JP3786058B2 - 回転電機のセグメント順次接合ステータコイルおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転電機のセグメント順次接合型ステータコイルおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ステータコアのスロットに挿通された多数のセグメント導体を順次接合して形成されたセグメント順次接合型ステータコイルが提案されている。たとえば、特許第3118837号は、略U字形状を有する導体片であるセグメントを順次接合して形成されたセグメント順次接合型コイルの製造について開示している。
【0003】
更に説明すると、このセグメント順次接合型ステータコイルは、セグメントの一対の脚部を回転子の略磁極ピッチだけ互いに離れた一対のスロットに個別に挿通して飛び出した両端部を周方向へ曲げ、各セグメントの両脚部の先端を順次接合して形成されている。
【0004】
つまり、このセグメントは、略U字状(より正確には略V字状)の頭部(曲がり部又はターン部とも呼ばれる)と、この頭部の両端からコアの互いに異なる二つのスロットにコアの軸方向一側から個別に挿入された一対のスロット導体部と、両スロット導体部の先端からコアの軸方向他側へ飛び出して周方向へ延在する一対の飛び出し端部とをそれぞれ有し、各飛び出し端部の先端部は、一対づつ接合されている。なお、この明細書では、スロット導体部と飛び出し端部とをまとめてセグメントの脚部と呼称する場合もあるものとする。したがって、各セグメントの頭部はステータコイルの頭部側コイルエンド)を構成し、各セグメントの飛び出し端部はステータコイルの端部側コイルエンドを構成する。
【0005】
また、特許第3118837号は、小回りセグメントと、この小回りセグメントを囲む大回りセグメントとにより構成されたセグメントセットの合計4本の脚部を互いに同軸配置された2つのリングに個別に保持し、これらリングを相対回動させて、各セグメントの一対の脚部を周方向へ展開して頭部斜行部を形成することを開示している。
【0006】
また、特開2000−139049は、ステータコアのスロットにそれぞれ収容された小回りセグメントと、この小回りセグメントを囲む大回りセグメントとにより構成されたセグメントセットの合計4本の脚部を互いに同軸配置された4つのリングに個別に保持し、これらリングを相対回動させて、各セグメントの一対の脚部を周方向へ展開して端部斜行部を形成することを開示している。
【0007】
更に、特許第310470号は、径方向に隣接する端部先端部のペアを溶接すること、周方向に隣接する2つの端部先端部の間に拘束部材を介在させて端部先端部のペアの姿勢を確保することを開示している。
【0008】
上記公報などに開示されているこのセグメント順次接合型ステータコイルの製造方法例について、以下に説明する。
【0009】
まず、必要本数の松葉状セグメントを準備する。次に、松葉状セグメントをU字状セグメントに加工してセグメントの一対のスロット導体部を周方向へ互いに略磁極ピッチ離れさせるともに必要数のセグメントをコアの各スロットに同時挿通できるようにそれらを空間配置(周方向へ整列)させる工程が行われる。この工程は、たとえば上記特許3118837号の第3図に示される同軸の複数の穴付きのリングを用い、これら穴付きのリングの周方向同位置の各穴に松葉状セグメントの両脚部を個別に挿入し、各リングを略磁極ピッチ相対回転して、この松葉状セグメントを頭部が周方向へU字状(V字状と考えても良い)に開いたU字状セグメントに加工することにより行われる。この工程は、通常、小回りセグメントと大回りセグメントとからなるセグメントセットに対して実施される。
【0010】
次に、U字状に形成され、周方向に整列された各セグメントをコアの各スロットに挿入される工程が行われる。この工程は、U字状に変形され、周方向に整列された各セグメントの頭部を保持しつつ脚部を上記一対の穴付きリングから抜き出し、コアの各スロットに挿入することにより行なわれる。
【0011】
次に、スロットから飛び出した各飛び出し端部を周方向へ屈曲する工程が行われる。好適には、各飛び出し端部は半磁極ピッチだけ周方向へ屈曲される。このような周方向屈曲は、たとえば上記特許3196738号の第4図、第5図に示される同軸の複数の穴付きリングを用い、各穴付きリングの各穴に各飛び出し端部の先端を挿入し、各穴付きリングをそれぞれ周方向へ半磁極ピッチ(電気角π/2)回動して、各飛び出し端部をそれぞれ周方向へ半磁極ピッチ屈曲させればよい。なお、各穴付きリングを回動させる際、各穴付きリングを飛び出し端部に向けて軸方向に付勢しながら行うと、屈曲点の曲率半径を大きくできるので好適である。次に、各飛び出し端部の先端部を所定の順序で溶接する工程が行われる。
【0012】
これにより各相のコイルを意味する相コイルがエンドレスに形成されるので、適切な部位でU字状セグメントのU字状の頭部を切断することにより、頭部側にて各相コイルの引き出し端子を形成することができる。これら引き出し端子をあらかじめ長く形成しておけば、この長く形成した部分を周方向へ屈曲することにより、中性点用の渡り線などとして用いることができる。なお、これらの引き出し端子を頭部側コイルエンドに設けるのは、端部側コイルエンドでは、溶接工程があるため、長い引き出し端子が邪魔になるからである。
【0013】
上記説明したセグメント順次接合ステータコイルは、従来、車両用交流発電機のステータコイルとして用いられていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報などにより開示されているセグメント順次接合型ステータコイルでは、次の問題があった。
【0015】
たとえば、端部斜行部の形成について説明すると、ステータコアから飛び出したセグメントの一対の未展開の飛び出し端部(脚部の飛び出し部分)は開き処理前に周方向等同位置かつ径方向異なる位置に存在する。飛び出し端部の開き処理(周方向への転回処理)により、飛び出し端部の先端にて軸方向に突出する端部先端部はリングに保持されて互いに逆方法へ回動し、脚部の飛び出し部分すなわち飛び出し端部は周方向へ捻られる。
【0016】
ところが、この端部展開(捻り)処理において、リング回動により端部先端部自身はリングに保持されて周方向へ回動するが、端部先端部とスロット導体部との間の脚部の飛び出し部分が周方向へ捻られて形成された端部斜行部は、このリング回動後、静止しているスロット導体部の一端と回動後の端部先端部とを最短距離で結ぶべく直線状に周方向かつ軸方向へ斜めに倒れることになる。
【0017】
このことは、同様のリングを用いた処理である頭部斜行部の開き処理においても全く同じである。
【0018】
その結果、開き(捻り)角度が大きい場合、上記直線状の頭部斜行部や端部斜行部のうち特に径方向内側のものが、ステータコアの内周面よりも更に径方向内側に進入してしまうため、ステータコア内部へのロータの挿入や、ロータの端面に設けたファンとの干渉が問題となる。
【0019】
また、上述したように、頭部斜行部や端部斜行部が円周面を延在するのではなく平面上を延在することは、頭部斜行部や端部斜行部とその先端の頭部先端部や端部先端部との境界部にて、及び、頭部斜行部や端部斜行部とスロット導体部との境界部にて、これら頭部斜行部や端部斜行部を断面角形の導体をその角部に向けて折り曲げることを意味し、この境界部分の絶縁皮膜に大きなストレスを生じさせてセグメントの電気絶縁性を低下させ、走行モータのような高電圧回転電機に採用する場合の弱点となる可能性があった。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、セグメントの絶縁皮膜に対するストレスが小さく、かつ、ロータ挿入作業との干渉を回避可能な回転電機のセグメント順次接合ステータコイル及びその製造方法を提供することをその目的としている。
【0020】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、セグメントの絶縁皮膜に対するストレスが小さく、かつ、ロータ挿入作業との干渉を回避可能な回転電機のセグメント順次接合ステータコイル及びその製造方法を提供することをその目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、径方向へ順番に並んだ偶数個の導体収容位置を有するステータコアのスロットに収容され、順次接続されてM(Mは3以上の整数)相電機子コイルの相コイルの1ターンを構成する多数のセグメントを有し、前記セグメントは、互いに所定ピッチ離れた一対の前記スロットの互いに異なる導体収容位置に個別に収容される一対のスロット導体部と、前記両スロット導体部から前記ステータコアの一端側へ突出して頭部側コイルエンドを構成する頭部と、前記両スロット導体部から前記ステータコアの他端側へ突出して端部側コイルエンドを構成する一対の飛び出し端部とを有し、前記頭部は、略U字状の頭部先端部と、前記頭部先端部の両端から周方向かつ軸方向へ斜行して前記一対のスロット導体部に個別に連なる一対の頭部斜行部とからなり、前記飛び出し端部は、前記一対のスロットから周方向かつ軸方向へ斜行する一対の端部斜行部と、前記端部斜行部の先端に形成されて異なる前記セグメントの前記端部斜行部の先端に接合される端部先端部とからなる回転電機のセグメント順次接合ステータコイルにおいて、
前記頭部斜行部又は前記端部斜行部は、前記ステータコアの軸心を中心として円弧状に形成されていることを特徴としている。
【0022】
このように構成すれば、頭部斜行部や端部斜行部がステータコアの内周面より径方向内側へ進入することがないので、ロータ組み付け作業の邪魔になることがなく、大径のファンの設置も容易となる。
【0023】
また、頭部斜行部や端部斜行部の両端では折り曲げが生じるが、この折り曲げの方向は周方向となり、セグメントの角形断面の径方向へ延在する辺を折り曲げ線として折り曲げが生じるので、絶縁皮膜に掛かるストレスを従来より格段に低減することができ、特に高電圧用途に有利となる。
【0024】
請求項2記載の構成は請求項1記載の構成において更に、径方向に隣接する一対の前記導体収容位置に個別に収容される一対の前記スロット導体部に連なる小回り頭部を有する前記セグメントである小回りセグメントと、前記小回り頭部を径方向へ囲む大回り頭部を有する前記セグメントである大回りセグメントとにより構成されるセグメントセットを、径方向へ複数セット有し、径方向にて等しい位置を有して周方向に配列される多数の前記セグメントセットは、所定の相電圧が印加される部分相コイルを形成し、前記相コイルは、径方向に異なる前記セグメントセットにより別々に形成された多数の前記部分相コイルを、径方向に隣接する前記部分相コイル同士の順次接続により直列接続して構成されることを特徴としている。
【0025】
従来、セグメント順次接合ステータコイルを用いる回転電機の用途としては車両用交流発電機が考えられていたが、更に大出力の車両の走行モータとして採用することが期待される。走行モータは配線、ステータコイルの抵抗損失低減のために従来より格段に高いバッテリ電圧(数百V)により給電される必要がある。しかし、両者の回転数にほとんど相違がないため、走行モータ用のセグメント順次接合ステータコイルは車両交流発電機用のセグメント順次接合ステータコイルに比較して格段の多ターン化が要求されることになる。
【0026】
ターン数の増大には、図13に示すようにセグメント33(a〜e)を多重相互囲み配置すること(図13では5重)によりスロットS内の径方向導体数を増加することが考えられるが、この多重相互囲みセグメント方式によれば、囲み数に等しい種類のセグメントが必要となること、外側のセグメント33eの頭部の配線距離が長くなるために配線抵抗が増大してしまうという問題があった。
【0027】
特に、このU字状のセグメントの頭部先端部Hの径方向幅は製造上の理由によりその脚部L対の径方向幅よりも大きくなるため、図15では省略したが、実際には図13によれば頭部側コイルエンド311の径方向幅Wが相当に大きくなり、頭部側コイルエンド311の軸方向長も増大して、モータ軸長が増大し、その体格重量も増大してしまうという問題もあった。
【0028】
更に、上記したようにセグメントの頭部の径方向幅がその脚部対の径方向幅よりも大きくなるために、展開時の擦れ合いを防止するために径方向に隣接する異なるセグメントの脚部H、H間に隙間dを確保しなければならず、その分だけスロット占積率が低下してしまうという問題があった。
【0029】
また更に、上記多重の囲みにより内部のセグメント33aは放熱が悪くなるという問題もあった。
【0030】
このような問題に対し、この構成では、図3に示すように、スロット内の径方向へ連続する4つの導体収容位置を占めるセグメントセットを径方向に積み重ね、周方向に配列される所定のセグメントセットを直列接続して部分相コイルを構成し、それぞれ異なる径方向位置のセグメントセットにより構成されて互いに径方向に隣接する各部分相コイルを径方向に順次接続して相コイルを形成する構成を採用した。
【0031】
この構成によれば、径方向に隣接する各部分相コイルの接続を異形のU字状のセグメントを用いることにより簡単に実施することができ、その上、径方向に異なるセグメントセット(部分相コイル)間の温度や配線長さのばらつきにより電流分布が局部的に集中して局部的に過熱が生じることもなく、容易に多ターン化を実現することができる。
【0032】
請求項3記載の構成は請求項2記載の構成において更に、同じ相電圧が印加されるスロット導体部をそれぞれ収容するとともに互いに周方向に連続して隣接する多数の前記スロットにより構成される同相スロット群を有し、共通の前記スロットに収容されてそれぞれ径方向に異なる位置をもつ多数の前記部分相コイルを径方向に隣接する前記部分相コイル同士の順次接続により直列接続してそれぞれ構成されて同相スロット群の互いに異なるスロットに収容される多数の前記直列相コイル回路を有し、前記相コイルは、前記多数の直列相コイル回路を並列接続して構成されることを特徴としている。
【0033】
従来、セグメント順次接合ステータコイルを用いる回転電機の用途としては車両用交流発電機が考えられていたが、更に大出力の車両の走行モータとして採用することが期待される。このような大出力化には、大電流が必要であり、大電流化のためのセグメント断面積の増大には限界があるため、部分相コイルを並列に接続して相コイルの合計断面積を増大する必要があるが、このような並列接続は渡り線の追加などを必要とするためセグメント順次接続により構成することが容易ではなかった。
【0034】
そこで、この構成では、請求項2記載の相コイルを直列相コイル回路とし、この直列相コイル回路を複数設け、各直列相コイル回路を同相スロット群の互いに異なるスロットに収容する構成を採用した。本構成によれば、各直列相コイル回路間の配線抵抗のばらつきをなくすことができ、また、各部分相コイル間の電流ばらつきを良好に低減することができる。特に、径方向異なる位置の部分相コイル間の抵抗ばらつきがあったとしても、上記各直列相コイル回路間の抵抗ばらつきが生じないという利点は重要な利点である。
【0035】
したがって、この構成によれば、多種類のセグメントを用いたり、コイルエンドにて複雑な特別の渡り線を追加したりすることなく、コイルの多ターン化を実現することができ、高電圧を必要とする自動車用走行モータのステータコイルを実現することができる。
【0036】
請求項4記載の本発明は、略U字状の頭部と、前記頭部の両端から平行に真っ直ぐに延在する一対の脚部とを有する未展開のセグメントを準備し、ステータコアの互いに所定ピッチ離れた一対のスロットに前記両脚部の中央部を挿通し、前記ステータコアの中心軸を中心として同軸配置されて互いに相対回動可能な複数のリングを準備し、前記一対の脚部のうち前記スロットから前記頭部と反対側へ所定の軸方向長さだけ飛び出した飛び出し部分の先端部を互いに異なる前記リングにより個別に軸方向へ保持し、前記各リングを相対回動させることにより前記飛び出し部分を径方向にみて軸心に対して斜めとなるように曲げて端部斜行部となし、前記互いに隣接する前記一対の脚部の先端同士を接合することにより多数の前記セグメントを順次接続してステータコイルとする回転電機のセグメント順次接合ステータコイルの製造方法において、
前記脚部の飛び出し部分が前記リング回動中に摺接する略円筒状の外周面をもつ筒状案内部材を配置することにより、前記端部斜行部を軸方向にみて円弧状に湾曲させることを特徴としている。
【0037】
このようにすれば、簡単に端部斜行部を円弧状に斜行させることができ、請求項1記載の効果を簡素な作業により実現することができる。
【0038】
請求項5記載の発明は、略U字状の頭部と、前記頭部の両端から平行に真っ直ぐに延在する一対の脚部とを有する未展開のセグメントを準備し、同軸配置されて互いに相対回動可能な複数のリングを準備し、前記両脚部の中央部分を前記リングで個別に保持し、前記各リングを回動させることにより前記脚部のうち前記頭部側に残留する脚部の残留部分を径方向にみて軸心に対して斜めとなるように曲げて頭部斜行部となす回転電機のセグメント順次接合ステータコイルの製造方法において、
前記リング回動中に前記脚部の残留部分が摺接する略円筒状の外周面をもつ筒状案内部材を配置することにより、前記頭部斜行部を軸方向にみて円弧状に湾曲させることを特徴としている。
【0039】
このようにすれば、簡単に頭部斜行部を円弧状に斜行させることができ、請求項1記載の効果を簡素な作業により実現することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のセグメント順次接合型ステータコイルを有する高電圧車両用回転電機の例を図に示す各実施形態に基づいて説明する。図1は車両の走行動力発生用の走行モータとして使用されるこの回転電機の軸方向断面図である。ただし、ステータコイルのコイルエンド部分は模式図示されている。図2はステータコイルの一部をなすセグメントの斜視図、図3はスロット内におけるセグメントの収容状態を示す部分断面図である。
(全体構成の説明)
図1において、走行モータは、ステータコア1、ロータ2、ステータコイル3、ハウジング4、回転軸7を有している。ステータコア1は、ハウジング4の周壁内周面に固定され、ステータコイル3はステータコア1の各スロットに巻装されている。ロータ2は、ハウジング4に回転自在に支持された回転軸7に固定されたIPM型ロータであり、ステータコア1の径内側に配置されている。ステータコイル3は三相電機子巻線であって、外部の約300Vのバッテリから給電される三相インバータから給電されている。
【0041】
この走行モータは、二次電池車又は燃料電池車又はハイブリッド車の走行動力を発生する永久磁石型三相ブラシレスDCモータ(同期モータ)であるが、ロータ構造としては、公知の種々の形式に置換可能である。このような種々の形式の同期機自体は周知であるので説明を省略する。
(ステータコイル3の説明)
ステータコイル3は、図2に示す所定数のセグメント(本発明で言うセグメントセット)33をステータコア1の一側からステータコア1の各スロットに挿通し、スロットから各セグメント33の飛び出し端部をステータコア1の他側に必要長さだけ突出させ、各セグメント33の飛び出し端部を周方向に略電気角π/2だけそれぞれ捻り、各セグメント33の飛び出し端部の先端部(接合部)を所定の組み合わせで溶接して構成されている。セグメント33は、溶接部分すなわち上記飛び出し端部の先端部(端部先端部ともいう)を除いて樹脂皮膜で被覆された長板U字形状を有している。この種のセグメント順次接合型のステータコイル自体は、上述したようにもはや公知となっている。
【0042】
セグメント(セグメントセット)33の詳細を更に詳しく説明する。
【0043】
一つのセグメント(セグメントセット)33は、略V字状の頭部と、この頭部の両端から直線的に伸びてスロットに収容されている一対のスロット導体部と、両スロット導体部の先端からそれぞれ伸びる一対の飛び出し端部とをそれぞれ有する一つの大セグメント331と一つの小セグメント332とからなる。これにより、ステータコイル3は、ステータコア1の一側に全体としてリング状に存在する第一のコイルエンド部(頭部側コイルエンド)311と、ステータコア1の他側に全体としてリング状に存在する第二のコイルエンド(端部側コイルエンド)部312と、スロット内に存在するスロット導体部とに区分される。
【0044】
つまり、図1において、頭部側コイルエンド311は各セグメント33の上記頭部により構成され、端部側コイルエンド312は各セグメント33の上記飛び出し端部により構成されている。
【0045】
図1において、4セットのセグメントセット33が径方向へ順番に挿通されている。3301は最も径方向内側のセグメントセット群S1の一つのセグメント33の頭部、3302は径方向内側から数えて2番目のセグメントセット群S2の一つのセグメント33の頭部、3303は径方向内側から数えて3番目のセグメントセット群S3の一つのセグメント33の頭部、3302は最も径方向外側のセグメントセット群S3の一つのセグメント33の頭部であり、径方向へ順番に4個並んだ頭部は、前述した頭部側コイルエンド311を構成している。ただし、図1では、図示簡単化のために端部側コイルエンド312は2つのセグメントセット群の径方向へ並んだ合計8本(4対)の飛び出し端部しか図示していない。
(セグメント33の説明)
セグメント(セグメントセット)33を図2を参照して説明する。
【0046】
セグメント(セグメントセット)33は、大きい大セグメント(大回りセグメントともいう)331と、小さい小セグメント(小回りセグメントともいう)332とを有している。この大セグメント331とこの大セグメント331が囲む小セグメント332とをセグメントセットと称する。
【0047】
大セグメント331において、331a、331bはスロット導体部、331cは頭部、331f、331gは飛び出し端部である。飛び出し端部331f、331gの先端部331d、331eは接合部分であるので端部先端部又は接合部とも称する。スロット導体部331aを最内層のスロット導体部と称し、スロット導体部331bを最外層のスロット導体部と称する。
【0048】
小セグメント332において、332a、332bはスロット導体部、332cは頭部、332f、332gは飛び出し端部である。飛び出し端部332f、332gの先端部332d、332eは接合部分であるので端部先端部又は接合部とも称する。スロット導体部332aを中内層のスロット導体部と称し、スロット導体部332bを中外層のスロット導体部と称する。
【0049】
符号’は、図示しない大セグメント又は小セグメントの符号’がない部分と同じ部分を示す。したがって、図2では、互いに径方向に隣接する接合部331dと接合部332d’とが溶接され、互いに径方向に隣接する接合部332dと接合部331d’とが溶接され、互いに径方向に隣接する接合部332eと接合部331e’とが溶接されている。
【0050】
図2では、最内層のスロット導体部331aと中内層のスロット導体部332aが、ロータコア71の所定のスロットに収容される場合、同一のセグメント331、332の最外層のスロット導体部331bと中外層のスロット導体部332bはこの所定のスロットから略所定奇数磁極ピッチT(たとえば1磁極ピッチ(電気角度π))離れたスロットに収容される。小セグメント332の頭部332cは大セグメント331の頭部331cに囲まれるようにして配置されている。
(スロット内のセグメントセット配置)
スロットのセグメントセットの配置状態を図3に示す。
【0051】
35はスロットである。スロット35には径方向へ16個の導体収容位置P1〜P16が設定され、各導体収容位置P1〜P16にはそれぞれ1個のスロット導体部が収容されている。各スロット35は、4セットのセグメントセット群S1〜S4が径方向へ順番に収容し、導体収容位置P1〜P4はセグメントセット群S1を、導体収容位置P4〜P8はセグメントセット群S2を、導体収容位置P9〜P12はセグメントセット群S3を、導体収容位置P13〜P16はセグメントセット群S4を収容している。各セグメントセット群S1〜S4はそれぞれ周方向へ配列された多数のセグメント33からなる。
【0052】
この最も内側のセグメントセット群S1を一例として詳しく説明すると、最内層のスロット導体部331aはステータコア32のスロット35の径方向最内側に配置され、以下、径方向外側へ順に、中内層のスロット導体部332a、中外層のスロット導体部332b’、最外層のスロット導体部331b’の順に配置され、結局、各スロット35は4本のスロット導体部を4層1列に収容する。図3において、スロット導体部332b’、332b’は、スロット導体部332a、331aをもつ大セグメント331、小セグメント332とは異なる大セグメント331、小セグメント332に属している。他のセグメントセットS2〜S4も上記と同様の配置、構成を持つことは言うまでもない。大セグメント331と小セグメント332とからなるセグメント(セグメントセット)33をスロット35に挿通する状態を図4に示す。
(三相ステータコイルの構成の説明)
径方向に4セット配列されたセグメントセット群S1〜S4による三相ステータコイルの接続を図9を参照して以下に説明する。図9はU相の相コイルを示す。
【0053】
1磁極ピッチ当たり9スロット(同相3スロット、3相)、極数12、スロット数108とされる。隣接3スロットは、同相の相電圧が印加される同相スロット群を構成している。1スロットには上記したように16個の導体収容位置P1〜P16が径方向に形成され、各導体収容位置には1つのスロット導体部が収容される。
【0054】
各スロットの径方向最内側から数えて1〜4番目の4つの導体収容位置P1〜P4に収容されるセグメントセット群S1は、波巻きなどにより接続されて第1の部分相コイルを各相当たり3個形成する。図9に示すU11、U21、U31はこの第1の部分相コイルである。部分相コイルU11、U12、U13は、隣接する同相スロット群を構成する3つスロットのうち互いに異なるスロットに収容される。
【0055】
各スロットの径方向最内側から数えて5〜8番目の4つの導体収容位置P5〜P8に収容されるセグメントセット群S2は、波巻きなどにより接続されて第2の部分相コイルを各相当たり3個形成する。図9に示すU12、U22、U32はこの第2の部分相コイルである。部分相コイルU12、U22、U32は、隣接する同相スロット群を構成する3つスロットのうち互いに異なるスロットに収容される。
【0056】
各スロットの径方向最内側から数えて9〜12番目の4つの導体収容位置P9〜P12に収容されるセグメントセット群S3は、波巻きなどにより接続されて第3の部分相コイルを各相当たり3個形成する。図9に示すU13、U23、U33はこの第3の部分相コイルである。部分相コイルU13、U23、U33は、隣接する同相スロット群を構成する3つスロットのうち互いに異なるスロットに収容される。
【0057】
各スロットの径方向最内側から数えて13〜16番目の4つの導体収容位置P13〜P16に収容されるセグメントセット群S4は、波巻きなどにより接続されて第4部分相コイルを各相当たり3個形成する。図9に示すU14、U24、U34はこの第3の部分相コイルである。部分相コイルU14、U24、U34は、隣接する同相スロット群を構成する3つスロットのうち互いに異なるスロットに収容される。
【0058】
また、部分相コイルU11、U12、U13、U14は、同相スロット群をなす隣接3スロットのうちの周方向一方側から数えて最初のスロットに収容され、部分相コイルU21、U22、U23、U24は、同相スロット群をなす隣接3スロットのうちの周方向一方側から数えて中央のスロットに収容され、部分相コイルU31、U32、U33、U34は、同相スロット群をなす隣接3スロットのうちの周方向一方側から数えて最後のスロットに収容される。
【0059】
部分相コイルU11、U12、U13、U14は、隣接する部分相コイル同士が順番に接続されて直列相コイル回路U1を形成し、部分相コイルU21、U22、U23、U24は、隣接する部分相コイル同士が順番に接続されて直列相コイル回路U2を形成し、部分相コイルU31、U32、U33、U34は、隣接する部分相コイル同士が順番に接続されて直列相コイル回路U3を形成する。これらの径方向に隣接する部分相コイル同士の接続は、従来より公知であるように径方向に隣接する2つの部分相コイルの空きの導体収容位置の一つ同士に異形のU字状セグメントを挿入して接続される。
【0060】
たとえば、部分相コイルU12は、通常のセグメント(好ましくは大回りセグメント)を一つ抜くことによりできた一対の空きの導体収容位置の一つと、同様に部分相コイルU13に形成された空きの導体収容位置の一つとにこの異形のU字状のセグメントを挿入して、部分相コイルU12、U13を接続することができる。
【0061】
また、部分相コイルU12の残りの一つの空きの導体収容位置と、同様に部分相コイルU11に形成された空きの導体収容位置の一つとにこの異形のU字状のセグメントを挿入して、部分相コイルU12、U13を接続することができる。
【0062】
部分相コイルU11の残る一つの空きの導体収容位置には中性点用(引き出し端子用でも良い)の異形セグメントが挿入され、同様に、部分相コイルU14の残る一つの空きの導体収容位置には引き出し端子用(中性点用でも良い)の異形セグメントが挿入される。
【0063】
直列相コイル回路U1、U2、U3は、両端同士が接続されて並列接続され、U相の相コイルを形成する。
【0064】
以下、通常のセグメント順次接合ステータコイルの標準製造プロセスをまず最初に説明し、その後、この実施例特有の製造工程を説明する。
(標準の頭部捻り工程)
まず、必要本数の小セグメント332と大セグメント331との展開前の形状をもつ2種類の松葉状セグメントを準備する。これらの松葉状セグメントの両脚部は、互いに略隣接して直線状に延在しており、その頭部は鋭く屈曲している。次に、松葉状セグメントをU字状セグメントに加工してセグメントの一対のスロット導体部を周方向へ互いに略磁極ピッチ離れさせるともに必要数のセグメントをステータコアの各スロットに同時挿通できるようにそれらを空間配置(周方向へ整列)させる工程が次のように行われる。
【0065】
この頭部捻り工程を図5、図6を参照して以下に説明する。
【0066】
この頭部捻り工程におけるセグメント挿入前の状態を図5に示す。図5において、10は頭部捻り装置、11は小リング、12は大リングであり、両者は相対回転可能に同軸配置されている。大リング11にはそれぞれ径方向へ並んだ一対の孔121、122が周方向所定ピッチで設けられ、小リング12には孔121、122と周方向等ピッチで径方向へ並んだ一対の孔111、112が設けられている。孔111〜114は径方向へ一列に並んでいる。大回りセグメント(大セグメント)331の両スロット導体部を、最も内側の孔111と最も外側の孔122に挿入し、小回りセグメント(小セグメント)332の両スロット導体部は、最も内側の孔111の外側の孔112と、最も外側の孔122の内側の孔121とに挿入する。
【0067】
図6は、すべての大セグメント331とすべての小セグメント332とを小リング11と大リング12との孔111、112、121、122に嵌挿した状態を示す。図6において、16は小リング11と大リング12の軸方向上方に配置された頭部押さえプレートである。頭部押さえプレート16の下端面には、同一周方向位置の大セグメント331の頭部の頂部と小セグメント332の頭部の頂部とのペアを、周方向両側から挟む一対の爪部(一つのみ図示)160を有している。すなわち、各セグメント33を孔111、112、121、122に挿入した後、押さえプレート16が降下して、各対の爪部160が、周方向同位置の大セグメント331の頭部の頂部と小セグメント332の頭部の頂部とを周方向両側から挟む。
【0068】
その後、大リング12及び小リング11とを、静止するこの頭部押さえプレート16に対して半磁極ピッチだけ互いに逆方向に回動される。これにより、すべてのセグメント33の日本の脚部は周方向1磁極ピッチだけ周方向に展開される。
【0069】
リング11、12の回動時に、セグメント33の頭部の頂部はリング11、12の回動とともにリング11、12にむけて軸方向に変位するので、頭部押さえプレート16はそれに合わせて軸方向に変位させる。17は、大セグメント331、小セグメント332が深く落下しないように規制する規制プレートである。規制プレート17を、径方向外側の2つの脚部が載置される外側規制プレートと、径方向内側の2つの脚部が載置される内側規制プレートとに分割し、この内側規制プレートをリング11に固定してリング11と一体に回動させ、この外側規制プレートをリング12に固定してリング12と一体に回動させてもよい。
【0070】
次に、頭部押さえプレート16により各セグメント33を保持したまま、小リング11と大リング12とを各セグメント33から離脱させる。
(標準の端部挿入工程)
次に、小回り状のU字状セグメント332を上記両穴付きリングから抜き出して、図4に一部示すようにステータコア1のスロット35の中内層位置及び中外層位置に挿通し、大回り状のU字状セグメント331を上記両穴付きリングから抜き出して、ステータコア1のスロット35の最内層位置及び最外層位置に挿通する。この時、上記頭部押さえプレート16で各セグメントがばらけないように保持することにより、各セグメントを一挙に各スロット35に挿通することができる。その後、この頭部押さえプレート16は取り外される。
【0071】
なお、上記した小回り状のU字状セグメント332、大回り状のU字状セグメント331のステータコアのスロット35へ挿通するまでの工程は上記に限られるものではなく、上記した他に種々採用することができる。
(標準の端部捻り工程)
上記のようにスロットに挿通されたセグメント33の端部の捻り成形工程を以下に説明する。
【0072】
この実施例では、大セグメント331の最外層スロット導体部331bに連なる端部331g(外層側端部ともいう)は周方向一方側に捻られ、大セグメント331の最内層スロット導体部331aに連なる端部331f(内層側端部ともいう)は周方向他方側に捻られている。小セグメント332の中内層のスロット導体部332aに連なる端部332f(内層側端部ともいう)は周方向一方側に捻られ、小セグメント332の中外層のスロット導体部332bに連なる端部332g(外層側端部ともいう)は周方向他方側に捻られている。導体部331fと332fとの周方向捻り量の合計は1磁極ピッチとされ、導体部331gと332gとの周方向捻り量の合計は1磁極ピッチとされている。
【0073】
上記した大セグメント331および小セグメント332からなるセグメントセットの捻り加工を図7、図8を参照して更に詳しく説明する。図7はステータコイル捻り装置500の模式縦断面図、図8は図7におけるAーA断面矢視図である。
【0074】
まず、ステータコイル捻り装置500の構成を説明する。
【0075】
ステータコイル捻り装置500は、ステータコア1の外周部を受けるワーク受け51、ステータコア32の径方向の動きを規制して保持するクランパ52、ステータコア32の浮き上がりを防止するワーク押さえ53、ステータコア32の一端から出たセグメント33の飛び出し脚部を捻るための捻り整形部54、捻り整形部54を軸方向に駆動するための昇降用シャフト54a、捻り整形部54を周方向に回転駆動する回転駆動機構541a〜544a、昇降用シャフト54aを軸方向に移動するための昇降駆動機構54b、及び、回転駆動機構541a〜544aと昇降駆動機構54bとを制御するコントローラ55を備えている。
【0076】
捻り整形部54は、同心状に配置された4つの円筒状の捻り治具541〜544がそれらの先端面を揃えて配置されている。各捻り治具541〜544は回転駆動機構541a〜544aにより独立に回転可能とされ、かつ、昇降駆動機構54bにより昇降用シャフト54aを昇降することにより同時に昇降可能となっている。
【0077】
図8に示されているように、捻り治具541〜544の先端面には、挿入されたセグメント33の端部331f、331g、332f、332gの各先端(接合部)を保持するセグメント挿入部541b〜544bが穿設されている。このセグメント挿入部541b〜544bは、ステータコア1のスロット35の総数に等しい数だけ各捻り治具541〜544の周方向に並べて形成されている。
【0078】
セグメント挿入部541b〜544bは、図8に示すように、互いに径方向に隣接するセグメント挿入部541b〜544b同士の連通を防止するための隔壁541c〜544c、542d、543dが設けられている。隔壁541c〜544c、542d、543dの厚みは、径方向外側から数えて1層目と2層目との間の隔壁541c、542cで形成される間隔d1及び3層目と4層目の間の隔壁543c、544cで形成される間隔d3よりも、2層目と3層目との間の隔壁542d、543dで形成される間隔d2の方が大きくなるように設定されている。
【0079】
次に、ステータコイル捻り装置500の作動を説明する。
【0080】
スロット35内にセグメント33が配置されたステータコア32をワーク受け51にセットする。次に、ステータコア32の外周部をクランパ52に固定する。その後、ワーク押さえ53でステータコア32の上部及び大セグメント331の頭部331cを押さえることにより、ステータコア32及びセグメント33の上下方向の動きを規制する。
【0081】
セグメント33が配置されたステータコア32をクランパ52及びワーク受け53により固定した後、昇降用シャフト54aによって捻り整形部54を上昇させ、各捻り治具541〜544に形成されたセグメント挿入部541b〜544bにセグメント33の端部331f、331g、332f、332gを挿入する。
【0082】
セグメント挿入部541b〜544bにはセグメント33の端部331f、331g、332f、332gの先端すなわち後に接合部となる部分だけが挿入可能となっている。セグメント33の端部331f、331g、332f、332gはテーパ状に形成されているため、セグメント挿入部541b〜544bにスムーズに挿入されることができる。
【0083】
セグメント33の端部331f、331g、332f、332gを捻り整形部54のセグメント挿入部541b〜544bに挿入した後、捻り整形部54は、回転駆動機構541a〜544aおよび昇降駆動機構54bにより回動され、昇降される。
【0084】
次に、捻り整形部54の回転について説明する。
【0085】
捻り治具541および治具543を時計回り方向に第一の角度だけ回転させ、捻り治具542および捻り治具544を反時計回り方向に第二の角度だけ回転させる。この時、第一の角度と第二の角度の大きさは等しくなくてもよく、両者の合計が必要なスロットピッチとなればよい。
【0086】
その後、セグメント33の端部331f、331g、332f、332gのうちスロット35の出口からセグメント挿入部541b〜544bの入口までの部分の長さを一定に保つように、昇降駆動機構54bおよび回転駆動機構541a〜544aを制御しながら捻り整形部54を回転しながら上昇させる。この時、セグメント33の端部331f、331g、332f、332gは円弧状の軌跡を描くように回転しながら上昇することが好ましい。この円弧状の軌跡を描く捻りは、スプリングバックによるセグメント33の変形を防止するため、半磁極ピッチ(T/2)に相当する角度を所定量超えた角度まで行われることが好ましい。
【0087】
その後、昇降駆動機構54bおよび回転駆動機構541a〜544aを上記前工程と逆向きの回転させ、下降させる。このようにして、セグメント33の捻り行程を終了し、捻り整形部54を下降させて捻り治具541〜544のセグメント挿入部541b〜544bからセグメント33の端部331f、331g、332f、332gを取り外す。セグメント33が外された捻り整形部54は回転駆動機構541a〜544aによって回転され、原位置に戻される。最後に、クランパ52及びワーク押さえ53が外され、セグメント33に捻りが加えられたステータが取り出される。
【0088】
結局、この捻り工程は、まずセグメント33の端部を周方向にのみ回転変位させてセグメント33を周方向に倒し、続いてセグメント33の端部を周方向並びに軸方向に変位させてセグメント33を深く傾け、その後、所定の加工量を超えてセグメント33の端部を周方向ならびに軸方向に変位させてセグメント33を過剰に深く傾け、その後でセグメント33の端部を所定の加工量まで戻すことにより行われる。
【0089】
捻り整形部54はステータコア32に対して周方向だけでなく軸方向にも相対移動する。そのため、セグメント33の端部331f、331g、332f、332gのうち、スロット35の出口からセグメント挿入部541b〜544bの入口までの部分、すなわち、端部331f、331g、332f、332gからその端部先端(接合部)331d、331e、332d、332eの長さを差し引いた長さを一定に保つように、セグメント33の端部331f、331g、332f、332gが円弧状の軌跡を描くように捻じることができ、これにより、セグメント33がセグメント挿入部541b〜544bから抜け出るのを防止することができる。
【0090】
また、セグメント33の端部先端(接合部)331d、331e、332d、332eのみが、セグメント挿入部541b〜544bに挿入されており、また、前述と同様にセグメント33がセグメント挿入部541b〜544bから抜け出ることはない。
(標準の溶接工程)
次に行う標準の溶接工程を以下に説明する。この工程は本質的に従来と同じである。
【0091】
上記セグメントの端部の捻りの後、図1、図2に示すように、径方向内側から1層目と2層目の端部先端部(接合部)が溶接され、径方向内側から3層目と4層目の端部先端部(接合部)が溶接されて、ステータコイル31が完成される。溶接には、アーク溶接が用いられる。
(この実施例の特徴をなす頭部捻り工程の説明)
次に、この実施例の特徴をなす頭部捻り工程を以下に説明する。なお、以下の説明において用いる符号が上記実施例で用いた符号と重複する場合でも、技術的に無関係である場合もあるものとする。
【0092】
図10を参照して、この実施態様の頭部捻り工程を説明する。
【0093】
10は、図6に示す頭部捻り装置と基本的に同一の頭部捻り加工を行う頭部捻り装置であり、基本的な動作は同じであるので、異なる点のみを以下に説明する。主要な変更点は、この実施例の頭部押さえプレート16が円盤状案内部材16aを有している点にある。
【0094】
更に詳しく説明すると、1600は頭部押さえ装置(本発明で言う頭部押さえ部材)部材であり、リング11、12を有するセグメント回動装置2000と軸心同一に対面している。1601は図示しないシリンダにより昇降する昇降筒であり、昇降筒1601は、その下面に隣接してスラストベアリング16c、16dを介して頭部押さえプレート16が回転自在に保持している。スラストベアリング16cは頭部押さえプレート16の重量を保持するためのものであり、スラストベアリング16dは頭部押さえプレート16がセグメント33の頭部を押さえる時に反力に関わらず頭部押さえプレート16の回動を可能とするためのものである。
【0095】
頭部押さえプレート16は、セグメント33の頭部先端部33aの直上に位置して前述の爪部160を有している。また、頭部押さえプレート16の下面中央部には、円盤状案内部材16aが設けられている。この円盤状案内部材16aの外径は、リング11に保持されるセグメントセット33の大回りセグメント331の間の径Dより僅かに大きく形成されている。また、円盤状案内部材16aの下端面と外周面との間の角部は面取りされている。162は円盤状案内部材16aの外周面である。
【0096】
163は円筒部材であって、セグメント展開時にセグメント33の頭部が径方向外側にはみ出すのを抑止するためのものである。
【0097】
セグメント33は、大セグメント331と小セグメント332とからなるセグメントセットであって、セグメント33のうち、リング11、12に保持される部分及びリング11、12から下方に突出して円盤状の規制プレート17の上面に接する部分は、セグメント33の脚部33cと呼称され、セグメント33のU字状の頭部先端部33aと脚部33cとの間に位置して脚部33cと同一直線上に延在してリング11、12の上方に突出している部分を頭部斜行部用直線部33bと称する。頭部斜行部用直線部33bは、この装置10により捻られて頭部斜行部となる。
(動作)
頭部押さえ装置(本発明で言う頭部押さえ部材)部材1600を下降し、規制プレート17を上昇させて、爪部160によりセグメントセット33の頭部先端部を周方向に挟持させ、頭部斜行部用直線部33bの長さを所定必要長さだけ確保した状態で、リング11、12を互いに逆方向へ半磁極ピッチだけそれぞれ回動させ、頭部斜行部用直線部33bを周方向へ捻り、頭部斜行部とする。
【0098】
この捻りにより、頭部斜行部の軸方向長さが縮小するが、頭部押さえプレート16は所定の付勢力で下方に付勢されているので、爪部160は常にセグメントセット33の頭部先端部33aを挟持することができる。
【0099】
この捻りに際して、円盤状案内部材16aの外周面162は、大回りセグメント331の径方向内側の頭部斜行部直線部33bをこの外周面162に沿いつつ周方向への湾曲させるので、前述した効果を得ることができる。
【0100】
(変形態様)
上記した工程では、円盤状案内部材16aの外周面により頭部斜行部を円筒面上に延在させたが、リング11に同様の外周面をもつ案内部材を設けても同様の効果を奏することができる。
(この実施例の特徴をなす端部捻り工程の説明)
次に、この実施例の特徴をなす端部捻り工程を以下に説明する。なお、以下の説明において用いる符号が上記実施例で用いた符号と重複する場合でも、技術的に無関係である場合もあるものとする。
【0101】
図11を参照して、この実施態様の頭部捻り工程を説明する。
【0102】
5は、図7に示す端部捻り装置と基本的に同一の頭部捻り加工を行う端部捻り装置であり、基本的な動作は同じであるので、異なる点のみを以下に説明する。変更点は、図7に示す装置に円盤状案内部材16bを追加した点にある。その他、51はステータコア1を支承するワーク支承部材、52はワークの変位を規制するクランプ部材である。
【0103】
円盤状案内部材16bは、たとえば永久磁石を内蔵しており、ステータコア1の下端面に吸着されている。円盤状案内部材16bの外周面は大回りセグメント332の内周面側の表面に略接する外周面を有している。
【0104】
このようにすれば、リング543の回動により、先端がリング543に保持される大回りセグメント332の端部斜行部用直線部33cが径方向内側へ倒れようとしても、円盤状案内部材16bの外周面がそれを阻止するので、捻り後の端部斜行部用直線部33cである端部斜行部は円筒面上を延在することになる。
【0105】
図12にこの製造方法により形成されて径方向に見た場合に周方向に延在する端部斜行部2000を示す。ただし、スロット35には径方向に4つのスロット導体部2002だけが収容されている例である。2001は端部斜行部2000の先端の端部先端部であり、軸方向に突出している。破線は、円盤状案内部材16a、16bを用いない場合における端部斜行部を示す。
【0106】
(変形態様)
上記した工程では、ステータコア1に固着した円盤状案内部材16bの外周面により端部斜行部を円筒面上に延在させたが、昇降用シャフト54aの上端面又は略円筒状の捻り治具544にこの円盤状案内部材16b又は同等の外周案内面をもつ円筒部材を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の車両用走行モータの縦断面図である。
【図2】 図1のセグメントの模式斜視図である。
【図3】 図1のステータコアの径方向部分断面図である。
【図4】 セグメントセットをスロットに挿通する直前の状態を示す模式斜視図である。
【図5】 セグメントの頭部捻り装置のリングに挿通する状態を示す模式断面図である。
【図6】 頭部捻り装置の模式縦断面図である。
【図7】 端部捻り装置の模式縦断面図である。
【図8】 端部捻り装置のリングの平面図である。
【図9】 ステータコイルのU相結線図である。
【図10】 好適な実施態様における頭部側コイルエンドの捻り処理を示す径方向模式部分断面図である。
【図11】 好適な実施態様における端部側コイルエンドの捻り処理を示す径方向模式部分断面図である。
【図12】 図11の捻り処理により形成された端部斜行部を示す模式系方向部分側面図である。
【図13】 従来のセグメントセットの頭部側コイルエンドを示す径方向模式断面図である。
【符号の説明】
1 ステータコア
3 ステータコイル
33 セグメント(セグメントセット)
331 大セグメント(大回りセグメント)
331a、331b 大セグメント331のスロット導体部
331c 大セグメント331の頭部
331f、331g 大セグメント331の飛び出し端部(端部斜行部)
331d、331e 大セグメント331の端部先端部
332 小セグメント(小回りセグメント)
332a、332b 小回りセグメント332のスロット導体部
332c 小回りセグメント332の頭部
332f、332g 小回りセグメント332の飛び出し端部
332d、332e 小回りセグメント332の端部先端部
35 スロット
Claims (5)
- 径方向へ順番に並んだ偶数個の導体収容位置を有するステータコアのスロットに収容され、順次接続されてM(Mは3以上の整数)相電機子コイルの相コイルの1ターンを構成する多数のセグメントを有し、
前記セグメントは、互いに所定ピッチ離れた一対の前記スロットの互いに異なる導体収容位置に個別に収容される一対のスロット導体部と、前記両スロット導体部から前記ステータコアの一端側へ突出して頭部側コイルエンドを構成する頭部と、前記両スロット導体部から前記ステータコアの他端側へ突出して端部側コイルエンドを構成する一対の飛び出し端部とを有し、
前記頭部は、略U字状の頭部先端部と、前記頭部先端部の両端から周方向かつ軸方向へ斜行して前記一対のスロット導体部に個別に連なる一対の頭部斜行部とからなり、
前記飛び出し端部は、前記一対のスロットから周方向かつ軸方向へ斜行する一対の端部斜行部と、前記端部斜行部の先端に形成されて異なる前記セグメントの前記端部斜行部の先端に接合される端部先端部とからなる回転電機のセグメント順次接合ステータコイルにおいて、
前記頭部斜行部又は前記端部斜行部は、前記ステータコアの軸心を中心として円弧状に形成されていることを特徴とする回転電機のセグメント順次接合ステータコイル。 - 請求項1記載の回転電機のセグメント順次接合ステータコイルにおいて、
径方向に隣接する一対の前記導体収容位置に個別に収容される一対の前記スロット導体部に連なる小回り頭部を有する前記セグメントである小回りセグメントと、前記小回り頭部を径方向へ囲む大回り頭部を有する前記セグメントである大回りセグメントとにより構成されるセグメントセットを、径方向へ複数セット有し、
径方向にて等しい位置を有して周方向に配列される多数の前記セグメントセットは、所定の相電圧が印加される部分相コイルを形成し、
前記相コイルは、それぞれ径方向に異なる位置をもつ多数の前記部分相コイルを、径方向に隣接する前記部分相コイル同士の順次接続により直列接続して構成されることを特徴とする回転電機のセグメント順次接合ステータコイル。 - 請求項2記載の回転電機のセグメント順次接合ステータコイルにおいて、
同じ相電圧が印加されるスロット導体部をそれぞれ収容するとともに互いに周方向に連続して隣接する多数の前記スロットにより構成される同相スロット群を有し、
共通の前記スロットに収容されてそれぞれ径方向に異なる位置をもつ多数の前記部分相コイルを径方向に隣接する前記部分相コイル同士の順次接続により直列接続してそれぞれ構成されて同相スロット群の互いに異なるスロットに収容される多数の前記直列相コイル回路を有し、
前記相コイルは、前記多数の直列相コイル回路を並列接続して構成されることを特徴とする回転電機のセグメント順次接合ステータコイル。
径方向に隣接する一対の前記導体収容位置に個別に収容される一対の前記スロット導体部に連なる小回り頭部を有する前記セグメントである小回りセグメントと、前記小回り頭部を径方向へ囲む大回り頭部を有する前記セグメントである大回りセグメントとにより構成されるセグメントセットを径方向に並んで複数有することを特徴とする回転電機のセグメント順次接合ステータコイル。 - 略U字状の頭部と、前記頭部の両端から平行に真っ直ぐに延在する一対の脚部とを有する未展開のセグメントを準備し、
ステータコアの互いに所定ピッチ離れた一対のスロットに前記両脚部の中央部を挿通し、
前記ステータコアの中心軸を中心として同軸配置されて互いに相対回動可能な複数のリングを準備し、
前記一対の脚部のうち前記スロットから前記頭部と反対側へ所定の軸方向長さだけ飛び出した飛び出し部分の先端部を互いに異なる前記リングにより個別に軸方向へ保持し、
前記各リングを相対回動させることにより前記飛び出し部分を径方向にみて軸心に対して斜めとなるように曲げて端部斜行部となし、
前記互いに隣接する前記一対の脚部の先端同士を接合することにより多数の前記セグメントを順次接続してステータコイルとする回転電機のセグメント順次接合ステータコイルの製造方法において、
前記脚部の飛び出し部分が前記リング回動中に摺接する略円筒状の外周面をもつ筒状案内部材を配置することにより、前記端部斜行部を軸方向にみて円弧状に湾曲させることを特徴とする回転電機のセグメント順次接合ステータコイルの製造方法。 - 略U字状の頭部と、前記頭部の両端から平行に真っ直ぐに延在する一対の脚部とを有する未展開のセグメントを準備し、
同軸配置されて互いに相対回動可能な複数のリングを準備し、
前記両脚部の中央部分を前記リングで個別に保持し、
前記各リングを回動させることにより前記脚部のうち前記頭部側に残留する脚部の残留部分を径方向にみて軸心に対して斜めとなるように曲げて頭部斜行部となす回転電機のセグメント順次接合ステータコイルの製造方法において、
前記リング回動中に前記脚部の残留部分が摺接する略円筒状の外周面をもつ筒状案内部材を配置することにより、前記頭部斜行部を軸方向にみて円弧状に湾曲させることを特徴とする回転電機のセグメント順次接合ステータコイルの製造方法。
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