JP2024121552A - エポキシ樹脂組成物、強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及びこれらを用いた繊維強化プラスチック - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及びこれらを用いた繊維強化プラスチック Download PDF

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Abstract

【課題】現場重合型繊維強化熱可塑性プラスチック用途に好適な相溶性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供し、それを含む強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及びこれらを用いて強度及び弾性率に優れた繊維強化プラスチックを提供する。【解決手段】2官能エポキシ樹脂、ジカルボン酸化合物及び重合触媒を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記ジカルボン酸化合物は下記一般式(1)で表され、2官能エポキシ樹脂の1モルに対してジカルボン酸化合物は0.90~1.1モルであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。【化1】TIFF2024121552000021.tif21150ここで、Xは2つ以上の酸素原子を含む2価の複素多環基であり、Yは独立に2価の環式炭化水素基である。【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物、強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及びこれらを用いた繊維強化プラスチックに関する。
繊維強化プラスチック(FRP)は軽量、高強度などの優れた物性を示し、多くの分野で利用されている。その中でも、炭素繊維を強化繊維として用いたもの(CFRP)は、特に機械的強度に優れることで知られている。
FRPの母材樹脂として、価格、物性のバランスに優れるため、エポキシ樹脂が主に使用されており、特許文献1は、エポキシ化合物とフェノール性水酸基含有化合物とを予め強化繊維と混合し、重合触媒及び反応遅延剤を使用して重付加反応により重合させ、繊維強化熱可塑性樹脂を成形する方法を提案している。このエポキシ樹脂は、現場重合型熱可塑性エポキシ樹脂とも言われ、これを使用したFRPは量産性、成型性、リサイクル性に優れると期待されている。現場重合型熱可塑性エポキシ樹脂は、重合前の低粘度状態で繊維へ含浸させるため含浸性が良く、強化繊維の割合を高めることができ、汎用的な熱硬化エポキシ樹脂に比べ、衝撃強度や靭性に優れる。
しかしながら、特許文献1に記載の現場重合型熱可塑性エポキシ樹脂を用いたCFRPは高い曲げ強度を示すものの、曲げ弾性率が十分でないことが分かってきており、高い曲げ応力下で使用される部材への適用は制限されていた。
特開2006-321897号公報
本発明の課題は、相溶性に優れたエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を用いた強度及び弾性率に優れた繊維強化プラスチックを提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明者はエポキシ樹脂組成物について鋭意検討した結果、特定の構造を有するジカルボン酸化合物を用いたエポキシ樹脂組成物が、相溶性に優れることを見出し、更にこれを含む強化繊維含有エポキシ樹脂組成物からなるプリプレグを用いた繊維強化プラスチックが強度及び弾性率に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、2官能エポキシ樹脂、ジカルボン酸化合物及び重合触媒を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記ジカルボン酸化合物は下記一般式(1)で表され、2官能エポキシ樹脂の1モルに対してジカルボン酸化合物は0.90~1.1モルであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
Figure 2024121552000001
ここで、Xは2つ以上の酸素原子を含む2価の複素多環基であり、Yは独立に2価の環式炭化水素基である。
上記一般式(1)中のXは、下記式(3a)又は式(3b)で表される複素多環基を含むことが好ましい。
Figure 2024121552000002
ここで、Aは独立に炭素数1~6のアルキレン基、又はベンゼン環もしくはナフタレン環のいずれかの芳香族環基である。
上記重合触媒の含有量は、2官能エポキシ樹脂とジカルボン酸化合物との総量100重量部に対して、0.001~10重量部であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含む場合は、有機溶剤の含有量がエポキシ樹脂組成物の0.01重量%以上10重量%以下であり、85℃における粘度が0.1Pa・s以上100Pa・s以下であり、2官能エポキシ樹脂とジカルボン酸化合物とが均一に溶解していることが好ましい。
また本発明は、上記エポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有することを特徴とする強化繊維含有エポキシ樹脂組成物である。そして強化繊維として、炭素繊維を20~80重量%の割合で含むことが好ましい。
また本発明は、上記強化繊維含有エポキシ樹脂組成物からなるプリプレグである。
また本発明は、上記強化繊維含有エポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化プラスチックである。
また本発明は、上記プリプレグを用いた繊維強化プラスチックである。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、強度及び弾性率に優れた繊維強化プラスチック(FRP)を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ジカルボン酸化合物、2官能エポキシ樹脂及び重合触媒を必須成分として含み、加熱により重合し、熱可塑性プラスチックとなる組成物である。この組成物には、2官能フェノール化合物、有機溶剤、充填剤、又は難燃剤などの添加剤が含まれていてもよい。本発明の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物は、このエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを必須成分として含有する。
エポキシ樹脂組成物に使用する2官能エポキシ樹脂は、分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であればよい。2官能エポキシ樹脂としての純度が高ければ、位置異性体やオリゴマーが含まれてもよく、2官能エポキシ樹脂の純度は95重量%以上であることが好ましい。これらの2官能エポキシ樹脂は1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。
2官能エポキシ樹脂は、特に、下記一般式(2)で表される2官能エポキシ樹脂が好ましい。
Figure 2024121552000003
式中、Zは2価の基であり、下記式(2b)で表される2価の基が好ましい。Gはグリシジル基である。
Figure 2024121552000004
式(2b)において、Zは下記式(2c)で表される2価の基である。
Figure 2024121552000005
式(2b)において、mは繰り返し数であり、その平均値は0以上6以下であり、0以上3以下が好ましい。また、式(2c)において、kは0、1、又は2であり、0又は1が好ましい。
式(2c)において、Arは独立に、ベンゼン環又はナフタレン環のいずれかの芳香族環基である。これらの芳香族環は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数7~12のアラルキルオキシ基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数2~12のアルキニル基のいずれかを置換基として有してもよい。
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
炭素数1~12のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、t-ペントキシ基、シクロペントキシ基、n-ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、n-ヘプトキシ基、シクロヘプトキシ基、メチルシクロヘキシロキシ基、n-オクチロキシ基、シクロオクチロキシ基、n-ノニロキシ基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシロキシ基、n-デシロキシ基、シクロデシロキシ基、n-ウンデシロキシ基、n-ドデシロキシ基、シクロドデシロキシ基等が挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、エチルフェニル基、スチリル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、ビニルナフチル基等が挙げられる。
炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
炭素数6~12のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、エチルフェノキシ基、スチリルオキシ基、キシリルオキシ基、n-プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、メシチルオキシ基、エチニルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、ビニルナフチルオキシ基等が挙げられる。
炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、メチルベンジルオキシ基、ジメチルベンジルオキシ基、トリメチルベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、1-フェニルエトキシ基、2-フェニルイソプロポキシ基、ナフチルメトキシ基等が挙げられる。
炭素数2~12のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルビニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シンナミル基、ナフチルビニル基等が挙げられる。
炭素数2~12のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1,3-ブタジイニル基、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基等が挙げられる。
式(2c)において、Rは、単結合、炭素数1~21の2価の炭化水素基、-CO-、-O-、-S-、-SO-、又は-C(CF-から選ばれる2価の基である。
炭素数1~21の2価の炭化水素基としては、炭素数1~21のアルキレン基又は炭素数6~21のアリーレン基が好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、-CH-、-C(CH-、-CH(CH)-、-CHPh-、-C(CH)Ph-、-C(CH)(C)-、-C(Ph)-、-C-、-C-、-C-、1,1-シクロペンチレン基、1,1-シクロヘキシレン基、1,1-シクロヘプチレン基、メチル-1,1-シクロヘキシレン基、1,1-シクロノニレン基、1,1-シクロオクチレン基、3,3,5-トリメチル-1,1-シクロヘキシレン基、1,1-シクロデシレン基、1,1-シクロドデシレン基、1,2-シクロペンチレン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロペンチレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,2-キシリレン基、1,4-キシリレン基、テトラヒドロジシクロペンタジエニレン基、テトラヒドロトリシクロペンタジエニレン基、1,1-フルオレンジイル基等が挙げられるが、これらに限定されない。Phはフェニル基(-C)を示し、全炭素数が21以下であればフェニル基は置換基を有してもよい。
2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(例えば、ZX-1201(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)など)、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルエーテルジグリシジルエーテル、チオジフェノールジグリシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのビスフェノール型エポキシ樹脂や、ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ジメチルビフェノールジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビフェノールジグリシジルエーテルなどのビフェノール型エポキシ樹脂や、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、メチルレゾルシンジグリシジルエーテルなどのベンゼンジオール型エポキシ樹脂や、ジヒドロキシアントラセンジグリシジルエーテル、ヒドロアントラハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビスナフトールフルオレンジグリシジルエーテル、ジフェニルジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
2官能エポキシ樹脂としては、更に、上記2官能エポキシ樹脂の芳香環に水素を添加した2官能エポキシ樹脂や、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸などの種々のジカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテルなどの鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコール型エポキシ樹脂や、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどの環状構造を有するアルキレングリコール型エポキシ樹脂や、脂肪族環状エポキシ樹脂や、リン含有2官能エポキシ樹脂(例えば、FX-305(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、ジフェニルホスフィニルハイドロキノンジグリシジルエーテルなど)なども挙げられる。
繊維強化プラスチックの耐熱性の向上のためには、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスナフトールフルオレンジグリシジルエーテルが好ましく、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスナフトールフルオレンジグリシジルエーテルなどのフルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂がより好ましい。難燃性付与のためには、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、リン含有2官能エポキシ樹脂が好ましく、リン含有2官能エポキシ樹脂がより好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用する2官能エポキシ樹脂は、2官能成分が主である。
2官能エポキシ樹脂中に1官能の不純物が含まれている場合には重合後の分子量が上がらなくなるため、得られた熱可塑性樹脂製品の機械物性が悪くなる恐れがある。そのため、1官能の不純物は2官能エポキシ樹脂に対して2重量%以下であることが好ましい。
2官能エポキシ樹脂中に、3官能以上の不純物が含まれている場合には、その不純物を起点に架橋構造を形成しやすくなるため、重合物の分散が大きくなるほか、ゲル化して熱可塑性を損なう恐れがある。そのため、3官能以上の不純物については2官能エポキシ樹脂に対して1重量%以下であることが好ましい。
本発明の2官能エポキシ樹脂は、例えば、2官能フェノール化合物と、エピハロヒドリンとを、アルカリ金属化合物存在下で反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロルヒドリンやエピブロモヒドリン等が挙げられる。
2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラ-t-ブチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、チオジフェノール、ジヒドロキシスチルベン等のビスフェノール類や、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジメチルビフェノール、テトラ-t-ブチルビフェノール等のビフェノール類や、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン等のベンゼンジオール類や、ジヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロアントラハイドロキノン等の類や10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジヒドロキシ-2-ナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-8-ベンジル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)-8-ベンジル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等のリン含有フェノール類が挙げられる。
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシドや、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩や、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等が挙げられる。
原料2官能エポキシ樹脂を得るための2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応には、2官能フェノール化合物中の官能基に対して0.80~1.20倍モル、好ましくは0.85~1.05倍モルのアルカリ金属化合物が用いられる。これより少ないと残存する加水分解性塩素の量が多くなり好ましくない。アルカリ金属化合物としては、水溶液、アルコール溶液又は固体の状態で使用される。
エポキシ化反応に際しては、2官能フェノール化合物に対しては過剰量のエピハロヒドリンが使用される。通常、2官能フェノール化合物中の官能基1モルに対して、1.5~15倍モルのエピハロヒドリンが使用されるが、好ましくは2~10倍モル、より好ましく5~8倍モルである。これより多いと生産効率が低下し、これより少ないとエポキシ樹脂の高分子量体の生成量が増え、原料に適さなくなる場合がある。
エポキシ化反応は、通常、120℃以下の温度で行われる。反応の際、温度が高いと、いわゆる難加水分解性塩素量が多くなり高純度化が困難になる場合がある。好ましくは100℃以下であり、更に好ましくは85℃以下の温度である。
2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンを反応させると、mは0より大きくなるのが通常である。mを0とするためには、公知の方法で製造したエポキシ樹脂を蒸留、晶析等の手法で高度に精製するか、又は2官能フェノール化合物をアリル化した後に、オレフィン部分を酸化することでエポキシ化する方法がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用するジカルボン酸化合物は、1分子中に2つのカルボキシ基を有する化合物である。その純度は95重量%以上であることが好ましい。ジカルボン酸化合物としての純度が高ければ、位置異性体については含まれていてもよい。
1官能の不純物が含まれている場合には重合後の分子量が上がらなくなるために製造された熱可塑性樹脂の機械物性が悪くなる恐れがある。そのため、1官能の不純物は、2官能アセチル化合物に対して2重量%以下であることが好ましい。
3官能以上の不純物が含まれている場合には、その不純物を起点に架橋構造を形成しやすくなるため、重合物の分散が大きくなるほか、ゲル化して熱可塑性を損なう恐れがある。そのため、3官能以上の不純物は、ジカルボン酸化合物に対して1重量%以下であることが好ましい。
2官能エポキシ樹脂、ジカルボン酸化合物のいずれとも反応する活性基を持たず、単体では重合反応を阻害しない不純物成分についても、量が多くなると重合後の分子量が小さくなる恐れがある。そのため、2官能エポキシ樹脂及びジカルボン酸化合物のいずれに対しても2重量%以下であることが好ましい。
ジカルボン酸化合物の不純物成分は、全量として、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
本発明において、前記式(1)で表されるジカルボン酸化合物は、例えば、当該式(1)のX基に結合した2つのヒドロキシ基を有するジオール化合物を、環状カルボン酸無水物との開環反応でカルボキシ化して得られる。
2つ以上の酸素原子を含む2価の複素多環基(X)としては、式(3a)及び(3b)以外の基として、下記式(3c)~(3e)で表される2価の基であってもよい。
Figure 2024121552000006
式(3e)において、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~11の炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1~11の炭化水素基であり、iはそれぞれ独立に0~3の整数である。
上記ジオール化合物としては、例えば、イソソルビド、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ビスフェノールなどが挙げられる。
繊維強化プラスチックの高弾性化のためには、イソソルビド、4,4’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ビスフェノールが好ましい。これらのジオール化合物は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。
上記環状カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸などが挙げられる。繊維強化プラスチックの弾性率向上のためには、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸が好ましい。これらの環状カルボン酸無水物は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、粘度や溶解性、反応性、重合物の物性を調整するために、前記ジカルボン酸化合物の一部を2官能フェノール化合物に置き換えて使用してもよい。複数の成分を相溶させることにより、結晶化による再析出を抑制し、溶解性を改善する効果が期待される。
2官能フェノール化合物としては、ビスフェノール化合物又はビフェニル化合物が好ましい。ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン(以上、大阪ガスケミカル株式会社製)、Bis-E、Bis-Z、BisOC-FL、BisP-AP、BisP-CDE、BisP-HTG、BisP-MIBK、BisP-3MZ、S-BOC(以上、本州化学工業株式会社製)、ビスフェノールSなどが挙げられる。ビフェノール化合物としては、例えば、ビフェノール、ジメチルビフェノール、テトラメチルビフェノールなどが挙げられる。この他の2官能フェノール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、カテコール、メチルカテコールなどのベンゼンジオール類や、ナフタレンジオールなどのナフタレンジオール類などが挙げられる。また難燃性を付与する目的で、リン含有フェノール化合物を用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に2官能フェノール化合物を含有する場合、2官能フェノール化合物の割合は、組成物全体に対して、40重量%以下が好ましく、より好ましくは5~20重量%である。40重量%超だと、ジカルボン酸化合物の割合が少なくなり、耐熱性が向上しない恐れがある。また、2官能フェノール化合物は、ジカルボン酸化合物と2官能フェノール化合物との合計に対して、40重量%以下が好ましく、より好ましくは35重量%以下である。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、ジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物)の割合は、2官能エポキシ樹脂1.00モルに対して、0.90~1.1モルであり、好ましくは0.95~0.99モル、より好ましくは0.97~0.98モルである。
本発明のエポキシ樹脂組成物では、2官能エポキシ樹脂とジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物)とが逐次的に反応し、直鎖構造をとることで熱可塑性を発現する。2官能エポキシ樹脂が過剰であると重合物がエポキシ基末端となり、ジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物)が過剰であると重合物がカルボキシ基末端又はフェノール基末端となり反応が終了する。
2官能エポキシ樹脂1.00モルに対して、ジカルボン酸化合物及び2官能フェノール化合物の割合が1.10モル超の場合、重合物がカルボキシ基末端又はフェノール基末端となって反応が終了するため、高分子量化しにくい恐れがある。一方、ジカルボン酸化合物及び2官能フェノール化合物の割合が0.90モル未満の場合、過剰なエポキシ基が副反応を起こすことにより、重合物がゲル化し熱可塑性が損なわれる恐れがある。
エポキシ樹脂組成物において、ジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物)がエポキシ樹脂中に結晶状態で存在すると、ミクロで見た時にモル比が設計から外れる。この状態で反応を開始すると、重合が十分に進行しないことがある。重合を十分に進行させるためには、ジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物)と2官能エポキシ樹脂が相互に均一に相溶しているエポキシ樹脂組成物が好ましい。
また、強化繊維などを配合する前のエポキシ樹脂組成物は完全に溶解又は均一な液状となっていることが望ましいが、例えば、気泡を含まない状態でガラス製シャーレに厚さ2mmになるように溶融混合物を入れて厚み方向のヘイズ値を測定した場合において、その厚み方向のヘイズ値が30%未満であれば、重合反応に影響しない水準まで溶解又は均一な液状となったものと判断する。ヘイズ値についてより好ましくは20%未満、更に好ましくは10%未満である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、重合触媒を必須成分として含有する。重合触媒として、具体的には、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン系化合物、4-メチルイミダゾール、1B2MZ、1B2PZ、TBZ(四国化成工業株式会社製)などのイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン、トリス(パラトリル)ホスフィン、トリス(オルソトリル)ホスフィン、トリス(パラメトキシフェニル)ホスフィンなどのリン系化合物、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩類、18-クラウン-6(18-C-6)/AcOK錯体、18-C-6/KF錯体などのクラウンエーテル錯体、金属塩化物などが挙げられる。好ましくは、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン系化合物か、トリフェニルホスフィン、トリス(パラトリル)ホスフィン、トリス(オルソトリル)ホスフィン、トリス(パラメトキシフェニル)ホスフィンなどのリン系化合物である。
重合触媒の配合量は、前記エポキシ樹脂組成物の総量に対して、0.01重量%以上5重量%以下であることが望ましい。0.01重量%未満である場合は、現場重合において時間がかかってしまうために生産性が低下する恐れがあるほか、目標の分子量に到達するまでに何らかの理由で失活する恐れがある。一方、5重量%を超える場合は、重合反応が速やかに進行する一方で貯蔵安定性を損なってプロセス適合性に問題が発生する恐れがあり、反応に関与するが骨格には取り込まれない成分であるため、重合後の物性を損なう恐れがあるほか、単純に高価であるため、経済的にも不利益である。より好ましくは0.05~1.0重量%である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤を含有しないことが望ましいが、必要に応じて、重合触媒の溶媒として又は粘度調整のために、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、2官能エポキシ樹脂とジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物)との反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではないが、入手のし易さから、炭化水素系、ケトン系、エーテル系が好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。ただし、有機溶剤が多量に存在すると重合反応を阻害する恐れがあり、重合物中に有機溶剤が残存すると機械物性や耐熱性を悪化させる恐れがある。このため、有機溶剤を配合する場合、その割合は、エポキシ樹脂組成物中の10重量%以下であり、5重量%以下が好ましく、2重量%以下が特に望ましい。有機溶剤を配合する場合の下限値は限定されないが、通常0.01重量%以上で含有されることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上とされる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、強化繊維への含浸性を維持するためには低粘度であることが望ましい。85℃に加温した際の粘度が、好ましくは100Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以下、更に好ましくは10Pa・s以下である。粘度の下限値は限定有れないが、通常、0.1Pa・s以上とすることが好ましく、より好ましくは1Pa・s以上とされる。また、初期に測定した粘度の2倍になるまでの時間(粘度倍加時間)が、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上である。
本発明のエポキシ樹脂組成物の重合の進行状況は、重合物の重量平均分子量の推移で判断することがよい。重合温度は140℃未満だと重合が十分に進行せず、180℃を超えると架橋反応が促進されるため、140~180℃であることが好ましく、重合時間は30分未満だと重合が十分に進行せず、180分を超えると重合が進んで3次元架橋物となるため、30~180分で行うことが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物を重合することで得られる重合物の重量平均分子量(Mw)は35,000以上200,000以下である。重合物の重量平均分子量が範囲下限未満の場合、十分に重合が進行していない化合物を多く含むこととなり、機械的強度が悪化する恐れがある。一方、重合物の重量平均分子量が範囲上限超の場合、架橋反応が進行しており、熱可塑性が損なわれている恐れがある。好ましくMwは、35,000以上150,000以下、より好ましくは40,000以上120,000以下である。
重合物のエポキシ当量は5,000g/eq.以上であることが望ましい。エポキシ当量が5,000g/eq.未満であると、十分に重合が進行していない恐れがある。エポキシ当量は好ましくは5,500g/eq.以上、より好ましくは6,000g/eq.以上である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、ヒュームドシリカなどの充填剤、水酸化アルミニウムや赤燐などの難燃剤、コアシェルゴムなどの改質剤、キシレン樹脂などの粘度調整剤などが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、重合させることにより、熱可塑性プラスチックとなる。この熱可塑性プラスチックは繊維強化プラスチックの樹脂成分として各種繊維との密着性優れる。
本発明の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂組成物と強化繊維を混合又は含侵することにより得られる。また、プリプレグは下記のようにして得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を、離型処理された紙又はプラスチックフィルムに塗工し、必要に応じて、離型処理されたカバーフィルムを付与することで、エポキシ樹脂組成物フィルムを得ることができる。離型紙や離形プラスチックフィルム、カバーフィルムに関しては公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物フィルムの厚さはプリプレグの設計厚さと樹脂比率によって定められるが、通常の厚さは1μm以上300μm以下である。1μm未満の場合、強化繊維をきれいに解繊しなければ繊維の目開きが目立ってしまう問題があり、300μmを超える場合は強化繊維に均一に含浸しにくくなる。好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下である。
本発明で使用する強化繊維は、炭素繊維、アラミド繊維、セルロース繊維などのプラスチックを強化するためのものであり、特に限定されるものではない。また、繊維の形態についても繊維を引きそろえたUDシート、織物、トウ、チョップドファイバー、不織布、抄紙などが挙げられ、特に限定されるものではない。ただし、含浸性の観点から、それぞれの繊維束の厚みは1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以下である。
本発明の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物、又はプリプレグは、上記エポキシ樹脂組成物及び/又はエポキシ樹脂組成物フィルムと強化繊維から得られる。強化繊維とエポキシ樹脂組成物の比率は重量比で、好ましくは2:8~8:2である。強化繊維の比率が、強化繊維が少なすぎると繊維強化材料に求められる強度を十分に満足できない恐れがあり、強化繊維が多すぎるとボイドなどの欠陥が生じる恐れがある。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は重量部を表し、「%」は重量%を表す。
実施例において用いた原料、触媒は以下のとおりである。
[2官能エポキシ樹脂]
A1:テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、YX-4000、エポキシ当量186、m≒0.05)
Figure 2024121552000007
A2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YD―128、エポキシ当量186、m≒0.09)
Figure 2024121552000008
A3:合成例1で得た、イソソルビド型エポキシ樹脂(エポキシ当量=133、m≒0.04)
Figure 2024121552000009
ここで、mは、いずれも前記式(2b)におけるmと同様の意味を有する。
[ジカルボン酸化合物]
B1:合成例3で得た、複素環含有ジカルボン酸化合物(活性当量=235)
Figure 2024121552000010
B2:合成例4で得た、複素環含有ジカルボン酸化合物(活性当量=335)
Figure 2024121552000011
B3:テレフタル酸(富士フィルム和光純薬製)
B4:合成例5で得た、ジカルボン酸化合物(活性当量=282)
Figure 2024121552000012
B5:合成例6で得た、複素多環基含有ジカルボン酸化合物(活性当量=171)
Figure 2024121552000013
B6:合成例7で得た、複素多環基含有ジカルボン酸化合物(活性当量=212)
Figure 2024121552000014
[2官能フェノール化合物、ジオール化合物]
C1:ビスフェノールA(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、水酸基当量114)
Figure 2024121552000015
C2:イソソルビド(三菱ケミカル株式会社製、水酸基当量73)
Figure 2024121552000016
[重合触媒]
D1:トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン(北興化学工業株式会社製、TPAP)
実施例における評価方法は以下のとおりである。
相溶性(ヘイズ値):
ジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物)がエポキシ樹脂中に均一に溶融しているかどうかはヘイズ値により判断した。具体的には、エポキシ樹脂組成物を無色透明のガラス製シャーレに厚み2mmになるように入れ、村上色彩技術研究所製のヘイズ標準板を参考に、ヘイズ値を「5%未満(<5)」「5%以上10%未満(<10)」「10%以上20%未満(<20)」「20%以上30%未満(<30)」「30%以上(30<)」の5段階で評価した。ヘイズ値が30%未満であれば、ジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物)がエポキシ樹脂中に均一に溶解していると判断できる。
エポキシ当量:
JIS K7236規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。具体的には、電位差滴定装置を用い、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用いた。
重量平均分子量(Mw):
重量平均分子量(Mw)はGPC測定により求めた。具体的には、本体HLC8320GPC(東ソー株式会社製)にカラム(TSKgel SuperH-H、SuperH2000、SuperHM-H、SuperHM-H、以上東ソー株式会社製)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1.0mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料は固形分で0.1gを10mLのTHFに溶解し、0.45μmのマイクロフィルターでろ過したものを50μL使用した。標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PStQuick A、PStQuick B、PStQuick C)より求めた検量線より換算して、Mwを求めた。なお、データ処理は東ソー株式会社製、GPC8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
ゲル分率:
エポキシ樹脂組成物を160℃のオーブンで1時間加熱し、得られた重合物(樹脂板)を直径1mm程度以下まで粉砕し、ガラス製の100mLのバイアル瓶に約1g精秤し、50mLのテトラヒドロフランを加え、室温で超音波拡散を1時間行った後、23時間以上室温で静置して溶解した。また、500メッシュ(0.028mm)の金網を100℃のオーブンで1時間乾燥し、その重量を測定した。500メッシュの金網を漏斗形状に折り、試料溶液を全量漏斗の上に流し込んだ。バイアル瓶に試料の不溶解物が残らなくなるまでテトラヒドロフランで洗浄して漏斗に流し込んだ後、さらにメッシュ上の不溶解物とメッシュをテトラヒドロフランで洗浄してから100℃のオーブンで4時間以上乾燥させた。乾燥した試料とメッシュの重量からメッシュの乾燥重量を引き、これを試料重量で除してゲル分率を%で求めた。ゲル分率が10%以下であれば、溶剤溶解性は良好と判定できる。
貯蔵弾性率:
重合物(樹脂板)の貯蔵弾性率は、DMA測定により求めた。具体的には、幅10mm×長さ20mm×厚さ4mmに切削して測定用サンプルを作製し、粘弾性装置DMA7100(株式会社 日立ハイテクサイエンス製)により測定した。測定は、温度25~50℃、窒素雰囲気(流量300mL/分)、曲げモード、周波数1GHzにて実施し、30℃における貯蔵弾性率E’で評価した。
曲げ強度及び曲げ弾性率:
強化繊維プラスチックの曲げ強度及び曲げ弾性率については、JIS K7074に従って、曲げ荷重の入力に対して90度(直角)方向で測定した。試験機は(島津サイエンス製オートグラフAGS-X)を使用し、サンプルの寸法は厚さ2mm、長さ100mm、幅15mmとし、曲げスパンは70mmとし、試験速度1mm/minにて試験を実施した。
合成例1(複素多環基含有エポキシ樹脂A3の合成)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び水分離器を備えた反応装置に、室温下で、イソソルビド(三菱ケミカル株式会社製、水酸基当量73)73部、エピクロロヒドリン1388部、及びエチレングリコールジメチルエーテル278部を仕込み、窒素ガスを流し、撹拌しながら50℃まで昇温した。同温度を保持し、激しく撹拌しながら、99%水酸化ナトリウム60.6部を1時間かけて投入し、さらに同温度で6時間反応を行った。濾過により生成した塩を除き、エピクロロヒドリンを留去した後、トルエン300部に溶解した。80℃まで昇温後、49%水酸化ナトリウム水溶液を3.6部、約80℃の温水を5.2部加えて、同温度で2時間精製反応を行った。その後温水75部を用いて水洗、分液を3回繰り返した後、樹脂溶液を脱水濾過し、トルエンを減圧蒸留除去して、エポキシ樹脂A3を得た。
合成例2(複素環含有フェノール化合物の合成)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び水分離器を備えた反応装置に、室温下で、4-ヒドロキシベンズアルデヒド244部、ペンタエリスリトール136部、トルエン900部、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)90部、及びp-トルエンスルホン酸3.8部を仕込み、窒素ガスを流し、撹拌しながら、トルエンの還流温度(107~112℃)まで昇温した。還流温度を維持しながら10時間反応を行った。この間に生成した水はトルエンと共に系外へ留去した。反応終了後、系内の温度を80℃に下げ、15%水酸化ナトリウム水溶液4部を添加して、p-トルエンスルホン酸を中和した。次いで、トルエン及びDMFを減圧蒸留留去して、下記式(9)のフェノール化合物を得た。
Figure 2024121552000017
合成例3(複素環含有ジカルボン酸化合物B1の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置に酸無水物として4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、リカシッドMH-T、酸無水物当量168)84.0部とイソソルビド(三菱ケミカル株式会社製、水酸基当量73)36.5部との混合物を窒素ガス雰囲気中で撹拌しながら120℃で3時間反応させて複素環含有ジカルボン酸B1を120.5部得た。
合成例4(複素環含有ジカルボン酸化合物B2の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置に酸無水物として4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、リカシッドMH-T、酸無水物当量168)84.0部と式(9)のフェノール化合物(水酸基当量172)86.0部との混合物を窒素ガス雰囲気中で撹拌しながら120℃で3時間反応させて複素環含有ジカルボン酸B2を170.0部得た。
合成例5(ジカルボン酸化合物B4の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置に酸無水物として4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、リカシッドMH-T、酸無水物当量168)84.0部と2官能フェノール化合物C1(水酸基当量114)57.0部の混合物とを窒素ガス雰囲気中で撹拌しながら120℃で3時間反応させてジカルボン酸化合物B4を141.0部得た。
合成例6(複素多環基含有ジカルボン酸化合物B5の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置に酸無水物として無水マレイン酸(富士フィルム和光純薬株式会社製、酸無水物当量98)49.0部とイソソルビド(三菱ケミカル株式会社製、水酸基当量73)36.5部との混合物を窒素ガス雰囲気中で撹拌しながら120℃で3時間反応させてジカルボン酸化合物B5を115.5部得た。
合成例7(複素多環基含有ジカルボン酸化合物B6の合成)
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置に酸無水物として無水マレイン酸(富士フィルム和光純薬株式会社製、酸無水物当量98)49.0部と式(9)のフェノール化合物(水酸基当量172)86.0部との混合物を窒素ガス雰囲気中で撹拌しながら120℃で3時間反応させてジカルボン酸化合物B6を135.0部得た。
実施例1
2官能エポキシ樹脂A1を100部、ジカルボン酸化合物B1を123部それぞれはかりとり、ヘンシェルミキサーを用いて粉砕混合後、金属缶内に封入した。続いて180℃に予熱した熱風循環式オーブン内に金属缶を30分静置して樹脂を溶解後、室温まで冷却させ、エポキシ樹脂組成物の前駆体混合物を得た。得られた前駆体混合物のヘイズ値は10%未満であり、均一に溶解していた。
80℃に予熱した前駆体混合物100部をディスポカップにはかりとり、重合触媒D1を0.1部加え、自転・公転式ミキサー(株式会社シンキ-製、あわとり練太郎、ARV-310)を用い、真空条件下(真空度4kPa)、回転速度2000rpmで、2分間混合した。混合後は速やかに抜き出して、直ちに40℃以下に冷却して、エポキシ樹脂組成物E1を得た。得られたエポキシ樹脂組成物E1のヘイズ値は10%未満であり、均一に溶解していた。
得られたエポキシ樹脂組成物E1を再度80℃に加温して、あらかじめクリアランスを4mmにセットした鉄製クロムメッキ金型容器に流し込み、熱風循環式オーブン内で180℃、60分間熱重合を行い、重合物(樹脂板)を得た。得られた重合物のエポキシ当量は17,000g/eq.であり、Mwは74,000であった。ゲル分率は5%であった。また、貯蔵弾性率は2.5GPaであった。
また、得られたエポキシ樹脂組成物E1を80℃に加温し、所定の温度に予熱したアプリケーターを用いて、フィルム基材としての離型紙(リンテック株式会社製、炭素繊維複合材料用工程紙)に塗工して樹脂フィルムF1の塗膜を得た。
得られた樹脂フィルムの樹脂組成物の膜厚は45μmであった。
得られた樹脂フィルムF1の樹脂組成物塗布面に対して、炭素繊維(東レ株式会社製、T700-12K-50C)を平行に並べ、更にもう一枚の樹脂フィルムの樹脂組成物塗布面を重ねてサンドイッチ構造にした。これを100℃の熱ロールに通して含浸し、樹脂含有率Rcが35%の一方向(UD)プリプレグを得た。
更に、得られたUDプリプレグを繊維の配向方向を同一にして13枚積層した後、離型フィルムで挟み込み、真空プレス機を用いて160℃、0.1MPa、240分の条件で真空プレスを行い、UD繊維強化プラスチックを得た。得られたUD繊維強化プラスチックの曲げ強度は138MPaであり、曲げ弾性率は8.1GPaであった。
実施例2~4、比較例1~8
表1の処方の配合量(部)で配合し、実施例1と同様の操作で、前駆体混合物、エポキシ樹脂組成物、重合物、樹脂フィルム、UDプリプレグ、及びUD繊維強化プラスチックを得た。実施例1と同様の評価を行い、それぞれの評価結果を表1に示した。C1、C2を用いる場合には、前駆体混合物を調製する段階で添加している。表中の「モル比」は、ジカルボン酸化合物(及び2官能フェノール化合物、ジオール化合物)の官能基に対するエポキシ樹脂のエポキシ基の当量比を表す。なお、比較例1のみ、ジカルボン酸化合物が溶融せず、均一なエポキシ樹脂組成物の前駆体混合物が得られなかったため、以降の操作を実施しなかった。また、比較例3は、加熱による重合及び真空プレス機による硬化が進行せず、熱可塑性エポキシ樹脂及びUD繊維強化プラスチックを得られなかったため、DMA測定及び曲げ試験を実施しなかった。比較例8は、加熱による重合で得られた熱可塑性エポキシ樹脂が脆く、DMA測定を実施しなかった。
Figure 2024121552000018

Claims (9)

  1. 2官能エポキシ樹脂、ジカルボン酸化合物及び重合触媒を含むエポキシ樹脂組成物であって、
    前記ジカルボン酸化合物は下記一般式(1)で表され、2官能エポキシ樹脂の1モルに対してジカルボン酸化合物は0.90~1.1モルであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2024121552000019
    ここで、Xは2つ以上の酸素原子を含む2価の複素多環基であり、Yは独立に2価の環式炭化水素基である。
  2. 上記一般式(1)中のXが下記式(3a)又は式(3b)で表される複素多環基を含む請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2024121552000020
    ここで、Aは独立に炭素数1~6のアルキレン基、又はベンゼン環もしくはナフタレン環のいずれかの芳香族環基である。
  3. 重合触媒の含有量が、2官能エポキシ樹脂とジカルボン酸化合物との総量100重量部に対して、0.001~10重量部である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 有機溶剤を含まないか、又は有機溶剤を含む場合は、有機溶剤の含有量がエポキシ樹脂組成物の0.01重量%以上10重量%以下であり、85℃における粘度が0.1Pa・s以上100Pa・s以下であり、2官能エポキシ樹脂とジカルボン酸化合物とが均一に溶解していることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有することを特徴とする強化繊維含有エポキシ樹脂組成物。
  6. 強化繊維としての炭素繊維を20~80重量%の割合で含む請求項5に記載の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項5に記載の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物からなるプリプレグ。
  8. 請求項5に記載の強化繊維含有エポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化プラスチック。
  9. 請求項7に記載のプリプレグを用いた繊維強化プラスチック。

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