JP2024048224A - 溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置及び合金化処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】合金化ムラの発生を低減することができる、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置及び合金化処理方法を提供すること。【解決手段】溶融亜鉛めっき鋼板に合金化処理を施す、溶融亜鉛めっき鋼板の合金処理装置であって、溶融亜鉛めっき処理が施された鋼板6である溶融亜鉛めっき鋼板を加熱する加熱帯41と、加熱帯41で加熱された溶融亜鉛めっき鋼板を保熱する保熱帯42と、保熱帯42の温度である保熱帯温度Tkを測定する温度計44と、保熱帯温度Tkに応じて、加熱帯41の加熱量Qを調整する制御部45と、を備える。【選択図】 図1
Description
本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置及び合金化処理方法に関する。
溶融亜鉛めっき鋼板には、鋼板を溶融亜鉛めっきした後、めっき層の一部又は全体をFe-Zn合金とするように合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板がある。
一般的に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、以下の工程で製造される。まず、鋼板を焼鈍した後、冷却する。次いで、鋼板を溶融亜鉛が満たされているめっき浴に浸漬させた後、垂直上方に引き上げる。さらに、鋼板の表面に付着した溶融亜鉛が板幅方向及び長手方向に均一な所定のめっき厚となるように、めっき浴から引き上げた鋼板表面に、ワイピングノズルから加圧気体を噴出させて、余剰な溶融亜鉛を絞り取る。その後、ワイピングノズルの直上に配置された加熱帯で鋼板を加熱した後、保熱帯で保熱して亜鉛層へ鉄を拡散させることにより、所定の合金化処理が行われる。
合金化処理が適正でない場合、つまり過合金や合金化不足となると、その品質特性が損なわれるため、合金化度を高精度で制御する必要がある。合金化度を制御する技術として以下の技術が開示されている。
特許文献1には、合金化処理後の鋼板にX線を照射し、X線回折強度から合金化度を算出し、合金化度を制御する方法が開示されている。
また、特許文献2には、溶融亜鉛めっき用合金化炉内の板温保持帯域の複数位置に放射温度計を配設し、その放射エネルギーが代表板温測定値と比較して各位置の鋼板の放射率を求め、その放射率が0.4~0.7の範囲となる位置を合金化位置と定め、この合金化位置が一定位置となるように、合金化炉の燃料流量、通板速度を操作することによって合金化度を制御する方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、溶融亜鉛めっき用合金化処理装置において、合金化帯より下流側に、鋼板の表面放射率の影響を受けない温度測定手段を設け、鋼板の表面放射率の影響を受けない温度測定手段の上流または下流に、鋼板幅方向の3点以上で温度測定可能な放射温度計を設け、さらに、合金化帯内に、放射温度計の鋼板幅方向の温度測定位置に対応させて部分的に幅方向の加熱量を調整することによって合金化度を制御する方法が開示されている。
しかしながら、従来の方法は、合金化帯の下流において、鋼板の合金化度又は温度分布を測定してから、加熱量を調整するFB制御であるので、測定結果を得てから合金化ムラを改善するまでに時間を要する。
また、合金化度を決定するパラメータは加熱装置での加熱量及び保熱帯の温度である。しかし、現実的な操業においては、加熱量や鋼板サイズ、通板速度の違いによって、鋼板から保熱帯に持ち込まれる熱量が異なる。このため、持ち込まれる熱量が急変することで保熱帯温度も一時的に急変し、保熱帯温度を一定に維持することが難しい場合があり、合金化ムラが発生することが問題であった。
また、合金化度を決定するパラメータは加熱装置での加熱量及び保熱帯の温度である。しかし、現実的な操業においては、加熱量や鋼板サイズ、通板速度の違いによって、鋼板から保熱帯に持ち込まれる熱量が異なる。このため、持ち込まれる熱量が急変することで保熱帯温度も一時的に急変し、保熱帯温度を一定に維持することが難しい場合があり、合金化ムラが発生することが問題であった。
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、合金化ムラの発生を低減することができる、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置及び合金化処理方法を提供することを目的としている。
本発明の一態様によれば、溶融亜鉛めっき鋼板に合金化処理を施す、溶融亜鉛めっき鋼板の合金処理装置であって、溶融亜鉛めっき処理が施された鋼板である上記溶融亜鉛めっき鋼板を加熱する加熱帯と、上記加熱帯で加熱された上記溶融亜鉛めっき鋼板を保熱する保熱帯と、上記保熱帯の温度である保熱帯温度を測定する温度計と、上記保熱帯温度に応じて、上記加熱帯の加熱量を調整する制御部と、を備える、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置が提供される。
本発明の一態様によれば、溶融亜鉛めっき鋼板に合金化処理を施す、溶融亜鉛めっき鋼板の合金処理方法であって、溶融亜鉛めっき処理が施された鋼板である上記溶融亜鉛めっき鋼板を加熱帯で加熱する加熱工程と、上記加熱帯で加熱された上記溶融亜鉛めっき鋼板を保熱帯で保熱する保熱工程と、を備え、上記加熱工程では、上記保熱帯の温度である保熱帯温度に応じて、上記加熱帯の加熱量を調整する、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理方法が提供される。
本発明の一態様によれば、合金化ムラの発生を低減することができる、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置及び合金化処理方法。
以下の詳細な説明では、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
<合金化処理装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る合金化処理装置1を示す側面図である。合金化処理装置4は、鋼板6に溶融亜鉛めっき処理及び合金化処理を施すめっき処理設備1に設けられる。めっき処理設備1は、めっき浴2と、ワイピングノズル3と、合金化処理装置4と、トップロール5とを備える。
めっき浴2は、めっき槽内に溶融亜鉛が入れられたものである。溶融亜鉛めっき処理では、鋼板6がめっき浴2に浸漬されることで、鋼板6の表面に亜鉛がめっきされる。
めっき浴2は、めっき槽内に溶融亜鉛が入れられたものである。溶融亜鉛めっき処理では、鋼板6がめっき浴2に浸漬されることで、鋼板6の表面に亜鉛がめっきされる。
ワイピングノズル3は、めっき浴2の上方に設けられ、加圧気体を噴射するノズルである。ワイピングノズル3は、めっき浴2から垂直方向の上方に引き上げられた鋼板6の厚み方向に対向して少なくとも一対設けられ、鋼板6の表裏面にそれぞれ加圧ガスを噴射することで、鋼板6の表面に付着した溶融亜鉛が所定の厚みとなるように付着した溶融亜鉛を絞り取る。
めっき処理設備1では、めっき浴2から引き上げられた鋼板6は、めっき浴2の上方に設けられたトップロール5を通過するまで、垂直方向上側に搬送(通板)される。そして、鋼板6は、トップロール5を通過した後、通板方向が変更されて次工程へと搬送される。
合金化処理装置4は、めっき浴2にて溶融亜鉛メッキ処理が施された鋼鈑Sに合金化処理を施す装置であり、加熱帯41と、保熱帯42と、冷却帯43と、温度計44と、制御部45とを有する。なお、加熱帯41と保熱帯42とを合わせて、合金化帯ともいう。
加熱帯41は、ワイピングノズル3の上方に設けられ、溶融亜鉛めっき処理が施され、ワイピングノズル3によって溶融亜鉛が絞り取られた鋼板6を加熱する機構である。加熱帯41は、加熱量を調整できるものであればよく、加熱方式は特に限定されない。ガス燃焼方式や誘導加熱方式などを用いることができる。加熱帯41は、制御部45で設定される加熱量Qで鋼板6を加熱する。加熱量Qは、加熱帯41の加熱機構の出力や熱量等として定義することができる。例えば、加熱帯41の加熱が電磁誘導加熱(IH:Induction Heating)の場合には、加熱量Qは、IH出力(kW)として定義することができる。
保熱帯42は、加熱帯41の上方、つまり通板方向の下流側に設けられ、加熱帯41で加熱された鋼板6の温度を保持する設備である。
冷却帯43は、保熱帯42の上方、つまり通板方向の下流側に設けられ、保熱帯42を通過した鋼板6を冷却する設備である。
冷却帯43は、保熱帯42の上方、つまり通板方向の下流側に設けられ、保熱帯42を通過した鋼板6を冷却する設備である。
温度計44は、保熱帯42の温度を測定する装置である。温度計44の温度を測定する方式は特に限定されないが、熱電対による測定とすることが好ましい。また、温度計44は、保熱帯42の中央の位置を測定することが好ましい。なお、保熱帯42で測定される温度は、保熱帯温度Tk(℃)ともいう。
制御部45は、保熱帯温度Tk及び加熱量Qと合金化度との相関関係と、測定される保熱帯温度Tkとに応じて、加熱帯41の加熱量Qを制御する装置である。制御部45による加熱量Qの制御方法については、後述する。
<合金化処理方法>
本実施形態に係る合金化処理方法について説明する。本実施形態に係る合金化処理方法では、まず、溶融亜鉛が満たされているめっき浴2に鋼板6を浸漬させた後、該鋼板6を垂直上方に引き上げ、ワイピングノズル3から加圧気体を鋼板6の表面に噴出させて、余剰な溶融亜鉛を絞り取る。
本実施形態に係る合金化処理方法について説明する。本実施形態に係る合金化処理方法では、まず、溶融亜鉛が満たされているめっき浴2に鋼板6を浸漬させた後、該鋼板6を垂直上方に引き上げ、ワイピングノズル3から加圧気体を鋼板6の表面に噴出させて、余剰な溶融亜鉛を絞り取る。
次いで、鋼板6を、加熱帯41で加熱する(加熱工程)。加熱工程では、制御部45は、温度計44によって測定される保熱帯温度Tkに応じて、鋼板6の鋼種(母材の種類)ごとに設定される加熱量Qとなるように、加熱帯41での加熱量を制御する。なお、設定される加熱量Qの詳細については、後述する。また、鋼種とは組成が一つでも重複しない鋼の種類と定義する。
加熱工程の後、加熱帯41で加熱された鋼板6を保熱帯42で保熱する(保熱工程)。
保熱工程の後、鋼板6を冷却帯43で冷却する(冷却工程)。冷却工程で冷却された鋼板6は、トップロール5で通板方向が変更され、次工程へと搬送される。
加熱工程、保熱工程及び冷却工程は、図1に示すように、搬送される鋼板6に対して連続的に行われる。また、鋼板6は、長手方向長さの長い鋼帯状のものであるため、加熱工程、保熱工程及び冷却工程は鋼板6の異なる長手方向位置に対して並行して行われる。
保熱工程の後、鋼板6を冷却帯43で冷却する(冷却工程)。冷却工程で冷却された鋼板6は、トップロール5で通板方向が変更され、次工程へと搬送される。
加熱工程、保熱工程及び冷却工程は、図1に示すように、搬送される鋼板6に対して連続的に行われる。また、鋼板6は、長手方向長さの長い鋼帯状のものであるため、加熱工程、保熱工程及び冷却工程は鋼板6の異なる長手方向位置に対して並行して行われる。
また、加熱工程及び保熱工程が行われている間、温度計44によって保熱帯温度Tkが測定される。測定された保熱帯温度Tkは、制御部45へと送信され、加熱工程における加熱量Qの制御に用いられる。
ここで、発明者らは、温度計44で測定される保熱帯温度Tk、加熱量Q及び合金化ムラ発生有無の関係について調査を行った結果、合金化ムラの発生がなかった条件では、保熱帯温度TkとIH出力(加熱量Q)とは相関があり、この関係は回帰式で表すことができることが確認できた。つまり、保熱帯温度Tk及び加熱量Qは合金化ムラの発生と相関があり、保熱帯温度Tkに応じた加熱量Qを設定することで合金化ムラが発生しない許容範囲内で、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できることがわかった。また、母材種(鋼種)が異なると、保熱帯温度Tk及び加熱量Qと合金化度との相関関係が異なることもわかった。
本実施形態に係る合金化処理方法は、上述の知見に基づいたものである。つまり、本実施形態では、予め母材種ごとに、温度計44で測定される保熱帯温度Tk、加熱帯41で加えられる加熱量Q及び合金化度の関係を調べておく。具体的には、鋼種毎に、合金化ムラ(合金化不足又は過合金)が発生しなかった実際の操業の実績データ(過去の実績データ)における保熱帯温度Tk及び加熱量Qの値から、保熱帯温度Tkと加熱量Qとの関係を予め求めておく。そして、合金化処理の際に、温度計44を用いて保熱帯温度Tkを測定し、測定された保熱帯温度Tkに応じて加熱量Qを調整する。上記のように合金化制御することで、合金化ムラの発生を低減することができ、合金化ムラ発生部分の長さを短くできる。
なお、保熱帯温度Tkと加熱量Qとの関係を考慮する上で、鋼板6のサイズ(板厚、板幅)やライン速度(鋼板6の搬送速度)、めっき付着量、合金化度などの製造条件がさらに考慮されてもよい。つまり、合金化ムラが発生しない条件における、保熱帯温度Tkと加熱量Qとから求められる回帰式において、これらの製造条件が考慮されてもよい。例えば、実際の操業の実績データから回帰式を求める際に、鋼種だけでなく、製造条件が近い実績データを用いて製造条件別の回帰式を求め、加熱量Qを設定する際に製造条件が近い実績データの回帰式を用いてもよい。また、回帰式を決定する際に、製造条件を係数として回帰式に反映させてもよい。回帰式から求められる加熱量Qに対して、実際に投入した加熱量Qが回帰式の上側(加熱量Qが過剰)に外れる場合は、Fe%(合金化度)の高い過合金となりやすく、合金化ムラが発生しやすくなる。また、この場合には亜鉛剥離のリスクも高くなる。回帰式から求められる加熱量Qに対して、実際に投入した加熱量Qが回帰式の下側(加熱量Qが過少)に外れる場合は合金化不足となり、合金化ムラが発生しやすくなる。なお、過合金はFe%が15%を超えると顕在化しやすく、合金化不足はFe%が8%以下で顕在化しやすい。合金化ムラを抑制する観点から、製造時の加熱帯の加熱量Qは、回帰式から求められる加熱帯の加熱量Qを狙い値として制御することが望ましく、製造時の加熱帯の加熱量Qの制御実績としては、製造時の加熱帯の加熱量Qの実績値は回帰式から求められる加熱帯の加熱量Q±10%の範囲内、すなわち回帰式から求められる加熱帯の加熱量Q×0.9~1.1の範囲内に制御することが好ましい。
また、加熱工程では、同一鋼種ごとに合金化不良が発生しなかった条件で、保熱帯温度Tkと加熱量Qとの関係で回帰を行い下記(1)式の定数を求め、加熱工程では鋼板6のサイズや操業条件に応じて(1)式から算出される加熱量Q(kW)となるように制御をしてもよい。なお、(1)式において、tは鋼板6の板厚(mm)、Wは鋼板6の板幅(mm)、LSはライン速度(mpm)、CWは鋼板6の片面あたりのめっき付着量(g/m2)、Fe%は鋼板6の合金化度(%)、a0~a6は鋼種に応じた定数をそれぞれ示す。なお、ライン速度LSと付着量CWは狙い値もしくは実績値を設定することができる。付着量CWは、ライン速度LSの狙い値もしくは実績値と、ワイピングノズル3の製造条件の狙い値もしくは実績値により推定される。ワイピングノズル3の製造条件とはノズル高さ、ノズルガス圧、及びノズルと鋼板6との距離を指す。合金化度Fe%は、狙い値を設定することができる。また、定数a0~a6は、合金化ムラが発生しなかった過去の実績データから、鋼種毎に求めることができる。
Q=a0×ta1×Wa2×LS a3×CW a4×Fe%a5×Tk a6 ・・・(1)
Q=a0×ta1×Wa2×LS a3×CW a4×Fe%a5×Tk a6 ・・・(1)
つまり、本実施形態に係る合金化処理装置及び合金化処理方法によれば、加熱量や鋼板サイズ、通板速度によって保熱帯温度Tkが変動することがあっても、全長全巾に亘って合金ムラの少ない合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。また、従来の合金化処理方法よりも短時間で加熱量Qを調整することが可能である為、合金化ムラの発生量を少なくすることができ、歩留り向上に繋がる。
また、本実施形態に係る合金化処理方法では、鋼板6について、鋼板長手方向位置の保熱帯温度Tkと加熱量Qとの値が分かるように、記録しておくことが好ましい。このようにすることで、仮に加熱量Qが所定管理範囲から外れた箇所が発生しても、保熱帯温度Tkと加熱量Qとのデータから、その鋼帯長手方向位置を特定できるので、リコイルライン等の別の検査ラインで当該箇所のみを除去することで、歩留りロスを最小限に抑えることができる。
なお、本実施形態に係る合金化処理方法は任意の合金化溶融亜鉛めっき鋼板に対して適用することができ、その鋼板組成も限定されない。一例として、以下のような鋼板組成を例示することができる。なお、成分に関する%表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.3%以下
Cは、0.3%を超えると溶接性が劣化するため、C含有量0.3%以下とする。
C:0.3%以下
Cは、0.3%を超えると溶接性が劣化するため、C含有量0.3%以下とする。
Si:2.5%以下
Siは、鋼を強化して良好な材質を得る有効な元素である。ただし、Si含有鋼では、酸化処理時の酸化反応が抑制されることが知られている。そのため、2.5%を超えると酸化処理での酸化被膜形成が抑制されてしまう。また、合金化温度も高温化するために、所望の機械特性を得ることが困難になる。したがって、Si含有量は2.5%以下とする。
Siは、鋼を強化して良好な材質を得る有効な元素である。ただし、Si含有鋼では、酸化処理時の酸化反応が抑制されることが知られている。そのため、2.5%を超えると酸化処理での酸化被膜形成が抑制されてしまう。また、合金化温度も高温化するために、所望の機械特性を得ることが困難になる。したがって、Si含有量は2.5%以下とする。
Mn:3.5%以下
Mnは、鋼の高強度化に有効な元素である。ただし、Mn含有量が3.0%を超えると溶接性やめっき密着性、強度と延性のバランスの確保が困難になる場合がある、したがって、Mn含有量は3.5%以下とする。
Mnは、鋼の高強度化に有効な元素である。ただし、Mn含有量が3.0%を超えると溶接性やめっき密着性、強度と延性のバランスの確保が困難になる場合がある、したがって、Mn含有量は3.5%以下とする。
P:0.100%以下
Pは、鋼の強化に有効な元素である。ただし、P含有量が0.100%を超えると、粒界偏析により脆化を引き落とし、耐衝撃性を劣化させる場合がある。したがって、P含有量は0.100%以下とする。
Pは、鋼の強化に有効な元素である。ただし、P含有量が0.100%を超えると、粒界偏析により脆化を引き落とし、耐衝撃性を劣化させる場合がある。したがって、P含有量は0.100%以下とする。
S:0.0100%以下
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。このため、S含有量は極力少ない方が良い、したがって、S含有量は0.0100%以下とする。
Sは、MnSなどの介在物となって、耐衝撃性の劣化や溶接部のメタルフローに沿った割れの原因となる。このため、S含有量は極力少ない方が良い、したがって、S含有量は0.0100%以下とする。
成分組成の残部は、Fe及び不可避的不純物である。
なお、強度と延性のバランスを制御するため、Al:0.01%~0.1%、Mo:0.01%~1.0%、Nb:0.005%~0.1%、Ti:0.005%~0.2%、Cu:0.02%~1.0%、Ni:0.05%~1.0%、Cr:0.01%~0.8%、B:0.0001%~0.005%、Sb:0.001%~0.10%、Sn:0.001%~0.10%、Ca:0.0001%~0.005%、Mg:0.0001%~0.005%、REM:0.0001%~0.005%、W:0.005%~0.1%、Zr:0.005%~0.1%のうちから選ばれる元素の1種または2種以上を必要に応じて含有してもよい。
なお、強度と延性のバランスを制御するため、Al:0.01%~0.1%、Mo:0.01%~1.0%、Nb:0.005%~0.1%、Ti:0.005%~0.2%、Cu:0.02%~1.0%、Ni:0.05%~1.0%、Cr:0.01%~0.8%、B:0.0001%~0.005%、Sb:0.001%~0.10%、Sn:0.001%~0.10%、Ca:0.0001%~0.005%、Mg:0.0001%~0.005%、REM:0.0001%~0.005%、W:0.005%~0.1%、Zr:0.005%~0.1%のうちから選ばれる元素の1種または2種以上を必要に応じて含有してもよい。
Alは、熱力学的に最も酸化しやすいため、Si、Mnに先だって酸化し、Si、Mnの鋼板表面での酸化を抑制し、鋼板内部での酸化を促進する効果がある。この効果は0.01%以上で得られる。一方、Al含有量が0.1%を超えるとコストアップになる。したがって、Alを含有する場合、Al含有量は0.01%以上0.1%以下が好ましい。
Moは、含有量が0.01%未満では強度調整の効果やNb、Ni、Cuとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、Mo含有量が1.0%を超えるとコストアップを招く。したがって、Moを含有する場合、Mo含有量は0.01%以上1.0%以下が好ましい。
Nbは、含有量が0.005%未満では強度調整の効果やMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、Nb含有量が0.1%を超えるとコストアップを招く。したがって、Nbを含有する場合、Nb含有量は0.005%以上0.1%以下が好ましい。
Tiは、含有量が0.005%未満では強度調整の効果が得られにくく、0.2%を超えるとめっき密着性の劣化を招く。したがって、Tiを含有する場合、Ti含有量は0.005%以上0.2%以下が好ましい。
Cuは、含有量が0.02%未満では残留γ相形成促進効果やNiやMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、Cu含有量が1.0%を超えるとコストアップを招く、したがって、Cuを含有する場合、Cu含有量は0.02%以上1.0%以下が好ましい。
Niは、含有量が0.05%未満では残留γ相形成促進効果やNiやMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、Nb含有量が1.0%超えるとコストアップを招く。したがって、Nbを含有する場合、Ni含有量は0.05%以上1.0%以下が好ましい。
Crは、含有量が0.01%未満では焼入れ性が得られにくく強度と延性のバランスが劣化する場合がある。一方、Cr含有量が0.8%を超えるとコストアップを招く。したがって、Crを含有する場合、Cr含有量は0.01%以上0.8%以下が好ましい。
Bは、鋼の焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。B含有量が0.0001%未満では焼入れ効果が得られにくく、0.005%を超えるとSiの鋼板最表面の酸化を促進させる効果があるため、めっき密着性の劣化を招く。したがって、Bを含有する場合、B含有量は0.0001%以上0.005%以下が好ましい。
Sb及びSnは脱窒、脱硼等を抑制して、鋼の強度低下抑制に有効な元素である。こうした効果を得るにはそれぞれ含有量を0.001%以上とすることが好ましい、一方、Sb及びSnの含有量がそれぞれ0.10%を超えると耐衝撃性が劣化する。したがって、Sb又はSnを含有する場合、Sb含有量又はSn含有量がそれぞれ0.001%以上0.10%以下であることが好ましい。
Caは、介在物個数を低減して曲げ性や耐遅れ破壊特性を改善するのに有効な元素である。Caの含有量が0.0001%未満では曲げ性や耐遅れ破壊特性の改善効果が得られにくく、0.005%を超えると粗大な介在物が増えすぎて曲げ性や耐遅れ破壊特性が劣化する。したがって、Ca含有量は0.0001%以上0.005%以下が好ましい。
Mgは、介在物個数を低減して曲げ性や耐遅れ破壊特性を改善するのに有効な元素である。Mgの含有量が0.0001%未満では曲げ性や耐遅れ破壊特性の改善効果が得られにくく、0.005%を超えると粗大な介在物が増えすぎて曲げ性や耐遅れ破壊特性が劣化する。したがって、Mg含有量は0.0001%以上0.005%以下が好ましい。
REM(Rare-Earth-Metal)は、介在物個数を低減して曲げ性や耐遅れ破壊特性を改善するのに有効な元素である。REMの含有量が0.0001%未満では曲げ性や耐遅れ破壊特性の改善効果が得られにくく、0.005%を超えると粗大な介在物が増えすぎて曲げ性や耐遅れ破壊特性が劣化する。したがって、REM含有量は0.0001%以上0.005%以下が好ましい。
Wは、組織を微細化して鋼を高強度化するのに有効な元素である。Wの含有量が0.005%未満では高強度化の効果が得られにくく、0.1%を超えると強度上昇の効果は飽和する一方で、粗大な介在物が増えて曲げ性や耐遅れ破壊特性が劣化する。したがって、W含有量は0.005%以上0.1%以下が好ましい。
Zrは、組織を微細化して鋼を高強度化するのに有効な元素である。Zrの含有量が0.005%未満では高強度化の効果が得られにくく、0.1%を超えると強度上昇の効果は飽和する一方で、粗大な介在物が増えて曲げ性や耐遅れ破壊特性が劣化する。したがって、Zr含有量は0.005%以上0.1%以下が好ましい。
このような鋼板6は、公知又は任意の方法で製造することができる。例えば、上記成分組成を有するスラブを加熱し、熱間圧延して熱延鋼板とし、この熱延鋼板を酸洗した後、必要に応じて熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とすることができる。
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
実施例1では、表1に示す鋼種A~鋼種Dの鋼板Sに対して、図1に示す合金化処理装置4と同様な装置を用いて、合金化処理を行い、保熱帯温度Tk及び加熱量Qと、合金化ムラの発生有無について調査をした。なお、鋼種及び保熱帯温度Tk以外の製造条件は近しいものとした。この調査の結果を、図2~図5に示す。図2~図5において、「○」のプロットは合金化ムラが発生しなかった条件を示し、「×」のプロットは合金化ムラが発生した条件を示す。
図2~図5に示すように、合金化ムラの発生がなかった条件では、保熱帯温度TkとIH出力(加熱量Q)とは相関があり、この関係はグラフに示す回帰式で表すことができることが確認できた。また、図2及び図3に示すように、この回帰式から外れた条件では合金化ムラが発生することが確認できた。つまり、保熱帯温度Tk及び加熱量Qは合金化ムラの発生と相関があり、保熱帯温度Tkに応じた加熱量Qを設定することで合金化ムラが発生しない許容範囲内で、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できることがわかった。また、母材種(鋼種)が異なると、保熱帯温度Tk及び加熱量Qと合金化度との相関関係が異なることもわかった。
次いで、実施例2では、上記実施形態に係る合金化処理方法を用いて、以下の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造試験を行った。溶融亜鉛めっき鋼板の製造条件は、0.5mm~1.6mm厚×800mm~1880mm巾、めっき付着量は片面48g/m2とした。実施例と比較例は同じ鋼種を用いており、鋼種成分は表1となる。
実施例2では、図1に示す合金化処理装置4を用い、加熱帯41には誘導加熱タイプの加熱装置を。保熱帯42には温度計44を設置し、保熱帯温度Tkを測定した。そして、測定した保熱帯温度Tkに応じて、予め鋼種別に作成したテーブル又は計算式により加熱量Qを調整するようにした。
さらに、比較例では、特許文献1に記載の合金化度計によって板幅中央の合金化度を検出し、合金化度が所定合金化度になるように合金化帯の加熱制御を行い、目視判定で合金化ムラが認められたときは、合金化ムラを抑制するように手動で合金化帯の加熱制御を行った。なお、目視判定は鋼帯中心部と鋼帯エッジ部の表面の色調ムラを確認することにより行った。
実施例2では、製造した合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層の合金化ムラの検査を行った。合金化ムラ(合金不足、過合金)の発生比率(装入コイル重量に対する、合金化ムラ発生と判定されたコイルの重量の比率)を表2に示す。発明例は保熱帯炉温に基づくIH出力制御を行ったデータであり、比較例は合金化度に基づくFB制御を行ったデータである。また、データは複数鋼種(鋼種A~鋼種D)を合算したデータである。
表2に示すように、上記実施形態に係る合金化処理装置4及び合金化処理方法によれば、合金化ムラの発生量が大幅に低減することが確認できた。つまり、上記実施形態に係る合金化処理装置4及び合金化処理方法によれば、所定の合金化度に制御し、合金化ムラを出来るだけ発生させずに製造することが可能となった。また、本実施例に含まれない鋼種においても合金化の際の温度履歴は重要であるため、合金温度履歴に影響する保熱帯温度に応じて加熱量を制御する方法は合金化ムラ抑制に有効な手法である。
1 めっき処理設備
2 めっき浴
3 ワイピングノズル
4 合金化処理装置
41 加熱帯
42 保熱帯
43 冷却帯
44 温度計
45 制御部
5 トップロール
6 鋼板
2 めっき浴
3 ワイピングノズル
4 合金化処理装置
41 加熱帯
42 保熱帯
43 冷却帯
44 温度計
45 制御部
5 トップロール
6 鋼板
Claims (5)
- 溶融亜鉛めっき鋼板に合金化処理を施す、溶融亜鉛めっき鋼板の合金処理装置であって、
溶融亜鉛めっき処理が施された鋼板である前記溶融亜鉛めっき鋼板を加熱する加熱帯と、
前記加熱帯で加熱された前記溶融亜鉛めっき鋼板を保熱する保熱帯と、
前記保熱帯の温度である保熱帯温度を測定する温度計と、
前記保熱帯温度に応じて、前記加熱帯の加熱量を調整する制御部と、
を備える、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置。 - 前記制御部は、前記溶融亜鉛めっき鋼板の鋼種毎に予め設定される前記保熱帯温度と前記加熱量との関係から、測定される前記保熱帯温度に応じて設定される前記加熱量となるように、前記加熱帯の前記加熱量を調整する、請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置。
- 前記保熱帯温度と前記加熱量との関係は、合金化ムラが発生しなかった過去の実績データにおける、前記保熱帯温度及び前記加熱量の値から求められる、請求項2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置。
- 前記制御部は、測定される前記保熱帯温度と(1)式とから前記加熱量を求め、求められた前記加熱量となるように、前記加熱帯の前記加熱量を調整する、請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置。
Q=a0×ta1×Wa2×LS a3×CW a4×Fe%a5×Tk a6 ・・・(1)
Q:加熱量(kW)
t:鋼板の板厚(mm)
W:鋼板の板幅(mm)
LS:ライン速度(mpm)
CW:片面あたりのめっき付着量(g/m2)
Fe%:合金化度(%)
Tk:保熱帯温度(℃)
a0~a6:鋼種に応じた定数 - 溶融亜鉛めっき鋼板に合金化処理を施す、溶融亜鉛めっき鋼板の合金処理方法であって、
溶融亜鉛めっき処理が施された鋼板である前記溶融亜鉛めっき鋼板を加熱帯で加熱する加熱工程と、
前記加熱帯で加熱された前記溶融亜鉛めっき鋼板を保熱帯で保熱する保熱工程と、
を備え、
前記加熱工程では、前記保熱帯の温度である保熱帯温度に応じて、前記加熱帯の加熱量を調整する、溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理方法。
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JP2022154142A JP2024048224A (ja) | 2022-09-27 | 2022-09-27 | 溶融亜鉛めっき鋼板の合金化処理装置及び合金化処理方法 |
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2022
- 2022-09-27 JP JP2022154142A patent/JP2024048224A/ja active Pending
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