JP2024085938A - 印刷物、ラミネート積層体及び印刷物の製造方法 - Google Patents

印刷物、ラミネート積層体及び印刷物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、網点再現性、レベリング性を含む印刷効果に優れ、ラミネート積層体にした場合に優れたラミネート強度を有する印刷物を提供することを目的とする。
【解決手段】基材1上に、水性インキ層及び油性インキ層を有する印刷物であって、
前記油性インキ層が、ウレタン樹脂を含み、
前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、
前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む、印刷物。
【選択図】なし

Description

本発明は、印刷物、ラミネート積層体及び印刷物の製造方法に関する。
環境意識の高まりから、印刷インキは水性インキへの転換が望まれている。水性インキは一般包装紙、コート紙や段ボール等の浸透性の印刷に広く用いられおり、包装材用途を中心とした非浸透性のプラスチックフィルム基材に対するグラビア印刷分野においても、水性インキの使用が広がっている。しかし、水性インキの品質は油性インキと比較し、未だ課題が多い。特に、印刷適性及び印刷効果において水性インキと油性インキとの差が顕著である。水性インキに含まれる水は、溶解性パラメーターの値が47.9MPa1/2と非常に大きく、更に表面張力が大きい。そのため、水性インキにおいて良好な印刷適性及び印刷効果を得ることは技術的難易度が高く、更にプラスチックフィルム基材に対するラミネート強度等に関しても、未だ発展途上段階である。
また、水性インキは、主な媒体が水であるため印刷層の乾燥性が油性インキに比べて劣る。水の乾燥が不十分であると、巻き取った印刷物においてブロッキング(印刷層が巻き取り基材に貼りつくこと)が生じる、あるいは、ラミネート加工して積層体とした際にラミネート強度が低下する、といったトラブルが発生する懸念がある。そのため水性インキでは油性インキの場合よりも印刷速度を下げてグラビア印刷が行われることが多いが、高速印刷で大量生産を強みとするグラビア印刷では印刷物の生産効率低下を招く懸念があった(特許文献1)。
そこで、水性インキと油性インキを組みあわせて印刷を行う方法が検討されている。例えば、特許文献2には、多色印刷において水性インキ及び油性インキを複合的に用い、印刷物の製造のトータルで有機溶剤の使用量削減する、といった印刷方法が開示されているしかし、単に水性インキ、油性インキを組みあわせた印刷では、水性インキおよび油性インキが重ね刷りされる際に、油性インキに含まれる有機溶剤等によって水性インキ層の網点が溶解して高精細な印刷ができないケースや、後刷りの印刷インキのレベリングが悪化する懸念がある
また、特許文献3には、ポリオレフィン系フィルムに油性インキを印刷し、該油性インキ層上に水性インキを印刷する印刷方法が開示されている。しかし、単に油性インキ、水性インキの印刷順で印刷を行った場合、油性インキ層上へ水性インキを転移させる際に、水性インキ層の網点が充分に濡れ広がらないため、網点再現性及びレベリング性等の印刷効果が悪化するケースが考えられる。
特開2007-001084号公報 特開平11-286161号公報 特開2004-306424号公報
本発明は、網点再現性、レベリング性を含む印刷効果に優れ、ラミネート積層体にした場合に優れたラミネート強度を有する印刷物を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を進めた結果、以下に記載の印刷物、印刷物の製造方法及び印刷物を用いたラミネート積層体を用いることで本願課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は、基材1上に、水性インキ層及び油性インキ層を有する印刷物であって、
前記油性インキ層が、ウレタン樹脂を含み、
前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、
前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む、印刷物に関する。
また、本発明は、基材1、水性インキ層及び油性インキ層の順に層を有する印刷物であって、水性インキ層及び油性インキ層が、グラビア印刷層である、上記印刷物に関する。
また、油性インキ層が、無機顔料を含む油性インキから形成されてなる、上記印刷物に関する。
また、油性インキが、更にイソシアネート系硬化剤を含む、上記いずれかの印刷物に関する。
また、油性インキ層が、更に、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ロジン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、上記いずれかの印刷物に関する。
また、水性インキ層が、水性ウレタン樹脂を含む、上記いずれかの印刷物に関する。
また、水性インキ層が、有機顔料及び/又はカーボンブラックを含む、上記いずれかの印刷物に関する。
また、上記いずれかの印刷物、接着剤層および基材2の順に層を有するラミネート積層体に関する。
また、基材1上に水性インキ層及び油性インキ層を有する印刷物の製造方法であって、
水性インキをグラビア印刷し、水性インキ層を形成する工程、及び、油性インキをグラビア印刷し、油性インキ層を形成する工程を含み、
前記油性インキが、ウレタン樹脂を含み、
前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む、印刷物の製造方法に関する。
本発明により、網点再現性、レベリング性を含む印刷効果に優れ、ラミネート積層体にした場合に優れたラミネート強度を有する印刷物を提供することが可能となった。
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本発明では、印刷物を用いたラミネート積層体を単に「積層体」と称することがあるが同義である。
<印刷物>
以下、本発明の印刷物について詳細に説明する。
本発明は基材1上に、水性インキ層及び油性インキ層を有する印刷物であって、
前記油性インキ層が、ウレタン樹脂を含み、
前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、
前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む、印刷物に関する。
印刷物の層構成は、具体的には、以下のような層構成を例示することができる。なお以下(1)および(2)又は後述の(3)および(4)の構成表示においては、「/」は各層の順番を意味する。層同士が直接接触してもよいし、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、アンカー層や接着剤層を介して積層されていてもよい。また、それぞれの層は、単層でも、複数層であってもよい。
(1)基材1/水性インキ層/油性インキ層
(2)基材1/油性インキ層/水性インキ層
本発明の印刷物は印刷効果に優れる。また、ラミネート積層体にした場合のラミネート強度にも優れ、裏刷り印刷の態様が好ましい。ラミネート積層体とするためには、インキ層は基材1と基材2の間に中間層として配置される。したがって裏刷り印刷方法の場合では、基材1に、先に色インキ(「色インキ」とは、白色インキ以外の着色インキをいう。)を印刷し、次に白インキを印刷する。色インキは、例えば墨、藍、紅、及び黄の順、あるいはその逆順に印刷することが好ましいが、特に制限されるものではない。
本発明の印刷物において、より具体的には、印刷物の層構成として、以下のような裏刷り印刷の層構成であることが好ましい。
(3)基材1/水性色インキ層/油性白インキ層
(4)基材1/油性色インキ層/水性白インキ層
本発明の印刷物は、水性インキ層及び油性インキ層を有し、前記油性インキ層がウレタン樹脂を含み、前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含むことを特徴とする。
本発明では、ポリエステルポリオール由来の構成単位に含まれるセバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸等二塩基酸が疎水性であるため、水性インキと油性インキを重ね刷りした場合、水性インキ層の網点が再溶解してしまうこと、または、水性インキ層と油性インキ層間の界面で互いの層が相溶してレベリング不良が発生することが少なくなり、網点再現性及びレベリング性が優れる印刷物となる。また、油性インキが特定構造を有するウレタン樹脂を含むため、凝集力が向上し、当該印刷物をラミネート積層体とした場合、ラミネート強度に優れる。
本発明の一実施形態において、基材1上に、水性インキ層及び油性インキ層を順次有する場合(基材1、水性インキ層及び油性インキ層の順に層を有する場合)に効果が顕著となる。水性インキ層上に油性インキを重ね刷りした場合、通常であれば油性インキに含まれる有機溶剤等によって水性インキ層が特に溶解しやすいが、油性インキに含まれるウレタン樹脂が特定構造を備えることで水性インキ層の再溶解が少なくなり、本発明の効果がより発揮される。また、乾燥性において劣る水性インキを先刷りし、乾燥性の良好な油性インキを後刷りすることで、先刷りの水性インキが乾燥オーブンを通過する時間が長くなり更に乾燥しやすくなることや、裏刷りである場合に、印刷面積が大きい白インキが後刷りされる場合が多いが、前記白インキが油性インキであることで乾燥性が良好となるため、インキ層全体の乾燥性がより優れる。結果として油性インキと水性インキの併用でトータルでの印刷物の製造速度が向上する。なお、本発明は当該作用・効果により何ら限定されるものではない。
油性インキに含まれるウレタン樹脂が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含むことで上記効果を奏し、環境保全の観点でも、水性インキの使用に加えて、バイオマス由来のウレタン樹脂を使用されるため好ましい。
<基材1>
本発明の印刷物に用いる、基材1の種類及び厚み等は特に限定されないが、プラスチック基材であることが好ましい。
印刷物に用いるプラスチック基材として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン12等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの含塩素系樹脂;エチレン-ビニルアルコール共重合物系樹脂;
プラスチック基材の基材として、セロハン;紙;アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属箔;もしくは、これらの複合材料からなるフィルム状又はシート状のものが利用できる。
中でもポリオレフィン系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂であることが好ましい。
上記基材1は、印刷される面(インキ層と接する面)が易接着処理されていることが好ましく、易接着処理とは、例えば、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。例えばコロナ放電処理では基材上に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等が発現する。これらの官能基は、水性インキまたは油性インキ中の樹脂が水酸基等の官能基を有する場合に、それらと水素結合を形成することができる。
<水性インキ層>
水性インキ層は、水性インキからなる層であり、例えば、水性インキをグラビア印刷して得ることができる。水性インキ層は、単層構成でも複数層の構成でもよい。水性インキ層の厚みは、用途、使用する水性インキの種類や数、及び重ね印刷の回数によって適宜選択できるが、インキ乾燥後、通常、0.1~10μmの範囲であり、好ましくは0.2~8μmであり、より好ましくは0.5~4μmであり、特に好ましくは0.8~2.5μmである。
水性インキ層の厚みを上記範囲に収めることで、本発明の印刷物で得られる網点再現性、レベリング性、及びラミネート積層体のラミネート強度に優れるため好ましい。本発明では、単一の水性インキ層だけでなく、複数の水性インキ層が重なった層も水性インキ層とし、色相の異なる水性インキ層を任意に組み合わせることができる。
<水性インキ>
水性インキは、水性樹脂、水、必要に応じて着色剤、、添加剤、親水性溶剤等を含有することにより得られる。
上記水性インキは単色で使用してもよいし、用途に合わせて複数の色を組み合わせた水性インキのセットとして使用することもできる。その組み合わせは特に限定されないが、例えば黄、紅、藍の3色を使用することでフルカラーの画像を得ることができる。また、墨の水性インキを追加することで黒色感を向上させ、文字などの視認性を上げることができる。更に朱、草、紫等の色を追加することで色再現性を向上させることも可能である。また、白の水性インキの印刷を行うことで、鮮明な画像を得ることができるとともに、印刷物の隠蔽性を上げることができる。
上記の中でも、網点再現性及びレベリング性の観点から、黄、紅、藍及び墨の水性インキであることが好ましい。また、当該印刷物の層構成が、基材、油性インキ層、及び水性インキ層の順である場合、白の水性インキであることも好ましい。
[着色剤]
水性インキに含有される着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。
本発明における水性インキには、網点再現性、レベリング性、及びラミネート強度の観点から、有機顔料及び/又はカーボンブラックを含むことが好ましい。当該顔料はカラーインデックス記載のC.I.ピグメントを任意に用いることができる。
上記顔料は、水性インキ総質量%中、5~30質量%の割合で含有する事が好ましく、8~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることが更に好ましい。また、白の酸化チタンの場合は、水性インキ総質量%中、10~60質量%の割合で含有することが好ましく、20~55質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることが更に好ましい。
[水性樹脂]
水性インキは水性樹脂を含むことが好ましい。水性樹脂は、水性媒体中において安定に分散・溶解できればよく、水性樹脂は水溶性またはエマルジョン状態であってよい。
水性樹脂の含有率は、水性インキ総質量中に1~30質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがなお好ましい。なお、水性インキの全固形分質量中の水性樹脂固形分の含有量は、5~55質量%であることが好ましく、7~50質量%であることがなお好ましく、10~45質量%であることが更に好ましい。
上記水性樹脂の例としては、水性ウレタン樹脂、水性アクリル変性ウレタン樹脂、水性アクリル変性ウレタンウレア樹脂、水性アクリル樹脂、水性スチレン-アクリル酸共重合樹脂、水性スチレン-マレイン酸共重合樹脂、水性エチレン-アクリル酸共重合樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性シェラック、水性ロジン変性マレイン酸樹脂、水性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、水性塩化ビニル-アクリル酸共重合樹脂、水性塩素化ポリプロピレン樹脂、水性ヒドロキシエチルセルロース樹脂、水性ヒドロキシプロピルセルロース樹脂、水性ブチラール樹脂などを好適に挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を併用することができる。
中でも水性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水性スチレン-アクリル酸共重合樹脂、水性スチレン-マレイン酸共重合樹脂より選ばれる少なくとも一種の水性樹脂を含むことが好ましく、水性ウレタン樹脂であることがなお好ましい。これらは水性樹脂総質量中に50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがなお好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。
(水性ウレタン樹脂)
ラミネート積層体のラミネート強度の観点から、水性樹脂は水性ウレタン樹脂を含むことが好ましい。当該水性ウレタン樹脂は中和される酸価を有し、酸価が15~65mgKOH/gであることが好ましく、20~60mgKOH/gであることがなお好ましく、25~55mgKOH/gであることが更に好ましい。また、ガラス転移温度が-70~0℃であることが好ましく、-60~-5℃であることがなお好ましく、-55~-10℃であることが更に好ましい。ここでガラス転移温度とは動的粘弾性測定におけるTanδの極大値をいう。
前記水性ウレタン樹脂としてはポリオール、ヒドロキシ酸およびポリイソシアネートにより形成された水性ウレタン樹脂である形態や、ポリオール、ヒドロキシ酸およびポリイソシアネートにより合成された末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとポリアミンにより鎖延長された水性ウレタン樹脂(水性ウレタンウレア樹脂ともいう。)である形態が好ましい。
さらに当該印刷物を基材2と張り合わせてラミネート積層体に用いる場合、ラミネート強度(ラミネート加工により積層した基材層間の接着強度)の観点から、水性ウレタン樹脂の使用が好ましい。水性ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させる際、樹脂内にカルボキシル基、スルホン酸基等のイオン化可能な基(中和可能である官能基)を導入し、塩基性化合物で中和することにより、水性化(水溶化)が可能となる。耐水性の観点からイオン化可能な基としてはカルボキシル基が好ましい。
水性ウレタン樹脂の水酸基価としては1~35mgKOH/gであることが好ましく、2~30mgKOH/gであることがなお好ましく、3~25mgKOH/gであることが更に好ましい。水性ウレタン樹脂の水への溶解性が良好となる結果、網点再現性、レベリング性、更には積層体のラミネート強度が良好となるためである。なお、水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化又はアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値で、JISK0070に従って測定した値である。
水性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であることが好ましく、10,000~80,000であることがより好ましく、20,000~70,000であることが更に好ましい。
上記水性ウレタン樹脂の含有率は、水性インキ総質量中1~30質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがなお好ましい。
(ポリオール)
前記ポリオールには、後述のヒドロキシ酸は含まれない。当該ポリオールとしては、以下に限定されないが、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマージオール、水素添加ダイマージオールなどが好適に挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いても、2種以上併用してもよい。水性ウレタン樹脂はポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールより選ばれる少なくとも一種のポリオールからなる構成単位を含有することが好ましい。ポリオールの数平均分子量は500~5000であることが好ましい。
(ポリエーテルポリオール)
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびこれらの共重合物を好適に挙げることができる。水性ウレタン樹脂はポリエチレングリコール由来の構成単位を含有することが好ましく、水性ウレタン樹脂総質量中に0.1~25質量%含有することが好ましく、2~15質量%含有することがなお好ましく、2~10質量%含有することが更に好ましい。
(ポリエステルポリオール)
前記ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸と分岐ジオールを含むジオールからなる構成単位を有する形態が好ましい。当該二塩基酸としては、セバシン酸、アジピン酸、コハク酸などが好適に使用でき、分岐ジオールとしてはアルキレングリコールの炭素上に有する水素の少なくとも一つが置換基を有する形態のものをいう。具体的には、プロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオールより選ばれる少なくとも一種を、ジオール総質量中に50質量%以上含有することが好ましい。なおポリエステルポリオールの実施形態はこれらに限定されない。
(ポリカーボネートポリオール)
前記ポリカーボネートポリオールとしては、製造方法やポリカーボネートポリオールを構成するジオール種により限定されるものではないが、アルキレングリコールからなるジオールとカーボネート化合物とのエステル交換反応による重縮合物が好適に挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは脂環族および/または脂肪族のポリカーボネートジオールであることが好ましい。
前記ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブチンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどが好適であり、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。3-メチル-1,5-ペンタンジオールその他の分岐構造を有するジオール構造を有するポリカーボネートポリオールであることが好ましい。
当該カーボネート化合物は、特に限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。
(ポリイソシアネート)
前記ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが好適に挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていても良い。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。
中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体から選ばれる少なくとも一種である。これらのポリイソシアネートは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
(ヒドロキシ酸)
前記ヒドロキシ酸は、以下に限定されないが、カルボキシルを含有するポリオールを利用することができる。例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸などが好適に挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。ヒドロキシ酸は水性ウレタン樹脂の製造工程の中で用いられ、得られたウレタン樹脂中にそのカルボキシル基が導入され、酸価を有する。未反応のカルボキシル基は中和されて水性化される。
(ポリアミン)
前記ポリアミンとして利用可能な化合物としては、各種公知のアミン類であり、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等などが好適に挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
(中和剤)
水性ウレタン樹脂を含む水性樹脂が、カルボキシル基その他のイオン化可能な基を含む場合、水溶化のため塩基性化合物で中和することが好ましい。当該中和は、水性樹脂を用いてインキを製造する前に行ってもよく、水性樹脂を含む水性インキを製造した後、水性インキに中和剤として塩基性化合物を添加することにより行ってもよく、その両方でもよい。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン等が挙げられ、これらは1種、又は2種以上の組み合わせで用いられる。
印刷物の耐水性、残留臭気、積層体のラミネート強度等の点からアンモニアが好ましい。
(水性ウレタン樹脂の製造方法)
水性ウレタン樹脂は、公知の方法により適宜製造される。例えば、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤を用いるアセトン法、溶剤を全く使用しない無溶剤合成法等が挙げられる。例えば特開2013-234214公報に記載の手法を適宜使用可能である。
[添加剤]
水性インキに使用できる添加剤としては顔料分散剤、顔料誘導体、レベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、防錆剤、防腐剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等が好適に挙げられる。
顔料を水性媒体中に安定に分散させるには、上記の水性ウレタン樹脂等の水性樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点から水性インキの総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート強度の観点から5質量%以下で水性インキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1~2質量%の範囲である。
(アセチレングリコール系化合物)
本発明において水性インキは、顔料分散性およびレベリング性の観点から、アセチレングリコール系化合物を含むことが好ましい。当該アセチレングリコール系化合物はアセチレン基を中央に持ち、左右対称の構造をした非イオン性化合物であり、界面活性剤である。アセチレングリコール系化合物は、エチレンオキサイド付加物であることがさらに好ましい。アセチレングリコール系化合物と、上記の水性ウレタン樹脂等の水性樹脂と併用すれば、レベリング性・インキ安定性の向上に寄与する。アセチレングリコール系化合物の添加量は、水性インキ総質量中に0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがなお好ましい。アセチレングリコール系化合物の市販品としては日信化学工業社製オルフィンE1010、オルフィンE1020、エアープロダクツアンドケミカルズ社製サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485等が挙げられる。
(硬化剤)
水性インキには、水性樹脂に対して硬化剤を用いて架橋させることで基材への密着性、ラミネート強度、耐水性を向上させることができる。水性樹脂がカルボキシル基を有する場合、硬化剤としてはヒドラジン系化合物、カルボジイミド化合物またはエポキシ化合物を使用することが好ましい。
ヒドラジン系化合物としてはアジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドその他のジヒドラジド化合物が好ましい。
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド基を有する化合物であり、例えば日清紡社製カルボジライトE-02、E-03A、SV-02、V-02、V02-L2、V-04等が挙げられる。
エポキシ化合物とはエポキシ基を有する化合物をいい、例えばADEKA社製アデカレジンEP-4000、EP-4005、7001などの脂環式エポキシが挙げられる。
当該硬化剤は水性インキ総質量中に、0.05~5質量%で使用することが好ましく、0.1~3質量%で使用することがより好ましい。
[液状媒体]
本実施形態における水性インキは液状媒体として水を含有することが好ましく、水性インキ総質量中水の含有量は20~75質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~65質量%であることが更に好ましい。更に、アルコ-ル系、ケトン系、及びエステル系等の有機溶剤を含むことも好ましく、環境対応および水との混和性の点から、アルコール系有機溶剤が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられ、中でもn-プロパノール、及び/またはイソプロピルアルコールが好ましい。有機溶剤は水性インキ総質量中に25質量%以下で含有することが好ましく、10質量%以下で含有することがなお好ましい。
[水性インキの製造方法]
水性インキは、例えば特開2020-186344号公報に記載されたように、水性樹脂及び着色顔料などを、水及び規定量の溶剤に溶解及び/又は分散処理(顔料分散)をすることにより製造することができる。その後、得られた分散体に、必要に応じて添加剤、液状媒体等を含有させることにより、水性インキを製造することができる。顔料分散に使用する分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。中でも、サンドミル、ガンマミルその他のビーズミルで分散することが好ましい。
前記方法で製造された水性インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、水性インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はB型粘度計で25℃において測定された粘度である。当該粘度計はトキメック社製などのものが使用できる。
[水性インキ層の形成]
水性インキ層は、例えば、当該水性インキを印刷した後、揮発成分を乾燥することによって形成される層である。印刷方法としてはグラビア印刷方式が好ましく、例えば、水性インキがグラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで水性インキ層を得ることができる。
<油性インキ層>
油性インキ層は、ウレタン樹脂を含む油性インキからなる層であり、前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む層である。例えば、当該油性インキをグラビア印刷して得ることができる。油性インキ層は、単層構成でも複数層の構成でもよい。油性インキ層の厚みは、用途、使用する油性インキの種類や数、及び重ね印刷の回数によって適宜選択できるが、インキ乾燥後、通常、0.1~10μmの範囲であり、好ましくは0.2~8μmであり、より好ましくは0.5~4μmであり、特に好ましくは0.8~2.5μmである。
油性インキ層の厚みを上記範囲に収めることで、本発明の印刷物で得られる網点再現性、レベリング性、及びラミネート積層体のラミネート強度に優れるため好ましい。
<油性インキ>
油性インキはウレタン樹脂を含み、前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む。
本発明においてウレタン樹脂は油性インキにおけるバインダー樹脂として機能する。バインダー樹脂とはインキにおける結着樹脂成分をいう。
当該油性インキは、上記要件を備えてなり、必要に応じて着色剤、前記ウレタン樹脂以外のバインダー樹脂、有機溶剤、添加剤等を含有することにより得られる。
上記油性インキは、単色で使用してもよいし、用途に合わせて複数の色を組み合わせた油性インキのセットとして使用することもできる。その組み合わせは特に限定されないが、白インキで印刷を行う場合、特に包装材用途で用いる印刷物では、内容物の隠蔽性および印刷物の意匠性の観点からベタ(全面)で印刷される場合が多いため、その場合白インキは印刷面積が他の色に比べ大きくなる。そのため、印刷物の乾燥性およびラミネート強度の観点から、油性インキは白インキであることが好ましい。
(バインダー樹脂)
油性インキは、ウレタン樹脂を必須成分として含むバインダー樹脂を含み、バインダー樹脂としてウレタン樹脂以外のバインダー樹脂を含む態様も好ましい。
バインダー樹脂は油性インキ総質量中に2~25質量%含有することが好ましく、4~20質量%含有することがなお好ましく、6~16質量%含有することが更に好ましく、8~13質量%含有することが特に好ましい。
<ウレタン樹脂>
上記ウレタン樹脂は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを縮合反応させてなるウレタン樹脂や、ポリオールと、ポリイソシアネートとの縮合反応物である末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ポリアミンとの反応(鎖延長という)により得られるウレタン樹脂(ウレタンウレア樹脂)が好ましい。
(ポリオール)
上記ポリオールは、後述のバイオマス二塩基酸を含む二塩基酸とジオールとを縮合反応させてなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有する。当該ポリエステルポリオールは、ポリオール総質量中、50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがなお好ましく、80質量%以上含有することが更に好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。
更に、上記ポリエステルポリオール以外のポリオールを併用することも好ましい。かかるポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。これらはポリオール総質量中、50質量%未満で使用することが好ましい。ポリエステルポリオールの他に併用するポリオールとしては、グラビア印刷における版かぶり性の観点からポリエーテルポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオールの中でもポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびこれらの共重合物であることが好ましい。
(ポリエステルポリオール)
上記ポリエステルポリオールは、二塩基酸とジオールとを縮合反応させてなるポリエステルポリオール由来の構造単位を含有し、二塩基酸の一部または全部が、バイオマス二塩基酸である。ここで、バイオマス二塩基酸とは、バイオマス由来の二塩基酸であるが、本発明では、そのうち、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を必須とする。当該バイオマス二塩基酸はポリエステルポリオールの原料の二塩基酸総質量中に65質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上で含有することがなお好ましく、75質量%以上で含有することが更に好ましい。
また、ポリエステルポリオールの原料の二塩基酸総質量中に、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を65質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上で含有することがなお好ましく、75質量%以上で含有することが更に好ましい。また、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のみからなる二塩基酸であることがなお好ましい。セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸は、例えば、伊藤製油社などの市販品として得られる。
(二塩基酸)
上記二塩基酸として、バイオマス二塩基酸以外の二塩基酸を含有してもよく、かかる二塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、等が挙げられる。また、バイオマス由来でないセバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸を排除するものではない。
本発明では二塩基酸として、更にコハク酸および/またはアジピン酸を含有することも好ましく、アジピン酸を含むことが更に好ましい。
上記セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸と、コハク酸および/またはアジピン酸との質量比率は、95:5~60:40で含むことが好ましく、93:7~65:35で含むことがなお好ましく、90:10~70:30で含むことが更に好ましい。
(ジオール)
上記ジオールは、分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールの双方を含む。これにより積層体におけるラミネート強度がより良好となる。ここで、直鎖状ジオールとは、原子数2以上であるジオールであり、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールその他のジオールをいう。また、分岐状ジオールとは、アルキレングリコールの炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が水素原子以外で置換されたジオールをいう。
直鎖状ジオールは結晶性を付与し、分岐状ジオールは柔軟性を付与するので、そのバランスにより、ウレタン樹脂はインキ被膜が強靭となり高いラミネート強度が得られる。
上記分岐状ジオールとしては、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(以下、BEPGとも記載する)と、2-メチル-1,3-プロパンジオール(以下、MPOとも記載する)、3メチル1,5ペンタンジオール(MPDとも記載する)、ネオペンチルグリコール(NPGとも記載する)、1,2-プロピレングリコール(以下、PGとも記載する)、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明では、MPO、MPD、BEPG、NPG、PG、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールから選ばれる少なくとも一種の分岐状ジオールが好ましく、NPGおよび/またはBEPGを用いることが更に好ましく、NPGを用いることが特に好ましい。
直鎖状ジオールとしては、アルキレングリコールであることが好ましく、かかる化合物としては、エチレングリコール(EGとも記載する)、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール(1,3PDとも記載する)、1,4-ブタンジオール(1,4-BDとも記載)、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
中でも炭素数8以下、好ましくは炭素数6以下の直鎖状ジオールが好ましく、EG、1,3PD、1,4-BD、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、などが好ましい。さらにバイオマス度および物性の観点からは、EG、1,3PD、1,4-BDが特に好ましい。
本発明において、ラミネート強度の観点からポリエステルポリオールの全ジオール中の分岐状ジオールおよび直鎖状ジオールの質量比(分岐状ジオール:直鎖状ジオール)は、90:10~10:90であることが好ましく、80:20~20:80であることがなお好ましく、70:30~30:70であることが更に好ましく、60:40~40:60であることが特に好ましい。
なお、分岐状ジオール単位と直鎖状ジオール単位はそれぞれをひとつのポリエステルポリオール中に存在させてもよいし、分岐状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールと、直鎖状ジオール単位のみを含むポリエステルポリオールを混合物原料として利用し、ウレタン樹脂としてもよい。およそ同一の効果が得られる。
ウレタン樹脂に用いるポリイソシアネート、ポリアミンは、上記水性ウレタン樹脂の説明において例示した化合物を好ましく用いることができる。
ウレタン樹脂に用いるポリイソシアネートとしては、中でもイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、溶解性の観点からイソホロンジイソシアネートがさらに好ましい。
ウレタン樹脂に用いるポリアミンとしては、中でもイソホロンジアミンが好ましい。
本発明において、ウレタン樹脂は、アミン価を有することが好ましい。ウレタン樹脂のアミン価は1~13mgKOH/gであることが好ましく、この範囲内であると、基材に対するラミネート強度が向上傾向にある。
ウレタン樹脂の重量平均分子量は10000~100000であることが好ましい。さらに好ましくは30000~80000である。重量平均分子量が10000~100000の範囲内であると、ラミネート強度が向上傾向にある。
本発明におけるウレタン樹脂のバイオマス度はカーボンニュートラルという概念から、40質量%~100質量%であることが好ましく、45質量%~100質量%であることがより好ましい。また、本発明におけるウレタン樹脂を含むバインダー樹脂を有する油性インキの不揮発分中のバイオマス度、すなわち油性インキ層のバイオマス度は、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがなお好ましい。
[バイオマス度]
なお、バイオマス度とは化合物中に含まれる植物由来その他のバイオマス由来の割合をいう。
バイオマス度=100×該当化合物のバイオマス由来成分質量/該当化合物の総質量
で表される。
ただし、該当化合物が、バイオマス由来原料と、バイオマス由来でない原料との反応物である場合、反応前の原料に換算して、計算する。例えば、二塩基酸とジオールとの反応物であるポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)の場合、
バイオマス度=100×(バイオマス二塩基酸+バイオマス由来ジオール)/(すべての二塩基酸+すべてのジオール)
「すべての二塩基酸+すべてのジオール」とは、バイオマス由来およびバイオマス由来でない二塩基酸、およびバイオマス由来およびバイオマス由来でないジオールの合計をいう。
本発明におけるウレタン樹脂を含む油性インキには、用途や基材に応じて、上記ウレタン樹脂以外にもバインダー樹脂として、様々な樹脂を併用することができる。用いられる樹脂の例としては、上記以外のウレタン樹脂、または塩化ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂などの塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ポリブチラール、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができ、中でも、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ロジン系樹脂およびアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂が好ましく、塩化ビニル系樹脂および/またはセルロース系樹脂がさらに好ましく、塩化ビニル系樹脂であることが特に好ましい。
またその含有量は、油性インキの総質量中に1~6質量%含有することが好ましい。上記ウレタン樹脂と、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ロジン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂との質量比率は、95:5~60:40で含むことが好ましく、93:7~70:30で含むことがなお好ましく、90:10~80:20で含むことが更に好ましい。
ウレタン樹脂と、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ロジン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂との合計はバインダー樹脂総質量中に60質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがなお好ましく、80質量%以上含有することが更に好ましい。
(塩化ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル由来の構造単位とその他モノマー由来の構造単位を含有するものであれば特に限定されない。中でも塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂および塩化ビニル-アクリル共重合樹脂が好ましい。
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであり、分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
また、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
(塩化ビニル-アクリル共重合樹脂)
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーとアクリルモノマーの共重合樹脂を主成分とするものであり、アクリルモノマーとしては、基材に対する接着性と有機溶剤に対する溶解性が向上するため(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含むことが好ましい。アクリルモノマーは、ポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト重合されていても良い。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、重量平均分子量が10,000から100,000であることが好ましく、30,000から70,000であることが更に好ましい。また、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましく、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
また、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂中の塩化ビニルモノマー由来の構造は、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂固形分100質量%中、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
以下の説明において、(メタ)アクリルないし(メタ)アクリレートはそれぞれメタクリルおよびアクリル、メタクリレートおよびアクリレートを意味する。
上記アクリルモノマーは水酸基を有するものを含むことが好ましく、例としては(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが溶剤に対する溶解性を向上させるため、より好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。なお上記以外のアクリルモノマーを随時含有しても良い。
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂としては、例えばニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等が挙げられ、上記アルキル基は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していても良い。中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロースより選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~80,000であるものが更に好ましい。また、ガラス転移温度が100℃~160℃であるものが好ましい。上記ニトロセルロースの窒素含有量は10~13質量%であることが好ましく、10.5~12.5質量%であることがなお好ましい。
(ロジン系樹脂)
ロジン系樹脂としては、ロジン酸(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等)由来の構造単位を有するものをいう。ロジン酸またはロジン系樹脂は水素化されていてもよい。なお該ロジン系樹脂の酸価は100mgKOH/g以下であり、軟化点は60~150℃である。ロジン系樹脂は松脂由来のバイオマス原料であり、インキ固形分中のバイオマス度向上およびラミネート強度等向上に寄与する。ロジン系樹脂の種類としては、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、重合ロジン系樹脂などが好適に挙げられる。中でもウレタン樹脂とロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂との併用が好ましい。
(ロジンエステル)
ロジン系樹脂としては分子量が1000未満の低分子ポリオールとロジン酸のエステル縮合樹脂であるロジンエステルであることが好ましい。低分子ポリオールは水酸基数が2~4であることが好ましい。また、低分子ポリオールは分子量が50~500であることがより好ましい。
該低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオールなどの2官能低分子ポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3官能低分子ポリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトールなどの4官能低分子ポリオールなどが好適である。中でも3官能低分子ポリオールが好ましい。ロジンエステルの重量平均分子量としては、500~2000であることが好ましい。500~1500であることがより好ましい。
(ロジン変性マレイン酸樹脂)
ロジン変性マレイン酸樹脂は、ロジン由来の構造と、マレイン酸および/または無水マレイン酸由来の構造を有する樹脂であり、必要により多価アルコール由来の構成成分を含有することができる。該ロジンとしては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、重合ロジンなどが使用でき、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、3級のアルカノールアミンなどが挙げられる。尚、その他のフマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、飽和酸や脂肪酸類、極性基を有する長鎖アルキル化合物、界面活性剤等を含有してもよい。
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂とは、アクリルモノマーから形成された樹脂をいい、上記塩化ビニル-アクリル共重合樹脂である場合を除く。アクリル系樹脂のガラス転移温度(以下、「Tg」と記載する場合がある)は20~100℃の範囲が好ましく、30~90℃であることがより好ましく、35℃~85℃であることが更に好ましい。Tgが20℃以上であれば油性インキからなる油性インキ層の耐ブロッキング性が向上し、Tgが100℃以下であることにより、印刷基材への密着性が保持できる。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20,000~200,000であることが好ましい。重量平均分子量を20,000以上とすることにより、積層体の成型性と油性インキ層の表面強度を兼ね備えることができる。重量平均分子量が200,000以下であることにより、耐薬品性が良好となる。なお、重量平均分子量が30,000~100,000であることがより好ましい。
アクリル系樹脂を構成するアクリルモノマーについては、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アクリルモノマーとしては、アルキルメタクリレートおよび/またはアルキルアクリレートを含有することが好ましく、含有量としてはアクリル系樹脂総質量中に5~95質量%であることが好ましい。メチルメタクリレートを含むことがこの好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの併記、「(メタ)アクリル」とは、メタクリルとアクリルの併記を表す。)として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどが挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1~6であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルが、基材に対して良好な密着性を得やすいという点からより好ましい。なお、アクリルモノマーはその他あらゆる形態のものを含んでよく、これらの例に限定されるものではない。
<イソシアネート系硬化剤>
本発明の印刷物において、ラミネート強度を向上させる目的で、油性インキがイソシアネート系硬化剤を含むことが好ましい。ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂の有する水酸基アミノ基その他の活性水素基と架橋して、ラミネート強度が向上するためである。
以下にイソシアネート系硬化剤の実施形態として好ましい態様を示す。当該イソシアネート系硬化剤としては、アダクト系イソシアネート(アダクト体)、ビウレット系イソシアネート(ビウレット体)、イソシアヌレート系イソシアネート(イソシアヌレート体)等を含むポリイソシアネートが好適である。
アダクト系ポリイソシアネートは例えば、トリメチロールプロパン1モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるアダクト体、エチレングリコール1モルとジイソシアネート2モルとの反応から得られるアダクト体、ジトリメチロールプロパン1モルとジイソシアネート4モルのアダクト体などが挙げられ、
ビウレット系ポリイソシアネートは例えば、水1モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるビウレット体、水0.5モルとジイソシアネート3モルとの反応から得られるビウレット体、水1モルとジイソシアネート5モルとの反応から得られるビウレット体、などが挙げられ、
イソシアヌレート系ポリイソシアネートは例えば、ジイソシアネートの環状三量化反応から得られるイソシアヌレート体、およびその誘導体等が挙げられる。
イソシアネート系硬化剤の添加量はインキ総質量に対して、0.5~5質量%が好ましい。
また、イソシアネート硬化剤の分子量は100~2,000であることが好ましい。当該ジイソシアネートとしては上記したジイソシアネートを任意に選択して使用してもよく、中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(水添XDI)が好適に挙げられる。
アダクト型ポリイソシアネート、ビウレット型ポリイソシアネート、イソシアヌレート型ポリイソシアネートは併用してもよく、更にその他のポリイソシアネートと併用してもよい。
[着色剤]
油性インキに含有される着色剤としては、上記水性インキの説明において例示した着色剤を好ましく用いることができる。中でも無機顔料を含むことが好ましく、酸化チタンを含むことがより好ましい。
イエロー、マゼンタ、シアンなどの有機顔料及び/又はカーボンブラックは、油性インキ総質量%中、1~30質量%の割合で含有する事が好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることが更に好ましい。また、白の酸化チタンの場合は、油性インキ総質量%中、10~60質量%の割合で含有することが好ましく、15~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが更に好ましい。
[有機溶剤]
本発明における油性インキは、液状媒体として有機溶剤を含むことが好ましい。使用される有機溶剤としては、二種以上の有機溶剤からなる混合溶剤としての使用が好ましく、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくは芳香族系有機溶剤および/またはメチルエチルケトン(以下「MEK」と表記する)などのケトン系有機溶剤を含まない有機溶剤が更に好ましい。また、印刷適性が向上するため、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の混合溶剤であることが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤の好ましい質量比(エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤)は90/10~40/60である。
(添加剤)
油性インキは、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、可塑剤、光安定化剤、シリカ粒子、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤、硬化剤などの添加剤を含むこともできる。
<油性インキの製造方法>
本発明における油性インキは、顔料をバインダー樹脂等と共に分散機を用いて有機溶剤中に分散し、得られた顔料分散体にバインダー樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。
前記方法で製造された油性インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、油性インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はB型粘度計で25℃において測定された粘度である。当該粘度計はトキメック社製などのものが使用できる。
<印刷物の製造方法>
本発明の印刷物の製造方法は、
基材1上に水性インキ層及び油性インキ層を有する印刷物の製造方法であって、
水性インキをグラビア印刷し、水性インキ層を形成する工程、及び、油性インキをグラビア印刷し、油性インキ層を形成する工程を含み、
前記油性インキが、ウレタン樹脂を含み、
前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む、印刷物の製造方法である。
(水性インキおよび油性インキの印刷)
本発明における水性インキおよび油性インキは、グラビア印刷方法で印刷することが好ましい。グラビア印刷では、水性インキおよび油性インキは、印刷に適した粘度および濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。印刷順としては、水性インキ、油性インキの順に印刷し、基材、水性インキ層、油性インキ層の順にインキ層を形成することが好ましい、前記印刷順であるとインキ層の乾燥性に優れ、ラミネート積層体のラミネート強度に優れるため好ましい。
<グラビア印刷方法>
グラビア印刷は、通常、円筒状のシリンダーの周面に絵柄及び/又は文字などを表現するセル(凹部)を設けたグラビア版を用い、このセルにインキが充填され、被印刷体(基材)をグラビア版と圧胴との間を圧接通過させることにより、前記セルに充填したインキを被印刷体に転移させて、被印刷体に絵柄及び/又は文字などを再現する印刷方式である。グラビア印刷では、印刷に適した粘度および濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
グラビア印刷方法は巻き取り方式であり、高速印刷が可能であり、生産性に優れる。基材は巻取方式であるため規定の幅に揃えられたロール状のものである。従って、1枚1枚が予め切り離されている枚葉紙とは異なる。基材の幅は、使用する印刷機の版幅、及びグラビア版の画像(絵柄)部分の幅を基準として適宜選択される。複数色の印刷インキを重ねて印刷する場合、当該インキはそれらの印刷の順番について特に限定されない。
グラビア印刷を行う場合、裏刷りの場合では巻取り基材に、先に色インキを印刷し、次に白インキを印刷するのが一般的である。色インキが複数色の場合、例えばブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの順に印刷することができるが、特に制限されるものではない。なお、大型印刷機では更に、前記基本色に加えて特色等を用いることができる。すなわち、大型印刷機には5~10色に対応する複数の印刷ユニットがあり、1印刷ユニットには1色のインキが備えられ、5~10色の重ね印刷を一度に行うことができる。
(グラビア印刷版)
グラビア印刷においてはグラビア版およびドクターブレードが使用される。本発明において使用されるグラビア版は、レーザー方式によりセル形成された版である。グラビア版は何層かのコーティングにより構成されており、ベースとなる芯の部分(ベースシリンダーという)の材質によってその構成は異なり、ベースシリンダーが鉄芯の場合は、鉄芯にニッケルメッキ、銅メッキ、クロムメッキが順番に施され、その後、レーザー方式で製版(レーザー製版)される。レーザー製版は、薬品によって銅メッキを腐食させる方法であり、銅メッキ表面に感光材をコーティングし、版の凹みになる部分(インキが入る部位)をレーザーで露光・現像して絵柄を形成させる。その後、露出した銅部分を腐食液で腐食させる事によりグラビア版の表面に絵柄が形成される。当該版は、その後クロムメッキされてグラビア版となる。レーザー方式により形成されたセルは彫刻方式で形成されたセルに比べてシャドウ部の印刷再現性が良好であるというメリットがある。
(ドクターブレード)
本発明で使用できるドクターブレードは、スチール製、セラミック製いずれでもよく、特段の制限はない。ドクターブレードは上記グラビア版に接する形で余剰のインキを掻きとるために用いられるが、その接触角度により印刷の転移に影響を及ぼす
(グラビア印刷機)
グラビア印刷機は、上記グラビア版を具備した印刷機を好適に使用できる。通常色ごとに印刷ユニットが設置されており、各ユニットにはグラビア版が輪転すると同時にインキを掻き取るドクターブレードが配置され、基材は各印刷ユニットを通過して凹版印刷されたのちにフィルム巻取り物となる。場合に応じてグラビア版にファニッシャーロールを使用することが可能である。また、各ユニットには乾燥オーブンが設けられており、印刷された基材がオーブンを通って乾燥される。乾燥温度は通常40~60℃程度である。
(印刷速度)
本発明の印刷物の製造方法は、印刷速度80m/分以上にて製造することが好ましく、100~250m/分にて製造することがなお好ましく、120~250m/分にて製造することが更に好ましい。
(乾燥機風量)
グラビア印刷機には乾燥機が備えられており、印刷直後に送風乾燥される。乾燥条件は送風温度が高く、風量が多いことが好ましく、乾燥温度としては、30~100℃の範囲で行われ、40~80℃であることが好ましい。風量は60~250m/分であることが好ましい。なお、乾燥器内温度と風量は被印刷基材に熱変形などの悪影響ない範囲で調整することが好ましい。
<積層体>
本発明における積層体は、上記印刷物の水性インキ層又は油性インキ層上に、更に基材2をラミネート工程でラミネートして得ることができる。
上記ラミネ-トの方法としては、1)得られた印刷物のインキ層上に、必要に応じてアンカーコート剤を塗布後、溶融樹脂および基材2をこの順に積層する押し出しラミネート法、又は、2)得られた印刷物のインキ層上に、接着剤を塗布後、必要に応じて乾燥させ、基材2を積層するドライラミネート法等が挙げられる。溶融樹脂としては、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等が使用でき、接着剤としてはイミン系、イソシアネート(ウレタン)系、ポリブタジエン系、及びチタネート系等が挙げられる。
接着剤層は、単層であっても複数層であってもよい。なお、上記、アンカーコート、接着剤、溶融樹脂は、いずれも接着剤層を形成する。
当該基材2は上記の基材1と同一でもよいし、異なっていてもよい。なお当該積層体において水性インキ層及び油性インキ層は中間インキ層(例えば、基材1/中間インキ層/接着剤層/基材2)として位置する。
ラミネートされた積層体は、包装材料として好ましく使用することができ、一般の包装材料のほか、特には食品用途の包装材料として好適に用いられる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に記載しない限り、実施例における「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
<重量平均分子量、数平均分子量>
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。測定条件を以下に示す。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
<酸価>
JISK0070に記載の方法に従って求めた。
<アミン価>
アミン価は、樹脂1g中に含有されるアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記(式1)によりアミン価を求めた。
(式1)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
[合成例1-1](ポリエステルポリオールA1の合成)
攪拌機、温度計、分水器および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、ネオペンチルグリコール(NPGとも記載する)26.0部、1,3-プロパンジオール(以下1,3-PDとも略す)26.0部、セバシン酸(バイオマス由来 バイオマス度100%)38部、アジピン酸(石油由来 バイオマス度0%)10部、テトラブチルチタネート0.002部を仕込み、窒素気流下に230℃で縮合により生じる水を除去しながらエステル化を8時間行った。ポリエステルの酸価が15以下になったことを確認後、真空ポンプにより徐々に真空度を上げ反応を終了した。これにより数平均分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/g、バイオマス度74%のポリエステルポリオ-ル(A1)を得た。
[合成例1-2~1-7](ポリエステルポリオールA2~A7の合成)
表1に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、合成例1-1と同様の方法で、ポリエステルポリオールA2~A7を得た。なお、表中に記載の略称は以下を表す。
・表中の二塩基酸は以下のバイオマス度である。
セバシン酸:(バイオマス由来 バイオマス度100%)
アゼライン酸:(バイオマス由来 バイオマス度100%)
ダイマー酸:(バイオマス由来 バイオマス度100%)
セバシン酸:(石油由来 バイオマス度0%)
アジピン酸:(石油由来 バイオマス度0%)
NPG:ネオペンチルグリコール(植物由来 バイオマス度40%)
BEPG:2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(石油由来 バイオマス度0%)
1,3-PD:1,3-プロパンジオール(植物由来 バイオマス度100%)
EG:エチレングリコール(植物由来 バイオマス度100%)
上記において、NPGのバイオマス度はパーストープ社カタログ値に由来する。
Figure 2024085938000001
[合成例2-1](ウレタン樹脂PU01の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエステルポリオ-ルA1を23.6部、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIとも略す)4.68部、酢酸エチル7.5部、2-エチルヘキサン酸スズ0.003部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、酢酸プロピル7.5部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下IPDAとも略す)1.72部、酢酸エチル34部およびイソプロピルアルコール(以下IPAとも略す)21部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量70000、アミン価4mgKOH/g バイオマス度59%のウレタン樹脂PU01溶液を得た。
[合成例2-2~2-8](ウレタン樹脂PU02~PU08の合成)
表2に記載の原料およびの仕込み比率を用いた以外は、合成例2-1と同様の操作で、ウレタン樹脂PU02~PU08を得た。樹脂物性(アミン価、重量平均分子量、バイオマス度)を同表に示した。
なお、表中に記載の略称は以下を表す。
・PEG:ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール 数平均分子量2,000、石油由来、バイオマス度0%)
Figure 2024085938000002
[合成例3-1](水性ウレタン樹脂WPU01の合成)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PTMG(ポリテトラメチレングリコール 数平均分子量2000)を275.0部、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)35.0部、及びメチルエチルケトン(MEK)250部を混合、撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(IPDI)72.0部を1時間かけて滴下し、80℃で4時間反応させて末端イソシアネートプレポリマーとし、末端イソシアネートプレポリマー溶液を得た。得られた末端イソシアネートプレポリマーに対し、2-アミノエチルエタノールアミン(AEA)3.0部及びイソプロパノール(IPA)150部を混合したものを室温で徐々に添加して、40℃で2時間反応させ、溶剤型ウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水15.0部及びイオン交換水800.0部を上記溶剤型ウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに消泡剤0.5部を添加してMEK及びIPAを減圧留去した後、水を加えて固形分調整を行い、固形分30%の水性ウレタン樹脂WPU01溶液を得た。水性ウレタン樹脂WPU01の酸価及び重量平均分子量の値は表3に記載した。
[合成例3-2および3-3](水性ウレタン樹脂WPU02およびWPU03の合成)
表3に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、合成例3-1と同様の方法で、水性ウレタン樹脂WPU02およびWPU03を得た。なお、表中に記載の略称は以下を表す。
P-2010:クラレ社製 アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールの縮合物からなるポリエステルポリオール 数平均分子量2000
C-2090:クラレ社製 MPD/HD/PC系ポリカーボネートポリオール 数平均分子量2000
Figure 2024085938000003
[調整例1-1](油性インキO1の製造)
タイペークCR-90(石原産業社製 シリカおよびアルミナで被覆された酸化チタン)35部、ウレタン樹脂溶液(PU01)20部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学工業社製 ソルバインTA5R 固形分24%溶液)5部、混合溶剤(酢酸n-プロピル/IPA=80/20(質量比))15部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、ウレタン樹脂溶液(PU01)15部、混合溶剤(酢酸n-プロピル/IPA=80/20(質量比))10部を攪拌混合し、油性インキO1を得た。
[調整例1-2~1-15、比較調整例1-1~1-3](油性インキO2~O15、CO1~CO3の製造)
表4に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、調整例1と同様の方法で、油性インキO2~O15、CO1~CO3を得た。なお表中の記載は以下を表す。
VINNNOL E15/40A:塩化ビニル-アクリル共重合樹脂(Wacker Chemie社製 塩化ビニル成分:アクリル成分=84:16 固形分24%溶液)
DLX5-8:セルロース系樹脂(CI Novel enterprises社製 ニトロセルロース 重量平均分子量50000 窒素分12.0% ガラス転移温度150℃ 固形分30%イソプロパノール溶液)
ハリエスターP:ロジン系樹脂(ハリマ化成社製 ロジン変性ペンタエリスリトールエステル 固形分30%の酢酸エチル溶液)
BR-105:アクリル系樹脂(三菱ケミカル社製 重量平均分子量60,000、ガラス転移点50℃、酸価3.5mgKOH/g 固形分30%の酢酸エチル溶液)
LIONOL BLUE FG-7330:トーヨーカラー社製 銅フタロシアニン藍顔料
HDI-TMPアダクト:イソシアネート系硬化剤(トリメチロールプロパンの水酸基3つとヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアナト基が縮合した3官能イソシアネート硬化剤)
Figure 2024085938000004
Figure 2024085938000005
[調整例2-1](水性インキW1の製造)
銅フタロシアニン藍顔料(トーヨーカラー社製 フタロシアニン顔料 リオノールブルーFG-4330)15.0部、水性ウレタン樹脂溶液P1(固形分30%)を40.0部、消泡剤(ビックケミー社製 シリコン系消泡剤 BYK-011)0.1部、n-プロピルアルコール(NPA)5.0部を撹拌混合しサンドミルで練肉した後、水性スチレン-マレイン酸共重合樹脂(スチレンマレイン酸系樹脂 固形分22.5%、分子量17,000、酸化185mg/KOH)を1.0部、サーフィノール420(アセチレングリコール系化合物 エアープロダクツジャパン社製、固形分100%)を1.0部、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.2部、28%アンモニア水0.5部、水37.2部を攪拌混合し、水性インキW1を得た。
[調整例2-2~2-6](水性インキW2~W6の製造)
表5に記載の原料および仕込み比率を用いた以外は、調整例2-1と同様の方法で、水性インキW2~W6を得た。なお表中の記載は以下を表す。
JONCRYL PDX-7690:水性アクリル樹脂(BASFジャパン株式会社製 酸価85mgKOH/g ガラス転移温度7℃ 固形分42.5質量%)
REGAL250R:Cabot社製 カーボンブラック
タイペークCR-90:石原産業社製 シリカおよびアルミナで被覆された酸化チタン
Figure 2024085938000006
[実施例1](印刷物の作成、水性インキ、油性インキの順に印刷)
上記で得られた水性インキW1を、水/n-プロパノール混合溶剤(質量比1/1)の混合溶剤を用いて、ザーンカップ#3(離合社製)で16秒になるように調整、また、油性インキO1の粘度を酢酸プロピル/IPA混合溶剤(質量比70/30)で、ザーンカップ#3(離合社製)における粘度が15秒(25℃において)に希釈調整し、岩瀬印刷機械社製のグラビア印刷機を用い、片面コロナ処理ポリプロピレン(OPP)基材(東洋紡株式会社製 P-2161 膜厚20μm)に速度100m/minでコロナ処理面に水性インキ、油性インキの順に印刷して60℃で乾燥し、印刷物を得た。版は、水性インキの印刷については腐食250線版深15μmのグラビア版、油性インキの印刷については版深30μmグラビア版を用いた。本印刷物を用いて網点再現性、レベリング性の評価を行った。
上記で得られた印刷物のインキ層上に、イミン系のアンカーコート剤(東洋モートン社製・EL420)を固形分1質量%としたメタノール溶液を塗工し、押し出しラミネート機(ムサシノキカイ社製)によってライン速度100m/minにて溶融ポリエチレン(日本ポリエチレン社製・LC600A)を320℃で押し出して18μmで積層し、同時にCPP(フタムラ化学社製 FCMN 膜厚20μm)を同様に貼り合わせてラミネート積層体を得た
[実施例2~20、比較例1~3](印刷物の作成、水性インキ、油性インキの順に印刷)
表6及び表7に示した基材、水性インキ、及び油性インキを使用した以外は、上記実施例1の印刷物の作成と同様の手順で行い、実施例2~20及び比較例1~3の印刷物及び積層体を作成した。
なお表6記載の略称は以下を表す。
PET:片面コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム 東洋紡株式会社製E5100#12
Figure 2024085938000007
Figure 2024085938000008
[実施例21および22](印刷物の作成、油性インキ、水性インキの順に印刷)
上記実施例1の印刷物の作成において油性インキ、水性インキの順に印刷を行った以外は実施例1と同様の手順で行い、実施例21および22の印刷物及び積層体を作成した。
実施例21
油性インキO15、水性インキW6、油性インキ層のバイオマス度30%
実施例22
油性インキO1、水性インキW1、油性インキ層のバイオマス度13%
上記実施例1~22及び比較例1~3の印刷物及び積層体を用いて、網点再現性、レベリング性及び積層体のラミネート強度について以下に記載する方法で評価を行った。結果を表6、表7に示す。
[印刷効果](網点再現性)
上記実施例及び比較例で得られた印刷物について、印刷物の網点パーセント100%の印刷部から3%の印刷部までを、以下の評価基準で評価した。
A:網点パーセント100%の印刷部から3%の印刷部まで、階調再現性があり、かつ、網点サイズに変化がない(優良)
B:網点パーセント100%の印刷部から3%の印刷部まで階調再現性があり、かつ、網点サイズに少し変化がある(良好)
C:網点パーセント100%の印刷部から10%の印刷部まで階調再現性があり、かつ、網点サイズに少し変化がある(使用可)
D:網点パーセント70%の印刷部以下の階調再現性がなく、かつ、網点サイズに変化がある(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
[印刷効果](レベリング性)
上記で得られた印刷物について、レベリング性の評価を行った。評価基準は以下の通りである。
A:網点100%部に蛍光灯に透かしてもムラがない(優良)
B:網点100%部に蛍光灯に透かして目視できるムラがある(良好)
C:網点90%部まで抜けが有りベタ形成が不十分で、網点100%部はベタ形成している(使用可)
D:網点100%部で抜けが有りベタ形成が不十分である(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
[ラミネート強度]
上記で得られたラミネート積層体を巾15mmで裁断し、インキ層と基材2の層間で剥離させた後、剥離強度をインテスコ製201万能引張り試験機にてラミネート強度を評価した。
(評価基準)
A:引張り強度が1.5N/15mm以上のもの(優良)
B:引張り強度が1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満のもの(良好)
C:引張り強度が0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満のもの(使用可)
D:引張り強度が0.5N/15mm未満のもの(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
[実施例21および22](印刷物の作成、油性インキ、水性インキの順に印刷)
(評価結果)
実施例21
網点再現性C、レベリング性B、ラミネート強度C
実施例22
網点再現性C、レベリング性C、ラミネート強度B
<評価結果>
表6に示される通り、実施例では網点再現性、レベリング性及び積層体のラミネート強度全てが実用レベルである印刷物及び積層体が得られた。一方、表7に示される通り、比較例の印刷物及び積層体は、網点再現性、レベリング性及び積層体のラミネート強度のうちのいずれか一つ以上において実用レベルに満たないものであった。

Claims (9)

  1. 基材1上に、水性インキ層及び油性インキ層を有する印刷物であって、
    前記油性インキ層が、ウレタン樹脂を含み、
    前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、
    前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む、印刷物。
  2. 基材1、水性インキ層及び油性インキ層の順に層を有する印刷物であって、水性インキ層及び油性インキ層が、グラビア印刷層である、請求項1に記載の印刷物。
  3. 油性インキ層が、無機顔料を含む油性インキから形成されてなる、請求項1又は2に記載の印刷物。
  4. 油性インキが、更にイソシアネート系硬化剤を含む、請求項3に記載の印刷物。
  5. 油性インキ層が、更に、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ロジン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の印刷物。
  6. 水性インキ層が、水性ウレタン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の印刷物。
  7. 水性インキ層が、有機顔料及び/又はカーボンブラックを含む、請求項1又は2に記載の印刷物。
  8. 請求項1又は2に記載の印刷物、接着剤層および基材2の順に層を有するラミネート積層体。
  9. 基材1上に水性インキ層及び油性インキ層を有する印刷物の製造方法であって、
    水性インキをグラビア印刷し、水性インキ層を形成する工程、及び、油性インキをグラビア印刷し、油性インキ層を形成する工程を含み、
    前記油性インキが、ウレタン樹脂を含み、
    前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を含み、前記二塩基酸が、セバシン酸、アゼライン酸およびダイマー酸からなる群より選ばれる少なくとも一種のバイオマス二塩基酸を含む、印刷物の製造方法。

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