JP2500854B2 - 圧延ロ―ル - Google Patents

圧延ロ―ル

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JP2500854B2
JP2500854B2 JP7019793A JP1979395A JP2500854B2 JP 2500854 B2 JP2500854 B2 JP 2500854B2 JP 7019793 A JP7019793 A JP 7019793A JP 1979395 A JP1979395 A JP 1979395A JP 2500854 B2 JP2500854 B2 JP 2500854B2
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rolling
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郁二 上村
文夫 小野
達也 西本
松夫 樋口
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は銅および銅合金、鉄お
よび鉄合金などの金属線材を熱間で圧延するのに使用す
る圧延ロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、金属線材特に銅線材の生産方式と
しては、鋳造機と圧延機とを直結した連続鋳造圧延方式
が主に採用されている。
【0003】一般に圧延ロールの保持方式としては、図
4の両持式と図5の片持式がある。まず図4の両持式に
おいては、ロールAの軸部1,1と胴部2が一体であ
り、両軸部1,1が駆動モータ(図示せず)から回転力
を受け、胴部2に形成されたカリバー3で線材4を圧延
するものである。
【0004】このロールAでは、圧延加工する胴部2は
耐摩耗性、耐熱性をもたせるため硬度を高く、例えばシ
ヨア硬度60〜70にする。一方、軸部1,1は駆動力
伝達部のため、高温度での脆化を考え低硬度で靭性をも
たせて例えばシヨア硬度40〜50程度にする必要があ
る。従ってこの両持式ではセラミックスロールの適用が
難しい。但し、加工溝部のみ即ちカリバー3部分のみを
本発明セラミックスで形成し、胴部に嵌め込む方式をと
れば適用可能ではある。
【0005】これに対して、片持式の圧延機において使
用される圧延ロールは図5に示すように、リング状のロ
ール5にカリバー6とキー穴7が形成されている。この
ような片持式の基本ロール構造をとることによって図1
に示すように、ロールが胴部のみよりなり、駆動力もス
リーブ9により均一に内圧がかかった状態でロール内面
に伝達されるため、特に金属ほどの靭性は不要であり、
割損などの事故も生じなくなる。また、ロール体積も小
さくて済み、製造が容易であり、特に高価なセラミック
スをロールとする場合、片持式の方がはるかに経済的で
ある。一方、ロールの材質については以下のような従来
の経緯がある。
【0006】従来、銅および銅合金線材の熱間圧延ロー
ルの材質としては工具鋼が専ら使用されてきた。この工
具鋼は、炭素鋼にCr,Mo,V,W,Mnなどの合金
元素を合金比率を勘案して用い、さらに焼入れ、焼き戻
しなどの熱処理条件を適正化することにより、高温での
強度、硬度、靭性、耐摩耗性などの品質向上がはかられ
てきた。
【0007】ところが上述したように例えば銅線の圧延
においては圧延温度が500〜1000℃の高温で、し
かも減面率が60%にも達する強加工を高速で行なうも
のであるため、通常の鋼の常用可能な限界温度300℃
を越えてしまい、種々の改善をもってしても、ロールの
寿命延長には自ら限界があった。
【0008】即ち、ロール表面の組織のミクロな不均一
性、加工条件の変動により、900℃前後ではロール表
面に局部的クラックを生じ、この鉄片が剥離し、また6
00℃前後では局部的に摩耗して線状のスクラッチ傷を
発生し、ロール表面を荒らすのである。
【0009】その結果、鋼線に鉄粉が混入して伸線工程
で断線に至る場合があること、およびロール表面の荒れ
によって線材表面が荒れて線材の品質低下につながるの
である。このために通常ロールの耐用時間は5〜8時間
という短寿命であり、またラインを停止して新しいロー
ルとの交換が必要になるのである。このロール交換には
0.5〜1時間を要するが、その間連続鋳造圧延ライン
を停止しなければならない。このように線材の生産にお
いて、ロールの欠陥は圧延ラインの停止を余儀なくされ
る最大の要因となっている。
【0010】このほか、ロールの摩耗、亀裂発生により
剥離した部分が線材に圧入され、線材の伸線加工中での
異物断線を引起すという問題もある。
【0011】故に、耐摩耗性の改善という観点から高硬
度の超硬合金製ロールの使用も検討されている。一般的
な超硬合金としては、WC−Co系があるが、このよう
な超硬合金は冷間加工ではすぐれた耐摩耗性を示し、ロ
ール,ダイスなどに多用されている。しかしながら、熱
間圧延ロールにおいては、高温度で銅とバインダーのC
oが反応し、この反応生成物が脆いため抜け落ちてロー
ル表面に粒子脱落孔を発生し、却ってロール寿命が低下
するのである。
【0012】このため、銅との反応性のより低い超硬合
金としてステライト(Cr73)を主成分とするCr7
3−Ni−W系などの種々合金成分を変えることによ
って超硬ロールの改良が行なわれた。
【0013】しかし、この場合にも銅との反応性は若干
低下して改善されるものの、高温下で合金成分が酸化す
ることによって脆くなり、その結果ロール表面の肌荒れ
が著しくて耐摩耗性はさほど改善されず、従って寿命の
向上には効果がなかった。高温で銅との反応性が低いの
はセラミックスであり、Al23,ZrO2を主成分と
するものが検討され、通常Al23を主成分とするアル
ミナ系セラミックスを用いることが考えられている。し
かしこのアルミナ系セラミックスは強度、靭性が低いた
め、図4に示す圧延ロールのように高応力で高衝撃のか
かる条件下では割損しやすくて使用に耐えないという欠
点がある。
【0014】この発明は、上記従来の課題を解決するた
めになされたもので、耐熱性、耐摩耗性、耐熱衝撃性に
優れ、高強度で、さらに銅鉄等の金属被加工材と熱間で
も反応しない長寿命の圧延ロールを提供することを目的
とする。ここで熱間とは300℃以上の温度を指す。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究の
末、銅および銅合金、鉄および鉄合金などの金属線材の
熱間圧延ロールとしては、次のような特性が必要である
ことを確認した。
【0016】即ち、(1) 高温度で銅等の金属被加工材と
反応しないこと、(2) 高温度で強度が低下しないこと、
(3) 高温度で耐摩耗性が高く、かつたとえ摩耗が起って
も均一であること(耐肌荒れ性)、(4) 熱膨張係数が小
さく熱ショックに強いこと。
【0017】本発明者らはこれらの特性をすべて満たす
熱間圧延ロール用素材として、ZrO2系やSi34
などのセラミックスについても種々検討した結果、シリ
コンナイトライド(Si34)セラミックスの特定の組
成のものが最も適していることが認められた。即ち、
(1) 線材の素材例えば銅との反応性が低く、1100℃
まで全く銅と反応しない。従って銅の圧延温度は最高1
000℃程度であるから、全く問題がない。鋼材・アル
ミニウム材についても同様の点が確認されている。(2)
熱間強度が高く1000℃まで殆ど低下しない。(3) 耐
摩耗性が高い。Si34は硬度が超硬ロールよりも高
く、また高温度で潤滑性がでてくるという独特の特性が
あるために高温度での耐摩耗性が高い。(4) 熱膨張係数
が3.2×10-6/℃と小さく、低膨張係数合金として
知られているNi−Co−Fe合金の約15×10
-6(但し350℃以上で)の1/5程度である。
【0018】また、圧延ロールは線材により高温度に上
昇し、冷却水で冷却されるというヒートサイクルのかか
る条件で使用されるため、膨張係数は小さいほど有利で
ある。加うるに比重が3.2と工具鋼の1/2以下の軽
量であるため、作業者にとってロール交換作業の負担が
軽減される。
【0019】以上述べたようにSi34を主成分とする
セラミックスロールは、銅および銅合金、鉄および鉄合
金などの金属用圧延ロールとしてすぐれていることが認
められる。本発明者らは、さらにこのSi34セラミッ
クスロールの寿命を格段に延ばす目的に迫られ、後述す
るような特定組成かつ高温下での対金属耐久性に優れた
Si34セラミックスを用い、かつ以下に記載する構造
のロールとすることによってこのSi34セラミックス
の優れた特性が充分に生かされ、それらの相乗効果によ
って所望のものを得ることができた。
【0020】事実Si34を主成分とするこの発明のセ
ラミックスを例えば線材連続鋳造圧延ラインの圧延機の
最終スタンドにおいて本発明の構造のロール方式によっ
てセットして使用したところ100時間以上使用しても
肌荒れ、線材の摩耗傷など線材の表面には全く異常がな
く、従来の工具鋼ロールの10倍以上の長寿命があるこ
とを見出して、この発明を完成するに至ったものであ
る。
【0021】即ち、この発明は、金属線材を熱間で圧延
加工するのに用いる圧延ロールであって、前述のように
ロール本体をセラミックス製の筒状体とし、このロール
本体の内部に駆動軸を挿通し、上記ロール本体の遊端側
から圧延ロール本体内面と上記駆動軸外面との間の環状
間隙にテーパースリーブを圧入すると共に、上記ロール
本体の遊端部とこれに対応する駆動軸の一端部にクロス
キーを嵌合させて(場合によってはクロスキーのうち1
2aおよびロール本体の穴7を除いてもよい)ロール本
体をその遊端部方向から圧縮固定し、駆動軸と一体回転
させるようにし、さらに、上記駆動軸の一端部に締結さ
れる締結ボルトを用いて、上記テーパースリーブの圧入
状態及び上記クロスキーの嵌合状態を保持するようにし
たものである。
【0022】この発明のロール構造によれば、セラミッ
クス製の筒形ロール本体(胴部)に軸部を一体形成せ
ず、その代わりにロール本体の内部に駆動軸を挿通させ
ると共に、テーパースリーブをロール本体と駆動軸の間
に圧入し、且つクロスキーをロール本体と駆動軸の各端
部に嵌合させるようにしたから、ロール本体はロール内
面からテーパースリーブを介して駆動軸の回転駆動力を
受けるが主として、クロスキーによりロール遊端面から
の圧力負荷により、ロール本体が固定されるとともに駆
動軸と一体回転する。ここで、駆動軸の駆動力はテーパ
ースリーブにより補助的に均一に弱い内圧がロール内周
面にかかった状態でクロスキーの側圧によりロール外面
に伝達されるので、前述の如くロール本体は金属ほどの
靭性、強度等が要求されない。従って、特に耐熱性に優
れたセラミックスをロール材料に使用することが可能と
なるので、ロールに割損等を生じるおそれがない。
【0023】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて
説明する。
【0024】図1はこの発明に係る圧延ロールを示す縦
断面図である。同図において、金属線材を熱間で圧延加
工するのに用いる本発明の片持式の圧延ロールは、ロー
ル本体5と、駆動軸8と、テーパースリーブ9と、クロ
スキー12と、締結ボルト13とで構成され以下の取付
構造を特徴とするものである。
【0025】まず、ロール本体5は、外周面にカリバー
6が設けられた筒状体とされ、その内端部はターンテー
ブル20を介して機体21に支持され、外端部には後述
するクロスキー12が嵌合するキー穴7(図3参照)が
形成されている。ロール素材としては後述する特定組成
のSi34セラミックスが用いられる。
【0026】上記ロール本体5の内部には、駆動モータ
(図示せず)から回転力を受ける駆動軸8が挿通してい
る。この駆動軸8の遊端部には、図2に示すように、一
対の半割れ状のロール軸14が一体形成されている。こ
のロール軸14には、図1に示すように、固定ナット2
3がねじ24により固定され、この固定ナット23に締
結ボルト13が螺合している。
【0027】一方、ロール本体5の内面5aと上記駆動
軸8の外面8aとの間の環状間隙には、ロール本体5の
遊端部側からテーパースリーブ9のテーパー部9aが圧
入されている。また、テーパースリーブ9のヘッド部9
bには、上記締結ボルト13が貫通する貫通孔9cとボ
ルト受部9dが設けられ、締結ボルト13の締め付けに
よりテーパースリーブ9の圧入状態が保持されている。
10はナット、11はロックナットである。
【0028】さらに、テーパースリーブ9の側面には、
クロスキー12が貫通する貫通孔9e,9eが形成され
ており、クロスキー12は、中央部がロール軸間14,
14間に嵌合すると共にロール本体をその遊端部から圧
縮固定されるようになっており、また両端部の突部12
aがロール本体5のキー穴7,7に嵌合している。これ
により、ロール本体5が駆動軸8と一体回転されるよう
になっている。また、上記締結ボルト13の先端部がク
ロスキー12を駆動軸8側に押圧しており、これによ
り、クロスキー12とロール本体5との上記嵌合状態が
保持されている。
【0029】上記のように、この発明に係る片持式圧延
ロールの第1の特徴は、図1に示すように、片持式の基
本構造を生かした組立の簡単な構造を有しており、筒形
ロール本体5(胴部)に軸部(図4の符号1に該当)を
一体形成せず、その代わりにロール本体5の内部に駆動
軸8を挿通させると共に、テーパースリーブ9をロール
本体5と駆動軸8の間に圧入し、且つクロスキー12を
ロール本体5と駆動軸8の各端部に嵌合させるようにし
た点にある。これにより、ロール本体5はロール内面5
aからテーパースリーブ9を介して駆動軸8の回転駆動
力を受けると共に、クロスキー12によりロール本体5
遊端面に圧力が負荷されロール本体5が同面で固定され
ると共にロール本体5が駆動軸8と一体回転する。ここ
で、駆動軸8の駆動力はテーパスリーブ9により均一に
弱い内圧がかかった状態でロール内面5aに伝達される
ので、ロール本体5は金属ほどの靭性、強度等が要求さ
れない。従って、この発明のセラミックスロールにおい
ては、以下で述べるような特に耐熱性に優れたセラミッ
クスをロール材料として利用することと相まって、上記
した構造とすることによって従来になく割損などの事故
発生が防止できるようになり、格段の長寿命化達成が可
能となった。
【0030】次に、この発明の第2の特徴は、ロール本
体5を特定組成のセラミックス製とした点にある。特に
セラミックスとして非酸化物系のSi34セラミックス
を用いる。ここで、この発明でロール素材として用いる
Si34セラミックスは、原料粉末としてのSi34
60重量%以上主成分として用い、これにAlN,Al
23,Y23,YN,MgO,CaO,ZrO2,Ti
2,HfO2,WC,Mo2C,SiC,CeO2,Be
O,TiN,Be32,Alなどの添加剤を焼結助剤と
して混合したものである。
【0031】Si34粉末を60重量%以上とするの
は、それ以下では強度的に脆くなり、耐衝撃性も低下す
るためである。
【0032】ここでSi3460重量%以上に対して使
用する添加剤の組合わせの一例についてのべると、Si
34に対してAl23,MgO,Mg32,BeO,B
32,CaO,Ca32,FeO,WC,Mo2Cの
うちの1種または2種以上を0.1〜20重量%含有す
るセラミックス焼結体は、特に900℃以下の使用条件
下でも強度、硬度などの劣化が少ない、従って、このよ
うな条件下で使用する銅用の圧延ロールに有効である。
【0033】またSi34に対してY23,YNなど元
素周期律第IIIB族元素の酸化物、炭化物、窒化物、硼
化物あるいは珪化物の粉末を0.1〜25重量%とAl
23,AlN,Alを0.1〜25重量%含むセラミッ
クス焼結体は1100℃以下の条件下で使用する圧延ロ
ールに適している。
【0034】さらにSi34に対してAlN,Zr
2,TiO2,HfO2,SiC,CeO 2,TiNの
うちの1種以上を1〜20重量%含んだセラミックス焼
結体は800℃以下の条件下で使用する圧延ロールに有
効である。
【0035】このようなSi34セラミックスの製造方
法としては、公知の常圧焼結法、HIP法またはホット
プレス法などを用いればよい。
【0036】しかも、この実施例では、熱間圧延に用い
る圧延ロールはロール本体(胴部)のみで、軸部は一体
形成されていないので、前述のようにロール体積は少な
く、製造が容易であり、高価なSi34の材料費も少な
くてすむのでコスト的にも両持式よりはるかに低く経済
的である。
【0037】ここで熱間圧延とは、前述のように300
℃以上の温度を指すが、冷間加工でもSi34の耐摩耗
性は工具鋼よりすぐれている。しかし、寿命の差異は高
温ほど大きく、即ち、セラミックスの方が長寿命とな
り、コスト的に有利であることから熱間用に限定したも
のである。なお、この発明のロールでは以上のように3
00〜1000℃の熱間で被圧延材を加工する場合有利
であるが、特に被圧延材が線材の場合には、ロールの冷
却水の流量を0.4m3/hr以上として冷却することに
より、線速1m/sec以上の送りスピードでの圧延が安
定して行なえる。
【0038】以上の如く本発明のSi34セラミックス
ロールは従来のロールより高品質長寿命であり、連続鋳
造圧延ラインの稼動率の向上および製造される線材の高
品質化などすぐれた性能を有することが判った。
【0039】以下、この発明の実験例を説明する。
【0040】(実験例1)0.3%Sn入り銅線を製造
する連続鋳造圧延ラインにおいて、最終スタンドの圧延
ロールとして従来の工具鋼ロール、超硬ロール、Si3
4−Y23系セラミックスロールとこの発明のSi3
4セラミックスロール(AlN 1.5重量%−Al23
4.0重量%−Y23 3.0重量%−Si34
1.5重量%)を使用して比較した。なお、圧延ロール
はリング形状の圧延ロールをテーパースリーブに嵌め込
む図1の片持保持式の圧延機である。鋳造機温度は70
0℃、減面率は20%であった。
【0041】結果は表1の通りであり、従来の工具鋼ロ
ール、超硬ロールでは何れも5〜6時間で摩耗し、表面
キズや点状剥離を発生し、線材表面も荒れ、品質の低下
は免れなかった。また、従来のSi34−Y23系セラ
ミックスロールでは50時間の圧延でロール表面に摩耗
の割損がみられた。
【0042】これに対してこの発明のSi34セラミッ
クスロールにおいては、100時間圧延してもロール表
面の肌荒れ、摩耗はなく、圧延された線材表面も平滑で
あった。またロールは100時間後も使用可能であっ
た。
【0043】
【表1】
【0044】(実施例2)実施例1と同様の図1のセッ
ト方式と、別途比較のため図6のセット方法によって、
他条件を同一にして圧延実験を行った。ロール材は、各
々10個実験に供した。図1と図6のセット方式の違い
は、表2の通りである。
【0045】
【表2】
【0046】実験の結果を表3に示す。この結果により
明らかなように、図6のセット方式では、ロール内面の
径方向引張り応力が大きくなり、靭性の高い工具鋼、超
硬合金では割損はないものの、従来品のSi34−Y2
3系セラミックスでは30時間ですでに半数に割損が
生じ、同じセット方式の本発明品セラミックスは100
時間使用可能ではあったが、それでも10%のもので割
損が生じた。
【0047】本発明品でセット方式を対比した場合、図
1の方式では全く割損が生じておらず、図1の方式がロ
ールの長寿命化、線材の品質維持に最も有効であること
がわかった。
【0048】
【表3】
【0049】(実験例3)連続鋳造圧延ラインにおいて
タフピッチ銅線を製造する際、第1スタンドの圧延ロー
ルとして従来品の工具鋼ロール、超硬ロール、Si34
−Y23系セラミックスロールとこの発明のSi34
ラミックスロール(AlN 3重量%−Al23 6重量
%−Y23 4重量%−Si34 87重量%)を使用し
て実施例1と同様、図1のセット方式でロール特性を比
較した。
【0050】線材温度は950℃、減面率は50%であ
った。その結果は表4に明らかなように、従来品ロール
は何れも7〜8時間の使用でロール表面に肌荒れやクラ
ック等が発生し、また、線材中にロール材質の異物が混
入して断線を発生した。また、従来のSi34−Y23
系セラミックスロールでは80時間の圧延でロール表面
に摩耗の割損がみられた。
【0051】これに対して、この発明によるSi34
ラミックスロールでは200時間使用しても全くロール
に異常がないという長寿命であり、その後伸線加工にお
いても断線もなく良好な線材が得られた。
【0052】
【表4】
【0053】(実験例4)アルミニウム線を製造する圧
延ラインにおいて、最終スタンドの圧延ロールとして従
来の工具鋼ロール、超硬ロール、従来のSi34−Y2
3系セラミックスロールとこの発明のSi34セラミ
ックスロール(Si34 90重量%−Al23 5重量
%−MgO 5重量%)を用いて比較した。なお、圧延
ロールは、リング形状の圧延ロールをテーパースリーブ
に嵌め込む図1の片持保持式の圧延機である。鋳造機温
度は500℃、減面率は20%であった。
【0054】結果は表5の通りであり、従来の工具鋼ロ
ール、超硬ロールでは何れも4〜7時間で摩耗し、表面
傷や全面摩耗を発生し、線材表面も荒れ、品質の低下は
免れなかった。また、従来のSi34−Y23系セラミ
ックスロールでは68時間の圧延でロール表面に摩耗の
損傷が見られた。
【0055】これに対してこの発明のSi34セラミッ
クスロールにおいては140時間圧延してもロール表面
の肌荒れ、摩耗はなく、圧延された線材表面も平滑であ
った。
【0056】
【表5】
【0057】(実験例5)鉄線材を製造する連続鋳造圧
延ラインにおいて、最終スタンドの圧延ロールとして従
来の工具鋼ロール、超硬ロール、従来のSi34−Y2
3系セラミックスロールとこの発明のSi34セラミ
ックスロール(Si34 93重量%−AlN 3重量%
−CeO2 2重量%−TiN 2重量%)を用いて比較
した。なお、圧延ロールは、リング形状の圧延ロール圧
延ロールをテーパスリーブに嵌め込む片持保持式の圧延
機である。鋳造機温度は800℃、減面率は15%であ
った。
【0058】結果は表6の通りであり、従来の工具鋼ロ
ール、超硬ロールでは何れも5〜9時間で摩耗し、ロー
ル表面に傷や点状剥離を発生し、線材表面も荒れが著し
かった。また、従来のSi34−Y23系セラミックス
ロールでは90時間の圧延でロール表面に摩耗の損傷が
見られた。
【0059】これに対して、この発明のSi34セラミ
ックスロールにおいては270時間圧延してもロール表
面の肌荒れ、摩耗はなく、圧延された線材表面も平滑で
あった。また、ロールは270時間後も使用可能であっ
た。
【0060】
【表6】
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、テーパースリーブをセラミックス製のロール本体と
駆動軸の間に圧入すると共に、クロスキーを該ロール本
体と駆動軸の各遊端部に嵌合させる圧延ロールであるか
ら、ロール本体は金属ほどの靭性、強度等が不要とな
る。さらにこれに加え特定な組成で優れた高温での対金
属耐久性を有するSi34をロール素材として用いるた
めに、その相乗効果として従来になく耐熱性、耐摩耗
性、耐衝撃性に優れ、高強度であり、さらに高温度でも
銅等の金属被加工材と反応しない格段に長寿命の圧延ロ
ールを得ることが可能となり、その結果安定して高効率
の圧延加工が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るセラミックス製圧延ロールを片
持式圧延機に取り付けた状態を示す縦断面図である。
【図2】圧延ロールの分解斜視図である。
【図3】ロール本体の斜視図である。
【図4】従来の両持式圧延ロールの側面図である。
【図5】(イ)は片持式圧延ロールの正面図、(ロ)は
同側面図である。
【図6】図1で示したセラミックス製圧延ロールを片持
式圧延機に取り付けた状態の他の例を示す縦断面図であ
る。
【符号の説明】
5 圧延ロール本体 8 駆動軸 9 テーパースリーブ 12 クロスキー 13 締結ボルト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 樋口 松夫 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住 友電気工業株式会社 伊丹製作所内 (72)発明者 上條 栄治 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住 友電気工業株式会社 伊丹製作所内 (56)参考文献 特開 昭54−117361(JP,A) 特開 昭57−112917(JP,A) 特開 昭53−78216(JP,A) 特開 昭49−35204(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属線材を熱間で圧延加工するのに用い
    る圧延ロールにおいて、主成分のSi34を60重量%
    以上、Al23,MgO,Mg32,BeO,Be
    32,CaO,Ca32,FeO,WC,Mo2Cのう
    ちの1種または2種以上を0.1〜20重量%含有する
    セラミックス焼結体からなる筒状体のロール本体と、こ
    のロール本体の内部に挿通される駆動軸と、上記ロール
    本体の遊端側から圧延ロール本体内面と上記駆動軸外面
    との間の環状間隙に圧入されるテーパースリーブと、上
    記ロール本体の遊端部とこれに対応する駆動軸の一端部
    にそれぞれ嵌合してロール本体をその遊端部方向から圧
    縮固定しロール本体を駆動軸と一体回転させるクロスキ
    ーと、上記駆動軸の一端部に締結されて上記テーパース
    リーブの圧入状態及び上記クロスキーの嵌合状態を保持
    する締結ボルトとを備えたことを特徴とする圧延ロー
    ル。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のロール本体を、主成分の
    Si34 を60重量%以上、Y23,YNなどの元素周
    期律第IIIB族元素の酸化物、炭化物、窒化物、硼化物
    あるいは珪化物のうちの1種以上を0.1〜25重量%
    とAl23,AlN,Alのうちの1種以上を0.1〜
    25重量%含むセラミックス焼結体としたことを特徴と
    する圧延ロール。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のロール本体を、主成分の
    Si34 を60重量%以上、AlN,ZrO2,Ti
    2,HfO2,SiC,CeO2,TiNのうちの1種
    以上を1〜20重量%含んだセラミックス焼結体とした
    ことを特徴とする圧延ロール。
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