JP2024062154A - シャープペンシル - Google Patents

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    • B43K21/00Propelling pencils
    • B43K21/02Writing-core feeding mechanisms
    • B43K21/16Writing-core feeding mechanisms with stepwise feed of writing-cores

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  • Mechanical Pencils And Projecting And Retracting Systems Therefor, And Multi-System Writing Instruments (AREA)

Abstract

【課題】筆記芯を回転させる回転駆動機構を備えたシャープペンシルにおいて、筆記芯の後退量をより低減させたシャープペンシルを提供する。【解決手段】シャープペンシル1が、軸筒5と、筆記芯の前進を許容し後退を阻止するチャックユニット10と、回転子40を有し、チャックユニット10に把持された筆記芯が受ける筆記圧による軸線方向の後退動作及び筆記圧の解除による軸線方向の前進動作を受けて、回転子40を一方向に回転駆動させる回転駆動機構30と、を具備し、後退動作による後退量mが0.05~0.3mmの範囲内である。【選択図】図7

Description

本発明は、シャープペンシルに関する。
筆記芯の前進を許容し後退を阻止するチャックを備えたスライダを含む回転部材と、回転子を有し且つチャックに把持された筆記芯が受ける筆記圧による軸線方向の後退動作及び筆記圧の解除による軸線方向の前進動作を受けて、回転子を一方向に回転駆動させる回転駆動機構と、を具備し、チャックが、回転子の回転駆動力を受けて回転することによって、筆記芯が回転するように構成されたシャープペンシルが公知である(特許文献1及び特許文献2)。
特許文献1に記載のような回転駆動機構を備えたシャープペンシルでは、通常、筆記芯を回転させるために微小ながら筆記芯の前進動作及び後退動作が行われる。筆記芯の一連の前進動作及び後退動作をまとめて「クッション動作」という。特許文献1に記載のシャープペンシルでは、例えば速記する場合等において、こうしたクッション動作、特に筆記芯の後退が煩わしく感じるという課題に着目し、使用者が回転駆動機構のオンとオフとを自由に切り替えられるようにしている。回転駆動機構によるクッション動作について、図12及び図13を参照しながら説明する。
図12は、従来の回転駆動機構の回転子240の回転駆動を説明する模式図であり、図13は、図12に続く回転子240の回転駆動を説明する模式図である。回転駆動機構は、円筒状に形成された回転子240と、円筒状に形成された上カム形成部材241と、円筒状に形成された下カム形成部材242とを有している。図12及び図13において、回転子240の上側の面である後端面には、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第1カム面240aが円環状に形成され、回転子240の下側の面である前端面には、後端面と同様に周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第2カム面240bが円環状に形成されている。
回転子240の第1カム面240aに対峙する上カム形成部材241の円環状の端面にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第1固定カム面241aが形成されている。回転子240の第2カム面240bに対峙する下カム形成部材242の円環状の端面にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第2固定カム面242aが形成されている。回転子240に形成された第1カム面240a及び第2カム面240bの各カム面と、上カム形成部材241に形成された第1固定カム面241a及び下カム形成部材242に形成された第2固定カム面242aの各カム面とは、周方向におけるピッチが互いにほぼ同一となるように形成されている。
回転駆動機構は、回転駆動機構に伝達された筆記動作に基づく筆記芯の後退動作及び前進動作(クッション動作)を、回転子240の回転運動に変換する。回転子240の回転運動は、筆記芯を把持した状態のチャックユニットに伝達され、したがって、チャックユニットに保持された筆記芯も回転する。
図12(A)は、筆記芯に筆記圧が加わっていないときの状態における回転子240、上カム形成部材241及び下カム形成部材242の関係を示している。この状態においては、回転子240に形成された第2カム面240bは、図示しないスプリングの付勢力によって、下カム形成部材242の第2固定カム面242aに対して当接している。このとき、回転子240の第1カム面240aと上カム形成部材241の第1固定カム面241aとは、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相ずれた関係となるように設定されている。
図12(B)は、シャープペンシルによる筆記のために、筆記芯に筆記圧が加わった初期の状態を示している。この状態においては、回転子240は、チャックユニットの後退に伴ってスプリングの付勢力に抗して後退する。それによって、回転子240は、上カム形成部材241側に移動して、第1固定カム面241aに当接する。
次いで、図12(C)は、筆記芯にさらに筆記圧が加わり、回転子240が上カム形成部材241の第1固定カム面241aに当接して滑りながら後退した状態を示している。すなわち、回転子240は、第1カム面240aの一歯の半位相に相当する回転駆動を受ける。この状態においては、回転子240の第1カム面240aは、上カム形成部材241の第1固定カム面241aに噛み合っている。
なお、図12及び図13における回転子240の中央部に描いた○印は、回転子240の回転移動量を示している。そして図12(C)に示す状態においては、回転子240の第2カム面240bと下カム形成部材242の第2固定カム面242aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相ずれた関係となるように設定されている。
次いで、図13(D)は、シャープペンシルによる筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解除された初期の状態を示している。この状態においては、回転子240は、スプリングの付勢力によって前進する。これにより、回転子240は、下カム形成部材242側に移動して、第2固定カム面242aに当接する。
次いで、図13(E)は、回転子240がスプリングの付勢力によって下カム形成部材242の第2固定カム面242aに当接して滑りながら前進した状態を示している。すなわち、回転子240は、第2カム面240bの一歯の半位相に相当する回転駆動を再び受ける。この状態においては、回転子240の第2カム面240bは、下カム形成部材242の第2固定カム面242aに噛み合っている。
したがって、回転子240の中央部に描いた○印で示すように、筆記圧を受けた回転子240の軸線方向への往復運動、すなわち前後動に伴って、回転子240は、第1カム面240a及び第2カム面240bの一歯に相当する回転駆動を受け、チャックユニットを介して、これに把持された筆記芯も同様に回転駆動される。したがって、筆記による回転子240の軸線方向への1回の前後動によって回転子240はカムの一歯に対応する回転運動を受け、これを繰り返すことによって、筆記芯は順次回転駆動される。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏って摩耗するのを防止することができ、描線の太さや描線の濃さが大きく変化することを防止することができる。
特開2022-073560号公報 国際公開第2007/142135号
上述したように、特許文献1では、時としてクッション動作が煩わしく感じることによる筆記感の低下という課題に着目し、クッション動作自体が行われないように必要に応じて回転駆動機構をオフにできるようにすることで、当該課題を解決した。しかしながら、特許文献1では、クッション動作そのものを見直すという課題の発見には至っていない。筆記芯の前進動作は、筆記のときに筆記芯が筆記面から離れるに従って行われることから、使用者にはほとんど認識されない。一方、筆記芯の後退動作は、筆記をしようと筆記芯を筆記面に接触させたにもかかわらず、シャープペンシルの本体が前進することから、言い換えると、筆記芯が相対的に後退することから、使用者が視覚的又は触覚的に違和感を覚える場合がある。
これに関し、本発明者等が、筆記芯を回転させる回転駆動機構を備えたシャープペンシルについて、調査にてネガティブ又はポジティブな意見を集計したところ、ネガティブな意見21.4%の結果のうち、実に44.8%の使用者が筆記芯の後退をネガティブな意見の理由として挙げる結果となった。一方で、78.6%の使用者がこうしたシャープペンシルをポジティブに評価していることから、筆記芯を回転させるという機能については高く評価されている。そこで本発明者等は、回転駆動機構によって筆記芯を回転させるためにはクッション動作が必要であるが、クッション動作の量をより低減、特に筆記芯の後退量を限界まで低減させるという発想に至った。
クッション動作の量又は筆記芯の後退量について、図12(A)を参照しながら説明する。カム歯の高さを距離hとし、第1カム面240aのカム歯の先端が回転子240の後退によって第1固定カム面241aに当接するまでの移動距離を距離dとする。回転子240の第1カム面240aの後端、すなわちカム歯の山の先端と、上カム形成部材241の第1固定カム面241aのカム歯の谷の部分との軸線方向における距離sが、クッション動作における筆記芯の後退量に相当する。
図12(A)では、回転子240の第2カム面240bが、下カム形成部材242の第2固定カム面242aに噛み合っていることから、この噛み合いを解除するためには、少なくとも第2カム面240bのカム歯の先端が、第2固定カム面242aのカム歯の先端を越えなければならない。言い換えると、カム歯の距離hだけ回転子240、ひいては筆記芯を後退させる必要がある。距離dが距離hよりも小さい場合には、回転子240の回転が、第1固定カム面241a又は第2固定カム面242aによって阻害されることから、回転駆動機構として機能しない。したがって、カム歯の距離hを越えてさらに回転子240が後退する場合、距離d-hに相当する距離は、筆記芯の後退量を低減させる余地があることを示している。
本発明は、筆記芯を回転させる回転駆動機構を備えたシャープペンシルにおいて、筆記芯の後退量をより低減させたシャープペンシルを提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、軸筒と、筆記芯の前進を許容し後退を阻止するチャックユニットと、回転子を有し、前記チャックユニットに把持された筆記芯が受ける筆記圧による軸線方向の後退動作及び筆記圧の解除による軸線方向の前進動作を受けて、前記回転子を一方向に回転駆動させる回転駆動機構と、を具備し、前記後退動作による後退量が0.05~0.3mmの範囲内であることを特徴とするシャープペンシルが提供される。
別態様によれば、前記後退量が、0.1~0.2mmの範囲内である。
また、別態様によれば、前記回転駆動機構は、前記回転子の後端面に形成された円環状の第1カム面と、前記回転子の前端面に形成された円環状の第2カム面と、前記軸筒側に設けられ、前記第1カム面と協働して前記回転子を回転させる第1固定カム面と、前記軸筒側に設けられ、前記第2カム面と協働して前記回転子を回転させる第2固定カム面と、を有し、前記第1固定カム面と前記第2固定カム面とが、前記回転子の回転が阻害されない最小距離で配置されるように構成されている。
また、別態様によれば、前記筆記圧による前記チャックユニットの後退動作によって、前記回転子の前記第1カム面が前記第1固定カム面に当接して前記回転子を回転させながら噛み合わされ、前記筆記圧の解除によって、前記回転子の前記第2カム面が前記第2固定カム面に当接して前記回転子を回転させながら噛み合わされるように構成され、前記回転子の前記第1カム面が、前記第1固定カム面に噛み合わされた状態において、前記第2カム面と前記第2固定カム面とが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、前記回転子の前記第2カム面が前記第2固定カム面に噛み合わされた状態において、前記第1カム面と前記第1固定カム面とが軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、前記第1カム面が第1カム歯を備え、前記第2カム面が第2カム歯を備え、前記第1固定カム面が前記第1カム歯と協働する第1固定カム歯を備え、前記第2固定カム面が前記第2カム歯と協働する第2固定カム歯を備え、前記第2カム歯又は前記第2固定カム歯の高さと、前記第2カム面と前記第2固定カム面とが噛み合わされた状態から前記第1カム歯の先端が前記回転子の後退動作によって前記第1固定カム歯に当接するまでの移動距離とが等しくなるように構成されている。
また、別態様によれば、前記筆記圧による前記チャックユニットの後退動作によって、前記回転子の前記第1カム面が前記第1固定カム面に当接して前記回転子を回転させながら噛み合わされ、前記筆記圧の解除によって、前記回転子の前記第2カム面が前記第2固定カム面に当接して前記回転子を回転させながら噛み合わされるように構成され、前記回転子の前記第1カム面が、前記第1固定カム面に噛み合わされた状態において、前記第2カム面と前記第2固定カム面とが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、前記回転子の前記第2カム面が前記第2固定カム面に噛み合わされた状態において、前記第1カム面と前記第1固定カム面とが軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、前記第1カム面が第1カム歯を備え、前記第2カム面が第2カム歯を備え、前記第1固定カム面が前記第1カム歯と協働する第1固定カム歯を備え、前記第2固定カム面が前記第2カム歯と協働する第2固定カム歯を備え、前記第1カム歯において、頂点から引いた垂線に対して、前記回転子の回転方向に対して後側の底辺の長さをXとし、前記回転子の回転方向に対して前側の底辺の長さをYとすると、0<Y<Xの関係となるように前記第1カム歯が構成されている。
また、別態様によれば、前記チャックユニットが、前記回転子の回転駆動力を受けて回転することによって、筆記芯が回転するように構成されている。
本発明の態様によれば、筆記芯を回転させる回転駆動機構を備えたシャープペンシルにおいて、筆記芯の後退量をより低減させたシャープペンシルを提供するという共通の効果を奏する。
図1は、本発明の実施形態によるシャープペンシルの縦断面図である。 図2は、図1のシャープペンシルの前半分の拡大断面図である。 図3は、図1のシャープペンシルの中央部分の拡大断面図である。 図4は、回転駆動機構の部分拡大図である。 図5は、回転駆動機構の回転子の回転駆動を順を追って説明する図である。 図6は、回転駆動機構の回転子の回転駆動を順を追って説明する模式図である。 図7は、回転駆動機構の各カムの関係を説明する模式図である。 図8は、回転子のずれを説明する図である。 図9は、回転子の回転不良を説明する図である。 図10は、別の回転駆動機構の各カムの関係を説明する模式図である。 図11は、図10の回転駆動機構の回転子の回転駆動を順を追って説明する模式図である。 図12は、従来の回転駆動機構の回転子の回転駆動を説明する模式図である。 図13は、図12に続く回転子の回転駆動を説明する模式図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の実施形態によるシャープペンシル1の縦断面図であり、図2は、図1のシャープペンシル1の前半分の拡大断面図である。
シャープペンシル1は、前軸2と、前軸2の後端部の外周面に螺合する後軸3と、後軸3の後端部の内周面に嵌合し且つクリップを備えた内筒4とを有している。前軸2及び後軸3は、軸筒5を構成する。なお、内筒4も含めて軸筒5と称してもよい。シャープペンシル1は、軸筒5の先端から筆記芯が突出するように構成されている。軸筒5の先端近傍は、筆記芯を案内する先端パイプ6によって覆われている。本明細書では、シャープペンシル1の軸線方向において、筆記芯側を「前」側と規定し、筆記芯側とは反対側を「後」側と規定する。
軸筒5の前端部の内部には、スライダ7が、軸線方向にスライド可能、且つ、軸線回りに回転可能に配置されている。スライダ7は、前方に向かって外径が段状に細くなる円筒状に形成されている。スライダ7の前端部には、上述した先端パイプ6が取り付けられている。また、先端パイプ6の後方には、中央に通孔が形成された保持チャック8が配置されている。保持チャック8の通孔は、筆記芯の外周面に摺接し、筆記芯を一時的に保持するように作用する。
スライダ7の後端部には、円筒状に形成された中継部材9が螺合している。スライダ7及び中継部材9の内部には、筆記芯を把持するチャックユニット10及び芯ケース13が配置されている。チャックユニット10は、チャック本体部11と、チャック本体部11の前端部を包囲するように円筒状に形成された締め具12と、を有している。チャック本体部11の少なくとも前半分は、軸線方向に沿って3つのチャック片11aに分割され、中心軸線に沿って筆記芯の通孔が形成されている。チャック片11aの各々は、前端部が互いに離間するように形成されている。芯ケース13は、円筒状に形成され、内部には筆記芯が収容される。芯ケース13の前端部の内部には、チャック本体部11の後端部が挿入され、嵌合している。
チャック本体部11を包囲するようにコイルスプリング14が配置されている。コイルスプリング14の前端は、中継部材9の内周面に形成された段部によって支持され、コイルスプリング14の後端は、芯ケース13の前端面に当接している。したがって、コイルスプリング14は、芯ケース13及びチャック本体部11を後方に付勢している。後方に付勢されたチャック本体部11は、締め具12内に収容されることによって前端部が互いに接近し、筆記芯を把持した状態を維持することができる。また、筆記芯に筆記圧が加わった場合には、チャック本体部11がより後退して締め具12内に収容され、筆記芯はチャック本体部11によって把持される。これにより、筆記芯の後退は阻止される。他方、筆記芯を前方に引き出す力が働いた場合には、チャック本体部11が締め具12による作用を受けないため、筆記芯を抵抗なく前方に引き出すことができる。すなわち、チャックユニット10は、筆記芯の前進を許容し後退を阻止するように作用するが、当該作用を奏する限りにおいてその他のチャックユニット、例えばボールチャックであってもよい。
締め具12の外周面は、中継部材9の前端部の内周面に嵌合している。したがって、スライダ7、中継部材9及びチャックユニット10は、軸筒5内において軸線方向に移動可能である。中継部材9の後端部は、後述する回転駆動機構30に連結されている。
軸筒5の後端部、具体的には内筒4の後端部には、ノック部材としての筒状のノック部材20が軸筒5に対して前後動可能に設けられている。ノック部材20は、コイルスプリング21によって後方に付勢されている。ノック部材20の前端部の内部には、芯ケース13が挿入されている。ノック部材20の後端部の内部には、消しゴム22が着脱可能に装着されている。ノック部材20の後端部の外周面には、ノックカバー23が着脱可能に取り付けられ、消しゴム22を汚れ等から保護している。
ノック部材20又はノックカバー23を前方へ押圧するノック操作をすることによって、芯ケース13が前進する。これにより、チャック本体部11が前方に押し出される。これに伴い、チャック本体部11に把持された筆記芯も前進し、筆記芯を先端パイプ6から繰り出させるように作用する。ノック操作による押圧を解除すると、コイルスプリング21の付勢力によって、ノック部材20は、後退して元の位置に復帰する。このとき、チャック本体部11は、コイルスプリング14の付勢力によって後退する。他方、筆記芯は、スライダ7内に配置された保持チャック8によって保持されるため、チャックユニット10の作用として、筆記芯はチャック本体部11から抵抗なく引き出される。その結果、筆記芯は、先端パイプ6から繰り出されることから、ノック操作を繰り返すごとに、筆記芯を所定量ずつ繰り出すことができる。
図3は、図1のシャープペンシル1の中央部分の拡大断面図であり、図4は、回転駆動機構30の部分拡大図である。回転駆動機構30は、後軸3の内部空間に配置されている。回転駆動機構30は、中継部材9の後端部に接続されている。前軸2の後端面と回転駆動機構30の前端面との間に軸スプリング31が配置され、回転駆動機構30が後方に付勢されている。芯ケース13は、中継部材9及び回転駆動機構30の内部を貫通し、回転駆動機構30とは離間している。
回転駆動機構30は、円筒状に形成された回転子40と、円筒状に形成された第1カム形成部材である上カム形成部材41と、円筒状に形成された第2カム形成部材である下カム形成部材42と、円筒状に形成されたシリンダー部材43と、円筒状に形成されたトルクキャンセラー44と、コイル状のクッションスプリング45とを有している。回転駆動機構30は、これら部材が一体となって、ユニット化されている。
回転子40の前端部の内周面には、中継部材9の後端部の外周面が嵌合している。回転子40の前端部近傍は、僅かばかり径の大きいフランジ状に形成された部分を有し、当該部分の後端面には第1カム面40aが形成され、当該部分の前端面には第2カム面40bが形成されている。
上カム形成部材41は、回転子40の第1カム面40aの後方において、回転子40を回動可能に包囲している。下カム形成部材42は、上カム形成部材41の前端部の外周面に嵌合している。回転子40の第1カム面40aに対向する上カム形成部材41の前端面には、第1固定カム面41aが形成されている。回転子40の第2カム面40bに対向する下カム形成部材42の前端部内面には、第2固定カム面42aが形成されている。
第1カム面40aは複数の第1カム歯40aaを備え、第2カム面40bは複数の第2カム歯40baを備え、第1固定カム面41aは複数の第1固定カム歯41aaを備え、第2固定カム面42aは複数の第2固定カム歯42aaを備えている。第1カム歯40aa及び第1固定カム歯41aaは、同一形状及び同一配向である。第1カム歯40aa及び第2カム歯40baは、同一形状であるが線対称である。第1カム歯40aa、第2カム歯40ba及び第1固定カム歯41aaは、対応する各々のカム面において周方向に沿って隙間無く連続的に配置されている。他方、第2固定カム面42aの第2固定カム歯42aaは、第1カム歯40aa、第2カム歯40ba及び第1固定カム歯41aaよりも大きい相似形状である。また、第2固定カム歯42aaは、第2固定カム面42aにおいて周方向に沿って互いに離間しながら等間隔に配置されている。第1カム面40aは、複数の第1カム歯40aaによって鋸歯状に形成され、第2カム面40bは、複数の第2カム歯40baによって鋸歯状に形成され、第1固定カム面41aは、複数の第1固定カム歯41aaによって鋸歯状に形成されている。
上カム形成部材41の後端部の外周面には、円筒状に形成されたシリンダー部材43が嵌合している。シリンダー部材43の後端部には、芯ケース13が挿通できる挿通孔43aが形成されている。シリンダー部材43内には、円筒状に形成されて軸線方向に移動可能なトルクキャンセラー44が配置されている。トルクキャンセラー44の前端部内面とシリンダー部材43の後端部内面との間には、クッションスプリング45が配置されている。クッションスプリング45は、トルクキャンセラー44を介して、回転子40を前方に付勢している。
ここで、中継部材9は、筆記動作に基づく筆記芯の後退動作及び前進動作(クッション動作)を回転駆動機構30、すなわち回転子40に伝達すると共に、クッション動作によって生ずる回転駆動機構30における回転子40の回転運動を、筆記芯を把持した状態のチャックユニット10に伝達する。したがって、中継部材9の回転によって、チャックユニット10に保持された筆記芯も回転する。
シャープペンシル1で筆記しているとき以外、すなわち、筆記芯に筆記圧が加わっていないとき、回転子40は、トルクキャンセラー44を介したクッションスプリング45の付勢力によって前方に位置している。したがって、回転子40の第2カム面40bは、第2固定カム面42aに当接して噛み合い状態になされる。シャープペンシル1で筆記しているとき、すなわち、筆記芯に筆記圧が加わっているとき、チャックユニット10は、クッションスプリング45の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転子40も後退する。したがって、回転子40の第1カム面40aは、第1固定カム面41aに当接して噛み合い状態になされる。筆記芯と回転子40とは、一体的に、前進、後退又は回転をする。
図5は、回転駆動機構30の回転子40の回転駆動を順を追って説明する図であり、図6は、回転駆動機構30の回転子40の回転駆動を順を追って説明する模式図である。図6(A)乃至(E)は、図5(A)乃至(E)にそれぞれ対応する模式図である。さらにいうと、図5(A)乃至(E)並びに図6(A)乃至(E)は、図12(A)乃至(C)並びに図13(D)及び(E)にそれぞれ対応する。図6は、回転子40、上カム形成部材41及び下カム形成部材42を周方向に展開した状態を部分的に示している。また、クッション動作がより分かりやすくなるように、回転子40のカム歯について、図4の仮想線に囲まれた1つのカム歯のユニットUとして説明する。
第2固定カム歯42aaは、その他のカム歯と相似形状であることから、機能的観点から見れば、同一形状で連続的に配置されたカム歯と実質的に等しい。したがって、例えば図6及び後述する図7においては、図12及び図13と比較しやすいように、第2固定カム歯42aaをその他のカム歯と同一形状で連続的に配置されたカム歯に近似して模式的に示している。なお、第2固定カム歯42aaは、その他のカム歯と同様に同一形状として、周方向に沿って連続的に配置してもよい。また、第1カム歯40aa、第2カム歯40ba及び第1固定カム歯41aaは、それぞれ周方向に沿って連続的に配置されているが、周方向に沿って離間して配置してもよく、機能的観点から見て他のカム歯と互いに相似形状であってもよい。
図5(A)及び図6(A)は、筆記芯に筆記圧が加わっていないときの状態における前進した回転子40、上カム形成部材41及び下カム形成部材42の関係を示している。この状態においては、回転子40に形成された第2カム面40bは、クッションスプリング45の付勢力によって、下カム形成部材42の第2固定カム面42aに対して当接している。このとき、回転子40の第1カム面40aと上カム形成部材41の第1固定カム面41aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相ずれた関係となるように設定されている。
図5(B)及び図6(B)は、シャープペンシル1による筆記のために、筆記芯に筆記圧が加わった初期の状態を示している。この状態においては、回転子40は、チャックユニット10の後退に伴ってクッションスプリング45を収縮させて後退する。それによって、回転子40は、上カム形成部材41側に移動して、第1固定カム面41aに当接する。
次いで、図5(C)及び図6(C)は、筆記芯にさらに筆記圧が加わり、回転子40が上カム形成部材41の第1固定カム面41aに当接して滑りながら後退した状態を示している。すなわち、回転子40は、第1カム面40aの一歯の半位相に相当する回転駆動を受ける。この状態においては、回転子40の第1カム面40aは、上カム形成部材41の第1固定カム面41aに噛み合っている。
なお、図5における回転子40の中央部に描いた○印は、回転子40の回転移動量を示している。そして図5(C)に示す状態においては、回転子40の第2カム面40bと下カム形成部材42の第2固定カム面42aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相ずれた関係となるように設定されている。
次いで、図5(D)及び図6(D)は、シャープペンシル1による筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解除された初期の状態を示している。この状態においては、回転子40は、クッションスプリング45の付勢力によって前進する。これにより、回転子40は、下カム形成部材42側に移動して、第2固定カム面42aに当接する。
次いで、図5(E)及び図6(E)は、回転子40がクッションスプリング45の付勢力によって下カム形成部材42の第2固定カム面42aに当接して滑りながら前進した状態を示している。すなわち、回転子40は、第2カム面40bの一歯の半位相に相当する回転駆動を再び受ける。この状態においては、回転子40の第2カム面40bは、下カム形成部材42の第2固定カム面42aに噛み合っている。
したがって、図5において回転子40の中央部に描いた○印で示すように、筆記圧を受けた回転子40の軸線方向への往復運動、すなわち前後動に伴って、回転子40は、第1カム面40a及び第2カム面40bの一歯に相当する回転駆動を受け、チャックユニット10を介して、これに把持された筆記芯も同様に回転駆動される。したがって、筆記による回転子40の軸線方向への1回の前後動によって回転子40はカムの一歯に対応する回転運動を受け、これを繰り返すことによって、筆記芯は順次回転駆動される。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏って摩耗するのを防止することができ、描線の太さや描線の濃さが大きく変化することを防止することができる。なお、なお、以下の説明は、回転駆動機構を有するが、筆記芯が回転するように構成されていないシャープペンシルに対しても適用可能である。
要するに、回転駆動機構30は、回転子40の後端面に形成された円環状の第1カム面40aと、回転子40の前端面に形成された円環状の第2カム面40bと、軸筒5側に設けられ、第1カム面40aと協働して回転子40を回転させる第1固定カム面41aと、軸筒5側に設けられ、第2カム面40bと協働して回転子40を回転させる第2固定カム面42aと、を有している。筆記圧によるチャックユニット10の後退動作によって、回転子40の第1カム面40aが第1固定カム面41aに当接して回転子40を回転させながら噛み合わされ、筆記圧の解除によって、回転子40の第2カム面40bが第2固定カム面42aに当接して回転子40を回転させながら噛み合わされるように構成されている。回転子40の第1カム面40aが、第1固定カム面41aに噛み合わされた状態において、第2カム面40bと第2固定カム面42aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、回転子40の第2カム面40bが第2固定カム面42aに噛み合わされた状態において、第1カム面40aと第1固定カム面41aとが軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定されている。
なお、クッションスプリング45の付勢力を受けて回転子40を前方に押し出すトルクキャンセラー44は、その前端面と回転子40の後端面との間で滑りを発生させて、回転子40の回転運動がクッションスプリング45に伝達するのを防止している。すなわち、トルクキャンセラー44によって、回転子40の回転運動がクッションスプリング45に伝達されるのを防止し、それによって、回転子40の回転動作を阻害するクッションスプリング45のねじれ戻り(トルク)が発生することを防止している。
以上より、シャープペンシル1は、チャックユニット10と回転子40とを有し、チャックユニット10の前後動により筆記芯の解除及び把持を行うことで、筆記芯を前方に繰り出すことができるように構成され、チャックユニット10が、筆記芯を把持した状態で中心軸線回りに回転可能となるように軸筒5内に保持されると共に、筆記芯の筆記圧によるチャックユニット10を介した回転子40の前後動により回転子40を回転させ、回転子40の回転運動を、チャックユニット10を介して筆記芯に伝達するように構成されている。
図7は、回転駆動機構30の各カムの関係を説明する模式図であり、図6(A)と同一の図である。第1カム面40aの第1カム歯40aaは、第1斜面40aa1と第2斜面に相当する垂直面40aa2とを有し、隣接する第1カム歯40aaの第1斜面40aa1及び垂直面40aa2によって、第1カム面40aは連続する鋸歯状になされている。第1斜面40aa1は、軸線方向に対して直交する横断方向に対して傾斜角θで傾斜した面であり、垂直面40aa2は、軸線方向に対して平行な面、すなわち横断方向に対して直交する面である。上述したように、第2カム面40bの第2カム歯40ba、第1固定カム面41aの第1固定カム歯41aaも同様の形状を有している。
第1カム歯40aa及び第2カム歯40baの高さ、並びに、第2固定カム歯42aaが実質的に第2カム歯40baと噛み合う高さは、図12(A)の距離hに相当し、距離Hとする。第1カム歯40aaの垂直面40aa2の長さは、第1カム歯40aaの高さに等しく、したがって距離Hに等しい。第1カム歯40aaの先端が回転子40の後退によって第1固定カム歯41aaに当接するまでの移動距離は、図12(A)の距離dに相当し、距離Dとする。第1カム歯40aaの周方向に沿った長さを、カム歯の長さLとする。
なお、第1カム歯40aaは、円筒状に形成された回転子40の部材に応じた径方向の厚みを有している。図6及び図7は、回転子40、上カム形成部材41及び下カム形成部材42を周方向に展開した状態を模式的に示しているが、第1カム歯40aaについて径方向の厚みの範囲のうちどの部分を展開するかで、厳密に言うと角度及び寸法が僅かばかり異なる。したがって、図6及び図7並びの本明細書のその他説明においては、回転子40の外径を規定する最も外側部分について周方向に展開したものとしてθ及びL等の角度及び距離並びにその他部材の位置関係を規定する。
シャープペンシル1における回転駆動機構30では、第1固定カム面41aと第2固定カム面42aとは、回転子40の回転が阻害されない最小距離で配置されている。そのため、第2カム歯40baと第2固定カム歯42aaとが実質的に噛み合う高さである距離Hと、第1カム歯40aaの先端と第1固定カム歯41aaとの軸線方向における距離Dとは、等しくなるように構成されている。
詳細には、図5(A)及び図6(A)に相当する図7においては、回転子40は、第2カム面40bの第2カム歯40baと第2固定カム面42aの第2固定カム歯42aaとが係止することによって回転が規制されている。この状態から筆記芯の後退によって回転子40が距離Hだけ後退すると、第2カム歯40baと第2固定カム歯42aaとの係止が解除され、それによって、回転子40の回転の規制が解除される。また、回転子40が距離Dだけ後退すると回転子40の第1斜面40aa1が第1固定カム歯41aaに当接し、それによって、回転子40を回転させることができる。
要するに、回転子40の回転の規制の解除と、第1カム面40aと第1固定カム面41aとの当接とが同時に行われる場合、すなわち距離Hと距離Dとが等しい状態(D=H)が、第1固定カム面41aと第2固定カム面42aとが、回転子40の回転が阻害されない最小距離で配置された状態であるといえる。言い換えると、距離Hと距離Dとが等しい場合に、筆記芯の後退量mが最小となる。製造時の公差等を考慮し、僅かばかり距離Dが距離Hよりも長くなるように構成してもよい。最小距離とは、回転子の回転が阻害されないように設計された意図が客観的又は外形的に明らかであればよく、製造時の公差も考慮した上で判断され、シャープペンシルの使用による摩耗は考慮しないで判断される。
上述したように、第1カム面40aと第1固定カム面41aとは、カムの一歯に対して半位相ずれて配置されている。したがって回転子40は、図5(B)及び図6(B)に示された状態から図5(C)及び図6(C)に示された状態に至るまで、距離1/2Lだけ回転すると共に距離1/2Hだけ後退する。要するに、一連のクッション動作において、筆記芯は、距離3/2H(=1/2H+H)だけ後退し、これが回転駆動機構30として、筆記芯の最小の後退量mである。こうして幾何学的に求められる最小の後退量mを、最小後退量Mとする。当然のことながら、回転子40が後退した状態(図5(C)及び図6(C))から前進した状態(図5(E)及び図6(E))への軸線方向の移動量、すなわち前進量は、最小後退量Mと同一の距離3/2Hである。
なお、第2カム面40bの第2カム歯40baの山の先端の動作に着目すると、最初に後退するとき軌跡T1に沿って移動し、その後の回転及び後退によって軌跡T2に沿って移動する。第1カム面40aの第1カム歯40aaも、これと同様の軌跡を描きながら移動する。
距離Hは、第1カム歯40aaの傾斜角θ及び周方向の長さLに依存し、H=Ltanθの関係にある。そのため、カム歯の長さLをより小さくするか又は傾斜角θをより小さくすることによって、距離Hを小さくすることができ、結果として最小後退量Mをより小さくすることができる。そこで、傾斜角θ及びカム歯の長さLの設計について説明する。
傾斜角θは、その大きさによってカム歯同士の滑りやすさを決める1つの要因である。すなわち、傾斜角θが小さすぎると、例えば傾斜角θが摩擦角よりも小さいと、カム歯同士が滑らず、したがって回転子40が回転しない。傾斜角θが大きすぎると、距離Hがより大きくなり、最小後退量Mもより大きくなる。筆記具の部品として使用されている材料全般も考慮し、傾斜角θは、8~25°の範囲内であることが好ましい。
一般に、シャープペンシル等の筆記具の構成部品の多くは、ポリプロピレンやポリアセタール等の樹脂で形成される。特に回転子40、上カム形成部材41及び下カム形成部材42のカム構造のような複雑な形状で且つ外観に影響を与えないような内部部品は、金属材料で形成されることはほとんどない。これら部品に形成された各カム歯の協働動作、具体的には回転子40が上カム形成部材41又は下カム形成部材42に当接して滑りながら回転することを、特に摩擦抵抗を考慮してより確実に行うため、各カム歯において摩擦角よりも大きい傾斜角θが必要である。例えば、回転子40、上カム形成部材41及び下カム形成部材42をポリアセタールで製造し、その摩擦角を10.2°とする。すなわち、傾斜角θが10.2°以下だとカム歯同士が滑らず、したがって回転子40を回転させることができない。
カム歯の長さLは、回転子40の外径から全周の長さを算出し(外径×π)、それをカム歯の数で割ることで算出される。回転子40の外径の寸法設計の一例について説明する。0.5mmの筆記芯は、シャープペンシル用芯のJIS規格S6005によれば、0.58mmの外径まで許容される。複数本の筆記芯を芯ケース13に収容可能とする場合、芯ケース13の内径は、例えば筆記芯の3本分として、少なくとも1.8mmだけ必要である。樹脂製の部材は、強度の観点から円筒状の部分の肉厚を少なくとも0.5mmとする。したがって、芯ケース13の肉厚、芯ケース13を包囲する部分の回転子40の肉厚、さらにはカム歯が形成されている部分の肉厚は各々0.5mmとする。これら肉厚及び芯ケース13の内径を考慮して、回転子40の第1カム面40a及び第2カム面40bの部分の外径は、4.8mmとなる。
第1カム面40aのカム歯の数、すなわち対応する第2カム面40bのカム歯の数は、20~90個であることが好ましい。カム歯の数は、1回のクッション動作によって回転する筆記芯の回転角を規定する。例えばカム歯の数が90個の場合、360°を90で割って4°となることから、1回のクッション動作で回転子40が4°だけ回転する。したがって、90画の筆記をすると、筆記芯は1回転する。
カム歯の数が90個よりも多いと、回転角がより小さくなり、筆記芯が摩耗している部分で次の筆記が行われる。そのため、筆記芯の偏った摩耗を防止するという、回転駆動機構を備えたシャープペンシルの本来の目的を達成することができない。他方、カム数が20個よりも少ないと、カム歯の長さLがより大きくなる。そのため、上述した距離H=Ltanθの関係式から、カム歯の高さである距離Hがより大きくなり、最小後退量Mもより大きくなってしまう。そのため、カム歯の数は、20~90個が好ましい。
回転子40の外径を4.8mmとし、カム歯の数を90個とし、傾斜角θを摩擦角10.2°よりも大きい10.3°とした場合、カム歯の長さLは、4.8×π/90から、約0.17mmである。そうすると、カム歯の高さである距離Hは、Ltanθの関係式から、0.03mmとなる。その結果、最小後退量Mは、3/2Hの関係式から、0.05mmとなる。
以上より、筆記芯の後退量mが、最小後退量Mである0.05mmよりも小さい場合には、カム歯の傾斜角θがより小さくなることから、カム歯同士が滑らず回転不良が生じる虞があるか、又は、回転子40の回転角がより小さくなることから、回転駆動機構を備えたシャープペンシルの本来の目的を達成することができない虞がある。したがって、後退量mは、最小後退量Mである0.05mm以上であることが好ましい。
他方、後退量mは0.3mm以下であることが好ましい。後退量mが0.3mmよりも大きい場合には、使用者が筆記芯の後退による違和感を覚える虞がある。
本発明者等は、学生23人に対し、後退量mが0.15mmのシャープペンシル及び後退量mが0.3mmのシャープペンシルについて、後退量mに違いがあることを事前に伝えずに筆記を行ってもらう調査を行ったところ、全員がその違いに気づいたという結果が得られた。要するに、使用者は、僅か0.15mmの違いも感じるということが分かった。筆記芯の後退量mはより小さい方が好ましいが、上述したように、後退量mが小さすぎると回転不良等の虞がある。使用者ができるだけ筆記芯の後退という違和感を覚えないようにしつつ、確実に回転子40及び筆記芯の回転を実現するため、後退量mは、0.3mm以下であることが好ましい。
以上より、軸筒5と、筆記芯の前進を許容し後退を阻止するチャックユニット10と、回転子40を有し、チャックユニット10に把持された筆記芯が受ける筆記圧による軸線方向の後退動作及び筆記圧の解除による軸線方向の前進動作を受けて、回転子40を一方向に回転駆動させる回転駆動機構30と、を具備するシャープペンシル1において、筆記芯の後退量mは、0.05~0.3mmの範囲内であることが好ましい。
上述したように、カム歯の数を90個とすると1回のクッション動作で4°だけ回転する。筆記圧の強い使用者の場合、1回の筆記によって摩耗する筆記芯の量も多く、そのため4°の回転では十分ではない場合がある。1回のクッション動作によって回転する筆記芯の回転角を増やすため、カム歯の数は20~40個であることがより好ましい。例えばカム歯の数が40個の場合、360°を40で割って9°となることから、1回のクッション動作で回転子40が9°だけ回転する。したがって、40画の筆記をすると、筆記芯は1回転する。
回転子40の外径を上述した4.8mmとし、カム歯の数を40個とし、傾斜角θを10.3°とする場合、カム歯の長さLは、4.8×π/40から、約0.38mmである。そうすると、カム歯の高さである距離Hは、Ltanθの関係式から、0.07mmとなる。その結果、最小後退量Mは、3/2Hの関係式から、0.1mmとなる。
以上より、後退量mが0.1mm以上だと、筆記圧が強い使用者の場合であっても十分な筆記芯の回転が得られるためより好ましい。さらに、使用者によっては、筆記面に対して極端にシャープペンシル1を傾けて筆記する場合がある。このような場合、後退量mがより大きい方が、すなわちカム歯の長さLをより長くするか又は傾斜角θをより大きくした方が、各カム歯を確実に協働させることができるため好ましい。こうした理由からも、後退量mが0.1mm以上であることがより好ましい。
ところで、小さい文字を筆記しているときは筆記芯の先端を注視し且つ感覚もより研ぎ澄まされることから、後退量mは、0.2mm以下であることがより好ましい。また、同じクッション量であっても、0.5mmの筆記芯による筆記時に感じる感覚と、0.3mmの筆記芯による筆記時に感じる感覚とは異なる。すなわち、0.3mmの筆記芯による筆記時に感じる感覚の方が、筆記芯の太さに対して、筆記芯の先端が前後する距離が相対的に大きいことから、より違和感を覚えやすい。こうした理由からも、後退量mは、0.2mm以下であることがより好ましい。
以上より、筆記芯の後退量mは、0.1~0.2mmの範囲内であることがより好ましい。
また、後退量mは、筆記芯の芯径に応じて変更してもよく、筆記芯の外径の約半分以下であることがより好ましい。例えば、シャープペンシル用芯のJIS規格S6005によれば、例えば、0.5mmの筆記芯は、0.55~0.58mmと規定されている。したがって、0.5mmの筆記芯の場合、後退量mは、0.3mm以下であることが好ましい。同様に、0.3mmの筆記芯は、0.37~0.39mmと規定されている。したがって、0.3mmの筆記芯の場合、後退量mは、0.2mm以下であることが好ましい。
なお、カム歯は、全周に亘って連続的でなくてもよい。カム歯の数を考える場合、例えカム歯が全周に亘って連続的ではなく、離間して配置されている場合であっても、代表する1つのカム歯の周方向の長さLで、全周の長さを割ることで、仮想的なカム歯の数を算出してもよい。カム歯の数は、設計の効率化のため、回転子40の一周360°に対して、20個、40個、60個及び90個が好ましく、40個が後退量mの低減の観点から最も好ましい。
上述した実施形態では、回転子40の外径やカム歯の数、傾斜角の一例に基づき、最小後退量M、さらには筆記芯の後退量mについて説明したが、上述した筆記芯の後退量mの好適な範囲は、その他の外径やカム歯の数等のシャープペンシルにおいても同様に適用可能である。すなわち、上述した実施形態によれば、筆記芯を回転させる回転駆動機構を備えたシャープペンシル1において、筆記芯の後退量をより低減させることができる。
ところで、第1カム歯40aaの長さLをより短くするということは、1つの第1カム歯40aaが全周の長さに占める割合を小さくすることになる。言い換えると、長さLをより短くするということは、カム歯の数を増やすことができるようになる。長さLをより短くすると、上カム形成部材41及び下カム形成部材42に対する回転子40の相対的位置関係が径方向においてずれることによって、すなわち互いの中心軸線がずれることによって、ずれた方向に対して直交する方向に対応する位置に配置されたカム歯の噛み合いが不完全となる可能性がある。その結果、回転子40の回転不良が生じる可能性がある。これに関し、図8及び図9を参照しながら説明する。
図8は、回転子40のずれを説明する図であり、図9は、回転子40の回転不良を説明する図である。図8は、回転駆動機構30を軸線方向から見て縮尺等を捨象して多少誇張して模式的に描かれている。図8において、上カム形成部材41及び下カム形成部材42に対して回転子40が図において上方に距離gだけずれた状態を示している。すなわち上カム形成部材41及び下カム形成部材42は、軸筒5側に設けられていることから、これらの中心軸線は一致しているが、回転子40の中心軸線だけが、距離gだけずれている。
図9(A)は、回転子40が径方向に最もずれた位置である図8の部分P1の各カムの関係を示している。図9(B)は、回転子40が周方向に最もずれた位置である図8の部分P2の各カムの関係を示している。すなわち、部分P1は、回転子40がずれた方向に位置する部分であり、部分P2は、ずれた方向に対して直交する方向に位置する部分である。各カムの各カム歯は、周方向に沿って配置されていることから、部分P1においてカム歯の各々は、図において左右方向に沿って配置され、部分P2においてカム歯の各々は、図において上下方向に沿って配置されている。
図9(A)を参照すると、回転子40のカム歯は、上カム形成部材41及び下カム形成部材42のカム歯に対して、図6(A)に示された状態と比較して、回転子40の径方向、すなわち図において紙面垂直方向に距離gだけずれている。そのため、部分P1においては、カム歯の位相についてのずれはなく、したがって回転子40の回転駆動に対する影響はほとんどない。
他方、図9(B)を参照すると、回転子40のカム歯は、上カム形成部材41及び下カム形成部材42のカム歯に対して、図6(A)に示された状態と比較して、回転子40の周方向、すなわち図において右方向に距離gだけずれている。通常であれば、筆記により回転子40が後退したとき、回転子40の第1カム面40aが、回転子40の第1斜面40aa1の半分の長さに亘り、上カム形成部材41の第1固定カム面41aに当接する。すなわち、図6(B)に示されるように、周方向における当接部分の長さである掛かり代Eは、1/2Lである。
他方、回転子40が距離gだけずれていることによって、その分だけ、掛かり代Eは小さくなる。そのため、第1カム面40aと第1固定カム面41aとが確実に協働することができず、回転子40が回転しない回転不良が生じる虞がある。また、図9(C)に示されるように、距離gが、第1カム歯40aaのカム歯の長さLの半分より大きい場合、すなわちカムの一歯に対して半位相以上ずれた場合には、第1カム面40aは、当接すべき対応する第1固定カム面41aに当接することもできない。その結果、その他の部分では回転駆動力が生じたとしても、当該部分によって回転が規制され、回転子40が回転しない回転不良が生じる。
要するに、カム歯の長さLが、回転子40が径方向にずれた距離gに対して相対的に小さいほど、回転不良が生じる可能性が高くなる。したがって、回転子40の径方向のずれを考慮し、カム歯の長さL、ひいてはカム歯の数が、上述した筆記芯の後退量mを実現可能な範囲において適宜決定される。
なお、回転子40の径方向のずれは、回転子40が中継部材9を介して連結するスライダ7の先端部の外周面と、当該外周面を包囲する前軸2の内周面とのクリアランスに大きく依存する。クリアランスは、製造時の公差に起因することから、より精度良く加工できるよう、少なくともスライダ7は金属製であることが好ましい。
上述した実施形態における回転子40の第1カム歯40aaは、第1斜面40aa1と第2斜面に相当する垂直面40aa2とを有している。そのため、第1カム面40aは連続する、いわゆる鋸歯状に形成されている。その他のカム歯についても同様の形状である。例えば、特許文献1に記載のシャープペンシルも同様の形状である。カム歯は、鋸歯状でなくても回転子を回転駆動させることは可能である。以下、別のカム歯の形状について説明する。
図10は、別の回転駆動機構の各カムの関係を説明する模式図であり、図7に対応する図である。図10に示された回転駆動機構は、回転子140、上カム形成部材141及び下カム形成部材142を有しており、上述した回転駆動機構30の回転子40、上カム形成部材41及び下カム形成部材42と置換可能である。
第1カム面140aの第1カム歯140aaは、第1斜面140aa1と第2斜面140aa2とを有し、隣接する第1カム歯140aaの第1斜面140aa1及び第2斜面140aa2によって、第1カム面40aは連続する山型状になされている。第1斜面140aa1は、軸線方向に対して直交する横断方向に対して傾斜角θで傾斜した面である。第2カム面140bの第2カム歯140ba、第1固定カム面141aの第1固定カム歯141aa及び第2固定カム面142aの第2固定カム歯142aaも、第1カム歯140aaと同様の形状を有している。
図11は、図10の回転駆動機構の回転子140の回転駆動を順を追って説明する模式図である。図11(A)乃至(E)は、図6(A)乃至(E)にそれぞれ対応する模式図であり、基本的な動作は同じである。図11は、回転子140、上カム形成部材141及び下カム形成部材142を周方向に展開した状態を部分的に示している。また、クッション動作がより分かりやすくなるように、回転子140のカム歯について、図6と同様に1つのカム歯のユニットUとして説明する。
図11(A)は、筆記芯に筆記圧が加わっていないときの状態における前進した回転子140、上カム形成部材141及び下カム形成部材142の関係を示している。この状態においては、回転子140に形成された第2カム面140bは、クッションスプリング45の付勢力によって、下カム形成部材142の第2固定カム面142aに対して当接している。このとき、回転子140の第1カム面140aと上カム形成部材141の第1固定カム面141aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相ずれた関係となるように設定されている。
図11(B)は、シャープペンシル1による筆記のために、筆記芯に筆記圧が加わった初期の状態を示している。この状態においては、回転子140は、チャックユニット10の後退に伴ってクッションスプリング45を収縮させて後退する。それによって、回転子140は、上カム形成部材141側に移動して、第1固定カム面141aに当接する。
次いで、図11(C)は、筆記芯にさらに筆記圧が加わり、回転子140が上カム形成部材141の第1固定カム面141aに当接して滑りながら後退した状態を示している。すなわち、回転子140は、第1カム面140aの一歯の半位相に相当する回転駆動を受ける。この状態においては、回転子140の第1カム面140aは、上カム形成部材141の第1固定カム面141aに噛み合っている。
次いで、図11(D)は、シャープペンシル1による筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解除された初期の状態を示している。この状態においては、回転子140は、クッションスプリング45の付勢力によって前進する。これにより、回転子140は、下カム形成部材142側に移動して、第2固定カム面142aに当接する。
次いで、図11(E)は、回転子140がクッションスプリング45の付勢力によって下カム形成部材142の第2固定カム面142aに当接して滑りながら前進した状態を示している。すなわち、回転子140は、第2カム面140bの一歯の半位相に相当する回転駆動を再び受ける。この状態においては、回転子140の第2カム面140bは、下カム形成部材142の第2固定カム面142aに噛み合っている。
したがって、筆記圧を受けた回転子140の軸線方向への往復運動、すなわち前後動に伴って、回転子140は、第1カム面140a及び第2カム面140bの一歯に相当する回転駆動を受け、チャックユニット10を介して、これに把持された筆記芯も同様に回転駆動される。要するに、カム歯の形状が鋸歯状であっても、山型状であっても回転駆動機構の基本的な回転駆動の動作について相違はない。
図10を参照しながら、最小後退量Mの算出について説明する。図7に示された鋸歯状のカム歯の高さが距離Hであるのに対し、図10に示された山型状のカム歯の高さを、距離H’とする。図10では、図7に示された鋸歯状のカム歯を仮想線で示している。第1カム歯140aaの先端が回転子140の後退によって第1固定カム歯141aaに当接するまでの移動距離を、距離Dとする。第1カム歯140aaの周方向に沿った長さを、カム歯の長さLとする。第1カム歯140aaの三角形を考え、頂点から底辺に対して垂線を引いて長さLを分割したとき、回転子140の回転方向(図中左方向)に対して後側の底辺の長さをXとし、回転子140の回転方向に対して前側の底辺の長さをYとする。
鋸歯状のカム歯の距離Hと山型状のカム歯の距離H’とは、幾何学的にH’=HX/(X+Y)の関係となる。また、図10の第2カム歯140baの部分の複数の補助線Jを考慮すると、距離Dは、D=H-2H(Y/(X+Y))=H(X-Y)/(X+Y)となる。これらより、最小後退量Mは、M=1/2H+D=1/2H+H(X-Y)/(X+Y)=H(3X-Y)/{2(X+Y)}=H’(3X-Y)/(2X)の関係となる。したがって、最小後退量M=3/2H’-H’Y/(2X)という関係式が求められる。図7に示されたカム歯の高さが距離Hの鋸歯状のカム歯の場合、Yがゼロであることから、当該関係式によれば上述のとおり最小後退量M=3/2Hとなる。
なお、第2カム面140bの第2カム歯140baの山の先端の動作に着目すると、最初に後退するとき軌跡T3に沿って移動し、その後の回転及び後退によって軌跡T4に沿って移動する。第1カム面140aの第1カム歯140aaも、これと同様の軌跡を描きながら移動する。
第1カム歯140aaは、X=Yのときに二等辺三角形となり、こうしたカム歯は特許文献2の図4に開示されている。この場合、最小後退量M=3/2H’-H’Y/(2X)の関係式より、最小後退量M=H’となり、最小後退量Mは最小となる。しかしながら、図10を参照しながらX=Yの場合を考慮すると明らかなように、第1カム歯140aaの頂点と、第1固定カム歯141aaの頂点とは、対向する位置に配置される。そのため、掛かり代Eは微小又は点状となり、回転子140の径方向における僅かなずれによって、回転不良を生じる可能性がある。
したがって、YはXよりも小さい方が好ましい。また、第1カム歯140aaは、上記関係式から、図7に示されるような直角三角形である鋸歯状の第1カム歯40aaではない方が、最小後退量Mをより小さくすることができる。したがって、Yはゼロよりも大きい方が好ましい。
以上より、第1カム歯140aaの頂点又は第2カム歯140baの頂点に対して、回転子140の回転方向に対して後側の底辺の長さをXとし、回転子140の回転方向に対して前側の底辺の長さをYとすると、0<Y<Xの関係となるように第1カム歯140aa及び第2カム歯140baが構成されていることが好ましい。そして、第1固定カム面141aと第2固定カム面142aとは、回転子140の回転が阻害されない最小距離で配置されるように構成されていることが好ましい。それによって、最小後退量M、ひいては筆記芯の後退量mをより低減させつつ、必要な掛かり代Eをより大きく確保することができる。
ところで、製造時の公差を考慮すると、掛かり代Eは、0.1mm以上(E≧0.1mm)であることが好ましい。これに関し、カム歯の数を40個とし、上述したように、回転子140の第1カム面140a及び第2カム面140bの部分の外径が、4.8mmの場合を考える。また、各種寸法について、シャープペンシル1又は回転子140の中心軸線回りの回転角に対応させて説明する。
カム歯の数が40個のとき、カムの一歯の半位相に相当する回転角αは、360/40/2=4.5°となる。0.1mmの掛かり代Eに相当する回転角βは、4.8mm×π×β/360=0.1の関係式から、2.4°となる。図10を参照し、上述した第1カム歯140aaの底辺について、X=Yの二等辺三角形を考えた場合、第1カム歯140aaの頂点が、図中左方向に1.2°オフセットし、対向する第1固定カム歯141aaは、図中右方向に1.2°オフセットすると、相対的に合計2.4°の回転角となり、掛かり代Eは0.1mmとなる。このときの第1カム歯140aaの底辺の長さに関し、Xに相当する回転角は、カムの一歯に相当する回転角の9.0°から、9.0/2+1.2=5.7°となり、Yに相当する回転角は、9.0/2-1.2=3.3°となる。したがって、掛かり代E≧0.1mmとするためには、X/Y≧5.7/3.3=1.72であることが好ましい。
以上より、X/Y≧1.72の関係となるように第1カム歯140aa及び第2カム歯140baが構成されていることが好ましい。また、回転子140の径方向におけるずれによる回転不良をより確実に防止するため、X/Y≧2.0の関係となるように第1カム歯140aa及び第2カム歯140baが構成されていることがより好ましい。また、上述したX及びYの関係にあるカム歯の場合であっても、上述したように、後退動作による筆記芯の後退量が0.05~0.3mmの範囲内であることが好ましく、0.1~0.2mmの範囲内であることがより好ましい。
上述した実施形態では、回転子140の外径やカム歯の数、傾斜角の一例に基づき、好適なカム歯の形状、すなわち、X及びYの関係について説明したが、上述したX及びYの関係は、その他の外径やカム歯の数等のシャープペンシルにおいても同様に適用可能である。すなわち、上述した実施形態によれば、筆記芯を回転させる回転駆動機構を備えたシャープペンシル1において、筆記芯の後退量をより低減させることができる。
1 シャープペンシル
5 軸筒
10 チャックユニット
20 ノック部材
31 軸スプリング
40 回転子
40a 第1カム面
40aa 第1カム歯
40b 第2カム面
40ba 第2カム歯
41 上カム形成部材
41a 第1固定カム面
41aa 第1固定カム歯
42 下カム形成部材
42a 第2固定カム面
42aa 第2固定カム歯
140 回転子
140a 第1カム面
140aa 第1カム歯
140b 第2カム面
140ba 第2カム歯
141 上カム形成部材
141a 第1固定カム面
141aa 第1固定カム歯
142 下カム形成部材
142a 第2固定カム面
142aa 第2固定カム歯
M 最小後退量

Claims (6)

  1. 軸筒と、
    筆記芯の前進を許容し後退を阻止するチャックユニットと、
    回転子を有し、前記チャックユニットに把持された筆記芯が受ける筆記圧による軸線方向の後退動作及び筆記圧の解除による軸線方向の前進動作を受けて、前記回転子を一方向に回転駆動させる回転駆動機構と、を具備し、
    前記後退動作による後退量が0.05~0.3mmの範囲内であることを特徴とするシャープペンシル。
  2. 前記後退量が、0.1~0.2mmの範囲内である請求項1に記載のシャープペンシル。
  3. 前記回転駆動機構は、前記回転子の後端面に形成された円環状の第1カム面と、前記回転子の前端面に形成された円環状の第2カム面と、前記軸筒側に設けられ、前記第1カム面と協働して前記回転子を回転させる第1固定カム面と、前記軸筒側に設けられ、前記第2カム面と協働して前記回転子を回転させる第2固定カム面と、を有し、
    前記第1固定カム面と前記第2固定カム面とが、前記回転子の回転が阻害されない最小距離で配置されるように構成されている請求項1に記載のシャープペンシル。
  4. 前記筆記圧による前記チャックユニットの後退動作によって、前記回転子の前記第1カム面が前記第1固定カム面に当接して前記回転子を回転させながら噛み合わされ、前記筆記圧の解除によって、前記回転子の前記第2カム面が前記第2固定カム面に当接して前記回転子を回転させながら噛み合わされるように構成され、
    前記回転子の前記第1カム面が、前記第1固定カム面に噛み合わされた状態において、前記第2カム面と前記第2固定カム面とが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、前記回転子の前記第2カム面が前記第2固定カム面に噛み合わされた状態において、前記第1カム面と前記第1固定カム面とが軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、
    前記第1カム面が第1カム歯を備え、前記第2カム面が第2カム歯を備え、前記第1固定カム面が前記第1カム歯と協働する第1固定カム歯を備え、前記第2固定カム面が前記第2カム歯と協働する第2固定カム歯を備え、
    前記第2カム歯又は前記第2固定カム歯の高さと、前記第2カム面と前記第2固定カム面とが噛み合わされた状態から前記第1カム歯の先端が前記回転子の後退動作によって前記第1固定カム歯に当接するまでの移動距離とが等しくなるように構成されている請求項3に記載のシャープペンシル。
  5. 前記筆記圧による前記チャックユニットの後退動作によって、前記回転子の前記第1カム面が前記第1固定カム面に当接して前記回転子を回転させながら噛み合わされ、前記筆記圧の解除によって、前記回転子の前記第2カム面が前記第2固定カム面に当接して前記回転子を回転させながら噛み合わされるように構成され、
    前記回転子の前記第1カム面が、前記第1固定カム面に噛み合わされた状態において、前記第2カム面と前記第2固定カム面とが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、前記回転子の前記第2カム面が前記第2固定カム面に噛み合わされた状態において、前記第1カム面と前記第1固定カム面とが軸線方向においてカムの一歯に対して半位相だけずれた関係に設定され、
    前記第1カム面が第1カム歯を備え、前記第2カム面が第2カム歯を備え、前記第1固定カム面が前記第1カム歯と協働する第1固定カム歯を備え、前記第2固定カム面が前記第2カム歯と協働する第2固定カム歯を備え、
    前記第1カム歯において、頂点から引いた垂線に対して、前記回転子の回転方向に対して後側の底辺の長さをXとし、前記回転子の回転方向に対して前側の底辺の長さをYとすると、0<Y<Xの関係となるように前記第1カム歯が構成されている請求項3に記載のシャープペンシル。
  6. 前記チャックユニットが、前記回転子の回転駆動力を受けて回転することによって、筆記芯が回転するように構成されている請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
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