JP2024065684A - 光干渉層を有する部材およびその製造方法 - Google Patents

光干渉層を有する部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 基材の形状によらず、主面全体にわたって優れた反射防止機能を有する部材を提供する。【解決手段】 基材と、前記基材の少なくとも一方の主面に2層で構成される光干渉層と、を有する部材であって、前記光干渉層は、基材側から順に、第一の層と第二の層とを含み、前記第二の層が、無機化合物の粒子を含む多孔質層であることを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、光干渉層を有する部材およびその製造方法に関する。
光入出射界面での反射を抑えるため、反射防止膜が設けられた部材が広く用いられている。特許文献1には、無機材料からなる無機下地層と、酸化ケイ素を含む表面改質層と、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等からなる密着層と、中空シリカ粒子がバインダーにより結着された低屈折率層と、からなる光干渉層が開示されている。
特開2015-222450号公報
特許文献1において、無機下地層および表面改質層は真空蒸着法やスパッタ法等の真空成膜法で形成され、密着層と低屈折率層は塗布法で形成される。
光学部材は主面が曲面になっているものが多く、真空成膜法で形成される膜は、曲面の周辺部の膜厚が曲面中心部に比べて薄くなる傾向がある。一方、塗布法で形成される膜は、曲面の周辺部の膜厚が曲面の中心部に比べて厚くなる傾向がある。そのため、光学部材の曲面の中央部において反射を抑制するための光学設計を満たすように成膜すると、周辺部では光学設計からのずれが大きくなり、十分に反射を抑制することができなくなる。特に、半開角が30°以上の開角の大きな曲面の場合、位置による反射防止効果の差が非常に大きくなり、外観にも影響を及ぼす。
本発明は、この様な背景に鑑みてなされたものであり、基材の形状によらず優れた反射防止性能を有する部材を提供するものである。
上記の課題を解決する部材は、基材と、前記基材の少なくとも一方の主面に2層で構成される光干渉層と、を有する部材であって、
前記光干渉層は、基材側から順に、第一の層と第二の層とを含み、
前記第二の層が、無機化合物の粒子を含む多孔質層であることを特徴とする。
本発明によれば、基材の形状によらず、主面全体にわたって優れた反射防止機能を有する部材を提供することが可能となる。
(a)は本発明に係る部材の断面構成例を示す概略図であり、(b)は第二の層22の概略を示す拡大図である。 (a)は各層の塗工液を連続して塗布することによって得られる部材の断面構成例を示す概略図であり、(b)は第二の層22と第一の層21との界面の概略を示す拡大図である。 本発明の部材の一実施形態である光学素子の断面を示す図である。 本発明にかかる物品を用いた光学機器の一例である撮像装置の概略図である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。
そして、共通する構成を断りなく複数の図面を相互に参照して説明する場合がある。また、共通の符号を付した構成については説明を省略する場合がある。
図1(a)は、本発明に係る部材の層構成の一実施形態を示す断面模式図である。同図において、部材10は、基材1と、基材1上に2層で構成された光干渉層2とを有している。光干渉層2は基材1側から順に第一の層21と第二の層22とを含み、第一の層21と第二の層22による光干渉によって反射を防止する。部材10は、光干渉層2の他に、光干渉に寄与しない機能層3や下引き層4などを有していても良い。
第二の層22は、無機化合物の粒子を含む多孔質層である。空気に接する第二の層22の屈折率が低いため、反射防止効果が得られる光学干渉設計の自由度が高まる。
また、第一の層21と第二の層22は、いずれも塗布法で形成される層である。従って、基材1の中央部から周辺部に向かって各層の膜厚はいずれも増える傾向にある。膜厚の増減が同じ傾向を示す膜どうしを組み合わせた場合、膜厚の増減が反対の傾向を示す膜どうしを組み合わせた構成に比べて、光学設計値からのずれを低減することができる。その結果、部材の光干渉層が設けられる面の形状によらず、面全体において高い反射性防止効果を得ることができる。
塗布法によって形成される第一の層21および第二の層22の屈折率や膜厚は、用いる塗工液あるいは塗布条件によって容易に調整することができる。例えば、第二の層22を形成する塗工液を決めた後に基材1の材質(屈折率)を変更する場合、第一の層21を形成するための塗工液と塗布条件を調整して光学設計に応じた屈折率および膜厚にすることで、反射を低減する光干渉層を実現することが可能となる。このように、本発明にかかる部材は、基材1の形状や材料の変更への対応が容易になり、生産性が向上する。
本発明の部材10は、基材1の曲率や口径によらず高い反射防止性能を実現できるため、光学レンズ、光学ミラー、フィルター、光学フィルムなどの光学素子として用いることができる。特に高い反射防止性能を求められる光学レンズに適しており、種々の光学機器に用いることができる。中でも撮像装置が備える撮像光学系に組み込まれる光学レンズに適している。本発明にかかる部材を撮像光学系に用いれば、外部からの光が撮像光学系を介して撮像素子に結像するまでの間に、部材の表面での光の反射が抑制されて光の透過率が向上し、フレアやゴーストも大幅に低減する。その結果、質の高い画像を取得することが可能となる。
以下、部材10の各構成要素について説明した後、部材の製造方法について説明する。
<部材>
[基材]
本発明の光干渉層2は、第一の層21と第二の層22それぞれの屈折率および/または膜厚を調整することで、様々な基材1について優れた反射防止性能を実現することができる。従って、基材1の材質には、ガラス、セラミックス、樹脂、金属、半導体など任意のものを用いることができる。また、その形状も限定されることはなく、平板、凹面や凸面を有する曲面形状、フィルムなどであっても良い。用途に応じて、透光性の基材を用いると良い。
ガラスやセラミックスの組成としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化ガドリニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウムなどが挙げられる。基材は、研削研磨、モールド成形、フロート成形などの方法で作製することができる。
樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、PET(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂)、トリアセチルセルロース、PC(ポリカーボネート)、シクロオレフィンポリマー、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
金属としては、1種類の金属元素からなるものや2種類以上の金属元素を含む合金を用いることができる。
半導体としてはシリコンやゲルマニウムなどの元素半導体や、リン化ガリウム、リン化インジウム等が挙げられる。
[光干渉層]
光干渉層を構成する2層それぞれについて説明する。まずは、2層のうち空気側(基材1から離れた側)の第二の層について説明した後、第一の層について説明する。
(第二の層)
第二の層22は無機化合物の粒子を含む多孔質層であり、屈折率は1.23以下であることが好ましい。第二の層22の屈折率を1.23以下にすることによって、空気との屈折率差を小さくすることができ、2層という少ない層数による光干渉によって高い反射防止効果を実現することのできる光学設計が可能となる。
第二の層22の屈折率n2は、1.00より大きく1.23以下であることが好ましいが、屈折率n2が1.10より小さな膜の形成が技術的に困難であることを考慮すると、現実的な屈折率n2は、1.10以上1.23以下である。好ましくは、1.10以上1.21以下であり、より好ましくは1.15以上1.20以下である。屈折率n2が1.10以上1.20以下であれば、2層の光学設計によって反射を低減することが可能な基材1の材質の種類が広がる。屈折率n2が1.15以上1.20以下であれば、高い反射防止特性と高い機械的強度を有する光干渉層2を実現することができ、部材10の用途が広がる。
第二の層22の膜厚は、第一の層21の屈折率n1と、反射を防止する光の波長に基づいて設計されるが、屈折率n2の好ましい範囲を考慮すると、50nm以上300nm以下であれば高い反射防止効果が得られるため好ましい。より好ましくは70nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは90nm以上150nm以下である。
図1(a)に示すように、第二の層22は、複数の粒子221がバインダー222によって互いに結着され、粒子間に空隙223を有する多孔質層である。屈折率n2は、第二の層22に含まれる粒子221およびバインダー222の材質と、空隙223の量(空隙率)によって調整することができる。空隙率は、粒子の大きさや形状、バインダー222の量で調整することができる。
粒子221には、可視光域の少なくとも一部における屈折率が1.5未満の無機化合物の粒子が用いられる。具体的には、酸化ケイ素(シリカ)、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の粒子が好ましく、入手のしやすさを考慮すると、シリカ粒子が特に好ましい。粒子221の組成は、層の断面を、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて分析することにより、特定することができる。
粒子221として、内部に空孔を含む中空粒子、鎖状粒子、中実粒子等を用いることができるが、層の空隙率を高くしやすいという点で中空粒子、鎖状粒子が好ましい。第二の層22は屈折率が低いほど好ましいため、より空隙率の高い層を得やすい中空粒子が特に好ましい。なお、鎖状粒子とは、中実粒子などの複数の一次粒子が結着し、直線状あるいは屈曲しながら連なった、二次粒子をいう。
粒子221が中空粒子の場合、中空粒子の平均粒子径は15nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上100nm以下がより好ましく、30nm以上80nm以下がさらに好ましい。均粒子径が15nm以上300nm以下であれば、粒子を安定的に製造することができ、粒子間に大きな空隙が発生して散乱が発生するのを抑制することができる。
中空粒子の平均粒子径とはフェレ径である。このフェレ径は、第二の層22の断面を透過型電子顕微鏡で撮像して得られた像(断面TEM像)から測定することができる。ImageJ(NIH社製)など市販の画像処理ソフトを用い、必要に応じてTEM像のコントラスト調整を行い、少なくとも50個以上の粒子についてフェレ径を計測し、その平均値を平均粒子径として算出することができる。
中空粒子のシェルの厚みは、平均粒子径の10%以上50%以下が好ましく、20%以上35%以下がより好ましい。シェルの厚みがこの範囲にあれば、粒子自体の強度が不足して成膜中に壊れてしまう恐れはなく、粒子1個あたりに含まれる空隙の割合が小さくなり、屈折率を下げる効果が低減する恐れもない。中空粒子のシェルの厚みも、断面TEM像から測定することができる。複数の粒子についてシェルの厚みを計測し、その平均値を用いることができる。
粒子221が鎖状粒子の場合、鎖状粒子を構成する一次粒子は、真球状でも繭型や俵型であっても良いが、長径が短径の1倍以上3倍以下の粒子が特に好ましい。鎖状粒子の太さは、一次粒子の平均粒子径に相当しており、平均粒子径は断面TEM像に写る少なくとも50個以上の一次粒子のフェレ径を計測し、その平均値として求めることができる。
鎖状粒子を構成する一次粒子の平均粒子径は、8nm以上20nm以下が好ましい。平均粒子径が8nm以上20nm以下であると、空隙の表面積が大きくなって雰囲気中の水分や化学物質が取り込まれ、第二の層22の光学特性が変化してしまう恐れはない。また、平均粒子径が大きくなりすぎて、第二の層22を形成するための塗工液中における鎖状粒子の分散が不安定になり、塗工性が悪化して均一な物性の層が得られなくなるという懸念もない。
鎖状粒子の平均粒子径は、一次粒子の平均粒子径の3倍以上10倍以下が好ましく4倍以上8倍以下がより好ましい。鎖状粒子の平均粒子径が一次粒子の平均粒子径の3倍以上10倍以下であれば、多孔質層の屈折率を十分に低減することができるだけの空隙率が得られ、塗工液の粘度が高くなりすぎる恐れがない。さらに、粒子間に形成される空隙が大きくなって光の散乱が発生し、透光性が損なわれるおそれや、塗工性やレベリング性が悪化してしまうおそれもない。
鎖状粒子の平均粒子径は、二次粒子のフェレ径に相当しており、断面TEM像から、少なくとも50個以上の鎖状粒子についてフェレ径を算出し、その平均値として求めることができる。
粒子221が中実粒子の一次粒子の場合、平均粒子径は、5nm以上300nm以下が好ましく、5nm以上150nm以下がより好ましく、5nm以上100nm以下がさらに好ましい。平均粒子径が5nm以上300nm以下であれば、第二の層22の屈折率が上昇したり、散乱が増えたりするのを抑制することができる。中実粒子の平均粒子径も、他の形状の粒子と同様にして、層の断面TEM像から求めることができる。
粒子どうしを結着するバインダー222には、粒子と同質の無機化合物が用いられる。粒子221と同質の無機化合物を用いることで、材料どうしの親和性が高くなり、少量で強い結着力が得られる。その結果、粒子221との親和性が低い樹脂バインダーを用いるよりも、低い屈折率を実現することができる。
粒子221がシリカ粒子の場合、シリカ粒子どうしを結着するバインダー222はシリカが好ましい。
第二の層22におけるバインダー222の含有量は、第二の層22中の無機成分全体(固形成分)を100質量部として0.2質量部以上20質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。バインダー222の含有量が上記範囲にあれば、粒子に対するバインダーの割合が少ないために、耐擦傷性の低い膜になってしまったり、バインダーの含有量が多いために、空隙率が減少して屈折率が上昇したりするのを抑制することができる。
(第一の層)
本発明では、主に第一の層21の屈折率を基材1と第二の層22の屈折率に応じて調整することで、2層からなる光干渉層により高い反射防止性能を実現するものである。
第一の層21の材質は、基材1および第二の層22の屈折率に基づく光学設計や環境耐久性を考慮して選定すればよく、反射を抑制する波長領域に対して透過率の高い材料を用いるとよい。有機材料としては、ポリイミド、アクリル、マレイミド、エポキシ等のポリマーや、無機材料としてはシリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物が好適である。
第一の層21の屈折率n1は1.35以上2.10以下であることが好ましく、1.40以上1.80以下がより好ましい。屈折率n1が1.35以上2.10以下であれば、光干渉による高い反射防止効果を実現することができる。
第一の層21の膜厚は、屈折率n1、反射を防止する光の波長、第二の層22との関係に基づく光学設計によって決めるとよい。前述の屈折率の範囲を達成する材料を用いると、第一の層21の膜厚を30nm以上130nm以下の範囲で高い反射防止効果を実現することができる。第二の層22に好適な屈折率や膜厚の範囲を考慮すると、より好ましくは50nm以上100nm以下である。
第一の層21を有機層とする構成は、塗布法を用いて各層を形成する本発明において特に好ましい。第一の層21を形成するための塗工液が硬化する前に、第二の層22を形成するための塗工液Bを塗布しても、互いの塗工液に含まれる固形成分の親和性が低いため、それぞれの塗工液中の固形成分が分離した状態を維持することができるからである。そのため、塗工液で塗膜を形成する毎に塗膜を硬化させる工程を行う必要がなく、連続して塗布工程を行うことができ、生産効率が向上する。
このように連続して塗布する方法で形成すると、層間の密着力を高める効果も得られる。図2(a)は、各層の塗工液を連続して塗布することによって得られる部材を示しており、図2(b)は、第二の層22と第一の層21との界面の概略を示す拡大図である。第一の層21を形成するための塗工液を塗布して塗膜を形成した後、塗膜を硬化させることなく第二の層22を形成するための塗工液を塗布すると、第二の層22に含まれる粒子221の一部が第一の層21に侵入する。そして、第二の層22と第一の層21との界面に凹凸が形成され、粒子221と第一の層21との接触面積が増えて密着性が高まる。さらに、この凹凸構造により屈折率の疑似勾配が生じることで、高開角部での斜入射特性悪化や散乱によるレンズ外観悪化を抑制することができる。
粒子221が第一の層21に侵入する深さdは、2nm以上15nm未満である。深さdを5nm以上15nm未満とすると、第一の層21と第二の層22との密着性をより高めることができるため好ましい。粒子221の侵入深さdは、第二の層22を形成するための塗工液を塗布する前の、第一の層21を形成するための塗工液を乾燥させる程度によって調整することができる。
第一の層21を有機層とする場合、硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を用いることができるが、硬化条件で屈折率や膜厚が変化しないことや、未硬化モノマーの残留などが少ない点から熱可塑性樹脂がより好ましい。中でも、主鎖中に芳香環やイミド環を有する樹脂やマレイミド共重合体を有するポリマーを用いることが好ましい。
芳香環やイミド環は平面構造を持つため、主鎖中にこれらの構造を導入した有機層は成膜時に分子鎖同士が基板に対して平行に配向し易い。そのため、本発明の有機層のような100nm以下の膜厚であっても、膜厚、屈折率の均一性の高い層を形成することができる。
主鎖中に芳香環やイミド環を有する硬化樹脂としては、1個以上のエポキシ基、オキセタニル基、エピスルフィド基、メチロール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ビニルエーテル基、アクリロイル、メタクリロイル基、マレイミド基などの反応性または重合反応性の置換基を有する化合物あるいはオリゴマーの硬化物が挙げられる。主鎖に芳香環やイミド環を有する硬化樹脂の例としてビスフェノールAエポキシの硬化物、m-フェニレンジイソシアネートの硬化物、メチロールメラミン樹脂、グアナミン樹脂やマレイミド樹脂の硬化物が挙げられる。
主鎖に芳香環やイミド環を有する熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンなどの芳香族ポリエーテル類、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル類、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリウレタン、芳香族ポリ尿素、芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリイミドなどが挙げられる。中でも芳香族ポリエーテル類、芳香族ポリスルフィド類、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミドが耐熱性の観点からより好ましい。
有機層の屈折率は、有機樹脂の構造を変えることによって変化させることができる。例えば、有機樹脂中に含まれる芳香環の数やヘテロ環の数を増やすことで屈折率は高くなる。一方、脂肪族鎖、脂環構造、前記のシロキサン構造やフルオロアルキル基などを増やすと、透明性が向上して屈折率は低下する。主鎖に芳香環やイミド環を有する有機樹脂の中で構造によって比較的容易に屈折率を変化させられる例として、ポリイミドや芳香族ポリエーテル類、芳香族ポリスルフィド類、芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらのポリマーはモノマーを介して芳香環やイミド環と合わせて前記構造を主鎖や側鎖に導入することができる。
重合したマレイミド共重合体は、マレイミドと重合させるモノマーの選択により、マレイミドポリマーの特徴を維持しつつ、屈折率が低く耐溶剤性に優れた膜を実現することができる。
マレイミドポリマーは、イミド環が薄膜形成時に基板に対して平行に配向しやすいため、散乱は低くなるが屈折率が高まる傾向がある。
一方、ポリ(メタ)アクリレートやポリアリルエーテルなどは加工性に優れ、屈折率も低く、様々な光学材料に応用される。しかし、耐溶剤性が低いため、繰り返し塗工液が塗布される積層体用途には不向きである。また、ポリ(メタ)アクリレートに含まれるエステル結合が加水分解し易いため、高温高湿環境に晒されたり、ガラス基材からの成分溶出があったりする薄膜への適用は難しい。
そこで、マレイミドとこれらのモノマーを重合させると、耐溶剤性にも優れ、屈折率の低いマレイミド共重合体の薄膜を実現することができる。第一の層21の屈折率を低く調整する場合には、フッ素アクリルモノマーと重合させたマレイミド共重合体を用いるのが特に好ましい。
第一の層21に用いるマレイミド共重合体は、マレイミド共重合比が0.3以上0.97以下であることが好ましい。マレイミド共重合比が0.3以上0.97以下であると、高温高湿環境下での反射率変動が抑制された低屈折率膜を得ることができ、第二の層を積層する際に不具合が生じるのを抑制することができる。
また、マレイミド共重合体の分子量は、数平均分子量で3,000以上100,000以下が好ましく、5,000以上50,000以下がより好ましい。数平均分子量が前述の範囲にあれば、膜の強度が不足するのを抑制し、第一の層21を形成するための塗工液の粘度を塗工に適切な範囲に調整することが容易となる。
第一の層21と基材との密着性を向上するために、有機層がシロキサン構造(-SiR-O-)を含んでいることも好ましい。ここで、Rはメチル基またはフェニル基であり、mは1以上6以下の整数である。基材との密着性を向上することで、特に高温高湿下での膜剥がれや、クラックなどを抑制することができる。
第一の層21が(-SiR-O-)を含む有機層である場合、(-SiR-O-)を含む繰り返し単位が、全繰り返し単位当り30モル%以下が好ましい。30モル%以下であれば、ガラス転移温度の低下による耐熱性低下や、ガラス基材への濡れ性の低下を抑制することができる。
第一の層21を無機化合物層とする場合、空隙を実質的に含まない無機化合物層を用いることができる。無機化合物としては、可視光域の少なくとも一部において、屈折率が1.60以下の無機化合物が用いられる。具体的には、金属酸化物または金属フッ化物または金属窒化物が好ましく、特に酸化物が好ましい。より具体的には、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。第一の層21に含まれる無機化合物の組成は、第一の層21の断面を、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて分析することにより、特定できる。
(その他の層)
部材10は、主面に光干渉に影響しない他の層を有していても良い。光干渉に影響しない層は光干渉層2には含めない。
光干渉に影響しない他の層を有する例として、第二の層22の基材1とは反対側の面に機能層3を有する構成や、基材1と第一の層21との間に下引き層4を有する構成が挙げられる。これらの層は、光干渉に影響しない15nm以下の膜厚で設けられる。
機能層3は、防汚層、親水層、接着層など、部材に機能性を付与するための層である。防汚層としては、フッ素ポリマーを含む層、フルオロシラン単分子層、酸化チタン粒子を含む層などが好ましい。親水層には親水性ポリマー層が好ましく、スルホベタイン基、カルボベタイン基、ホスホルコリン基などの両性イオン親水基を有するポリマーを含む層が特に好ましい。接着層としては、硬化後に透過率が高いものが望ましく、アクリル樹脂やエポキシ樹脂などが好適である。
下引き層4は、基材1からの不純物の拡散を防いだり、基材1と第一の層21との密着性を高めたりする効果を有する。下引き層4としては酸化物や窒化物、フッ化物などの無機化合物やポリマー層などが挙げられる。
<部材の製造方法>
部材の製造方法は、以下の工程を有する。
(1)基材を準備する工程
(2)基材の上に第一の塗工液を塗布して第一の塗膜を形成する工程
(3)第一の塗膜の上に第二の塗工液を塗布して第二の塗膜を形成する工程
(4)第二の塗膜を硬化する工程
以下、各工程について説明する。
(1)基材を準備する工程
まず、基材1を準備する。基材1は必要に応じて溶媒による洗浄、UV洗浄等を行うとよい。
(2)基材の上に第一の塗工液を塗布して第一の塗膜を形成する工程
まず、第一の層を形成するための第一の塗工液A(以下、塗工液Aと記述する)について説明する。以下では、すでに説明した事項については記載を省略する場合がある。
(塗工液A)
第一の層21は、有機層または無機化合物層である。第一の層21を有機層とする場合の塗工液を塗工液A1、第一の層21を無機化合物層とする場合の塗工液を塗工液A2とし、まず、塗工液A1、A2について説明する。
有機層を形成するための塗工液A1は、第一の層21を構成するポリマー成分と、有機溶媒とを含む。
ポリマー成分は、硬化性、熱可塑性いずれの組成物も用いることができるが、ベーク条件で屈折率や膜厚が変化しない点や、未硬化モノマーの残留などが少ない点から、熱可塑性の組成物が特に好ましい。特に芳香環またはイミド環を有する組成物やマレイミド共重合体を含む組成物が好ましい。
芳香環またはイミド環を有するポリマー成分には、硬化性の組成物の例として、ビスフェノールAエポキシ、m-フェニレンジイソシアネート、メチロールメラミン樹脂、グアナミン樹脂やマレイミド樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂の組成物の例として、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンなどの芳香族ポリエーテル類、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル類、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリウレタン、芳香族ポリ尿素、芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリイミドなどが挙げられる。中でも芳香族ポリエーテル類、芳香族ポリスルフィド類、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミドが耐熱性の観点からより好ましい。
マレイミド共重合体を含有する組成物は、マレイミドモノマーとその他のモノマーを溶液中で重合開始剤の存在下で付加重合させることによって合成することができる。重合性の観点からマレイミドと共重合させるのに適したモノマーは、アクリレート類およびメタクリレート類である。中でも、ポリマーの塗工性、屈折率、および基材1との密着性の観点から、メチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、3-(アクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、メチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランが好ましい。これらのモノマーは、1種または2種以上組み合わせても使用することができる。
ポリマー溶液には、マレイミド共重合体以外の成分を混合することができる。マレイミド共重合体以外の成分は、マレイミド共重合体100重量部に対し20重量部未満であることが好ましい。20質量部より多く入れると、透明性や膜強度、膜厚の均一性が低下する傾向がある。マレイミド共重合体以外の成分としては、密着性を改善するためのシランカップリング剤やリン酸エステル類を用いることができる。また、熱処理時の着色を抑える目的などでフェノール系酸化防止剤を添加することもできる。また、ポリマー層の耐溶剤性を向上する目的でエポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂などの熱や光硬化性樹脂や架橋剤を混合することが出来る。屈折率の調整や膜の硬度を上げるためにSiO、TiO、ZrO、SiO、ZnO、MgO、Alなどの無機微粒子を少量混ぜることができる。
有機溶媒は、ポリマー成分が溶解し、塗工液A1が急激に増粘しない溶媒が好ましい。そのような溶媒としては2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類。酢酸エチル、酢酸n-ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類。テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライムなどのエーテル類。トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類。クロロホルム、メチレンクロライド、テトラクロロエタンなどの塩素化炭化水素類。その他、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの溶媒が挙げられる。さらに、1-ブタノール、1-エトキシ-2プロパノール、メチルセロソルブ、メトキシプロパノールなどのアルコール類も併用することができる。これらの溶媒は1種類であっても、2種類以上が混合されて使用されていても良い。
次に、第一の層21を無機化合物層とする場合の塗工液A2について説明する。
塗工液A2は、第一の層21を構成する無機化合物成分と、有機溶媒と、を含む。
塗工液A2に含まれる無機化合物成分には、金属アルコキシドを用いるのが好ましい。金属アルコキシドとしては、ジルコニウムアルコキシド、シリコンアルコキシド、チタニウムアルコキシド、亜鉛化合物、アルミニウム化合物などが挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドの例として、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn-ブトキシドが挙げられる。
シリコンアルコキシドの例として、低級アルキル基を有するものが挙げられる。
亜鉛化合物としては、例えば酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛などが挙げられ、特に酢酸亜鉛、塩化亜鉛が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム-n-ブトキシド、アルミニウム-sec-ブトキシド、アルミニウム-tert-ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、またこれらのオリゴマー、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
塗工液A2に含まれる有機溶媒は、ジルコニウム、シリコン、チタニウム、亜鉛、アルミニウムなどの金属アルコキシドが析出したり、工程中に塗工液A2が急激に増粘したりしない溶媒であれば良い。
具体例として、以下の有機溶媒が挙げられる。メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、エチレングリコールもしくはエチレングリコール-モノ-n-プロピルエーテルなどのアルコール類;n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類;ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの各種のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類;ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルのような各種のエーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類;N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートのような、非プロトン性極性溶剤等。これらの溶媒のうち、2種類以上の溶媒を混ぜて使用することも可能である。
金属アルコキシドを原料に用いる場合、水に対する反応性が高く、空気中の水分や水の添加によって急速に加水分解が生じる。そのため、塗工液A2に安定化剤を添加して、急速な加水分解を抑制するのも好ましい。安定化剤としては、アセチルアセトン、ジピロバイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ-ジケトン化合物類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸-iso-プロピル、アセト酢酸-tert-ブチル、アセト酢酸-iso-ブチル、アセト酢酸-2-メトキシエチル、3-ケト-n-バレリック酸メチルなどの、β-ケトエステル化合物類;さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの、アルカノールアミン類等を挙げることができる。
(塗工液Aを塗布する方法)
基材1の上に塗工液Aを塗布する方法は、所望の膜厚に制御できるものであれば限定されるものではない。具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スリットコート法、印刷法、グラビアコート法やディップコート法が挙げられる。凹面などの立体的に複雑な形状を有する物品を製造する場合は、均一な厚みの塗膜が得られ易いスピンコート法が特に好ましい。第一の層21の膜厚は、スピンコート法の回転数調整や塗工液Aの固形分濃度の調整などによって制御することができる。
(3)第一の塗膜の上に第二の塗工液を塗布して第二の塗膜を形成する工程
第二の層を形成するための塗工液Bについて説明する。
(塗工液B)
第二の層22を形成するための塗工液Bは、第二の層22を構成する粒子221と、バインダー222となる成分と、溶媒と、を含む。溶媒には有機溶媒や水を用いることができるが、スピンコート法を用いて塗工液Bを塗布する場合は、有機溶媒が特に好ましい。
塗工液Bに含まれる粒子221の材質、形状、大きさは、前述の通りである。塗工液Bに含まれる粒子221の平均粒子径は、塗工液Bから粒子221を抽出して洗浄した後に乾燥させたものについてTEM像を取得し、粒子50個以上についてフェレ径を計測し、その平均値として算出することができる。
粒子221どうしを結着するバインダー222は、粒子221と同質の無機材料が好ましい。粒子221として酸化ケイ素の粒子を用いる場合、バインダー222となる成分は酸化ケイ素化合物が好ましい。塗工液Bに含まれる固形成分(溶質)をすべて無機成分とすることで、機械的強度が高く、屈折が率1.23以下の低い多孔質層を実現することができる。酸化ケイ素化合物として好ましい例は、ケイ酸エステルを加水分解および縮合することにより得られる酸化ケイ素オリゴマーである。
酸化ケイ素の粒子は元から表面にシラノール(Si-OH)基を有しているが、塗工液Bの中で酸化ケイ素オリゴマーと混合することによって、表面のシラノール基の数を増やすことができる。その結果、粒子221の表面がより結着しやすい状態となる。塗工液Bを塗布し、その後に硬化させると、複数の粒子221が酸化ケイ素オリゴマーの硬化物(バインダー222)によって互いに結着され、機械的強度の高い膜を得ることができる。
バインダー222となる成分の含有量は、塗工液Bに含まれている固形成分100質量部に対して0.2質量部以上20質量部以下が好ましく、1質量部以上15質量部以下がより好ましく、3.0質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。バインダーとなる成分の含有量が0.2質量部以上20質量部以下であれば、粒子どうしの結着が弱くなって機械的強度が低下したり、バインダーとなる成分の含有量が多くなって、屈折率が上昇したりするのを抑制することができる。さらに、バインダーとなる成分が粒子の配列を乱し、得られる膜の可視光における散乱が悪化したりするのを抑制することもできる。
塗工液Bに用いる溶媒は、工程中に粒子221が凝集したり、塗工液Bが急激に増粘したりしないものであればよい。塗工液B中の粒子221が均一に分散した状態が維持できると、基材1の上に粒子221が均一に分布した塗膜を形成することができる。逆に、塗工液B中の粒子221が凝集した状態で存在していると、基材1には凝集した状態の粒子221が塗布され、配列性が乱れて所望の屈折率が得られなかったり、光散乱が増大してしまったりする傾向がある。
有機溶媒の具体例として、以下が挙げられる。メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、シクロペンタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチルブタノール、2,4-ジメチル-3-ペンタノール、3-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノールなどの1価のアルコール類。エチレングリコール、トリエチレングリコールなどの2価以上のアルコール類。メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノールなどのエーテルアルコール類、ジメトキシエタン、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルのようなエーテル類。ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類。n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類。トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類。クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類。N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルフォルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートのような、非プロトン性極性溶媒等。これらの溶媒のうち、2種類以上の溶媒を混ぜて使用することも可能である。
粒子221の分散性、塗工性の観点から、塗工液Bに含まれる有機溶媒としては、30%以上が炭素数4以上6以下の水酸基を有する水溶性溶媒であることが好ましい。中でも、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1ブタノール、乳酸エチルからなる群より選択される1種以上を含む溶媒が特に好ましい。
塗工液Bの塗布は、塗工液Aと同様に行うことができる。上述した通り、第二の層22を形成するための塗工液Bの固形成分はすべて無機化合物であり、第一の層21を有機層とする場合の塗工液A1の固形成分との親和性が低いものとなっている。
従って、第一の層21を有機層とする場合は、塗工液A1を塗布して第一の塗膜を形成した後、第一の塗膜を硬化させることなく、第一の塗膜の上に続けて塗工液Bを塗布することが可能である。ここでいう硬化とは、塗工液に含まれる有機溶媒を蒸発させたのち、24時間経過後の屈折率変化が0.01以下であることを言う。
第一の塗膜を硬化させずに塗工液Bを塗布すると、第一の塗膜の表面から塗工液Bに含まれる粒子221がわずかに侵入する。その状態で、(4)塗工液Bの塗膜を硬化する工程が行われると、塗工液A1およびBの塗膜がまとめて硬化される。
図2(a)は、このようにして得られる部材の断面構造を表す模式図であり、図2(b)は、第一の層21と第二の層22との界面を部分的に拡大した図である。光干渉層の第一の層21と第二の層22との界面には、図2(b)に示すように、第二の層22に含まれる粒子221が、第二の層22に侵入しており、界面には微小な凹凸が形成されている。
粒子221の第二の層22への侵入深さdは、2nm以上15nm以下であり、光干渉には影響を及ぼさないが、粒子221と第一の層21との接触面積が大きくなり、第一の層21と第二の層22との密着性を高める効果を有する。さらに、この凹凸により屈折率の疑似勾配が生じ、斜めに入射する光の反射を抑制する効果を得ることもできる。第一の層21と第二の層22との密着性をより高めるためには、深さdは5nm以上15nm以下が好ましい。侵入深さdは、塗工液Bを塗布する工程の前に、第一の塗膜に含まれる有機溶媒の一部を除去する乾燥工程を行うことによって、薄くすることが可能である。粒子221を第二の層22に侵入させたくない場合は、第一の塗膜を硬化させた後に、塗工液Bを塗布すると良い。
第一の層21を無機化合物層とする場合は、塗工液A2に含まれる固形成分と塗工液Bに含まれる固形成分がいずれも無機化合物であり、親和性が高い。従って、塗工液A2の塗膜を硬化させることなく、塗工液A2の塗膜の上に続けて塗工液Bを塗布すると、互いの固形成分が混じり合って、個別の層を形成することが難しくなる。
第一の層21を無機化合物層とする場合は、第一の塗膜を硬化させる工程を行った後に塗工液Bを塗布して第二の塗膜を形成するとよい。この場合、図2に示したように、第二の層22に含まれる粒子221が、第二の層22に侵入する構成はみられないが、無機化合物層どうしの積層であるため、親和性が高く密着性も高い。
(4)第二の塗膜を硬化する工程
前述の通り、第一の塗膜を硬化させずに塗工液Bを塗布する場合は、本工程にて、第一の塗膜および第二の塗膜をまとめて硬化する。第一の塗膜を硬化させる工程を行った後に、塗工液Bを塗布して第二の塗膜を形成する場合は、第二の塗膜だけが硬化される。
本工程は、基材1の耐熱温度に依存するが、20℃以上200℃以下で硬化させるのが好ましい。硬化時間は、基材1に影響を与えず、且つ塗膜に含まれる有機溶媒を除去できる程度の時間であればよい。塗膜を硬化する手法としては、オーブンやホットプレートで加熱しても良いし、積極的な加熱は行わず、時間をかけて硬化させてもよい。
<光学素子>
図3は、基材が曲面を有する部材10の例、具体的には凹形状の主面(光入射面)を有するレンズの一実施形態を表す模式図である。主面の光学有効領域Sには光干渉層2が設けられている。光干渉層2は光学有効領域の一部に形成されても良い。
光干渉層2を構成する第一の層21と第二の層22は、いずれも塗布法によって形成されるため、両層ともに曲面の中心部から外周に向かって膜厚が大きくなっている。
スピンコート法を用いて塗工液を塗布して形成する場合、第一の層21および第二の層22は、光学素子の中心部(半開角0°)における膜厚に対する外周部における膜厚の比が1.0以上1.2以下である。外周部とは、主面の有効径の外縁に沿った幅2mmの領域をいう。レンズの光入射面における光学設計は、光入射面の中心部で最適となるように設計されるため、膜厚比が1.0以上1.2以下であれば、周辺部の反射防止効果が低下して外観が著しく悪化するのを抑制することができる。また面内の膜厚比が小さいため、膜にクラックが生じるのを抑制することもできる。
図3のように光干渉層2が曲面に設けられる場合、第一の層21と第二の層22とが、1.0≦第二の層22の膜厚/第一の層21の膜厚≦1.5の関係を満たしていると、優れた反射防止効果が得られる。
また、第二の層22は、第一の層21よりも、中心部から外周部に向かって膜厚の増え方が小さくなる。これは、曲面に塗工液を塗布する場合、一般的にスピンコート法が用いられ、第二の層22を形成するための無機化合物の粒子を含む塗工液は、特にスピンコート法による曲面に対する塗工性に優れるためと考えられる。
図3には光干渉層2が凹面に設けられる例を示したが、凸面やその他の曲面に設けられる場合も、同様に中心部以外においても十分な反射防止効果を得ることができる。特に、従来の反射防止膜では外周部の反射を抑制するのが難しかった、曲率が大きい(曲率半径が小さい)面の外周部においても、十分な反射防止効果を実現することができる。
第一の層21を有機層とし、第一の層21を形成する塗工液を硬化させることなく第二の層22を形成する塗工液を塗布した場合、第一の層21と第二の層22との界面に形成される微小な凹凸により高開角部での斜入射特性をさらに改善することもできる。
<部材の製造方法>
本発明にかかる物品を備える光学機器として、レンズ鏡筒(交換レンズ)を備える撮像装置の構成例を図4に示す。図4は、レンズ鏡筒(交換レンズ)が結合された一眼レフデジタルカメラである。
本発明において、光学機器とは、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置、交換レンズ等の光学系を備える機器をいう。
また、本発明の撮像装置とは、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像機器、これらの撮像機器を搭載したロボットやドローン等の撮像システム、携帯電話機等、光学素子を通過した光を受光する撮像素子を備える電子機器のことをいう。なお、電子機器に搭載されるモジュール状の形態、例えばカメラモジュールを撮像装置とする場合もある。
図4において、カメラ本体510と光学機器であるレンズ鏡筒520とが結合されているが、レンズ鏡筒520はカメラ本体520対して着脱可能ないわゆる交換レンズである。
被写体からの光は、レンズ鏡筒520の筐体530内の撮影光学系の光軸上に配置された複数のレンズ531、532を含む光学系を通過し、撮像素子で受光される。光学系を構成するレンズ531や532として、本発明にかかる物品を用いることができる。
レンズ532は内筒533によって支持されて、フォーカシングやズーミングのためにレンズ鏡筒520の外筒に対して可動支持されている。
撮影前の観察期間では、被写体からの光は、カメラ本体510の筐体内の主ミラー511により反射され、プリズム512を透過後、ファインダレンズ513を通して撮影者に撮影画像が映し出される。主ミラー511は例えばハーフミラーとなっており、主ミラーを透過した光はサブミラー514によりAF(オートフォーカス)ユニット515の方向に反射され、例えばこの反射光は測距に使用される。また、主ミラー511は主ミラーホルダ540に接着などによって装着、支持されている。不図示の駆動機構を介して、撮影時には主ミラー511とサブミラー514を光路外に移動させ、シャッタ516を開き、撮像素子517にレンズ鏡筒520から入射した撮影光像を結像させる。また、絞り534は、開口面積を変更することにより撮影時の明るさや焦点深度を変更できるよう構成される。
光学系の最も外側、すなわちレンズ鏡筒520の最もカメラ本体510から離れた位置には、レンズフィルター550が装着されている。
レンズフィルター550に図1に示した構成の部材10を用いてもよい。
本発明を実施した実施例1~実施例3、および比較例1~比較例3について説明する。以下に記載された方法で、基材上に積層膜が形成された部品を作製した。本発明はその要旨を超えない範囲で適宜変更することが可能であり、以下で説明する実施例は、発明をこれらに限定するものではない。
<部材の作製>
以下の仕様の基材を準備した。光学レンズaおよびb、平板ガラスは、実施例および比較例に応じて、屈折率の異なる複数種類の硝種のものを用意した。
光学レンズa:外径φ45mm、半開角が80°の研磨された凹面を有するレンズ
光学レンズb:外径φ75mm、半開角が80°の研磨された凹面を有するレンズ
平板ガラス:φ30mm、厚み1mmの片面研磨品
合成石英製平板ガラスa:φ30mm、厚み1mmの片面研磨品
合成石英製平板ガラスb:φ30mm、厚み1mmの両面研磨品
シリコンウェハ:φ30mmの片面研磨品
片面研磨品は研磨面、両面研磨品は一方の研磨面の上に、各実施例または比較例にかかる光学干渉層2を形成した。各実施例あるいは比較例で用いた硝種の種類は、表1にまとめて示しておく。
<評価>
各実施例または比較例で作製した部材に対して以下の評価を行った。
[光学特性]
(反射防止性能)
光干渉層2が設けられた光学レンズa、bの半開角が0°及び45°の位置における垂直入射光の平均反射率を測定した。反射率は、入射光の波長域が400nm~700nmの範囲で測定した。反射率の測定は、オリンパス社製の反射率測定装置USPM-RU3を用いた。
測定して得られた平均反射率は、下記の基準で評価した。光学レンズでは、半開角が0°の位置と45°の位置では、要求される反射防止効果が異なるため、異なる基準で評価している。
半開角が0°における評価基準
A:平均反射率が0%以上0.2%以下
B:平均反射率が0.2%より大きく0.4%以下
C:平均反射率が0.4%より大きく0.6%以下
D:平均反射率が0.6%を超える
半開角が45°における評価基準
A:平均反射率が0%以上0.4%以下
B:平均反射率が0.4%より大きく0.6以下
C:平均反射率が0.6より大きく0.8%以下
D:平均反射率が0.8%を超える
Aは非常に反射防止性能が優れており、Dは反射防止性能が不十分であると判断した。
(散乱)
合成石英製平板ガラスbを所定の位置に保持するための基材ホルダーを準備した。
基材ホルダーに照度計(T-10M コニカミノルタセンシング社製)を設置し、照度を計測しながら、基材ホルダーに保持される基材の主面に垂直方向からの照度される光の照度が4000luxとなるように、白色光の照射強度を調整した。次に光干渉層が設けられた面に白色光が入射するように、光干渉層2が形成された合成石英製平板ガラスbを基板ホルダーに設置した。
設置した合成石英製平板ガラスbの光干渉層2が設けられた面を設置時の状態から45°傾けた。合成石英製平板ガラスbの光干渉層が設けられていない面を、法線方向からカメラ(レンズ:EF50mm F2.5 コンパクトマクロ キヤノン(株)製、カメラ:EOS-70D キヤノン(株)製)で撮影を行った。カメラの撮影条件は、ISO400、ホワイトバランス晴れ、絞り10、シャッタースピード10秒で行った。
撮影を行った画像におけるガラス基材面の700pix×700pixの任意4箇所について平均輝度値を算出したものを散乱値として、散乱の評価を行った。
本発明において、上述した方法にて算出した散乱の値が25以下であれば、低散乱が実現できていると評価した。
(曲面外周部における反射防止性能)
光学レンズa、bに光干渉層を成膜し、目視による高開角レンズとしての外観評価を行った。外観は以下の基準で評価した。
A:外周部の反射がほとんど目立たない
B:外周部における反射が感じられる
C:外周部での反射がかなり目立つ
評価Aのものは、レンズ中心部からレンズ外周部にかけて外観上の変化がほとんど見られず、良好な反射防止効果が得られていると考える。評価Bのものは、評価Aよりは劣るが、十分な反射防止効果が得られていると考える。評価Cのものは、反射防止効が不十分であると考える。
[機械特性]
合成石英製平板ガラスaの上に設けられた光干渉層の表面に、300g/cmの荷重をかけながらエタノールを浸み込ませたポリエステルワイパー(テックスワイプ社製 アルファワイパーTX1009)を押し当てて50回往復させた。その後、光学顕微鏡にて観察し、膜強度の評価を行った。評価基準は以下の通りである。
A:外観上の変化がほとんど見られない
B:外観に若干の変化がみられる
C:微小な線キズなどが生じている
D:外観が著しく変化し、線キズや膜剥がれなどが生じている
評価がAの場合は強度が優れ、Bの場合は強度が良好であり、Cの場合は強度が可として、光干渉層としての使用に問題は無いと判断した。
[各層の屈折率と膜厚の評価]
第一の層21、第二の層22それぞれの屈折率、第二の層22に含まれる粒子が第一の層21に侵入している深さについて、以下の手順で評価した。
光干渉層2が形成されたシリコンウェハ、および屈折率の異なる硝種からなる複数の平板ガラスについて、分光エリプソメータ(VASE、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製)を用いて波長380nmから800nmまで反射特性を測定した。粒子が隣接する有機層に侵入している領域を混合層とし、基材、光干渉層と混合層との積層構成でフィッティング解析を行って、各層の屈折率と混合層の膜厚を求めた。混合層の膜厚が、粒子が隣接する有機層に侵入している深さに相当する。
粒子が隣接する有機層に侵入している深さは、断面STEM像からも確認した。まず、観察前の処理として、光干渉層2が形成された平板ガラス試料をCペーストで試料台に固定し、Pt-Pdを60秒×1回スパッタして導電性を付与した。次に、EビームとGaイオンビームを用いてPt保護膜を堆積し、μ-サンプリング、薄片化加工(加速電圧:30kV)を施して断面STEM観察用の試料を作製した。加工した試料について、断面ADF(円環状暗視野)-STEM観察(使用装置:FEI製TecnaiF20)を実施し、粒子が第一の層21に侵入している深さを測定した。
[実施例1]
硝種S-LAH98からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.954、株式会社オハラ製)および合成石英製平板板ガラスa、b、シリコンウェハそれぞれの上に、以下の手順で光干渉層を形成した。
4,4’-メチレンビス(アミノシクロヘキサン)(以下DADCMと記述する。東京化成製)200gに還流させながらヘキサンを徐々に加えて完全に溶解させた。加熱を止め数日間室温に放置した後、析出物を濾別し、減圧乾燥した。58gの白色固体状の脂環式ジアミンDADCMを得た。
合計で12mmolになるように脂環式ジアミンDADCM、芳香族ジアミン4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(製品名BODA:和歌山精化工業製)およびシロキサン含有ジアミン1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(製品名PAM-E:信越化学工業製)の3種類のジアミンをN,N-ジメチルアセトアミド(以下DMAcと記述する)に溶解した。
このジアミン溶液を水冷しながら約12mmolの酸二無水物を加えた。酸二無水物は4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(製品名TDA-100:新日本理化製)を用いた。DMAcの量はジアミンと酸二無水物の質量の合計が20重量%になるように調整した。
この溶液を15時間室温で攪拌し、重合反応を行った。さらに、DMAcで希釈して8重量%になるように調整した後、7.4mlのピリジンと3.8mlの無水酢酸を加え、室温で1時間攪拌した。さらに、オイルバスで60から70℃に加熱しながら4時間攪拌した。重合溶液をメタノールに再沈殿しポリマーを取り出した後、メタノール中で数回洗浄した。60℃で24時間乾燥後、白色から淡黄色粉末状のポリイミドを得た。
得られたポリイミドを固形分濃度が3.0質量%になるようにシクロヘキサノンに溶解させ、第一の層を形成するための塗工液A1-1を得た。
中空のシリカ粒子のイソプロピルアルコール分散液(日揮触媒化成株式会社製 スルーリア4110、平均粒子径約60nm、シェル厚約12nm、固形分濃度20.5質量%)580gに、1-エトキシ-2-プロパノール(以下1E2Pと記述する)を加えながらイソプロピルアルコールを加熱留去した。固形分濃度19.5質量%となるまでソプロピルアルコールを留去して、中空のシリカ粒子の1E2P溶媒置換液(以下、溶媒置換液1と称する)610gを調製した。中空のシリカ粒子:ドデカフルオロスベリン酸(東京化成工業株式会社製)の質量比が100:1となるように、溶媒置換液1にドデカフルオロスベリン酸を添加し、分散液1を得た。
別の容器に、純水で0.1%濃度に希釈したホスフィン酸3.6gと1-プロポキシ-2-プロパノール11.4gとメチルポリシリケート(コルコート株式会社製 メチルシリケート53A)4.5gをゆっくり加え室温で120分間攪拌し、固形分濃度12質量%のシリカゾル1を調製した。
固形分濃度が4.5質量%になるように、分散液1を乳酸エチルで希釈した後、中空酸化ケイ素粒子:シリカゾル成分の比が100:12となるように、シリカゾル1を添加した。さらに、室温で2時間混合攪拌することで中空のシリカ粒子を含む第二の層22を形成するための塗工液B-1を得た。
塗工液A1-1を各基材の上に滴下し、スピンコーターにて成膜した後、続けて塗工液B-1を滴下し、スピンコーターにて成膜した。室温で24時間以上かけて硬化を行い、光干渉層を有する部材を得た。得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に79.5nm、96nmであった。混合層の膜厚は14nmで、断面STEM像から測定した第二の層22に含まれる粒子が第一の層21に侵入している深さとほぼ一致していた。
[実施例2]
硝種S-LAH53からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.806、株式会社オハラ製)および合成石英製平板板ガラスa、b、シリコンウェハそれぞれの上に、以下の手順で光干渉層を形成した。
エポキシ樹脂jER828に(三菱ケミカル製)2gにリカシッドHH(新日本理化製)1.6g、1-メトキシ-2-プロパノール96.4gを加えて第一の層を形成するための塗工液A1-2を作製した。
塗工液A1-2を各基材の上に滴下してスピンコーターにて成膜した後、40℃で30分のプレベークを行った。続いて、塗工液B-1を滴下し、スピンコーターにて成膜した後、80℃で2時間以上かけて硬化を行い、2層からなる光干渉層を有する部材を得た。得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に82.1nm、102nmであった。混合層の膜厚は6nmで、断面STEM像から測定した第二の層22に含まれる粒子が第一の層21に侵入している深さとほぼ一致していた。
[実施例3]
硝種S-TIM28からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.689、株式会社オハラ製)および成石英製平板ガラスa、b、シリコンウェハそれぞれの上に、以下の手順で光干渉層を形成した。
10.2gのN-シクロヘキシルマレイミド(以下CHMIと記述する)、0.2gの2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(製品名M-3F:共栄社化学製)、0.45gの3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(製品名LS-3380:信越化学工業製)、および0.08gの2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(以下AIBNと記述する)を24.8gのトルエンに攪拌溶解した。
この溶液を氷水冷しながら脱気と窒素置換を繰り返し行った後、窒素フローしながら60~70℃で7時間攪拌した。強攪拌したメタノール中にゆっくりと重合溶液を投入し析出させたポリマーを濾別してから、メタノール中で数回攪拌洗浄した。濾別回収したポリマーを80~90℃で真空乾燥を行った。白色粉末状でマレイミド共重合比が0.95のマレイミド共重合体1を8.3g(収率81%)を得た。2.2gのマレイミド共重合体1の粉末を97.8gのシクロペンタノン/シクロヘキサノン混合溶媒に溶解してマレイミド共重合体1の溶液を調製し、第一の層を形成するための塗工液A1-3を作製した。
塗工液A1-3を各基材の上に滴下し、約80nmの厚みになるようにスピンコーターにて成膜した後、続けて塗工液B-1を滴下し、約105nmの厚みになるよう成膜した。室温で24時間以上乾燥を行い、2層からなる光干渉層を有する部材を得た。得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に81.7nm、105nmであった。混合層の膜厚は13nmで、断面STEM像から測定した第二の層22に含まれる粒子が第一の層21に侵入している深さとほぼ一致していた。
[実施例4]
硝種S-NSL5からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.522、株式会社オハラ製)および合成石英製平板ガラスa、b、シリコンウェハの上に、以下の手順で光干渉層を形成した。
鎖状シリカ粒子分散液PL-1(扶桑化学製)25gに1-メトキシ-2-プロパノール300gとシリカゾル1を5gを加えて第一の層を形成するための塗工液A2-1を作製した。
塗工液A2-1を、各基材の上に滴下し、約80nmの厚みになるようにスピンコーターにて成膜した後、40℃で30分ベークして硬化を行った。その後、塗工液B-1を滴下し、約110nmの厚みになるよう成膜した。室温で24時間以上かけて塗工液B-1の塗膜の硬化を行い、2層からなる光干渉層を有する部材を得た。得得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に79.2nm、108nmであった。混合層の膜厚は10nmで、断面STEM像から測定した第二の層22に含まれる粒子が第一の層21に侵入している深さとほぼ一致していた。
[実施例5]
硝種L-BAL42からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.583、株式会社オハラ製)および合成石英製平板ガラスa、b、シリコンウェハそれぞれの上に、以下の手順で光干渉層を形成した。
6.1gのCHMI、4.0gの2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(製品名M-3F:共栄社化学製)、0.45gの3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(製品名LS-3380:信越化学工業製)、および0.08gのAIBNを、24.8gのトルエンに攪拌溶解した。
この溶液を氷水冷しながら脱気と窒素置換を繰り返し行った後、窒素フローしながら60~70℃で7時間攪拌した。強攪拌したメタノール中にゆっくりと重合溶液を投入し析出させたポリマーを濾別してから、メタノール中で数回攪拌洗浄した。濾別回収したポリマーを80~90℃で真空乾燥を行った。白色粉末状でマレイミド共重合比が0.57のマレイミド共重合体2を8.3g(収率81%)を得た。2.2gのマレイミド共重合体2の粉末を97.8gのシクロペンタノン/シクロヘキサノン混合溶媒に溶解してマレイミド共重合体2の溶液を調製し、第一の層を形成するための塗工液A1-4を得た。
塗工液A1-4を各基材の上に滴下し、約90nmの厚みになるようにスピンコーターにて成膜した。続けて塗工液B-1を滴下し、約110nmの厚みになるよう成膜した。室温で24時間以上かけて硬化させ、2層からなる光干渉層を有する部材を得た。得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に90.2nm、109nmであった。混合層の膜厚は11nmで、断面STEM像から測定した第二の層22に含まれる粒子が第一の層21に侵入している深さとほぼ一致していた。
[実施例6]
硝種S-TIM27からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.640、株式会社オハラ製)および合成石英製平板ガラスa、b、シリコンウェハそれぞれの上に、以下の手順で光干渉層を形成した。
1.1gのマレイミド共重合体1の粉体および1.1gのマレイミド共重合体2の粉末を、97.8gのシクロペンタノン/シクロヘキサノン混合溶媒に溶解してマレイミド共重合体の溶液を調製し、第一の層を形成するための塗工液A1-5を得た。
塗工液A1-5を、各基材の上に滴下し、約80nmの厚みになるようにスピンコーターにて成膜した後、続けて塗工液B-1を滴下し、約105nmの厚みになるよう成膜した。室温で24時間以上かけて硬化を行い、2層からなる光干渉層を有する部材を得た。得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に80.5nm、105nmであった。混合層の膜厚は14nmで、断面STEM像から測定した第二の層22に含まれる粒子が第一の層21に侵入している深さとほぼ一致していた。
[実施例7]
硝種S-TIH53からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.847、株式会社オハラ製)および合成石英製平板ガラスa、b、シリコンウェハそれぞれの上に、以下の手順で光干渉層を形成した。
中空のシリカ粒子のイソプロピルアルコール分散液(日揮触媒化成株式会社製 スルーリア1110、平均粒子径約50nm、シェル厚約10nm、固形分濃度20.5質量%)580gに、1E2Pを加えながらイソプロピルアルコールを加熱留去した。固形分濃度19.5質量%となるまでイソプロピルアルコールを留去して、中空のシリカ粒子の1E2P溶媒置換液(以下、溶媒置換液2と称する)610gを調製した。中空のシリカ粒子:ペンタフルオロプロピオン酸(東京化成工業株式会社製)の質量比が100:0.9となるように、溶媒置換液2にペンタフルオロプロピオン酸を添加し、分散液2を得た。
固形分濃度が4.5質量%になるように、分散液2を乳酸エチルで希釈した後、中空のシリカ粒子:シリカゾル成分の質量比が100:12となるように、シリカゾル1を添加した。さらに、室温で2時間混合攪拌することで塗工液B-2を得た。
塗工液A1-1を各基材の上に滴下し、約80nmの厚みになるようにスピンコーターにて成膜した後、続けて塗工液B-2を滴下し、約105nmの厚みになるよう成膜した。室温で24時間以上かけて硬化を行い、光干渉層を有する部材を得た。得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に80.2nm、104nmであった。混合層の膜厚は12nmで、断面STEM像から測定した第二の層22に含まれる粒子が第一の層21に侵入している深さとほぼ一致していた。
[比較例1]
中空のシリカ粒子:トリフルオロ酢酸(東京化成工業株式会社製)の質量比が100:1となるように、溶媒置換液2にトリフルオロ酢酸を添加し、分散液3を得た。
固形分濃度が4.5質量%になるように、分散液2を乳酸エチルで希釈した後、中空のシリカ粒子:シリカゾル成分の質量比が100:14となるように、シリカゾル1を添加した。さらに、室温で2時間混合攪拌することで塗工液B-2を得た。
硝種:S-LAH98からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.954、株式会社オハラ製)および合成石英製平板ガラスa、b、シリコンウェハの上に、表1に示す6層を、合計膜厚400nmとなるように真空成膜法により形成した。表1には積層順に従って記載している。
Figure 2024065684000002
表1の6層の上に塗工液B-3を滴下し、スピンコーターにて成膜した。室温で24時間以上かけて硬化を行い、123nmの厚みの多孔質層を得た。表1に記載の6層と多孔質層の7層からなる光干渉層が形成された部材を得た。
[比較例2]
硝種S-LAH55からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.834、株式会社オハラ製)および合成石英製平板ガラスa、b、シリコンウェハそれぞれの基材の上に、以下の手順で光干渉層を形成した。
塗工液A1-3を基材の上に滴下し、約50nmの厚みになるようにスピンコーターにて成膜し、40℃で30分のプレベークを行った。その後、塗工液A1-4を滴下し、約40nmの厚みになるようにスピンコーターにて成膜した後、連続で塗工液B-1を滴下し、約105nmの厚みになるよう成膜した。室温で24時間以上かけて硬化を行い、3層からなる光干渉層を有する部材を得た。得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に50.4nm、40.2nm、103nmであった。混合層の膜厚は11nmで、断面STEM像から測定した、多孔質層に含まれる粒子が、多孔質層に接する有機層に侵入している深さとほぼ一致していた。
[比較例3]
中空のシリカ粒子:ペンタフルオロ酪酸(東京化成工業株式会社製)の比が100:1.2となるように、溶媒置換液2にペンタフルオロ酪酸を添加し、分散液4を得た。
別容器にマレイミド共重合体1の粉末1.0gを9.0gのプロプレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解してマレイミド共重合体3の溶液を調製し、アクリルバインダー溶液を調整した。
固形分濃度が4.5質量%になるように分散液4を乳酸エチルで希釈した後、中空のシリカ粒子:アクリルバインダー溶液の質量比が100:12となるように混合した。さらに、室温で2時間混合攪拌することで中空のシリカ粒子を含む塗工液Cを得た。
硝種S-LAH53からなる光学レンズa、bおよび平板ガラス(屈折率:nd=1.806、株式会社オハラ製)および合成石英製平板ガラスa、b、シリコンウェハそれぞれに、真空成膜法によりSiO2層(屈折率1.48)を膜厚21.2nmで成膜した。その上に、塗工液A1-2を滴下し、約50nmの厚みになるようにスピンコーターにて成膜した。40℃で30分のプレベークを行ったあと、塗工液Cを滴下し、約110nmの厚みになるよう成膜した。80℃で2時間以上かけて硬化を行い、3層からなる光干渉層を有する部材を得た。得られた光干渉層を構成する各層の膜厚は、基材側から順に21.2nm、49.8nm、111nmであった。混合層の膜厚は5nmで、断面STEM像から測定した、多孔質層に含まれる粒子が多孔質層に接する有機層に侵入している深さとほぼ一致していた。
実施例および比較例にて作製した部材に設けた光干渉層の膜厚および屈折率の評価結果等を、用いた基材の硝種と屈折率と共に表2に示す。表2では、光干渉層を構成する層を、基材側から層1、層2、層3として表記している。また、比較例1は、光干渉層が7層で構成されるため、最も基材から離れた層を層3に表記し、それ以外の6層をまとめて表記した。
Figure 2024065684000003
表3に、実施例および比較例にて作製した部材の光学特性と機械特性についての評価結果を示す。
Figure 2024065684000004
表3の結果から、実施例で用いた1から6の部材は、開角に対する適用範囲が大きく、優れた光学特性および実用上十分な機械特性を有する光学薄膜が形成された光学素子が得られることが分かった。さらに、周辺部の反射防止効果に優れ、低散乱な光学素子として実用上十分な性能を実現できることも分かった。
比較例1~3の部材は、光学特性や機械特性において優れる点があるものの、両方を兼ね備えることが難しいことが確認できた。
上記実施形態の開示は以下の項を含む。
(項1)
基材と、前記基材の少なくとも一方の主面に2層で構成される光干渉層と、を有する部材であって、
前記光干渉層は、基材側から順に、第一の層と第二の層とを含み、
前記第二の層が、無機化合物の粒子を含む多孔質層であることを特徴とする部材。
(項2)
前記第二の層の屈折率が、1.10以上1.23以下であることを特徴とする項1に記載の部材。
(項3)
前記第二の層の屈折率が、1.15以上1.20以下であることを特徴とする項1に記載の部材。
(項4)
前記第二の層の膜厚が、50nm以上300nm以下であることを特徴とする項1乃至3のいずれか一項に記載の部材。
(項5)
前記第二の層の膜厚が、90nm以上150nm以下であることを特徴とする項1乃至3のいずれか一項に記載の部材。
(項6)
前記第二の層が、無機化合物のバインダーで互いに結着された複数の無機化合物の粒子を含み、前記複数の無機化合物の粒子間に空隙を有することを特徴とする項1乃至5のいずれか一項に記載の部材。
(項7)
前記無機化合物の粒子が、中空または鎖状のシリカ粒子であることを特徴とする項1乃至6のいずれか一項に記載の部材。
(項8)
前記無機化合物の粒子どうしが、酸化ケイ素化合物のバインダーによって結着されていることを特徴とする項7に記載の部材。
(項9)
前記第一の層の屈折率が、1.35以上2.00以下であることを特徴とする項1乃至8のいずれか一項に記載の部材。
(項10)
前記第一の層の膜厚が、30nm以上130nm以下であることを特徴とする項1乃至9のいずれか一項に記載の部材。
(項11)
前記第一の層の膜厚が、50nm以上100nm以下であることを特徴とする項1乃至9のいずれか一項に記載の部材。
(項12)
前記第一の層が、有機層であることを特徴とする項1乃至11のいずれか一項に記載の部材。
(項13)
前記有機層が、主鎖に芳香環またはイミド環を有する樹脂またはマレイミド共重合体を含むことを特徴とする項12に記載の部材。
(項14)
前記有機層が、下記一般式に示される構造を含むことを特徴とする項12または13に記載の部材。
(-SiR-O-)
(項15)
前記第一の層に含まれる前記粒子が、前記第二の層に侵入していることを特徴とする項1乃至14のいずれか一項に記載の部材。
(項16)
前記粒子が前記第二の層に侵入している深さが、2nm以上15nm未満であることを特徴とする項15に記載の部材。
(項17)
前記基材の前記主面が曲率を有しており、
前記第一の層および前記第二の層は、いずれも前記基材の中心部から外周部にかけて膜厚が増加することを特徴とする項1乃至16のいずれか一項に記載の部材。
(項18)
前記光学干渉層の前記中心部における膜厚に対する前記外周部における膜厚の比が、1.0以上1.2以下であることを特徴とする項17に記載の部材。
(項19)
筐体と、該筐体内に設けられた光学系と、を備える光学機器であって、
前記光学系を構成する光学素子の少なくとも1つが、項1乃至18のいずれか一項に記載の部材であることを特徴とする光学機器。
(項20)
該光学系を通過した光を受光する撮像素子をさらに備えることを特徴とする項19に記載の部材。
(項21)
基材の上に2層からなる光干渉層を備える部材の製造方法であって、
前記基材の上に第一の塗工液を塗布して第一の塗膜を形成する工程と、
前記第一の塗膜の上に第二の塗工液を塗布して第二の塗膜を形成する工程と、
前記第二の塗膜を硬化する工程と、
を有し、
前記第二の塗工液が無機化合物の粒子を含むことを特徴とする部材の製造方法。
(項22)
前記無機化合物の粒子が、中空または鎖状のシリカ粒子であることを特徴とする項21に記載の部材の製造方法。
(項23)
前記第二の塗工液が、酸化ケイ素オリゴマーをさらに含むことを特徴とする項21または22に記載の部材の製造方法。
(項24)
前記第一の塗工液が、芳香環またはイミド環を有する化合物またはマレイミド共重合体を含むことを特徴とする項21乃至項23のいずれか一項に記載の部材の製造方法。
(項25)
前記第二の塗膜を形成する工程が、前記第一の塗膜が硬化する前に行われることを特徴とする項24に記載の部材の製造方法。
(項26)
前記第一の塗膜を形成する工程および前記第二の塗膜を形成する工程が、スピンコート法を用いて行われることを特徴とする項21乃至25のいずれか一項に記載の部材の製造方法。
本発明の部材は、各種光学レンズ、マイクロレンズ、液晶パネル用ガラスなど、光学用途に用いることできる。
1 基材
2 光干渉層
21 第一の層
22 第二の層
221 粒子
222 バインダー
223 空隙

Claims (26)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも一方の主面に2層で構成される光干渉層と、を有する部材であって、
    前記光干渉層は、基材側から順に、第一の層と第二の層とを含み、
    前記第二の層が、無機化合物の粒子を含む多孔質層であることを特徴とする部材。
  2. 前記第二の層の屈折率が、1.10以上1.23以下であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  3. 前記第二の層の屈折率が、1.15以上1.20以下であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  4. 前記第二の層の膜厚が、50nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  5. 前記第二の層の膜厚が、90nm以上150nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  6. 前記第二の層が、無機化合物のバインダーで互いに結着された複数の無機化合物の粒子を含み、前記複数の無機化合物の粒子間に空隙を有することを特徴とする請求項1に記載の部材。
  7. 前記無機化合物の粒子が、中空または鎖状のシリカ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  8. 前記無機化合物の粒子どうしが、酸化ケイ素化合物のバインダーによって結着されていることを特徴とする請求項7に記載の部材。
  9. 前記第一の層の屈折率が、1.35以上2.00以下であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  10. 前記第一の層の膜厚が、30nm以上130nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  11. 前記第一の層の膜厚が、50nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  12. 前記第一の層が、有機層であることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  13. 前記有機層が、主鎖に芳香環またはイミド環を有する樹脂またはマレイミド共重合体を含むことを特徴とする請求項12に記載の部材。
  14. 前記有機層が、下記一般式に示される構造を含むことを特徴とする請求項12に記載の部材。
    (-SiR-O-)
  15. 前記第一の層に含まれる前記粒子が、前記第二の層に侵入していることを特徴とする請求項1に記載の部材。
  16. 前記粒子が前記第二の層に侵入している深さが、2nm以上15nm未満であることを特徴とする請求項15に記載の部材。
  17. 前記主面が曲率を有しており、
    前記第一の層および前記第二の層は、いずれも前記主面の中心部から外周部にかけて膜厚が増加することを特徴とする請求項1に記載の部材。
  18. 前記光干渉層の、前記中心部における膜厚に対する前記外周部における膜厚の比が、1.0以上1.2以下であることを特徴とする請求項17に記載の部材。
  19. 筐体と、該筐体内に設けられた光学系と、を備える光学機器であって、
    前記光学系を構成する光学素子の少なくとも1つが、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の部材であることを特徴とする光学機器。
  20. 該光学系を通過した光を受光する撮像素子をさらに備えることを特徴とする請求項19に記載の部材。
  21. 基材の上に2層からなる光干渉層を備える部材の製造方法であって、
    前記基材の上に第一の塗工液を塗布して第一の塗膜を形成する工程と、
    前記第一の塗膜の上に第二の塗工液を塗布して第二の塗膜を形成する工程と、
    前記第二の塗膜を硬化する工程と、
    を有し、
    前記第二の塗工液が無機化合物の粒子を含むことを特徴とする部材の製造方法。
  22. 前記無機化合物の粒子が、中空または鎖状のシリカ粒子であることを特徴とする請求項21に記載の部材の製造方法。
  23. 前記第二の塗工液が、酸化ケイ素オリゴマーをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の部材の製造方法。
  24. 前記第一の塗工液が、芳香環またはイミド環を有する化合物またはマレイミド共重合体を含むことを特徴とする請求項21に記載の部材の製造方法。
  25. 前記第二の塗膜を形成する工程が、前記第一の塗膜が硬化する前に行われることを特徴とする請求項24に記載の部材の製造方法。
  26. 前記第一の塗膜を形成する工程および前記第二の塗膜を形成する工程が、スピンコート法を用いて行われることを特徴とする請求項21乃至25のいずれか一項に記載の部材の製造方法。
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