JP2024092966A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐擦過性及び発色性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット用の水性インクを提供する。【解決手段】インクジェット用の水性インクである。顔料、ワックス、ワックスを分散させるための分散剤、リン酸エステル型界面活性剤、及びアミン化合物を含有し、顔料が、カルボン酸基、及びスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の作用によって分散される顔料であり、リン酸エステル型界面活性剤が、脂肪族アルコールアルコキシレート部位を含み、ワックスの体積基準の累積50%粒子径が、顔料の体積基準の累積50%粒子径に対する比率で、0.10倍以上2.0倍以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、家庭及びオフィスにおける文書の印刷だけでなく、商業印刷や産業印刷などにも広く利用されている。特に、近年、ポスターや広告の印刷に適した大判インクジェットプリンターが普及している。このような用途には、耐ガス性、耐光性、及び耐水性などの堅牢性が向上した画像を記録することを目的として、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)が広く使用されている。
但し、顔料インクで記録した画像は、一般的に、色材として染料を含有するインク(染料インク)で記録した画像に比して発色性に劣ることが知られている。また、色材である染料が記録媒体の内部にまで浸透する染料インクと異なり、顔料インクの場合、色材である顔料が記録媒体の表面に堆積するため、外的な力により画像が削れたり、剥がれたりしやすいことがある。したがって、ポスターや広告用の画像を記録する場合には、画像の画質を高めることだけでなく、画像の耐擦過性を向上させることも要求されている。
これらの要求に応えるべく、近年、種々のインクが提案されている。例えば、耐擦過性が向上した画像を記録すべく、鎖式炭化水素からなるポリオレフィンなどのワックスを含有するインクが提案されている(特許文献1~3)。特許文献1~3で提案されたインクは、ワックスを含有させることで、記録される画像の表面に滑り性を付与し、摩擦抵抗を低下させ、画像の耐擦過性を向上させている。
特開2019-202419号公報 特開2015-168805号公報 米国特許第10829658号明細書
本発明者らは、特許文献1~3で提案されたインクで記録した画像の特性について検討した。その結果、特許文献1及び2で提案されたインクを用いた場合、画像の耐擦過性がある程度向上するものの十分ではないことが判明した。また、特許文献3で提案されたインクを用いた場合、画像の耐擦過性が良好である一方で、画像の発色性が低く、改善の余地があることが判明した。画像の発色性を向上すべく、凝集性の低い水溶性アクリル樹脂や水溶性ウレタン樹脂をインクに添加してさらに検討したが、画像の発色性を高めることはできなかった。
したがって、本発明の目的は、耐擦過性及び発色性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット用の水性インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、顔料、ワックス、前記ワックスを分散させるための分散剤、リン酸エステル型界面活性剤、及びアミン化合物を含有するインクジェット用の水性インクであって、前記顔料が、カルボン酸基、及びスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の作用によって分散される顔料であり、前記リン酸エステル型界面活性剤が、脂肪族アルコールアルコキシレート部位を含み、前記ワックスの体積基準の累積50%粒子径が、前記顔料の体積基準の累積50%粒子径に対する比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを特徴とする水性インクが提供される。
本発明によれば、耐擦過性及び発色性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット用の水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を示す。
本発明者らは、特許文献1~3で提案された構成のインクを用いても、画像の発色性が得られない原因を調査すべく、記録した画像の内部を解析した。その結果、ワックスによって、画像の内部に形成される空隙が増加するとともに、入射光の散乱が増大し、画像の発色性が低下することが判明した。そして、画像内部の空隙を抑制すべく粒子径の小さなワックスを用いると、空隙が減少して画像の発色性が向上する一方で、画像の耐擦過性が低下することがわかった。これは、粒子径の小さなワックスが画像の下層に沈み込みやすくなり、画像の表面を十分に保護できなくなるためであると考えている。以上の検討結果から、顔料を色材として含有するインクで記録した画像の耐擦過性と発色性を高いレベルで両立させることは困難であることが判明した。
そこで、本発明者らは、耐擦過性及び発色性に優れた画像を記録しうる、顔料を色材とするインクの構成について検討するに際し、まず、粒子径の小さいワックスを使用し、空隙の発生を抑制しつつ、ワックスを画像の表面に残存させることに着目した。具体的には、ワックスを画像の表面で凝集させるべく、ワックスの凝集力を制御する界面活性剤や添加剤について検討した。その結果、以下の内容を見出した。すなわち、ワックスの体積基準の累積50%粒子径が、顔料の体積基準の累積50%粒子径に対する比率で0.10倍以上2.0倍以下とする。さらに、脂肪族アルコールアルコキシレート部位を含むリン酸エステル型界面活性剤(以下、単に「リン酸エステル型界面活性剤」とも記す)及びアミン化合物を含有させる。この場合に、画像の耐擦過性及び発色性が良好となることを見出した。
リン酸エステル型界面活性剤の脂肪族アルコールアルコキシレート部位の脂肪族の構造は、ワックスの骨格と類似するため、リン酸エステル型界面活性剤は、ワックスの表面に選択的に吸着する。このため、ワックス及びリン酸エステル型界面活性剤を含むインクを用いると、ワックスが画像の表面に残存しやすくなり、画像の耐擦過性が向上する。ワックスに吸着したリン酸エステル型界面活性剤は、カルボン酸基やスルホン酸基の作用によって分散される顔料に比して、より速やかにプロトン化する。リン酸基のpKaは、カルボン酸基やスルホン酸基のpKaに比して高く、リン酸基はプロトンを受け入れやすい。このため、画像記録の際の液体成分の蒸発や浸透に伴い、酸基とプロトンの分子間距離が接近した際に、カルボン酸基やスルホン酸基に比して、リン酸基はプロトン化しやすい。リン酸エステル型界面活性剤がプロトン化されると、静電的な反発力を失い、インクの液体成分との親和性が低下するため、ワックスの流動性が失われる。これにより、インクが記録媒体に浸透する流れに乗れなくなったワックスが画像の表面に留まりやすくなる。
しかし、粒子径の小さいワックスを用いたにも関わらず、画像の発色性が得られないことが判明した。リン酸エステル型界面活性剤のリン酸基がプロトン化すると、ワックスの凝集力は強くなる。顔料のプロトン化はゆっくりと進行するため、ワックスの凝集力は、顔料の凝集力よりも強い状態となっている。このため、顔料に対してワックスの凝集が比較的早く進行し、ワックスが凝集した凝集物が形成される。形成されるワックスの凝集物は粒子径が大きいため、画像内部の空隙が増加し、画像の発色性が低下したと考えられる。
次に、本発明者らは、画像の発色性を向上させるべく、ワックスの凝集力を抑制するため、ワックス及びリン酸エステル型界面活性剤を含有するインクに緩衝液を添加することについて検討した。緩衝液とは、周囲の環境変化に対しても、pHがほとんど変化しない(緩衝作用を有する)液体である。緩衝液としては、汎用的な緩衝液である、ホウ酸-塩化カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液、及び炭酸水素ナトリウム-水酸化ナトリウム緩衝液を用いた。その結果、いずれの緩衝液を添加した場合も画像の発色性は向上したが、画像の耐擦過性が低下することが判明した。緩衝液の添加により、緩衝作用が生ずるため、リン酸エステル型界面活性剤は、電離し分子全体として負電荷を帯びた状態を維持しやすくなる。そして、インク液滴が記録媒体に付与され、液体成分の蒸発や浸透が進行しても、緩衝作用によってインクのpHは変化しにくいため、ワックスを分散させるための分散剤及びリン酸エステル型界面活性剤のプロトン化が進行しにくくなる。その結果、静電的な反発力がより強く作用し、ワックスの凝集力が弱くなり、凝集物が形成されにくくなるため、画像内部の空隙が減少し、画像の発色性が向上したと考えられる。一方、ワックスを分散させるための分散剤及びリン酸エステル型界面活性剤のプロトン化が進行しにくい状態で画像が記録されるので、ワックスは画像の表面に残存しにくくなり、画像の内部へ浸透しやすいため、画像の耐擦過性が低下したと考えられる。
さらなる検討の結果、本発明者らは、ワックス及びリン酸エステル型界面活性剤を含有するインクにアミン化合物を添加することで、画像の耐擦過性及び発色性がいずれも向上することを見出した。アミン化合物を含有するインク中では、アミン化合物を含有しないインク中に比して、リン酸エステル型界面活性剤がより解離し、負電荷を帯びやすい。このため、インク液滴が記録媒体に付与された直後に静電的な反発力がより強く作用し、ワックスの凝集力が弱くなり、ワックスの凝集物が形成されにくくなる。さらに、リン酸エステル型界面活性剤のアルコールアルコキシレート部位が水和することで、ワックスの凝集物がより形成されにくくなると考えられる。その後、液媒体の蒸発や浸透に伴ってアミン化合物とリン酸エステル型界面活性剤が接近すると、アミン化合物とリン酸エステル型界面活性剤が難溶性塩を形成する。
pKaの観点から、アミン化合物は、カルボン酸基やスルホン酸基よりもリン酸基と塩を形成しやすい。このため、アミン化合物は、顔料よりもリン酸エステル型界面活性剤と塩を形成しやすい。アミン化合物とリン酸エステル型界面活性剤によって形成される難溶性塩は、負電荷が中和されるため、静電的な反発力を発揮できず、液媒体との親和性が低下している。そのため、難溶性塩の形成に伴い、ワックスの凝集力が急激に高まると考えられる。その結果、ワックスが画像内部に沈み込みにくくなり、画像の表面に残存しやすくなる。また、リン酸塩は、カルボン酸塩やスルホン酸塩に比して溶解性が低いため、アミン化合物は、顔料よりもワックスと液体成分との親和性を低下させやすいと考えられる。さらに、液体成分の蒸発や浸透に伴い、顔料のプロトン化も進行し、顔料の凝集力も強くなりつつある。このため、ワックスと顔料の凝集力の差は、小さくなる。その結果、顔料の凝集とワックスの凝集がいずれも進行し、ワックス同士の間に顔料が入り込んで、ワックスのみの凝集物が形成されにくくなる。これにより、画像中に空隙が形成されにくくなって画像の発色性が向上するとともに、ワックスが画像の表面に残存し、画像の耐擦過性が向上すると考えられる。
ワックスの体積基準の累積50%粒子径は、顔料の体積基準の累積50%粒子径に対する比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを要する。上記比率が0.10倍未満であると、ワックスが画像内部に沈み込みやすく、かつ、ワックスが潰れて広がりにくくなる。このため、外的な力を逃がしにくくなり、画像の耐擦過性が得られない。一方、上記比率が2.0倍超であると、画像の内部に空隙が形成されやすくなるとともに、ワックスによって光が散乱しやすくなり、画像の発色性が得られない。
<インク>
本発明のインクは、顔料、ワックス、ワックスを分散させるための分散剤、リン酸エステル型界面活性剤、及びアミン化合物を含有するインクジェット用の水性インクである。以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性について詳細に説明する。
(顔料)
インクは、色材として顔料を含有する。インク中の、顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.50質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イミダゾロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料などの有機顔料;を挙げることができる。
顔料を分散方式で分類すると、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを挙げることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを挙げることができる。なお、着色剤で染着された樹脂粒子を色材として用いる必要はない。
本発明のインクに用いる顔料は、カルボン酸基、及びスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の作用によって分散される顔料である。
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂(樹脂分散剤)は、カルボン酸基及びスルホン酸基の少なくとも一方を有する。なかでも、顔料は、カルボン酸基を有する樹脂(樹脂分散剤)によって分散される樹脂分散顔料であることが好ましい。スルホン酸基を有する樹脂分散剤は、親水性がやや高いために顔料に吸着しにくいことがあり、顔料の凝集力が強くなりやすく、画像の発色性が十分に得られない場合がある。また、スルホン酸基を有する樹脂分散剤が顔料に吸着しにくいと、顔料の粒子表面における吸着部位が増加するとともに、リン酸エステル型界面活性剤が顔料に吸着しやすくなる。これにより、顔料の凝集力と、ワックスの凝集力との差がつきにくくなり、画像の耐擦過性が十分に得られない場合がある。また、カルボン酸基で分散される自己分散顔料であると、画像の耐擦過性及び発色性が十分に得られない場合がある。インク中の、顔料の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.30倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
樹脂分散剤は、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有する樹脂であることが好ましい。また、樹脂分散剤は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットや、(メタ)アクリルエステルに由来するユニットなどのアクリル成分を少なくとも有するアクリル樹脂であることが好ましく、水溶性のアクリル樹脂であることがさらに好ましい。
特に、ランダム共重合体の形態である、水溶性のアクリル樹脂が好適である。
親水性ユニットは、酸基やヒドロキシ基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有するモノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシ基を有する酸性モノマー、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基を有する酸性モノマー、及びこれらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有するモノマー;メトキシ(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートなどのエチレンオキサイド基を有するモノマーなどを挙げることができる。アニオン性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。樹脂の酸価は、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
自己分散顔料は、顔料の粒子表面にカルボン酸基及びスルホン酸基の少なくとも一方が直接又は他の原子団(-R-)を介して結合したものである。カルボン酸基及びスルホン酸基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。カルボン酸基及びスルホン酸基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(-R-)の具体例としては、炭素数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
顔料の体積基準の累積50%粒子径は、40nm以上400nm以下であることが好ましく、45nm以上350nm以下であることがさらに好ましい。顔料の「体積基準の累積50%粒子径(D50)」は、粒子径積算曲線において、測定された粒子の総体積を基準として、小粒子径側から積算して50%となる粒子の直径である。この「体積基準の累積50%粒子径(D50)」は、動的光散乱法による粒度分布測定装置を使用して測定することができる。測定方法について、詳細は後述する。
(ワックス)
インクは、ワックス及びワックスを分散させるための分散剤を含有する。ワックスは、ワックス以外の成分が配合された組成物であっても、ワックスそのものであってもよい。ワックスは、ワックス粒子として、界面活性剤や樹脂などの分散剤によって分散されるものであってもよい。本明細書における「ワックス粒子」とは、ワックスで形成される粒子を意味する。ワックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックスを挙げることができる。
ワックス(蝋)は、狭義には、水に不溶な高級1価又は2価アルコールと、脂肪酸とのエステルであり、動物系ワックス及び植物系ワックスは含まれるが、油脂及び脂肪は含まない。広義には、高融点の脂肪、鉱物系ワックス、石油系ワックス、及び各種ワックスの配合物や変性物が含まれる。本発明の記録方法では、広義のワックスであれば特に制限なく用いることができる。広義のワックスは、天然ワックス、合成ワックス、これらの配合物(配合ワックス)、及びこれらの変性物(変性ワックス)に分類することができる。
天然ワックスとしては、動植物系ワックス、植物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックスなどを挙げることができる。動植物系ワックスとしては、ラノリン、みつろう、鯨ろう、イボタろうなどを挙げることができる。植物系ワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ろう、オリキュリーワックス、サトウキビろう、パームワックスなどを挙げることができる。鉱物系ワックスとしては、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、リグナイトワックスなどを挙げることができる。石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどを挙げることができる。
合成ワックスとしては、合成炭化水素系ワックス、変性ワックス、水素化ワックスなどを挙げることができる。合成炭化水素系ワックスとしては、ポリオレフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックスなどを挙げることができる。変性ワックスは、上記の各種ワックスを、酸化、水素添加、アルコール変性、アクリル変性、ウレタン変性などの変性処理をしたものである。変性ワックスとしては、具体的には、パラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体などを挙げることができる。水素化ワックスとしては、カスターワックス、オパールワックスなどを挙げることができる。
ワックスは、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、及びセレシンからなる群より選ばれる少なくとも1種のワックスであることが好ましい。また、これらのワックスは、変性物や配合物であってもよい。これらのワックスは、その骨格にエステル部位やカルボキシル部位が含まれていないため、結晶性の高いワックスとなりやすい。結晶性の高いワックスを用いることで、外力が加わった際に、結晶界面が滑り広がることで力を逃がしやすくなり、耐擦過性により優れた画像を記録することができる。
ワックスの体積基準の累積50%粒子径は、顔料の体積基準の累積50%粒子径に対する比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを要する。なかでも、0.20倍以上1.5倍以下であることが好ましい。本明細書において、単に「平均粒子径」というときは「体積基準の累積50%粒子径(D50)」を意味する。ワックスの「体積基準の累積50%粒子径」は、粒子径積算曲線において、測定された粒子の総体積を基準として、小粒子径側から積算して50%となる粒子の直径である。この「体積基準の累積50%粒子径(D50)」は、動的光散乱法による粒度分布測定装置を使用して測定することができる。動的光散乱法による粒度分布測定装置としては粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.59、とすることができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。ワックスの体積基準の累積50%粒子径は、20nm以上200nm以下であることが好ましく、30nm以上150nm以下であることがさらに好ましい。
インク中の、ワックス、及びワックスを分散させるための分散剤の合計含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.005倍以上0.20倍以下であることが好ましく、0.01倍以上0.05倍以下であることがさらに好ましい。上記質量比率が0.005倍未満であると、顔料に対するワックス、及びワックスを分散させるための分散剤の合計含有量が相対的に少なく、ワックスが顔料を保護しにくくなるため、画像の耐擦過性が十分に得られない場合がある。一方、上記質量比率が0.20倍超であると、ワックスによって入射光が散乱しやすくなることがあり、画像の発色性が十分に得られない場合がある。インク中の、ワックス、及びワックスを分散させるための分散剤の合計含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.010質量%以上1.50質量%以下であることが好ましく、0.030質量%以上1.00質量%以下であることがさらに好ましい。
(リン酸エステル型界面活性剤)
インクは、脂肪族アルコールアルコキシレート部位を含むリン酸エステル型界面活性剤を含有する。脂肪族アルコールアルコキシレート部位とは、ポリアルキレンオキサイドと脂肪族炭化水素とが結合した部位を意味する。ポリアルキレンオキサイドは、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、及びポリブチレンオキサイドなどを挙げることができる。なかでも、ポリエチレンオキサイド、又はポリプロピレンオキサイドであることが好ましく、ポリエチレンオキサイドであることがさらに好ましい。リン酸エステル型界面活性剤中のリン酸基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。リン酸基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。リン酸エステル部位は、モノエステル及びジエステルのいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。インク中の、上記リン酸エステル型界面活性剤の含有量(質量%)は、0.10質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上2.00質量%以下であることがさらに好ましい。インク中の、界面活性剤の合計含有量(質量%)は、0.10質量以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上2.50質量%以下であることが好ましい。
リン酸エステル型界面活性剤は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。Rで表される鎖式炭化水素基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。なかでも、ワックスとの吸着を考慮すると、直鎖であることが好ましい。また、置換基を有しないことが好ましい。さらに、飽和鎖式炭化水素基であっても、二重結合や三重結合をもつ不飽和鎖式炭化水素基であってもよい。下記一般式(1)中、Rで表される鎖式炭化水素基の炭素数が12未満、又はaが10超であると、親水性が過度に上昇することがあるため、ワックスが画像の表面に残存しにくくなり、画像の耐擦過性が十分に得られない場合がある。一方、下記一般式(1)中、Rで表される鎖式炭化水素基の炭素数が24超であると、疎水性が過度に上昇することがある。このため、ワックス同士が接近することで画像中に空隙が形成されやすくなり、画像の発色性が十分に得られない場合がある。
Figure 2024092966000001
(前記一般式(1)中、Rは炭素数12以上24以下の鎖式炭化水素基を表し、aは1以上10以下の整数を表す)
リン酸エステル型界面活性剤は、下記一般式(2)で表される化合物であることがさらに好ましい。下記一般式(2)で表されるリン酸エステル型界面活性剤を用いると、親水性の観点から画像の耐擦過性をより向上させることができるとともに、疎水性の観点から画像の発色性をより向上させることができる。また、下記一般式(2)で表される構造は、二重結合を含むために折れ曲がり構造となっており、折れ曲がらない直鎖構造の飽和炭化水素に比して柔軟性が高い。このため、下記一般式(2)で表されるリン酸エステル型界面活性剤はワックスにより吸着しやすいとともに、ワックスの凝集力が過度に強くなるのを抑制することができる。したがって、下記一般式(2)で表されるリン酸エステル型界面活性剤を用いることで、画像内の空隙の発生がさらに抑制されるとともに、ワックスが画像の表面により残存しやすくなり、画像の耐擦過性及び発色性をさらに高めることができる。一般式(2)中、aは3以上5以下であることが特に好ましい。
Figure 2024092966000002
(前記一般式(2)中、aは1以上10以下の整数を表す)
(アミン化合物)
インクは、アミン化合物を含有する。アミン化合物としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノール、N-ジメチルエタノール、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、3-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、及びN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸などを挙げることができる。なかでも、アミン化合物は、アルカノールアミンであることが好ましい。アルカノールアミンとしては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノール、N-ジメチルエタノール、ジシクロヘキシルアミン、及びジメチルシクロヘキシルアミンなどを挙げることができる。その分子中にヒドロキシ基を含まないアミン化合物は、親水性がやや低い。このため、その分子中にヒドロキシ基を含まないアミン化合物を用いると、ワックスの凝集力が強くなる場合があり、画像内に空隙が発生しやすくなり、画像の発色性が十分に得られない場合がある。
アミン化合物は、トリエタノールアミンであることがさらに好ましい。1級及び2級のアルカノールアミンは、塩基性度が高く、記録媒体表面のプロトンを引き抜きやすい。アルカノールアミンによって記録媒体表面のプロトンが引き抜かれると、プロトンと反応することで凝集する顔料の凝集速度が低下し、ワックスの凝集力が、顔料の凝集力に比して強くなりやすい。これにより、ワックスの凝集物が形成されて画像内に空隙が発生しやすくなり、画像の発色性が十分に得られない場合がある。アルカノール基が、トリエタノール基よりも長鎖のトリアルカノール基であると、炭素鎖が長いために疎水性が高くなり、ワックスの凝集力が強くなることがある。このため、ワックスが凝集して画像内に空隙が発生しやすくなり、画像の発色性が十分に得られない場合がある。これに対して、アミン化合物としてトリエタノールアミンを用いると、他のアミン化合物を用いる場合に比して、画像内に空隙がより発生しにくくなる。そして、ワックスが画像の表面にさらに残存しやすくなり、画像の耐擦過性及び発色性をさらに高めることができる。
インク中の、アミン化合物の含有量(モル%)は、リン酸エステル型界面活性剤の含有量(モル%)に対するモル比率で、1.0倍以上5.0倍以下であることが好ましく、1.5倍以上3.0倍以下であることがさらに好ましい。上記モル比率が1.0倍未満であると、リン酸エステル型界面活性剤が負の電荷を持ちにくくなり、リン酸エステル型界面活性剤の凝集力が強くなりやすい。その結果、画像内に空隙が発生しやすくなることがあり、画像の発色性が十分に得られない場合がある。一方、上記モル比率が5.0倍超であると、アミン化合物がリン酸エステル型界面活性剤の近くに常に存在する状態となりやすい。このため、アミン化合物とリン酸エステル型界面活性剤による難溶性塩の形成速度が速く、ワックスの凝集力が、記録直後から強くなりやすい。これにより、ワックスの凝集力が、顔料の凝集力に比して過度に強い状態となりやすく、ワックス同士の間に顔料が入り込みにくくなる。その結果、ワックスの凝集物が形成されやすくなって、画像内に空隙が発生しやすくなることがあり、画像の発色性が十分に得られない場合がある。インク中の、アミン化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上1.50質量%以下であることが好ましく、0.20質量%以上1.00質量%以下であることがさらに好ましい。
(水性媒体)
本発明のインクは、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する水性インクである。水としては脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の、水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、含窒素化合物類、及び含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。インク中の、水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲外であると、インクジェット用の水性インクとしての耐固着性などの信頼性がやや低下する場合がある。
(その他の成分)
インクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、25℃で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、インクには、必要に応じて、リン酸エステル型界面活性剤以外の界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
(インクの物性)
本発明のインクは、インクジェット方式に適用する水性インクである。したがって、信頼性の観点から、その物性値を適切に制御することが好ましい。25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがさらに好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることが特に好ましい。また、25℃におけるインクの表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましく、30mN/m以上50mN/m以下であることが特に好ましい。25℃におけるインクのpHは、5.0以上10.0以下であることが好ましく、7.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明の水性インクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。
さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<物性値の測定方法>
(顔料及びワックスの体積基準の累積50%粒子径D50
顔料の分散液及びワックス粒子(ワックスで形成される粒子)の分散液をそれぞれ純水で希釈して、試料を調製した。動的光散乱法による粒度分析計を使用し、調製した試料中の粒子の体積基準の累積50%粒子径(顔料の累積50%粒子径(DP50)、ワックスの累積50%粒子径(DW50))をそれぞれ測定した。測定条件は、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.50、とした。動的光散乱法による粒度分析計としては、商品名「ナノトラックUPA-EX150」(日機装製)を使用した。
(樹脂の酸価)
樹脂を水中に分散又は溶解させて試料を調製した。調製した試料を、電位差自動滴定装置を使用し、メチルグリコールキトサン200/N滴定液(富士フイルム製)で電位差滴定して、樹脂1g当たりのアニオン性官能基数を算出した。算出したアニオン性官能基数をKOH質量に換算し、樹脂の酸価(mgKOH/g)とした。電位差自動滴定装置としては、商品名「AT510」(京都電子工業製)を使用した。
<共重合体の合成>
(スチレン-アクリル酸共重合体)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコを用意した。エチレングリコールモノブチルエーテル100.00部を用意したフラスコに入れるとともに、窒素ガスを導入し、撹拌しながら110℃に昇温させた。スチレン39.50部、メチルメタクリレート40.00部、及びアクリル酸21.00部の混合物と、t-ブチルパーオキサイド(重合開始剤)1.30部のエチレングリコールモノブチルエーテル溶液とを、3時間かけてそれぞれ滴下した。2時間エージングした後、エチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して固形のスチレン-アクリル酸共重合体を得た。得られたスチレン-アクリル酸共重合体に、酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を添加し、80℃に加熱して中和溶解させた。これにより、樹脂(固形分)の含有量が20.00%であるスチレン-アクリル酸共重合体の水溶液を得た。得られたスチレン-アクリル酸共重合体の酸価は170mgKOH/gであり、重量平均分子量は8,000であった。なお、用いるアクリル酸の量を適宜変更して、酸価が50mgKOH/g、200mgKOH/gであるスチレン-アクリル酸共重合体の水溶液をそれぞれ得た。
(スチレン-スチレンスルホン酸共重合体)
アクリル酸に代えて、スチレンスルホン酸を用いたこと以外は、前述のスチレン-アクリル酸共重合体の場合と同様にして、樹脂(固形分)の含有量が20.00%であるスチレン-スチレンスルホン酸共重合体の水溶液を得た。得られたスチレン-スチレンスルホン酸共重合体の酸価は170mgKOH/gであり、重量平均分子量は8,000であった。また、用いるスチレンスルホン酸の量を適宜変更して、酸価が50mgKOH/g、200mgKOH/gであるスチレン-スチレンスルホン酸共重合体の水溶液を得た。
(スチレン-2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸共重合体)
アクリル酸に代えて、2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸を用いた。それ以外は、前述のスチレン-アクリル酸共重合体の場合と同様にして、樹脂(固形分)の含有量が20.00%であるスチレン-2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸共重合体の水溶液を得た。2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸としては、商品名「ライトエステルP-1M」(共栄社化学製)を用いた。得られたスチレン-2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸共重合体の酸価は170mgKOH/gであり、重量平均分子量は8,000であった。
<顔料分散液の製造>
(顔料分散液1)
顔料12.00部、樹脂分散剤の水溶液24.00部、及びイオン交換水64.00部を混合して混合物を得た。顔料としては、カーボンブラック(商品名「Black Pearls 880」、キャボット製)を用いた。樹脂分散剤の水溶液としては、酸価170mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-アクリル酸共重合体を、10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た、樹脂(固形分)の含有量が20.00%の水溶液を用いた。得られた混合物をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に入れ、0.3mmのジルコニアビーズ85部を充填し、水冷しながら分散処理した。なお、後述する平均粒子径となるように、分散時間及び分散圧力を適宜調整した。その後、遠心分離処理して、粗大粒子を含む非分散物を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、顔料の含有量が10.00%、樹脂の含有量が4.00%の顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1中の顔料の平均粒子径(DP50)は、65nmであった。
(顔料分散液2)
C.I.ピグメントブルー15:3(商品名「Hostaperm Blue B2G」、クラリアント製)を顔料として用いたこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液2を得た。顔料分散液2中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液2中の顔料の平均粒子径(DP50)は、120nmであった。
(顔料分散液3)
C.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体を顔料として用いたこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液3を得た。C.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体としては、商品名「CROMOPHTAL JET MAGENTA 2BC」(チバスペシャリティケミカルズ製)を用いた。顔料分散液3中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液3中の顔料の平均粒子径(DP50)は、120nmであった。
(顔料分散液4)
C.I.ピグメントイエロー74(商品名「Hansa yellow 5GXB」、クラリアント製)を顔料として用いたこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液4を得た。顔料分散液4中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液4中の顔料の平均粒子径(DP50)は、120nmであった。
(顔料分散液5)
樹脂分散剤の水溶液として、酸価50mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-アクリル酸共重合体を、10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た、樹脂(固形分)の含有量が20.00%の水溶液を用いた。それ以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液5を得た。顔料分散液5中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液5中の顔料の平均粒子径(DP50)は、65nmであった。
(顔料分散液6)
樹脂分散剤の水溶液として、酸価200mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-アクリル酸共重合体を、10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た、樹脂(固形分)の含有量が20.00%の水溶液を用いた。それ以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液6を得た。顔料分散液6中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液6中の顔料の平均粒子径(DP50)は、65nmであった。
(顔料分散液7)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かして得た溶液を5℃に冷却した状態とし、この状態で4-アミノフタル酸(処理剤)1.6gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、撹拌して溶液の温度を10℃以下に保持しながら、5℃のイオン交換水9.0gに亜硝酸ナトリウム0.9gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、カーボンブラック(比表面積260m/g)6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。その後、イオン交換法によりナトリウムイオンをカリウムイオンに置換して、顔料の粒子表面に-C-(COOK)基が結合した自己分散顔料を得た。適量のイオン交換水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が10.00%である顔料分散液7を得た。顔料分散液7中の顔料の平均粒子径(DP50)は85nmであった。
(顔料分散液8)
樹脂分散剤の水溶液として、酸価170mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-スチレンスルホン酸共重合体を、10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た、樹脂(固形分)の含有量が20.00%の水溶液を用いた。それ以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液8を得た。顔料分散液8中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液8中の顔料の平均粒子径(DP50)は、65nmであった。
(顔料分散液9)
樹脂分散剤の水溶液として、酸価50mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-スチレンスルホン酸共重合体を、10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た、樹脂(固形分)の含有量が20.00%の水溶液を用いた。それ以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液9を得た。顔料分散液9中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液9中の顔料の平均粒子径(DP50)は、65nmであった。
(顔料分散液10)
樹脂分散剤の水溶液として、酸価200mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-スチレンスルホン酸共重合体を、10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た、樹脂(固形分)の含有量が20.00%の水溶液を用いた。それ以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液10を得た。顔料分散液10中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液10中の顔料の平均粒子径(DP50)は、65nmであった。
(顔料分散液11~14)
バッチ式縦型サンドミルによる分散時間及び分散圧力を適宜変更したこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液11~14を得た。顔料分散液11~14中の顔料の含有量は、いずれも10.00%であり、樹脂の含有量は、いずれも4.00%であった。また、得られた顔料分散液11~14中の顔料の平均粒子径(DP50)はそれぞれ、50nm、48nm、300nm、及び330nmであった。
(顔料分散液15)
樹脂分散剤の水溶液として、酸価170mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-2-メタクロイルオキシエチルホスホン酸共重合体を10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得た、樹脂(固形分)の含有量が20.00%の水溶液を用いた。それ以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料分散液15を得た。顔料分散液15中の顔料の含有量は10.00%、樹脂の含有量は4.00%であった。また、得られた顔料分散液15中の顔料の平均粒子径(DP50)は、65nmであった。
<ワックス粒子の水分散液の製造>
(ワックス粒子1、7、8の水分散液)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコを用意した。この4つ口フラスコに、イオン交換水225g及びポリエチレンワックス50gを入れ、90~95℃に温度を保持してポリエチレンワックスを溶融させて撹拌した。エチレン-アクリル樹脂を含む液体25gを添加し、90~95℃に保持しながら超音波ホモジナイザーを用いて15分間分散処理を行った後、室温まで冷却して分散物を得た。得られた分散物にイオン交換水を加えてワックス及びその分散剤(固形分)の含有量を10.00%に調整し、ワックス粒子1の水分散液を得た。得られた水分散液中のワックスの平均粒子径(DW50)は、40nmであった。また、表1に記載の平均粒子径となるように、分散処理の時間を適宜変更した以外は、ワックス粒子1の水分散液の製造と同様にして、ワックス粒子7及び8の水分散液を得た。
(ワックス粒子2~6、9~11の水分散液)
表1に示す種類のワックスを用いたこと以外は、前述のワックス粒子1の水分散液の場合と同様にして、ワックス及びその分散剤(固形分)の含有量を10.00%に調整し、ワックス粒子2~6、9~11の水分散液を得た。得られた水分散液中のワックスの平均粒子径(DW50)を表1に示す。ワックスの平均粒子径(DW50)は、超音波ホモジナイザーによる分散処理の時間を変更して調整した。
Figure 2024092966000003
<アクリル樹脂粒子の水分散液の製造>
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えたフラスコに、ブチルメタクリレート18.00部、メタクリル酸0.35部、重合開始剤2.00部、及びn-ヘキサデカン2.00部を入れ、窒素ガスを導入しながら30分間撹拌した。重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(2-メチルブチルニトリル)を用いた。次いで、ポリオキシエチレンセチルエーテル(商品名「NIKKOL BC-20」、日光ケミカルズ製)の6.0%水溶液78.00部を滴下し、30分間撹拌して混合物を得た。超音波照射機を使用し、超音波を3時間照射して混合物を乳化させた後、窒素雰囲気下、80℃で4時間重合反応を行った。25℃まで冷却してろ過した後、適量の純水を添加して、樹脂粒子の含有量が20.00質量%であるアクリル樹脂粒子の水分散液を得た。
<脂肪族アルコールアルコキシレートの製造>
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えたフラスコに、表2に示す種類及び量の脂肪族アルコール、及び水酸化カリウム触媒1.8mmolを入れた。110~120℃で撹拌しながら、表2に示す量のエチレンオキサイド(東京化成工業製)を添加した。反応物を中和した後、ろ過して、脂肪族アルコールアルコキシレート1~13を得た。得られた脂肪族アルコールアルコキシレート1~13の脂肪族部位の炭素数及びエチレンオキサイド(EO)の付加モル数(繰り返し単位数)を表2の右側に示す。
Figure 2024092966000004
<リン酸エステル型界面活性剤の製造>
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えたフラスコに、強リン酸(ラサ工業製)及びN,N-ジメチルホルムアミドを入れ、60℃で撹拌した。表3に示す種類の脂肪族アルコキシレート又は脂肪族アルコールを滴下した後、80℃に昇温して12時間反応させた。次いで、飽和食塩水を添加し、60℃で12時間撹拌してピロリン酸エステルを加水分解して、リン酸エステル型界面活性剤1~14を得た。得られたリン酸エステル型界面活性剤1~14の脂肪族部位の炭素数及びエチレンオキサイドの付加モル数(繰り返し単位数)を表3の右側に示す。リン酸エステル型界面活性剤8は、脂肪族アルコールアルコキシレート部位を含まないリン酸エステル型界面活性剤である。
Figure 2024092966000005
<硫酸エステル型界面活性剤の製造>
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で脂肪族アルコールアルコキシレート1を入れた。90%硫酸を滴下した後、80℃で2時間撹拌した。さらに、120℃に昇温して5時間反応させて、硫酸エステル型界面活性剤を得た。脂肪族部位の炭素数は18、エチレンオキサイドの付加モル数は3であった。
<インクの調製>
(インク1~58)
表4-1~4-6の中段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのポリプロピレンフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。インクの特性を表4-1~4-6の下段に示す。調製したインクのpHは、いずれも8.5~9.0の範囲内となるように、0.5mol/L硫酸水溶液を用いて調整した。表4-1~4-6中、「アセチレノールE60」はノニオン性のアセチレングリコール系界面活性剤(川研ファインケミカルズ製)の商品名であり、「プロキセルGXL」は防腐剤(アーチケミカルズ製)の商品名である。アミン化合物に付した数値は、アミン化合物の分子量である。
Figure 2024092966000006
Figure 2024092966000007
Figure 2024092966000008
Figure 2024092966000009
Figure 2024092966000010
Figure 2024092966000011
(インク59)
特許文献2に記載の実施例1の調製方法に準じて、シアンインクであるインク59を調製した。調製したインク59中、ワックスの平均粒子径(DW50)は、160nmであり、顔料の平均粒子径(DP50)の値は、120nmであった。そして、ワックスの平均粒子径(DW50)/顔料の平均粒子径(DP50)の値は、1.33であった。このインク59は、リン酸エステル型界面活性剤を含有しないインクである。
(インク60)
特許文献3に記載の実施例1の調製方法に準じて、ブラックインクであるインク60を調製した。調製したインク60中、ワックスの平均粒子径(DW50)/顔料の平均粒子径(DP50)の値は、インク1中のワックスの平均粒子径(DW50)/顔料の平均粒子径(DP50)の値と同等とした。このインク60は、アミン化合物を含有しないインクである。
<評価>
調製した各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS PRO-10S」(キヤノン製))にセットした。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たり30ngのインク滴を1滴付与する条件で記録した画像の記録デューティを100%と定義する。本発明においては、下記に示す各項目の評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表6に示す。
(耐擦過性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL-101」、キヤノン製)に、記録デューティが100%であるベタ画像(200mm×200mm)を記録した。記録した画像を25℃で24時間乾燥させた後、JIS L 0849:2013に準拠した学振型試験機(商品名「AB-301 学振型摩擦堅牢度試験機」、テスター産業製)を使用し、荷重500gで30往復及び60往復する条件の摩擦試験を実施した。摩擦試験後の画像を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐擦過性を評価した。
AA:60往復しても画像に擦過痕がなかった。
A:30往復しても画像に擦過痕がなかったが、60往復すると擦過痕があった。
B:30往復すると画像に擦過痕があったが、画像の下の記録媒体の白地は見えていなかった。
C:30往復すると画像に擦過痕があり、画像の下の記録媒体の白地も見えていた。
(発色性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL-101」、キヤノン製)に、記録デューティを0%から140%の間で10%刻みに変化させた15種類のベタ画像を記録した。記録した画像を25℃で24時間乾燥させた後、蛍光分光濃度計(商品名「FD-7」、コニカミノルタ製)を使用して画像の光学濃度を測定した。測定条件は、光源D50、視野角2°とした。15種類のベタ画像のうち、光学濃度が最大値であったものを評価の対象とし、表5に示す評価基準にしたがって画像の発色性を評価した。
Figure 2024092966000012
Figure 2024092966000013
実施例41の画像の耐擦過性及び発色性の評価は、実施例1と同じ「AA」であったが、実施例1の方が優れていた。
なお、本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)顔料、ワックス、前記ワックスを分散させるための分散剤、リン酸エステル型界面活性剤、及びアミン化合物を含有するインクジェット用の水性インクであって、
前記顔料が、カルボン酸基、及びスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の作用によって分散される顔料であり、
前記リン酸エステル型界面活性剤が、脂肪族アルコールアルコキシレート部位を含み、 前記ワックスの体積基準の累積50%粒子径が、前記顔料の体積基準の累積50%粒子径に対する比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを特徴とする水性インク。
(構成2)前記ワックス、及び前記ワックスを分散させるための分散剤の合計含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.005倍以上0.20倍以下である構成1に記載の水性インク。
(構成3)前記アミン化合物の含有量(モル%)が、前記リン酸エステル型界面活性剤の含有量(モル%)に対するモル比率で、1.0倍以上5.0倍以下である構成1又は2に記載の水性インク。
(構成4)前記顔料が、カルボン酸基を有する樹脂によって分散される樹脂分散顔料である構成1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成5)前記ワックスが、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、及びセレシンからなる群より選ばれる少なくとも1種のワックスである構成1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成6)前記アミン化合物が、アルカノールアミンである構成1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成7)前記リン酸エステル型界面活性剤が、下記一般式(1)で表される化合物である構成1乃至6のいずれか1項に記載の水性インク。
Figure 2024092966000014
(前記一般式(1)中、Rは炭素数12以上24以下の鎖式炭化水素基を表し、aは1以上10以下の整数を表す)
(構成8)前記リン酸エステル型界面活性剤が、下記一般式(2)で表される化合物である構成1乃至7のいずれか1項に記載の水性インク。
Figure 2024092966000015
(前記一般式(2)中、aは1以上10以下の整数を表す)
(構成9)前記アミン化合物が、トリエタノールアミンである構成1乃至8のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成10)インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、構成1乃至9のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
(方法1)インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、構成1乃至9のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。

Claims (11)

  1. 顔料、ワックス、前記ワックスを分散させるための分散剤、リン酸エステル型界面活性剤、及びアミン化合物を含有するインクジェット用の水性インクであって、
    前記顔料が、カルボン酸基、及びスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の作用によって分散される顔料であり、
    前記リン酸エステル型界面活性剤が、脂肪族アルコールアルコキシレート部位を含み、
    前記ワックスの体積基準の累積50%粒子径が、前記顔料の体積基準の累積50%粒子径に対する比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを特徴とする水性インク。
  2. 前記ワックス、及び前記ワックスを分散させるための分散剤の合計含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.005倍以上0.20倍以下である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記アミン化合物の含有量(モル%)が、前記リン酸エステル型界面活性剤の含有量(モル%)に対するモル比率で、1.0倍以上5.0倍以下である請求項1に記載の水性インク。
  4. 前記顔料が、カルボン酸基を有する樹脂によって分散される樹脂分散顔料である請求項1に記載の水性インク。
  5. 前記ワックスが、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、及びセレシンからなる群より選ばれる少なくとも1種のワックスである請求項1に記載の水性インク。
  6. 前記アミン化合物が、アルカノールアミンである請求項1に記載の水性インク。
  7. 前記リン酸エステル型界面活性剤が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1に記載の水性インク。
    Figure 2024092966000016
    (前記一般式(1)中、Rは炭素数12以上24以下の鎖式炭化水素基を表し、aは1以上10以下の整数を表す)
  8. 前記リン酸エステル型界面活性剤が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項1に記載の水性インク。
    Figure 2024092966000017
    (前記一般式(2)中、aは1以上10以下の整数を表す)
  9. 前記アミン化合物が、トリエタノールアミンである請求項1に記載の水性インク。
  10. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  11. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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