JP2024064272A - 多層体および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 湿熱試験後も、ポリカーボネート樹脂の分子量低下が小さいポリカーボネート樹脂を用いた多層体および成形品の提供。【解決手段】 芳香族ポリカーボネート樹脂層(X)の少なくとも一方の面に、他の熱可塑性樹脂層(Y)を有する多層体であって、層(X)は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤0.05~10質量部を含む、多層体。(式(B)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Arは、ベンゼン環またはナフタレン環である。)TIFF2024064272000025.tif23147【選択図】 図1

Description

本発明は、多層体および成形品に関する。特に、ポリカーボネート樹脂層を有する多層体に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性に優れることに加え、ガラスと比較して加工性、耐衝撃性に優れ、また、他のプラスチック材料に比べて有毒ガスの心配もないため、様々な分野で広く用いられており、真空成形や圧空成形などの熱成形用材料としても使用されている。
一方、ポリカーボネート樹脂は、一般的に表面硬度が低いため、ポリカーボネート樹脂からなる成形品の表面に傷が入り易い傾向にある。そこで、ポリカーボネート樹脂をフィルム状にした場合、表面にアクリル樹脂を含む層やハードコート層(保護層)を形成し、製品表面に傷が入らないようにすることが検討されている。
例えば、特許文献1には、芳香族ポリカーボネート(A1)と他の樹脂(A2)とのポリマーアロイからなるポリカーボネート系樹脂組成物(A)を主成分とする基材層の片面に、アクリル系樹脂(B)を主成分とする被覆層を備えた積層シートであって、該ポリカーボネート系樹脂組成物(A)と該アクリル系樹脂(B)とのガラス転移温度の差の絶対値が30℃以内であることを特徴とする成形用樹脂シートが開示されている。
特開2009-196153号公報
ここで、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層と他の熱可塑性樹脂を含む層を有する多層体において、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層のガラス転移温度と他の熱可塑性樹脂を含む層のガラス転移温度の差が大きいと、前記多層体を加熱成形したときに、多層体にクラックが発生したり、熱曲げ後に多層体が元の形に戻る現象(スプリングバック)が発生したりしてしまう場合がある。
そこで、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層のガラス転移温度を低くするため、可塑剤を添加して、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層のガラス転移温度を下げることが考えられる。しかしながら、ポリカーボネート樹脂に可塑剤を配合すると、湿熱試験などによって、ポリカーボネート樹脂の分子量が低下してしまう場合があることが分かった。このようにポリカーボネート樹脂の分子量低下が生じると、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する機械的強度等を十分に発揮させることができない。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、湿熱試験後も、ポリカーボネート樹脂の分子量低下が小さいポリカーボネート樹脂を用いた多層体および成形品を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層に、所定の可塑剤を配合することにより、上記課題は解決された。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層(X)の少なくとも一方の面に、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含む層(Y)を有する多層体であって、前記層(X)は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤0.05~10質量部を含む、多層体。
Figure 2024064272000002
(式(B)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Arは、ベンゼン環またはナフタレン環である。)
<2>前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度が130℃~150℃である、<1>に記載の多層体。
<3>前記式(B)におけるArがベンゼン環である、<1>または<2>に記載の多層体。
<4>前記他の熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂(y1)を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多層体。
<5>前記他の熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂(y1)30~90質量部とスチレン樹脂(y2)10~70質量部とを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の多層体。
<6>前記アクリル樹脂(y1)が、
(メタ)アクリル化合物単位と、
環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種とを含む、<4>または<5>に記載の多層体。
<7>前記アクリル樹脂(y1)が、(メタ)アクリル化合物単位60~96質量%と、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種を合計で4~40質量%含む、<4>または<5>に記載の多層体。
<8>前記スチレン樹脂(y2)が、芳香族ビニル化合物単位68~84質量%と、環状酸無水物単位16~32質量%とを含む、<5>~<7>のいずれか1つに記載の多層体。
<9>前記層(X)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度と、前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度の差が0~15℃である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の多層体。
<10>前記式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤が、式(B-1)で表される可塑剤を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の多層体。
Figure 2024064272000003
(式(B-1)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Lは、n1価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、n1は2~5の整数を示す。)
<11>前記層(Y)の厚さが10~250μmであり、前記多層体の総厚みが400~4,000μmである、<1>~<10>のいずれか1つに記載の多層体。
<12>さらに、前記多層体の片面または両面に、ハードコート層を有する、<1>~<11>のいずれか1つに記載の多層体。
<13>さらに、前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理、防汚染処理およびアンチブロッキング処理のいずれか1つ以上が施されている、<1>~<12>のいずれか1つに記載の多層体。
<14>前記層(X)および/または層(Y)が、酸化防止剤および/または離型剤を含む、<1>~<13>のいずれか1つに記載の多層体。
<15>前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度が130℃~150℃であり、前記他の熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂(y1)30~90質量部とスチレン樹脂(y2)10~70質量部とを含み、前記層(X)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度と、前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度の差が0~15℃であり、前記式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤が、式(B-1)で表される可塑剤を含む、<1>に記載の多層体。
Figure 2024064272000004
(式(B-1)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Lは、n1価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、n1は2~5の整数を示す。)
<16><1>~<15>のいずれか1つに記載の多層体から形成された成形品。
本発明により、湿熱試験後も、ポリカーボネート樹脂の分子量低下が小さいポリカーボネート樹脂を用いた多層体および成形品を提供可能になった。
図1は、反射防止フィルムの一例の構成を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリル化合物」は、アクリル化合物およびメタクリル化合物の双方、または、いずれかを表し、メタクリル化合物が好ましい。また、アクリル樹脂は、アクリレートの(共)重合体に加え、メタクリレートの(共)重合体も含む。
本明細書における層(X)、層(Y)および多層体は、それぞれ、フィルムまたはシートの形状をしているものを含む趣旨である。「フィルム」および「シート」とは、それぞれ、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形品をいう。
なお、本明細書における「質量部」とは成分の相対量を示し、「質量%」とは成分の絶対量を示す。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
図1は模式図であり、縮尺度などは実際と整合していないこともある。
本明細書においては、ポリカーボネート樹脂とは、特に述べない限り、芳香族ポリカーボネート樹脂を意味する。
本実施形態の多層体は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層(X)(以下、単に、「ポリカーボネート樹脂層(X)」、「層(X)ということがある」)の少なくとも一方の面に、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含む層(Y)(以下、単に、「他の熱可塑性樹脂層(Y)」、「層(Y)」ということがある)を有する多層体であって、前記層(X)は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤0.05~10質量部を含むことを特徴とする。
Figure 2024064272000005
(式(B)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Arは、ベンゼン環またはナフタレン環である。)
このような構成とすることにより、ポリカーボネート樹脂を湿熱試験した後の分子量の低下を効果的に抑制できる。上述の通り、可塑剤を配合すると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を下げることはできるが、湿熱試験後に分子量が低下してしまう場合がある。本願発明では、式(B)で表される基を含む可塑剤を用いることにより、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を低くしつつ、湿熱試験後の分子量の低下を効果的に抑制している。この理由は、式(B)で表される基は、エステル構造となっているため、加水分解などを引き起こしにくいことが理由と推測される。また、式(B)で表される基は、ベンゼン環またはナフタレン環を有することから、芳香族ポリカーボネート樹脂と相溶しやすいことも理由と推測される。
また、十分にポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を低下させるために、可塑剤の含有量を所定量以上とすることが必要となるが、含有量が多すぎると、粘度が低下してしまうことによりシート状とすることが困難になる。
本実施形態の多層体は、上記点を考慮して、適切な可塑剤を選択することにより、成し遂げられたものである。
<芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層(X)>
ポリカーボネート樹脂層(X)は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤0.05~10質量部を含む。
Figure 2024064272000006
(式(B)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Arは、ベンゼン環またはナフタレン環である。)
ポリカーボネート樹脂層(X)は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む。
本実施形態においては、芳香族ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂とは、ポリカーボネート樹脂を構成する構成単位の、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、より好ましくは95モル%以上がビスフェノール(好ましくはビスフェノールA)および/またはその誘導体由来のカーボネート構成単位であることをいう。
ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、特に定めるものではないが、通常、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、20,000以上であることが好ましい。また、前記粘度平均分子量は、好ましくは35,000以下、より好ましくは32,000以下、さらに好ましくは30,000以下である。前記粘度平均分子量を下限値以上とすることにより、得られる平板状成形体の強度を高くすることができる。また、前記粘度平均分子量を上記上限以下とすることにより、成形加工性が向上する傾向にある。
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2024064272000007
なお、本実施形態においては、粘度平均分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、混合物の粘度平均分子量とする。
その他、ポリカーボネート樹脂の詳細は、本実施形態の趣旨を逸脱しない限り、特開2012-144604号公報の段落0011~0020の記載、特開2019-002023号公報の段落0014~0035の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
ポリカーボネート樹脂層(X)中のポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリカーボネート樹脂層(X)100質量%中、90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましく、94質量%以上であることがさらに好ましく、96質量%以上であることが一層好ましく、97質量%以上であることがより一層好ましい。
ポリカーボネート樹脂層(X)が、2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
次に、式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤(以下、「可塑剤(B)」ということがある)について説明する。
可塑剤(B)は、以下の式で表される基を有する。
Figure 2024064272000008
(式(B)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Arは、ベンゼン環またはナフタレン環である。)
Rは、Arの置換基であり、ベンゼン環またはナフタレン環のいずれの水素原子が置き換わっていてもよい。
Rは、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、メチル基が好ましい。
nは、0~3の整数を表し、0~2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、0がさらに好ましい。
Arは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、ベンゼン環であることが好ましい。
可塑剤(B)は、水酸基を含まないことが好ましい。可塑剤(B)は、また、リン酸エステル基を含まないことが好ましい。可塑剤(B)は、また、カルシウムステアレート・ジンクステアレート等の金属含有化合物でないことが好ましい。このような構成とすることにより、ポリカーボネート樹脂の耐湿熱試験後の分子量の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。
可塑剤(B)は、また、炭素数4以上の直鎖脂肪族炭化水素基を含まないことが好ましく、炭素数3以上の直鎖脂肪族炭化水素基を含まないことがより好ましい。
可塑剤(B)は、一分子中に式(B)で表される基を2つ以上有することが好ましく、3つ以上有することがより好ましく、また、5つ以下有することが好ましく、4つ以下有することがより好ましい。前記下限値以上および上限値以下とすることにより、本実施形態の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
可塑剤(B)の分子量は、200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましく、300以上であることがさらに好ましく、350以上であることが一層好ましく、400以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、添加時に熱分解しにくく、ペレット化時およびシート成形時のガス発生やロール汚れの抑制効果がより向上する傾向にある。また、可塑剤(B)の分子量は、1200以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、900以下であることがさらに好ましく、800以下であることが一層好ましく、700以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、少量の配合量においてもガラス転移温度や粘度を低下させることができる傾向にある。
可塑剤(B)は、式(B-1)で表される可塑剤を含むことが好ましい。
Figure 2024064272000009
(式(B-1)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Lは、n1価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、n1は2~5の整数を示す。)
式(B-1)中、Rおよびnは、式(B)におけるRおよびnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
Lは、n1価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を表す。前記n1価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を構成する炭素数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、また、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6以下であることが一層好ましい。
n1は2~5の整数であり、2~4であることが好ましく、3または4であることがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂層(X)における可塑剤(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上であり、0.08質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることが一層好ましく、0.7質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ガラス転移温度や粘度を効果的に低下させることができる。また、前記可塑剤(B)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、10質量部以下であり、9質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましく、7質量部以下であることが一層好ましく、6質量部以下であることがより一層好ましく、4質量部以下であることがさらに一層好ましく、2.5質量部以下であることが特に一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、シャルピー衝撃強度が低下せず、優れた靭性を維持できる傾向にある。
ポリカーボネート樹脂層(X)は、可塑剤(B)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂層(X)ないしポリカーボネート樹脂層(X)形成用の樹脂組成物(x)(以下、単に、「樹脂組成物(x)」ということがある)は、上記成分の他、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記成分の含有量は、含有する場合、合計でポリカーボネート樹脂層(X)ないし樹脂組成物(x)の0.1~5質量%であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂層(X)ないし樹脂組成物(x)は、特に、酸化防止剤および/または離型剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤(より好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)が好ましい。リン系酸化防止剤は、成形品の色相に優れることから特に好ましい。
リン系酸化防止剤は、ホスファイト系酸化防止剤が好ましく、以下の式(1)または(2)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
Figure 2024064272000010
(式(1)中、R11およびR12はそれぞれ独立に、炭素数1~30のアルキル基または炭素数6~30のアリール基を表す。)
Figure 2024064272000011
(式(2)中、R13~R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6~20のアリール基または炭素数1~20のアルキル基を表す。)
上記式(1)中、R11、R12で表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。R11、R12がアリール基である場合、以下の式(1-a)、(1-b)、または(1-c)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。式中の*は結合位置を表す。
Figure 2024064272000012
(式(1-a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表す。式(1-b)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表す。)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特開2018-090677号公報の段落0063、特開2018-188496号公報の段落0076の記載を参照でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
酸化防止剤は、上記の他、特開2017-031313号公報の段落0057~0061の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂層(X)ないし樹脂組成物(x)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.010質量部以上であることがさらに好ましく、0.050質量部以上であることが一層好ましい。また、酸化防止剤の含有量の上限値としては、ポリカーボネート樹脂層(X)ないし樹脂組成物(x)100質量部に対して、0.500質量部以下が好ましく、0.300質量部以下がより好ましく、0.200質量部以下がさらに好ましく、0.150質量部以下であることが一層好ましく、0.100質量部以下であることがさらに一層好ましく、0.080質量部以下であることが特に一層好ましい。
酸化防止剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、色相(YI値)がより低い成形品を得ることができる。また、酸化防止剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、湿熱安定性が良好な成形品を得ることができる。
酸化防止剤は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は合計量が上記範囲となることが好ましい。
次に、ポリカーボネート樹脂層(X)に含まれる離型剤について説明する。
離型剤の種類は特に定めるものではないが、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、数平均分子量100~5,000のポリエーテル、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
離型剤の詳細は、国際公開第2015/190162号の段落0035~0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂層(X)ないし樹脂組成物(x)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.010質量部以上であることがさらに好ましく、0.050質量部以上であることが一層好ましい。上限値としては、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
離型剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂層(X)ないし樹脂組成物(x)は、示差走査熱量測定による開始ガラス転移温度(Tg)が低いことが好ましい。具体的には、ポリカーボネート樹脂層(X)の開始ガラス転移温度(Tg)は、150℃以下であることが好ましく、149℃以下であることがより好ましく、148℃以下であることがさらに好ましく、146℃以下であることが一層好ましく、144℃以下であることがより一層好ましい。また、前記開始ガラス転移温度の下限は、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましく、126℃以上であることがさらに好ましく、128℃以上であることが一層好ましく、130℃以上であることがより一層好ましく、130℃超であることがさらに一層好ましく、131℃以上であってもよい。
開始ガラス転移温度(Tg)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂層(X)ないし樹脂組成物(x)は、耐湿熱試験後のポリカーボネート樹脂の分子量低下が小さいことが好ましい。
具体的には、ポリカーボネート樹脂層(X)ないしポリカーボネート樹脂層(X)形成用の樹脂組成物(x)を、85℃、相対湿度85%の条件下で450時間の湿熱処理した前後の重量平均分子量の差が3000以下であることが好ましい。前記重量平均分子量の差の下限値は、絶対値が0であることが好ましい。
<ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含む層(Y)>
本実施形態の多層体は、芳香族ポリカーボネート樹脂層(X)の少なくとも一方の面に、ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含む層(Y)を有し、前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度が130℃~150℃である。
本実施形態における他の熱可塑性樹脂層(Y)は、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む層である。他の熱可塑性樹脂としては、示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度が130℃~150℃である樹脂層を構成可能な熱可塑性樹脂を広く用いることができる。
他の熱可塑性樹脂層(Y)ないし他の熱可塑性樹脂層(Y)形成用の樹脂組成物(y)(以下、単に、「樹脂組成物(y)」ということがある)の開始ガラス転移温度は、130℃超であることが好ましく、131℃以上であることがより好ましく、132℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ時のクラックが発生しにくくなる。また、他の熱可塑性樹脂層(Y)ないし樹脂組成物(y)の開始ガラス転移温度は、145℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、138℃以下であることがさらに好ましく、136℃以下であることが一層好ましく、134℃以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ時のスプリングバックが抑制される傾向にある。
本実施形態においては、前記他の熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂(y1)を含むことが好ましく、さらに、スチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、および、ポリフェニレンエーテルなどの芳香族ポリエーテル樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことがより好ましく、アクリル樹脂(y1)およびスチレン樹脂(y2)を含むことがさらに好ましい。他の熱可塑性樹脂層(Y)は、その90質量%以上(好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上)が上記アクリル樹脂(y1)および上記熱可塑性樹脂(好ましくはスチレン樹脂(y2))から構成されることが好ましい。
他の熱可塑性樹脂層(Y)は、アクリル樹脂(y1)30~90質量部とスチレン樹脂(y2)10~70質量部とを含むことが好ましい。このような構成とすることにより、鉛筆硬度と耐熱性および耐衝撃性がより効果的に向上する傾向にある。すなわち、アクリル樹脂を配合することにより、鉛筆硬度や耐衝撃性が向上し、スチレン樹脂を配合することにより、耐熱性が向上する。
他の熱可塑性樹脂層(Y)が、アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)を含む場合、そのブレンド比は、アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)の含有量の合計100質量部を基準として、アクリル樹脂(y1)の含有量は、35質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、45質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以上であることが一層好ましく、55質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、鉛筆硬度および耐衝撃性がより効果的に向上する傾向にある。また、前記アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)を含む場合、そのブレンド比は、アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)の含有量の合計100質量部を基準として、85質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性の低下の抑制効果がより向上する傾向にある。
他の熱可塑性樹脂層(Y)が、アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)を含む場合、アクリル樹脂(y1)およびスチレン樹脂(y2)は、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<アクリル樹脂(y1)>>
次に、アクリル樹脂(y1)について説明する。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位を含むことが好ましく、その割合は、末端基を除く全構成単位中、60質量%以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、鉛筆硬度および耐衝撃性がより向上する傾向にある。ここで、(メタ)アクリル化合物単位とは、樹脂中の(メタ)アクリル化合物から構成される構成単位をいう(後述する、「芳香族ビニル化合物単位」等についても同様である。)。前記アクリル樹脂(y1)中の(メタ)アクリル化合物単位の割合の上限値は、末端基を除く全構成単位中、100質量%であり、96質量%以下であることが好ましい。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を含む限り特に定めるものではないが、式(a1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2024064272000013
(式(a1)中、Raは、水素原子またはメチル基であり、Raは、脂肪族基である。)
上記式(a1)において、Raは、水素原子またはメチル基であり、メチル基が好ましい。Raは、脂肪族基であり、直鎖または分岐の脂肪族基であることが好ましく、直鎖の脂肪族基であることがより好ましい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルキニル基(シクロアルキニル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)等が例示され、アルキル基が好ましく、直鎖または分岐のアルキル基がより好ましく、直鎖のアルキル基がさらに好ましい。Raである脂肪族基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であることがより一層好ましい。
式(a1)で表される(メタ)アクリル化合物は、アルキル(メタ)アクリレート(好ましくはアルキルメタクリレート)であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)であることがより好ましい。メチルメタクリレートを用いることにより、得られる他の熱可塑性樹脂層(Y)の耐衝撃強さが向上する傾向にある。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位以外の他のモノマー単位を含んでいることが好ましい。他のモノマー単位としては、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位が例示され、環状酸無水物単位、および/または、N置換マレイミド単位が好ましく、N置換マレイミド単位がより好ましい。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位60~96質量%と、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種(好ましくはN置換マレイミド単位)を合計で4~40質量%含むことがより好ましい。
前記アクリル樹脂(y1)において、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種(好ましくはN置換マレイミド単位)を合計量は、アクリル樹脂(y1)を100質量%としたとき、6質量%以上であることが好ましく、9質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましく、また、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが一層好ましい。
アクリル樹脂(y1)は、他のモノマー単位、好ましくは、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位と、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種との合計が、アクリル樹脂(y1)を100質量%としたとき、90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
環状酸無水物単位は、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位などが例示され、無水マレイン酸単位が好ましい。無水マレイン酸単位を構成する無水マレイン酸およびグルタル酸無水物単位を構成するグルタル酸は、それぞれ、置換基を有していてもよいが、置換基を有していない方が好ましい。
N置換マレイミド単位は、N-シクロヘキシルマレイミド単位、N-フェニルマレイミド単位、N-メチルマレイミド単位、N-エチルマレイミド単位、N-イソプロピルマレイミド単位、N-t-ブチルマレイミド単位、N-ドデシルマレイミド単位、N-ベンジルマレイミド単位、N-ナフチルマレイミド単位が例示され、N-シクロヘキシルマレイミド単位、N-フェニルマレイミド単位が好ましい。
ラクトン環単位は、特開2006-171464号公報、および、特開2004-168882号公報に記載のラクトン環単位が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
前記アクリル樹脂(y1)の開始ガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましく、115℃以上であることが一層好ましく、120℃以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ時のクラック発生の抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記アクリル樹脂(y1)の開始ガラス転移温度(Tg)は、例えば、130℃以下であり、さらには、125℃以下であってもよい。
他の熱可塑性樹脂層(Y)がアクリル樹脂(y1)を2種以上含む場合、アクリル樹脂(y1)の開始ガラス転移温度(Tg)とは、混合物のTgとする。
前記アクリル樹脂(y1)の重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、60,000以上であることがより好ましく、70,000以上であることがさらに好ましく、80,000以上であることが一層好ましく、90,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる他の熱可塑性樹脂層(Y)の耐衝撃強さをより向上させることができる。前記アクリル樹脂(y1)の重量平均分子量は、300,000以下であることが好ましく、250,000以下であることがより好ましく、200,000以下であることがさらに好ましく、170,000以下であることが一層好ましく、150,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くでき、多層体の成形が容易となる。
重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法で測定される。また、アクリル樹脂(y1)が2種以上の混合物である場合、重量平均分子量は、各アクリル樹脂(y1)の重量平均分子量に質量分率をかけた値の和とする。以下、重量平均分子量について同じである。
<<スチレン樹脂(y2)>>
次に、スチレン樹脂(y2)について説明する。
スチレン樹脂(y2)は、芳香族ビニル化合物単位を含む樹脂であり、芳香族ビニル化合物単位と環状酸無水物単位を含むことが好ましく、芳香族ビニル化合物単位68~84質量%と、環状酸無水物単位16~32質量%とを含むことがさらに好ましい。
より具体的には、スチレン樹脂(y2)を100質量%としたとき、環状酸無水物単位の割合は、20質量%以上であることが好ましく、23質量%以上であることがより好ましく、24質量%以上であることがさらに好ましく、また、30質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがより好ましく、27質量%以下であることが一層好ましい。
スチレン樹脂(y2)は、芳香族ビニル化合物単位と環状酸無水物単位の合計が、スチレン樹脂(y2)を100質量%としたとき、90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
スチレン樹脂(y2)は、芳香族ビニル化合物単位と環状酸無水物単位を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
スチレン樹脂(y2)における芳香族ビニル化合物単位としては、スチレン単位、α-メチルスチレン単位、o-メチルスチレン単位、p-メチルスチレン単位等のスチレン系モノマー単位が例示され、スチレン単位を含むことが好ましい。
スチレン樹脂(y2)における環状酸無水物単位としては、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位などが例示され、無水マレイン酸単位が好ましい。無水マレイン酸単位を構成する無水マレイン酸およびグルタル酸無水物単位を構成するグルタル酸は、それぞれ、置換基を有していてもよいが、置換基を有していない方が好ましい。
スチレン樹脂(y2)は、芳香族ビニル化合物単位と環状酸無水物単位以外の他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、N置換マレイミド単位、(メタ)アクリル化合物単位、シアン化アルケニル単位が例示される。
前記スチレン樹脂(y2)の開始ガラス転移温度(Tg)は、130℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ時のクラック抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記スチレン樹脂(y2)の開始ガラス転移温度(Tg)は、180℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ時におけるスプリングバックの抑制効果がより向上する傾向にある。
前記スチレン樹脂(y2)の重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることがさらに好ましく、40,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる他の熱可塑性樹脂層(Y)の耐衝撃強さをより向上させることができる。また、前記スチレン樹脂(y2)の重量平均分子量は、200,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くすることができる。
他の熱可塑性樹脂層(Y)は、上記成分の他、上記以外の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記成分の含有量は、含有する場合、合計で他の熱可塑性樹脂層(Y)の0.1~5質量%であることが好ましい。
特に、本実施形態においては、他の熱可塑性樹脂層(Y)ないし樹脂組成物(y)が、酸化防止剤および/または離型剤を含むことが例示される。酸化防止剤および/または離型剤の詳細は、ポリカーボネート樹脂層(X)の項で述べた酸化防止剤および/または離型剤と同じであり、好ましい範囲も同様である。
また、他の熱可塑性樹脂層(Y)は単層であってもよいが、多層であってもよい。
他の熱可塑性樹脂層(Y)の厚みは、特に制限はないが、下限値が、例えば、1μm以上であり、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、60μm以上であることが一層好ましく、80μm以上であることがより一層好ましく、90μm以上であることがさらに一層好ましく、100μm以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形がより容易となるとともに、硬度が向上する傾向にある。また、他の熱可塑性樹脂層(Y)の厚さの上限に特に制限は無いが、5,000μm以下であることが好ましく、2,000μm以下であることがより好ましく、1,000μm以下であることがさらに好ましく、500μm以下であることが一層好ましく、300μm以下であることがより一層好ましく、250μm以下であることがさらに一層好ましく、150μm以下であることが特に一層好ましい。
<ハードコート層>
本実施形態の多層体は、ハードコート層を有していてもよい。
ハードコート層は、通常、ポリカーボネート樹脂層よりも、表面硬度が高い層である。このようなハードコート層を含むことにより、多層体ないし成形品の表面硬度を高めることができる。
ハードコート層は、層(Y)の、層(X)とは反対側の表面にハードコート層を有することが好ましい。
また、ハードコート層は、ポリカーボネート樹脂層(X)側にも設けられていてもよく、前記層(X)の表面にハードコート層を有することが好ましい。なお、前記ポリカーボネート樹脂層(X)と前記他の熱可塑性樹脂層(Y)の間、および、と前記他の熱可塑性樹脂層(Y)と前記ハードコート層の間には、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、他の層を有していてもよい。本実施形態では、前記ポリカーボネート樹脂層(X)、前記他の熱可塑性樹脂層(Y)、前記ハードコート層の順に、連続して、積層していることが好ましい。
ハードコート層の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましく、4μm以上であることが一層好ましく、5μm以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ハードコート層による多層体全体の鉛筆硬度がより向上する傾向にある。ハードコート層の厚さの上限は、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、12μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが一層好ましく、8μm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ時の加工性がより向上する傾向にある。
ハードコート層は、熱硬化または活性エネルギー線による硬化が可能なハードコート材料を塗布後、硬化させて得られるものが好ましい。
活性エネルギー線を用いて硬化させる塗料の一例としては、1官能あるいは多官能(好ましくは2~10官能)の(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーなどの単独あるいは複数からなる樹脂組成物が挙げられ、好ましくは、1官能あるいは多官能(好ましくは2~10官能)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む樹脂組成物等が挙げられる。これらの樹脂組成物には、硬化触媒として光重合開始剤が加えられることが好ましい。
また、熱硬化型樹脂塗料としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂フィルムまたはシート用ハードコート剤として市販されているものもあり、塗装ラインとの適正を加味し、適宜選択すればよい。
ハードコート層としては、特開2013-020130号公報の段落0045~0055の記載、特開2018-103518号公報の段落0073~0076の記載、特開2017-213771号公報の段落0062~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
<多層体の層構成および物性>
本実施形態の多層体は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層(X)の少なくとも一方の面に、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含む層(Y)を有する多層体である。
ポリカーボネート樹脂層(X)と他の熱可塑性樹脂層(Y)の厚みの関係性は、{他の熱可塑性樹脂層(Y)の厚み/[ポリカーボネート樹脂層(X)と他の熱可塑性樹脂層(Y)の合計厚み]}<1/5を満たすことが好ましい。この関係を満たすことで、他の熱可塑性樹脂層(Y)が多層体全体として薄いものとなるため、多層体を加熱成形しても、クラックの発生がより効果的に抑制され、かつ、スプリングバックの発生がより効果的に抑制される。より具体的には、スプリングバックを抑制するには、多層体を折り曲げた際に、多層体全体に残っている曲げに対する残留応力を緩和することがより効果的である。本実施形態においては、{他の熱可塑性樹脂層(Y)の厚み/[ポリカーボネート樹脂層(X)と他の熱可塑性樹脂層(Y)の合計厚み]}<1/6がより好ましく、{他の熱可塑性樹脂層(Y)の厚み/[ポリカーボネート樹脂層(X)と他の熱可塑性樹脂層(Y)の合計厚み]}<1/8がさらに好ましい。また、1/35<{他の熱可塑性樹脂層(Y)の厚み/[ポリカーボネート樹脂層(X)と他の熱可塑性樹脂層(Y)の合計厚み]}であることが好ましく、1/25<{他の熱可塑性樹脂層(Y)の厚み/[ポリカーボネート樹脂層(X)と他の熱可塑性樹脂層(Y)の合計厚み]}であることがより好ましい。特に、本実施形態では、ポリカーボネート樹脂層(X)と他の熱可塑性樹脂層(Y)が上述した所定の厚みの好ましい範囲を、また、多層体が後述する厚みの好ましい範囲を満たしつつ、上記関係を満たすことがより好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に達成される。
本実施形態の多層体においては、また前記層(X)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度と、前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度の差(絶対値)がが、0~15℃であることが好ましく、0~13℃であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、多層体のスプリングバックの発生をより効果的に抑制できる傾向にある。前記ガラス転移温度の差(絶対値)の上限は、12℃以下であることがより好ましく、11℃以下であることがさらに好ましい。また、層(X)のガラス転移温度と、層(Y)のガラス転移温度のいずれの値が大きくてもよいが、層(X)のガラス転移温度≧層(Y)のガラス転移温度であることが一般的である。
上記ガラス転移温度は、後述の実施例の記載に従って測定されるTg(開始ガラス転移温度)である。
さらに、本実施形態の多層体は、前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理、防汚染処理およびアンチブロッキング処理のいずれか1つ以上が施されていてもよい。
さらにまた、本実施形態の多層体は、低屈折率層を有することも好ましい。低屈折率層は、前記ハードコート層上であって、前記他の熱可塑性樹脂層(Y)とは反対側の面に、低屈折率層を有することがより好ましい。すなわち、上記多層体は、反射防止フィルムとして用いることができる。
図1は、反射防止フィルムの一例を示す模式図であって、1はポリカーボネート樹脂層(X)を、2は他の熱可塑性樹脂層(Y)を、3はハードコート層を、4は反射防止層を示している。図1では、ポリカーボネート樹脂層(X)1、他の熱可塑性樹脂層(Y)2、ハードコート層3および反射防止層4が、前記順に積層しているが、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、他の層を有していてもよい。多層体が他の層を有している場合の態様としては、前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理、防汚染処理およびアンチブロッキング処理のいずれか1つ以上が施されていることが挙げられる。また、多層体の最表面の一例として、ハードコート層が挙げられる。また、アンチブロッキング処理とは、フィルム同士が密着しても容易に剥離できるようにする処理をいい、アンチブロッキング剤を添加すること、多層体の表面に凹凸を設けることなどが例示される。
さらに、本実施形態の多層体には、上記の他、他の層を有していてもよい。具体的には、接着層、粘着層、防汚層等が例示される。
本実施形態の多層体の総厚みは、特に制限はないが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましく、400μm以上であることが一層好ましく、500μm以上であることがより一層好ましい。総厚みが厚いほうが、多層体としての剛性が向上する傾向がある。また、多層体の総厚みは、10,000μm以下であることが好ましく、5,000μm以下であることがより好ましく、4,000μm以下であることがさらに好ましく、3,000μm以下であってもよい。このような総厚みにすることで、多層体成形時において、ロール間で多層シートを圧着させ、樹脂を冷却する際に、多層体内部まで樹脂が冷却されるため、多層体の成形性を向上させることができる。
次に、多層体の鉛筆硬度について説明する。
本実施形態の多層体は、鉛筆硬度が高い(硬い)ことが好ましい。他の熱可塑性樹脂層(Y)側から測定した鉛筆硬度がF以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。また、上限は特に定めるものではないが、3H以下が実際的である。
特に、本実施形態の多層体において、ハードコート層を設けた場合の、他の熱可塑性樹脂層(Y)側から測定した鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましい。また、上限は特に定めるものではないが、4H以下が実際的である。
鉛筆硬度は後述する実施例の記載に従って測定される。
<多層体の製造方法>
本実施形態の多層体は、ポリカーボネート樹脂層(X)形成用樹脂組成物(x)を押出するメイン押出機と、他の熱可塑性樹脂層(Y)形成用樹脂組成物(y)を押出するサブ押出機とを用い、各々用いる樹脂の条件にて樹脂を溶融し押し出しダイに導き、ダイ内部で積層しシート状に成形する、もしくはシート状に成形した後に積層することで多層体を形成することができる。
<成形品および成形品の製造方法>
次に、本実施形態の多層体を用いた成形品および成形品の製造方法について説明する。
本実施形態の成形品は、本実施形態の多層体から形成された成形品である。
本実施形態の多層体は、また、熱曲げ耐性に優れているため、屈曲部を有する用途にも適している。例えば、曲率半径が50mmR以下(好ましくは曲率半径が40~50mmR)の部位を有する成形品にも好ましく用いられる。
本実施形態の成形品は、好ましくは、本実施形態の多層体を、例えば133℃以下、また、例えば100℃以上で熱曲成形することにより得られる。本実施形態の多層体は、熱曲げ耐性に優れているため、曲率半径が50mmR以下の部位を有する成形品としたときに、特に有益である。特に、熱成形温度を低めとできるため、多層体の各層(ポリカーボネート樹脂層(X)、他の熱可塑性樹脂層(Y)等)の熱成形後の緩和が起こりやすく、熱成形をより容易にできる。
すなわち、本実施形態の多層体は、プレス機で50mmRの熱成形した後に、曲げ部分のスプリングバックが発生しないことが好ましい。
また、本実施形態の多層体は、熱プレス機で50mmRの熱成形した後に、曲げ部分のクラックが発生しないことが好ましい。
本実施形態では、前記熱曲げ温度は、スプリングバックやクラックの発生の観点から115℃以上であることが好ましく、118℃以上であることがより好ましく、また、131℃以下であることが好ましい。
<用途>
本実施形態の多層体および成形品は、光学部品や意匠製品、反射防止成形品などに好適に用いることができる。
本実施形態の多層体および成形品は、表示装置、電気電子機器、OA機器、携帯情報末端、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器等の部品等に好適に用いられる。これらの中でも、特に、各種ディスプレイ、電気電子機器、OA機器、携帯情報末端および家電製品の筐体、照明機器および車輌部品(特に、車輌内装部品)、スマートフォンやタッチパネル等の表層フィルム、光学材料、光学ディスクに好適に用いられる。特に、本実施形態の成形品は、タッチパネルのセンサー用フィルムや各種ディスプレイの反射防止成形品として好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
1.原料
<ポリカーボネート樹脂>
A1:E-2000F、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂、三菱ガス化学株式会社製、Tg:150℃、粘度平均分子量:27,000
A2:S-3000F、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂、三菱ガス化学株式会社製、Tg:147℃、粘度平均分子量:21,000
<可塑剤>
B1:三安息香酸グリセリル(Sigma-Aldrich社製)
Figure 2024064272000014
B2:ペンタエリスリトールテトラベンゾエート(Sigma-Aldrich社製)
Figure 2024064272000015
B3:トリメチロールプロパントリベンゾエート(ADEKA株式会社製アデカサイザーPN-7000)
Figure 2024064272000016
B4:ジエチレングリコールジベンゾアート(Eastman社製Benzoflex 2-45)
Figure 2024064272000017
B5:PX-200、大八化学工業社製、リン酸縮合エステル
Figure 2024064272000018
B6:ペンタエリスリトールテトラステアレート(日油株式会社製ユニスターH-476)
Figure 2024064272000019
<他の熱可塑性樹脂>
C1:SAM-020:Fine-blend Polymer社製、スチレン:無水マレイン酸=83質量%:17質量%、Tg:129℃、重量平均分子量:107,200
C2:XIRANSO26080、Polyscope社製、スチレン樹脂、XIRANSO26080、スチレン:無水マレイン酸=74質量%:26質量%、Tg:150℃、重量平均分子量:47,600
C3:SK540N、旭化成社製、アクリル樹脂、デルペットSK540N、N-シクロヘキシルマレイミド:N-フェニルマレイミド:MMAの質量比=7質量%:8質量%:85質量%、Tg:124℃、重量平均分子量:128,000
C4:80HD、旭化成社製、PMMA樹脂、デルペット80HD、Tg:108℃、重量平均分子量:124,600
<酸化防止剤>
D1:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(リン系酸化防止剤 ADEKA株式会社製アデカスタブ2112)
<離型剤>
E1:グリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製リケマールS-100A)
2.実施例1~17、比較例1~4
<樹脂組成物(ペレット)の製造>
ポリカーボネート樹脂層(X)形成用の樹脂組成物(x)(ペレット)、および、他の熱可塑性樹脂層(Y)形成用の樹脂組成物(y)(ペレット)を以下の方法に従って製造した。
上記に記載の各成分を、表1または2に記載の添加量(表1および2の各成分は質量部表記である)となるように計量した。その後、タンブラーにて15分間混合した後、スクリュー径32mmのベント付二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)により、溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。なお、ポリカーボネート樹脂層(X)形成用の樹脂組成物(x)(ペレット)については樹脂粘度によって260~300℃で適時変更しながら溶融混練し、他の熱可塑性樹脂層(Y)形成用の樹脂組成物(y)(ペレット)については260℃で溶融混練した。
<開始ガラス転移温度(Tg)の測定>
原料樹脂および樹脂組成物のガラス転移温度は、下記の示差走査熱量測定(DSC測定)条件のとおりに、昇温、降温を2サイクル行い、2サイクル目の昇温時のガラス転移温度を測定した。
低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を開始ガラス転移温度とし、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を終了ガラス転移温度とし、開始ガラス転移温度と終了ガラス転移温度の中間地点を中間ガラス転移温度とした場合の開始ガラス転移温度をTgとした。測定開始温度:30℃、昇温速度:10℃/分、到達温度:250℃、降温速度:20℃/分とした。単位は、℃で示した。
測定装置は、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、「DSC7020」)を使用した。
<重量平均分子量(Mw)の測定方法および分子量変化(ΔMw)の算出方法>
樹脂組成物(ペレット)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフィー装置には、LC-20AD system(島津製作所社製)を用い、カラムとして、LF-804(Shodex社製)を接続して用いた。カラム温度は40℃とした。検出器はRID-10A(島津製作所社製)のRI検出器を用いた。溶離液として、クロロホルムを用い、検量線は、東ソー社製の標準ポリスチレンを使用して作成した。
上記ゲル浸透クロマトグラフィー装置、カラム、検出器が入手困難な場合、同等の性能を有する他の装置等を用いて測定する。
分子量変化(ΔMw)は以下の通り測定した。
得られたペレット(樹脂組成物(x))の初期、および、85℃、相対湿度85%の条件下で450時間の湿熱処理をした後の重量平均分子量を測定した。湿熱処理前後の重量平均分子量の差を算出した。 以下の通り評価した。
A:(初期の重量平均分子量) - (湿熱処理後の重量平均分子量) が3000以下
B:(初期の重量平均分子量) - (湿熱処理後の重量平均分子量) が3000超
<ハードコート(HC)なし多層体の製造>
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結された650mm幅のTダイを有する多層押出装置を用いて多層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に、表1または表2に示す各実施例および比較例の層(Y)の形成に使用される樹脂組成物(y)を導入し、シリンダー温度250℃、吐出量を1.8kg/hの条件で押し出した。また、軸径65mmの単軸押出機に表1または表2に示す各実施例および比較例にポリカーボネート樹脂層(X)の形成に使用される樹脂組成物(x)を連続的に導入し、シリンダー温度は樹脂粘度によって240℃~290に適時変更しつつ、吐出量を32.4kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種2層の分配ピンを備え、押し出して、積層した。その先に連結されたTダイでシート状に押し出し、上流側から温度130℃、140℃、180℃とした3本の鏡面仕上げロールで鏡面を転写しながら冷却し、各多層体を得た。得られた多層体の中央部の全体厚みは2000μm、層(Y)の厚みは60μmであった。
<ハードコート付き多層体の製造>
6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(製品名:U6HA、新中村化学工業株式会社製)60質量部、PEG200#ジアクリレート(製品名:4EG-A、共栄社化学株式会社製)35質量部、および含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマー(製品名:RS-90、DIC株式会社製)5質量部の合計100質量部に対して、光重合開始剤(製品名:I-184〔化合物名:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン〕BASF株式会社製)を1質量%加えた塗料を、上記で作製したハードコートなしの多層体の他の熱可塑性樹脂層(Y)の表面にバーコーターにて塗布し、メタルハライドランプ(20mW/cm)を5秒間当ててハードコートを硬化させた。ハードコート層の膜厚は6μmであった。
<成形性の評価>
上記多層体成形時の成形性を評価した。フローマークの評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:シート成形可能
B:シート成形不可
C:シート成形可能だが、フローマーク発生
<130℃熱曲げ後クラック>
上記で得られたハードコート付き多層体について、曲率半径が50mmRとなる凸型(オス型)と凹型(メス型)の金型を作製した。ハードコート層を塗装した多層体は成形前に90℃で1分間予備加熱し、ハードコート層を塗装した側の表面が凸側になるように、金型に置き、金型温度130℃で5分間プレスを行った。
得られた熱プレス成形品の曲げ部分のクラックを目視で評価した。評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
A:熱プレス成形品の曲げ部分にクラックが確認されなかった。
B:熱プレス成形品の曲げ部分にクラックが確認された。
<130℃熱曲げ後スプリングバック>
上記で得られたハードコート付き多層体について、曲率半径が50mmRとなる凸型(オス型)と凹型(メス型)の金型を作製した。ハードコート層を塗装した多層体は成形前に90℃で1分間予備加熱し、ハードコート層を塗装した側の表面が凸側になるように、金型に置き、金型温度130℃で10分間プレスを行った。
得られた熱プレス成形品について、輪郭形状測定機(SURFCOM NEX 040DX-22、株式会社東京精密製)を用いて、熱プレス品の曲げRを測定した。
A:熱プレス品の曲げRが55mmR未満
B:熱プレス品の曲げRが55mmR以上75mmR未満
C:熱プレス品の曲げRが75mmR以上
<鉛筆硬度>
上記で作製したハードコートなし多層体の他の熱可塑性樹脂層(Y)側の面、ハードコート付き多層体のハードコート層側の面について、それぞれ、JIS K5600-5-4:1999に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。評価は、5人の専門家が行い、多数決で判断した。
Figure 2024064272000020
Figure 2024064272000021
比較例2は多層体の成形が困難であった。比較例5は、フローマークが強く発生したため、クラック等の評価は行っていない。
1 ポリカーボネート樹脂層(X)
2 他の熱可塑性樹脂層(Y)
3 ハードコート層
4 反射防止層

Claims (16)

  1. 芳香族ポリカーボネート樹脂を含む層(X)の少なくとも一方の面に、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含む層(Y)を有しする多層体であって、
    前記層(X)は、芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤0.05~10質量部を含む、多層体。
    Figure 2024064272000022
    (式(B)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Arは、ベンゼン環またはナフタレン環である。)
  2. 前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度が130℃~150℃である、請求項1に記載の多層体。
  3. 前記式(B)におけるArがベンゼン環である、請求項1または2に記載の多層体。
  4. 前記他の熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂(y1)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層体。
  5. 前記他の熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂(y1)30~90質量部とスチレン樹脂(y2)10~70質量部とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層体。
  6. 前記アクリル樹脂(y1)が、
    (メタ)アクリル化合物単位と、
    環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種と
    を含む、請求項4または5に記載の多層体。
  7. 前記アクリル樹脂(y1)が、(メタ)アクリル化合物単位60~96質量%と、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種を合計で4~40質量%含む、請求項4または5に記載の多層体。
  8. 前記スチレン樹脂(y2)が、芳香族ビニル化合物単位68~84質量%と、環状酸無水物単位16~32質量%とを含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の多層体。
  9. 前記層(X)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度と、前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度の差が0~15℃である、請求項1~8のいずれか1項に記載の多層体。
  10. 前記式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤が、式(B-1)で表される可塑剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の多層体。
    Figure 2024064272000023
    (式(B-1)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Lは、n1価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、n1は2~5の整数を示す。)
  11. 前記層(Y)の厚さが10~250μmであり、前記多層体の総厚みが400~4,000μmである、請求項1~10のいずれか1項に記載の多層体。
  12. さらに、前記多層体の片面または両面に、ハードコート層を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の多層体。
  13. さらに、前記多層体の片面または両面に、耐指紋処理、反射防止処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理、防汚染処理およびアンチブロッキング処理のいずれか1つ以上が施されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の多層体。
  14. 前記層(X)および/または層(Y)が、酸化防止剤および/または離型剤を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の多層体。
  15. 前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度が130℃~150℃であり、
    前記他の熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂(y1)30~90質量部とスチレン樹脂(y2)10~70質量部とを含み、
    前記層(X)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度と、前記層(Y)の示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度の差が0~15℃であり、
    前記式(B)で表される基を一分子中に2~5つ含む可塑剤が、式(B-1)で表される可塑剤を含む、請求項1に記載の多層体。
    Figure 2024064272000024
    (式(B-1)中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、nは0~3の整数を表し、Lは、n1価の炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、n1は2~5の整数を示す。)
  16. 請求項1~15のいずれか1項に記載の多層体から形成された成形品。
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