JP2024087775A - シアノアクリレート系接着剤用増粘剤 - Google Patents

シアノアクリレート系接着剤用増粘剤 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、接着剤用増粘剤として好適に利用でき、とりわけシアノアクリレート系接着剤用増粘剤として利用した時に、低温での析出が少ない増粘剤を提供することである。
【解決手段】炭素数が12~24の脂肪族炭化水素、炭素数が12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数が12~24の脂肪族アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を10~5000質量ppm含有するメタクリル樹脂を含むことを特徴とする、シアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、シアノアクリレート系接着剤用増粘剤に関する。
塗料または接着剤等の製造においては、製品の粘度を調整してハンドリング性を向上させる目的から有機系の増粘剤が用いられる。有機系の増粘剤の中でも、メタクリル系樹脂組成物を用いた増粘剤は、透明樹脂として高い透明性および耐候性を有しているうえ、アルキルシアノアクリレート等との親和性および耐薬品性にも優れている。メタクリル系樹脂組成物は、透明性を維持しながら迅速にモノマー中に溶解することから、接着剤用増粘剤として広く利用されている。
接着剤の中でも特にシアノアクリレート系接着剤は、主成分であるアルキルシアノアクリレートが有する高いアニオン重合性によって、わずかな水分または不純物などの微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、瞬間接着剤として、工業用、医療用及び家庭用等の広範な分野において使用されている。
その高い重合性から、シアノアクリレート系接着剤は、密閉容器など、ある程度外気と遮断された環境下で運搬および保管される。またシアノアクリレート系接着剤は保管時の固化を防ぐために低温で保管されることもある。
しかし、メタクリル系樹脂を含む増粘剤を溶解して粘度を付与したシアノアクリレート系接着剤は、低温での保管時に何らかの物質が析出して白濁するという課題があった。
メタクリル系樹脂を含む増粘剤として、例えば、特許文献1には、メタクリル樹脂の共重合成分のアクリル酸アルキル単量体単位のアルキル基の炭素数が4以上であるアクリル系増粘剤が開示されている。
特許文献2には、メタクリル酸メチル中で50℃/95%Rh下で曝した際の安定性に優れたメタクリル系樹脂を含む増粘剤が開示されている。
特許文献3には、シアノアクリレート系接着剤組成物中に200,000~500,000の重量平均分子量を有するポリ(メタ)アクリル酸アルキルを増粘剤として含有することが記載されている。
国際公開2022/07068号公報 特開2018-178076号公報 特公平4-15267号公報
特許文献1では、増粘剤の低温での析出を抑えることについては記載されていない。
特許文献2では、樹脂の末端に特定の構造を導入することで、メタクリル酸メチル中での長期安定性に優れた増粘剤を提供しているが、アルキルシアノアクリレート中での長期安定性については記載されていない。
特許文献3では、各種安定剤を加えてシアノアクリレート系接着剤が構成されており、低温での析出を抑えた増粘剤については記載されていない。
そこで、本発明は、接着剤用増粘剤として好適に利用でき、とりわけシアノアクリレート系接着剤用増粘剤として利用した時に、低温での析出が少ない増粘剤を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに炭素数が12~24の脂肪族炭化水素、炭素数が12~24の脂肪族アルコール、炭素数が12~24の脂肪族アミド等の物質が低温析出の原因であることを突き止め、その合計含有量を10~5000ppmとしたメタクリル樹脂を含む増粘剤とすることで低温析出を低減できることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
炭素数が12~24の脂肪族炭化水素、炭素数が12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数が12~24の脂肪族アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を10~5000質量ppm含有するメタクリル樹脂を含むことを特徴とする、シアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
[2]
前記メタクリル樹脂の重量平均分子量が85,000~1,500,000である、[1]に記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
[3]
前記メタクリル樹脂の重量平均分子量が300,000~1,500,000である、[1]に記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
[4]
前記メタクリル樹脂が、10時間半減温度が65℃未満の重合開始剤を用いて重合される、[1]~[3]のいずれかに記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
[5]
前記メタクリル樹脂が、体積平均粒子径50~500μmのビーズ状である、[1]~[4]のいずれかに記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤が、水蒸気透過度が1.0g/m/24h未満の材料で密閉されていることを特徴とする、パッケージ体。
[7]
前記メタクリル樹脂が、モノマー総量に対して0.05~0.13質量%のジラウロイルパーオキサイドを重合開始剤として用いて重合される、[1]~[6]のいずれかに記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
本発明によれば、シアノアクリレート系接着剤用増粘剤として利用した際に、増粘対象である接着剤の低温での保管中の、増粘剤に由来する析出物を低減できる増粘剤を提供することができる。また、本発明の一つの態様では、この増粘剤を特定の包装状態のパッケージとすることで、長期保管後の増粘剤を溶解した接着剤の保管安定性を改善することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[増粘剤]
本実施形態の増粘剤は、メタクリル樹脂を少なくとも含む。増粘剤は、メタクリル樹脂のみを含んでいてもよいし、メタクリル樹脂と、その他の樹脂とを含んでいてもよい。
増粘剤は、樹脂成分が、メタクリル樹脂のみであることが好ましい。また、増粘剤は、メタクリル樹脂を1種単独で、または2種以上組み合わせて含んでいてもよい。一例では、増粘剤は、樹脂成分として、単一のメタクリル樹脂のみからなることがより好ましい。
増粘剤中のメタクリル樹脂の含有量は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上がさらに好ましい。増粘剤はメタクリル樹脂からなる(メタクリル樹脂の含有量が100質量%である)ことが特に好ましい。
本実施形態の増粘剤は、シアノアクリレート系接着剤用増粘剤であることが好ましい。
(メタクリル樹脂)
本実施形態の増粘剤に含まれるメタクリル樹脂は、炭素数が12~24の脂肪族炭化水素、炭素数が12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数が12~24の脂肪族アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を合計で10~5000質量ppm含有する。下限としては15ppm以上、20ppm以上が好ましく、上限としては2000ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、400ppm以下、350ppm以下、300ppm以下、250ppm以下、230ppm以下が好ましい。これらの物質が少ないことで、低温保管時の析出を防ぐことができる。
炭素数が12~24の脂肪族炭化水素としては、具体的には、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ドコサン等が挙げられ、好ましくはヘキサデカン、オクタデカン、ドコサンであり、これらは1種単独でも良いし、複数種が混合していても良い。
炭素数が12~24の脂肪族アルコールとしては、具体的には、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、ドコサノール等が挙げられ、好ましくはヘキサデカノール、オクタデカノール、ドコサノールである。これらは1種単独でも良いし、複数種が混合していても良い。脂肪族アルコールの炭素数数が24より多いと、シアノアクリレート系接着剤への溶解性が悪くなる傾向にある。
炭素数が12~24の脂肪族アミドとしては、具体的には、ドデカンアミド(ラウリン酸アミド)、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられ、好ましくはラウリン酸アミドである。これらは1種単独でも良いし、複数種が混合していても良い。
上記物質は、例えば、メタクリル樹脂の製造時に用いる重合開始剤の分解物として発生する。例えば、重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイドを用いると、分解物としてドコサンが発生する。そのため、低温析出を抑制するには、使用する開始剤の量を調整する必要がある。
メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位(以下、単に「メタクリル酸メチル単量体単位」ともいう。)90~99.9質量%、およびアクリル酸アルキルに由来する単量体単位(以下、単に「アクリル酸アルキル単量体単位」ともいう。)0.1~10質量%を含有することが好ましい。より好ましくはメタクリル酸メチル単量体単位が92~99.8質量%およびアクリル酸アルキル単量体単位が0.2~8質量%であり、さらに好ましくはメタクリル酸メチル単量体単位が95~99.7質量%およびアクリル酸アルキル単量体単位が0.3~5質量%である。
メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単量体単位およびアクリル酸アルキル単量体単位以外のその他の単量体単位を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
アクリル酸アルキル単量体単位は、炭素数4以上のアルキル基を有することが好ましい。炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキル単量体単位としては、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等の炭素数4~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル単量体単位が好ましい。メタクリル樹脂のシアノアクリレート溶液のにおい低減の観点から、アクリル酸アルキル単量体単位のアルキル基の炭素数は、4~8が好ましい。入手のしやすさ、シアノアクリレートへ溶解時のにおい低減の観点から、アクリル酸n-ブチル単量体単位が特に好ましい。
メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単量体単位と炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキル単量体単位とのみから構成されていてもよいし、メタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体単位等のその他の単量体単位をさらに含んでいてもよい。
その他の単量体単位としては、メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル単量体であってよく、具体的には、アルキル基の炭素数が2~18のメタクリル酸アルキル;アルキル基の炭素数が1~3のアクリル酸アルキル;アクリル酸やメタクリル酸等のα,β-不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、α-メチルスチレン、ベンゼン環に置換基を有するスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、マレイミド、N-置換マレイミド;等が挙げられ、これらは、1種単独で或いは2種類以上を併用して用いることができる。におい抑制の観点から、アルキル基の炭素数が1~3のアクリル酸アルキルを含有する場合は、メタクリル樹脂を構成する全単量体単位100質量%に対して、アルキル基の炭素数が1~3のアクリル酸アルキル単量体単位の質量割合が、0.1質量%未満であることが好ましく、含有しないことがより好ましい。
メタクリル樹脂100質量%に対する、メタクリル酸メチル単量体単位の質量割合は、溶解した時(例えば、アルキルシアノアクリレートに溶解した時)のにおい抑制の観点から、90~99.9質量%であることが好ましい。より好ましくは95~99.8質量%、さらに好ましくは97~99.8質量%、特に好ましくは98~99.8質量%である。
メタクリル樹脂100質量%に対する、アクリル酸アルキル単量体単位の質量割合は0.1~10質量%であることが好ましい。より好ましくは0.2~5質量%、さらに好ましくは0.2~3質量%、特に好ましくは0.2~2質量%である。10質量%超であると、溶解した時(例えば、アルキルシアノアクリレート等へ溶解した時)に、残存するアクリル酸アルキル単量体やそれに由来する不純物等により特異なにおいが発生する傾向にあり、好ましくない。0.1質量%未満では、アクリル酸アルキル単量体単位を共重合させて得られるにおいの改善効果が発揮されない傾向にあり、好ましくない。
本実施形態においては、本発明の効果を損ねない範囲で、その他の単量体単位を共重合させてもよい。アルキルシアノアクリレート等への溶解性や溶解時のにおいなどを考慮すると、メタクリル酸メチル単量体単位及び炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキル単量体単位の合計量を100質量部としたときに、メタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体に由来する単量体単位の質量割合は、0~20質量部であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。
メタクリル樹脂100質量部中、メタクリル酸メチル単量体単位及び炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキル単量体単位の合計質量割合は、80質量部以上であることが好ましく、より好ましくは85質量部以上、さらに好ましくは90質量部以上、さらに好ましくは95質量部以上、特に好ましくは100質量部である。
<重量平均分子量>
メタクリル樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量Mwが、85,000~1,500,000であることが好ましい。Mwが85,000未満では、シラップ(メタクリル樹脂を溶解した溶液)を所定の粘度にするためのメタクリル樹脂の使用量が増えるため、得られる接着剤等の機械特性が劣る場合もあるため、好ましくない。一方、Mwは、増粘剤として使用する際の溶解性や特性安定性の観点から、1,500,000以下であることが好ましい。少量添加で所望の粘度が得られることから、300,000~1,500,000がより好ましく、350,000~1,400,000がさらに好ましい。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、メタクリル樹脂の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である分子量分布Mw/Mnは、1.7以上2.5以下であることが好ましい。製造の容易さの観点から、より好ましくは1.8以上である。また、溶解時の溶け残り抑制、溶解性向上の観点から、より好ましくは2.5未満、さらに好ましくは2.4以下、とりわけ好ましくは2.3以下、特に好ましくは2.3未満である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、GPCで測定される。あらかじめ、単分散の重量平均分子量が既知である試薬として入手可能な標準メタクリル樹脂と、高分子量成分から溶出される分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。その検量線から各試料の分子量を測定することが出来る。具体的に、後述の実施例に記載の方法により測定してよい。
<水分率>
メタクリル樹脂は、水分率が0.01%以上1%以下であることが好ましい。水分率をより低く抑えようとすると、長時間乾燥の必要性が生じることがある。生産性の観点からから、0.01%以上であることが好ましい。一方、1%を超えるとエチルシアノアクリレート等のシアノアクリレートへ溶解後の貯蔵安定性が悪くなる傾向があるため、1%以下であることが好ましい。より好ましくは0.01%以上0.8%以下、更に好ましくは0.02%以上0.7%以下、最も好ましくは0.03%を超えて0.5%未満である。
ここで水分率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができ、乾燥法にて測定する。乾燥法とは、10.0gのメタクリル樹脂を70℃に保持し、10秒間の重量減少率が0.02%以下になったところで測定終了し、合計の重量減少率を水分率とする方法である。
メタクリル樹脂(例えば、ペレットやビーズのメタクリル樹脂)の水分率は、例えば、重合後のスラリー等の乾燥方法で調整することができる。
メタクリル樹脂を乾燥する方法としては、熱風機やブローヒーター等から槽内に熱風を送ることにより乾燥を行う熱風乾燥、系内を減圧した上で必要に応じて加温することで乾燥を行う真空乾燥、得られた重合体を容器中で回転させることにより水分を飛ばすバレル乾燥、遠心力を利用して乾燥させるスピン乾燥、熱風で配管内の樹脂を移送しながら乾燥させる気流乾燥、特定の温度で一定時間乾燥した後槽底が開閉し次の乾燥槽へ落下させる流動床乾燥機等が挙げられる。
水分率を上記範囲とするためには、懸濁重合終了後、得られたスラリーを気流乾燥機及び/又は流動床乾燥機で乾燥させることが好ましい。この際、最終的な水分量が著しく低いと処理に時間がかかるため生産性が悪く、またスラリー送液工程においてポンプアップ不良が起きる等の問題が生じることがある。
メタクリル樹脂の形状は特に規定されないが、ペレット状、フレーク状、ビーズ状または粉体状であることが好ましい。溶解時間を短縮したり、未溶融物を減少させたりする観点から、ビーズ状または粉体状であることが好ましい。
<体積平均粒子径>
メタクリル樹脂では、ビーズ状で使用する際の体積平均粒子径は50~500μmであることが好ましい。溶解時間は粒子径が小さいほど短くなるため、500μm以下であることが好ましく、作業時のビーズの飛散を抑制する点と未溶融物を減少させる観点から、50μm以上であることが好ましい。体積平均粒子径は、より好ましくは70~400μm、最も好ましくは100~350μmである。
本明細書において、体積平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる体積粒子径をいう。
増粘剤中のメタクリル樹脂の含有量は、増粘剤100質量%に対して、80~100質量%であることが好ましく、より好ましくは90~100質量%、特に好ましくは99~100質量%である。
<重合方法>
メタクリル樹脂は、例えば、メタクリル樹脂を構成する単量体と、重合開始剤、連鎖移動剤、懸濁剤、その他添加剤等を用いて製造することができる。
重合開始剤としては、フリーラジカル重合を用いる場合は、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキサイド系や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカボニトリル)等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤を用いることができ、これらは1種単独でもあるいは2種類以上を併用しても良い。これらのラジカル開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として実施しても良い。
低温析出を低減する観点から、10時間半減温度が65℃未満の重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、ジラウロイルパーオキサイドが好ましい。10時間半減温度が65℃未満の重合開始剤を用いると、シアノアクリレート系接着剤に溶解後、70℃以上で保管した場合に、保管安定性が良好となる傾向にある。
なお、重合開始剤の10時間半減温度とは、重合開始剤の50%が10時間で分解する温度である。
重合開始剤は、単量体の合計質量100質量%に対して、0.001~1質量%の範囲で用いるのが一般的である。
ジラウロイルパーオキサイドを用いる場合、モノマー総量に対して0.01~0.5質量%の範囲で用いることが好ましく、0.03~0.3質量%の範囲で用いることがより好ましく、0.04~0.18質量%の範囲で用いることが更に好ましく、0.05~0.13質量%の範囲で用いる(モノマー溶液に含有させて重合させる)ことが最も好ましい。
メタクリル樹脂の製造方法では、ラジカル重合法で製造する場合には、分子量を調整するために、一般的に用いられている連鎖移動剤を使用できる。
連鎖移動剤としては、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコート、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)などのメルカプタン類が好ましく用いられる。
連鎖移動剤は、単量体の合計質量100質量%に対して、0.001~1質量%の範囲で用いてよい。連鎖移動剤の量は望む分子量に依存して決定される。
メタクリル樹脂の重合方法としては、懸濁重合または乳化重合を用いることが好ましい。懸濁重合は粒子状、乳化重合は粉末状の樹脂ビーズを与える為、シラップを所望の粘度に調整するための増粘剤として適量を溶解させる際に操作上有利である。
乳化重合よりも懸濁重合の方の重合時間が短い為、懸濁重合の方が好ましい。
特に懸濁重合法を用いる場合は、分子量分布を上述の範囲とすることが好ましく、アルキルシアノアクリレート等への溶解時に分子量分布の広さに起因する未溶融物の発生の抑制、溶解後に高い保存安定性を保持すること、を高いレベルで求められる場合、分子量分布が広くなる多段重合ではなく、一段での懸濁重合により得られることが好ましい。二段重合だと懸濁剤由来の不純物が多くなり好ましくない。
また、メタクリル樹脂の重合方法としては、平均粒子径が10~40μmである懸濁剤を水中に分散させて重合する方法を用いることが好ましい。中でも、平均粒子径が10~40μmである懸濁剤を水中に分散させて一段懸濁重合することが好ましい。
メタクリル樹脂の製造方法においては、懸濁重合水中に分散する懸濁剤の平均粒子径を10~40μmとして重合することが好ましい。これにより、メタクリル樹脂(例えばメタクリル樹脂ビーズ)の体積粒子径の標準偏差を制御でき、また重合挙動が安定化し徐熱量が下がり、生産性を向上することができる。
懸濁剤の平均粒子径は、使用する懸濁剤の粒子径を適宜選定することで調整できる。さらに粒子径の異なる粉体を混ぜ合わせることで、適切な平均粒子径の懸濁剤を得ることができる。
メタクリル樹脂の製造方法においては、水相のpHを4~7の範囲に調整することが好ましい。pHが当該範囲に入ることによって、ビーズの粒子径の標準偏差を制御でき、また重合挙動の安定化をはかることができる。
メタクリル樹脂の製造方法においては、あらかじめ懸濁剤を50℃~90℃に昇温して調整したうえで、反応器内の水中(50℃~90℃)に投入することが好ましい。これによりメタクリル樹脂(例えばメタクリル樹脂ビーズ)の平均粒子径と、そのバラつきを調整することができる。
メタクリル樹脂の製造方法によっては、有機系の懸濁剤より無機系の懸濁剤を使用することが好ましい。有機系の懸濁剤の場合はビーズの平均粒子径のバラつきが小さくなりすぎる傾向にある。ここで有機系の懸濁剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
無機懸濁剤としては、アルキルシアノアクリレートへの溶解後の安定性等を考慮するとカルシウム及び/又はアルミニウムを含む無機化合物を含むことが好ましく、例えば、リン酸三カルシウム(第3リン酸カルシウム)等のリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。特に、溶解後の安定性の観点から、アルミニウムを含む無機化合物を含むことがより好ましい。
また、懸濁剤は、さらに、ポリエチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等の懸濁助剤を含んでいてもよい。懸濁助剤は、懸濁剤100質量%に対して、0.01~10質量%含んでいてよい。
懸濁剤は、水中にモノマー原料とともに混合して用いることが好ましい。
<洗浄方法>
メタクリル樹脂の製造方法においては、懸濁剤除去のために、酸洗浄や水洗、アルカリ洗浄等の操作を行うことが好ましい。これらの洗浄操作を行う回数は、作業効率と懸濁剤の除去効率から最適な回数を選べばよく、一回でも複数回繰り返してもよい。
洗浄を行う際の温度は懸濁剤の除去効率や得られる重合体の着色度合等を考慮して最適な温度を選べばよく、20~100℃であることが好ましい。より好ましくは30~95℃、更に好ましくは40~95℃、特に好ましくは50~80℃である。
また、洗浄時の一回あたりの洗浄時間は、洗浄効率、増粘剤として使用した際のにおいの低減、シアノアクリレートへの溶解安定性の観点から10~180分であることが好ましく、より好ましくは20~150分である。
洗浄時に使用する洗浄液のpHは、懸濁剤除去が可能な範囲であればよいが、好ましくはpH1~12である。酸洗浄を行う場合のpHは、懸濁剤の除去効率や得られる重合体の色調の観点からpH1~5であることが好ましく、より好ましくはpH1.2~4である。その際使用する酸としては、懸濁剤除去が可能なものであればよく、特に規定はされないが、従来公知の無機酸、有機酸を使用することができる。好適に使用される酸の一例を挙げると、無機酸としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、硼酸等が挙げられ、それぞれ水等で希釈された希釈溶液で使用してもよい。有機酸としては、カルボキシル基やスルホ基、ヒドロキシ基、チオール基、エノールを有するものが挙げられる。懸濁剤の除去効果や得られる樹脂の色調を考慮すると、より好ましくは硝酸、硫酸、カルボキシル基を有する有機酸である。
酸洗浄後には、シアノアクリレートへの溶解時の溶け残りを抑制する観点から、更に水洗やアルカリ洗浄を行うことが好ましい。より好ましくは50℃以上の温水で洗浄を実施する方法であり、さらに好ましくは50℃以上の温水で洗浄を実施した後にさらにアルカリ洗浄及び/又は50℃以上の温水で洗浄を実施する方法である。
洗浄後のスラリーのpHが2以上9以下、好ましくは4以上7以下、さらに好ましくは5以上6.8以下、特に好ましくは5.5以上6.5以下に調整することで、シアノアクリレートへ溶解させたときの貯蔵安定性に優れ、耐光性にも優れた増粘剤を得ることができる。
(添加剤)
本実施形態の増粘剤は、任意選択的にその他の添加剤を配合してもよい。添加剤は、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されることなく、目的に応じて、適宜選択されてよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤;可塑剤;難燃剤;難燃助剤;硬化剤;硬化促進剤;帯電防止剤;導電性付与剤;応力緩和剤;離型剤;結晶化促進剤;加水分解抑制剤;潤滑剤;衝撃付与剤;摺動性改良剤;相溶化剤;核剤;強化剤;流動調整剤;染料;増感剤;着色剤;沈降防止剤;タレ防止剤;充填剤;消泡剤;光拡散性微粒子;防錆剤;抗菌剤;防カビ剤;防汚剤;導電性高分子等が挙げられる。
増粘剤中の添加剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以下であってよい。
本実施形態の増粘剤は、上述の方法で得られたメタクリル樹脂をそのまま増粘剤として用いてもよいし、さらに、その他のメタクリル樹脂組成物と混合して増粘剤としてもよい。
本実施形態の増粘剤は、特にシアノアクリレート(好ましくはアルキルシアノアクリレート、より好ましくはエチルシアノアクリレート)系接着剤の増粘剤用途に好適に使用できる。
ここで、シアノアクリレート系接着剤としては、主成分としてアルキルシアノアクリレートを含有するもの(例えば、接着剤100質量%に対して、アルキルシアノアクリレートの質量割合が50質量%以上であるもの、より好ましくは70質量%以上であるもの)が好ましい。
アルキルシアノアクリレートとしては、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、イソプロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、イソブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート等の炭素数1~10のアルキル基を有するシアノアクリレート;メトキシエチルシアノアクリレート、エトキシエチルシアノアクリレート等が挙げられる。一般にエチルシアノアクリレートが用いられることが多い。
<増粘剤を水に分散させた際の水相のpH>
増粘剤は、増粘剤20gと100gの純水とを攪拌分散させた後、静置し、固形分を沈降させた後に常温で測定した上澄み液水相のpHが、2以上9以下であることが好ましい。増粘剤を溶解させて使用する際の色相を特に良好に保つこと、シアノアクリレートへの溶解性、残存物に由来するにおいを抑制する観点から、より好ましくは3以上、とりわけ好ましくは3.5以上である。シアノアクリレート等への溶解後の貯蔵安定性を高める観点から、8.5以下であることが好ましく、さらに好ましくは8以下、とりわけ好ましくは7.5以下である。
[パッケージ体]
本実施形態のパッケージ体は、上述の本実施形態の増粘剤が、水蒸気透過度が1.0g/m/24h未満の材料で密閉されていることを特徴とする。このようなパッケージ体であると、増粘剤の貯蔵・保管時の安定性を高めることができる。
パッケージ体に使用される材料(以下、「パッケージ用材料」ともいう。)は、実質的に水分を通さず、増粘剤を密閉できることが要求される。
増粘剤ペレットをパッケージする前に、パッケージ用材料の内部を除湿した気体で置換することも好ましい形態である。
より具体的には、上記パッケージ用材料は、水蒸気透過度が1.0g/m/24h未満であることが好ましく、より好ましくは0.9g/m/24h以下、さらに好ましくは0.8g/m/24h以下である。
なお、水蒸気透過度は、「温度40℃、湿度90%RHの条件で単位時間に単位面積の試験片を通過する水蒸気の量」であり、JIS Z 0208に記載されているカップ法により測定することができる。
上記水蒸気透過度を満たすパッケージ用材料としては、例えば、厚みが10μm以上の鉄、銅、鋼材、薄鋼-錫メッキ材、ステンレス材等の金属材料、基材に二軸延伸ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたポリ塩化ビニリデンコートフィルム、アルミニウム蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、ポリエチレンフィルム、厚みが50μm以上であり且つブリードアウトする可能性のある添加剤の配合量が極めて低レベルである二軸延伸ポリプロピレンフィルム等のフィルム材料等が挙げられる。
パッケージ用材料の形状は、増粘剤を密閉可能な形状であれば特に限定されず、例えば、容器、袋等であってよい。
[接着剤]
本実施形態の接着剤は、上述の本実施形態の増粘剤とシアノアクリレート(好ましくは、アルキルシアノアクリレート)とを含む。さらに上述のような添加剤を含んでいてもよい。
接着剤は、25℃での粘度が0.5~10Pa・sであることが好ましい。
より好ましくは1~9Pa・s、更に好ましくは2~8Pa・sである。当該範囲となることでハンドリング性に優れた接着剤が得られる。接着剤の粘度を上記範囲に調整する方法としては、メタクリル樹脂の重量平均分子量を調整すること、接着剤中のメタクリル樹脂又は増粘剤の濃度を調整すること等が挙げられる。具体的には、重量平均分子量の高いメタクリル樹脂を用いる場合には濃度を低くくし、重量平均分子量の低いメタクリル樹脂を用いる場合には濃度を高くすることが挙げられる。一般的に重量平均分子量が高い方が添加量を少なくすることができるため好ましいが、高分子量のメタクリル樹脂は溶解に時間がかかる場合もあり、接着剤としての要求特性に合わせて適宜設定すればよい。
なお、粘度はB型粘度計で測定した粘度である。
具体的な濃度としては、接着剤100質量%に対して、5~30%の質量パーセント濃度でシアノアクリレート(好ましくはアルキルシアノアクリレート、より好ましくはエチルシアノアクリレート)に溶解することが好ましく、より好ましくは6~28%の質量パーセント濃度、さらに好ましくは7~25%の質量パーセント濃度である。
溶解させる際の温度は溶けやすさの観点から30℃以上が好ましく、安定性の観点から80℃以下が好ましい。
以下の実施例、比較例を用いて更に具体的に説明する。
<原料>
用いた原料は下記のものである。
メタクリル酸メチル(MMA):旭化成製(重合禁止剤として中外貿易製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノールを2.5質量ppm含有)
アクリル酸ブチル(BA):東亜合成製(重合禁止剤として、4-メトキシフェノールを15質量ppm含有)
2-エチルヘキシルチオグリコレート(EHTG):アルケマ製
ジラウロイルパーオキサイド(LPO):日本油脂製
ラウリル硫酸ナトリウム:富士フィルム和光純薬製、懸濁助剤として使用
エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム2水和物(EDTA):キシダ化学製
水酸化アルミニウム:日本軽金属製SBX73,B303,B153,B103を用いて、それぞれを適宜混合することで平均粒子径を調整した
ドコサン:東京化成工業製
ステアリルアルコール:東京化成工業製
ラウリン酸アミド:東京化成工業製
[I.増粘剤に用いるメタクリル樹脂ビーズの製造]
(実施例1)
-懸濁剤の調整-
4枚傾斜パドル翼を取り付けた攪拌機を有する容器に、水5kg、平均粒子径33μmの水酸化アルミニウム130g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39g、EDTA2.3gを投入して混合し、混合液(a1)を得た。混合液(a1)中の懸濁剤の平均粒子径は33μmであり、得られた混合液(a1)のpHは5.5であった。得られた混合液(a1)を70℃まで加熱した。
-重合反応-
次いで、60Lの反応器に水25kgを投入して80℃に昇温し、その反応器に、混合液(a1)3kgと、表1に示す配合のモノマー原料21kgと、EHTG17gと、LPO21gとドコサン8gとを混合したモノマー溶液を投入した。その後、約80℃の温度を保って懸濁重合を行い、モノマー溶液を投入してから180分後に発熱のピークが観測された。その後、93℃まで1℃/minの速度で昇温した後、45分間約93℃の温度を保持し、重合反応を実質終了して重合体スラリーを得た。次に、得られた重合体スラリーを50℃まで冷却した。その重合体スラリーに、懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入して重合反応溶液を得た。次に、得られた重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去して、濾過し、ビーズ状のメタクリル樹脂粒子と懸濁廃液とに分離した。懸濁廃液のpHは3.3であった。
-洗浄工程-
その後、ビーズ状のメタクリル樹脂粒子とおおよそ等量の約70℃のイオン交換水を加えて攪拌、洗浄、および濾過を実施し、同様に約70℃のイオン交換水での洗浄をさらにもう一度実施し(合計で2回水洗浄)、スラリー状重合体溶液を得た。得られたスラリー状重合体溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを8.5に調整し、攪拌し洗浄を行った。そのスラリー状重合体溶液を濾過し、さらに70℃のイオン交換水を加えて攪拌し洗浄を行った。得られたスラリー状重合体溶液のpHは6.1であった。その後、そのスラリー状重合体溶液を濾過し、樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、気流乾燥機を用いて150℃の気流(30Nm/hr)で乾燥した後、流動床乾燥機(25Nm/hr)で90℃、5分間乾燥を行い、メタクリル樹脂ビーズを得た。得られたメタクリル樹脂ビーズの重量平均分子量Mwは433,000、分子量分布Mw/Mnは1.9であった。また、得られたメタクリル樹脂ビーズ中のドコサン量をGC/MSにて測定したところ、600ppmであった。
(実施例2)
LPOの添加量を5gとし、ドコサンをモノマーに添加しなかった点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例3)
ドコサンの添加量を27gとした点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例4)
ドコサンの添加量を15gとした点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(比較例1)
ドコサンの添加量を140gとした点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例5)
ドコサンをモノマーに添加しなかった点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例6)
ラウリン酸アミドを3g添加した点以外は実施例5と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例7)
ステアリルアルコールを3g添加した点以外は実施例5と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例8)
LPOの添加量を42g、EHTGの添加量を40g、ドコサンの添加量を11gとした点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例9)
LPOの添加量を31g、EHTGの添加量を13gとした点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例10)
EHTGの添加量を2gとし、ドコサンをモノマーに添加しなかった点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例11)
LPOの添加量を31gとした点以外は実施例5と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例12)
LPOの添加量を42gとし、ドコサンをモノマーに添加しなかった点以外は実施例1と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
(実施例13~16)
共重合組成を表1のようにした点以外は実施例5と同様にして、メタクリル樹脂ビーズを得た。
[II.メタクリル樹脂の物性]
(II-1)(重量平均分子量、分子量分布)
実施例、比較例で得られたメタクリル樹脂ビーズの重量平均分子量、分子量分布を下記の装置、及び条件で測定した。
測定装置:東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-83
20GPC) カラム:TSKguardcolumn SuperH-H 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。
本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gのメタクリル樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min
内部標準として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加。
検量線用標準サンプルとして、単分散のピークトップ分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製;PMMA Calibration Kit M-M-10)を用いた。
ピークトップ分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準資料10 850
上記の条件で、メタクリル樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線を基にメタクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(II-2)(体積平均粒子径)
ベックマン・コールター社製LS13320のレーザー散乱方式にて、メタクリル樹脂ビーズの体積平均粒子径(μm)を測定した。
(II-3)(水分率)
SHIMADZU MOISTURE BALANCE MOC-120Hを用いて、10.0gのメタクリル樹脂ビーズを70℃に保持し、10秒間の重量減少率が0.02%以下になったところで測定終了し、合計の重量減少率を水分率(%)とした。
(II-4)(ドコサン、ラウリン酸アミド及びステアリルアルコールの定量)
試料としてメタクリル樹脂ビーズ約2gを精秤し、アセトン40mLを加えて溶解した。そこにメタノールを80mL加えて再沈殿抽出法にて試料から添加剤を抽出し、再沈殿可溶分を乾固し、10mLに定容した。この溶液を下記の測定条件にてGC測定に供した。
ラウリン酸アミド標準品を10.34mg、ドコサン標準品を10.10mg精秤し、クロロホルム10mLで定容して混合溶液とした。これを段階希釈し、標準溶液1μLを測定し、絶対検量線法にて定量して、メタクリル樹脂ビーズに対する質量割合(質量ppm)を求めた。定量値は繰り返し測定を3回行った時の平均値とした。

[測定条件]
GC:Agilent社製GC-7890
カラム:HP-5MS(L30m,I.D0.250mm,Film0.25um)
キャリア:ヘリウム
検出器:FID
オーブン温度:40℃(5min hold)→10℃/min→320℃(2min hold)
注入口温度:320℃
トランスファー温度:320℃
スプリット比:1/20
(II-5)(エチルシアノアクリレート溶液の粘度)
スターラー付きオイルバスにシリコーンオイルを入れ、50℃に加熱した。110mLのネジ口瓶(直径50mm)に増粘剤(メタクリル樹脂ビーズ)16g、エチルシアノアクリレート(アルテコ製EE)64g(増粘剤20質量%の場合)と回転子を入れ、ネジ口瓶の蓋を閉めた。オイルバスにネジ口瓶を入れ、スターラーを回転(150rpm)させ、メタクリル樹脂ビーズをエチルシアノアクリレートに溶解し、メタクリル樹脂のエチルシアノアクリレート溶液であるシラップを得た。増粘剤の濃度が10質量%の場合は、増粘剤8g、エチルシアノアクリレート72gの比率で溶解させた。重量平均分子量が85,000以上300,000未満の増粘剤は、エチルシアノアクリレートに20質量%の濃度で溶解させ、重量平均分子量が300,000以上800,000未満の増粘剤は10質量%の濃度で溶解させ、800,000以上1,500,000未満の増粘剤は、7質量%の濃度で溶解させて、冷却し、25℃で粘度η1(Pa・s)を測定した。粘度測定機器はB型粘度計(英弘精機製デジタル粘度計LVDV Next)を使用した。シラップを40mLの測定管に量り取り、測定管を粘度計に設置して粘度測定を開始した。スピンドルの回転数60rpmで粘度を測定した。60rpmで測定範囲を越えた場合は回転数を落として測定した。粘度の高いものは、シラップ製造時に添加量を調整し、適切な粘度に調整すればよい。
[III.増粘剤の評価]
実施例、比較例で得られたメタクリル樹脂ビーズを増粘剤として用いて、以下の評価を行った。
(III-1)(低温析出)
上記(II-5)と同様の方法で溶解したエチルシアノアクリレート溶液を、-20℃の恒温恒湿槽に投入し、24時間後の様子を目視で確認した。低温析出について、以下の評価基準で評価した。
A(極めて優れる):見た目に変化が見られなかった
B(優れる):ごくわずかに不透明感が見られた
C(良好):全体的に白く見えるが透明な部分があった
D(不良):全体的に白濁し、透明な部分がなかった
(III-2)(70℃での保管安定性)
上記(II-5)と同様の方法で溶解したシアノアクリレート系接着剤を、70℃で10日間保管(放置)した。その後、上記(II-5)と同様にして粘度η2(Pa・s)を測定した。得られた粘度η2と(II-5)で得られたη1との比η2/η1を算出し、70℃での保管安定性について、以下の評価基準で評価した。
A(良好):η2/η1が1.5未満
B(不良):η2/η1が1.5以上2.0未満
C(劣る):η2/η1が2.0以上
(III-3)(包装状態での保管安定性の違い)
実施例1、5、13と同様の方法で作製した増粘剤(メタクリル樹脂ビーズ)を、水蒸気透過度が0.8g/m/24hであるアルミ袋と、10g/m/24hである紙/PE袋と、1.9g/m/24hであるPVAコートPP袋とに各25kgずつ投入し、ヒートシールを行って密閉した。
半年間、倉庫にて保管(放置)したのち、このメタクリル樹脂を上記(II-5)と同様の方法でシアノアクリレート系接着剤に溶解した。得られたシアノアクリレート系接着剤を70℃で10日間放置した。その後、上記(II-5)と同様にして粘度η3(Pa・s)を測定した。また、(II-3)と同様に、水分率を測定した。
得られた粘度η3と(II-5)で得られたη1との比η3/η1を算出し、70℃での保管安定性について、以下の評価基準で評価した。
A(良好):η3/η1が1.5未満
B(不良):η3/η1が1.5以上2.0未満
C(劣る):η3/η1が2.0以上
各測定・評価結果を表1、表2に示す。
Figure 2024087775000001
Figure 2024087775000002
本発明によれば、シアノアクリレート系接着剤用増粘剤として利用した時に、低温析出が少なく、製品の保管安定性を改善できる増粘剤を提供することができる。

Claims (7)

  1. 炭素数が12~24の脂肪族炭化水素、炭素数が12~24の脂肪族アルコール、及び炭素数が12~24の脂肪族アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を10~5000質量ppm含有するメタクリル樹脂を含むことを特徴とする、シアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
  2. 前記メタクリル樹脂の重量平均分子量が85,000~1,500,000である、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
  3. 前記メタクリル樹脂の重量平均分子量が300,000~1,500,000である、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
  4. 前記メタクリル樹脂が、10時間半減温度が65℃未満の重合開始剤を用いて重合される、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
  5. 前記メタクリル樹脂が、体積平均粒子径50~500μmのビーズ状である、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
  6. 請求項5に記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤が、水蒸気透過度が1.0g/m/24h未満の材料で密閉されていることを特徴とする、パッケージ体。
  7. 前記メタクリル樹脂が、モノマー総量に対して0.05~0.13質量%のジラウロイルパーオキサイドを重合開始剤として用いて重合される、請求項1に記載のシアノアクリレート系接着剤用増粘剤。
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