅かな隙
間24が形成されるので、食塩水中に溶解している酸素の
供給が困難となり、孔食が発生しやすい環境が構成され
る。これに対し、その他の試験片部は、開放された環境
にあるため、酸素の供給が行われ易く、孔食の発生が少
ない環境である。
そこで、被処理体(試験片)に、実施例1と同じよう
に溶射皮膜を形成させた後、上述の如き状態下にある各
試験片を50〜60℃に保持した5%食塩水中に6か月間浸
漬した。その後、試験片を取り出し、その表面を目視お
よび5倍の拡大鏡で観察した。
第2表は、この観察結果を示したもので、本発明にか
かるpd被覆Ti材料を用いて溶射した布膜を有する試験片
は、大気中で溶射した皮膜を有する試験片どうしの場合
にのみ、それらの接触部で2ケ所軽微な孔食が発生した
に止まり、その他の皮膜部分は接触部、露出部とも全く
異常はなく健全な状態を示した。
これに対し、比較例のものは、減圧下アルゴン雰囲気
下のプラズマ溶射したものでも孔食が発生した。このこ
とから、この減圧プラズマ溶射法によって得られる皮膜
は、元来緻密である筈であるが、1ケ所でも気孔が存在
すると、その部分が選択的に腐食されることを示してお
り、この点、本発明の接触皮膜処理材では、多少の気孔
が存在しても、防食効果に何の障害もないことが確認で
きた。
実施例3 この実施例では、第1図に示す装置を用いて、Pd被覆
Ti,Ti合金のプラズマ溶射皮膜を形成させた後、さらに
同時層内で熱処理を行うことによって、得られた溶射皮
膜をTi−Ti合金化させた例である。すなわち、第1図の
装置は、実質的に酸素を含まないため、得られる溶射皮
膜は酸化物がなく、純度の高い金属皮膜である。したが
って、溶射後、第1図の外部電源16と極性切換スイッチ
17によって、溶射ガン15を陰極とし被処理材13を陽極と
して、溶射ガンからアルゴンガスを流出しながら、両極
に2〜3KVAの電圧を負荷させつつ、溶射ガンから発生す
るプラズマジェットによって被処理体を800〜900℃に3
分間加熱して熱処理を施したのである。
供試溶射材料は次のとおりであり、粒子径は全て5〜
44μmで、Pb被覆処理を施したものである。
(1) 純Ti (2) Ti合金(6%Al−4%V−残Ti) (3) Ti合金(4%Al−3%Mn−残Ti) (4) Ti合金(7%Al−4%Mn−残Ti) 熱処理後の溶射皮膜を光学顕微鏡(×100)で観察し
たところ、Ti,Ti合金皮膜とも気孔は全く認められなか
った。また、同じ断面をX線マイクロアナライザーによ
ってPbの分布を調査した結果、Pbは皮膜全体に均等に分
布していることが判明した。
そこで、これらの熱処理溶射皮膜の耐食性を、Pd被覆
を施していないTiおよびTi合金粉末を溶射して得られる
溶射皮膜(ただし、溶射装置および溶射皮膜の熱処理条
件は本発明例と同じ)と、Ti板(純度99.8%)およびTi
−Pd合金板(Pb0.15%)について、これらを比較例とし
て、それぞれを2.5%,70℃の塩酸中に240時間浸漬して
調査した。
その結果を第3表に示す。この表から判るように、本
発明の熱処理溶射皮膜についてみると、腐食減量が比較
例の溶射皮膜はもとより、Ti板より少なく、Ti−Pd合金
板と同等の耐食性を示した。このことは、本発明にかか
る溶射皮膜は、それをさらに熱処理することによって、
Ti−Pd合金板と同等の耐食性を付与できることを示して
おり、高価なTi−Pd合金板を使用するまでもなく、プラ
ズマ溶射法によっても部材の表面部のみを経済的に耐食
処理できることが実証された。
〔発明の効果〕 以上説明したように、TiおよびTi合金粉末の粒子表面
にPdを被覆した耐食性溶射材料とすることにより、この
材料を用いて得られるプラズマ溶射皮膜は、恰もTi−Pb
合金のような状態となるので、被処理面の耐食性が著し
く向上する。特に、この溶射材料を減圧アルゴンガス雰
囲気下でプラズマ溶射して得られる皮膜特性は、耐酸性
およびCl-含有の水溶液中における耐孔食性に優れた性
能を発揮する。
したがって、本発明のPd被覆溶射材料およびこの材料
を用いて溶射皮膜を施工することによって、耐食性能に
優れた機械装置部材の製造が可能となり、腐食損傷事故
の低減,保守点検費の削減、装置の長寿命化などが期待
できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、減圧アルゴンガス雰囲気下で溶射するための
減圧プラズマ溶射装置の略線図、 第2図は、食塩水中に浸漬して隙間腐食を発生させるた
めの試験片の外観図である。 1……チャンバー、2……排気用バルブ、 3……吸気用バルブ、4……真空ポンプ、 5……サイクロン、6……フィルター、 7……アルゴンガス供給管、 8……被処理体冷却用アルゴンガス供給管、 9……ロボットのモータ冷却用アルゴンガス供給管、 10……プラットフォーム、11……溶射ロボット、 12……被処理体保持台、13……被処理体、 14……温度計測用熱電対、15……溶射ガン、 16……外部直流電源、17……極性切換スイッチ、 21,22……溶射被覆試験片、23……接合ボルト、 24……2枚の試験片で構成される隙間。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粒子の表面がPdで被覆されたTiもしくはTi
    合金粉末よりなる耐食性溶射材料。
  2. 【請求項2】TiもしくはTi合金粉末の各粒子を、Pdを溶
    解しためっき液中に浸漬して化学めっきすることによ
    り、その表面にPdめっき膜を被成することを特徴とする
    耐食性溶射材料の製造方法。
  3. 【請求項3】被処理面上に、粒子表面にPdめっき膜を有
    するTiもしくはTi合金粉末よりなる耐食性溶射材料を、
    プラズマ溶射することにより被着させることを特徴とす
    る耐食性皮膜の形成方法。
  4. 【請求項4】被処理面上に、粒子表面にPdめっき膜を有
    するTiもしくはTi合金粉末よりなる耐食性溶射材料を、
    実質的に酸素を含まない減圧アルゴンガス雰囲気下にお
    いてプラズマ溶射することにより被着させることを特徴
    とする耐食性皮膜の形成方法。
  5. 【請求項5】プラズマ溶射することによって得られる耐
    食性皮膜を、実質的に酸素を含まない減圧アルゴンガス
    雰囲気下において加熱することにより、溶射皮膜中のPd
    を合金化することを特徴とする請求項1または4記載の
    耐食性皮膜の形成方法。
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