JP2024050490A - 製パン用練込油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】パン生地の製造に用いられる油脂の使用量を低減してもなお、食感が優れ、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン生地を提供すること。【解決手段】油相を連続相とし、(A)有機酸モノグリセリド、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤を下記の条件(1):含有される乳化剤の総和が、4.5~12質量%であること、条件(2):質量比(A)/((B)+(C))が、0.15~0.4であること、条件(3):質量比(B)/((B)+(C))が、0.4~0.85であること、条件(4):質量比(C)/((B)+(C))が、0.15~0.6であることを満たすように含有し、油相の10℃のSFCが30~56%、20℃のSFCが5~38%であり、比重が0.9未満である製パン用練込油脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、パン類の製造に用いられる製パン用練込油脂組成物に関する。
昨今の人手不足から、パン類の製造の現場においてパン類生地が得られるまでの時間の短縮化や、得られたパン類生地の扱いやすさの向上に対する要望が高まっている。また、パン類のソフト性、口溶け、及び風味に対する消費者の要望も高まっている。
他方、昨今の消費者の健康志向の高まりやSDGs等の観点から、パン類の製造に使用される製パン用練込油脂組成物(例えば、バターやマーガリン、ショートニング)の量が低減される傾向にあることから、市場では少量の製パン用練込油脂組成物を配合することで、パン類の製造上の課題と得られるパン類の食味上の課題とを共に解決することが望まれている。
パン類の製造上の課題や、得られるパン類の食味上の課題の解決・改善については、従前より乳化剤、増粘安定剤、酵素等の様々な製パン改良成分を用いた検討がなされており、これらの成分を単独、又は組み合わせて使用する手法が開示されてきた。
とりわけ、各種製パン改良成分を含有させた製パン用練込油脂組成物は、製パン改良成分の均一な分散や製パン改良成分の効果が発現するタイミングを調整することができる等の有利な点が多いことから各種提案されている。
パン類の製造上の課題や、得られるパン類の食味上の課題を解決・改善する、製パン用練込油脂組成物としては、例えば、トランス型不飽和脂肪酸モノグリセリド及び糊剤を含有する油中水型乳化物(特許文献1参照)、水和された乳化剤及び糊剤を含有する油中水型乳化物(特許文献2参照)、水で膨潤した澱粉粒が分散した油脂組成物(特許文献3参照)、油相中にジアセチル酒石酸モノグリセリド及びモノグリセリドを含有する油脂組成物(特許文献4参照)、アルギン酸エステル、コハク酸モノグリセリド、及びジアセチル酒石酸モノグリセリドを含有する製パン練りこみ用油中水型乳化物(特許文献5)等が提案されている。
油脂の使用量を低減してもなお、良好な食味を有するパン類を製造するための製パン用練込油脂組成物としては、例えば、ヘミセルラーゼ、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル、及びプロピレングリコールモノ脂肪酸エステルを含有する製パン用油脂組成物(特許文献6参照)が提案されている。
特開平03-236734号公報 特開平04-144632号公報 特開平08-224057号公報 特開平05-219886号公報 特開2014-226058号公報 特開2015-181434号公報
ソフト性及び口溶けに優れたパン類を得る際には、その生地中に水分を多く配合することが一般的であるが、水や水分を多く含む原料が均一に混練されるまでに時間を要する他、パン類生地がべたべたとした物性になり成形等の工程において扱いにくく、製造効率が低下するという問題があった。
特許文献1~3で開示された油中水型乳化物又は油脂組成物は、糊剤又は水で膨潤した澱粉粒が含有されている、適用されるパン類生地の水分含有量によっては、パン類生地にべたつきが生じる場合があり、得られるパン類が糊様の口溶けとなる場合があった。
特許文献4及び5で開示された油脂組成物又は製パン練りこみ用油中水型乳化物は、ジアセチル酒石酸モノグリセリド由来の異味が生じる場合があった。
ここで、一般に、マーガリンやショートニング等の製パン用練込油脂組成物の使用量を減らしてパン類を製造すると、得られるパン類生地やパン類が硬くなりやすく、歯切れの悪い食感になり、さらにボリュームが低下しやすくなる。パン類生地の物性やパン類の食感等に対して製パン用練込油脂組成物が与える影響が大きいことから、例えば、特許文献1~5で開示された製パン用練込油脂組成物のパン類生地中における使用量を単純に減らしてパン類を製造することは困難であり、従前開示された製パン用練込油脂組成物では市場の要望に応えることが困難であった。
また、特許文献6で開示された製パン用油脂組成物は、パン類生地中での使用量が少なく有用であるものの、製パン用練込油脂組成物中の乳化剤や酵素の濃度を一定以上に高めた場合、パン類生地内における乳化剤や酵素の分散が不十分となりやすく、得られるパン類の品質がばらつくという傾向があった。この傾向は製パン用練込油脂組成物に酵素を使用した場合においてが顕著であり、改良の余地があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、以下の(1)及び(2)を達成することのできる製パン用練込油脂組成物を提供することにある。
(1)パン類生地の製造に用いられる油脂の使用量を低減してもなお、食感が優れたパン類を提供することができる。
(2)べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地を提供することができる。
本発明者らによる鋭意検討の結果、特定の乳化剤を、特定条件を満たすように含有させると共にSFCと比重が特定範囲を満たす製パン用練込油脂組成物によれば上記条件を解決しうることが知見された。
本発明はこの知見に基づいてなされたものであり、具体的には以下を開示するものである。
[1] 油相を連続相とし、下記(A)、(B)及び(C)を含む乳化剤を下記の条件(1)~(4)を満たすように含有し、
油相の10℃のSFCが30~56%、20℃のSFCが5~38%であり、
比重が0.9未満である、製パン用練込油脂組成物。
(A)有機酸モノグリセリド
(B)構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基である、グリセリンモノ脂肪酸エステル
(C)構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基である、ジグリセリン脂肪酸エステル
条件(1):含有される乳化剤の総量が、4.5~12質量%である。
条件(2):(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(A)前記有機酸モノグリセリドの質量比が、0.15~0.4である。
条件(3):(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステルの質量比が、0.4~0.85である。
条件(4):(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの質量比が、0.15~0.6である。
[2] さらに下記(D)の乳化剤を、下記の条件(5)を満たすように含有する、[1]に記載の製パン用練込油脂組成物。
(D)構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の不飽和脂肪酸残基である、グリセリンモノ脂肪酸エステル
条件(5):(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(D)前記グリセリンモノ脂肪酸エステルの質量比が、0.05~0.30である。
[3] 油相が下記の条件(6-1)及び条件(6-2)を満たす、[1]又は[2]に記載の製パン用練込油脂組成物。
条件(6-1):構成脂肪酸残基組成における炭素数12の飽和脂肪酸残基の含有量が0.9質量%未満である。
条件(6-2):構成脂肪酸残基組成における炭素数16の飽和脂肪酸残基及び炭素数18の飽和脂肪酸残基の含有量の和が35~55質量%である。
[4] 難消化性グルカンを、0.1~2.0質量%含有する、[1]~[3]の何れか1項に記載の製パン用練込油脂組成物。
[5] [1]又は[2]に記載の製パン用練込油脂組成物を含む、パン生地又はパン。
[6] [1]又は[2]に記載の製パン用練込油脂組成物を、穀粉類100質量部に対して3~8質量部含む、パン生地又はパン。
[7] [3]又は[4]に記載の製パン用練込油脂組成物を含む、パン生地又はパン。
[8] [3]又は[4]に記載の製パン用練込油脂組成物を、穀粉類100質量部に対して3~8質量部含む、パン生地又はパン。
本発明によれば、以下の(1)及び(2)を達成することのできる製パン用練込油脂組成物を提供することができる。
(1)パン類生地又はパン類の製造に用いられる油脂の使用量を低減してもなお、食感が優れたパン類を提供することができる。
(2)べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
<<<製パン用練込油脂組成物>>>
本発明の製パン用練込油脂組成物は、油相を連続相とし、下記(A)、(B)及び(C)を含む乳化剤を下記の条件(1)~(4)を満たすように含有し、油相の10℃のSFCが30~56%であり、20℃のSFCが5~38%であり、比重が0.9未満である。
(A)有機酸モノグリセリド
(B)構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基である、グリセリンモノ脂肪酸エステル(以下単に「(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル」と記載)
(C)構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基である、ジグリセリン脂肪酸エステル(以下単に「(C)ジグリセリン脂肪酸エステル」と記載)
条件(1):含有される乳化剤の総量が、4.5~12質量%である。
条件(2):(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(A)有機酸モノグリセリドの質量比[(A)/((B)+(C)]が、0.15~0.4である。
条件(3):(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステルの質量比[(B)/((B)+(C)]が、0.5~0.9である。
条件(4):(B)グリセリンモ脂肪酸エステル及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの質量比[(C)/((B)+(C)]が、0.2~0.6である。
以下、本発明の製パン用練込油脂組成物について、その特徴ごとに詳述する。
なお、以下において、本発明の製パン用練込油脂組成物を含有するパン類生地を「本発明のパン類生地」とも記載し、本発明のパン類生地を加熱して得られるパン類を「本発明のパン類」とも記載する。
<<乳化剤>>
本発明の製パン用練込油脂組成物は、乳化剤として、(A)有機酸モノグリセリド、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル、及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルを含有し、好ましくは、さらに後述の(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する。
上記(A)~(C)の乳化剤をパン類生地に直接投入すると、十分に分散させることが難しく偏在しやすいため、生地が締まり、作業性が低下してしまいやすい。本発明においては上記(A)~(C)の乳化剤を油脂組成物中に分散させることで、上記(A)~(C)の乳化剤をパン類生地中に十分に分散させることができ、作業性が低下しにくくなるものと考えられる。
<(A)有機酸モノグリセリドについて>
本発明で使用する(A)有機酸モノグリセリドは、グリセリン1分子に対し脂肪酸1分子と有機酸1分子とが結合した構造を有する。(A)有機酸モノグリセリドは、一般的には、有機酸の酸無水物と脂肪酸モノグリセリドとを反応させることにより得られるものである。
上記の有機酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。食品用途に使用されうるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくはコハク酸、クエン酸が選択され、より好ましくはコハク酸が選択される。
上記の脂肪酸モノグリセリドに結合される脂肪酸残基としては、例えば、カプリル酸残基、カプリン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、ベヘン酸残基、オレイン酸残基等の炭素数8~22の飽和又は不飽和の脂肪酸残基が挙げられる。
好ましい風味及び食感を有するパン類を得る観点から、構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基(すなわち、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基)であることが好ましい。
本発明の製パン用練込油脂組成物における(A)有機酸モノグリセリドの含有量は、後述の条件(1)及び(2)を満たす限り特に限定されないが、0.8質量%以上であることが好ましく、その上限は、2質量%以下であることが好ましく、1.7質量%以下がより好ましく、1.4質量%以下が更に好ましい。したがって、一実施形態としては、本発明の製パン用練込油脂組成物における(A)有機酸モノグリセリドの含有量は、後述の条件(1)及び(2)を満たしながら、0.8~2質量%であることが好ましく、0.8~1.7質量%であることがより好ましく、0.8~1.4質量%であることがさらに好ましい。上記範囲を満たすことで、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地を提供することができると共に、食感が優れたパン類を提供することができる。
<(B)グリセリンモノ脂肪酸エステルについて>
本発明で使用される(B)グリセリンモノ脂肪酸エステルは、構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基であるグリセリンモノ脂肪酸エステルである。構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基であるグリセリンモノ脂肪酸エステルを用いることで、好ましい食感を有するパン類を得ることができる。
本発明において、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては、例えば、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、カプリル酸残基、カプリン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、ベヘン酸残基、オレイン酸残基等の炭素数8~22の飽和又は不飽和の脂肪酸残基が挙げられる。これらのうち、上記炭素数16~18の飽和脂肪酸残基としては、例えば、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基が挙げられ、パルミチン酸残基であることが好ましい。
本発明の製パン用練込油脂組成物における(B)グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、後述の条件(1)~(3)を満たす限り特に限定されないが、2.3質量%以上であることが好ましく、2.6質量%以上がより好ましく、2.9質量%以上がさらに好ましく、その上限は、4.2質量%以下であることが好ましく、3.9質量%以下がより好ましく、3.6質量%以下がさらに好ましい。したがって、一実施形態において、本発明の製パン用練込油脂組成物における(B)グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、後述の条件(1)~(3)を満たしながら、2.3~4.2質量%であることが好ましく、2.6~3.9質量%がより好ましく、2.9~3.6質量%がさらに好ましい。上記範囲を満たすことで、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地を提供することができると共に、食感が優れたパン類を提供することができる。
<(C)ジグリセリン脂肪酸エステル>
本発明で使用される(C)ジグリセリン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基であるジグリセリン脂肪酸エステルである。
本発明に用いられる(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基であることにより、本発明の効果が得られる理由は現段階では不明だが、構成脂肪酸残基を、上記(A)及び(B)の乳化剤と揃えることにより、より強く澱粉及びグルテンに作用しうるためと本発明者らは考えている。
本発明において、(C)ジグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては、例えば、ステアリン酸残基、パルミチン酸残基、カプリル酸残基、カプリン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、ベヘン酸残基、オレイン酸残基等の炭素数8~22の飽和又は不飽和の脂肪酸残基が挙げられる。これらのうち、上記炭素数16~18の飽和脂肪酸残基としては、例えば、ステアリン酸残基、パルミチン酸残基が挙げられ、ステアリン酸残基であることが好ましい。
本発明に用いられる(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの飽和脂肪酸残基の結合数については特に制限はないが、モノ脂肪酸エステル、又はジ脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種以上であることが好ましく、モノ脂肪酸エステルのみを含有することがより好ましい。
本発明の製パン用練込油脂組成物における(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、後述の条件(1)~(4)を満たす限り特に限定されないが、1.5質量%以上であることが好ましく、1.55質量%以上がより好ましく、1.65質量%以上がさらに好ましく、その上限は、5.00質量%以下、又は3.00質量%以下であることが好ましく、2.60質量%以下がより好ましく、2.20質量%以下がさらに好ましい。したがって、一実施形態において、本発明の製パン用練込油脂組成物におけるジグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、後述の条件(1)~(4)を満たしながら、1.5~5.00質量%、又は1.5~3.00質量%であることが好ましく、1.55~2.60質量%がより好ましく、1.65~2.20質量%がさらに好ましい。上記範囲を満たすことで、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地を提供することができると共に、食感が優れたパン類を提供することができる。
<(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルについて>
本発明の製パン用練込油脂組成物は、上記(A)~(C)の乳化剤の他、本発明の効果をいっそう好ましく得る観点から、さらに構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の不飽和脂肪酸残基であるグリセリンモノ脂肪酸エステル(単に「(D)グリセリンモノ脂肪酸エステル」とも記載)を含有することが好ましい。
本発明において、(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては、例えば、パルミトレイン酸残基、オレイン酸残基、エライジン酸残基、リシノール酸残基、エイコセン酸残基、エルカ酸残基、ステアリン酸残基、パルミチン酸残基、カプリル酸残基、カプリン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、ベヘン酸残基等の炭素数8~22の飽和又は不飽和の脂肪酸残基が挙げられる。これらのうち、上記炭素数16~18の不飽和脂肪酸残基としては、オレイン酸残基、パルミトレイン酸残基等の一価不飽和脂肪酸が好ましく、オレイン酸残基であることがより好ましい。
(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルを、本発明の製パン用練込油脂組成物に含有させることで、本発明の効果がいっそう好ましく得られる理由は現段階では不明だが、本発明者らは以下のように考えている。
本発明の製パン用練込油脂組成物は油相を連続相とする乳化物であるため、その乳化界面(油水界面)に上記(A)~(C)の乳化剤の一部が配向することにより、パン類生地へ作用する上記(A)~(C)の乳化剤の量が低下してしまうものと考えられる。この点、上記(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルを含有させることにより、乳化界面に配向する上記(A)~(C)の乳化剤の量が低減され、パン類生地へ作用する上記(A)~(C)の乳化剤の量が増加するために本発明の効果がいっそう好ましく得られるものと推察される。
本発明の製パン用練込油脂組成物における(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、後述の条件(1)~(5)を満たす限り特に限定されないが、0.6質量%以上であることが好ましく、0.65質量%以上がより好ましく、0.7質量%以上がさらに好ましく、その上限は、0.9質量%以下であることが好ましく、0.85質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましい。本発明の製パン用練込油脂組成物における(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、後述の条件(1)~(5)を満たしながら、0.6~0.9質量%であることが好ましく、0.65~0.85質量%がより好ましく、0.7~0.8質量%がさらに好ましい。上記範囲を満たすことで、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地を提供することができると共に、食感が優れたパン類を提供することができる。
本発明に用いられる(A)有機酸モノグリセリド、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル、(C)ジグリセリン脂肪酸エステル、好ましくは更に(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルは、いずれも油溶性を呈することが好ましく、HLB値が8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。このHLB値はGriffin式より算出されるものであり、市販品を用いる場合には示されたHLB値を基に判断するものとする。
<本発明の製パン用練込油脂組成物が満たす条件>
-条件(1)について-
本発明の製パン用練込油脂組成物は、上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)に加えて、その他乳化剤を含有してよいが、本発明の製パン用練込油脂組成物に含有される乳化剤の総量は、4.5~12質量%である。
本発明の製パン用練込油脂組成物における乳化剤の総量が4.5質量%以上であることで、食感及びボリュームに優れたパン類を得ることができるようになる。また、該乳化剤の総量が12質量%以下であることで、本発明の製パン用練込油脂組成物を用いて得られるパン類生地がべたつきにくく、取扱いやすいものになる。
得られるパン類の食感及びボリュームの観点、パン類の製造に用いられる油脂の使用量を低減する観点、並びに、パン類生地をべたつきにくく取扱いやすいものとする観点から、本発明の製パン用練込油脂組成物における乳化剤の総量は、5質量%以上であることが好ましく、その上限は、11質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、9質量%以下であることがさらに好ましい。したがって、一実施形態では、本発明の製パン用練込油脂組成物における乳化剤の総量は、5~11質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましく、5~9質量%であることがさらに好ましい。
なお、上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)に加えて、本発明の製パン用練込油脂組成物に用いることができるその他乳化剤としては、例えば、構成脂肪酸残基が炭素数16~18以外の飽和又は不飽和脂肪酸残基(例、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、ベヘン酸残基)で構成されるグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類等の天然乳化剤が挙げられる。本発明の製パン用練込油脂組成物では、上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)に加えて、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
-条件(2)について-
本発明の製パン用練込油脂組成物は、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(A)有機酸モノグリセリドの質量比[(A)/((B)+(C))]が、0.15~0.4を満たすように、上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)を含有する。
本発明において、質量比[A)/((B)+(C))]が上記範囲内にあることで、食感及びボリュームに優れたパン類を得ることができるようになる他、得られるパン類生地がべたつきにくく、取り扱いやすいものになる。また、乳化剤に起因する異味が生じにくくなる。
上記観点から、質量比[(A)/((B)+(C))]は、0.15以上であり、その上限は、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.25以下である。したがって、一実施形態において、本発明における、質量比[(A)/((B)+(C))]は好ましくは0.15~0.35、より好ましくは0.15~0.30、さらに好ましくは0.15~0.25である。
-条件(3)について-
本発明の製パン用練込油脂組成物は、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステルの質量比[(B)/((B)+(C))]が、0.4~0.85を満たすように、上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)を含有する。
本発明の製パン用練込油脂組成物において、質量比[(B)/((B)+(C))]が上記範囲内にあることで、食感及びボリュームに優れたパン類を得ることができるようになる他、得られるパン類生地がべたつきにくく、取り扱いやすいものになる。
上記観点から、質量比[(B)/((B)+(C))]は、好ましくは0.53以上、より好ましくは0.56以上、さらに好ましくは0.60以上であり、その上限は、好ましくは0.85以下である。したがって、一実施形態において、本発明における、質量比[(B)/((B)+(C))]は、好ましくは0.53~0.85、より好ましくは0.56~0.85、さらに好ましくは0.60~0.85である。
-条件(4)について-
本発明の製パン用練込油脂組成物は、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの質量比[(C)/((B)+(C))]が、0.15~0.6を満たすように、上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)を含有する。
本発明の製パン用練込油脂組成物において質量比[(C)/((B)+(C))]が上記範囲内にあることで、食感及びボリュームに優れたパン類を得ることができるようになる他、得られるパン類生地がべたつきにくく、取り扱いやすいものになる。
上記観点から、質量比[(C)/((B)+(C))は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.3以上であり、その下限は、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.45以下である。したがって、一実施形態において、本発明における、質量比[(C)/((B)+(C))]は、好ましくは0.2~0.55、より好ましくは0.25~0.50、さらに好ましくは0.3~0.45である。
-条件(5)について-
本発明の製パン用練込油脂組成物は、上述のとおり、上記(A)~(C)の乳化剤に加えて、好ましくは上記(D)の乳化剤を含有する。その際、(B)グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(D)グリセリンモノ脂肪酸エステルの質量比[(D)/((B)+(C))]が、好ましくは0.05~0.30を満たすように、上記(D)の乳化剤を含有する。
本発明の製パン用練込油脂組成物において、質量比[(D)/((B)+(C))]が上記範囲内にあることで、食感及びボリュームがいっそう優れたパン類を得ることができるようになる他、得られるパン類生地がいっそう取り扱いやすいものになる。
上記観点から、質量比[(D)/((B)+(C))]は、好ましくは0.05以上であり、その上限は、好ましくは0.30以下であるが、より好ましくは0.23以下、さらに好ましくは0.18以下である。したがって、一実施形態において、本発明における、質量比[(D)/((B)+(C))]は、好ましくは0.05~0.30、より好ましくは0.05~0.23、さらに好ましくは0.05~0.18である。
上記(A)~(C)の乳化剤を上記条件(1)~(4)を満たすように、好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤を上記条件(1)~(5)を満たすように製パン用練込油脂組成物に含有させることにより、本発明の効果が得られる機序及び理由は現段階で不明である。この点、本発明者らは、上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)の構成脂肪酸残基の炭素鎖長を炭素数16~18に揃えたことによりパン類生地に対する作用が強まり、本発明の製パン練込油脂組成物のパン類生地に対する使用量が少量であっても、得られるパン類の食感及びボリュームが改善され、かつ使用量が少量であるためにべたつきが抑制され、作業性に優れたパン類生地となったものと考えている。
<<油相>>
<本発明の連続相について>
本発明の製パン用練込油脂組成物は、連続相が油相であることが必要である。連続相が油相である製パン用練込油脂組成物としては、例えば、マーガリン・ファットスプレッド・ショートニング・バター等の可塑性油脂組成物、流動ショートニング、流動状マーガリンを挙げることができる。
-乳化形態-
本発明の製パン用練込油脂組成物の連続相が油相であり、且つその他の条件を満たすことで、本発明の製パン用練込油脂組成物がパン類生地中に練り込まれやすく、パン類生地の全体にいきわたりやすくなる。
本発明の製パン用練込油脂組成物の乳化形態は特に問われず、油中水型、及び二重乳化型のいずれでも構わないが、製造がより簡便である点から、本発明の製パン用練込油脂組成物は油中水型乳化物であることが好ましい。
本発明の製パン練込油脂組成物は、所望の効果が得られ易いことから、可塑性を有することが好ましい。製パン練込油脂組成物が可塑性を有することで、パン類の製造時に、パン類生地中に油脂が均一に分散しやすくなる。
<油脂について>
本発明の製パン用練込油脂組成物は、上述のとおり連続相が油相であり、油脂を含有する。
本発明の製パン用練込油脂組成物に含有される油脂は、食用の油脂であれば特に限定されることはなく、例えば、パーム油、パーム核油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂等の各種植物油脂、乳脂、牛脂、豚脂(例、ラード)、魚油、鯨油等の各種動物油脂、これらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1種又は2種以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明において、油脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の製パン用練込油脂組成物に含有される油脂の含有量は、求めるパン類の食感によっても異なり、含有される上記(A)~(C)の乳化剤、好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤の量によっても異なるが、本発明の製パン用練込油脂組成物を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、その上限は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは82質量%以下である。したがって、一実施形態において、油脂の含有量は、本発明の製パン用練込油脂組成物を100質量%としたとき、好ましくは50~98質量%、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~82質量%である。なお、この油脂の量には、後述するその他成分由来の油脂も含むものとする。
本発明の製パン用練込油脂組成物にランダムエステル交換油脂を用いる場合、ランダムエステル交換は、常法に従って行うことができ、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよい。上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記酵素としては、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂、ケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いてもよく、粉末の形態で用いてもよい。
本発明の製パン用練込油脂組成物に用いられる油脂のヨウ素価(複数の油脂を用いる場合にはその各々の油脂のヨウ素価)は135以下であることが好ましい。
-トランス脂肪酸について-
本発明の製パン用練込油脂組成物は、健康への影響の観点から実質的にトランス脂肪酸を含まないことが好ましい。ここでいう「実質的にトランス脂肪酸を含まない」とは、油相において、トリグリセリドを構成する脂肪酸残基中のトランス脂肪酸残基の含有量が5質量%以下であることを意味する。該トランス脂肪酸残基の含有量はより好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
油脂を水素添加により加工する工程で、トランス脂肪酸が発生することがある。このため、水素添加した油脂を原料の一つとして用いる場合には、トランス脂肪酸の低減、また、その増加を抑制する観点から、ヨウ素価3以下となるように水素添加を施した極度硬化油を用いることが好ましい。
-ラウリン系油脂とパーム系油脂について-
本発明において、ラウリン系油脂とは、パーム核油、ヤシ油、並びに、これらの油脂に対して水素添加、分別、及びエステル交換から選択される1又は2の処理を施して得られる加工油脂を指し、パーム系油脂とは、パーム油、並びに、パーム油に対して水素添加、分別、及びエステル交換から選択される1又は2の処理を施して得られる加工油脂を指す。また、パーム油に対して分別を施した油脂としては分別軟部油、分別硬部油を選択することができ、該分別軟部油としては、例えば、パームオレイン、スーパーオレイン、ソフトパームミッドフラクション、トップオレイン、ハードパームミッドフラクションが挙げられ、また、該分別硬部油としては、例えば、ハードステアリン、ソフトステアリン、スーパーステアリンが挙げられ、水素添加したパーム油の分別軟部油、分別硬部油も挙げられる。
後述する条件(6-1)及び(6-2)を好ましく満たす観点からは、本発明の製パン用練込油脂組成物は、ラウリン系油脂は実質的に含有しないことが好ましい。ここで、ラウリン系油脂についていう「実質的に含有しない」とは、本発明の製パン用練込油脂組成物におけるこれらの含有量が、1質量%以下であることを意味し、該含有量は好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
また、本発明の製パン用練込油脂組成物は、パーム系油脂を75質量%以上含有することが好ましく、85質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましく、上限は100質量%である。
後述する10℃及び20℃のSFCに関する要件、及び、脂肪酸残基組成に係る条件(6-1)及び(6-2)を好ましく満たし、本発明の製パン用練込油脂組成物に好ましく用いられる油脂組成としては、例えば、パーム分別軟部油と、パーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂とを、前者対後者で40~60:40~60の質量比で混合した油脂を挙げることができる。
<油相の10℃のSFC、及び20℃のSFCについて>
良好な作業性と得られるパン類の食感とを両立する観点から、本発明の製パン用練込油脂組成物は、油相の10℃におけるSFC(Solid Fat Contents:固体脂含量)が30~56%であり、20℃におけるSFCが5~38%である。
本発明の製パン用練込油脂組成物は、上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)を、上記条件(1)~(4)(好ましくは上記条件(1)~(5))を満たすように含有し、後述する比重を満たすことに加えて、油相が上記の10℃及び20℃のSFCの条件を満たすことで、パン類生地のべたつきが抑えられて作業性が良好であり、且つ良好な食感を有するパン類を得ることができるようになる。
この理由は現時点で定かではないが、上記のSFC条件を満たすことにより、パン類生地中に本発明の製パン練込油脂組成物がいきわたりやすくなり、伴って上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)がパン類生地中にいきわたりやすくなるためであると推察される。
上記の観点から、本発明の製パン用練込油脂組成物において、油相の10℃におけるSFCは、好ましくは33%以上であり、より好ましくは35%以上であり、その上限は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは45%以下である。したがって、一実施形態において、本発明の製パン用練込油脂組成物において、油相の10℃におけるSFCは、好ましくは33~50%であり、より好ましくは35~50%であり、さらに好ましくは35~45%である。
また、本発明の製パン用練込油脂組成物において、油相の20℃におけるSFCは、好ましくは8%以上であり、より好ましくは12%以上であり、その上限は、好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下である。したがって、一実施形態において、本発明の製パン用練込油脂組成物が含有する油脂の、20℃におけるSFCは、好ましくは8~25%であり、より好ましくは12~25%であり、さらに好ましくは12~20%である。
上記条件(1)~(3)、好ましくは上記条件(1)~(4)と共に、本条件を満たすことにより、本発明の製パン練込油脂組成物がパン類生地中に練りこまれやすくなり作業性が向上する他、得られるパン類がボリュームを有し、歯切れが良好でありながらも、ソフト性があり、優れた食感を有するものとなる。
SFCの値は、所定温度における油相中の固体脂の含有量を示すもので、常法により測定することが可能であるが、本発明においては、AOCS official methodのcd16b-93に記載のパルスNMR(ダイレクト法)にて、測定対象となる試料のSFCを測定した後、測定値を油相量に換算した値を使用する。即ち、水相を含まない試料を測定した場合は、測定値がそのままSFCとなり、水相を含む試料を測定した場合は、測定値を油相量に換算した値がSFCとなる。
<条件(6-1)及び条件(6-2)について>
パン類生地の作業性の向上と、得られるパン類の食感改良の観点から、上記条件(1)~(4)、好ましくは上記条件(1)~(5)、連続相、10℃及び20℃のSFC、比重に係る条件に加えて、本発明の製パン用練込油脂組成物は、油相が、下記の条件(6-1)及び条件(6-2)の少なくとも一方を満たすことが好ましく、その両方を満たすことがより好ましい。
条件(6-1):構成脂肪酸残基組成における炭素数12の飽和脂肪酸残基の含有量が0.9質量%未満である。
条件(6-2):構成脂肪酸残基組成における炭素数16の飽和脂肪酸残基及び炭素数18の飽和脂肪酸残基の含有量の和が35~55質量%である。
条件(6-1)について、構成脂肪酸残基組成における炭素数12の飽和脂肪酸残基の含有量は、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以下であり、下限は0質量%であってよい。
条件(6-2)について、構成脂肪酸残基組成における炭素数16の飽和脂肪酸残基と炭素数18の飽和脂肪酸残基の含有量の和は、より好ましくは38質量%以上であり、さらに好ましくは41質量%以上であり、その上限は、より好ましくは52質量%以下であり、さらに好ましくは49質量%以下である。したがって、一実施形態において、油相の構成脂肪酸残基組成における炭素数16の飽和脂肪酸残基と炭素数18の飽和脂肪酸残基の含有量の和は、より好ましくは38~52質量%であり、さらに好ましくは41~49質量%である。
得られるパン類の食感をより良好なものとする観点から、本発明の製パン用練込油脂組成物において、構成脂肪酸残基組成における飽和脂肪酸残基(S)の総量に占める炭素数16の飽和脂肪酸残基(P)及び炭素数18の飽和脂肪酸残基(St)の割合(以下単に「(St+P)/S」とも記載する)は、90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましく、94質量%以上であることがさらに好ましく、上限は100質量%である。
また、パン類生地への分散性の向上及び作業性、得られるパン類のボリュームを向上させる観点から、本発明の製パン用練込油脂組成物において、構成脂肪酸残基組成における炭素数18の飽和脂肪酸残基(St)に対する炭素数16の飽和脂肪酸残基(P)の質量比(以下、単に「P/St」とも記載する)が、7~14であることが好ましく、8~13であることがより好ましく、9~13であることがさらに好ましい。
同様の観点から、本発明の製パン用練込油脂組成物において、構成脂肪酸残基組成における不飽和脂肪酸残基(U)に対する飽和脂肪酸残基(S)の質量比(以下単に「S/U」とも記載する)は、0.75~0.95であることが好ましく、0.78~0.92であることがより好ましく、0.81~0.89であることがさらに好ましい。
構成脂肪酸残基組成中の各脂肪酸残基の含有量については、例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.2.3-2013」、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013」、「AOCS法Ce-1h05」を参考に、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定することができる。本発明において示す脂肪酸残基組成は、「AOCS法Ce-1h05」に準拠して、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定した値に基づくものであり、以下同様である。
<<本発明の製パン用練込油脂組成物の比重>>
本発明の製パン用練込油脂組成物の比重は0.9未満であり、好ましくは0.4~0.84、より好ましくは0.5~0.8、さらに好ましくは0.60~0.77又は0.60~0.75である。このような低比重とすることにより、使用する油脂の融点が高い場合であってもパン生地への油脂分散性に優れ、且つ、良好な食感を有するパンを得ることができる。
製パン用練込油脂組成物の比重は、容積法により測定することができる。具体的には、一定容積の計量カップに油脂組成物を充填し、該カップ内の油脂組成物の質量を測定し、その質量を計量カップの容積で除して得られる数値を製パン用練込油脂組成物の比重とする。なお、製パン用練込油脂組成物の比重は20℃において測定するものとする。
本発明の製パン用練込油脂組成物の比重を上記範囲とする際には、従前知られた手法を用いてよい。本発明の製パン用練込油脂組成物の製造工程の任意の時点で、例えば、(i)空気、窒素、酸素等の食品に使用することのできるガスを、冷却可塑化中、又は冷却可塑化後の油脂組成物中に、注入、混和、又はその両方を行うことで、油脂組成物中にガスを分散させて比重を上記範囲内とする手法、(ii)冷却可塑化した油脂組成物を泡立て器等でかき混ぜて空気を含気させ、比重を上記範囲内とする手法が挙げられる。
<<その他原材料>>
本発明の製パン用練込油脂組成物は、上記(A)~(C)(好ましくは上記(A)~(D))を含む乳化剤と油脂のみからなってもよいが、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、乳化剤及び油脂以外に、水又はその他の原材料を含有することができる。
本発明の製パン用練込油脂組成物が水を含有する場合、製パン用練込油脂組成物中の水の含有量は、1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましい。なお、後述する、本発明の製パン用練込油脂組成物に含有しうるその他の原材料が水分を含む場合には、その水分も含めた水の含有量が、上記範囲にあることが好ましい。
本発明の製パン用練込油脂組成物に含有しうるその他の原材料としては、例えば、糖類、澱粉類、デキストリン、難消化性グルカン、食物繊維、食塩・塩化カリウム等の塩味剤、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、脱脂粉乳・カゼイン・ホエイパウダー・ホエイミネラル・脱脂濃縮乳・蛋白質濃縮ホエイ等の乳又は乳製品、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白・大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵又は各種卵加工品、増粘多糖類・着香料・調味料・pH調整剤・食品保存料・日持ち向上剤・果実・果汁・コーヒー・ナッツペースト・香辛料・カカオマス・ココアパウダー・穀類・豆類・野菜類・肉類・魚介類等の食品素材又は食品添加物が挙げられる。
上記その他の原材料は、本発明の目的を損なわない範囲で任意に含有させ、使用することができる。その他の原材料の含有量は、本発明の製パン用練込油脂組成物中、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
なお、得られるパン類の食感をより好ましいものとする観点、及び、作業性に優れたパン類生地を得る観点から、その他原材料として増粘多糖類は含有させないことが好ましい。
なお、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地を得ると共に、口溶けが良好なパン類を得る観点からは、本発明の製パン用練込油脂組成物は難消化性グルカンを含有することが好ましい。以下、本発明で好ましく用いられる難消化性グルカンについて述べる。
<難消化性グルカン>
本発明の製パン用練込油脂組成物に含有される難消化性グルカン(以下、「本発明に用いられる難消化性グルカン」、「本発明の難消化性グルカン」ともいう。)について述べる。
本発明において、「難消化性グルカン」とは、澱粉分解物(好ましくは、デキストロース当量(DE)が70~100の澱粉分解物)を加熱重合させて得られる難消化性の食物繊維を意味する。この際、原料には、グルコース以外の単糖又はこれらの単糖を含むオリゴ糖等が含まれていてもよい。
なお、本発明における「難消化性グルカン」は、難消化性グルカンそのものであってよく、難消化性グルカンにおける還元末端のアルデヒド基を水酸基に還元した難消化性グルカン還元処理物であってもよく、難消化性グルカンを糖質分解酵素で処理した難消化性グルカン酵素処理物であってもよく、上記難消化性グルカン酵素処理物を分画処理した難消化性グルカン分画処理物であってもよい。
本発明において「還元処理」は、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基を水酸基に還元する処理をいう。
還元処理方法はヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が当業者間で知られている。本発明においては、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。「接触水素化反応」とは、触媒の存在下、不飽和有機化合物の二重結合部に水素を添加する反応である。
本発明において「難消化性グルカン分画処理物」は、難消化性グルカン酵素処理物を二糖以下の画分が固形分中15質量%以下となるように分画処理して得ることができる。言い換えれば「難消化性グルカン分画処理物」は三糖以上の糖類を、固形分中85質量%を超えて有するものである。
本発明において「分画処理」は、二糖以下の画分を固形分中15質量%以下にすることができるものであれば特に制限はない。
なお、本発明に用いられる難消化性グルカンの構成糖残基はグルコースが90%以上占めていることが好ましく、95%以上占めていることがより好ましい。なお、上限は100%である。
本発明に用いられる難消化性グルカンは、本発明のパン類の食感をいっそう改善する観点から、好ましくは以下の重量平均分子量、及び構成糖残基の条件のいずれか一つ以上を満たすものであり、より好ましくはいずれの条件も満たすものが用いられる。
(重量平均分子量)
本発明の難消化性グルカンは、その重量平均分子量が好ましくは1500~3000である。
この重量平均分子量の範囲を満たす難消化性グルカンを用いることにより、なお、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地と共に、口溶けが良好なパン類を好ましく得ることができる。
なお、本発明の難消化性グルカンの重量平均分子量はより好ましくは1600以上であり、さらに好ましくは1700以上であり、さらにより好ましくは1800以上である。その上限は、より好ましくは2800以下であり、さらに好ましくは2600以下であり、さらにより好ましくは2400以下である。したがって、一実施形態において、本発明の難消化性グルカンの重量平均分子量はより好ましくは1600~2800であり、さらに好ましくは1700~2600であり、さらにより好ましくは1800~2400である。本発明の難消化性グルカンの重量平均分子量の測定は、サイズ排除クロマトグラフィ法等により行われる。
(構成糖残基組成)
本発明の難消化性グルカンは、その構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率が好ましくは5~28%又は5~25%である。また、1位と4位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率が好ましくは2~30%又は5~30%である。
この構成糖残基の範囲を満たす難消化性グルカンを用いることにより、なお、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地と共に、口溶けが良好なパン類を好ましく得ることができる。
なお、本発明に用いられる難消化性グルカンの構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率は、より好ましくは8~25%であり、さらに好ましくは、14~25%であり、さらにより好ましくは、18~25%である。
また、本発明に用いられる難消化性グルカンの構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率は、より好ましくは5~25%であり、さらに好ましくは5~20%であり、さらにより好ましくは5~15%である。
なお、本発明に用いられる難消化性グルカンの構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率、及び、1位と4位の水酸基で他の構成糖残基と結合しているグルコース残基の比率は、同時に上記の数値範囲を満たしていることが好ましい。
ここで、「構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基」は、他の構成糖と結合する水酸基を1位と6位において2つ有するものであり、1位と6位以外の別の位置に他の構成糖と結合する水酸基をさらに有するものは含まない。また、「構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基」は、他の構成糖と結合する水酸基を1位と4位において2つ有するものであり、1位と4位以外の別の位置に他の構成糖と結合する水酸基をさらに有するものは含まない。
なお、用いられる難消化性グルカンの構成糖残基における、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の量に対する、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の存在比は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.5以上である。その上限は、好ましくは2.5以下又は2.3以下であり、より好ましくは2.2以下又は2.1以下である。したがって、一実施形態において、難消化性グルカンの構成糖残基における、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の量に対する、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の存在比は、好ましくは1.2~2.5又は1.5~2.3であり、より好ましくは1.5~2.2又は1.5~2.1である。
構成糖残基組成における、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基や、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基等の比率については、例えば糖鎖構造の解析を行う手法として一般的に知られている、メチル化分析(例えば「Journal of Biochemistry 第55巻 205ページ 1964年」参照)などにより測定することが出来る。
メチル化分析により、例えば、糖鎖構造中の非還元末端グルコース残基は2,3,4,6-テトラメチル化物として検出され、1位と2位の水酸基で結合したグルコース残基については3,4,6-トリメチル化物として検出され、1位と3位の水酸基で結合したグルコース残基については2,4,6-トリメチル化物として検出され、1位と4位の水酸基で結合したグルコース残基については2,3,6-トリメチル化物として検出され、1位と6位の水酸基で結合したグルコース残基については2,3,4-トリメチル化物として検出され、1位と3位と6位の水酸基で結合したグルコース残基については2,4-ジメチル化物として検出され、1位と4位と6位の水酸基で結合したグルコース残基については2,3-ジメチル化物として検出される。
上記において、他の構成糖残基とは、好ましくはグルコース残基である。また上記において、結合とは、好ましくはα結合である。
(好適に用いられる難消化性グルカン)
本発明で用いられる難消化性グルカンとしては、特に限定されるものではなく、該難消化性グルカンが含有される各種の糖の混合物(以下、単に糖混合物と記載する)であってもよい。また、市販品であってもよいが、含有される固形分中70質量%以上が難消化性グルカンであるものを用いることが好ましい。
本発明においては、上記の重量平均分子量やグルコース残基の結合様式に係る条件を好ましく満たす難消化性グルカンとして、澱粉の分解物であるDE70~100の糖類を再縮合させた難消化性グルカン及びその処理物の少なくとも一方を用いることが好ましく、難消化性グルカンの処理物としては、還元処理物がより好ましい。
難消化性グルカンは、例えば、特開2016-050173号公報に記載されているように、澱粉の分解物であるDE70~100の糖類を再縮合させることで得られる糖縮合物からなる。ここで、「DE(Dextrose Equivalent)」とは、澱粉分解物の分解度合いの指標であり、試料中の還元糖をブドウ糖として固形分に対する百分率で示した値である。
上記条件を好ましく全て満たすような市販品としては、例えば、商品名「フィットファイバー(登録商標)#80」、「フィットファイバー(登録商標)#80H」(日本食品化工社製)が挙げられる。
(好適に用いられる難消化性グルカン)
本発明の製パン練込用油脂組成物に含有される難消化性グルカンの量は、求める効果の程度や製パン練込用油脂組成物の物性等によって任意に変更することができるが、べたつきが抑えられており、作業性に優れたパン類生地と共に、口溶けが良好なパン類を好ましく得る観点からは、本発明の製パン練込用油脂組成物中、0.1~2.0質量%であることが好ましく、0.2~1.4質量%であることがより好ましく、0.3~0.8質量%であることがさらに好ましい。
<<<本発明の製パン用練込油脂組成物の製造方法>>>
本発明の好ましい態様に基づき、連続相を油相とする油中水型乳化物である製パン用練込油脂組成物の製造方法について述べる。
油中水型乳化物である製パン用練込油脂組成物を製造するには、上記(A)~(C)の乳化剤を上記条件(1)~(4)を満たすように、好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤を上記条件(1)~(5)を満たすように、油脂に混合・溶解して連続相となる油相を作製する。このとき、必要に応じて、油溶性のその他の原材料を油相に混合・溶解しておく。
次に、水に必要に応じて水溶性のその他の原材料を分散・溶解させた水相と、油相とを混合し、油中水型に乳化して予備乳化液を得る。そして、得られた予備乳化液を冷却、好ましくは急冷可塑化することにより、油中水型乳化物である本発明の製パン用練込油脂組成物を得ることができる。
上記で得られた予備乳化液は、殺菌処理することが好ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でもよく、プレート式熱交換器、又は掻き取り式熱交換器を用いた連続方式でもよい。また殺菌温度は、好ましくは80~100℃、より好ましくは80~95℃、さらに好ましくは80~90℃である。殺菌時間は、例えば、掻き取り式熱交換器を用いて85℃で連続殺菌する場合、好ましくは30~300秒、より好ましくは40~285秒、さらに好ましくは50~260秒である。その後、必要に応じ、油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行う。予備冷却の温度は、好ましくは40~60℃、より好ましくは40~55℃、さらに好ましくは40~50℃とする。
次に、必要に応じて、予備冷却した予備乳化液を冷却する。好ましくは急冷可塑化を行う。この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート式熱交換器、開放型冷却機のダイヤクーラーと、コンプレクターとの組み合わせを用いて行うことができる。急冷を行うことにより、予備乳化液が可塑性を有する油脂組成物となる。急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
急冷可塑化の速度は、特に限定されないが、通常、-2℃/分以上であり、好ましくは-5℃/分以上又は-10℃/分以上であり、より好ましくは-15℃/分以上であり、さらに好ましくは-18℃/分以上である。また、急冷可塑化の最終温度は、特に限定されないが、通常、5~20℃であり、好ましくは、5~15℃である。
本発明の製パン用練込油脂組成物が、ショートニングのような水分を殆ど含有しない形態の場合には、上記(A)~(C)(好ましくは上記(A)~(D))を含む乳化剤及び必要に応じてその他の原材料を、上記範囲内となるような量で、油相に混合・分散させることにより、そのような製パン用練込油脂組成物が製造できる。なお、本発明の製パン用練込油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させてもよく、含気させなくてもよい。
なお、本発明の製パン用練込油脂組成物が、上述の難消化性グルカンを含有する場合、以下の方法により、難消化性グルカンを添加することができる。
用いる難消化性グルカンが水溶液である場合には水相に添加されるが、難消化性グルカンをそのまま水相として用いることもでき、その他の水溶性の原料を溶解させて水相とすることも出来る。
また、本発明で用いられる難消化性グルカンが粉体である場合には、油相に分散させることも、水相に分散させることもできるが、水相に溶解させるのが好ましい。
また、本発明の製パン用練込油脂組成物は、その製造工程において比重を低下させる。比重を低下させる手法は先述のとおりである。
<<<本発明のパン類生地及びパン類>>>
次に、本発明のパン類について述べる。本発明のパン類は、本発明の製パン用練込油脂組成物を含有するパン類生地を加熱して得られるものであり、本発明の製パン用練込油脂組成物を含有するものである。
<<パン類生地>>
本発明の製パン用練込油脂組成物を含有することのできるパン類生地としては、特に限定されず、任意のパン類の生地が挙げられる。好ましくは、食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、フランスパン生地等のパン類の生地が挙げられる。
とりわけパン類生地の製造に用いられる油脂として練込油脂のみが用いられ(すなち、ロールイン油脂が使用されず)、油脂の含有量が含有される穀粉類に対して20質量部以下であるパン類生地(例えば、食パン生地、菓子パン生地、バターロール生地)が、本発明の効果を得る観点から好ましく選択される。
本発明のパン類生地中における、本発明の製パン用練込油脂組成物の含有量は、従前知られた製パン用の練込油脂と同様であってもよく、より少量であってもよい。
パン類生地の種類や、製パン用練込油脂組成物中の上記(A)~(C)の乳化剤(好ましくは上記(A)~(D)の乳化剤)の含有量、求める効果の程度によっても異なるが、本発明のパン類生地中における、本発明の製パン用練込油脂組成物の含有量は、例えば、パン類生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、好ましくは8質量部以下である。下限は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。したがって一実施形態において、本発明の製パン用練込油脂組成物の含有量は、穀粉類100質量部に対して3~8質量部、より好適には5~8質量部である。本発明品によれば、従前知られた製パン用の練込油脂の使用量よりも少ない量で、食感に優れたパン類を得ることができる。
上記穀粉類としては、例えば、小麦粉(例、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉)をはじめ、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これらの中でも、小麦粉を、穀粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
パン類生地を調製する場合に、小麦粉以外の穀粉類を使用する際、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は、穀粉類とグルテンをあわせた合計量に対し、タンパク質含有量が好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~18質量%となる量である。
本発明のパン類生地において、必要に応じ、一般の製パン材料として使用することのできる、その他の原材料を配合することができる。そのような原材料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類・甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳・乳製品、でんぷん類、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ・カカオ製品、コーヒー・コーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、酵母エキス、香料、各種食品素材・食品添加物を挙げることができる。
その他の原材料は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができる。水については、上記穀粉類100質量部に対して、好ましくは30~100質量部、より好ましくは30~70質量部となる範囲で使用する。
また、水以外のその他の原材料については、上記穀粉類100質量部に対して、合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。なお、その他の原材料として、水分を含有する原材料を使用した場合は、上記の水には、その他の原材料に含まれる水分も含めるものとする。
<本発明のパン類生地・パン類の製造方法>
本発明のパン類生地・パン類の製造方法としては、一般的に製パン法として使用されている、あらゆる製パン法を採用してよく、例えば、中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法を採用することができる。
本発明のパン類を中種法で製造する場合は、本発明の製パン用練込油脂組成物を中種生地及び/又は本捏生地に練り込み、含有させることにより製造することができるが、本捏生地に練り込み、含有させることが好ましい。本捏生地を得た後の工程としては、特に限定されないが、例えば、一次発酵(フロアタイム)、分割、丸目、ベンチタイム、成形、ホイロ(二次発酵)をこの順により行う方法が挙げられる。
本発明のパン類生地を加熱して本発明のパン類を製造することができる。本発明のパン類を製造するときの加熱処理としては、本発明のパン類生地を焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。また、得られた本発明のパン類を、冷蔵又は冷凍により保存したり、その保存後に電子レンジで加熱したりすることも可能である。
なお、得られたパン類生地やパン類は、冷蔵又は冷凍により保存することが可能である。
本発明のパン類の種類は特に限定されず、各種のパンであってよい。このようなパンとしては、例えば、食パン、菓子パン、バラエティーブレッド、バターロール、ソフトロール、ハードロール、スイートロール、デニッシュ、ペストリー、フランスパン等のパンが挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
<油相の脂肪酸残基組成の測定>
実施例及び比較例で製造した製パン用練込油脂組成物の油相の脂肪酸残基組成は、AOCS法「Ce-1h05」に準拠して、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定した。
各種測定条件は以下のとおりである。
(注入方式)スプリット方式
(検出器)FID検出器
(キャリアガス)ヘリウム 1ml/min
(カラム)SUPELCO社製「SP-2560」(0.25mm、0.20μm、100m)
(カラム温度)180℃
(分析時間)60分
(注入口温度)250℃
(検出器温度)250℃
(スプリット比)100:1
<油相のSFCの測定>
実施例及び比較例で製造した製パン用練込油脂組成物の油相のSFCは、AOCS official methodのcd16b-93に記載されるパルスNMR(ダイレクト法)にて測定した。10℃におけるSFCは、10℃に設定された恒温槽にて30分静置した試料について測定した。20℃におけるSFCは、20℃に設定された恒温槽にて30分静置した試料について測定した。
<<使用した油脂>>
パーム油(ヨウ素価51)
パームステアリン(ヨウ素価36)
パームオレイン(ヨウ素価53)
ラード(ヨウ素価65)
液状油(菜種油、ヨウ素価118)
<<使用した乳化剤>>
(有機酸モノグリセリド)コハク酸モノグリセリド:「ポエムB-10」(理研ビタミン株式会社製、HLB5.5)
(グリセリンモノ飽和脂肪酸エステル)パルミチン酸モノグリセリド:「エマルジーMP」(理研ビタミン株式会社製、HLB4.3)
(ジグリセリンモノ飽和脂肪酸エステル)ジグリセリンモノステアレート:「ポエムJ-2081KV」(理研ビタミン株式会社製、HLB6.5)
(グリセリンモノ不飽和脂肪酸エステル)オレイン酸モノグリセリド:「エマルジーMO」(理研ビタミン株式会社製、HLB4)
<<使用したその他原材料>>
(難消化性グルカン)「フィットファイバー(登録商標)#80」(日本食品化工株式会社製、重量平均分子量2000、固形分72.0%以上、難消化性グルカン量(食物繊維含有量):固形分中75%以上、液状)
(製造例1:ランダムエステル交換油脂RIE-1)
加熱により液状としたパームオレイン(ヨウ素価53)を4つ口フラスコにとり、これを撹拌しながら更に液温が90℃となるまで加熱した。90℃に達温後、油脂100質量部に対してナトリウムメトキシド0.2質量部を添加し、真空下で1時間加熱し、ランダムエステル交換反応を行った。この後、クエン酸を添加してナトリウムメトキシドを中和した後、常法により漂白工程及び脱臭工程を行い、ランダムエステル交換油脂RIE-1(以下、単に「RIE-1」と記載。後述するRIE-2、RIE-3も同様)(ヨウ素価53)を得た。
(製造例2:ランダムエステル交換油脂RIE-2)
パームオレインに代えて、溶解したパーム油65質量部と、溶解したパーム極度硬化油(ヨウ素価1以下)35質量部とを混合した油脂混合物を用いた他は、製造例1と同様にランダムエステル交換及び精製を行い、RIE-2(ヨウ素価34.5)を得た。
(製造例3:ランダムエステル交換油脂RIE-3)
溶解したパーム核油75質量部(ヨウ素価18)と、溶解したパーム極度硬化油(ヨウ素価1以下)25質量部とを混合した油脂混合物を用いた他は、製造例1と同様にランダムエステル交換及び精製を行い、RIE-3(ヨウ素価14.9)を得た。
<検討1:乳化剤配合及び乳化剤量についての検討>
検討1では、製パン用練込油脂組成物中の乳化剤の配合とその量が、製パン性及び得られるパン類の食感等に与える影響について検討を行った。
具体的には、表1の配合にしたがって、下記のとおり製パン用練込油脂組成物A~Lを製造し、得られた製パン用練込油脂組成物A~Lを使って、菓子パン配合の丸目パンA~Lを製造し、評価を行った。
<製パン用練込油脂組成物の製造>
RIE-1にコハク酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、ジグリセリンモノステアレート及びオレイン酸モノグリセリドの乳化剤と、トコフェロールを混合・溶解した油相と、水にホエイミネラルを混合・溶解した水相とを、常法により油中水型の乳化物とし、殺菌し、急冷可塑化工程(冷却速度-20℃/分以上、最終温度10℃)にかけた後、比重0.75となるように窒素ガスを分散し、可塑性を有し、連続相が油相である、製パン用練込油脂組成物A~Lを得た。
なお、製パン用練込油脂組成物A~Fは比較例に該当し、製パン用練込油脂組成物G~Lは実施例に該当する。製パン用練込油脂組成物A~Lの各パラメータは表2に示した。
Figure 2024050490000001
Figure 2024050490000002
<製パン試験>
得られた製パン用練込油脂組成物A~Lを使用し、表3記載の配合に基づき、下記の製法により丸目パンA~Lを製造した。
-丸目パンの製法-
表3に示した中種配合の、強力粉(商品名「カメリア」:株式会社日清製粉製、蛋白質含量11.8質量%及び灰分0.37質量%)、上白糖、イースト、イーストフード及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は26℃であった。
この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、2時間中種醗酵を行った。終点温度は29℃であった。
この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、更に、表3に示した本捏配合の、強力粉、上白糖、脱脂粉乳、全卵、食塩及び水を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。
ここで、調製した製パン用練込油脂組成物A~Lのいずれか1つを投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で4分ミキシングを行い、本捏生地を得た。得られた生地の、捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを30分とった後、50gに分割・丸めを行った。次いで、ベンチタイムを30分とった後、丸め成形し、38℃、相対湿度85%で45分ホイロをとった後、190℃に設定した固定窯に入れ11分焼成して丸めパンA~Lを得た。
Figure 2024050490000003
丸目パンA~Lを得る際の作業性、及び得られた丸目パンA~Lの食感について、以下に示す評価基準にしたがって評価を行い、表4にその評価結果を示した。
<生地べたつきの評価基準>
分割後の丸め時のパン生地のべたつきについて、下記の評価基準に従って評価を行なった。
++ :べたつきなし
+ :わずかにべたつきあり
± :ややべたつきあり
- :べたつきあり
-- :非常にべたつく
<パンの評価方法及び評価基準>
焼成1日後の丸目パンについて、食感を、専門パネラー10名にて下記の基準にて、評価を行った。食感の評価は2cm幅にカットした丸目パンのスライスを喫食することにより評価を行った。
評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。なお、生地に関する評価及びパンに関する評価のすべての項目について、±以上の評価を得たものを合格品とした。
なお、食感に関する評価結果はその合計を求め、合計点を次のようにして表4に示した。
++ :42点以上
+ :36~41点
± :30~35点
- :24~29点
-- :23点以下
(ソフト性)
5点:非常にソフト
3点:ソフト
1点:やや硬い
0点:硬い
(歯切れ)
5点:歯切れが非常によい
3点:歯切れがよい
1点:歯切れが悪い、又はねちゃつく
0点:歯切れが悪く、ねちゃつく
Figure 2024050490000004
(A)~(C)の乳化剤に相当する、コハク酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、及びジグリセリンモノステアレートのいずれかを含有しない油脂組成物B~Eを用いた丸目パンでは、生地のべたつきが合格点以上であったものの、パンのソフト性又は歯切れが悪化していることが確認された。また、(A)~(C)の乳化剤を全て含有していても、条件1を満たさない油脂組成物A、及び条件2~4を満たさない油脂組成物Fにおいても、パンのソフト性、若しくはソフト性及び歯切れの両方が悪化していた。
これに対し、(A)~(C)の乳化剤を全て含有し、且つ、条件1~4を満たす油脂組成物G~Lを用いた丸目パンはいずれの評価項目においても良好な結果を示した。特にパンの歯切れにおいて高評価を得た例が多かった。
<検討2:油脂配合についての検討>
検討2では、製パン用練込油脂組成物の製造に用いる油脂配合が、製パン性及び得られるパン類の食感等に与える影響について検討を行った。
具体的には、表5の配合にしたがって、混合油脂a~dを調製し、混合油脂a~dを検討1のRIE-1に代えて用いて、表6の配合に則り検討1と同様に製パン用練込油脂組成物M~P(比重0.75)を製造した。なお、乳化剤配合及び乳化剤量については、検討1で最も評価の高かった製パン用練込油脂組成物Lの配合を基礎とした。
次いで、製パン用練込油脂組成物A~Lに代えて、この製パン用練込油脂組成物M~Pを用いた他は表3と同じ配合により、丸目パンM~Pを製造し、検討1と同様の方法及び基準に基づき評価を行った。
なお、混合油脂a~dの詳細については表5にまとめて記載し、評価結果については表7に記載した。
Figure 2024050490000005
Figure 2024050490000006
Figure 2024050490000007
本発明の製パン用練込油脂組成物を用いた丸目パンL~Pは、生地のべたつき、パンのソフト性、及びパンの歯切れのいずれも良好であった。これらのうち、分別軟部油と分別軟部油のエステル交換油を組み合わせた油脂混合物aを用いた丸目パンは、いずれの評価項目においても最も高い評価を得ていた。
<検討3:パン類生地中の製パン用練込油脂組成物の量についての検討>
検討3では、パン類の製造に用いられる製パン用練込油脂組成物の量が、製パン性、及び得られるパン類の食感等に与える影響について検討を行った。
具体的には、表8の配合にしたがって、生地中の製パン用練込油脂組成物の量を変えながら、丸目パンM-2及びM-3を製造し、検討1と同様の方法及び基準に基づき評価を行った。検討3の評価結果は表9に示した。
Figure 2024050490000008
Figure 2024050490000009
本発明の製パン用練込油脂組成物を、穀物類に対し特定の量で含有する、本発明のパンM、M-2及びM-3は、いずれも生地のべたつき、パンのソフト性、及びパンの歯切れが良好であった。穀物類100質量部に対し3質量部と、本発明の製パン用練込油脂組成物の使用量が少ない丸目パンM-2においても、いずれの評価項目も良好であった。これらのことから、本発明の製パン用練込油脂組成物によれば、少量であっても、生地のべたつき、パンのソフト性、及びパンの歯切れが良好なパンが得られることが明らかとなった。
<検討4:油脂配合についての検討>
検討4では、製パン用油脂組成物中にその他原材料として難消化性グルカンを含有させた場合の効果について検討を行った。
具体的には、表10の配合にしたがって、製パン用練込油脂組成物Q~Wを検討1と同様に製造した。より具体的には、水にホエイミネラルと共に難消化性グルカンを混合・溶解させた他は検討1と同様に製造した。次いで、製パン用練込油脂組成物A~Lに代えて、この製パン用練込油脂組成物Q~W(比重0.75)を用いた他は表3と同じ配合により、丸目パンQ~Wを製造し、検討1と同様の方法及び基準に基づき評価を行った。
なお、製パン用練込油脂組成物Q~Wの詳細については表11にまとめて記載し、評価結果については表12に記載した。
Figure 2024050490000010
Figure 2024050490000011
Figure 2024050490000012
本発明の製パン用練込油脂組成物に難消化性グルカンを含有する、本発明のパンR~Wは、いずれも生地のべたつき、パンのソフト性、及びパンの歯切れが良好であった。また、難消化性グルカンを含有しない本発明のパンQと比較して、パンR~Wは生地のべたつきが良好であった。これらのことから、本発明の製パン用練込油脂組成物に難消化性グルカンを含有させることで、生地のべたつき、パンのソフト性、及びパンの歯切れがよりいっそう良好なパンが得られることが明らかとなった。

Claims (8)

  1. 油相を連続相とし、下記(A)、(B)及び(C)を含む乳化剤を下記の条件(1)~(4)を満たすように含有し、
    油相の10℃のSFCが30~56%、20℃のSFCが5~38%であり、
    比重が0.9未満である、製パン用練込油脂組成物。
    (A)有機酸モノグリセリド
    (B)構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基である、グリセリンモノ脂肪酸エステル
    (C)構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の飽和脂肪酸残基である、ジグリセリン脂肪酸エステル
    条件(1):含有される乳化剤の総量が、4.5~12質量%である。
    条件(2):(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(A)前記有機酸モノグリセリドの質量比が、0.15~0.4である。
    条件(3):(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステルの質量比が、0.4~0.85である。
    条件(4):(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの質量比が、0.15~0.6である。
  2. さらに下記(D)の乳化剤を、下記の条件(5)を満たすように含有する、請求項1に記載の製パン用練込油脂組成物。
    (D)構成脂肪酸残基組成の80質量%以上が炭素数16~18の不飽和脂肪酸残基である、グリセリンモノ脂肪酸エステル
    条件(5):(B)前記グリセリンモノ脂肪酸エステル及び(C)前記ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量の和に対する、(D)前記グリセリンモノ脂肪酸エステルの質量比が、0.05~0.30である。
  3. 油相が下記の条件(6-1)及び条件(6-2)を満たす、請求項1又は2に記載の製パン用練込油脂組成物。
    条件(6-1):構成脂肪酸残基組成における炭素数12の飽和脂肪酸残基の含有量が0.9質量%未満である。
    条件(6-2):構成脂肪酸残基組成における炭素数16の飽和脂肪酸残基及び炭素数18の飽和脂肪酸残基の含有量の和が35~55質量%である。
  4. 難消化性グルカンを、0.1~2.0質量%含有する、請求項1又は2に記載の製パン用練込油脂組成物。
  5. 請求項1又は2に記載の製パン用練込油脂組成物を含む、パン生地又はパン。
  6. 請求項1又は2に記載の製パン用練込油脂組成物を、穀粉類100質量部に対して3~8質量部含む、パン生地又はパン。
  7. 請求項3に記載の製パン用練込油脂組成物を含む、パン生地又はパン。
  8. 請求項3に記載の製パン用練込油脂組成物を、穀粉類100質量部に対して3~8質量部含む、パン生地又はパン。
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