JP2024043736A - 回転電機及び回転電機の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異相のセグメントコイルとの間で部分放電が発生することがなく、小型化が可能な回転電機を提供すること。【解決手段】ステータコアと絶縁被膜付きの複数のセグメントコイルとを備え、セグメントコイルは、ステータコアの一方端面から突出するとともに先端部に絶縁被膜が剥離された被膜剥離部をそれぞれ有するステータを備える回転電機であって、セグメントコイルは、ステータコアの一方端面から突出した絶縁被膜の部位において、ステータコアの周方向に斜めに折り曲げられた斜行部と、被膜剥離部において、ステータコアの軸方向に対して斜行部の折り曲げ方向と反対方向に傾斜するように折り曲げられた立上がり部と、をそれぞれ有し、折り曲げ方向が互いに異なる斜行部の先端側に配置される立上がり部の先端同士が、ステータコアの径方向に配列し、溶接されることによって溶接部を形成している。【選択図】図6
Description
本発明は、回転電機及び回転電機の製造方法に関する。
従来、絶縁被膜付きのセグメントコイルをステータコアのスロットに挿入し、ステータコアの一方端面から突出するセグメントコイルの端部を折り曲げた後、同相のセグメントコイルの端部同士を溶接することによって構成されるステータを備える回転電機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ステータコアの一方端面から突出するセグメントコイルの端部は、スロットの近傍の部位でステータコアの周方向に斜めに折り曲げられる。斜めに折り曲げられた部位の先端側には、絶縁被膜が剥離された被膜剥離部が形成されている。斜めに折り曲げられたセグメントコイルの先端側は、絶縁被膜の部位で、ステータコアの軸方向に立上がるようにさらに折り曲げられている。
従来の回転電機のステータでは、斜めに折り曲げられたセグメントコイルの先端側が、絶縁被膜の部位で立上がるように折り曲げられる際、絶縁被膜に曲げ応力が作用することによって絶縁被膜が剥離し、剥離カスが発生するおそれがある。剥離カスは、ステータコアに付着してステータの品質を低下させるおそれがある。
立上がり部の折り曲げ成形時に剥離カスが発生しないようにするために、セグメントコイルの端部の先端側を被膜剥離部の部位で折り曲げることが考えられる。しかし、この場合、折り曲げ部位近傍の被膜剥離部の部位が、ステータコアの径方向に隣接する異相のセグメントコイルの絶縁被膜の部位と接触し、部分放電を発生させるおそれがある。また、被膜剥離部と異相のセグメントコイルとの接触を避けるためにセグメントコイルの端部の長さを長くすると、ステータの軸方向に沿うセグメントコイルの突き出し量が大きくなり、回転電機の小型化が困難になる。
そこで、本発明は、ステータコアの一方端面から突出するセグメントコイルの端部を被膜剥離部で立上がるように折り曲げても、ステータコアの径方向に隣接する異相のセグメントコイルとの間で部分放電が発生することがなく、小型化が可能な回転電機及び回転電機の製造方法を提供することを課題とする。
(1) 本発明に係る回転電機は、複数のスロット(例えば、後述のスロット52)を有するステータコア(例えば、後述のステータコア5)と、前記スロットに挿入された絶縁被膜(例えば、後述の絶縁被膜6A)付きの複数のセグメントコイル(例えば、後述のセグメントコイル6)と、を備え、前記セグメントコイルは、前記ステータコアの一方端面(例えば、後述の端面5b)から突出するとともに先端部(例えば、後述の先端部61a)に前記絶縁被膜が剥離された被膜剥離部(例えば、後述の被膜剥離部6B)をそれぞれ有するステータ(例えば、後述のステータ4)を備える回転電機(例えば、後述の回転電機1)であって、前記セグメントコイルは、前記ステータコアの前記一方端面から突出した前記絶縁被膜の部位において、前記ステータコアの周方向(例えば、後述のX方向)に斜めに折り曲げられた斜行部(例えば、後述の斜行部611)と、前記斜行部の先端側の前記被膜剥離部において、前記ステータコアの軸方向(例えば、後述のZ方向)に対して前記斜行部の折り曲げ方向と反対方向に傾斜するように折り曲げられた立上がり部(例えば、後述の立上がり部612)と、をそれぞれ有し、折り曲げ方向が互いに異なる前記斜行部の先端側に配置される前記立上がり部の先端同士が、前記ステータコアの径方向(例えば、後述のY方向)に配列し、溶接されることによって溶接部(例えば、後述の溶接部100)を形成している、回転電機である。
(2) 本発明に係る回転電機の製造方法は、複数のスロット(例えば、後述のスロット52)を有するステータコア(例えば、後述のステータコア5)と、前記スロットに挿入された絶縁被膜(例えば、後述の絶縁被膜6A)付きの複数のセグメントコイル(例えば、後述のセグメントコイル6)と、を備え、前記セグメントコイルは、前記ステータコアの一方端面(例えば、後述の端面5b)から突出するとともに先端部(例えば、後述の先端部61a)に前記絶縁被膜が剥離された被膜剥離部(例えば、後述の被膜剥離部6B)をそれぞれ有するステータ(例えば、後述のステータ4)を備える回転電機(例えば、後述の回転電機1)の製造方法であって、前記ステータコアの前記一方端面から軸方向(例えば、後述のZ方向)に突出する前記セグメントコイルの前記絶縁被膜の部位を、前記ステータコアの周方向(例えば、後述のX方向)に斜めに折り曲げることによって斜行部(例えば、後述の斜行部611)をそれぞれ形成し、前記斜行部の先端側の前記被膜剥離部を、前記ステータコアの軸方向に対して前記斜行部の折り曲げ方向と反対方向に傾斜するように折り曲げることによって立上がり部(例えば、後述の立上がり部612)をそれぞれ形成し、折り曲げ方向が互いに異なる前記斜行部の先端側に配置される前記立上がり部の先端同士を、前記ステータコアの径方向(例えば、後述のY方向)に配列させ、溶接することによって溶接部(例えば、後述の溶接部100)を形成する、回転電機の製造方法である。
(3) 上記(2)の回転電機の製造方法において、前記ステータコアの前記周方向に沿う回転移動及び前記軸方向に沿う直線移動が可能な折り曲げ治具(例えば、後述の折り曲げ治具71)を用いて、前記ステータコアの前記一方端面から前記軸方向に突出する前記セグメントコイルの前記被膜剥離部を把持し、前記折り曲げ治具を一方向に回転移動させながら前記ステータコアに向けて前記軸方向に直線移動させ、前記セグメントコイルの前記絶縁被膜の部位を前記ステータコアに近づくように斜めに折り曲げるとともに、前記折り曲げ治具を、前記軸方向の位置を維持したまま他方向に戻るように回転移動させた後、前記折り曲げ治具による把持を解除することによって、前記斜行部と前記立上がり部とをそれぞれ形成してもよい。
本発明によれば、ステータコアの一方端面から突出するセグメントコイルの端部を被膜剥離部で立上がるように折り曲げても、ステータコアの径方向に隣接する異相のセグメントコイルとの間で部分放電が発生することがなく、小型化が可能な回転電機及び回転電機の製造方法を提供することができる。
以下、本実施形態の回転電機及び回転電機の製造方法について図面を参照して詳細に説明する。図1に示す回転電機1は、ハウジング2と、ロータ3と、ステータ4と、を備える。回転電機1は、例えばインナーロータ型であり、U相、V相、W相の3相交流のブラシレスDCモータである。回転電機1及びステータ4において、周方向は、ロータ3の回転軸31の回転方向に沿うX方向である。径方向は、ロータ3の回転軸31を中心とする放射方向に沿うY方向である。軸方向は、ロータ3の回転軸31の長さ方向に沿うZ方向である。
ハウジング2は、銅、アルミニウム等の熱伝導性の良い金属材によって円筒状に形成される。ハウジング2の内部には、冷媒を流通させる冷媒流路21が形成されている。ハウジング2の内周面2aにステータ4が固定される。
ロータ3は、回転軸31の外周に図示しない界磁用の複数の永久磁石が配列されている。ロータ3の回転軸31は、図示しないモータハウジング等に回転可能に支持される。
ステータ4は、図1及び図2に示すように、ステータコア5と、ステータコア5に装着される複数のセグメントコイル6と、を含んで構成される。
ステータコア5は、例えば、薄肉のコアプレートが複数積層された積層体からなる円環部51と、円環部51を軸方向に貫通する複数のスロット52と、を有する。複数のスロット52は、ステータコア5の中心を軸方向に貫通する貫通孔50の周囲に、周方向に一定の間隔をおいて放射状に配列されている。
セグメントコイル6は、例えば、断面矩形状の平角線からなる導体を略U字形状に成形することによって構成される。セグメントコイル6は、図2及び図3に示すように、一対の平行な直線部61と、その一対の直線部61の一方端部同士を連結する連結部62と、をそれぞれ有する。本実施形態では、図3に示すように、4本のセグメントコイル6がステータコア5の径方向に積層されて束ねられている。束ねられた4本のセグメントコイル6は、一方の直線部61と他方の直線部61とを異なる2つのスロット52,52にそれぞれ挿入することによって、ステータコア5に装着される。
本実施形態では、1つのスロット52に、束ねられた4本のセグメントコイル6の直線部61と、別に束ねられた4本のセグメントコイル6の直線部61とが、ステータコア5の径方向に重ねられて挿入される。これによって、各スロット52内には、8本のセグメントコイル6の直線部61が挿入され、ステータコア5の径方向に積層される。スロット52に挿入された各セグメントコイル6の両端部に配置される直線部61,61は、図4に示すように、ステータコア5の軸方向の挿入側の端面5aとは反対側の端面(一方端面)5bから直立するように突出する。
なお、本実施形態において、セグメントコイル6は単線からなるものを例示するが、セグメントコイル6は、2本以上の導体を並列させて構成されるものであってもよい。この場合、スロット52内には、ステータコア5の径方向に、1本のセグメントコイル6を構成する2本以上の導体が並列して配置される。また、ステータコア5のスロット52内にはそれぞれ絶縁部材が挿入されるが、図3及び図4に示すステータコア5では、絶縁部材は図示省略されている。
全てのセグメントコイル6がステータコア5の全てのスロット52に挿入された後、ステータコア5の端面5bから突出する直線部61は、それぞれステータコア5の周方向に折り曲げられる。折り曲げられた同相のセグメントコイル6の直線部61の先端同士は、径方向に揃えられ、溶接されることによって接合される。
図5は、ステータコア5の端面5bから突出するセグメントコイル6の2本の直線部61,61を示す。2本の直線部61,61は、同一のスロット52内においてステータコア5の径方向に隣接して配列されている。各セグメントコイル6の全体は、樹脂製の絶縁被膜6Aによって被覆されるが、セグメントコイル6のそれぞれの直線部61の先端部61aだけは、所定の長さに亘って絶縁被膜6Aが完全に剥離されている。これによって、直線部61の先端部61aに、被膜剥離部6Bがそれぞれ形成されている。
ステータコア5の端面5bから突出するセグメントコイル6の直線部61は、スロット52の近傍の絶縁被膜6Aの部位において、ステータコア5の周方向に斜めに折り曲げられる。これによって、斜行部611がそれぞれ形成される。さらに、斜行部611の先端側に配置される被膜剥離部6Bは、ステータコア5の軸方向に向かい、かつ軸方向に対して斜行部611の折り曲げ方向と反対方向に傾斜するように折り曲げられる。これによって、斜行部611の先端側に立上がり部612がそれぞれ形成される。
同一のスロット52に挿入されてステータコア5の径方向に隣接する複数の直線部61は、それぞれ斜行部611を形成するために、ステータコア5の周方向に沿って互いに反対方向となるように斜めに折り曲げられる。詳しくは、ステータコア5の径方向に隣接する2つの直線部61,61のうち、一方の直線部61の斜行部611は、ステータコア5の周方向に沿うX1方向に折り曲げられる。その斜行部611の先端の立上がり部612は、ステータコア5の軸方向に対して、ステータコア5の周方向に沿うX2方向に僅かに傾斜するように折り曲げられる。そして、他方の直線部61の斜行部611は、ステータコア5の周方向に沿うX2方向に折り曲げられる。その斜行部611の先端の立上がり部612は、ステータコア5の軸方向に対して、ステータコア5の周方向に沿うX1方向に僅かに傾斜するように折り曲げられる。各スロット52内において、ステータコア5の径方向の同一位置に配置される直線部61の斜行部611は、X1方向又はX2方向の同一方向に折り曲げられる。
立上がり部612は、被膜剥離部6Bのみによってそれぞれ形成される。立上がり部612の曲げ起点Pは、絶縁被膜6Aと被膜剥離部6Bとの境界部6Cよりも先端側の被膜剥離部6B上に配置され、絶縁被膜6A上には配置されない。そのため、折り曲げ成形時の曲げ応力が絶縁被膜6Aに作用することはなく、絶縁被膜6Aの剥離カスが発生することはない。曲げ起点Pにおいて折り曲げられた後の立上がり部612の立上がり方向に沿う線DLとステータコア5の端面5bとがステータコア5の周方向に成す角度θ1は、いずれも90度よりも大きい。したがって、立上がり部612は、直線部61が挿入されているスロット52に向けて僅かに曲げ戻されるように傾斜している。
ステータコア5のスロット52に挿入された全てのセグメントコイル6の直線部61には、斜行部611と被膜剥離部6Bからなる立上がり部612とが、上記同様にそれぞれ折り曲げ成形される。その後、図6に示すように、ステータコア5の径方向に隣接し、斜行部611の折り曲げ方向が反対方向となる同相のセグメントコイル6の直線部61,61の立上がり部612,612同士が、ステータコア5の径方向に揃えられて溶接される。これによって、立上がり部612の先端部61aに溶接部100が形成される。
立上がり部612は、直線部61が挿入されているスロット52に向けて僅かに曲げ戻されるように傾斜しているため、同相のセグメントコイル6の立上がり部612,612の先端部61a,61a同士が揃えられた際、絶縁被膜6Aと被膜剥離部6Bとの境界部6Cの位置は、図6中に矢印で示すように、互いにより近づいて配置される。全ての境界部6Cは、異相のセグメントコイル6の斜行部611と交差することはないため、互いに交差する異相のセグメントコイル6,6は、図6中のA部で示すように、絶縁被膜6A,60A同士で接触し、被膜剥離部6Bと接触する部位を持たない。したがって、ステータコア5の径方向に隣接する異相のセグメントコイル6,6間で部分放電が発生するおそれはない。また、部分放電の発生を回避するために各セグメントコイル6の直線部61の突き出し量を大きくする必要はなく、ステータ4は小型化されるため、回転電機1の小型化が可能である。
これに対し、本実施形態とは異なり、図7に示すように、立上がり部612が曲げ戻されるように傾斜していない場合、同相のセグメントコイル6の立上がり部612,612の先端部61a,61a同士が揃えられた際、絶縁被膜6Aと被膜剥離部6Bとの境界部6Cの位置は、図6に示す本実施形態の場合に比べて互いに離れて配置される。そのため、図7中のB部で示すように、絶縁被膜6Aと被膜剥離部6Bとの接触部位が発生してし、ステータコア5の径方向に隣接する異相のセグメントコイル6,6間で部分放電が発生するおそれがある。
次に、本実施形態の回転電機1のステータ4を製造する方法の一例について、図8~図11を参照して説明する。
図8は、本実施形態の回転電機1のステータ4の製造に使用される折り曲げ成形装置7を示す。図9は、折り曲げ成形装置7の一部を底面側から見た図である。折り曲げ成形装置7は、同心円状に配置される複数の円筒状の折り曲げ治具71を含んで構成される。
折り曲げ治具71は、ステータコア5の周方向に配列されるセグメントコイル6の直線部61の先端部61aをそれぞれ1本ずつ収容して把持する複数の把持溝711を有する。把持溝711は、側面視で縦長矩形状に形成され、各折り曲げ治具71の下面71a及び外側面にそれぞれ開放している。把持溝711の長手方向は、折り曲げ治具71の下面71aに対して垂直方向に配置され、折り曲げ治具71の軸方向に沿って延びている。折り曲げ治具71の下面71aは、ステータコア5の端面5bに対して平行に配置される。
1つの折り曲げ治具71は、各スロット52内の径方向の同一位置に配置される全ての直線部61の先端部61aを把持溝711にそれぞれ収容して把持する。図9は、同心円状に配置される4つの折り曲げ治具71を示している。4つの折り曲げ治具71は、ステータコア5のスロット52内において径方向に積層される8層の直線部61のうち、径方向外側又は径方向内側の4層の直線部61の先端部61aをそれぞれ把持する。
4つの折り曲げ治具71は、図示しない駆動部の駆動によって周方向に回転移動するとともに、上下方向に一体的に直線移動する。4つの折り曲げ治具71は、図9中の矢印で示すように、図示しない駆動部の駆動によって、それぞれの回転方向が時計方向及び反時計方向に交互に反対になるように回転移動可能に構成される。
ステータコア5の端面5bから軸方向に突出するセグメントコイル6の直線部61を折り曲げ成形する際、直線部61の先端部61aの被膜剥離部6Bの部位が、図10に示すように、折り曲げ成形装置7の各折り曲げ治具71の把持溝711にそれぞれ把持される。このとき、折り曲げ治具71の下面71aは、境界部6Cよりも先端側に配置される。したがって、折り曲げ治具71は、直線部61における絶縁被膜6Aと被膜剥離部6Bとの境界部6Cよりも被膜剥離部6B側を把持溝711に収容して把持し、絶縁被膜6Aを把持しない。
直線部61の被膜剥離部6Bを把持した折り曲げ成形装置7の折り曲げ治具71は、図11に示すように、ステータコア5の周方向に沿う一方向(図11ではX1方向)に回転移動しながらステータコア5の端面5bに向けて軸方向に直線移動する。このときの折り曲げ治具71は、X1方向に向かう円弧状の曲げ加工軌道BT1を描く。これによって、ステータコア5の端面5bから突出する直線部61は、端面5bの近傍を曲げ起点として、絶縁被膜6Aの部位がステータコア5に近づくようにX1方向に斜めに折り曲げられる。
折り曲げ治具71は、把持溝711によって把持した直線部61の先端部61aの直立姿勢を維持したまま回転移動及び直線移動する。そのため、直線部61がX1方向に折り曲げられるのと同時に、境界部6Cの近傍の被膜剥離部6Bの部位を曲げ起点として被膜剥離部6Bが反対方向(図11ではX2方向)に折り曲げられる。
折り曲げ治具71のX1方向に向けた回転移動は、把持溝711に把持された直線部61の先端部61aが根元のスロット52に対して、ステータコア5の周方向に沿って所定の距離Lとなる位置で停止する。この距離Lは、図7に示す従来の斜行部611及び立上がり部612を折り曲げ成形する場合よりも長い。すなわち、本実施形態において、折り曲げ成形装置7は、折り曲げ治具71を、把持溝711内の直線部61の先端部61aが従来よりもスロット52から離れる位置まで多めに回転移動させる。これによって、折り曲げられた直線部61は、折り曲げ方向に沿って延伸されるように曲げ成形される。
また、折り曲げ治具71のステータコア5に向けた直線移動は、折り曲げ治具71の下面71aがステータコア5の端面5bに対して、ステータコア5の軸方向に沿う所定の高さHとなる位置で停止する。この高さHは、図7に示す従来の斜行部611及び立上がり部612を折り曲げ成形する場合よりも低い。すなわち、本実施形態において、折り曲げ成形装置7は、折り曲げ治具71を、従来よりもステータコア5に近づく位置まで多めに直線移動させる。したがって、折り曲げ治具71が高さHに到達したときの折り曲げ方向と把持溝711に把持される先端部61aの延び方向とが成す角度θ2は、従来よりも小さくなる。
折り曲げ治具71が所定の距離L及び所定の高さHに到達すると、折り曲げ治具71の回転移動及び直線移動は一旦停止する。その後、折り曲げ治具71は、軸方向の高さHを維持したまま、直線部61を斜めに折り曲げる際の折り曲げ方向(X1方向)とは反対方向(X2方向)に戻るように所定の角度だけ回転移動する。このときの折り曲げ治具71は、X2方向に向かう直線状の曲げ加工軌道BT2を描く。折り曲げ治具71のX2方向に向かう回転角度は、直線部61の折り曲げ成形時のX1方向に向かう回転角度よりも十分に小さい角度(例えば、1度)である。
折り曲げ治具71は、曲げ加工軌道BT2を描いた後、ステータコア5から離れる方向に直線移動し、直線部61の先端部61aの把持を解除する。これによって、ステータコア5の端面5bから突出する直線部61に斜行部611と立上がり部612とが同時に形成される。
折り曲げ治具71の把持解除によって直線部61にはスプリングバックSBが発生する。直線部61は、曲げ加工軌道BT2を描く折り曲げ治具71の回転移動によって曲げ戻されるように成形されているため、直線部61のスプリングバックSBは、従来の折り曲げ成形後に期待されるスプリングバックよりも大きくなる。そのため、図5に示すように、被膜剥離部6Bによって形成される立上がり部612の立上がり方向に沿う線DLとステータコア5の端面5bとがステータコア5の周方向に成す角度θ1は、90度よりも大きくなり、斜行部611の折り曲げ方向(X1方向)と反対方向(X2方向)に傾斜するように形成される。
図11では、1本の直線部61にX1方向に折り曲げられる斜行部611を形成しているが、直線部61に対してステータコア5の径方向に隣接する他の直線部61は、折り曲げ治具71が反対方向に回転移動することによって、図5に示すように、X2方向に折り曲げられる斜行部611を形成する。また、図8及び図9に示す折り曲げ成形装置7の4つの折り曲げ治具71によって径方向外側又は径方向内側の4層の直線部61の先端部61aを把持して折り曲げ成形した後、残りの径方向内側又は径方向外側の4層の直線部61は、この折り曲げ成形装置7の折り曲げ治具71と外径以外は同一構成の折り曲げ治具71を有する折り曲げ成形装置によって、上記同様に折り曲げ成形される。折り曲げ成形装置は、スロット52内の8層の直線部61を、8つの折り曲げ治具71によって同時に折り曲げ成形するように構成されてもよい。
全ての直線部61に斜行部611及び立上がり部612が形成された後、図6に示すように、ステータコア5の径方向に隣接し、斜行部611の折り曲げ方向が反対方向となる同相のセグメントコイル6の直線部61,61の立上がり部612,612同士が、ステータコア5の径方向に揃えられて溶接される。回転電機1は、このようにして得られたステータ4をハウジング2の内周面2aに固定することによって製造される。
本実施形態の回転電機1及び回転電機1の製造方法によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態の回転電機1は、複数のスロット52を有するステータコア5と、スロット52に挿入された絶縁被膜6A付きの複数のセグメントコイル6と、を備え、セグメントコイル6は、ステータコア5の一方端面5bから突出するとともに先端部61aに絶縁被膜6Aが剥離された被膜剥離部6Bをそれぞれ有するステータ4を備える回転電機1であって、セグメントコイル6は、ステータコア5の一方端面5bから突出した絶縁被膜6Aの部位において、ステータコア5の周方向に斜めに折り曲げられた斜行部611と、被膜剥離部6Bにおいて、ステータコア5の軸方向に対して斜行部611の折り曲げ方向と反対方向に傾斜するように折り曲げられた立上がり部612と、をそれぞれ有し、折り曲げ方向が互いに異なる斜行部611,611の先端側に配置される立上がり部612,612の先端同士が、ステータコア5の径方向に配列し、溶接されることによって溶接部100を形成している。
これによれば、同相のセグメントコイル6の立上がり部612,612の先端部61a,61a同士が揃えられた際、絶縁被膜6Aと被膜剥離部6Bとの境界部6Cの位置は、互いにより近づいて配置される。全ての境界部6Cは、異相のセグメントコイル6の斜行部611と交差することはない。そのため、ステータコア5の一方端面5bから突出するセグメントコイル6の端部を被膜剥離部6Bで立上がるように折り曲げても、互いに交差する異相のセグメントコイル6,6は、絶縁被膜6A,60A同士で接触し、被膜剥離部6Bと接触する部位を有しない。したがって、ステータコア5の径方向に隣接する異相のセグメントコイル6,6間で部分放電が発生するおそれはない。また、部分放電の発生を回避するために各セグメントコイル61の直線部61の突き出し量を大きくする必要はなく、ステータ4は小型化されるため、回転電機1の小型化が可能である。
本実施形態の回転電機1の製造方法は、複数のスロット52を有するステータコア5と、スロット52に挿入された絶縁被膜6A付きの複数のセグメントコイル6と、を備え、セグメントコイル6は、ステータコア5の一方端面5bから突出するとともに先端部61aに絶縁被膜6Aが剥離された被膜剥離部6Bをそれぞれ有するステータ4を備える回転電機1の製造方法であって、ステータコア5の一方端面5bから軸方向に突出するセグメントコイル6の絶縁被膜6Aの部位を、ステータコア5の周方向に斜めに折り曲げることによって斜行部611をそれぞれ形成し、斜行部611の先端側の被膜剥離部6Bを、ステータコア5の軸方向に対して斜行部611の折り曲げ方向と反対方向に傾斜するように折り曲げることによって立上がり部612をそれぞれ形成し、折り曲げ方向が互いに異なる斜行部611,611の先端側に配置される立上がり部612,612の先端同士を、ステータコア5の径方向に配列させ、溶接することによって溶接部100を形成する。
これによれば、上記効果を奏する回転電機1を得ることができる。
本実施形態の回転電機1の製造方法において、ステータコア5の周方向に沿う回転移動及び軸方向に沿う直線移動が可能な成形装置7を用いて、ステータコア5の一方端面5bから軸方向に突出するセグメントコイル6の被膜剥離部6Bを把持し、成形装置7を一方向に回転移動させながらステータコア5に向けて軸方向に直線移動させ、セグメントコイル6の絶縁被膜6Aの部位をステータコア5に近づくように斜めに折り曲げるとともに、成形装置7を、軸方向の位置を維持したまま他方向に戻るように回転移動させた後、成形装置7による把持を解除することによって、斜行部611と立上がり部612とをそれぞれ形成する。
これによれば、ステータコア5の一方端面5bから突出するセグメントコイル6に、斜行部611と立上がり部612を同時に且つ容易に折り曲げ成形することができる。そのため、上記効果を奏する回転電機1を効率良く製造することができる。
1 回転電機
4 ステータ
5 ステータコア
5b 端面(一方端面)
52 スロット
6 セグメントコイル
6A 絶縁被膜
6B 被膜剥離部
61a 先端部
611 斜行部
612 立上がり部
71 折り曲げ治具
100 溶接部
4 ステータ
5 ステータコア
5b 端面(一方端面)
52 スロット
6 セグメントコイル
6A 絶縁被膜
6B 被膜剥離部
61a 先端部
611 斜行部
612 立上がり部
71 折り曲げ治具
100 溶接部
Claims (3)
- 複数のスロットを有するステータコアと、前記スロットに挿入された絶縁被膜付きの複数のセグメントコイルと、を備え、前記セグメントコイルは、前記ステータコアの一方端面から突出するとともに先端部に前記絶縁被膜が剥離された被膜剥離部をそれぞれ有するステータを備える回転電機であって、
前記セグメントコイルは、前記ステータコアの前記一方端面から突出した前記絶縁被膜の部位において、前記ステータコアの周方向に斜めに折り曲げられた斜行部と、前記被膜剥離部において、前記ステータコアの軸方向に対して前記斜行部の折り曲げ方向と反対方向に傾斜するように折り曲げられた立上がり部と、をそれぞれ有し、
折り曲げ方向が互いに異なる前記斜行部の先端側に配置される前記立上がり部の先端同士が、前記ステータコアの径方向に配列し、溶接されることによって溶接部を形成している、回転電機。 - 複数のスロットを有するステータコアと、前記スロットに挿入された絶縁被膜付きの複数のセグメントコイルと、を備え、前記セグメントコイルは、前記ステータコアの一方端面から突出するとともに先端部に前記絶縁被膜が剥離された被膜剥離部をそれぞれ有するステータを備える回転電機の製造方法であって、
前記ステータコアの前記一方端面から軸方向に突出する前記セグメントコイルの前記絶縁被膜の部位を、前記ステータコアの周方向に斜めに折り曲げることによって斜行部をそれぞれ形成し、
前記斜行部の先端側の前記被膜剥離部を、前記ステータコアの軸方向に対して前記斜行部の折り曲げ方向と反対方向に傾斜するように折り曲げることによって立上がり部をそれぞれ形成し、
折り曲げ方向が互いに異なる前記斜行部の先端側に配置される前記立上がり部の先端同士を、前記ステータコアの径方向に配列させ、溶接することによって溶接部を形成する、回転電機の製造方法。 - 前記ステータコアの前記周方向に沿う回転移動及び前記軸方向に沿う直線移動が可能な折り曲げ治具を用いて、前記ステータコアの前記一方端面から前記軸方向に突出する前記セグメントコイルの前記被膜剥離部を把持し、
前記折り曲げ治具を一方向に回転移動させながら前記ステータコアに向けて前記軸方向に直線移動させ、前記セグメントコイルの前記絶縁被膜の部位を前記ステータコアに近づくように斜めに折り曲げるとともに、前記折り曲げ治具を、前記軸方向の位置を維持したまま他方向に戻るように回転移動させた後、前記折り曲げ治具による把持を解除することによって、前記斜行部と前記立上がり部とをそれぞれ形成する、請求項2に記載の回転電機の製造方法。
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JP2022148893A JP7474297B2 (ja) | 2022-09-20 | 2022-09-20 | 回転電機及び回転電機の製造方法 |
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JP7474297B2 JP7474297B2 (ja) | 2024-04-24 |
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JP7401778B2 (ja) | 2020-05-21 | 2023-12-20 | ダイキン工業株式会社 | 回転電気機械およびその製造方法 |
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