JP2022047880A - ポリイミドフィルムの製造方法及び金属張積層板の製造方法 - Google Patents

ポリイミドフィルムの製造方法及び金属張積層板の製造方法 Download PDF

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芳樹 須藤
Yoshiki Sudo
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Abstract

【課題】 ポリイミドフィルムを形成するときの製造条件を制御することによって、熱膨張係数(CTE)を大きく変動させることなく、低い誘電正接を有するポリイミドフィルムを製造する。【解決手段】 非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に熱可塑性ポリイミド層が積層され、フィルム全体として、周波数10GHzにおける誘電正接が0.0045以下であるとともに、CTEが10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であり、非熱可塑性ポリイミド層のCTEが1ppm/K以上25ppm/Kの範囲内、熱可塑性ポリイミド層のCTEが35ppm/K以上であるポリイミドフィルムの製造方法であって、イミド化工程における熱処理の最高温度が、前記非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)+80℃を以下である。【選択図】 なし

Description

本発明は、電子部品の材料として有用なポリイミドフィルム及び金属張積層板の製造方法に関する。
電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
FPCの一態様として、耐熱性、屈曲性に優れるポリイミドフィルムを絶縁樹脂層として、その上に回路パターンを形成した構造のものが知られている。ポリイミドフィルムは、高い絶縁性、寸法安定性、易成形性、軽量等の特徴を有するために広く用いられている。
ところで、近年、いわゆる5G通信など情報の高速伝送化が要求されており、これらに使用される部品や部材にも高速伝送への対応が求められている。そのため、ポリイミドフィルムについても、高速伝送化に対応した電気特性として低誘電率化、低誘電正接化を図る試みがなされている。ポリイミドフィルムの低誘電率化・低誘電正接化に関する従来技術の多くは、低誘電率・低誘電正接の樹脂(フッ素系樹脂、液晶ポリマーなど)との多層化や、低誘電率・低誘電正接のフィラーの配合といった異種材料との複合化、多孔質化、エステル構造の導入等が主なものであった。しかし、複合化や多孔質化については、加工性が低下するなどの問題があり、エステル構造を導入したものは、フィルム強度が低下するため多量に使用できないという問題がある。
また、特許文献1、2では、ポリイミドの原料モノマー構成を工夫することによって、誘電特性の改善を図り、高周波用回路基板への適用が可能なポリイミドフィルムが提案されている。
WO2017/159274 WO2018/061727
上記のとおり、従来は、ポリイミドフィルムの低誘電正接化のために、多層化、複合化、原料モノマー組成などを工夫してきたが、ポリイミドフィルムを形成する際の製造条件が誘電特性に与える影響については、ほとんど検討されていない。また、ポリイミドフィルムを形成する際の製造条件は、例えば熱膨張係数(CTE)に大きな影響を与えるため、製造条件を変えることでCTEの制御が困難になるという懸念もあった。
従って、本発明の目的は、ポリイミドフィルムを形成するときの製造条件を制御することによって、CTEを大きく変動させることなく、低い誘電正接を有するポリイミドフィルムを製造する方法を提供することである。
本発明者らは鋭意研究の結果、ポリイミド前駆体をイミド化するための熱処理条件を制御することによって、CTEを大きく変動させることなく、誘電正接が低いポリイミドフィルムを製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層が積層されているポリイミドフィルムの製造方法である。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、下記の工程a及びb;
a)前記熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む第1の前駆体層と、前記非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む第2の前駆体層を含む前駆体積層体を形成する工程、
b)前記前駆体積層体を熱処理することによって、前記前駆体をイミド化して前記熱可塑性ポリイミド層及び前記非熱可塑性ポリイミド層を形成する工程、
を含んでいる。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリイミドフィルムは、フィルム全体として、周波数10GHzにおける誘電正接が0.0045以下であるとともに、CTEが10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であり、前記非熱可塑性ポリイミド層のCTEが1ppm/K以上25ppm/Kの範囲内であり、前記熱可塑性ポリイミド層のCTEが35ppm/K以上である。
そして、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記工程bにおける熱処理の最高温度が、前記非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)+80℃以下である。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記工程bにおける熱処理の最高温度が、前記非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)を超える温度である場合、該ガラス転移温度(Tg)を超える温度での熱処理時間が1分間以上30分間以下であってもよい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記工程bにおける熱処理の最高温度が、前記非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)以下であってもよい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドが、酸無水物成分と、ジアミン成分とを反応させて得られるものであり、全ジアミン成分の合計に対して、ビフェニル骨格を有するジアミン成分の占める割合が50モル%以上であってもよい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、フィルム全体の厚みに対する前記非熱可塑性ポリイミド層の厚み比率が70%以上97%以下の範囲内であってもよい。
本発明の金属張積層板の製造方法は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の片側又は両側に積層された金属層と、を備えている金属張積層板の製造方法であって、
前記絶縁樹脂層が、上記いずれかのポリイミドフィルムの製造方法によって製造されたポリイミドフィルムである。
本発明の金属張積層板の製造方法は、前記工程aが、表面粗さRzjisが1.2μm以下である金属箔上に、前記熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液及び前記非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液を塗布することによって、前記前駆体積層体を形成してもよい。
本発明方法によれば、熱処理条件を制御することによって、CTEを所望の範囲に維持しながら、誘電正接が低いポリイミドフィルムを製造することができる。そのため、このポリイミドフィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用した場合に、高周波信号の伝送損失を低減することが可能となり、高速伝送への対応を図ることができる。
熱処理における時間と温度との関係の一例を示す模式図である。 熱処理における時間と温度との関係の別の例を示す模式図である。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。
[ポリイミドフィルムの製造方法]
本実施の形態のポリイミドフィルムの製造方法は、下記の工程a及び工程bを含んでいる。
工程a)熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む第1の前駆体層と、非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む第2の前駆体層を含む前駆体積層体を形成する工程:
工程aでは、前駆体積層体を形成する。前駆体積層体は、第1の前駆体層/第2の前駆体層の2層構造でもよいし、第1の前駆体層/第2の前駆体層/第1の前駆体層の3層構造でもよい。3層構造の場合、両側の第1の前駆体層は、熱可塑性ポリイミドの前駆体である限り、同じ構成でもよいし、異なる構成でもよい。なお、非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドの具体的構成については後述する。
前駆体積層体を形成する方法は、特に制限はなく、例えば、任意の基材上に、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含む溶液(前駆体溶液)を塗布・乾燥することを複数回繰り返すキャスト法や、任意の基材上に、複数種類の前駆体溶液を多層に積層した状態で塗布し、乾燥する多層押出法、テンター装置を用いてゲルフィルムを形成するテンター法でもよい。
前駆体積層体は、2層構造の場合、基材側から、第1の前駆体層/第2の前駆体層の順、又は、第2の前駆体層/第1の前駆体層の順に積層してもよい。3層構造の場合、基材側から、第1の前駆体層/第2の前駆体層/第1の前駆体層の順に積層してもよい。なお、前駆体積層体は、基材から剥離してゲルフィルムの状態で次の工程bに付してもよいが、基材上で工程bのイミド化を行うことが、ポリイミドの配向制御がしやすくなるので好ましい。
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物を溶媒中で反応させることにより合成できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成するポリアミド酸が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
合成されたポリアミド酸の反応溶媒溶液は、そのまま、上記前駆体溶液として使用することが可能であるが、ポリアミド酸は溶媒可溶性に優れるので、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。前駆体溶液の粘度は、500cps~100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。前駆体溶液を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。基材としては、特に限定されるものではないが、金属箔を用いることによって、ポリイミドフィルムを剥離せずに金属張積層板を製造できるので好ましい。なお、金属箔上に前駆体溶液を塗布してポリイミドフィルム又は金属張積層板を製造する方法については後述する。
工程b)前駆体積層体を熱処理することによって、前駆体をイミド化して熱可塑性ポリイミド層と非熱可塑性ポリイミド層を形成する工程:
工程bでは、熱処理によって、前駆体積層体中のポリアミド酸を加熱閉環させるイミド化を実施してポリイミドとし、熱可塑性ポリイミド層及び非熱可塑性ポリイミド層を含む複数層からなるポリイミドフィルムを形成する。なお、本実施の形態では、次に説明するようにイミド化工程における熱処理条件を制御することが重要であるため、前駆体積層体を一括してイミド化する方法が採用される。
ここで、図面を参照しながら、工程bの熱処理について説明する。図1及び図2は、イミド化工程を含む熱処理の温度(縦軸)の変化を時間(横軸)との関係で模式的に示したものである。段階的昇温を行う場合は、図1、図2において太い破線で示している。なお、熱処理の「温度」とは、前駆体積層体の温度を意味する。
図1及び図2において、工程bのイミド化のための熱処理時間は、原則として、横軸のt1からt3までの時間である。すなわち、t1~t2の昇温時間と、t2~t3の最高温度Tmaxでの加熱時間の合計(t1~t3)が工程bの熱処理時間である。横軸のt0からt1より前までの乾燥工程は、工程bの熱処理には含まず、工程aに含まれる。乾燥工程の目的は、溶媒の除去であることから、誘電正接やCTEの制御にほとんど影響を与えることがない。なお、乾燥工程を実施した後に、温度を保持したまま、引き続きt1から工程bのイミド化工程を開始してもよいし、乾燥工程後に一旦温度を降下させてから、再び昇温させて工程bのイミド化工程を開始してもよい。この場合、乾燥工程とイミド化工程との間に時間的な連続性がなくてもよく、例えば冷却などの別の処理が介在してもよい。
また、図1、図2における横軸のt3~t4の降温時間も原則として工程bの熱処理には含まない。熱処理の最高温度Tmaxが非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)付近となる高い温度で熱イミド化を行う場合、最高温度Tmax(t2~t3)で実質的にポリアミド酸のイミド化がほぼ完結することから、それ以降の降温時間で余熱が加えられてもポリイミドフィルムの誘電正接やCTEへの影響をほとんど無視できるためである。ただし、図1に示すように、熱処理の最高温度Tmaxが非熱可塑性ポリイミドのTgを超える温度である場合には、例外的に、Tgを超える温度域での降温時間t3~t6についても熱処理時間に含める。したがって、図1においては、横軸のt1~t6を工程bのイミド化のための熱処理時間とする。
図1は、工程bにおける熱処理の最高温度Tmaxが、非熱可塑性ポリイミドのTgを超える温度である場合を示している。ポリイミドフィルムの製造においては、寸法安定性が制御できる範囲で、可能な限り高い温度でイミド化を進めることが好ましい。ポリイミドよりも分子鎖の運動性が高く、自由度が高いポリアミド酸の構造を多く含有する状態で高温に曝してイミド化することで、分子鎖が規則的に配列しやすい状態となる。その結果、ポリイミド分子鎖の秩序構造が形成され、誘電正接を低下させると考えられる。このように、ポリイミドフィルムのCTEを維持しながら誘電正接を低下させるため、工程bにおける熱処理の最高温度Tmaxを非熱可塑性ポリイミドのTgを超える温度とする場合でも、Tg+80℃以下、好ましくはTg+50℃以下とすることが重要である。Tg+80℃を超える温度で熱処理すると、分子鎖の運動性が過剰に高まり、熱処理時間に関係なく分子鎖がランダムな配向をとり誘電正接を悪化させたり、熱分解が生じたりするおそれがある。
また、図1に示すように、工程bにおける熱処理の最高温度Tmaxが非熱可塑性ポリイミドのTgを超える温度である場合(つまり、最高温度TmaxがTgを超え、Tg+80℃以下の範囲内である場合)、該Tgを超える温度での熱処理時間を、1分間以上30分間以下とすることが好ましく、1分間を超え25分間以下とすることがより好ましい。ここで、「Tgを超える温度での熱処理時間」とは、図1における横軸のt5~t6の合計時間を意味する。Tgを超える温度で30分間を超えて熱処理を行うと、フィルムの熱劣化が生じたり、ポリイミド分子鎖の過剰な運動によりランダムな配向をとり、規則的に配列した構造を消失させるため、誘電正接が悪化する。一方で、Tgを超える温度での熱処理時間が1分間未満では、最高温度TmaxとTgとの差(Tmax-Tg)が20℃以上あると、急速な温度上昇によってフィルム中に残存していた溶剤の急速な揮発に伴う発泡が生じるおそれがある。ただし、Tgを超える温度での熱処理時間が1分間未満であっても、最高温度TmaxとTgとの差(Tmax-Tg)が20℃未満であれば発泡の問題は生じない。
以上のように、Tgを超える温度で熱処理を行う場合は、その間の熱処理時間t5~t6を1分間~30分間の範囲内とすることで、Tgを超えて分子運動性が高まった分子鎖が適度に規則的に配列した構造を形成して、誘電正接を効果的に低下させることができる。
また、熱処理の最高温度Tmaxが非熱可塑性ポリイミドのTgを超える温度である場合は、ポリイミド鎖に低誘電正接化に有利な秩序構造を形成させることを前提に、スループットの確保と溶剤の急速な揮発による発泡抑制とを両立させる観点から、全体の熱処理時間が例えば5分間~180分間の範囲内であることが好ましく、7分間から150分間の範囲内であることがより好ましく、このうち、Tgを超える温度での熱処理時間t5~t6が、例えば1分間~30分間の範囲内であることが好ましい。
図2は、工程bにおける熱処理の最高温度Tmaxが、非熱可塑性ポリイミドのTg以下である場合を示している。このように、工程bにおける熱処理の最高温度Tmaxを、非熱可塑性ポリイミドのTg以下とすることも好ましい。上記のとおり、Tgを超えて熱処理する場合に熱処理時間が長くなるとポリイミド分子鎖がランダムな配列をとり、低誘電正接化に有利な規則的な配列構造が形成されないおそれがあるためである。その一方、イミド化工程の時間を短くするという観点から、イミド化は、寸法安定性が制御できる範囲で可能な限り高い温度で実施することが好ましい。そのため、熱処理の最高温度Tmaxを非熱可塑性ポリイミドのTg以下とする場合における最高温度Tmaxの目安としては、スループットを確保しながら、イミド化を十分に進行させる観点から、例えばTg-20℃以上Tg以下の範囲内の温度とすることが好ましい。
また、熱処理の最高温度Tmaxが、非熱可塑性ポリイミドのTg以下である場合の熱処理時間は、ポリイミド鎖に低誘電正接化に有利な秩序構造を形成させることを前提に、スループットの確保と溶剤の急速な揮発による発泡抑制とを両立させる観点から、全体の熱処理時間が例えば5分間~180分間の範囲内であることが好ましく、7分間~150分間の範囲内であることがより好ましく、このうちTg-20℃以上Tg以下の範囲内の温度での熱処理時間が、例えば1分間~20分間の範囲内であることが好ましい。
なお、図1、図2では、最高温度Tmaxで定常的に推移するt2~t3の時間が明確に存在しているが、これに限定する意味ではなく、定常温度時間を持たず、t2で最高温度Tmaxに到達した直後にイミド化工程が終了し(つまり、t2とt3がほぼ同時になり)、温度降下が開始される温度プロファイルでもよい。
工程b)では、基材上でポリアミド酸のイミド化を完結させることが好ましい。ポリアミド酸を含む前駆体層が基材に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド層の伸縮変化を抑制して、ポリイミドフィルムの厚みや寸法変化を抑制することができる。
以上の方法により製造されるポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層が積層された複数層の積層構造を有する。非熱可塑性ポリイミド層の樹脂成分は、非熱可塑性ポリイミドからなることが好ましい。熱可塑性ポリイミド層の樹脂成分は、熱可塑性ポリイミドからなることが好ましい。ここで、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。また、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にTgが明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、DMAを用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。
本実施の形態の方法により製造されるポリイミドフィルムは、単独のフィルム(シート)であってもよいし、例えば、金属箔、ガラス板、樹脂シート等の基材に積層された状態であってもよい。
また、ポリイミドフィルムは、フィルム全体として、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、0.0045以下であり、0.0040以下であることが好ましい。回路基板の伝送損失を改善するためには、特に絶縁樹脂層の誘電正接を制御することが重要であり、絶縁樹脂層としてのポリイミドフィルムの誘電正接を上記範囲内とすることで、伝送損失を下げる効果が増大する。従って、ポリイミドフィルムを、例えば高周波回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合、伝送損失を効率よく低減できる。10GHzにおける誘電正接が0.0045を超えると、ポリイミドフィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、ポリイミドフィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合の物性制御を考慮する必要がある。
ポリイミドフィルムは、例えば回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、フィルム全体として、10GHzにおける比誘電率が4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましい。10GHzにおける比誘電率が4.0を超えると、ポリイミドフィルムを回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。
製造されるポリイミドフィルムの厚みは、使用する目的に応じて、所定の範囲内の厚みに設定することができる。ポリイミドフィルムの厚みは、例えば8~75μmの範囲内が好ましく、11~50μmの範囲内がより好ましい。ポリイミドフィルムの厚みが上記下限値に満たないと、電気絶縁性が担保出来ないことや、ハンドリング性の低下により製造工程にて取扱いが困難になるなどの問題が生じることがある。一方、ポリイミドフィルムの厚みが上記上限値を超えると、生産性低下などの不具合が生じることがある。
ポリイミドフィルム全体の厚みに対する非熱可塑性ポリイミド層の厚み比率は、70%以上97%以下の範囲内であることが好ましく、75%以上95%以下の範囲内がより好ましい。この比率が70%に満たないとポリイミドフィルム全体に対する非熱可塑性ポリイミド層の厚みが小さくなりすぎるため、CTEの制御が困難になって寸法安定性が損なわれることに加えて、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層のイミド化と秩序構造形成の進行度の差異により、残存溶剤とイミド化進行に伴う縮合水の揮発に起因した発泡が生じやすくなり、97%を超えると熱可塑性ポリイミド層の厚みが小さくなりすぎるため、ポリイミドフィルムと金属層又は回路配線層との接着信頼性が低下しやすくなる。
ポリイミドフィルムは、フィルム全体としてのCTEが10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内である。ポリイミドフィルム全体のCTEを上記範囲内とすることで、金属張積層板を形成した際の反りや寸法安定性の低下を抑制することが可能となる。また、CTEが10ppm/K未満、又は、30ppm/Kを超える場合、反りや寸法安定性の低下によりハンドリング性が低下し、配線加工時の位置ずれ等による加工不良につながるおそれがある。
ポリイミドフィルムにおいて、非熱可塑性ポリイミド層は低熱膨張性のポリイミド層を構成し、熱可塑性ポリイミド層は高熱膨張性のポリイミド層を構成する。ここで、低熱膨張性のポリイミド層は、CTEが好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは3ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内である。
また、高熱膨張性のポリイミド層は、CTEが好ましくは35ppm/K以上、より好ましくは35ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内、更に好ましくは35ppm/K以上70ppm/K以下の範囲内である。ポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件などによって、CTEを所望の値に制御できるが、本実施の形態では、上述のとおりイミド化のための熱処理条件の制御によって、誘電正接を低減させながら、CTEを上記範囲内に維持することができる。
本実施の形態の方法により得られるポリイミドフィルムは、必要に応じて、非熱可塑性ポリイミド層又は熱可塑性ポリイミド層中に、無機フィラーや有機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等の無機フィラーや、フッ素系ポリマー粒子、液晶ポリマー粒子等の有機フィラーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
次に、非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミド層を構成するポリイミドについて説明する。ポリイミドは、上記のとおり、ポリアミド酸をイミド化してなるものであり、特定の酸無水物とジアミン化合物とを反応させて製造されるので、酸無水物とジアミン化合物を説明することにより、非熱可塑性ポリイミド及び熱可塑性ポリイミドの具体例が理解される。
<非熱可塑性ポリイミド>
(酸無水物)
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、原料の酸無水物として、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)の少なくとも1種、並びに、ピロメリット酸二無水物(PMDA)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の少なくとも1種を使用することが好ましい。
この場合、全酸無水物の合計に対して、BPDA及びTAHQの合計を、好ましくは20モル%以上80モル%以下の範囲内、より好ましくは20モル%以上60モル%以下の範囲内で使用することがよい。また、全酸無水物の合計に対して、PMDA及びNTCDAの合計を、好ましくは20モル%以上80モル%以下の範囲内、より好ましくは40モル%以上80モル%以下の範囲内で使用することがよい。
非熱可塑性ポリイミドは、BPDA、TAHQ、PMDA、NTCDA以外の酸無水物として、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を原料として用いることができる。
(ジアミン化合物)
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、原料の全ジアミン成分の合計に対して、2つのベンゼン環が単結合したビフェニル骨格を有するジアミン成分(ビフェニル型ジアミン)の占める割合が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上が更に好ましい。ビフェニル型ジアミンを全ジアミン中の50モル%以上とすることで、ポリイミド鎖が低誘電正接化に有利な規則的に配列した構造を取りやすくなる。また、非熱可塑性ポリイミド層のCTEを1ppm/K以上25ppm/Kの範囲内に制御可能となり、低誘電正接と高い寸法安定性の両立が可能となる。ビフェニル型ジアミンが50モル%未満では、CTEが過大となり、金属張積層板の状態での反り発生による加工時のハンドリング性の悪化が生じたり、寸法安定性が低下する恐れがある。
ビフェニル型ジアミンとしては、一般式(A1)で表されるジアミン化合物を用いることが好ましい。
Figure 2022047880000001
一般式(A1)において、Xは独立にフッ素原子で置換されてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、n1及びnは独立に1~4の整数を示す。なお、上記式(A1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
一般式(A1)で表されるジアミン化合物(以下、「ジアミン(A1)」と記すことがある)は、ビフェニル骨格を有する芳香族ジアミンであり、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。ジアミン(A1)としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EB)、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)等を挙げることができる。
非熱可塑性ポリイミドは、ジアミン(A1)以外のジアミン化合物として、例えば、後述する一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物のほか、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA;パラフェニレンジアミン)、4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EOB)、2,2’-ジプロポキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-POB)、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル(VAB)、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)、4、4''―ジアミノ-p-テルフェニル(DATP)、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、6-アミノ-2-(4-アミノフェノキシ)ベンゾオキサゾール等の芳香族ジアミン化合物や、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン等の脂肪族ジアミン化合物を原料として使用することができる。
非熱可塑性ポリイミドは、原料の酸無水物及びジアミン化合物の種類や、2種以上の酸無水物及びジアミン化合物を使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、CTE、貯蔵弾性率、引張弾性率等を制御することができる。また、非熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
非熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、実装に耐えうる耐熱性と寸法安定性の付与、熱処理温度条件による誘電特性の制御の理由から、Tgが280℃以上400℃以下の範囲内であることが好ましく、300℃以上380℃以下の範囲内であることがより好ましい。
<熱可塑性ポリイミド>
(酸無水物)
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、原料の酸無水物として、上記非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドにおける酸無水物として例示したものを用いることができる。
(ジアミン化合物)
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、原料のジアミン化合物として、一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物を用いることが好ましい。
Figure 2022047880000002
式(B1)~(B7)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CH-、-C(CH-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。ここで、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR若しくは複数のnが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(B1)~(B7)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物は、いずれも高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。
式(B1)で表されるジアミン化合物としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
式(B2)で表されるジアミン化合物としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
式(B3)で表されるジアミン化合物としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B4)で表されるジアミン化合物としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
式(B5)で表されるジアミン化合物としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B6)で表されるジアミン化合物としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
式(B7)で表されるジアミン化合物としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン化合物の合計100モル部に対して、式(B1)~(B7)から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を70モル部以上、好ましくは70モル部以上99モル部以下の範囲内、より好ましくは80モル部以上95モル部以下の範囲内で使用することがよい。式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物の合計量が全ジアミン化合物の100モル部に対して70モル部未満であるとポリイミドの柔軟性が不足し、十分な熱可塑性が得られない。
また、熱可塑性ポリイミドの原料のジアミン化合物としては、一般式(A1)で表されるジアミン化合物も好ましい。式(A1)で表されるジアミン化合物[ジアミン(A1)]については、非熱可塑性ポリイミドの説明で述べたとおりである。熱可塑性ポリイミドは、ジアミン(A1)を、好ましくは1モル部以上30モル部以下の範囲内、より好ましくは5モル部以上20モル部以下の範囲内で使用することがよい。ジアミン(A1)を上記範囲内の量で使用することによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されるので、熱可塑性でありながら、ガス透過性及び吸湿性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
熱可塑性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記以外のジアミン化合物を原料として使用することができる。
熱可塑性ポリイミドにおいて、原料の酸無水物及びジアミン化合物の種類や、2種以上の酸無水物及びジアミン化合物を使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、CTE、引張弾性率、Tg等を制御することができる。また、熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、金属箔との密着性を向上させるため、Tgが200℃以上350℃以下の範囲内であることが好ましく、200℃以上320℃以下の範囲内であることがより好ましい。
また、熱可塑性ポリイミドは、例えば回路基板の絶縁樹脂における接着層となるため、銅の拡散を抑制するために完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出される。
[金属張積層板の製造方法]
本実施の形態に係る金属張積層板の製造方法は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の片側又は両側に積層された金属層と、を備えた金属張積層板を製造する方法であり、絶縁樹脂層が、上記工程a及び工程bを含む方法によって製造されたポリイミドフィルムである。
上記工程aでは、基材として金属箔を用い、金属箔上に、熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液及び非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液を塗布することによって、前駆体積層体を形成することが好ましい。金属箔の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。
また、金属箔は、前駆体溶液を塗布する側の表面粗さRzjisが1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。金属箔の表面粗さRzjisを1.2μm以下にすることで、高密度実装に対応する微細配線加工が可能となり、また、高周波信号伝送時の導体損失を低減できるため、高周波信号伝送用の回路基板への適用が可能となる。表面粗さRzjisが1.2μmを超える場合、微細配線加工時の配線形状が悪化して加工が困難になり、また、導体損失が増大して高周波信号伝送に不向きとなる。
金属箔の厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。
[回路基板の製造方法]
本実施の形態に係る回路基板の製造方法は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の片側又は両側に積層された配線層と、を備えている回路基板を製造する方法であり、絶縁樹脂層が、上記工程a及び工程bを含む方法によって製造されたポリイミドフィルムである。
すなわち、回路基板は、上記金属張積層板の金属層を配線加工してなるものである。金属張積層板の金属層を常法によってパターン状に加工して配線層(導体回路層)を形成することによって、FPCなどの回路基板を製造できる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[粘度の測定]
粘度の測定は、E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[比誘電率及び誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)およびSPDR共振器を用いて樹脂シートを温度;23℃、湿度;50%の条件下で、24時間放置した後、周波数10GHzにおける比誘電率(ε)および誘電正接(Tanδ)を測定した。
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。なお、250℃よりもガラス転移温度が低いポリイミドフィルムはガラス転移温度未満から100℃までの線熱膨張係数を求めた。
[ガラス転移温度の測定]
ガラス転移温度は、5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行い、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。なお、DMAを用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満を示すものを「熱可塑性」とし、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上を示すものを「非熱可塑性」とした。
[銅箔の表面粗さの測定]
触針式表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、商品名;サーフコーダET-3000)を用い、Force;100μN、Speed;20μm、Range;800μmの測定条件によって、十点平均粗さ(Rzjis)を測定した。なお、表面粗さの算出は、JIS-B0601:1994に準拠した方法により算出した。
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
TFMB:4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル
m-TB:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
DAPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
BPDA:3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
(合成例1)
撹拌機と窒素ガス導入管を備えた反応容器に、窒素気流下で、178.010重量部のTPE-R(0.609モル部)、32.318重量部のm-TB(0.152モル部)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、159.117重量部のBPDA(0.541モル部)及び50.555重量部のPMDA(0.232モル部)を添加した後、室温で24時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを得た。ポリアミド酸溶液aの溶液粘度は2,700cpsであった。
(合成例2)
窒素気流下で、合成例1と同様の反応容器に、139.923重量部のTFMB(0.437モル部)、83.925重量部のm-TB(0.395モル部)、60.825重量部のTPE-R(0.208モル部)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、60.606重量部のBPDA(0.206モル部)及び179.721重量部のPMDA(0.824モル部)を添加した後、室温で24時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを得た。ポリアミド酸溶液bの溶液粘度は24,800cpsであった。
(合成例3)
窒素気流下で、合成例1と同様の反応容器に、164.240重量部のDAPE(0.820モル部)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、237.869重量部のBTDA(0.738モル部)及び17.891重量部のPMDA(0.082モル部)を添加した後、室温で24時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液cを得た。ポリアミド酸溶液cの溶液粘度は4,200cpsであった。
(作製例1)
銅箔上に、ポリアミド酸溶液aを均一に塗布し、120℃で3分間加熱乾燥して溶媒を除去し、熱処理後の厚みが約25μmとなるようにした。その後、130℃から360℃まで段階的に昇温させて、イミド化を行い、片面銅張積層板を調製した。塩化第二鉄水溶液を用いてこの片面銅張積層板の銅箔をエッチング除去して得たポリイミドフィルムは、熱可塑性、ガラス転移温度は244℃、230℃から100℃のCTEは52.0ppm/Kであった。
(作製例2)
ポリアミド酸溶液aの代わりにポリアミド酸溶液bを用いた以外は、作製例1と同様にして得たポリイミドフィルムは非熱可塑性、ガラス転移温度は314℃、CTEは17.1ppm/Kであった。
(作製例3)
ポリアミド酸溶液aの代わりにポリアミド酸溶液cを用いた以外は、作製例1と同様にして得たポリイミドフィルムは熱可塑性、ガラス転移温度は282℃、CTEは55.1ppm/Kであった。
[実施例1]
圧延銅箔(Rzjis;0.4μm)の表面に、ポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、140℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上にポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが約46μmとなるように均一に塗布した後、90~120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、140℃で加熱乾燥し溶媒を除去して、ポリアミド酸膜を備えた金属積層体1を得た。
このポリアミド酸膜を備えた金属積層体1を表1に示す条件で140℃から360℃までの段階的な昇温と、最高温度に到達後直ちに開始した冷却過程の一部を含む熱処理を合計120.0分間行ってイミド化を完結させて、ポリイミドフィルムを備えた片面金属張積層板1を得た。なお、ポリアミド酸溶液bを熱処理して得た非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(314℃)を超えた温度での熱処理時間は25.0分間であった。
得られた片面金属張積層板1について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム1を得た。得られたポリイミドフィルム1の比誘電率は3.2、誘電正接は0.0040、CTEは21ppm/Kであった。
[実施例2]
実施例1と同様にして得られたポリアミド酸膜を備えた金属積層体1を表1に示す条件で140℃から300℃まで段階的な昇温、熱処理を合計240.0分間行ってイミド化を完結させた後、直ちに冷却して、ポリイミドフィルムを備えた片面金属張積層板2を得た。なお、非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(314℃)より20℃低い温度である294℃以上での熱処理時間は、9.0分間であった。
得られた片面金属張積層板2について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム2を得た。得られたポリイミドフィルム2の比誘電率は3.2、誘電正接は0.0042、CTEは23ppm/Kであった。
[実施例3]
圧延銅箔(Rzjis;0.4μm)の表面に、ポリアミド酸溶液aを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、140℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。次に、その上にポリアミド酸溶液bを硬化後の厚みが約46μmとなるように均一に塗布した後、90~120℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液cを硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、140℃で加熱乾燥し溶媒を除去して、ポリアミド酸膜を備えた金属積層体2を得た。
このポリアミド酸膜を備えた金属積層体2を表1に示す条件で140℃から360℃までの段階的な昇温と、最高温度に到達後直ちに開始した冷却過程の一部を含む熱処理を合計120.0分間行ってイミド化を完結させて、ポリイミドフィルムを備えた片面金属張積層板3を得た。なお、314℃を超えた温度での熱処理時間は25.0分間であった。
得られた片面金属張積層板3について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム3を得た。得られたポリイミドフィルム3の比誘電率は3.2、誘電正接は0.0042、CTEは20ppm/Kであった。
[実施例4]
実施例3と同様にして得られたポリアミド酸膜を備えた金属積層体2を表1に示す条件で140℃から300℃まで段階的な昇温、熱処理を合計240.0分間行い、イミド化を完結させた後、直ちに冷却して、ポリイミドフィルムを備えた片面金属張積層板4を得た。なお、非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(314℃)より20℃低い温度である294℃以上での熱処理時間は、9.0分間であった。
得られた片面金属張積層板4について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム4を得た。得られたポリイミドフィルム4の比誘電率は3.2、誘電正接は0.0044、CTEは21ppm/Kであった。
比較例1
実施例1と同様にして得られたポリアミド酸膜を備えた金属積層体1を表1に示す条件で140℃から360℃までの段階的な昇温と、最高温度に到達後直ちに開始した冷却過程の一部を含む熱処理を合計240.0分間行ってイミド化を完結させて、ポリイミドフィルムを備えた片面金属張積層板5を得た。なお、314℃を超えた温度での熱処理時間は50.0分間であった。
得られた片面金属張積層板5について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム5を得た。得られたポリイミドフィルム5の比誘電率は3.2、誘電正接は0.0099、CTEは20ppm/Kであった。
比較例2
実施例3と同様にして得られたポリアミド酸膜を備えた金属積層体2を表1に示す条件で140℃から360℃までの段階的な昇温と、最高温度に到達後直ちに開始した冷却過程の一部を含む熱処理を合計240.0分間行ってイミド化を完結させて、ポリイミドフィルムを備えた片面金属張積層板6を得た。なお、314℃を超えた温度での熱処理時間は50.0分間であった。
得られた片面金属張積層板6について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム6を得た。得られたポリイミドフィルム6の比誘電率は3.2、誘電正接は0.0104、CTEは18ppm/Kであった。
比較例3
実施例1と同様にして得られたポリアミド酸膜を備えた金属積層体1を表1に示す条件で140℃から360℃までの段階的な昇温と、最高温度に到達後直ちに開始した冷却過程の一部を含む熱処理を合計6.0分間行い、イミド化を完結させてポリイミドフィルムを備えた片面金属張積層板7を得た。なお、314℃を超えた温度での熱処理時間は0.4分間であった。得られた片面金属張積層板7は、全面に発泡が生じ、特性評価はできなかった。
以上の実施例、比較例の結果を表1に示した。
Figure 2022047880000003
実施例及び比較例の結果より、非熱可塑性ポリイミド層のガラス転移温度と熱処理温度、時間により、誘電正接は大きく変化しており、ガラス転移温度を超える熱処理温度で50分以上の処理を行った比較例1、2では著しく誘電正接を悪化させる結果となり、また、ガラス転移温度を超える温度での熱処理時間が0.4分間と短い比較例3では発泡が発生した。従って、本発明の熱処理条件を適用することで、外観良好で、CTEは10~30ppm/K、誘電正接0.0045以下を満たすポリイミドフィルムを製造可能である。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。

Claims (7)

  1. 非熱可塑性ポリイミドを含む非熱可塑性ポリイミド層の片面又は両面に熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性ポリイミド層が積層されているポリイミドフィルムの製造方法であって、
    下記の工程a及びb;
    a)前記熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む第1の前駆体層と、前記非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む第2の前駆体層を含む前駆体積層体を形成する工程、
    b)前記前駆体積層体を熱処理することによって、前記前駆体をイミド化して前記熱可塑性ポリイミド層及び前記非熱可塑性ポリイミド層を形成する工程、
    を含み、
    前記ポリイミドフィルムは、フィルム全体として、周波数10GHzにおける誘電正接が0.0045以下であるとともに、CTEが10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であり、
    前記非熱可塑性ポリイミド層のCTEが1ppm/K以上25ppm/Kの範囲内であり、前記熱可塑性ポリイミド層のCTEが35ppm/K以上であり、
    前記工程bにおける熱処理の最高温度が、前記非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)+80℃以下であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
  2. 前記工程bにおける熱処理の最高温度が、前記非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)を超える温度である場合、該ガラス転移温度(Tg)を超える温度での熱処理時間が1分間以上30分間以下である請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  3. 前記工程bにおける熱処理の最高温度が、前記非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)以下である請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  4. 前記非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、酸無水物成分と、ジアミン成分とを反応させて得られるものであり、全ジアミン成分の合計に対して、ビフェニル骨格を有するジアミン成分の占める割合が50モル%以上である請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  5. フィルム全体の厚みに対する前記非熱可塑性ポリイミド層の厚み比率が70%以上97%以下の範囲内である請求項1から4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  6. 絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の片側又は両側に積層された金属層と、を備えている金属張積層板の製造方法であって、
    前記絶縁樹脂層が、請求項1から5のいずれか1項に記載に記載のポリイミドフィルムの製造方法によって製造されたポリイミドフィルムであることを特徴とする金属張積層板の製造方法。
  7. 前記工程aが、表面粗さRzjisが1.2μm以下である金属箔上に、前記熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液及び前記非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含む溶液を塗布することによって、前記前駆体積層体を形成する請求項6に記載の金属張積層板の製造方法。

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