JP2024046199A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】低温低湿下でのカブリが抑制される、静電荷像現像用トナーに関すること。【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と外添剤とを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記外添剤が、帯電極性が前記トナー母粒子に対して逆極性であり、個数平均粒径のBET換算粒径に対する比で表される形状指数が2.0以上であるシリカ粒子Aを含有する、静電荷像現像用トナー。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
従来、静電荷像現像用トナーには、帯電性や流動性の観点から、外添剤が用いられている。通常、負帯電性トナーには負帯電性の外添剤が、正帯電性トナーには正帯電性の外添剤が使用されているが、トナー母粒子に対して逆極性の外添剤の添加や、正帯電性の外添剤と負帯電性の外添剤の併用が検討されている。
特許文献1には、結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子と、外添剤とを含有する静電荷像現像用正帯電性トナーにおいて、前記外添剤が、表面処理された負帯電性シリコーン樹脂粒子であり、前記負帯電性シリコーン樹脂粒子の個数平均粒径が0.3~3μmであり、かつ吸着水分量が0.20質量%以下であり、前記着色樹脂粒子100質量部に対して、前記負帯電性シリコーン樹脂粒子の含有量が0.05~2.0質量部であることを特徴とする静電荷像現像用正帯電性トナーが開示されている。
特許文献2には、結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー母粒子と外添剤とを有するトナーであって、該外添剤は複合酸化物粒子(a)及びシリカ粒子(b)を含有し、且つ所定の条件(A)~(C)を満足することを特徴とする静電荷像現像用トナーに関する発明が開示されており、シリカ粒子(b)と共に、シリカ粒子(b)に対して逆極性に帯電する粒子(c)を有していてもよいと記載されている。
特開2016-126140号公報 特開2014-142605号公報
トナー母粒子と逆極性の外添剤は、静電気力により同極性同士の組み合わせに比べると外添剤の付着力が大きいものの、低温低湿下では外添剤が脱離し易く、それにより帯電性が低下し、カブリが生じる原因となる。
本発明は、低温低湿下でのカブリが抑制される、静電荷像現像用トナーに関する。
本発明は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と外添剤とを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記外添剤が、帯電極性が前記トナー母粒子に対して逆極性であり、個数平均粒径のBET換算粒径に対する比で表される形状指数が2.0以上であるシリカ粒子Aを含有する、静電荷像現像用トナーに関する。
本発明の静電荷像現像用トナーは、低温低湿下でのカブリが抑制されるという優れた効果を奏するものである。
従来のシリカ粒子の概略断面図の一例である。 接合シリカ粒子の概略断面図の一例である。
本発明の静電荷像現像用トナーは、外添剤として含有する、帯電極性がトナー母粒子に対して逆極性のシリカ粒子(シリカ粒子A)の形状に大きな特徴を有するものである。
通常、粒子の粒径とBET比表面積は負の相関関係にある。即ち、個数平均粒径が大きくなるほど、BET比表面積は小さくなる。これに対し、本発明におけるシリカ粒子Aは、同程度の個数平均粒径のシリカ粒子と対比して、個数平均粒径が大きいにもかかわらず、BET比表面積が大きく、BET比表面積から換算されるBET換算粒径(粒径)は小さいため、個数平均粒径のBET換算粒径に対する比(形状指数)の値も大きいという特徴を有する。このような特徴は、シリカ粒子Aの形状に起因しており、通常、シリカ粒子は一部凝集状態で存在しているが、一般的に、シリカ粒子の凝集体は図1に示すように密に凝集しているのに対し、シリカ粒子Aに含まれる凝集体は、図2に示すようにシリカ粒子間に間隙があり、テトラポッドのように表面に明確な凸部を複数有している。このような形状のシリカ粒子(以下、「接合シリカ粒子」ともいう)は、トナー母粒子表面と多点で付着できるため、脱離し難い。
一方、低温低湿下ではトナー母粒子と外添剤との間に働く液架橋力が低下し、外添剤の付着力が低下しやすい。
しかしながら、本発明では、上記形状を有するシリカ粒子Aが、トナー母粒子に対して逆極性であることから、静電気力によりさらに強固にトナー母粒子に付着している。そのため、トナー同士での摩擦帯電時等にシリカ粒子がトナー表面で転がりにくく、シリカ粒子同士の大凝集を起こし難いため、トナー母粒子に対して逆極性のシリカ粒子を添加しているにも関わらず、帯電能が低下し難く、カブリの発生を抑制できるものと推察される。
シリカ粒子Aの形状指数は、2.0以上であり、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.7以上、さらに好ましくは2.9以上であり、そして、トナーの耐久性の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは7.0以下、さらに好ましくは5.0以下である。なお、本発明において、シリカ粒子の形状指数とは、個数平均粒径のBET換算粒径に対する比(個数平均粒径/BET換算粒径)から算出される値である。
シリカ粒子AのBET比表面積は、トナー母粒子表面からの脱離抑制の観点から、好ましくは70m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上、さらに好ましくは85m2/g以上であり、そして、好ましくは150m2/g以下、より好ましくは130m2/g以下、さらに好ましくは100m2/g以下である。
シリカ粒子Aの個数平均粒径は、トナー母粒子表面からの脱離抑制の観点から、好ましくは80nm以上、より好ましくは90nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、そして、好ましくは130nm以下、より好ましくは120nm以下、さらに好ましくは110nm以下である。なお、本明細書において、シリカ粒子の個数平均粒径は、一次粒子のみならずシリカ粒子の凝集体も1粒子として測定されたものである。
通常、粒径の大きい外添剤はファンデルワールス力が低いが、シリカ粒子Aは、粒径が大きくても、前記のように、トナー母粒子表面との多点での付着と静電気力により、トナー母粒子に強固に付着できる。
シリカ粒子Aは、好ましくは沈降法により、温水中で水ガラスと硫酸とを反応させて、生じるシリカの沈殿をろ過、水洗、乾燥させることにより製造することができる。反応条件(温度、水ガラス及び硫酸の水中への滴下速度、シリカの沈降時間等)を調整することで、得られるシリカ粒子の個数平均粒径やBET比表面積を調整することができる。
シリカ粒子A及び/又は後述のシリカ粒子Bは、表面に疎水化処理が施されていることが好ましい。疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、ポリジメチルシロキサン、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、サイクリックシラザン等が挙げられる。市販品を用いてもよいが、例えば、シリカ粒子Aの場合は、前記方法により得られた接合シリカ粒子に、これらの疎水化処理剤の1種類を単独で、又は2種類以上の場合は混合するか、もしくは段階的に表面処理して、用途に応じて要求される表面処理特性を付与することができる。
シリカ粒子Aは、前記のように、帯電極性が、トナー母粒子に対して逆極性である。従って、正帯電性のトナー母粒子には、負帯電性のシリカ粒子Aを、負帯電性のトナー母粒子には、正帯電性のシリカ粒子Aを用いる。トナー母粒子とシリカ粒子の帯電性は、鉄粉との摩擦帯電により測定される帯電量の符号によって確認することができるが、トナー母粒子の場合、含有している荷電制御剤や用いる樹脂の種類等によって、シリカ粒子の場合、表面処理剤や官能基等によって、判断することもできる。本発明において、トナー母粒子の帯電極性は、使用するプリンターの特性に対応して選択すればよいが、本発明の効果がより顕著に発揮されることから、正帯電性であることが好ましい。
シリカ粒子は、帯電極性制御の観点から、表面処理剤により処理されていることが好ましく、表面処理剤によって自身が有する帯電極性とは逆の帯電極性を付与することもできる。シリカ粒子は負帯電性であるが、表面処理剤に正帯電能付与基を導入することによって、正帯電性のシリカ粒子として用いることもできる。
汎用的な表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコーンオイル等の疎水化処理剤等が挙げられる。
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコーンオイル等の疎水化処理剤は、それ自体はシリカ粒子の帯電性に影響を及ぼすものではないが、疎水化処理剤に正帯電能付与基を導入することで負帯電性のシリカ粒子に正帯電性を付与することができる。
正帯電能付与基としては、アミノ基等が挙げられる。
シリカ粒子Aの含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。
外添剤は、トナーの帯電性の観点から、さらに、帯電極性がトナー母粒子と同極性であるシリカ粒子Bを含有することが好ましい。
正帯電性シリカの市販品としては、「RA 50 H」、「NA 50 Y」、「NA 50 H」、「REA 90」、「RA 200H」、「RA 200 HS」、「REA 200」、「NA 300 H」、(以上、日本アエロジル(株))、「TG-828F」、「TG-820F」、「TG-7120」、「TG-6120F」(以上、キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク)等が挙げられる。
負帯電性シリカの市販品としては、「RY 50」、「RY 50 L」、「RX 50」、「NY 50」、「NY 50 L」、「R 972」、「RY 200 S」、「NX 130」、「R 974」、「RY 200 L」、「RX 200」、「R 805」、「NK 200」、「R 976」、「R 976 S」、「RY 300」、「RX 300」(以上、日本アエロジル(株))、「TG-811F」、「TG-810G」、「TG-815F」、「TG-3110」、「TG-3155F」、「TG-308F」、「TG-3130」、「TG-7180」、「TG-7110」、「TG-6110G」、「TG-709G」、「TG-5110」、「TG-5150」、「TG-5180」、「TG-C413」、「TG-C390」、「TG-C243」、「TG-C110」、「TG-C191」、「TG-C6020」(以上、キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク)等が挙げられる。
シリカ粒子Bの個数平均粒径は、好ましくは4nm以上、より好ましくは6nm以上、さらに好ましくは7nm以上であり、そして、トナー帯電立ち上がり性の観点から、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。
耐久性の観点から、シリカ粒子Bの個数平均粒径は、シリカ粒子Aより小さいことが好ましく、シリカ粒子Aとシリカ粒子Bの個数平均粒径の差は、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは130nm以下、より好ましくは110nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
シリカ粒子Bの形状指数は、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.4以下であり、そして、トナーの流動性の観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、さらに好ましくは1.0以上である。形状に特段の特徴を有していない市販されているシリカ粒子の形状指数は、通常2.0未満である。
シリカ粒子Bの含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上であり、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
シリカ粒子Aのシリカ粒子Bに対する質量比は、シリカ粒子Bの埋没抑制の観点から、好ましくは1/5以上、より好ましくは1/2以上、さらに好ましくは1/1以上であり、そして、トナーの流動性の観点から、好ましくは6/1、より好ましくは5/1以下、さらに好ましくは4.5/1以下である。
シリカ粒子Aの含有量、シリカ粒子Bが併用されている場合は、シリカ粒子Aとシリカ粒子Bの合計含有量は、外添剤中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
外添剤の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。
トナー母粒子は、結着樹脂と着色剤を含有する。
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられるが、本発明では、低温定着性及び製造安定性の観点から、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂は、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、式(I):
Figure 2024046199000001
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表される化合物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、低温定着性の観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
他のアルコール成分としては、脂肪族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
カルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸系化合物、脂肪族ジカルボン酸系化合物、3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
カルボン酸成分は、画像濃度の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、好ましくは90モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、炭化水素基で置換されたコハク酸誘導体、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸系化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含有されていてもよい。
カルボン酸成分のカルボキシ基のアルコール成分の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.15以下である。
ポリエステル樹脂は、例えば、原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、錫化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、原料モノマー100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂の軟化点は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、耐熱保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。
ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
結着樹脂の含有量は、トナー母粒子中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
トナー母粒子には、結着樹脂及び着色剤以外に、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよく、離型剤及び荷電制御剤が含有されることが好ましい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
トナー母粒子の製造方法は、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法であってもよいが、生産性の観点から、溶融混練法が好ましい。溶融混練法によりトナー母粒子を製造する場合、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
トナー母粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
トナー母粒子と外添剤との混合による外添処理は、常法に従って行うことができ、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いることができる。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定することができる。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に昇温速度10℃/minで150℃まで昇温しながら測定する。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン(株)製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔トナー母粒子の体積中位粒径(D50)〕
・測定機:コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)
・アパチャー径:100μm
・解析ソフト:マルチサイザーIII バージョン 3.51(ベックマン・コールター(株)製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター(株)製)
・分散液:電解液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王(株)製、HLB(グリフィン)=13.6〕を溶解して5質量%に調整したもの
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔外添剤の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値を個数平均粒径とする。ここで、SEM写真から観察される粒子において、凝集体も1粒子としてカウントすることとする。
〔外添剤のBET比表面積〕
下記条件で、窒素吸着法により測定する。
・測定装置:比表面積測定装置「Micromeritics FlowSorbIII」((株)島津製作所製)
・サンプル量:0.04~0.08g
・脱気条件:40℃、10分間
・吸着ガス:窒素ガス
〔外添剤のBET換算粒径〕
下記式に基づいて算出する。
BET換算粒径=6000/([BET比表面積]×ρ(密度))
〔外添剤の形状指数〕
下記式に基づいて算出する。
形状指数=[個数平均粒径]/[BET換算粒径]
樹脂製造例1
表1に示す、アルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃に昇温して6時間反応させた。さらに、210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させ、さらに40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂Aを得た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
Figure 2024046199000002
樹脂製造例2
温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、滴下ロート及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに、キシレン2Lを入れ、滴下ロートに、スチレン880g、n-ブチルアクリレート220g、及びラジカル重合開始剤としてジブチルパーオキシド100gを入れた。窒素雰囲気下、撹拌しながらキシレンを135℃に昇温し、滴下ロート内の混合物を1時間かけて滴下した。その後、200℃まで昇温し、200℃で2時間保持した後、さらにフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持し、キシレンを除去してスチレンアクリル樹脂(樹脂B)を得た。得られた樹脂の軟化点は115℃、ガラス転移温度は54℃であった。
接合シリカ粒子の製造例1
下記方法により、沈降法によって接合シリカ粒子を製造した。
金属製撹拌棒、滴下ノズル、加熱装置、及び温度計を備えた3リットル容のガラスフラスコに、水1000mLを入れて80℃に加熱した。次に、撹拌下でpH値9に維持しながら、水ガラス184mL及び硫酸818mLを1時間かけて滴下してシリカを20分間沈降させた。その後、引き続き硫酸を滴下することでpH値3.5にした。そして沈降したシリカを、懸濁液から分離し水で洗浄した後、乾燥させてシリカ微粉体を得た。
得られたシリカ微粉体100質量部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下、水5質量部とヘキサメチルジシラザン10質量部を添加した。この反応混合物を150℃で2時間攪拌し、さらに220℃で2時間、窒素気流下で攪拌して乾燥した。これを冷却することにより、疎水性のシリカ粒子A1を得た。
接合シリカ粒子の製造例2
水ガラス及び硫酸の滴下時間を70分間に、シリカの沈降時間10分間に、それぞれ調整した以外は製造例1と同様にして、シリカ粒子A1とは個数平均粒径とBET比表面積の異なる、疎水性のシリカ粒子A2を得た。
接合シリカ粒子の製造例3
水ガラス及び硫酸の滴下時間を50分間、シリカの沈降時間を30分間に、それぞれ調整した以外は製造例1と同様にして、シリカ粒子A1とは個数平均粒径とBET比表面積の異なる、疎水性のシリカ粒子A3を得た。
接合シリカ粒子の製造例4
製造例1において、ヘキサメチルジシラザンの代わりにアミノ変性シリコーンオイルを使用した以外は、シリカ粒子A1と同様にして、疎水性のシリカ粒子A4を得た。
シリカ粒子A1~A4及び実施例、比較例で使用するシリカ粒子A5の物性を表2に示す。
Figure 2024046199000003
実施例1~3、5及び比較例2、3
表3に示す結着樹脂100質量部、離型剤「NP-055」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:145℃)1.0質量部と、正帯電性荷電制御剤「ボントロンN-04」(オリヱント化学工業(株)製)1.0質量部及び着色剤「REGAL 330R」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製)5.0質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
同方向回転二軸押出機「PCM-30」((株)池貝製、軸の直径 2.9cm、軸の断面積 7.06cm2)を使用した。運転条件は、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)、混合物供給速度 10kg/h(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 1.42kg/h・cm2)であった。
得られた混練物を冷却し、粉砕機「ロートプレックス」(ホソカワミクロン(株)製)により粗粉砕し、目開きが2mmのふるいを用いて体積中位粒径が2mm以下の粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、DS2型気流分級機(衝突板式、日本ニューマチック(株)製)を用いて体積中位粒径が8.0μmになるように粉砕圧を調整して微粉砕した。得られた微粉砕物を、DSX2型気流分級機(日本ニューマチック(株)製)を用いて体積中位粒径が8.5μmになるように静圧(内部圧力)を調整して分級を行い、トナー母粒子を得た。
得られたトナー母粒子100質量部と、表3に示すシリカ粒子A 2質量部及びシリカ粒子Bとして正帯電性疎水性シリカ「TG-820F」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製、個数平均粒径:8nm、形状指数:1.0、疎水化処理剤:HMDS及びサイクリックシラザン)0.5質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)を用いて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
実施例4及び比較例1
正帯電性荷電制御剤の代わりに、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリエント化学工業(株)製)1.0質量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナー母粒子を得た。
得られたトナー母粒子100質量部と、表3に示すシリカ粒子A 2質量部及びシリカ粒子Bとして負帯電性疎水性シリカ「R 972」(日本アエロジル社製、個数平均粒径:16nm、形状指数:1.0、疎水化処理剤:DMDS)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)を用いて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
試験例〔低温低湿下でのカブリ〕
トナー母粒子の帯電極性が正の場合は、クリーナーレス現像システムを具備するプリンター「HL-2040」(ブラザー工業(株)製)に、トナー母粒子の帯電極性が負の場合は、非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)に、トナーを充填し、温度10℃、湿度20%の条件下で、1ページ20秒間欠の条件で印字率1%の画像を5000枚印字した。次に、白ベタ画像を印刷し、その印刷途中で電源を切断した。その後、感光体表面のトナーを「Scotch(登録商標)メンディングテープ 810」(住友スリーエム(株)製、幅:18mm)にて付着させ、画像濃度測定器「GRETAG SPM50」(GRETAG社製)にて等間隔に5か所の着色濃度の測定を行い、トナーを付着させる前のテープ自身の着色濃度との差を求め、測定値の平均を求めた。結果を表3に示す。値が小さいほど、カブリが抑制されていることを示す。
Figure 2024046199000004
以上の結果より、比較例1~3と対比して、実施例1~5では、低温低湿下でのカブリが抑制されていることが分かる。トナー母粒子と同極性のシリカ粒子を外添した比較例1、2では、シリカ粒子が外れやすく、通常の大粒径のシリカ粒子を外添した比較例3では、シリカ粒子の付着力が弱く、トナー表面での移動によりシリカ粒子に大凝集が生じ、シリカ粒子が脱離してしまうものと推察される。
本発明の静電荷像現像用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (5)

  1. 結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と外添剤とを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記外添剤が、帯電極性が前記トナー母粒子に対して逆極性であり、個数平均粒径のBET換算粒径に対する比で表される形状指数が2.0以上であるシリカ粒子Aを含有する、静電荷像現像用トナー。
  2. シリカ粒子Aの個数平均粒径が80nm以上である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
  3. シリカ粒子Aの形状指数が2.5以上10以下である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 外添剤が、さらに、帯電極性がトナー母粒子と同極性であるシリカ粒子Bを含有する、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
  5. シリカ粒子Bの個数平均粒径がシリカ粒子Aより小さい、請求項4記載の静電荷像現像用トナー。
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