JP2024070238A - 制振装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】付加質量体の固有周期を構造物の固有周期よりも長く設定される制振装置において、構造物に対する付加質量体の質量比が小さくても大きな制振効果が発揮される制振装置を提供する。【解決手段】付加質量体12と、構造物11に設置され、付加質量体12を水平方向に変位可能なように支持する支承部材13と、構造物11と付加質量体との間に設置され、構造物11に作用する振動エネルギーを吸収し、付加質量体12の変位を制限する減衰機構14とを備え、減衰機構14は、付加質量体12の変位により回転慣性質量を発生する回転慣性質量ダンパー14と、付加質量体12の変位により伸縮するバネ部材18と、付加質量体12の変位を減衰させる減衰部材19とを備え、付加質量体12の固有周期は、構造物11の固有周期よりも大きく設定されている。【選択図】図2
Description
この発明は、制振装置に関し、より詳細には建物等の構造物に搭載されて振動を低減させる制振装置に関する。
建物に対する風や地震等の応答制御技術として、建物にバネ等を介して連結された付加質量体を設置する付加質量型のもの、同調質量ダンパー(Tuned Mass Damper 以下、TMDと称する)が良く知られている。
しかしながら、このTMDは、バネ等を調整してTMDの固有周期を建物の固有周期に同調させるため調整が難しい、等定常波に対する応答制御(床振動等)の場合は有効な方法であるが、地震動のような非定常波の場合は効きが悪い、建物の経年劣化(躯体のひび割れ等)に対して、メンテナンスとしてTMDの周期調整が必要となる等々の問題点を指摘することができる。
このような問題点を解決するするために、特許文献1には付加質量型制振装置の固有周期を、建物の固有周期の2~10倍に設定することで、付加質量体の固有周期を建物の固有周期と同調させる必要がなく、制振効果が発揮されるシステムが開示されている。
しかしながら、このシステムは付加質量体の質量を建物の質量の10%以上にしなければ、制振効果があまり期待できないという問題点がある。
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、付加質量体の固有周期が構造物の固有周期よりも大きく設定される制振装置において、構造物に対する付加質量体の質量比が小さくても大きな制振効果が発揮される制振装置を提供することにある。
この発明の目的は、付加質量体の固有周期が構造物の固有周期よりも大きく設定される制振装置において、構造物に対する付加質量体の質量比が小さくても大きな制振効果が発揮される制振装置を提供することにある。
この発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、付加質量体の固有周期が構造物の固有周期よりも大きく設定される制振装置において、付加質量体に連結される減衰機構として、付加質量体の変位により回転慣性質量を発生する回転慣性質量ダンパーと、付加質量体の変位により伸縮するバネ部材と、付加質量体の変位を減衰させる減衰部材とを備えたもので構成したところ、構造物に対する付加質量体の質量比が小さくても大きな減衰性能が得られることを見出した。
この発明は上記のような知見に基づくものであって、次のように特定される。
すなわち、この発明は、構造物に搭載されて、該構造物の振動を低減させる制振装置であって、
付加質量体と、前記構造物に設置され、前記付加質量体を水平方向に変位可能なように支持する支承部材と、前記構造物と前記付加質量体との間に設置され、前記構造物に作用する振動エネルギーを吸収し、前記付加質量体の変位を制限する減衰機構とを備え、
前記減衰機構は、前記付加質量体の変位により回転慣性質量を発生する回転慣性質量ダンパーと、前記付加質量体の変位により伸縮するバネ部材と、前記付加質量体の変位を減衰させる減衰部材とを備え、
前記付加質量体の固有周期は、前記構造物の固有周期よりも大きく設定されていることを特徴とする制振装置にある。ここに、前記付加質量体の固有周期は、例えば、特許文献1が開示するように、前記構造物の固有周期の2~10倍となるように設定される。
すなわち、この発明は、構造物に搭載されて、該構造物の振動を低減させる制振装置であって、
付加質量体と、前記構造物に設置され、前記付加質量体を水平方向に変位可能なように支持する支承部材と、前記構造物と前記付加質量体との間に設置され、前記構造物に作用する振動エネルギーを吸収し、前記付加質量体の変位を制限する減衰機構とを備え、
前記減衰機構は、前記付加質量体の変位により回転慣性質量を発生する回転慣性質量ダンパーと、前記付加質量体の変位により伸縮するバネ部材と、前記付加質量体の変位を減衰させる減衰部材とを備え、
前記付加質量体の固有周期は、前記構造物の固有周期よりも大きく設定されていることを特徴とする制振装置にある。ここに、前記付加質量体の固有周期は、例えば、特許文献1が開示するように、前記構造物の固有周期の2~10倍となるように設定される。
この発明の発明者らは、さらに、付加質量体と構造物との質量比μと減衰性能との関係を、回転慣性ダンパーの回転慣性質量と付加質量体の質量との比γを種々変化させて調べてみた。その結果、γが大きいほど減衰性能は向上するが、γを10より大きくしても減衰性能の向上は見込めないことが判明した。
この知見に基づき、前記付加質量体の質量に対する構造物の質量の比μと、前記回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量に対する前記付加質量体の質量の比γとを考慮して、前記付加質量体の質量及び前記回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量が設定されることが好ましい。
具体的には、前記回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量に対する前記付加質量体の質量の比γが10以下とされることが好ましい。
また、前記支承部材は、固有周期の調整のし易さの観点から、振り子型のものであることが好ましい。
この発明によれば、付加質量体の固有周期が構造物の固有周期よりも大きく設定される制振装置において、構造物に対する付加質量体の質量比が小さくても大きな制振効果を期待することができる。
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明の実施形態の全体を模式的に示す正面図である。この実施形態は、制振装置10を従来のTMDと同様に、建物11の通常屋上と称されている頂部に搭載した例である。制振装置10の設置対象となる建物11は、S造、RC造、SRC造、木造等いずれでもよく、また既設及び新設のいずれでもよい。また、制振装置10が搭載される構造物は、建物に限らず、塔状構造物、タンク構造物等、他の構造物でもよい。
制振装置10は、付加質量体12と、建物頂部に設置され、付加質量体12を水平方向に変位可能に支持する支承部材13と、建物11の振動エネルギーを吸収し、付加質量体12の変位を制限する減衰機構14とを備えている。
図2は、制振装置10の構成を具体的に示す正面図である。付加質量体12は、例えば鋼材により、適宜の厚みを持つ矩形形状に作られている。この付加質量体12を支持する支承部材13は、建物11上に複数設置されている。
支承部材13は、図示の実施形態では、振り子型の球面すべり支承が採用されている。球面すべり支承13は、周知のように、付加質量体12側及び建物11側にそれぞれ固定されて、互いに対向する凹状球面15を持つ部材13a、13bと、凹状球面15、15に挟まれて配置されたスライダー16とを備えた支承である。付加質量体12は、この支承部材13に支持されることにより、水平方向に変位可能である。支承部材13として振り子型のものを用いることにより、付加質量体12の固有周期は凹状球面の15の曲率半径から算出されるので、固有周期の設定が容易である。
減衰機構14は、付加質量体12の変位により回転慣性質量を発生する回転慣性質量ダンパー17と、付加質量体12の変位により伸縮するバネ部材18と、付加質量体12の変位を減衰させるオイルダンパーからなる減衰部材19とを備える。回転慣性質量ダンパー17は、回転錘20と、この回転錘20に付加質量体12の変位を回転力として伝達する回転力伝達機構21とを備える。
回転錘20は建物11に対して水平方向に回転可能なように軸支されている。回転力伝達機構21は、建物11に対して水平方向に移動可能なように設けられたラック22と、このラック22に噛み合って回転するピニオンを含む歯車列23とを備える。ラック22は長手方向の両側に歯を持つものが用いられ、したがって歯車列23及び回転錘20はラック22の両側に設けられている。
付加質量体12の変位によりラック22が水平移動し、この水平移動は歯車列23により回転錘20に回転力として伝達される。これによって、回転錘20が回転して回転慣性質量が発生する。回転慣性質量ダンパー17が発生する回転慣性質量は、歯車列23を構成する各歯車の慣性モーメント、回転錘20の慣性モーメント等から算出される。
上記のような、回転慣性質量ダンパー17、バネ部材18及び減衰部材19を備える減衰機構14の構成は、3つの形式がある。第1の形式は、図2(a)に示すように、付加質量体12の変位を回転慣性質量ダンパー17に伝達する経路に、バネ部材18及び減衰部材19を並列に配置するものであり、以下、この形式をM-CK型システムと称する。
第2の形式は、図2(b)に示すように、第1の形式であるM-CK型システムの構成に加えて、さらにラック22の移動に伴って伸縮する付加減衰部材27を回転慣性質量ダンパー17に並列に配置するものであり、以下、この形式をMC-CK型システムと称する。
第3の形式は、図2(c)に示すように、付加質量体12の変位を回転慣性質量ダンパー17に伝達する経路にはバネ部材18のみを直列に配置し、これら回転慣性質量ダンパー17及びバネ部材18に対して並列に減衰部材19を配置するものであり、以下、この形式をC_MK型システムと称する。
図2では、回転力伝達機構21を構成する部材として平歯車からなる歯車列23(ピニオンを除く)が示されているが、このような平歯車からなる歯車列に代えて減速機を用いることもできる。そして、減速機としてはヘリカルギヤ使用した遊星歯車機構を組み込んだもの(例えば、住友重機械工業株式会社製「IBシリーズ P2タイプ」)を使用すると好適である。
この場合、減速機の出力軸にラックと噛み合っているピニオンの軸を連結し、入力軸に回転錘20の軸を連結することにより、回転錘20の回転を増速することができる。減速機に使用されているヘリカルギヤは、平歯車に比べて強度が大であって、しかも減速機を用いることで回転力伝達機構21のコンパクト化を図ることができる。
図3は、回転慣性質量ダンパー17の別の実施形態を示している。この実施形態では、回転力伝達機構21として水平方向に配置されたボールねじ24が用いられている。ボールねじ24は、その端部が建物11に対して水平方向に移動可能なように設けられた筐体25に連結されている。
このボールねじ24の外周に回転錘20が設けられている。建物に11に固定された筐体26には、ボールねじ24に螺着されたナットが収容され、このナットに回転錘20が固定されている。付加質量体12の変位によりボールねじ24が水平方向に移動すると、ナットが回転して回転錘20が回転し、これによって回転慣性質量が発生する。
この回転力伝達機構21としてボールねじ24を用いる場合も、減衰機構14の形式は、図2に示したラック22及び歯車列23の場合と同様に、3つの形式があり、図3(a)、(b)及び(c)がそれぞれ、M-CK型システム、MC-CK型システム及びC_MK型システムを示している。
図4は、上記した各形式の減衰機構14を含む制振装置をモデル化して示したもので、(a)、(b)及び(c)に示すモデルが、それぞれM-CK型システム、MC-CK型システム及びC_MK型システムに対応しており、制振装置が設置される構造物(建物)は8層(8階)を想定している。M1~M8は各層の質量、K1~K8は各層の剛性、mは付加質量体12の質量、mdは回転慣性質量ダンパー17の回転慣性質量、cdは減衰部材19の減衰係数、kdはバネ部材18の剛性をそれぞれ示している。
なお、図4に示されているモデルでは、付加質量体12を支持する支承部材として、積層ゴム支承等のばね剛性を有するものを想定しており、kはそのばね剛性を示している。また、図4(d)は特許文献1に示された従来の制振装置をモデル化して示したものである(以下、この従来の形式をC型システムと称する)。
図4に示された各モデルについて、構造物(建物)の固有周期(一次モード)を1.1秒、付加質量体の固有周期を構造物の固有周期よりも大きい4秒と設定して複素固有値解析による最適設計の検討を行った。その結果を図5(M-CK型システム)、図6(MC-CK型システム)及び図7(C_MK型システム)に示す。各図において、横軸は質量比(付加質量体の質量/建物の質量)μ、縦軸は最適粘性減衰定数hoptを示している。
また、回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量mdに対する付加質量体の質量mの比(回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量md/付加質量体の質量m)γをγ=0.5~100の間で変化させて、それぞれのγ値での質量比μに対する最適粘性減衰定数hoptの変化を調べてみた。
検討結果によれば、質量比μが大きくなるにしたがって最適粘性減衰定数hoptが大きくなるのは、従来のC型システムも本発明によるM-CK型システム等も同じであるが、本発明によるM-CK型システム等は、小さな質量比μで大きな最適粘性減衰定数hoptが得られることが分かる。
例えば、図5に示すように、質量比μが0.01(1%)の場合、従来のC型システムによる制振装置では付与減衰が0.005(0.5%)であるのに対し、M-CK型システムによる制振装置では付与減衰は0.03~0.05(3~5%)であり、M-CK型システムによる制振装置は、従来のC型システムによる制振装置の6~10倍程度の粘性減衰が得られる。また、図6及び図7に示すように、MC-CK型やC_MK型による制振装置によっても、上記と同様の粘性減衰が得られる。
したがって、この発明によれば、付加質量体の固有周期を構造物の固有周期よりも長く設定される制振装置において、構造物に対する付加質量体の質量比が小さくても、地震に対する大きな制振効果を期待することができる。
さらに、検討結果によれば、図5、図6及び図7に示すように、回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量mdに対する付加質量体の質量mの比(回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量md/付加質量体の質量m)γを変えた場合、γ値が10まではγ値が大きいほど質量比μに対する最適粘性減衰定数hoptが大きくなるが、γ値が10を超えると最適粘性減衰定数hoptの上昇はみられないことが判明した。
したがって、制振装置を設計するにあたっては、質量比μと、回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量に対する付加質量体の質量の比γとを考慮して、付加質量体の質量及び回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量を設定することが好ましく、特にγ値は10以下にすることが好ましい。
図8は、支承部材の別の実施形態を示している。支承部材13は、付加質量体12の下面に設けられた支柱30と、建物11に設けられて支柱30を水平方向に移動自在(スライド自在)に支持するガイドレール31と、付加質量体12と建物11との間に設けられて、水平方向に変位した付加質量体12を復元させるバネ32とを備える。バネ32は単数又は複数設置され、この実施形態の場合、付加質量体12の固有周期は、バネ32の剛性から算出される。
上記実施形態では、この発明による制振装置を建物の頂部に搭載する例を示したが、これに限らず、建物の中間層に制振装置を設置することもでき、この場合、複数層であってもよい。また、支承部材は球面すべり支承のような振り子型のものや、図8に示したものに限らず、積層ゴム支承を用いることができる。また、支承部材の数は、制振装置が設置される構造物の形状等に応じて、単数又は複数いずれの態様もありうる。
10:制振装置
11:建物(構造物)
12:付加質量体
13:支承部材
14:減衰機構
17:回転慣性質量ダンパー
18:バネ部材
19:減衰部材
20:回転錘
21:回転力伝達機構
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Claims (4)
- 構造物に搭載されて、該構造物の振動を低減させる制振装置であって、
付加質量体と、前記構造物に設置され、前記付加質量体を水平方向に変位可能なように支持する支承部材と、前記構造物と前記付加質量体との間に設置され、前記構造物に作用する振動エネルギーを吸収し、前記付加質量体の変位を制限する減衰機構とを備え、
前記減衰機構は、前記付加質量体の変位により回転慣性質量を発生する回転慣性質量ダンパーと、前記付加質量体の変位により伸縮するバネ部材と、前記付加質量体の変位を減衰させる減衰部材とを備え、
前記付加質量体の固有周期は、前記構造物の固有周期よりも大きく設定されていることを特徴とする制振装置。 - 前記付加質量体の質量に対する構造物の質量の比μと、前記回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量に対する前記付加質量体の質量の比γとを考慮して、前記付加質量体の質量及び前記回転慣性ダンパーの回転慣性質量が設定されていることを特徴とする請求項1記載の制振装置。
- 前記回転慣性質量ダンパーの回転慣性質量に対する前記付加質量体の質量の比γが10以下とされていることを特徴とする請求項2記載の制振装置。
- 前記支承部材は、振り子型のものであることを特徴とする請求項1記載の制振装置。
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