JP2024064254A - 誘電体組成物、誘電体素子、及び、コンデンサ - Google Patents

誘電体組成物、誘電体素子、及び、コンデンサ Download PDF

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Yoshiyuki Hirose
誉幸 松岡
Yoshiyuki Matsuoka
嗣人 山田
Tsuguto Yamada
和昭 北村
Kazuaki Kitamura
健志 木村
Kenji Kimura
利明 倉橋
Toshiaki Kurahashi
崇 笠島
Takashi Kasashima
晃也 木村
Akiya Kimura
久司 小塚
Hisashi Kozuka
正人 山崎
Masato Yamazaki
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Abstract

【課題】本開示は、耐熱性と、高い比誘電率を有する誘電体組成物を提供することを目的とする。【解決手段】ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、M-Ti-O系スピネル化合物(元素Mは1価から4価の元素)の副相と、を含み、前記主相は、(1-x)(KaNabLicCad)(NbeTif)O3-xBaZrO3の組成式で表され、0.28≦a≦0.54、0.41≦b≦0.66、0.01≦c≦0.02、0.01≦d≦0.06、0.96≦e≦0.99、0.01≦f≦0.04、及び0.035≦x≦0.080を満たす、誘電体組成物。【選択図】なし

Description

本開示は、誘電体組成物、誘電体素子、及び、コンデンサに関する。
特許文献1には、ニオブ/タンタル酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物からなる主相(第1結晶相)と、A-Ti-B-O系複合酸化物で構成される副相(第2結晶相)とを含む誘電体磁器組成物の開示がある。
特許文献1に、室温(25℃)以上150℃以下における静電容量の変化率の小さい誘電体磁器組成物の開示がある。しかし、誘電体磁器組成物は、更なる比誘電率の改善が求められていた。
特開2013-28484号公報
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐熱性と、高い比誘電率を有する誘電体組成物を提供することを目的とする。
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
[1] ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、
M-Ti-O系スピネル化合物(元素Mは1価から4価の元素)の副相と、を含み、
前記主相は、(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrOの組成式で表され、
0.28≦a≦0.54、
0.41≦b≦0.66、
0.01≦c≦0.02、
0.01≦d≦0.06、
0.96≦e≦0.99、
0.01≦f≦0.04、及び
0.035≦x≦0.080を満たす、誘電体組成物。
[2]ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、
M-Ti-O系スピネル化合物(元素Mは1価から4価の元素)の副相と、を含み、
前記主相は、(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrOの組成式で表され、
0.28≦a≦0.54、
0.41≦b≦0.66、
0.01≦c≦0.02、
0.01≦d≦0.06、
0.96≦e≦0.99、
0.01≦f≦0.04、及び
0.060≦x≦0.080を満たす、誘電体組成物。
[3]前記主相の結晶構造が菱面体晶からなる、[1]に記載の誘電体組成物。
[4]前記主相間を埋めるように前記副相が配されている、[1]又は[3]に記載の誘電体組成物。
[5]元素Mは、Fe(鉄)、Mg(マグネシウム)、及びLi(リチウム)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含む、[1]、[3]、[4]のいずれかに記載の誘電体組成物。
[6]前記主相の結晶構造が菱面体晶からなる、[2]に記載の誘電体組成物。
[7]前記主相間を埋めるように前記副相が配されている、[2]又は[6]に記載の誘電体組成物。
[8]元素Mは、Fe(鉄)、Mg(マグネシウム)、及びLi(リチウム)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含む、[2]、[6]、[7]のいずれかに記載の誘電体組成物。
[9][1]から[8]のいずれかに記載の誘電体組成物からなる誘電磁器と、前記誘電磁器に接する電極とを備える、誘電体素子。
[10][1]から[8]のいずれかに記載の誘電体組成物で形成された誘電体層を含む積層体と、前記誘電体層に取り付けられた電極と、を備える、コンデンサ。
本開示によれば、耐熱性と、高い比誘電率を有する誘電体組成物を提供することができる。
実施形態の一例の誘電体素子の作製方法を示すフローチャートである。 実施形態の一例の誘電体素子を示す斜視図である。 実施形態の一例のコンデンサを示す断面図である。
[実施形態の概要]
(1)誘電体組成物
本開示の一実施形態としての誘電体組成物は、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、M-Ti-O系スピネル化合物を含む副相と、を含み、主相は、(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrOの組成式で表され、
0.28≦a≦0.54、
0.41≦b≦0.66、
0.01≦c≦0.02、
0.01≦d≦0.06、
0.96≦e≦0.99、
0.01≦f≦0.04、及び
0.035≦x≦0.080を満たす。
(1.1) 主相 KNN系材料: (KNaLiCa)(NbTi)O
本開示の誘電体組成物は、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を含む主相で、KNN系材料を含む。KNN系材料は、K(カリウム)とNa(ナトリウム)とNb(ニオブ)を主な金属成分としている。KNN材料は、他の元素が添加されていてもよい。たとえば、KNNに、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、及びユウロピウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。本開示のKNN系材料は、少なくとも、K(カリウム),Na(ナトリウム),Nb(ニオブ)、Li(リチウム),Ca(カルシウム),及び,Ti(チタン)元素を含む。
本開示のKNN系材料の典型的な組成は、(K(カリウム),Na(ナトリウム),Li(リチウム),Ca(カルシウム))(Nb(ニオブ),Ti(チタン))Oである。主相にKNN系材料を含むことで、高い比誘電率、又は、高い耐熱温度を有する誘電体組成物を提供することができる。
(1.2)主相: BaZrO
本開示の誘電体組成物は、BaZrOを含む。BaZrOは、Ba(バリウム),Zr(ジルコニウム)元素を含んで構成される。
KNN系材料と、BaZrOとは、共にペロブスカイト構造である。K、Na、及び、Baが同じサイト(Aサイト)に存在し、Nb、及び、Zrが同じサイト(Bサイト)に存在する。KNN系材料と、BaZrO、とは、互いに固溶し均一に分散している。
本開示の主相の組成式は、下記式(1)で表される。
(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrO…(1)
組成式(1)において、それぞれの元素割合は、誘電体組成物の、比誘電率、又は、耐熱温度の観点から、以下の範囲である。
0.28≦a≦0.54、
0.41≦b≦0.66、
0.01≦c≦0.02、
0.01≦d≦0.06、
0.96≦e≦0.99、
0.01≦f≦0.04、
0.035≦x≦0.080
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
e+f=1
組成式(1)において、それぞれの元素割合は、誘電体組成物の比誘電率、又は、耐熱温度の観点から、以下の範囲が好ましい。
0.28≦a≦0.54、
0.41≦b≦0.66、
0.01≦c≦0.02、
0.01≦d≦0.06、
0.96≦e≦0.99、
0.01≦f≦0.04、
0.060≦x≦0.080
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
e+f=1
組成式(1)において、それぞれの元素割合は、誘電体組成物の比誘電率、又は、耐熱温度の観点から、以下の範囲がより好ましい。
0.28≦a≦0.54、
0.41≦b≦0.66、
0.01≦c≦0.02、
0.01≦d≦0.06、
0.96≦e≦0.99、
0.01≦f≦0.04、
0.060≦x≦0.080、
0.45≦b/(a+b)≦0.7
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
e+f=1
本開示の誘電体組成物の結晶構造は、耐熱サイクルの観点から、菱面体晶であることが好ましい。菱面体結晶構造は、熱の影響を受けにくい構造であり、耐熱サイクルを高められる。
結晶構造は、リートベルト解析プログラムを用いることができる。詳細には、誘電体組成物の一部(1g以上)を粉末化して、X線回折測定を実施し、得られた回折パターンをリートベルト解析に基づきカーブフィッティングすることで、結晶構造を同定することができる。
本開示の誘電体組成物は、KNN系材料と、BaZrOの組成比率(モル%)を一定の範囲となるよう上記組成式(1)のxの値を調整することにより、ペロブスカイト型の結晶構造が安定化し、高い比誘電率、高い耐熱温度を有する誘電体組成物を提供することができる。
(2) 副相
本開示の誘電体組成物は、M-Ti-O系スピネル化合物の副相を含む。
副相は、誘電体の特性を有しないが、主相と混在することによって圧電磁器組成物の焼結性を向上させ、構造を安定化させる。副相は、主相の微細な結晶の間に形成される空孔を埋めるように充填することが好ましい。この結果、誘電体組成物は、主相の微細な結晶同士が副相によって結合されるので、誘電体組成物の構造が安定化し、比誘電率、又は、耐熱温度を向上させる。
副相のTi(チタン)を含むスピネル化合物系としては、下記式(2)で表されるものが好ましい。
<好ましい副相の組成式>
TiO…(2)
元素Mは、1価から4価の元素であり、Li(リチウム),Mg(マグネシウム),Al(アルミニウム),Sc(スカンジウム),Cr(クロム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Zn(亜鉛),Ga(ガリウム),Y(イットリウム),Zr(ジルコニウム),Sn(スズ),Sb(アンチモン),Si(ケイ素),Hf(ハフニウム)Nb(ニオブ)のうちの少なくとも1種を含む。
元素Mは、Fe(鉄)、Mg(マグネシウム)、及びLi(リチウム)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含むことが好ましい。
誘電体組成物として、元素Mとして2種類以上の金属元素を含むものがより好ましい。本明細書において、元素Mとして2種類以上の金属元素を含むスピネル化合物を、「複合スピネル化合物」とも呼ぶ。副相が複合スピネル化合物を含むことで、誘電体組成物の特性を向上させることが可能となる。
元素MとしてLiを含む場合には、副相が複合スピネル化合物を形成するために、金属元素のうちのLi以外の他の1種以上の金属元素が、Liとともに含まれることが好ましい。
元素MとしてLiを含む場合の、Li以外の他の1種以上の金属元素は、Fe、及び/又はMg元素であることがより好ましい。
係数x,yは、Tiの含有量を1としたときの相対値である。副相がスピネル化合物を形成するため、係数xは、0.5≦x≦5.0を満たすことが好ましい。また、係数yは、スピネル化合物を形成する任意の値であるが、典型的には2≦y≦8を満たすことが好ましい。スピネル化合物で構成される副相は、主相の構造を安定化するので、耐熱性と、比誘電率の優れた誘電体組成物を得ることができる。
副相を形成するスピネル化合物は、正スピネル化合物であってもよく、逆スピネル化合物であってもよい。なお、副相がスピネル化合物であるか否かは、粉末X線回折(XRD)の回折結果を使用したリートベルト解析(Rietveld Analysis)を行うことによって判定可能である。
スピネル化合物中のLi以外の金属元素量の分析は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)又はエネルギー分散型X線分析法(TEM-EDS)を用いて行うことが可能である。また、Li量の分析は、飛行時間二次イオン質量分析計(TOF-SIMS)を用いて行える。
副相の含有割合は、0.5体積%以上10体積%以下が好ましく、2体積%以上7体積%以下であることがより好ましく、3体積%以上5体積%以下であることがさらに好ましい。
(3) 誘電体素子の作製方法
図1は、本開示の実施形態における誘電体素子の作製方法の一例を示すフローチャートである。
(3.1)主相(KNN系材料) 仮焼粉末A
図1に示すように、工程T110では、主相(第1成分)の原料として、K(カリウム)化合物粉末、Na(ナトリウム)化合物粉末、Nb(ニオブ)化合物粉末、Ti(チタン)化合物粉末、及び、Li(リチウム)、Ca(カルシウム)化合物粉末のうちから必要なものを選択し、主相が下記組成式(1)組成となるように秤量する。原料粉末は、酸化物、炭酸塩、水酸化物および複数の上記元素からなる化合物粉末であってもよい。

(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrO…(1)
工程T120では、主相(KNN系材料)の原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得る。工程T120では、スラリーを乾燥して得られた混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で1時間以上10時間以下仮焼して主相の仮焼粉末Aを生成する。
(3.2)主相(BaZrO) 仮焼粉末B
工程T130では、主相の原料として、Ba(バリウム)化合物、及び、Zr(ジルコニウム)化合物粉末のうちから必要なものを選択し、主相の上記組成式(1)における係数xの値に応じて秤量する。原料粉末は、酸化物、炭酸塩、水酸化物および複数の元素からなる化合物であっても良い。
工程T140では、主相(BaZrO)の原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得る。乾燥した混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して主相の仮焼粉末Bを得る。
(3.3)副相 スピネル化合物の前駆体の仮焼粉末C
工程T150では、原料として、Li(リチウム)化合物粉末,Fe(鉄)化合物粉末,Mg(マグネシウム)化合物粉末、及び、Ti(チタン)化合物粉末のうちから必要なものを選択し、下記組成式(2)となるように秤量する。原料粉末は、酸化物、炭酸塩、水酸化物および複数の元素からなる化合物粉末であっても良い。

TiO…(2)
工程160では、これらの原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得る。乾燥した混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して副相の仮焼粉末Cを得る。この副相仮焼粉末Cは、スピネル化合物、又は、スピネル化合物の前駆体の粉体である。スピネル化合物の前駆体は、工程T160の仮焼の終了後にはスピネル化合物となっていないが、後述する工程T180の焼成によってスピネル化合物となる物質である。
工程T165では、主相仮焼粉末A、主相仮焼粉末B、及び、副相仮焼粉末Cをそれぞれ秤量し、ボールミルにて、分散剤、バインダ及びエタノールを加えて粉砕・混合してスラリーとする。このスラリーを乾燥して得られた混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で1時間以上10時間以下仮焼して仮焼粉末Dを生成する。本実施形態において、誘電体組成物における副相の好ましい割合は、体積%で規定される。一方、工程T145における主相仮焼粉末A、主相仮焼粉末B、及び、副相仮焼粉末Cとの混合割合は、主相仮焼粉末A、主相仮焼粉末B、及び副相仮焼粉末Cの重量を用いて行われる。この際、工程T145における混合時の副相割合(重量%)と、最終的に得られる誘電体組成物における副相割合(体積%)との関係は、経験的に予め決定しておくことが可能である。
工程T170では、工程T165で得られた仮焼粉末Dに再び分散剤、バインダ及びエタノールを加えて粉砕・混合してスラリーとし、このスラリーをスプレードライ乾燥機により乾燥し、造粒し、例えば圧力20MPaで一軸プレスを行い、所望の形状に成形する。本発明の実施形態としての各種の装置に適した典型的な誘電磁器の形状は、円板状、円柱状、矩形平板状等である。その後、例えば圧力150MPaでCIP処理(冷間静水圧成形処理)を行って成形体を得る。工程T175では、得られた成形体を、例えば大気雰囲気下500℃以上800℃以下で2時間以上10時間以下保持し、バインダを脱脂する脱脂工程を行う。
工程T180では、得られた脱脂工程後の成形体を、例えば大気雰囲気下1000℃以上1300℃以下の中から選択される特定温度(例えば、1150℃)で2時間以上50時間以下保持して焼成することによって誘電磁器を得る。工程T180の焼成は、密閉容器内に成形体を密封した状態で行う密封焼成であることが好ましい。この理由は、成形体に含まれるアルカリ金属(Li,Na,K)などの金属元素が、焼成中に外部に消失してしまうことを防止するためである。このような密閉容器としては、例えば、オオタケセラム株式会社製アルミナサヤA-1174を使用することが可能である。
工程T190では、誘電磁器を、要求される寸法精度に従って加工する。工程T200では、こうして得られた誘電磁器に電極を取り付け、工程T210で分極処理を行って誘電体素子を作製する。
図2は、本開示の一実施形態としての誘電体素子を示す斜視図である。この誘電体素子5は、本開示の誘電体組成物からなる円板状の誘電磁器1の上面と下面に電極2、3が取り付けられた構成を有している。
図3は、実施形態のコンデンサの一つである積層誘電体コンデンサ20を示す断面図である。図3に示すように、積層誘電体コンデンサ20は、誘電体組成物で形成された複数層(本実施形態では10層)の誘電体層23、誘電体層23を介して交互に積層された第1内部電極21及び、第2内部電極22を有する積層体10と、これらの第1内部電極21及び、第2内部電極22に電気的に接続され、積層体10の外表面に形成された第1外部電極11及び第2外部電極12とを有している。本実施形態の積層誘電体コンデンサ20は、側面にて第1内部電極21と第1外部電極11とが接続され、対向する側面にて第2内部電極22と第2外部電極12とが接続されている。
上述した積層誘電体コンデンサ20によれば、耐熱性及び比誘電率に優れた誘電体組成物で形成された誘電体層23を用いるため、耐熱性、温度安定性を向上させることができる。内部電極材料としては、Cu,Ag,Ni等の種々の金属材料を選択することが可能である。安価なコンデンサを提供するためには、ニッケル(Ni)を電極材料として使用することが好ましい。
実施例により本発明を更に具体的に説明する。
表1に、実施例、及び比較例において作製した各サンプル組成物の組成比を示す。表1中、a,b,c,d,e,fは、下記組成式(I)に含まれる係数に相当する。

(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrO…(I)
表1の「副相Mの元素種」の欄に複数の元素種が列記してある場合、副相Mには、複数の元素を用いていることを表している。例えば、比較例1では、「副相Mの元素種」に、Li,Fe,Mgを用いている。
なお、表1の「副相Mの元素種」の欄は、下記組成式(II)のMに含まれる元素を表している。

TiO…(II)
Figure 2024064254000001
1.組成物の調製、及び評価用の誘電体素子の作製
(1)主相(KNN系材料)の仮焼粉末の調製
原料として、K(カリウム)化合物、Na(ナトリウム)化合物、Nb(ニオブ)化合物、Ti(チタン)化合物、Li(リチウム)化合物粉末、Ca(カルシウム)化合物粉末のうちから必要なものを選択し、上記組成式(1)が、表1示す組成となるように秤量した。
これらの原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得た。乾燥した混合粉末を、大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下、仮焼して仮焼粉末Aを得た。
(2)主相(BaZrO)の仮焼粉末Bの調製
原料として、Ba(バリウム)化合物、Zr(ジルコニウム)化合物粉末のうちから必要なものを選択し、上記式(I)が、表1に示す組成となるように秤量した。
これらの原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて、15時間以上湿式混合してスラリーを得た。乾燥した混合粉末を、大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して仮焼粉末Bを得た。
(3)副相の仮焼粉末Cの調製
原料として、Li(リチウム)化合物,Fe(鉄)化合物,Mg(マグネシウム)化合物粉末,Ti(チタン)化合物粉末のうちから必要なものを選択し、上記組成式(II)が、表1に示す組成となるように秤量した。
これらの原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて15時間以上湿式混合してスラリーを得た。乾燥した混合粉末を、大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して、副相の仮焼粉末Cを得た。
(4)誘電体素子の作製
得られた上記3つの仮焼粉末に分散剤、バインダ及びエタノールを加えて粉砕・混合してスラリーとし、このスラリーを乾燥、造粒し、圧力20MPaで一軸プレスを行い、円板状に成形し、圧力150MPaでCIP処理(冷間静水圧成形処理)を行って成形体を得た。
また、得られた成形体を、400℃以上600℃以下で2時間以上10時間以下保持し、脱バインダ処理をおこなった。
さらに、脱バインダ処理後の成形体を、1000℃以上1200℃以下、5時間以上10時間以下保持して焼成することによって誘電体磁器を得た。
そして、電気特性を評価するため、この誘電体磁器の両主面にスパッタリング法にてAu(金)からなる外部電極を形成することにより、評価用の誘電体素子を得た。
上記組成式(I)に含まれるxの値は、KNN系材料、及び、BaZrOの仮焼粉末を調製する工程において、KNN系材料と、BaZrOの原料の混合比率を変えることで、調整した。
2.比誘電率の測定
インピーダンスアナライザを用いて比誘電率を測定した。測定周波数は1kHzとした。
比誘電率の評価は、以下の基準とした。
「A」:比誘電率が、3000以上ある。
「B」:比誘電率が、2000以上である。
「C」:比誘電率が、2000未満である。
3.耐熱温度の測定
比誘電率の温度依存性を評価し、比誘電率が最も高くなる温度を耐熱温度として算出した。比誘電率の測定周波数は1kHzとした。
耐熱温度の評価は、以下の基準とした。
「A」:耐熱温度が150℃以上である。
「C」:耐熱温度が150℃未満である。
4.熱サイクル試験
熱サイクル試験は、室温→300℃→室温を1サイクルとし、計1000サイクル実施し、1サイクル目と1000サイクル目との比誘電率の値の変化率を測定した。熱サイクル試験は、比較例5、実施例10、13で行った。
熱サイクル試験の評価は、以下の基準とした。
「A」:変化率が15%未満である。
「B」:変化率が15%以上である。
5.結晶構造の同定
全てのサンプルについて、結晶構造を同定した。
結晶構造は、XRDより得られた回折パターンをリートベルト解析に基づきカーブフィッティングすることで、同定した。
6.総合評価
総合評価は、以下の基準とした。
「A」:誘電比率、及び耐熱温度の評価が、いずれもAである。
「B」:誘電比率、及び耐熱温度の評価のいずれかにBが存在する。
「C」:誘電比率、及び耐熱温度の評価のいずれかにCが存在する。
7.評価結果
評価結果を表2に示す。
Figure 2024064254000002
(1)実施例の各要件の充足状況
実施例1から14は、下記要件(a)、(b)、(c)を満たしている。
・要件(a):(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrOで表される化合物の主相を含んでいる。
・要件(b):M-Ti-O系スピネル化合物を含む副相を含んでいる。
・要件(c):(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrOである主相の組成式は、
0.28≦a≦0.54、
0.41≦b≦0.66、
0.01≦c≦0.02、
0.01≦d≦0.06、
0.96≦e≦0.99、
0.01≦f≦0.04、及び
0.035≦x≦0.080を満たす。
(2)比較例の各要件の充足状況
・比較例1から10は、いずれも要件(c)を充足していない。
・比較例3は、要件(b)を充足していない。
8.結果及び考察
実施例は、いずれも総合評価が、A又はBであった。
実施例で、組成式(I)のxの値が、0.06≦x≦0.08である実施例3、4、5、6、9、10、13、14は、いずれも総合評価がAであった。このことから、組成式xの値は、0.06≦x≦0.08であることがより好ましい。
結晶構造を同定したサンプルで、菱面体構造の実施例10、13は、総合評価がAであった。一方、正方晶の比較例5は、総合評価がCであった。このことから、本開示の誘電体組成物の結晶構造は、菱面体であることが好ましい。
9.実施例の効果
本実施例の誘電体組成物は、耐熱性と、高い比誘電率を有する。
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
10.他の実施形態
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
(1)本開示の誘電体組成物に含まれるKNN系材料と、BaZrOとは均一に固溶している必要はない。
(2)本開示の誘電体組成物の構造は、菱面体に限られない。
(3)本開示の誘電体組成物の主相間を埋めるように副相が配されている必要はない。
(4)本開示の誘電体組成物の副相を構成する元素Mは、Fe(鉄),Mg(マグネシウム),Li(リチウム)に限られない。
(5)本開示の誘電体組成物における副相の組成式は、MTiOに限られない。例えば、副相の組成式を組成式Mx1TiBx2(元素BはNb(ニオブ)及びTa(タンタル)のうちの少なくとも1種を含む。)としてもよい。
1…圧電磁器
2…電極
3…電極
5…誘電体素子
10…積層体
11…第1外部電極
12…第2外部電極
20…積層誘電体コンデンサ(コンデンサ)
21…第1内部電極
22…第2内部電極
23…誘電体層

Claims (10)

  1. ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、
    M-Ti-O系スピネル化合物(元素Mは1価から4価の元素)の副相と、を含み、
    前記主相は、(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrOの組成式で表され、
    0.28≦a≦0.54、
    0.41≦b≦0.66、
    0.01≦c≦0.02、
    0.01≦d≦0.06、
    0.96≦e≦0.99、
    0.01≦f≦0.04、及び
    0.035≦x≦0.080を満たす、誘電体組成物。
  2. ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を含む主相と、
    M-Ti-O系スピネル化合物(元素Mは1価から4価の元素)の副相と、を含み、
    前記主相は、(1-x)(KNaLiCa)(NbTi)O-xBaZrOの組成式で表され、
    0.28≦a≦0.54、
    0.41≦b≦0.66、
    0.01≦c≦0.02、
    0.01≦d≦0.06、
    0.96≦e≦0.99、
    0.01≦f≦0.04、及び
    0.060≦x≦0.080を満たす、誘電体組成物。
  3. 前記主相の結晶構造が菱面体晶からなる、請求項1に記載の誘電体組成物。
  4. 前記主相間を埋めるように前記副相が配されている、請求項1に記載の誘電体組成物。
  5. 元素Mは、Fe(鉄)、Mg(マグネシウム)、及びLi(リチウム)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含む、請求項1に記載の誘電体組成物。
  6. 前記主相の結晶構造が菱面体晶からなる、請求項2に記載の誘電体組成物。
  7. 前記主相間を埋めるように前記副相が配されている、請求項2に記載の誘電体組成物。
  8. 元素Mは、Fe(鉄)、Mg(マグネシウム)、及びLi(リチウム)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含む、請求項2に記載の誘電体組成物。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の誘電体組成物からなる誘電磁器と、前記誘電磁器に接する電極とを備える、誘電体素子。
  10. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の誘電体組成物で形成された誘電体層を含む積層体と、前記誘電体層に取り付けられた電極と、を備える、コンデンサ。
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