JP2024046788A - 回路基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 配線層に隣接して高温での貯蔵弾性率が高いポリイミド層を有する金属張積層板を回路加工した回路基板において、製造過程での発泡現象の発生を抑制しながら、配線層と絶縁樹脂層との間のピール強度を十分に確保すること。【解決手段】 絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えた回路基板を真空もしくは不活性ガス雰囲気で加熱するアニール工程を含む回路基板の製造方法。絶縁樹脂層は、配線層に接する樹脂層として、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定される300℃における貯蔵弾性率E’が1.0×108Pa以上、かつ、350℃における貯蔵弾性率E’が1.0×107Pa以上であるポリイミド層(A)を有しており、ポリイミド層(A)のガラス転移温度をTg[℃]としたとき、アニール工程をTg~Tg+80℃の範囲内の温度で、3分間~15分間の範囲内の時間をかけて行う。【選択図】 なし

Description

本発明は、電子部品に使用される回路基板の製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。FPCの材料には、銅箔等の金属箔上に絶縁樹脂層として単層または複数層のポリイミド層が積層された金属張積層板が広く用いられている。
金属張積層板の製造方法として、金属箔上にポリアミド酸溶液を塗布・乾燥することを繰り返した後、高温で熱処理してイミド化することによってポリイミド層とする所謂キャスト法が知られている。しかし、キャスト法において工程時間短縮のために乾燥速度を速めるとイミド化の際に発泡が発生することがある。具体的には、金属層とこれに接するポリイミド層との間や、金属層に接するポリイミド層とその上に更に積層されたポリイミド層との間で、気化した溶媒や、イミド化によって発生した水(イミド化水)の体積膨張に起因する膨れや剥がれ、発泡などの現象(以下、これらの現象を総称して「発泡現象」と記すことがある)が発生し、金属張積層板及びこれを用いる回路基板の歩留まりや信頼性を低下させる、という問題があった。このような発泡現象を抑制するために、金属層に接するポリイミド層として、高温での貯蔵弾性率が高いものを適用することが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特開2006-051800号公報 特開2020-104340号公報
発泡現象を抑制するために、金属層に隣接して高温での貯蔵弾性率が高いポリイミド層を設けると、発泡現象は抑制できるものの、金属層-ポリイミド層間における残留応力が増加し、金属層を回路加工した後で配線層と絶縁樹脂層とのピール強度が低下する、という新たな問題が生じ、その対策が望まれている。
従って、本発明の目的は、配線層に隣接して高温での貯蔵弾性率が高いポリイミド層を有する金属張積層板を回路加工した回路基板において、製造過程での発泡現象の発生を抑制しながら、配線層と絶縁樹脂層との間のピール強度を十分に確保することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、配線層に隣接して高温での貯蔵弾性率が高いポリイミド層を有する回路基板に対し、所定の条件でアニール処理を行うことによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の工程(i);
(i)絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えた回路基板を真空もしくは不活性ガス雰囲気で加熱するアニール工程、
を含む回路基板の製造方法である。
本発明の回路基板の製造方法は、前記絶縁樹脂層が、前記配線層に接する樹脂層として、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定される300℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上、かつ、350℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上であるポリイミド層(A)を有しており、
前記ポリイミド層(A)のガラス転移温度をTg[℃]としたとき、前記アニール工程を、Tg~Tg+80℃の範囲内の温度で、3分間~15分間の範囲内の時間をかけて行うものである。
本発明の回路基板の製造方法は、前記工程(i)の実施後において、前記配線層と前記絶縁樹脂層とのピール強度が1.0kN/m以上であってもよい。この場合、前記工程(i)の実施前において、前記配線層と前記絶縁樹脂層とのピール強度が0.8kN/m以下であってもよい。
本発明の回路基板の製造方法において、前記ポリイミド層(A)は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するとともに、
全ジアミン残基中に、下記の一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されたジアミン残基を5モル%以上90モル%以下の割合で含有しており、かつ、
全酸二無水物残基中に、ピロメリット酸二無水物から誘導された酸二無水物残基(PMDA残基)を5モル%以上90モル%以下で含有していてもよい。
Figure 2024046788000001
一般式(1)において、連結基X1は、独立して、単結合又は-CONH-を示し、Yは独立して、炭素数1~3の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、n1は0~2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。
本発明の回路基板の製造方法は、絶縁樹脂層が、ポリイミド層(A)に接して積層されたポリイミド層(B)を更に有していてもよく、該ポリイミド層(B)の熱膨張係数が25ppm/K未満であってもよい。
本発明の回路基板の製造方法は、前記工程(i)の前に、さらに、次の工程(ii)~(iv);
(ii)金属箔上に前記ポリイミド層(A)を構成するポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥して塗膜を形成する工程、
(iii)前記塗膜を熱処理してポリアミド酸をイミド化することによって前記ポリイミド層(A)を含む絶縁樹脂層を有する金属張積層板を得る工程、
(iv)前記金属張積層板の前記金属層を回路加工して前記配線層とし、前記工程(i)に供される回路基板を得る工程、
を含んでいてもよい。
本発明方法によれば、配線層に隣接して高温での貯蔵弾性率が高いポリイミド層を有する金属張積層板を回路加工した回路基板に対し、所定の条件でアニール処理を行うことによって、配線層と絶縁樹脂層との間のピール強度を十分に確保することが可能となる。つまり、製造過程での発泡現象の発生を抑制しながら、実用上十分なピール強度を有する回路基板を製造できる。したがって、本発明方法により、金属張積層板を用いて回路基板を製造する際の歩留まりを向上させながら、信頼性の高い回路基板が提供される。
次に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の一実施の形態に係る回路基板の製造方法は、次の工程(i);
(i)絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えた回路基板を真空もしくは不活性ガス雰囲気で加熱するアニール工程、
を含んでいる。
工程(i)は回路基板に対するアニール工程である。工程(i)に供される回路基板は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えている。絶縁樹脂層は、配線層に接する樹脂層として、ポリイミド層(A)を有している。ポリイミド層(A)は、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定される300℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上、かつ、350℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上であり、高温での貯蔵弾性率が高いという特徴を有する。絶縁樹脂層は、さらに、ポリイミド層(A)に接して積層された低熱膨張性のポリイミド層(B)を有していてもよい。また、ポリイミド層(B)に、さらに任意のポリイミド層が積層されていてもよい。この場合、配線層/ポリイミド層(A)/ポリイミド層(B)/ポリイミド層(A)という層構成でもよい。なお、配線層、ポリイミド層(A)、ポリイミド層(B)の詳細な構成については後述する。
工程(i)は、ポリイミド層(A)と配線層との界面の残留応力を緩和する意味を持つ。ポリイミド層(A)がキャスト法で形成されている場合、塗膜を熱イミド化する際のポリイミド層(A)の収縮や、ポリイミド層(A)と金属箔との熱膨張係数の差によって、ポリイミド層(A)と金属箔との界面に応力が発生する。この応力は、金属箔を回路加工した後も残留し、ポリイミド層(A)と配線層との密着性を低下させる。特に、ポリイミド層(A)は、その形成過程での発泡現象抑制のために貯蔵弾性率を高くしていることから、熱イミド化の際の応力が蓄積しやすく、その反面、接着力があまり大きくないため残留応力の影響を受けやすく、配線層と絶縁樹脂層とのピール強度の低下を招きやすい。工程(i)では、回路加工後のタイミングでアニール処理を行うことによって、ポリイミド層(A)を少し軟化させ、蓄積した残留応力の緩和を図ることにより、配線層と絶縁樹脂層とのピール強度を改善することができる。
上記目的のため、工程(i)は、ポリイミド層(A)のガラス転移温度をTg[℃]としたとき、Tg~Tg+80℃の範囲内の温度で、3分間~15分間の範囲内の時間をかけて行われる。加熱温度がTg未満では、ポリイミド層(A)の応力緩和が十分でなく、配線層と絶縁樹脂層とのピール強度の改善効果が得られない。一方、加熱温度がTg+80℃を超えると、ポリイミド層(A)をはじめとする絶縁樹脂層が熱により変性、劣化したり、絶縁樹脂層の収縮によって回路基板に反りが発生したりする。また、上記加熱温度において、加熱時間が3分間未満ではポリイミド層(A)の応力緩和が十分でなく、配線層と絶縁樹脂層とのピール強度の改善効果が得られにくい。一方、加熱時間が15分間を超えると、ポリイミド層(A)をはじめとする絶縁樹脂層が熱により変性、劣化したり、絶縁樹脂層の収縮によって回路基板に反りが発生したりする。本発明では、応力緩和の効果が発現する限り、加熱温度が低い方が回路基板の反りなどの悪影響が少なくなるため好ましく、加熱時間が短い方が工程時間を短縮化できるため好ましい。このような観点から、工程(i)における加熱温度は、Tg~Tg+50℃の範囲内が好ましく、Tg~Tg+40℃の範囲内がより好ましい。また、加熱時間は、3分間~10分間の範囲内が好ましく、3分間~5分間の範囲内がより好ましい。
なお、工程(i)は、配線層の酸化などを防ぐため、真空条件もしくは不活性ガス雰囲気で行われる。
工程(i)の効果は、その前後における配線層と絶縁樹脂層とのピール強度の改善に現れる。その一例を挙げると、配線層と絶縁樹脂層とのピール強度について、工程(i)を実施する前が0.8kN/m以下である場合に、工程(i)を実施した後では1.0kN/m以上、好ましくは1.1kN/m以上に向上させることができる。このように、工程(i)の前後でピール強度を25%以上、好ましくは35%以上増加させることによって、配線層の剥離や位置ずれなどが防止され、回路基板の信頼性を高めることができる。配線層と絶縁樹脂層とのピール強度は、後記実施例に示す方法で測定することができる。
本発明では回路加工後にアニール処理を行うことが重要であり、回路加工前の金属張積層板の状態でアニール処理を実施しても十分なピール強度の改善効果が得られない。その理由は、回路加工前の金属張積層板の状態では、ポリイミド層(A)が、金属層とポリイミド層(B)のような任意の樹脂層との間で面接触により拘束を受けた状態になっているため、アニール処理によりポリイミド層(A)を軟化させても残留応力が解放されにくく、冷却すると再び残留応力が蓄積した状態に戻ってしまうためである。それに対して回路加工後は、金属層の代わりにライン&スペースなどの回路パターンの配線層が形成されており、該配線層側では拘束が小さくなっていることから、アニール処理によりポリイミド層(A)を軟化させることで残留応力が解放されやすくなっていることによる。
上記のとおり、残留応力によるピール強度の低下は、キャスト法によってポリイミド層(A)を有する絶縁樹脂層を形成した場合に生じやすい。このことから、本発明の効果は、キャスト法によって形成された絶縁樹脂層を有する回路基板においてより顕著に発現する。そのため、本発明方法は、工程(i)の前に、さらに、次の工程(ii)~(iv);
(ii)金属箔上にポリイミド層(A)を構成するポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を塗布・乾燥して塗膜を形成する工程、
(iii)前記塗膜を熱処理してポリアミド酸をイミド化することによってポリイミド層(A)を含む絶縁樹脂層を有する金属張積層板を得る工程、
(iv)工程(iii)で得た金属張積層板の金属層を回路加工して配線層とし、工程(i)に供される回路基板を得る工程、を含むことができる。
工程(ii)において使用するポリアミド酸溶液は、酸二無水物成分とジアミン成分とを溶媒中で反応させることにより製造できる。具体的には、酸二無水物成分とジアミン成分とを約0.8~1.2のモル比率で有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリアミド酸を合成できる。この反応にあたっては、生成するポリアミド酸が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等を使用することできる。これらの溶媒を2種以上併用することも可能であり、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。有機溶媒の使用量としては、特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~30重量%程度になるように調整して用いることが好ましい。得られたポリアミド酸溶液は、そのまま工程(ii)において使用可能であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。
工程(ii)において、ポリアミド酸溶液を金属箔上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。ポリアミド酸溶液の粘度は、500cP~100,000cPの範囲内に調整することが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
絶縁樹脂層がポリイミド層(A)以外のポリイミド層を含んでおり、複数のポリイミド層からなる場合は、工程(ii)において、ポリアミド酸溶液の種類を変えて塗布・乾燥することを複数回繰り返すか、多層押出により同時に種類の異なるポリアミド酸溶液を多層に積層した状態で塗布・乾燥すればよい。
工程(iii)におけるイミド化の条件は、特に制限されず、例えば80~400℃の範囲内の温度条件で0.1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。絶縁樹脂層が複数のポリイミド層からなる場合は、工程(iii)において一括してイミド化を実施することができる。
工程(iv)は、常法に従って実施できる。例えばフォトリソグラフィー技術とエッチングによって金属張積層板の金属層を所望のパターンに回路加工することができる。
次に、本発明方法によって製造される回路基板の絶縁樹脂層及び配線層の構成について説明する。絶縁樹脂層については、ポリイミド層(A)と、このポリイミド層(A)に接してポリイミド層(B)が積層されている場合について説明する。
<ポリイミド層(A)の構成>
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるものであり、酸二無水物から誘導される酸二無水物残基とジアミン化合物から誘導されるジアミン残基とを含有する。
(酸二無水物残基)
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、全酸二無水物残基中に、ピロメリット酸二無水物から誘導された酸二無水物残基(PMDA残基)と、分子内にケトン基(-CO-)を有するテトラカルボン酸二無水物から誘導された酸二無水物残基(以下、「ケトン基含有残基」と記すことがある)とを含有することが好ましい。
PMDA残基は、構造的に平面性と剛直性とに優れ、分子鎖間のスタッキング性を増大させることができ、ポリイミドの誘電正接を低くすることができる。また、高温での弾性率を比較的高いレベルに維持することができ、発泡現象の発生を抑制することが期待できる。しかしながら、PMDA残基のみでは分子鎖の絡み合いが少なく、配線層とのピール強度が低下し易く、また、他のポリイミド層との間の層間の接着性が低下することで、発泡現象が生じ易くなる。一方、ケトン基含有残基は、ケトン基を有しているために、隣接して積層されるポリイミド層中に含まれる官能基との相互作用や化学反応によって、ポリイミド層間の接着性を向上させ、発泡現象の発生を抑制できる。また、2種以上の酸二無水物残基を併用することで分子鎖の絡み合いを向上させ、ピール強度が向上することが期待できる。また分子配列の規則性が低下することで電場に対する運動性が抑制され低誘電正接化についても期待できる。そこで、ポリイミド層(A)を構成するポリイミドにおいては、発泡現象抑制とピール強度の向上とをバランス良く実現するために、酸二無水物残基として、PMDA残基とケトン基含有残基とを併用することが好ましい。
このようなPMDA残基は、全酸二無水物残基中に、好ましくは5モル%以上90モル%以下、より好ましくは20モル%以上80モル%以下で含有させる。全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量がこの範囲を下回ると、誘電特性や300℃及び350℃での貯蔵弾性率の低下が懸念され、この範囲を上回ると、発泡現象が発生し易くなり、また、配線層とのピール強度が低下する傾向がある。
また、ケトン基含有残基は、全酸二無水物残基中に、好ましくは10モル%以上95モル%以下、より好ましくは20モル%以上80モル%以下で含有させる。全酸二無水物残基中のケトン基含有残基の含有量がこの範囲を下回ると、発泡現象の抑制、ピール強度の向上が難しくなり、この範囲を上回ると、誘電特性が低下する傾向がある。
ここで、ケトン基含有残基としては、例えば、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,3’,3,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(パラフェニレンジカルボニル)ジフタル酸二無水物、4,4’-(メタフェニレンジカルボニル)ジフタル酸二無水物等から誘導される酸二無水物残基を挙げることができる。これらの中でも、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)から誘導される酸二無水物残基が好ましい。また、ケトン基と相互作用する性質を有する官能基としては、ケトン基との間で、例えば分子間力による物理的相互作用や、共有結合による化学的相互作用などを生じ得る官能基であれば特に制限はないが、その代表例としてアミノ基(-NH)を挙げることができる。
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドにおいて、全酸二無水物残基中のPMDA残基並びにケトン基含有残基の含有量は、発泡現象の発生抑制とピール強度の向上とをバランス良く実現するために、合計で、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
(その他の酸二無水物残基)
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、上記PMDA残基及びケトン基含有残基以外に、一般にポリイミドの原料として用いられる酸二無水物から誘導される酸二無水物残基を含有することができる。
(ジアミン残基)
ポリイミド層(A)を構成するジアミン残基は、全ジアミン残基中に、下記の一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有することが好ましい。
Figure 2024046788000002
一般式(1)において、連結基X1は、独立して、単結合又は-CONH-を示し、Yは、独立して、炭素数1~3の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、n1は0~2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。なお、一般式(1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
一般式(1)のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の具体例としては、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4‘-ジアミノベンズアニリド等から誘導されるジアミン残基が挙げられる。これらの中でも、誘電特性の点から2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)から誘導されるジアミン残基を好ましく挙げることができる。
一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基は、ポリイミドの平面性と剛直性とを向上させることで、分子鎖間のスタッキング性を向上させることができる。このため、ジアミン残基の運動性を低下させることができる。この結果、ポリイミドの誘電正接を低くすることができる。また、ポリイミドの分子骨格の平面性についても高めることができるため、面方向の熱膨張係数を低くすることができる。
一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基は、全ジアミン残基中に好ましくは5モル%以上90モル%以下、より好ましくは20モル%以上80モル%以下で含有させることがよい。一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の全ジアミン残基中の含有量がこの範囲を下回ると、ポリイミドの面方向の熱膨張係数を低くすることが難しくなり、この範囲を上回ると、ジアミン残基の剛直性が高くなり過ぎて、分子鎖の絡み合い量が少なくなるため、配線層とのピール強度が低下する。また、ジアミン残基部分の配列の規則性が高まることで電場に対する応答性が変化し誘電正接が悪化しやすくなる。
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、全ジアミン残基中に、一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基以外に、下記の一般式(2)~(5)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有することが好ましい。下記の一般式(2)~(5)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基は、芳香環の連結基X2として、独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-CH-、-C(CH-、-NH-から選ばれる2価の基を有している。またアミノ基が連結した芳香環はパラ位結合を有する。このため、ポリイミド分子鎖の回転や屈曲の自由度が高く、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させることで、分子鎖間の相互作用と絡み合い量のバランスをとることができるため、高温域の貯蔵弾性率E’の低下の抑制とフィルム強度の向上の両立が容易となる。
Figure 2024046788000003
一般式(2)~(5)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基X2は独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-CH-、-C(CH-、-NH-から選ばれる2価の基を示し、n2は独立に0~4の整数を示す。また、アミノ基との結合を有さない芳香環の連結位は、オルト位以外の位置となる。ここで、「独立に」とは、上記式(2)~(5)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基X2、複数の置換基R若しくは複数のn2について、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、一般式(2)~(5)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
一般式(2)~(5)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の全ジアミン残基中の含有量は、合計で、好ましくは10モル%以上95モル%以下、より好ましくは20モル%以上80モル%以下がよい。この範囲を下回ると、分子鎖の屈曲性の低下により分子鎖間の絡み合い量が減少し、配線層とのピール強度が低下する。一方、この範囲を上回ると、分子鎖の回転や屈曲性の自由度が増加することでポリイミド層(A)の熱膨張係数の制御が難しくなったり、高温時の貯蔵弾性率が低下することにより発泡現象の抑制効果が低下する。また、ポリイミド分子鎖の回転や屈曲の自由度が高くなりすぎることで分子の運動抑制が困難となり、誘電正接が高くなる傾向がある。
一般式(2)~(5)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルから誘導されたジアミン残基を好ましく挙げることができる。これらの中でも、芳香族基の数、連結基及び連結位置の点から1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼンから誘導されたジアミン残基を好ましく挙げることができる。
(その他のジアミン残基)
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、上記ジアミン残基以外に、一般にポリイミドの原料として用いられるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有することができる。
(酸二無水物残基とジアミン残基の比率)
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドにおいて、剛直なモノマーであるPMDA残基と一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の含有量との含有量の合計(T1)は、全酸二無水物残基の含有量と全ジアミン残基の含有量との合計に対し90モル%以上であることが望ましい。90モル%以上であると、平面性の向上と分子鎖間のスタッキング性の向上とにより、高温での貯蔵弾性率を高く維持することができる。また、前記剛直なモノマーであるPMDA残基と一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の含有量との含有量の合計(T1)は、屈曲性のモノマーである一般式(2)~(5)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の少なくとも1種のジアミン残基の含有量(T2)に対する比率(T1/T2)が1より大きいことが望ましい。前記比率が1を超えることで、屈曲性のモノマーと比較し剛直性のモノマー割合が多くなるため、熱膨張係数の制御が容易になるとともに高温域での貯蔵弾性率が上昇により発泡現象の抑制効果が高くなる。また、分子鎖の運動が抑制されるため、誘電正接をより低く抑えることが可能となる。
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、任意成分として、例えば、有機フィラー、無機フィラー、可塑剤、エラストマー、カップリング剤、顔料、難燃剤、放熱剤等を含有することができる。有機フィラーとしては、フッ素系ポリマー粒子や液晶ポリマー粒子等を挙げることができる。無機フィラーとしては、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定される300℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上、好ましくは5.0×10Pa以上であり、且つ350℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上である。300℃における貯蔵弾性率E’を1.0×10Pa以上、且つ350℃における貯蔵弾性率E’を1.0×10Pa以上とすることにより、熱処理時に溶媒やイミド化水の気化による体積膨張により発泡現象が生ずることを抑制することができる。
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドの重量平均分子量は、好ましくは10,000以上400,000以下、より好ましくは50,000以上350,000以下である。重量平均分子量がこの範囲を下回るとポリイミドのフィルムが脆化し易くなり、上回ると粘度が増加し、塗工時に厚みムラ、スジ等の不良となることが懸念される。重量平均分子量の測定はゲル浸透クロマトグラフィー装置により行うことができる。
ポリイミド層(A)の熱膨張係数(CTE)は、好ましくは60ppm/K以下、より好ましくは30ppm/K以上55ppm/K以下である。熱膨張係数を60ppm/K以下とすることにより、絶縁樹脂層の寸法変化率の制御が容易となる。ポリイミド層(A)の熱膨張係数(CTE)の調整は、主に、ポリイミドを構成するポリイミド中の酸二無水物残基やジアミン残基の種類や存在割合、イミド化工程における熱処理条件によって調節することができる。熱膨張係数の測定は熱機械分析装置(TMA)により行うことができる。
ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、例えば回路基板の配線層に接する接着層となるため、銅の拡散を抑制するために完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出される。
ポリイミド層(A)の厚みは、特に制限はなく、例えば1~15μmの範囲内が好ましく、2~10μmの範囲内がより好ましい。
<ポリイミド層(B)の構成>
ポリイミド層(B)の構成は、特に限定されないが、熱膨張係数(CTE)が25ppm/K未満の低熱膨張性ポリイミド層であることが好ましい。熱膨張係数(CTE)の低いポリイミド層(B)を積層することによって、金属張積層板の寸法変化率を制御することができる。ここで、ポリイミド層(B)全体の誘電正接を低くするために、ポリイミド層(B)を構成するポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基と、ジアミン成分から誘導されるジアミン残基とを含有し、全酸二無水物残基と全ジアミン残基との合計中に、ビフェニル骨格を有する残基(ビフェニル骨格含有酸二無水物残基、ビフェニル骨格含有ジアミン残基)を、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上80モル%以下で含有することが望ましい。このような成分でポリイミドを構成すると、気体透過性が低下し、ポリイミド層(A)との間に溶剤やイミド化水が滞留することで発泡が生じ易くなるが、ポリイミド層(A)を上述の構成とすることで、ポリイミド層(B)の気体透過性が低いとしても発泡現象の発生を効果的に抑制することができる。
ビフェニル骨格を有する残基としては、例えば、2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2'‐ジエチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル(m-EB)、2,2'‐ジエトキシ‐4,4'‐ジアミノビフェニル(m-EOB)、2,2'‐ジプロポキシ‐4,4'‐ジアミノビフェニル(m-POB)、2,2'‐ジプロピル‐4,4'‐ジアミノビフェニル(m-NPB)、2,2'‐ジビニル‐4,4'‐ジアミノビフェニル(VAB)、4,4'‐ジアミノビフェニル、3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイル、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)-2,2',3,3',5,5'-ヘキサメチルビフェニル-4,4’-ジイル等から誘導されるジアミン残基又は酸二無水物残基を挙げることができる。
ポリイミド層(B)は、ビフェニル骨格を有する残基のほかに、ポリイミド層(A)を構成するポリイミドの酸二無水物残基及びジアミン残基の中から適宜選択した残基を含有することができる。
また、ポリイミド層(B)は、ベース絶縁層として好ましく適用される。ここで、ベース絶縁層とは、絶縁樹脂層において機械的強度と寸法安定性を維持する役割を担う樹脂層である。絶縁樹脂層全体の寸法安定性を確保するため、熱膨張係数(CTE)が25ppm/K未満であることが好ましく、-5~25ppm/K未満の範囲内であることがより好ましい。
ポリイミド層(B)は、絶縁樹脂層の全厚みに対して好ましくは50%超、より好ましくは60%以上の厚みを有することがよい。
<配線層の構成>
配線層としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。
配線層の厚みは特に限定されるものではないが、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5μm以上25μm以下の範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、配線層の材料として銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、商品名;TMA7100)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から270℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
[ガラス転移温度(Tg)及び貯蔵弾性率の測定]
5mm×20mmサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:TAインスツルメント社製、商品;RSA3)を用いて、30℃から400℃までの昇温速度を5℃/分、周波数1Hzの条件で測定した。ガラス転移温度は主分散に基づくtanδの極大値温度より求めた。
[ピール強度の測定]
フレキシブル銅張積層板における塗布面の銅箔をエッチングし、幅1.0mmに回路加工したサンプルを用意し、ポリイミド層の表面を両面テープによりアルミ板に固定して、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて測定した。回路加工した銅箔を180度方向に50mm/minの速度で引っ張り、10mm剥離した時の中央値強度を求めた。
[表面粗度の測定]
JIS B 0601に準じて、触針式表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製、商品名:ET3000)を使用して、測定幅200μmの条件で最大高さRzを測定した。
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BTDA:3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
m-TB:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
銅箔:圧延銅箔、厚さ;12μm、Rz;1.0μm
(合成例1)
255.0重量部のDMAcに21.43重量部のm-TB(100.92モル部)を加え室温で30分以上撹拌し、完全に溶解させた。次に、16.26重量部のPMDA(74.56モル部)及び7.31重量部のBPDA(24.85モル部)を加え、室温で4時間撹拌を行い、粘度27,400cPのポリアミド酸溶液1を得た。
基材上に、ポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、140℃以下で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、140℃から360℃まで段階的に昇温させて熱処理を行い、イミド化を完結して得られたポリイミドフィルム1を調製した。得られたポリイミドフィルム1のCTEは23ppm/Kであり、非熱可塑性であった。
(合成例2)
264.0重量部のDMAcに10.55重量部のTPE-R(36.10モル部)及び7.66重量部のm-TB(33.10モル部)を加え室温で30分以上撹拌し、完全に溶解させた。次に、10.89重量部のPMDA(49.93モル部)及び6.90重量部のBTDA(21.40モル部)を加え、室温で4時間撹拌を行い、粘度3,800cPのポリアミド酸溶液2を得た。
合成例1と同様にして作製したポリイミドフィルム2のTgは300℃、貯蔵弾性率は5.6×10Pa(300℃)、2.0×10Pa(350℃)及び1.3×10Pa(400℃)であった。
(合成例3)
176.0重量部のDMAcに7.16重量部のTPE-R(24.5モル部)、5.20重量部のm-TB(24.5モル部)を加え室温で30分以上攪拌し、完全に溶解させた。次に、12.64重量部のBTDA(39.0モル部)、2.13重量部のPMDA(9.8モル部)を加え、室温で4時間撹拌を行い、粘度2,300cPのポリアミド酸溶液3を得た。
合成例1と同様にして作製したポリイミドフィルム3のTgは260℃、貯蔵弾性率は4.0×10Pa(300℃)、1.7×10Pa(350℃)であった。
(合成例4)
176.0重量部のDMAcに7.16重量部のTPE-R(24.5モル部)、5.20重量部のm-TB(24.5モル部)を加え室温で30分以上攪拌し、完全に溶解させた。次に、3.14重量部のBTDA(9.74モル部)、8.50重量部のPMDA(39.0モル部)を加え、室温で4時間撹拌を行い、粘度8,541cPのポリアミド酸溶液4を得た。
合成例1と同様にして作製したポリイミドフィルム4のTgは287℃、貯蔵弾性率は8.3×10Pa(300℃)、1.9×10Pa(350℃)であった。
(合成例5)
264.0重量部のDMAcに16.14重量部のTPE-R(55.2モル部)及び3.22重量部のm-TB(13.9モル部)を加え室温で30分以上撹拌し、完全に溶解させた。次に、10.89重量部のPMDA(49.93モル部)及び6.90重量部のBTDA(21.40モル部)を加え、室温で4時間撹拌を行い、粘度2,600cPのポリアミド酸溶液5を得た。合成例1と同様にして作製したポリイミドフィルム5のTgは268℃、貯蔵弾性率は8.1×10Pa(300℃)、3.3×10Pa(350℃)であった。
(合成例6)
264.0重量部のDMAcに4.01重量部のTPE-R(13.7モル部)及び12.8重量部のm-TB(55.3モル部)を加え室温で30分以上撹拌し、完全に溶解させた。次に、10.89重量部のPMDA(49.93モル部)及び6.90重量部のBTDA(21.40モル部)を加え、室温で4時間撹拌を行い、粘度3,600cPのポリアミド酸溶液6を得た。合成例1と同様にして作製したポリイミドフィルム6のTgは300℃、貯蔵弾性率は1.3×10Pa(300℃)、2.2×10Pa(350℃)であった。
[実施例1]
銅箔の上に、ポリイミド酸溶液2を硬化後厚みが2μmとなるように塗布した後、140℃以下で加熱乾燥し、溶媒を除去した。その上に、ポリアミド酸溶液1を硬化後厚みが46μmとなるように塗布した後、140℃以下で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが2μmとなるように塗布した後、140℃以下で加熱乾燥し、溶媒を除去した。その後、140℃から360℃まで段階的に昇温させてイミド化を行い、片面銅張積層板1を調整した。得られた片面銅張積層板1の塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工した。回路加工後のサンプルを真空下で10℃/minで昇温し、300℃で5分間アニール処理を行った後に徐冷し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様にして片面銅張積層板2を調整した。得られた片面銅張積層板2の塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工した。回路加工後のサンプルを真空下で10℃/minで昇温し、300℃で15分間アニール処理を行った後に徐冷し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
ポリアミド酸溶液2の代わりにポリアミド酸溶液3を使用したこと以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板3を調整した。得られた片面銅張積層板3の塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工した。回路加工後のサンプルを真空下で10℃/minで昇温し、300℃で5分間アニール処理を行った後に徐冷し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
ポリアミド酸溶液2の代わりにポリアミド酸溶液4を使用したこと以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板4を調整した。得られた片面銅張積層板4の塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工した。回路加工後のサンプルを真空下で10℃/minで昇温し、300℃で5分間アニール処理を行った後に徐冷し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
ポリアミド酸溶液2の代わりにポリアミド酸溶液5を使用したこと以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板5を調整した。得られた片面銅張積層板5の塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工した。回路加工後のサンプルを真空下で10℃/minで昇温し、300℃で5分間アニール処理を行った後に徐冷し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例6]
ポリアミド酸溶液2の代わりにポリアミド酸溶液6を使用したこと以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板6を調整した。得られた片面銅張積層板6の塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工した。回路加工後のサンプルを真空下で10℃/minで昇温し、300℃で5分間アニール処理を行った後に徐冷し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例1
実施例1と同様にして片面銅張積層板7を調整した。得られた片面銅張積層板7の塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工した。回路加工後のサンプルを真空下で10℃/minで昇温し、300℃で2分間アニール処理を行った後に徐冷し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例2
実施例1と同様にして片面銅張積層板8を調整した。得られた片面銅張積層板8の塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工した。回路加工後のサンプルを真空下で10℃/minで昇温し、250℃で15分間アニール処理を行った後に徐冷し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例3
実施例1と同様にして片面銅張積層板9を調整した。得られた片面銅張積層板9を真空下で10℃/minで昇温し、300℃で15分間アニール処理を行った後に徐冷した。アニール処理後に塗布面の銅箔をエッチングし、配線幅1.0mmに回路加工し、ピール強度評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 2024046788000004
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。

Claims (6)

  1. 次の工程(i);
    (i)絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えた回路基板を真空もしくは不活性ガス雰囲気で加熱するアニール工程、
    を含み、
    前記絶縁樹脂層は、前記配線層に接する樹脂層として、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定される300℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上、かつ、350℃における貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上であるポリイミド層(A)を有しており、
    前記ポリイミド層(A)のガラス転移温度をTg[℃]としたとき、前記アニール工程を、Tg~Tg+80℃の範囲内の温度で、3分間~15分間の範囲内の時間をかけて行う回路基板の製造方法。
  2. 前記工程(i)の実施後において、前記配線層と前記絶縁樹脂層とのピール強度が1.0kN/m以上である請求項1に記載の回路基板の製造方法。
  3. 前記工程(i)の実施前において、前記配線層と前記絶縁樹脂層とのピール強度が0.8kN/m以下である請求項2に記載の回路基板の製造方法。
  4. 前記ポリイミド層(A)は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するとともに、
    全ジアミン残基中に、下記の一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されたジアミン残基を5モル%以上90モル%以下の割合で含有しており、かつ、
    全酸二無水物残基中に、ピロメリット酸二無水物から誘導された酸二無水物残基(PMDA残基)を5モル%以上90モル%以下で含有している請求項1に記載の回路基板の製造方法。
    Figure 2024046788000005
    [一般式(1)において、連結基X1は、独立して、単結合又は-CONH-を示し、Yは独立して、炭素数1~3の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、n1は0~2の整数を示し、p及びqは独立して0~4の整数を示す。]
  5. 絶縁樹脂層が、ポリイミド層(A)に接して積層されたポリイミド層(B)を更に有し、該ポリイミド層(B)の熱膨張係数が25ppm/K未満である請求項1に記載の回路基板の製造方法。
  6. 前記工程(i)の前に、さらに、次の工程(ii)~(iv);
    (ii)金属箔上に前記ポリイミド層(A)を構成するポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥して塗膜を形成する工程、
    (iii)前記塗膜を熱処理してポリアミド酸をイミド化することによって前記ポリイミド層(A)を含む絶縁樹脂層を有する金属張積層板を得る工程、
    (iv)前記金属張積層板の前記金属層を回路加工して前記配線層とし、前記工程(i)に供される回路基板を得る工程、
    を含む請求項1に記載の回路基板の製造方法。
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