JP2024064271A - 樹脂組成物、平板状成形体、および、多層体 - Google Patents

樹脂組成物、平板状成形体、および、多層体 Download PDF

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Abstract

【課題】 ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた外観や透明性、分子量を維持しつつ、ガラス転移温度が低い樹脂組成物、ならびに、樹脂組成物を用いた平板状成形体、および、多層体の提供。【解決手段】 ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、化合物(1)および/または化合物(2)を0.05~5質量部を含む、樹脂組成物。TIFF2024064271000016.tif54147【選択図】 図1

Description

本発明は、樹脂組成物、平板状成形体、および、多層体に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂は、機械強度、透明性、耐熱性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であり、電気、電子、機械、自動車などの分野で広く用いられている。
例えば、特許文献1には、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、トリメチロールプロパントリベンゾエート(B)0.05~3.0重量部を含むポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
特開2022-017013号公報
ポリカーボネート樹脂は、一般的に、ガラス転移温度が152℃程度であるが、これよりもガラス転移温度が低いポリカーボネート樹脂が求められることがある。
ここで、上記特許文献1について検討を行ったところ、上記特許文献1に記載のポリカーボネート樹脂組成物は、ガラス転移温度が低いことが分かった。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、得られる成形品の外観が劣っていたり、分子量が小さくなってしまう等、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する性能が劣ってしまうことが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた外観や透明性、分子量を維持しつつ、ガラス転移温度が低い樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いた平板状成形体、および、多層体を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に、所定の化合物を配合することにより、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた外観や透明性、分子量を維持しつつ、ガラス転移温度が低い樹脂組成物を提供可能であることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記化合物(1)および/または化合物(2)を0.05~5質量部を含む、樹脂組成物。
Figure 2024064271000002
<2>前記樹脂組成物の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が150℃以下である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記樹脂組成物の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が130℃以上である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記樹脂組成物を3mmの厚さに成形したときのYI値が4.0以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>さらに、酸化防止剤および/または離型剤を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が150℃以下であり、前記樹脂組成物の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が130℃以上であり、前記樹脂組成物を3mmの厚さに成形したときのYI値が4.0以下であり、さらに、酸化防止剤および/または離型剤を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された平板状成形体。
<8>厚みが10~5,000μmである、<7>に記載の平板状成形体。
<9><7>または<8>に記載の平板状成形体と、アクリル樹脂を含む層とを有する多層体。
<10>前記多層体の総厚みが10~10,000μmである、<9>に記載の多層体。
<11>さらに、ハードコート層を有し、前記ハードコート層は、平板状成形体、アクリル樹脂を含む層、ハードコート層の順に積層している、<9>または<10>に記載の多層体。
本発明により、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた外観や透明性、分子量を維持しつつ、ガラス転移温度が低い樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いた平板状成形体、および、多層体を提供可能になった。
図1は、本発明の多層体の層構成を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表す。
本明細書における平板状成形体および多層体は、それぞれ、フィルムまたはシートの形状をしているものを含む趣旨である。「フィルム」および「シート」とは、それぞれ、長さと幅に対して、厚さが薄く、概ね、平らな成形体をいう。また、本明細書における「フィルム」および「シート」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
明細書に添付の図面は模式図であり、縮尺度などは実際と整合していないこともある。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記化合物(1)および/または化合物(2)を0.05~5質量部を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する優れた外観や透明性、分子量を維持しつつ、ガラス転移温度が低い樹脂組成物が得られる。
Figure 2024064271000003
一般的に、ポリカーボネート樹脂に可塑剤を配合すると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を下げることができる。例えば、特許文献1に記載のトリメチロールプロパントリベンゾエートを配合すると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を低くすることができる。しかしながら、トリメチロールプロパントリベンゾエートを配合すると、分子量が大きく低下してしまい、また、黄色度が高くなってしまうことが分かった。本実施形態においては、数ある可塑剤から、化合物(1)および/または化合物(2)を選択することにより、上記課題を解決しうることを見出したものである。
以下、本実施形態の詳細について説明する。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含む。
ポリカーボネート樹脂は、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OCO]-構成単位(Rは、炭化水素基(例えば、脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの))を含むものであれば、特に限定されるものではなく、種々のポリカーボネート樹脂を用いることができる。
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂が好ましく、ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂がより好ましい。ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂とは、ポリカーボネート樹脂を構成する構成単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、より好ましくは95モル%以上がビスフェノール(好ましくはビスフェノールA)および/またはその誘導体由来のカーボネート構成単位であることをいう。
ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、特に定めるものではないが、通常、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、20,000以上であることが好ましい。また、前記粘度平均分子量は、好ましくは35,000以下、より好ましくは32,000以下、さらに好ましくは30,000以下である。前記粘度平均分子量を下限値以上とすることにより、得られる平板状成形体の強度を高くすることができる。また、前記粘度平均分子量を上記上限以下とすることにより、成形加工性が向上する傾向にある。
ここで、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2024064271000004
なお、本実施形態においては、粘度平均分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、混合物の粘度平均分子量とする。
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の開始ガラス転移温度(Tg)は、160℃以下であることが好ましく、155℃以下であることがより好ましく、154℃以下であることがさらに好ましく、153℃以下であることが一層好ましく、152℃以下であることがより一層好ましく、151℃以下であることがさらに一層好ましい。また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の開始ガラス転移温度(Tg)は、例えば、148℃以上であり、さらには、149℃以上、150℃以上であってもよい。
開始ガラス転移温度は後述する実施例の記載に従って測定される。
その他、ポリカーボネート樹脂の詳細は、本実施形態の趣旨を逸脱しない限り、特開2012-144604号公報の段落0011~0020の記載、特開2019-002023号公報の段落0014~0035の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物100質量%中、90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましく、94質量%以上であることがさらに好ましく、96質量%以上であることが一層好ましく、97質量%以上であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が、2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、化合物(1)および/または化合物(2)を含む。化合物(1)および/または化合物(2)を含むことにより、ガラス転移温度が低い樹脂組成物が得られる。
平板状成形体のYI値をより低くする観点からは、化合物(1)を含むことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記化合物(1)および/または化合物(2)を0.05~5質量部を含む。好ましくは、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、化合物(1)と化合物(2)の総量が、0.1質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、0.6質量部以上であることがさらに好ましく、1.2質量部以上であることが一層好ましく、1.5質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物のガラス転移温度をより低くすることができる。また、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、化合物(1)と化合物(2)の総量が、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、ガラス転移温度を適切な温度とすることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、上記成分の他、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記成分の含有量は、含有する場合、合計で樹脂組成物の0.1~5質量%であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、特に、酸化防止剤および/または離型剤を含有することが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤(より好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)が好ましい。リン系酸化防止剤は、成形品の色相に優れることから特に好ましい。
リン系酸化防止剤は、ホスファイト系酸化防止剤が好ましく、以下の式(1)または(2)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
Figure 2024064271000005
(式(1)中、R11およびR12はそれぞれ独立に、炭素原子数1~30のアルキル基または炭素原子数6~30のアリール基を表す。)
Figure 2024064271000006
(式(2)中、R13~R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数6~20のアリール基または炭素原子数1~20のアルキル基を表す。)
上記式(1)中、R11、R12で表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。R11、R12がアリール基である場合、以下の式(1-a)、(1-b)、または(1-c)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。式中の*は結合位置を表す。
Figure 2024064271000007
(式(1-a)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基を表す。式(1-b)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特開2018-090677号公報の段落0063、特開2018-188496号公報の段落0076の記載を参照でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
酸化防止剤は、上記の他、特開2017-031313号公報の段落0057~0061の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.010質量部以上であることがさらに好ましく、0.050質量部以上であることが一層好ましい。また、酸化防止剤の含有量の上限値としては、樹脂組成物100質量部に対して、0.500質量部以下が好ましく、0.300質量部以下がより好ましく、0.200質量部以下がさらに好ましく、0.150質量部以下であることが一層好ましく、0.100質量部以下であることがさらに一層好ましく、0.080質量部以下であることが特に一層好ましい。
酸化防止剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、色相(YI値)がより低い成形品を得ることができる。また、酸化防止剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、湿熱安定性が良好な成形品を得ることができる。
酸化防止剤は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は合計量が上記範囲となることが好ましい。
次に、樹脂組成物に含まれる離型剤について説明する。
離型剤の種類は特に定めるものではないが、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、数平均分子量100~5,000のポリエーテル、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
離型剤の詳細は、国際公開第2015/190162号の段落0035~0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
離型剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.010質量部以上であることがさらに好ましく、0.050質量部以上であることが一層好ましい。上限値としては、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
離型剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、示差走査熱量測定による開始ガラス転移温度(Tig)が低いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物の開始ガラス転移温度(Tig)は、150℃以下であることが好ましく、149℃以下であることがより好ましく、148℃以下であることがさらに好ましく、146℃以下であることが一層好ましく、144℃以下であることがより一層好ましい。また、前記開始ガラス転移温度の下限は、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、130℃超であることが一層好ましく、131℃以上であってもよい。
開始ガラス転移温度(Tig)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
本実施形態の樹脂組成物は透明性に優れることが好ましい。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、3mm厚さに成形したときの全光線透過率が、80.0%以上であることが好ましく、85.0%以上であることがより好ましい。全光線透過率の上限は100%であってもよい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、3mm厚さに成形したときのヘイズが、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズの下限限は0%であってもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、黄変しにくいことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を3mm厚さに成形したときのYI値が、4.3以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましく、3.2以下であることが一層好ましい。YI値の下限値は、0が理想であるが、0.1以上が実際的である。
全光線透過率、ヘイズ、および、YI値は、後述する実施例の記載に従って測定される。
<平板状成形体>
本実施形態の樹脂組成物は、平板状成形体に加工して用いることが好ましい。すなわち、本実施形態の平板状成形体は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。
平板状成形体としては、プレート、フィルム、シート等が例示される。また、平板状成形体は、詳細を後述するとおり、他の基材等に積層された多層体に含まれていてもよい。また、本実施形態の平板状成形体は、多層体の一部に組み込まれた後に、曲げ加工などが施されていてもよい。
平板状成形体の厚さは、下限値が10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形がより容易となるとともに、硬度が向上する傾向にある。また、平板状成形体の厚さの上限に特に制限は無いが、5,000μm以下であることが実際的である。
本実施形態の平板状成形体は、射出成形やTダイによる押出成形などにより成形される。
<多層体>
本実施形態の平板状成形体は、多層体として用いることができる。本実施形態の多層体は、本実施形態の平板状成形体と、アクリル樹脂を含む層(アクリル樹脂層)とを有することが好ましい。
多層体の厚さに特に制限はないが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、多層体の厚さは、10,000μm以下であることが好ましく、5,000μm以下であることがより好ましく、2,000μm以下であってもよい。
本実施形態の多層体は、さらに、ハードコート層を含むことが好ましい。ハードコート層を設けることにより、多層体の表面硬度がより向上する傾向にある。前記ハードコート層は、平板状成形体、アクリル樹脂を含む層、ハードコート層の順に積層していることが好ましい。
図1は、本実施形態の多層体の一例を示す模式図であって、上述のとおり、1は多層体を、2は平板状成形体(ポリカーボネート樹脂フィルムまたはシート)を、3はアクリル樹脂層を、4はハードコート層を示している。平板状成形体2、アクリル樹脂層3およびハードコート層4は、前記順に積層していれば、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、他の層を有していてもよいが、他の層を有していない、すなわち、互いに隣接していることが好ましい。
次に、アクリル樹脂層について説明する。本実施形態の多層体に含まれるアクリル樹脂層は、アクリル樹脂を含む層である。
本実施形態におけるアクリル樹脂層は、示差走査熱量測定に従ったガラス転移温度が130℃~150℃であることが好ましい。
アクリル樹脂層ないしアクリル樹脂層形成用樹脂組成物の開始ガラス転移温度は、130℃超であることが好ましく、131℃以上であることがより好ましく、132℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ時のクラックが発生しにくくなる。また、アクリル樹脂層ないしアクリル樹脂層形成用樹脂組成物の開始ガラス転移温度は、145℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、138℃以下であることがさらに好ましく、136℃以下であることが一層好ましく、134℃以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ時のスプリングバックが抑制される傾向にある。
本実施形態においては、前記アクリル樹脂層が、アクリル樹脂(y1)を含むことが好ましく、さらに、スチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、および、ポリフェニレンエーテルなどの芳香族ポリエーテル樹脂から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことがより好ましく、アクリル樹脂およびスチレン樹脂を含むことがさらに好ましい。アクリル樹脂層は、その90質量%以上(好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上)が上記アクリル樹脂および上記熱可塑性樹脂(好ましくはスチレン樹脂)から構成されることが好ましい。
アクリル樹脂層は、アクリル樹脂(y1)30~90質量部とスチレン樹脂(y2)10~70質量部とを含むことが好ましい。このような構成とすることにより、鉛筆硬度と耐熱性および耐衝撃性がより効果的に向上する傾向にある。すなわち、アクリル樹脂を配合することにより、鉛筆硬度や耐衝撃性が向上し、スチレン樹脂を配合することにより、耐熱性が向上する。
アクリル樹脂層が、アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)を含む場合、そのブレンド比は、アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)の含有量の合計100質量部を基準として、アクリル樹脂(y1)の含有量は、35質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、45質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以上であることが一層好ましく、55質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、鉛筆硬度および耐衝撃性がより効果的に向上する傾向にある。また、前記アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)を含む場合、そのブレンド比は、アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)の含有量の合計100質量部を基準として、85質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、75質量部以下であることがさらに好ましく、70質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、耐熱性の低下の抑制効果がより向上する傾向にある。
アクリル樹脂層が、アクリル樹脂(y1)とスチレン樹脂(y2)を含む場合、アクリル樹脂(y1)およびスチレン樹脂(y2)は、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<アクリル樹脂(y1)>>
次に、アクリル樹脂(y1)について説明する。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位を含むことが好ましく、その割合は、末端基を除く全構成単位中、60質量%以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、鉛筆硬度および耐衝撃性がより向上する傾向にある。ここで、(メタ)アクリル化合物単位とは、樹脂中の(メタ)アクリル化合物から構成される構成単位をいう(後述する、「芳香族ビニル化合物単位」等についても同様である。)。前記アクリル樹脂(y1)中の(メタ)アクリル化合物単位の割合の上限値は、末端基を除く全構成単位中、100質量%であり、96質量%以下であることが好ましい。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を含む限り特に定めるものではないが、式(a1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2024064271000008
(式(a1)中、Raは、水素原子またはメチル基であり、Raは、脂肪族基である。)
上記式(a1)において、Raは、水素原子またはメチル基であり、メチル基が好ましい。Raは、脂肪族基であり、直鎖または分岐の脂肪族基であることが好ましく、直鎖の脂肪族基であることがより好ましい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルキニル基(シクロアルキニル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)等が例示され、アルキル基が好ましく、直鎖または分岐のアルキル基がより好ましく、直鎖のアルキル基がさらに好ましい。Raである脂肪族基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であることがより一層好ましい。
式(a1)で表される(メタ)アクリル化合物は、アルキル(メタ)アクリレート(好ましくはアルキルメタクリレート)であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレート(好ましくはメチルメタクリレート)であることがより好ましい。メチルメタクリレートを用いることにより、得られるアクリル樹脂層の耐衝撃強さが向上する傾向にある。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位以外の他のモノマー単位を含んでいることが好ましい。他のモノマー単位としては、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位が例示され、環状酸無水物単位、および/または、N置換マレイミド単位が好ましく、N置換マレイミド単位がより好ましい。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位60~96質量%と、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種(好ましくはN置換マレイミド単位)を合計で4~40質量%含むことがより好ましい。
前記アクリル樹脂(y1)において、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種(好ましくはN置換マレイミド単位)を合計量は、アクリル樹脂(y1)を100質量%としたとき、6質量%以上であることが好ましく、9質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましく、また、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが一層好ましい。
アクリル樹脂(y1)は、他のモノマー単位、好ましくは、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
アクリル樹脂(y1)は、(メタ)アクリル化合物単位と、環状酸無水物単位、N置換マレイミド単位、および、ラクトン環単位の少なくとも1種との合計が、アクリル樹脂(y1)を100質量%としたとき、90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
環状酸無水物単位は、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位などが例示され、無水マレイン酸単位が好ましい。無水マレイン酸単位を構成する無水マレイン酸およびグルタル酸無水物単位を構成するグルタル酸は、それぞれ、置換基を有していてもよいが、置換基を有していない方が好ましい。
N置換マレイミド単位は、N-シクロヘキシルマレイミド単位、N-フェニルマレイミド単位、N-メチルマレイミド単位、N-エチルマレイミド単位、N-イソプロピルマレイミド単位、N-t-ブチルマレイミド単位、N-ドデシルマレイミド単位、N-ベンジルマレイミド単位、N-ナフチルマレイミド単位が例示され、N-シクロヘキシルマレイミド単位、N-フェニルマレイミド単位が好ましい。
ラクトン環単位は、特開2006-171464号公報、および、特開2004-168882号公報に記載のラクトン環単位が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
前記アクリル樹脂(y1)の開始ガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましく、115℃以上であることが一層好ましく、120℃以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ時のクラック発生の抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記アクリル樹脂(y1)の開始ガラス転移温度(Tg)は、例えば、130℃以下であり、さらには、125℃以下であってもよい。
アクリル樹脂層がアクリル樹脂(y1)を2種以上含む場合、アクリル樹脂(y1)の開始ガラス転移温度(Tg)とは、混合物のTgとする。
前記アクリル樹脂(y1)の重量平均分子量は、50,000以上であることが好ましく、60,000以上であることがより好ましく、70,000以上であることがさらに好ましく、80,000以上であることが一層好ましく、90,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られるアクリル樹脂層の耐衝撃強さをより向上させることができる。前記アクリル樹脂(y1)の重量平均分子量は、300,000以下であることが好ましく、250,000以下であることがより好ましく、200,000以下であることがさらに好ましく、170,000以下であることが一層好ましく、150,000以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くでき、多層体の成形が容易となる。
重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法で測定される。また、アクリル樹脂(y1)が2種以上の混合物である場合、重量平均分子量は、各アクリル樹脂(y1)の重量平均分子量に質量分率をかけた値の和とする。以下、重量平均分子量について同じである。
<<スチレン樹脂(y2)>>
次に、スチレン樹脂(y2)について説明する。
スチレン樹脂(y2)は、芳香族ビニル化合物単位を含む樹脂であり、芳香族ビニル化合物単位と環状酸無水物単位を含むことが好ましく、芳香族ビニル化合物単位68~84質量%と、環状酸無水物単位16~32質量%とを含むことがさらに好ましい。
より具体的には、スチレン樹脂(y2)を100質量%としたとき、環状酸無水物単位の割合は、20質量%以上であることが好ましく、23質量%以上であることがより好ましく、24質量%以上であることがさらに好ましく、また、30質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがより好ましく、27質量%以下であることが一層好ましい。
スチレン樹脂(y2)は、芳香族ビニル化合物単位と環状酸無水物単位の合計が、スチレン樹脂(y2)を100質量%としたとき、90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
スチレン樹脂(y2)は、芳香族ビニル化合物単位と環状酸無水物単位を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
スチレン樹脂(y2)における芳香族ビニル化合物単位としては、スチレン単位、α-メチルスチレン単位、o-メチルスチレン単位、p-メチルスチレン単位等のスチレン系モノマー単位が例示され、スチレン単位を含むことが好ましい。
スチレン樹脂(y2)における環状酸無水物単位としては、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位などが例示され、無水マレイン酸単位が好ましい。無水マレイン酸単位を構成する無水マレイン酸およびグルタル酸無水物単位を構成するグルタル酸は、それぞれ、置換基を有していてもよいが、置換基を有していない方が好ましい。
スチレン樹脂(y2)は、芳香族ビニル化合物単位と環状酸無水物単位以外の他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、N置換マレイミド単位、(メタ)アクリル化合物単位、シアン化アルケニル単位が例示される。
前記スチレン樹脂(y2)の開始ガラス転移温度(Tg)は、130℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、熱曲げ時のクラック抑制効果がより向上する傾向にある。また、前記スチレン樹脂(y2)の開始ガラス転移温度(Tg)は、180℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ時におけるスプリングバックの抑制効果がより向上する傾向にある。
前記スチレン樹脂(y2)の重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることがさらに好ましく、40,000以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られるアクリル樹脂層の耐衝撃強さをより向上させることができる。また、前記スチレン樹脂(y2)の重量平均分子量は、200,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度を効果的に低くすることができる。
アクリル樹脂層は、上記成分の他、上記以外の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、衝撃改良剤、摺動改良剤、色相改良剤、酸トラップ剤等を含んでいてもよい。これらの成分は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記成分の含有量は、含有する場合、合計でアクリル樹脂層の0.1~5質量%であることが好ましい。
特に、本実施形態においては、アクリル樹脂層ないしアクリル樹脂層形成用樹脂組成物が、酸化防止剤および/または離型剤を含むことが例示される。酸化防止剤および/または離型剤の詳細は、本実施形態の樹脂組成物に配合してもよい酸化防止剤および/または離型剤と同じであり、好ましい範囲も同様である。
また、アクリル樹脂層は単層であってもよいが、多層であってもよい。
アクリル樹脂層の厚みは、特に制限はないが、下限値が、例えば、1μm以上であり、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、60μm以上であることが一層好ましく、80μm以上であることがより一層好ましく、90μm以上であることがさらに一層好ましく、100μm以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、成形がより容易となるとともに、硬度が向上する傾向にある。また、アクリル樹脂層の厚さの上限に特に制限は無いが、5,000μm以下であることが好ましく、2,000μm以下であることがより好ましく、1,000μm以下であることがさらに好ましく、500μm以下であることが一層好ましく、300μm以下であることがより一層好ましく、250μm以下であることがさらに一層好ましく、150μm以下であることが特に一層好ましい。
次に、ハードコート層の詳細について説明する。本実施形態の多層体に含まれていてもよいハードコート層は、平板状成形体(ポリカーボネート樹脂フィルムまたはシート)よりも、表面硬度が高い層である。このようなハードコート層を含むことにより、多層体ないし成形品の表面硬度を高めることができる。
ハードコート層の厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましく、4μm以上であることが一層好ましく、5μm以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ハードコート層による多層体全体の鉛筆硬度がより向上する傾向にある。ハードコート層の厚さの上限は、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、12μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが一層好ましく、8μm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、熱曲げ時の加工性がより向上する傾向にある。
ハードコート層は、熱硬化または活性エネルギー線による硬化が可能なハードコート材料を塗布後、硬化させて得られるものが好ましい。
活性エネルギー線を用いて硬化させる塗料の一例としては、1官能あるいは多官能(好ましくは2~10官能)の(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーなどの単独あるいは複数からなる樹脂組成物が挙げられ、好ましくは、1官能あるいは多官能(好ましくは2~10官能)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む樹脂組成物等が挙げられる。これらの樹脂組成物には、硬化触媒として光重合開始剤が加えられることが好ましい。
また、熱硬化型樹脂塗料としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂フィルムまたはシート用ハードコート剤として市販されているものもあり、塗装ラインとの適正を加味し、適宜選択すればよい。
ハードコート層としては、特開2013-020130号公報の段落0045~0055の記載、特開2018-103518号公報の段落0073~0076の記載、特開2017-213771号公報の段落0062~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の多層体には、上記の他、他の層を有していてもよい。具体的には、接着層、粘着層、防汚層等が例示される。
また、多層体は、少なくとも一方の面上に、耐指紋処理、防眩処理、耐候性処理、帯電防止処理、防汚染処理およびアンチブロッキング処理のいずれか一つ以上が施されていてもよい。このときの多層体の最表面の一例として、ハードコート層が挙げられる。また、アンチブロッキング処理とは、フィルム同士が密着しても容易に剥離できるようにする処理をいい、アンチブロッキング剤を添加すること、多層体の表面に凹凸を設けることなどが例示される。
本実施形態の多層体は、本実施形態の樹脂組成物を押出するメイン押出機と、アクリル樹脂層形成用組成物を押出するサブ押出機とを用い、各々用いる樹脂の条件にて樹脂を溶融し押し出しダイに導き、ダイ内部で積層しシート状に成形する、もしくはシート状に成形した後に積層することで多層体を形成することができる。
本実施形態の多層体は、そのまま用いてもよいが、加工、特に、加熱加工することによって、成形品とすることができる。
本実施形態の成形品は、本実施形態の多層体から形成された成形品である。
本実施形態の多層体は、屈曲部を有する用途にも用いることができる。例えば、曲率半径が50mmR以下(好ましくは曲率半径が40~50mmR)の部位を有する成形品にも用いられる。
<用途>
本実施形態の平板状成形体、多層体および成形品は、光学部品や意匠製品、反射防止成形体などに好適に用いることができる。
本実施形態の平板状成形体、多層体および成形品は、表示装置、電気電子機器、OA機器、携帯情報末端、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器等の部品等に好適に用いられる。これらの中でも、特に、各種ディスプレイ、電気電子機器、OA機器、携帯情報末端および家電製品の筐体、照明機器および車輌部品(特に、車輌内装部品)、スマートフォンやタッチパネル等の表層フィルム、光学材料、光学ディスクに好適に用いられる。特に、本実施形態の成形体は、タッチパネルのセンサー用フィルムや各種ディスプレイの反射防止成形体として好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
1.原料
・ポリカーボネート樹脂
E-2000:ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られたポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、E-2000F、粘度平均分子量:27,000、Tg:150℃)
S-3000:ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られたポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、S-3000F、粘度平均分子量:21,000、Tg:147℃)
・可塑剤
化合物(1):三安息香酸グリセリル(Sigma-Aldrich社製)
Figure 2024064271000009
化合物(2):ペンタエリスリトールテトラベンゾート(Sigma-Aldrich社製)
Figure 2024064271000010
比較化合物:トリメチロールプロパントリベンゾエート(ADEKA株式会社製アデカサイザーPN-7000)
Figure 2024064271000011
・酸化防止剤
トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(リン系酸化防止剤 ADEKA株式会社製アデカスタブ2112)
・離型剤
グリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製リケマールS-100A)
<粘度平均分子量の測定方法>
ポリカーボネート樹脂の極限粘度[η](単位dL/g)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用して測定した。温度は25℃条件とした。ウベローデ粘度計にて、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を測定した。得られた比粘度の値と濃度から下記式により極限粘度を算出した。
Figure 2024064271000012
粘度平均分子量[Mv]は、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出した。
2.実施例1~8、比較例1~4
<樹脂組成物(ペレット)の製造>
上記に記載の各成分を、表1または表2に記載の添加量(表1または表2の各成分は質量部表記である)となるように計量した。その後、タンブラーにて15分間混合した後、スクリュー径32mmのベント付二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)により、溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。溶融混練温度は260~300℃とした。
得られた樹脂組成物(ペレット)を用いて、開始ガラス転移温度(Tig)および分子量変化(ΔMw)を測定した。
<開始ガラス転移温度(Tig)の測定>
原料および樹脂組成物のガラス転移温度は、下記の示差走査熱量測定(DSC測定)条件のとおりに、昇温、降温を2サイクル行い、2サイクル目の昇温時のガラス転移温度を測定した。
低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を開始ガラス転移温度とし、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を終了ガラス転移温度とし、開始ガラス転移温度と終了ガラス転移温度の中間地点を中間ガラス転移温度とした場合、開始ガラス転移温度をTigとした。測定開始温度:30℃、昇温速度:10℃/分、到達温度:250℃、降温速度:20℃/分とした。単位は、℃で示した。
測定装置は、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、「DSC7020」)を使用した。
<重量平均分子量(Mw)の測定方法および分子量変化(ΔMw)の算出方法>
樹脂組成物(ペレット)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定した。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフィー装置には、LC-20AD system(島津製作所社製)を用い、カラムとして、LF-804(Shodex社製)を接続して用いた。カラム温度は40℃とした。検出器はRID-10A(島津製作所社製)のRI検出器を用いた。溶離液として、クロロホルムを用い、検量線は、東ソー社製の標準ポリスチレンを使用して作成した。
上記ゲル浸透クロマトグラフィー装置、カラム、検出器が入手困難な場合、同等の性能を有する他の装置等を用いて測定する。
分子量変化(ΔMw)は、得られたペレット(樹脂組成物)の重量平均分子量と、前記ペレットと同じ組成のポリカーボネート樹脂のみを同様の製造方法でペレット化して得られたペレットの重量平均分子量との差として示した。
<試験片の製造>
上記で得られた樹脂組成物(ペレット)を、120℃で4~7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、ベント付二軸射出成形機(Sodick社製「PE-100」、二軸スクリュー径29mmの噛合型同方向回転式、プランジャー直径28mm)により、シリンダー温度280℃で溶融混練し、金型温度80℃の条件にて、1mm、2mmおよび3mmの3段厚みの試験片を成形した。
<全光線透過率およびヘイズの測定>
ヘイズメーターを用いて、D65光源10°視野の条件にて、上記で得られた試験片の3mm厚の部分の全光線透過率(%)、および、ヘイズ(%)を測定した。
ヘイズメーターは、村上色彩技術研究所社製「HM-150」を用いた。
<YI(Yellow Index)の測定>
上記で得られた試験片の3mm厚の部分のYI値は、JIS Z 8722に準拠するdi:0°後分光方式の照明受光条件にて、測定した。
分光色彩計は、日本電色工業社製「SD-7000」を用いた。
Figure 2024064271000013
Figure 2024064271000014
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物について、外観や分子量変化などを起こさずに、ガラス転移温度を低くすることができた(実施例1~8)。
これに対し、化合物(1)および(2)、ならびに比較化合物のいずれも用いない場合(比較例1)、樹脂組成物のガラス転移温度は全く低くならなかった。
また、化合物(1)および(2)に類似する化合物であっても、比較化合物を用いた場合(比較例2、3)、樹脂組成物のガラス転移温度は低くできたが、分子量変化が大きく、また、YIが高くなってしまい、外観に劣っていた。
一方、化合物(1)を配合してもその配合量が多すぎる場合(比較例4)、樹脂組成物のガラス転移温度は低くできたが、分子量変化が大きめとなってしまった。
1 多層体
2 平板状成形体(ポリカーボネート樹脂フィルムまたはシート)
3 アクリル樹脂層
4 ハードコート層

Claims (11)

  1. ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記化合物(1)および/または化合物(2)を0.05~5質量部を含む、樹脂組成物。
    Figure 2024064271000015
  2. 前記樹脂組成物の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が150℃以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記樹脂組成物の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が130℃以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記樹脂組成物を3mmの厚さに成形したときのYI値が4.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. さらに、酸化防止剤および/または離型剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記樹脂組成物の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が150℃以下であり、
    前記樹脂組成物の示差走査熱量測定によるガラス転移温度が130℃以上であり、
    前記樹脂組成物を3mmの厚さに成形したときのYI値が4.0以下であり、
    さらに、酸化防止剤および/または離型剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された平板状成形体。
  8. 厚みが10~5,000μmである、請求項7に記載の平板状成形体。
  9. 請求項7または8に記載の平板状成形体と、アクリル樹脂を含む層とを有する多層体。
  10. 前記多層体の総厚みが10~10,000μmである、請求項9に記載の多層体。
  11. さらに、ハードコート層を有し、前記ハードコート層は、平板状成形体、アクリル樹脂を含む層、ハードコート層の順に積層している、請求項9または10に記載の多層体。
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