JP3926640B2 - 電子写真用トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等に用いられる電子写真用トナー及びそれを用いた画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真用トナー(以下、単に、「トナー」と称することがある。)で可視化された画像を定着するには、ヒートロールを用いる熱定着方式が一般的である。黒トナーの場合は、トナー中に離型剤を含有させ、ヒートロールにオイルを使用しない定着方式が最近の主流である。
画像形成方法には、一成分現像方式と二成分現像方式とがあり、二成分現像方式は広く用いられている方式である。しかし、トナーとキャリアとを用いる二成分現像方式ではトナーのみが消費されて現像剤中のトナーの濃度割合が低下するので、キャリアとの混合割合を一定に保たなければならず、そのため、現像装置が大型化するといった欠点がある。一方、トナーのみを用いる一成分現像方式では上記欠点がなく、装置の小型化等の利点を有するが、帯電付与機能を有するキャリアを含有しないため、トナーの帯電量は二成分方式に比較して低い。
【0003】
一成分現像方式及び二成分現像方式のいずれの場合も、離型剤として含有するポリオレフィンワックスの結着樹脂中の分散が悪いと、帯電分布もブロードになり易く、現像性が低下してしまう。特に高温高湿度下にトナーが放置された場合、トナーの帯電が更に低下してしまい、特に一成分現像方式では、低画像濃度や画像濃度ムラが問題となる。
【0004】
また、トナーの定着性に関しては、定着下限温度は低く、ヒートロールへのオフセット温度は高い方が、定着温度幅が広く望ましい。この観点では結着樹脂としてスチレンアクリル樹脂を用いるよりもポリエステル樹脂を用いる方が有利であるが、離型剤として用いるポリオレフィンワックスの分散が、ポリエステル樹脂に対して特に悪化するという問題がある。
また、特開2000−305319号公報では、結着樹脂中のポリオレフィンワックスの分散を改良することを目的として、ポリオレフィンとの溶解性パラメータ(SP値)が10.0〜15.0の範囲にあるビニル系モノマーとからなるグラフト重合体を含有することが提案されているが、ポリオレフィンワックスは長期コピーにおけるいわゆるキャリアスペントが著しく悪く、高耐久現像剤には不向きである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、ポリエステル樹脂を結着樹脂として用いた場合でも、該結着樹脂中にワックスを均一に分散させて、安定した画像濃度を得ながら、ワックスによるトナースペントが少ない高耐久の電子写真用トナーを提供することを目的とする。また、本発明は、高温高湿度下にトナーが放置された場合でも、画像濃度ムラ等が発生せず、長期に渡り安定した画像を形成し、かつ定着温度幅を狭くさせることのない電子写真用トナーを提供することを目的とする。更に、本発明は、前記電子写真用トナーを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者等は、ポリエステル樹脂に対するポリオレフィンワックスの分散性を向上させるべく鋭意検討した結果、特定のグラフト重合体を加えることにより、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合でも、ポリオレフィンワックスが均一に分散され、長期に渡り画像濃度の低下等のトラブルを発生させず、かつ定着性を悪化させないことを見出し、本発明を完成するに至った。前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、請求項1に記載の本発明は、少なくともエポキシ樹脂と、2価フェノールと、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物及び多価カルボン酸の反応生成物である樹脂とを反応させて合成されたポリオール樹脂と、少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸とを反応させて合成されたポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、単独重合体の溶解性パラメータが10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーと、ポリオレフィン樹脂とからなり、少なくともその酸価が2.40KOHmg/gであるか、7.60KOHmg/gであるか又は21.9KOHmg/gであるグラフト重合体を含み、前記グラフト重合体に埋包される、酸価5KOHmg/g以下の脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスと、着色剤とを含有し、トナー体積平均粒径をA、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径をBとしたときB/A×100=aにて表されるワックス分散比率aが0.7〜3.5の範囲内であることを特徴とする電子写真用トナーとする。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、少なくともエポキシ樹脂と、2価フェノールと、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物及び多価カルボン酸の反応生成物である樹脂とを反応させて合成されたポリオール樹脂と、少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸とを反応させて合成されたポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、単独重合体の溶解性パラメータが10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーと、ポリオレフィン樹脂とからなり、少なくともその酸価が2.40KOHmg/gであるか、7.60KOHmg/gであるか又は21.9KOHmg/gであるグラフト重合体を含み、前記グラフト重合体に埋包される、酸価30KOHmg/g以下の酸化ライスワックスと、着色剤とを含有し、トナー体積平均粒径をA、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径をBとしたときB/A×100=aにて表されるワックス分散比率aが0.7〜3.5の範囲内であることを特徴とする電子写真用トナーとする。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、少なくともエポキシ樹脂と、2価フェノールと、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物及び多価カルボン酸の反応生成物である樹脂とを反応させて合成されたポリオール樹脂と、 少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸とを反応させて合成されたポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、単独重合体の溶解性パラメータが10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーと、ポリオレフィン樹脂とからなり、少なくともその酸価が2.40KOHmg/gであるか、7.60KOHmg/gであるか又は21.9KOHmg/gであるグラフト重合体を含み、前記グラフト重合体に埋包される、酸価30KOHmg/g以下のモンタンワックスと、着色剤とを含有し、トナー体積平均粒径をA、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径をBとしたときB/A×100=aにて表されるワックス分散比率aが0.7〜3.5の範囲内であることを特徴とする電子写真用トナーとする。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、少なくともエポキシ樹脂と、2価フェノールと、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物及び多価カルボン酸との反応生成物である樹脂とを反応させて合成されたポリオール樹脂と、 少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸とを反応させて合成されたポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、単独重合体の溶解性パラメータが10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーと、ポリオレフィン樹脂とからなり、少なくともその酸価が2.40KOHmg/gであるか、7.60KOHmg/gであるか又は21.9KOHmg/gであるグラフト重合体を含み、前記グラフト重合体に埋包される、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルワックスと、着色剤とを含有し、トナー体積平均粒径をA、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径をBとしたときB/A×100=aにて表されるワックス分散比率aが0.7〜3.5の範囲内であることを特徴とする電子写真用トナーとする。
【0010】
請求項5に記載の本発明は、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径が、0.05〜0.8μmの範囲内であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子写真用トナーとする。
【0011】
さらに、前記課題を解決するためには、以下の態様がより好ましい。
・前記グラフト重合体が、更にスチレン系モノマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーを構成成分とする。
・前記グラフト重合体の軟化点が、85〜175℃であるビニル系モノマーとからなるグラフト重合体とする。
・前記グラフト重合体の含有量が、トナーに対して0.3〜20重量%である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下より、本発明の実施の形態について図に基づき説明する。
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂、着色剤、ワックス、及び特定のグラフト重合体を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
【0013】
前記グラフト重合体は、少なくともポリオレフィン樹脂と溶解性パラメータが所定の範囲にあるビニル系モノマー(以下、「特定のビニル系モノマー」と称することがある)とからなり、更にスチレン系モノマー及び/又は(メタ)アクリル系モノマーを構成成分とすることが好ましい。即ち、前記グラフト重合体は、主鎖が前記ポリオレフィン樹脂からなり、側鎖に前記特定のビニル系モノマーからなるビニル系ポリマー鎖を有する。更に、前記スチレン系モノマーからなるスチレン系ポリマー鎖、前記(メタ)アクリル系モノマーからなる(メタ)アクリル系ポリマー鎖を側鎖に有することが好ましい。
【0014】
溶解性パラメータ(ソルビリティー・パラメータ、以下、「SP値」と称する)は、Hildebrand−Scachardの溶液理論において分子間の引き合う力を考え、次式で定義される。
SP≡(ΔEv/V)1/2
ここで、ΔEvは蒸発エネルギー、Vは分子容を表す。各化合物のSP値の求め方は各種あるが、例えば、求める化合物の構造式において、原子又は原子団の蒸発エネルギーとモル体積のデータにより、次式で計算することができる。
SP=(ΣΔEi/ΣΔVi)1/2
ここで、ΔEi及びΔViは、それぞれ、原子又は原子団の蒸発エネルギーとモル体積を表す。
【0015】
本発明のポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンなどが挙げられる。ポリオレフィン樹脂(A)としては、オレフィン類の重合体(A1)、オレフィン類の重合体の酸化物(A2)、オレフィン類の重合体の変性物(A3)、オレフィン類と共重合可能な他の単量体との共重合物(A4)などが挙げられる。
オレフィン類の重合体(A1)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、プロピレン/1−ヘキセン共重合体などが挙げられる。また、本発明においては、ポリマー構造がポリオレフィンの構造を有していれば良く、モノマーが必ずしもオレフィン構造を有している必要はない。例えば、ポリメチレン(サゾールワックス等)等も使用することができる。
オレフィン類の重合体の酸化物(A2)としては、上記オレフィン類の重合体(A1)の酸化物等が挙げられる。
オレフィン類の重合体の変性物(A3)としては、上記オレフィン類の重合体(A1)のマレイン酸誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル等)付加物などが挙げられる。
オレフィン類と共重合可能な他の単量体との共重合物(A4)としては、不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等]、不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(C1〜C18)エステル、マレイン酸アルキル(C1〜C18)エステル等]等の単量体とオレフィン類との共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン樹脂のうち、好ましいものは、オレフィン類の重合体(A1)、オレフィン類の重合体の酸化物(A2)、オレフィン類の重合体の変性物(A3)である。
【0016】
ビニル系モノマー(B)としては、ビニル系モノマーの単独重合体でも良いし、共重合体でも良い。ただし、ビニル系モノマーの単独重合体のSP値としては通常、10.6〜12.6(cal/cm)1/2好ましくは10.6〜12.0(cal/cm)1/2、さらに好ましくは10.7〜11.8(cal/cm)1/2であり、特に好ましくは10.8〜11.5(cal/cm)1/2である。SP値が12.6を超えても、また10.6未満でも、結着樹脂とのSP値差が大きくなりすぎ、離型剤の分散が不良となる。なお、SP値は公知のFedors法で算出できる。
【0017】
ビニル系モノマー(B)としては、単独重合体のSP値が10.6〜12.6(cal/cm)1/2であるモノマーの単独重合体(B1)でもよいが、単独重合体のSP値が11.0〜18.0(B2)、特に好ましくは11.0〜16.0(cal/cm)1/2であるビニル系モノマー(B3)と、単独重合体のSP値が8.0〜11.0、特に好ましくは9.0〜10.8(cal/cm)1/2であるモノマー(B4)との共重合体がより好ましい。
【0018】
11.0〜16.0(cal/cm)1/2であるビニル系モノマー(B3)としては、不飽和ニトリル系モノマー(B5)、α,β−不飽和カルボン酸類(B6)が挙げられる。
【0019】
不飽和ニトリル系モノマー(B5)としては、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレンなどが挙げられる。これらのうち好ましいのは(メタ)アクリロニトリルである。
α,β−不飽和カルボン酸類(B6)としては、不飽和カルボン酸類およびその無水物[(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびその無水物など]、不飽和ジカルボン酸モノエステル類[マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチルなど]などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、(メタ)アクリル酸、不飽和ジカルボン酸モノエステル類であり、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸およびマレイン酸モノエステル[マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル]である。
【0020】
9.0〜10.8(cal/cm)1/2であるモノマー(B4)としては、スチレン系モノマー[スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレンなど]、不飽和カルボン酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど]、ビニルエステル系モノマー[酢酸ビニルなど]、ビニルエーテル系モノマー[ビニルメチルエーテルなど]、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー[塩化ビニルなど]、ジエン系モノマー(ブタジエン、イソブチレン等)およびこれらの併用が挙げられる。これのうち好ましいものはスチレン系モノマー、不飽和カルボン酸アルキルエステルおよびその併用であり、特に好ましいのは、スチレンおよびスチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルの併用である。
【0021】
ビニル系モノマー(B)の分子量は、数平均分子量で1500〜100000、重量平均分子量で、5000〜200000であり、好ましいのは数平均分子量で2500〜50000、重量平均分子量で6000〜100000、特に好ましいのは数平均分子量で2800〜20000、重量平均分子量で7000〜50000である。
【0022】
ビニル系モノマー(B)のガラス転移点(Tg)は通常40〜90℃であり、好ましいのは45〜80℃、特に好ましいのは50〜70℃である。ガラス転移点が40℃以上で保存性が良好となり、90℃以下の場合低温定着性が良好になる。
【0023】
本発明に係るグラフト重合体(C)は、上記記載のポリオレフィン樹脂(A)とビニル系モノマー(B)により構成される。
グラフト重合体(C)を構成する各成分の量は、生成したグラフト重合体(C)の重量に基づいてポリオレフィン樹脂(A)が通常1〜90重量%、好ましくは5〜80重量%、ビニル系モノマー(B)が通常10〜99重量%、好ましくは20〜95%である。
【0024】
本発明の樹脂組成物を構成する前記ポリオレフィン樹脂(A)、ビニル系モノマー(B)、およびグラフト重合体(C)の量は、生成した樹脂組成物の重量に基づいて、ポリオレフィン樹脂(A)が通常0.5〜70重量%、ビニル系モノマー(B)が通常29〜98.5重量%、グラフト重合体(C)が通常1〜70重量%である。
【0025】
本発明の樹脂組成物の具体例としては、上記記載の組成物以外に、以下のポリオレフィン樹脂(A)、ビニル系モノマー(B)、およびそれらから構成されるグラフト重合体(C)などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(A)としては、酸化型ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン混合物、エチレン/プロピレン共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエチレン/マレイン酸変性ポリプロピレン混合物などが挙げられる。
ビニル系モノマー(B)としては、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/アクリル酸/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸ブチル/マレイン酸モノブチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、アクリロニトリル/アクリル酸ブチル/スチレン/マレイン酸モノブチル共重合体などが挙げられる。
【0026】
上記グラフト重合体の製法を例示する。
例えば、まず、ポリオレフィン樹脂(A)をトルエン、キシレン等の溶剤に溶解または分散させ、100℃〜200℃に加熱した後、単独重合体のSP値が11.0〜18.0、特に好ましくは11.0〜16.0(cal/cm)1/2であるビニル系モノマー(B3)、またはビニル系モノマー(B3)と単独重合体のSP値が8.0〜11.0、特に好ましくは9.0〜10.8(cal/cm)1/2であるモノマー(B4)との混合物をパーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリブチルパーオキシドベンゾエート等)とともに滴下重合後、溶剤を留去することによりグラフト重合体が得られる。
【0027】
なお、上記グラフト重合体の溶液を合成するために用いるパーオキサイド系開始剤の量は、生成したグラフト重合体の重量に基づいて通常0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0028】
本発明で重要な点は用いるワックスの種類と酸価である。
ポリプロピレンに代表されるパラフィンワックスでは、長期コピーを行うことで、ワックスによるキャリアへのトナースペントが著しくなり、キャリアの高寿命化に不適である。
本発明ではトナー中のワックス分散性改善が主目的であるが、一般的にワックスの分散性改良には、トナー混練中のワックス分散性改良と、トナー混練直後に実施する混練物冷却時でのワックス再凝集の緩和、の2点がある。
【0029】
本発明に用いる、脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、酸化ライスワックス、モンタンワックスは、下記記載の酸価とすることによりトナー中のワックス分散性が改善される。
これは、ワックス中の末端基が、ポリオレフィン樹脂(A)とビニル系樹脂(B)とからなるグラフト重合体(C)との親和性に影響しているためである。
他方、SP値が10.6〜12.6の範囲内であれば、トナー混練直後の冷却時におこるワックスの再凝集が緩和される。これは、この範囲内に調整することによりグラフト重合体の内部にワックスが埋包されるためである。
SP値が10.5以下、または12.7以上の場合、トナー混練中のワックス分散性改良にて微細にワックスが分散されてもグラフト重合体の内部にワックスが埋包され難い為、ワックス同士の再凝集が発生し、所望の分散が得られない。
【0030】
本発明に用いる脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスの酸価は5KOHmg/g以下であることが好ましい。また、酸化ライスワックス、およびモンタンワックスの酸価は、30KOHmg/g以下であることが好ましい。
脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスの酸価が6KOHmg/g以上、酸化ライスワックス、モンタンワックスの酸価が31KOHmg/g以上の場合、ワックス分散性は劣り、所望の離型性が得られず低温定着性を阻害する。
但し後述するジペンタエリスリトール脂肪酸エステルワックスは、上記ワックスよりもワックス分散性に優れる為、この範囲内ではない。
【0031】
脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスは、カルナウバワックスを原料にして遊離脂肪酸を脱離したものであり、従来のカルナウバワックスより微結晶となり分散性が向上し易い。
モンタンワックスは、鉱物より精製されたものであり、カルナウバワックスと同様に微結晶となり易い。
酸化ライスワックスは米ぬかワックスを空気酸化したものである。
これらのワックスは、単独で用いても組み合わせて用いても良く、トナー全体の1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%含有させることで、良好な結果が得られる。
【0032】
次にジペンタエリスリトール脂肪酸エステルワックスを説明する。
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルワックスとは、脂肪酸部分の炭素数が12〜22であり、かつジペンタエリスリトール部分の水酸基の60モル%以上がエステル結合を有するジペンタエリスリトール脂肪酸エステル100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤1〜50重量部及び硫黄系酸化防止剤1〜50重量部からなる。
【0033】
前記ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は炭素数12〜22のものであって、このようなものとしては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して用いてもよい。これらの中で特にパルミチン酸及びステアリン酸が好適である。
炭素数11以下の脂肪酸を用いた場合、混練トルク値が大きく、かつ加工安定性が不十分であるし、炭素数23以上の脂肪酸を用いると軟化点の低下が大きく、樹脂の熱変形温度の低下をもたらす。
さらに、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成するジペンタエリスリトールは、その水酸基の60モル%以上がエステル結合を有することが必要である。本発明組成物においては、前記ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6,−トリ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3−(3'−t−ブチル−5'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが挙げられ、これらの中でも、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン及びトリエチレングリコールビス[3−(3'−t−ブチル−5'−メチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好適である。本発明組成物においては、前記フェノール系酸化防止剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
以下の表1にジペンタエリスリトール脂肪酸エステルワックスの組成例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【表1】
Figure 0003926640
【0036】
本発明の電子写真用トナーに用いるワックスは、トナー中での平均分散粒径が0.05〜0.8μmの範囲内であることが好ましい。
また、電子写真用トナーの体積平均粒径(50%径)d50が4〜15μm程度であることが好ましく、5〜9μmがより好ましい。体積平均粒径d50が3μmより小さいと、現像濃度が低下することがあり、体積平均粒径d50が15μmより大きいと、粒状性が悪化することがある。
このとき、トナー粒径d50をA、トナー中でのワックスの平均分散粒径をB、ワックス分散比率をaとし、
B/A×100=a
にて表されるワックス分散比率aが0.7〜7.5の範囲内であることが好ましい。
ワックス分散比率(a)が7.5より大きい場合、トナー混練後のワックスの再凝集が発生し、トナー中でのワックスの分散状態が不均一であることを示す。
【0037】
トナー中におけるワックスの分散粒径はいかなる方法によっても測定できるが、TEMによるトナー断面写真から長軸型と短軸型の平均値から粒径を得るのが好ましい。
この際測定精度を高める為にも、測定サンプルは30個以上のデータ平均値から求める事がより好ましい。
【0038】
次に本発明に用いられる結着樹脂を説明する。
本発明は、ポリオール樹脂とポリエステル樹脂とを結着樹脂として使用する。ポリオール樹脂は、エポキシ樹脂と、2価フェノールと、および2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物と多価カルボン酸とを反応させた樹脂と、を反応して合成される。
ポリエステル樹脂は、少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物あるいはそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸と、を反応して合成される。
【0039】
ポリオール樹脂とポリエステル樹脂との比率は、20/80から80/20であることが好ましい。20/80より小さいと環境変動が悪化して好ましくないばかりでなく、塩ビマット等に付着するなどの現象の発生が見られる。80/20より大きいと、一成分現像方式や、現像剤の量が少ない小型の現像器を用いる二成分現像方式のフルカラー画像形成装置での画質向上が見られないという問題がある。
【0040】
本発明におけるポリオール樹脂とは、エポキシ骨格を有するが末端エポキシを有さないポリオール樹脂をいう。また、主鎖に2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物と多価カルボン酸とを反応させた樹脂とを反応して合成された樹脂部を有する事により、主骨格にポリオキシアルキレン部を有する樹脂と同等の光沢の発現性が得られる。さらに、ポリエステル樹脂との相溶性が向上し生産性を高めることも可能となる。
【0041】
また、本発明におけるポリオール樹脂の合成時、数平均分子量の相違する少なくとも2種以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いてポリオール部を構成すれば適正な分子量分布が得られ、鮮明なカラー画像を得ることが可能となる。この場合に、低分子量成分の数平均分子量が360〜2000であり、高分子量成分の数平均分子量が3000〜10000であることが好ましい。分子量分布は数平均分子量と体積平均分子量の比で表現され、光沢を有するカラートナーの場合、3〜8が好ましく、合成に使用する低分子量成分のエポキシ樹脂と高分子量成分のエポキシ樹脂の比率で制御する。
【0042】
一方、ポリエステル樹脂は、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物あるいはそのグリシジルエーテルと多価カルボン酸との縮合反応により合成でき、数平均分子量として500〜2000であることが好ましい。
これらの反応生成物と2価のフェノール類と1価のフェノール類又はカルボン酸類を例えばキシレン溶媒中で塩化リチウム触媒の存在下で重合させ任意の分子量の樹脂を得る事ができる。
【0043】
本発明のポリオール樹脂を構成する化合物として以下の材料が挙げられる。
ポリオール樹脂の製造に使用されるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAやビスフェノールとエピクロロヒドリン樹脂とを縮合反応させて得られたものが挙げられる。
2価フェノールとしては、例えばビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノールが挙げられる。
また、前記ポリオール樹脂の合成に使用される2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びこれらの混合物等のアルキレンオキサイドとビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノールとの反応生成物が挙げられる。
【0044】
多価カルボン酸としては、例えば脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体(マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、アゼライン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、オクチルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、イソオクタデシルコハク酸、ヘキセニルコハク酸、オクテニルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、イソオクタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、ノネニルコハク酸など)や脂環式ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸、メチルメジック酸など)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸など)並びに、これら2価カルボン酸の無水物や低級アルキル(メチル、ブチルなど)エステルが挙げられる。
また、3価カルボン酸の例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物がある。これらは単独または混合で用いることができる。
【0045】
また、エポキシ樹脂、2価フェノール、2価フェノールのアルキレンオキサイドの比率は各々25〜70、10〜40、5〜20が好ましい。
前記エポキシ基と反応せしめられる1価フェノール類としては、フェノール、クレゾール、イソプロピルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、キシレノール、p−クミルフェノール等が挙げられる。
これらの材料を例えばキシレン等の溶媒中で塩化リチウム触媒の存在下で重合させ樹脂を得ることができる。
【0046】
また、ポリエステル樹脂を構成する化合物として以下の材料が挙げられる。
2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物あるいはそのグリシジルエーテルとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド及びこれらの混合物等のアルキレンオキサイドとビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノールとの反応生成物が挙げられる。
また、多価カルボン酸としては上記ポリオール樹脂に例示したものを用いることができる。
【0047】
上記結着樹脂は、然るべきモノマーを反応釜に仕込み、加熱昇温する事により、例えばエステル化反応またはエステル交換反応を行い得ることができる。このとき必要に応じて、硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキシド、酢酸マンガン等の通常のエステル化反応またはエステル交換反応で使用されるエステル化触媒またはエステル交換触媒を使用することができる。次いで、定法に従って反応で生じた水またはアルコールを除去し、さらに減圧下で、ジオール成分を留出除去させながら重合を行うのがよい。また、重合に際しては、通常公知の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等を用いることができる。
得られた結着樹脂のガラス転移点は各々50℃から75℃であることが好ましく、55℃から70℃であることがより好ましい。ガラス転移点が低いとトナーボトルや現像器内で凝集物が発生しやすく、その凝集物が現像されてしまうと、転写時に凝集物部分の画像が白く抜ける現象が起きやすい傾向にある。逆にガラス転移点が高いと十分な画像光沢が得にくいという問題を生ずる傾向にある。
【0048】
次に本発明に用いられる着色剤について説明する。
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントブルー15:1、C.Iピグメントブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
【0049】
着色剤の含有量は、前記結着樹脂100重量部に対し0.5〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。含有量が0.5重量部より少ないと、着色力が弱くなることがある。一方、含有量が20重量部より多いと、透明性が悪化することがある。
【0050】
本発明の電子写真用トナーは、前記グラフト重合体と、前記ワックスと、前記ポリオール樹脂とポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、前記着色剤とを含有している。グラフト重合体の量は、結着樹脂の量に基づいて、通常0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜20重量%であり、結着樹脂の量は、通常65〜99.9重量%、好ましくは75〜99.7重量%である。
本発明に係る結着樹脂の組成物を得るためには、結着樹脂とグラフト重合体に加え、必要に応じて他の部材を粉体混合しても良い。また、二軸押出機や、加熱撹拌のできる配合釜等で溶融混合しても良い。さらに、グラフト重合体の存在下に結着樹脂を重合しても良い。
【0051】
本実施形態では二成分現像剤として非磁性トナーについて説明したが、本発明の電子写真用トナーは、前記着色剤の一部又は総てに磁性粉末を用いることにより、磁性一成分現像剤とすることも可能である。
結着樹脂中に分散される磁性粉末としては、公知の磁性体、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の金属及びこれらの合金、Fe、γ−Fe、コバルト添加酸化鉄等の金属酸化物、MnZnフェライト、NiZnフェライト等の各種フェライト、マグネタイト、ヘマタイト等が使用でき、更にそれらの表面をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の表面処理剤で処理したもの、あるいはポリマーコーティングしたもの等でもよい。
【0052】
また、本発明の電子写真用トナーの帯電量を制御するために、必要に応じて、例えば、フッ素系界面活性剤、サリチル酸クロム錯体のようなクロム系染料、マレイン酸を単量体成分として含む共重合体のごとき高分子酸、4級アンモニウム塩、ニグロシン等のアジン系染料、カーボンブラック等を添加することができる。また、トナーの流動性、帯電性等を向上させる目的として、シリカ等の無機微粉末、酸化チタン等の金属酸化物、脂肪酸あるいはその誘導体、金属塩等の有機微粉末、フッ素系樹脂微粉末等を添加することもできる。
【0053】
上記説明した電子写真用トナーを好適に用いることにより、安定した良好な画像を得ることが可能な画像形成方法を提供することができる。
【0054】
【実施例】
以下に本発明の電子写真用トナーに係る製造例および実施例を示す。以下、部は全て重量部をあらわす。
酸価の測定方法としては、JIS K0070に規定の方法を用い、ガラス転移点の測定方法としては、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)を用いた。装置としては、セイコー電子工業(株)製DSC20、SSC/580を用いた。
なお、本実施例は一例に過ぎず、本発明はこれで限定されるものではない。
【0055】
以下に本発明のポリオール樹脂、ポリエステル樹脂製造例を説明する。
(ポリオール樹脂製造例)
攪拌装置、温度計、N導入口、冷却管付セパラブルフラスコに、低分子ビスフェノールA/エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂(三井化学社製EPOMIKR−140P数平均分子量:約360)300g、高分子ビスフェノールA/エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂(三井化学社製、EPOMIK R−309数平均分子量:約2900)150g、ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加物230g、ビスフェノールA240g、p−クミルフェノール90g、低分子量ポリエステル樹脂(ビスフェノールA型プロピレンオキサイド付加物と無水フタル酸の縮合物、数平均分子量約1500)50g、キシレン200gを加えた。N雰囲気下で70〜100℃まで昇温し、塩化リチウムを0.183g加え、更に160℃まで昇温し減圧下でキシレンを留去し、180℃の反応温度で6〜9時間重合させて、ポリオール樹脂1を得た。
この樹脂の物性は、Mn:4000、Mw/Mn:6.0、ガラス転移点59℃、軟化点102℃、エポキシ当量:20000以上であった。
【0056】
(ポリエステル樹脂製造例1)
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物4533部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物4460部、フェノールノボラック樹脂(核体数約5個)のエチレンオキサイド5モル付加物618部、テレフタル酸2789部、無水マレイン酸414部およびジブチルチンオキサイド24部を入れ、窒素気流下230℃で酸価が1.5になるまで脱水反応した。次いで、これに1720部のジメチルテレフタレートおよびキシレン400部を加えて常圧下220℃で3時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧下2時間反応した。その後、無水トリメリット酸439部を加えて10〜15mmHgの減圧で反応させて、メルトインデックス(150℃、5000g)が2.1g/10分となった時点で反応槽から取り出し、ポリエステル(F−1)を得た。(F−1)のTHF不溶分は32.4%、ピーク分子量は3600であり、酸価8.1mgKOH/g、水酸基価15.6KOHmg/gであった。また、ガラス転移点は59.7℃、軟化点は120℃であった。
【0057】
(ポリエステル樹脂製造例2)
冷却管、攪拌機および素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物3773部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物3546部、フェノールノボラック樹脂(核体数約5個)のエチレンオキサイド5モル付加物968部、テレフタル酸3406部、ジブチルチンオキサイド22部を入れ、常圧下230℃で脱水反応し、次いで10〜15mmHgの減圧下で反応を続行し、メルトインデックス(150℃、5000g)が2.3g/10分となった時点で反応槽から取り出し、ポリエステル(F−2)を得た。(F−2)のTHF不溶分は36%、ピーク分子量は3940であり、酸価1.8KOHmg/g、水酸基価47.1KOHmg/gであった。また、ガラス転移点は59.8℃、軟化点は117℃であった。
【0058】
(ポリエステル樹脂製造例3)
冷却管、攪拌機および素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物2310部、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物2172部、テレフタル酸1892部およびジブチルチンオキサイド18部を入れ、常圧下225℃で10時間反応を行い、さらに10〜15mmHgの減圧下、酸価1.3KOHmg/gになるまで反応を行いポリエステル(F−3)を得た。(F−3)にはTHF不溶分は無く、数平均分子量は3020、重量平均分子量は8040、水酸基価35KOHmg/gであった。また、ガラス転移点は63.7℃、軟化点は132℃であった。
【0059】
(ポリエステル樹脂製造例4)
冷却管、攪拌機および素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物7456部、フェノールノボラック樹脂(核体数約5個)のエチレンオキサイド5モル付加物529部、テレフタル酸3320部、ジブチルチンオキサイド20部を入れ、常圧下225℃で10時間反応を行い、さら10〜15mmHgの減圧下、酸価が1.3KOHmg/gになるまで反応を行った。これに無水トリメリット酸151部を加え酸価が7.0KOHmg/gになるまで反応させポリエステル(F−4)を得た。(F−4)にはTHF不溶分は無く、数平均分子量は3340、重量平均分子量は19800、水酸基価42KOHmg/gであった。また、ガラス転移点は59.7℃、軟化点は131℃であった。
【0060】
以下に本発明のグラフト重合体製造例を説明する。
(グラフト重合体製造例1)
温度計および攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン650部、低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、ビスコール330P)410部、低分子量ポリエチレン(三洋化成工業(株)製、サンワックスLEL−400:軟化点128℃)120部を入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン2010部、アクリロニトリル155部、マレイン酸モノブチル210部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート71部およびキシレン465部の混合溶液を175℃にて4時間で滴下し重合し、さらにこの温度で50分間保持した。次いで脱溶剤を行い、グラフト重合体(E−1)を得た。(E−1)のグラフト鎖のSP値は11.2(cal/cm)1/2、数平均分子量は2900、重量平均分子量は10800、ガラス転移点は83.4℃であり、また酸価は21.9KOHmg/gであった。
【0061】
(グラフト重合体製造例2)
温度計および攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン1010部、低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、ビスコール660P:軟化点145℃)740部を入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン2385部、アクリロニトリル264部、アクリル酸ブチル340部、アクリル酸25部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート34.5部およびキシレン550部の混合溶液を175℃にて5時間で滴下し、さらにこの温度で50分間保持した。次いで脱溶剤を行い、本発明のグラフト重合体(E−2)を得た。(E−2)のグラフト鎖のSP値は11.4(cal/cm)1/2、数平均分子量は3050、重量平均分子量は8100、ガラス転移点は56.4℃、また酸価は2.4KOHmg/gであった。
【0062】
(グラフト重合体製造例3)
温度計および攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン350部、低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、ビスコール440P:軟化点153℃)220部、低分子量ポリエチレン(三洋化成工業(株)製、サンワックスLEL−400:軟化点128℃)40部を入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン869部、アクリロニトリル41部、アクリル酸ブチル120部、アクリル酸4部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート35.5部およびキシレン141部の混合溶液を175℃にて5時間で滴下し、さらにこの温度で50分間保持した。 次いで脱溶剤を行い、本発明のグラフト重合体(E−3)を得た。(E−3)のグラフト鎖のSP値は10.24(cal/cm)1/2、数平均分子量は2900、重量平均分子量は7900、ガラス転移点は56.4℃、また酸価は7.6KOHmg/gであった。
【0063】
(グラフト重合体製造比較例1)
温度計および攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン400部、低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製、ビスコール440P:軟化点153℃)50部を入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン782部、アクリル酸ブチル218部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート8.5部の混合溶液を160℃にて2時間で滴下し、さらに1時間保持した。次いで脱溶剤を行い、グラフト重合体(E−4)を得た。(E−4)のグラフト鎖のSP値は10.41(cal/cm)1/2、数平均分子量は8310、重量平均分子量は22900、ガラス転移点は60.5℃であった。
【0064】
(グラフト重合体製造比較例2)
温度計および攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン1500部を入れ窒素置換後、スチレン1992部、アクリロニトリル118部、マレイン酸モノブチル240部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート38部およびキシレン455部の混合溶液を175℃にて3時間で滴下し重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、グラフト重合体(E−5)を得た。(E−5)のSP値は13.13(cal/cm)1/2、数平均分子量は2950、重量平均分子量は9800、ガラス転移点は80.6℃であり、また酸価は25.8KOHmg/gであった。
【0065】
以下に、本発明の実施例を説明する。トナーの粒度は、コールターカウンター社製粒度測定機TA−IIによりアパーチャー径100μmで測定した。
まず、本発明における電子写真用トナーの性能試験の方法を以下に示す。
・最低定着温度、ホットオフセット発生温度、光沢発生温度
カーボンブラックを使用したモノクロ用トナー、及びフルカラートナーは、トナー30部とフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)800部を均一混合し二成分現像剤として試験した。
【0066】
(i)カーボンブラック使用モノクロ用トナー(低光沢画像)の場合
・最低定着温度(MFT)
市販モノクロ複写機((株)リコー製imagio450改造機)を用いて現像した未定着画像を、上記複写機用定着ユニットを改造し熱ローラー温度を可変にした定着機でプロセススピード250mm/secで定着した。定着画像を布パッドで擦った後の画像濃度の残存率が80%以上となる熱ローラー温度を最低定着温度とした。
・ホットオフセット発生温度
上記複写機と同様に定着し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視判定した。ホットオフセットが発生しはじめた温度をホットオフセット発生温度とした。
【0067】
(ii)磁性粉使用モノクロ用トナー(低光沢画像)の場合
市販モノクロプリンター((株)リコー製IPSiONX720改造機)を用いて未定着画像を得ること、定着ユニットのプロセススピードを80mm/secとすること以外は、上記と同様に試験する。
(iii)フルカラートナー(高光沢画像)の場合
市販フルカラー複写機((株)リコー製IPSiO Color 8000改造機)を用いて現像した未定着画像を、上記フルカラー複写機の定着ユニットを用いてプロセススピード180mm/secで定着した。市販光沢計(MURAKAMI COLOR RESEARCH LABORATORY製 GMX−202−60型)を用い、定着画像の60゜の反射率が10%を超える熱ローラー温度を光沢発現温度とした。また、目視判定でホットオフセットが発生し始めた温度をホットオフセット発生温度とした。
・現像剤表面のトナースペント測定方法
500メッシュで囲った容器内に現像剤を入れ、圧縮空気で現像剤表面に摩擦帯電しているトナーをブロー除去する。
残った現像剤5gをトルエン100mlの中に浸し、トルエン溶液の濁度を○×評価する。
○:トナーによる濁りが認識できない
×:トナーによる濁りが認識できる
【0068】
以下に本発明の電子写真用トナー製造例を説明する。
なお、いずれも現像剤はトナー3部に対し、150〜250メッシュの酸化鉄粉キャリア(日本鉄粉社製TEFV)97部とをボールミルで混合し、二成分系現像剤を得た。
(トナー製造例1)
ポリエステル樹脂(F−1) 50部
ポリオール樹脂 50部
グラフト重合体(E−1) 3部
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100) 8部
荷電制御剤(保土ヶ谷化学(株)製スピロンブラックTRH) 1部
脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス(酸価4.2KOHmg/g) 3部
上記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製、FM10B)を用いて予備混合した後、130℃に温度設定した二軸混練機((株)池貝製、PCM−30)で溶融混練した。混練物を冷却後、粗粉砕し、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I)で分級し、粒径d50が9.0μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部とコロイダルシリカ(日本アエロジル製 アエロジルR972)1.5部とを混合(外添)して、トナー(T−1)を得た。T−1を電子顕微鏡で観察したところ、ワックスの平均分散粒径は約0.2μm、このトナーのワックス分散比率(a)は2.2と、均一で良好な分散状態であった。T−1の最低定着温度は145℃、ホットオフセットは230℃以下では認められなかった。
リコー製imagio 450改造機にて30万枚の画像だしをおこなったところ、最後まで鮮明で高画質な画像が得られた。この際現像剤表面のトナースペントを測定方法に従い測定したところ、トナースペントが少なく(評価:○)、優れている事が確認された。
【0069】
(トナー製造例2)
ポリエステル樹脂(F−2) 70部
ポリオール樹脂 30部
グラフト重合体(E−2) 6部
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100) 11部
荷電制御剤(保土ヶ谷化学(株)製スピロンブラックTRH) 2部
酸価ライスワックス(酸価25.3KOHmg/g) 10部
上記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製、FM10B)を用いて予備混合した後、130℃に温度設定した二軸混練機((株)池貝製、PCM−30)で溶融混練した。混練物を冷却後、粗粉砕し、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製、MDS−I)で分級し、粒径d50が7.0μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部とコロイダルシリカ(日本アエロジル製、アエロジルR972)2.5部とを混合(外添)して、トナー(T−2)を得た。T−2を電子顕微鏡で観察したところ、離型剤の平均分散粒径は約0.2μm、ワックス分散比率(a)は2.9と、均一で良好な分散状態であった。T−2の最低定着温度は140℃、ホットオフセットは230℃以下では認められなかった。
リコー製imagio 450改造機にて30万枚の画像だしをおこなったところ、最後まで鮮明で高画質な画像が得られた。この際現像剤表面のトナースペントを測定したところ、トナースペントが少なく(評価:○)、優れている事が確認された。
【0070】
(トナー製造例3)
ポリエステル樹脂(F−3) 40部
ポリオール樹脂 60部
グラフト重合体(E−3) 8部
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100) 11部
荷電制御剤(保土ヶ谷化学(株)製スピロンブラックTRH) 1.5部
モンタンワックス(酸価21.2KOHmg/g)13部
上記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製、FM10B)を用いて予備混合した後、130℃に温度設定した二軸混練機((株)池貝製、PCM−30)で溶融混練した。混練物を冷却後、粗粉砕し、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製、MDS−I)で分級し、粒径d50が8.5μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部とコロイダルシリカ(日本アエロジル製、アエロジルR972)1.8部とを混合(外添)して、トナー(T−3)を得た。T−3を電子顕微鏡で観察したところ、ワックスの平均分散粒径は約0.3μm、ワックス分散比率(a)は3.5と均一で良好な分散状態であった。T−3の最低定着温度は148℃、ホットオフセットは230℃以下では認められなかった。
リコー製imagio 450改造機にて30万枚の画像だしをおこなったところ、最後まで鮮明で高画質な画像が得られた。この際現像剤表面のトナースペントを測定したところ、トナースペントが少なく(評価:○)、優れている事が確認された。
【0071】
(トナー製造例4)
ポリエステル樹脂(F−1) 50部
ポリオール樹脂 50部
グラフト重合体(E−3) 8部
カーボンブラック(三菱化学(株)製、MA100) 11部
荷電制御剤(保土ヶ谷化学(株)製、スピロンブラックTRH) 1.0部
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルワックス 5部
上記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製、FM10B)を用いて予備混合した後、130℃に温度設定した二軸混練機((株)池貝製、PCM−30)で溶融混練した。混練物を冷却後、粗粉砕し、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製、MDS−I)で分級し、粒径d50が8.0μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部とコロイダルシリカ(日本アエロジル製、アエロジルR972)1.3部とを混合(外添)して、トナー(T−4)を得た。T−4を電子顕微鏡で観察したところ、ワックスの平均分散粒径は約0.1μm、ワックス分散比率(a)は1.3と均一で、良好な分散状態であった。T−4の最低定着温度は140℃、ホットオフセットは230℃以下では認められなかった。
リコー製imagio 450改造機にて30万枚の画像だしをおこなったところ、最後まで鮮明で高画質な画像が得られた。この際現像剤表面のトナースペントを測定したところ、トナースペントが少なく(評価:○)、優れている事が確認された。
【0072】
(トナー製造比較例1)
ポリエステル樹脂(F−1) 50部
ポリオール樹脂 50部
グラフト重合体(E−1) 3部
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100) 8部
荷電制御剤(保土ヶ谷化学(株)製スピロンブラックTRH) 1部
カルナウバワックス(酸価29.6KOHmg/g) 3部
上記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製、FM10B)を用いて予備混合した後、130℃に温度設定した二軸混練機((株)池貝製、PCM−30)で溶融混練した。混練物を冷却後、粗粉砕し、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製、MDS−I)で分級し、粒径d50が9.0μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部とコロイダルシリカ(日本アエロジル製、アエロジルR972)1.5部とを混合(外添)して、トナー(TR−1)を得た。TR−1を電子顕微鏡で観察したところ、ワックスの平均分散粒径は約0.9μm以上、ワックス分散比率(a)は10以上と不均一な分散状態であった。TR−1の最低定着温度は175℃と劣っていた。
リコー製imagio 450改造機にて30万枚の画像だしをおこなったところ、最後まで鮮明で高画質な画像が得られた。この際現像剤表面のトナースペントを測定したところ、トナースペントが多く(評価:×)、劣っている事が確認された。
【0073】
(トナー製造比較例2)
ポリエステル樹脂(F−1) 60部
ポリオール樹脂 40部
グラフト重合体(E−4) 7部
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100) 8部
荷電制御剤(保土ヶ谷化学(株)製スピロンブラックTRH) 1部
脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス(酸価4.2KOHmg/g) 3部
上記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製、FM10B)を用いて予備混合した後、130℃に温度設定した二軸混練機((株)池貝製、PCM−30)で溶融混練した。混練物を冷却後、粗粉砕し、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製、MDS−I)で分級し、粒径d50が9.0μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部とコロイダルシリカ(日本アエロジル製、アエロジルR972)1.5部とを混合(外添)して、トナー(TR−2)を得た。TR−2を電子顕微鏡で観察したところ、離型剤の平均分散粒径は約0.5〜8.0μm以上と非常に不均一な分散状態であり、明らかに混練後による再凝集が認められた。
またTR−2の最低定着温度は175℃と劣っていた。
リコー製imagio 450改造機にて30万枚の画像だしをおこなったところ、最後まで鮮明で高画質な画像が得られた。この際現像剤表面のトナースペントを測定したところ、トナースペントが多く(評価:×)、劣っている事が確認された。
【0074】
(トナー製造比較例3)
ポリエステル樹脂(F−2) 40部
ポリオール樹脂 60部
グラフト重合体(E−5) 11部
カーボンブラック(三菱化学(株)製MA100) 8部
荷電制御剤(保土ヶ谷化学(株)製スピロンブラックTRH) 2部
酸価ライスワックス(酸価25.3KOHmg/g) 5部
上記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機(株)製、FM10B)を用いて予備混合した後、130℃に温度設定した二軸混練機((株)池貝製、PCM−30)で溶融混練した。混練物を冷却後、粗粉砕し、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製、MDS−I)で分級し、粒径d50が9.0μmのトナー粒子を得た。ついで、トナー粒子100部とコロイダルシリカ(日本アエロジル製、アエロジルR972)1.4部とを混合(外添)して、トナー(TR−3)を得た。TR−3を電子顕微鏡で観察したところ、ワックスの平均分散粒径は約0.5〜9.0μm以上、ワックス分散比率(a)は100前後と非常に不均一な分散状態であり、明らかに混練後による再凝集が認められた。
またTR−2の最低定着温度は170℃と劣っていた。
リコー製imagio 450改造機にて30万枚の画像だしをおこなったところ、最後まで鮮明で高画質な画像が得られた。この際現像剤表面のトナースペントを測定したところ、トナースペントが多く(評価:×)、劣っている事が確認された。
【0075】
(トナー実施例5)
カーボンブラックの代わりにC.I.ピグメントレッド48:15部を用いる事以外は実施例1と同様にしトナー(T−5)を得た。
T−5を電子顕微鏡で観察したところ、ワックスの平均分散粒径は約0.2μm、ワックス分散比率(a)は2.2と均一で良好な分散状態であった。T−5の最低定着温度は145℃、ホットオフセットは230℃以下では認められなかった。
リコー製IPSiO Color 8000改造機を用いて光沢発現温度を測定したところ、狙いの160℃以下に対し155℃と優れていた。また、ホットオフセット発生温度も狙いの220℃以上に対し230℃と優れていた。
リコー製IPSiO Color 8000改造機にて30万枚の画像だしをおこなったところ、最後まで鮮明で高画質な画像が得られた。この際現像剤表面のトナースペントを以下の測定方法に従い測定したところ、トナースペントが少なく(評価:○)、優れている事が確認された。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ワックスとして、酸価5KOHmg/g以下の脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、または酸価30KOHmg/g以下の酸化ライスワックス、モンタンワックス、またはジペンタエリスリトール脂肪酸エステルワックスを用い、かつ、結着樹脂にポリオレフィン樹脂とSP値が10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーとからなるグラフト重合体を含有させることで、ポリエステル樹脂を結着樹脂として用いた場合でも、結着樹脂中にワックスを均一に分散させ、安定した画像濃度を得ながら、ワックスによるトナースペントが少ない高耐久の電子写真用トナーを提供することができる。また、高温高湿度下にトナーが放置された場合でも、画像濃度ムラ等が発生せず、長期に渡り安定した画像を形成し、かつ定着温度幅を狭くさせることのない電子写真用トナーを提供することができる。更に、本発明は、前記電子写真用トナーを用い、画像品質の安定した画像形成方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. 少なくともエポキシ樹脂と、2価フェノールと、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物及び多価カルボン酸の反応生成物である樹脂とを反応させて合成されたポリオール樹脂と、 少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸とを反応させて合成されたポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、
    単独重合体の溶解性パラメータが10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーと、ポリオレフィン樹脂とからなり、少なくともその酸価が2.40KOHmg/gであるか、7.60KOHmg/gであるか又は21.9KOHmg/gであるグラフト重合体を含み、
    前記グラフト重合体に埋包される、酸価5KOHmg/g以下の脱遊離脂肪酸型カルナウバワックスと、着色剤とを含有し、
    トナー体積平均粒径をA、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径をBとしたときB/A×100=aにて表されるワックス分散比率aが0.7〜3.5の範囲内である
    ことを特徴とする電子写真用トナー。
  2. 少なくともエポキシ樹脂と、2価フェノールと、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物及び多価カルボン酸の反応生成物である樹脂とを反応させて合成されたポリオール樹脂と、 少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸とを反応させて合成されたポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、
    単独重合体の溶解性パラメータが10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーと、 ポリオレフィン樹脂とからなり、少なくともその酸価が2.40KOHmg/gであるか、7.60KOHmg/gであるか又は21.9KOHmg/gであるグラフト重合体を含み、
    前記グラフト重合体に埋包される、酸価30KOHmg/g以下の酸化ライスワックスと、着色剤とを含有し、
    トナー体積平均粒径をA、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径をBとしたときB/A×100=aにて表されるワックス分散比率aが0.7〜3.5の範囲内である
    ことを特徴とする電子写真用トナー。
  3. 少なくともエポキシ樹脂と、2価フェノールと、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物及び多価カルボン酸の反応生成物である樹脂とを反応させて合成されたポリオール樹脂と、 少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸とを反応させて合成されたポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、
    単独重合体の溶解性パラメータが10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーと、 ポリオレフィン樹脂とからなり、少なくともその酸価が2.40KOHmg/gであるか、7.60KOHmg/gであるか又は21.9KOHmg/gであるグラフト重合体を含み、
    前記グラフト重合体に埋包される、酸価30KOHmg/g以下のモンタンワックスと、着色剤とを含有し、
    トナー体積平均粒径をA、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径をBとしたときB/A×100=aにて表されるワックス分散比率aが0.7〜3.5の範囲内である
    ことを特徴とする電子写真用トナー。
  4. 少なくともエポキシ樹脂と、2価フェノールと、2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物及び多価カルボン酸との反応生成物である樹脂とを反応させて合成されたポリオール樹脂と、 少なくとも2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物又はそのグリシジルエーテルと、多価カルボン酸とを反応させて合成されたポリエステル樹脂とからなる結着樹脂と、
    単独重合体の溶解性パラメータが10.6〜12.6の範囲にあるビニル系モノマーと、 ポリオレフィン樹脂とからなり、少なくともその酸価が2.40KOHmg/gであるか、7.60KOHmg/gであるか又は21.9KOHmg/gであるグラフト重合体を含み、
    前記グラフト重合体に埋包される、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルワックスと、着色剤とを含有し、
    トナー体積平均粒径をA、トナーに含有されるワックスの平均分散粒径をBとしたときB/A×100=aにて表されるワックス分散比率aが0.7〜3.5の範囲内である
    ことを特徴とする電子写真用トナー。
  5. トナーに含有されるワックスの平均分散粒径が、0.05〜0.8μmの範囲内である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子写真用トナー。
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