JP2024035352A - 回転式スプールバルブ - Google Patents
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Abstract
【課題】バルブ開閉を含む流路切替制御及び流路開放時の流量制御をより高速かつ高精度に行うことのできる回転式スプールバルブを提供する。【解決手段】回転式スプールバルブは、円筒状のスリーブ2と、スリーブ2の内部に収納されたスプール3と、スプール3を回転させるサーボモータ5とを備えている。バルブボディ1内には複数の環状チャンバ1P,1C1…がスプール3の軸方向に沿って形成されている。スリーブ2には環状チャンバ毎にスリットが形成されている。隣接する二つの第一及び第二環状チャンバ(1P,1C1)に渡って上記軸方向に延在する連通溝がスプール3の外周面上に形成されている。外部から第一環状チャンバ1Pに流体を受け入れ得る第一ポートPがバルブボディの内部に形成されている。第一ポートの第一環状チャンバ1Pへの接続中心軸線は、第一環状チャンバ1P内のスリットの開口平面を通過しない。【選択図】図1
Description
本開示は、回転式スプールバルブに関する。
スプールバルブとしては、一般に広く普及している直動式スプールバルブの他に、本出願で開示されるような回転式スプールバルブがある。直動式スプールバルブでは、スプールがその軸方向にストロークしてバルブの開閉やバルブ開放時の流量が制御される。一方、回転式スプールバルブでは、スプールがその軸回りに回転してバルブの開閉やバルブ開放時の流量が制御される。
下記特許文献1は回転式スプールバルブを開示している。回転式スプールバルブは、回転するスプールと、このスプールを回転可能に保持する筒状のスリーブとを備えている。スリーブの外側には、スリーブ及びスプールの軸方向に沿って複数の環状チャンバが形成されている。スプールの外周面(及び内部)には、環状チャンバ同士を連通させる流路となる溝が形成されており、この溝に対応させてスリーブには環状チャンバ毎にスリットが形成されている。スリーブに対するスプールの回転位置を変更して溝とスリットの位置を変更することで、バルブの開閉及びバルブ開放時の流量が調整される。
回転式スプールバルブにおいては、よりシンプルな機構で、バルブ開閉を含む流路切替制御及び流路開放時の流量制御をより高速かつ高精度に行いたいという要望がある。近年、サーボモータの進歩が進んでおり、スプールの回転駆動源としてサーボモータを用いつつ、高速かつ高精度な回転式スプールバルブを実現しようと開発が行なわれてきた。本開示はサーボモータを用いた回転式スプールバルブに関するものである。
本開示の目的は、バルブ開閉を含む流路切替制御及び流路開放時の流量制御をより高速かつ高精度に行うことのできる回転式スプールバルブを提供することにある。
本開示に係る回転式スプールバルブは、バルブボディと、前記バルブボディ内に固定された円筒状のスリーブと、前記スリーブの内部に回転可能に収納されたスプールと、前記スプールの中心軸回りに当該スプールを回転させるサーボモータと、を備えている。前記バルブボディの内部の前記スリーブの外側に複数の環状チャンバが形成され、複数の前記環状チャンバは、前記中心軸の軸方向に沿って並べられて、それぞれ隔壁で隔てられている。前記スリーブの内部と前記環状チャンバとを連通させるスリットが、複数の前記環状チャンバ毎に前記スリーブに形成されている。複数の環状チャンバのうちの隣接する二つの第一環状チャンバ及び第二環状チャンバに渡って前記軸方向に延在する連通溝が前記スプールの外周面上に形成されている。前記バルブボディの外表面から前記第一環状チャンバに連通して前記バルブボディの外部から流体を受け入れ得る第一ポートが前記バルブボディの内部に形成されると共に、前記バルブボディの外表面から前記第二環状チャンバに連通する第二ポートが前記バルブボディの内部に形成されている。前記第一ポートの前記第一環状チャンバへの接続中心軸線が、当該第一環状チャンバ内の前記スリットの開口平面を通過しない。
ここで、複数の前記環状チャンバのそれぞれにおいて、前記スリットが前記中心軸回りに均等に複数形成されており、前記連通溝が、複数の前記スリットに対応して複数形成されていてもよい。
さらに、複数形成された前記連通溝の底部がすべて連通されており、複数の前記連通溝がスプールを貫通する貫通孔として形成されていてもよい。
また、前記連通溝の前記軸方向の両端が、前記連通溝に落ち込む傾斜面として形成されていてもよい。
ここで、前記第一ポートが外部のポンプから前記流体を導入する導入ポートであり、かつ、前記第一環状チャンバが前記導入ポートに連通する導入環状チャンバであり、前記第二環状チャンバが前記連通溝及び前記スリットによって制御された前記導入環状チャンバからの前記流体を受け入れる制御環状チャンバであり、かつ、前記第二ポートが前記制御環状チャンバから前記流体を液圧アクチュエータに送出可能な制御ポートであり、前記制御ポートの前記制御環状チャンバへの接続中心軸線が前記制御環状チャンバ内の前記スリットの開口平面を通過せず、前記連通溝が前記導入環状チャンバと連通してもよい。
さらに、前記連通溝の前記導入環状チャンバ内の開口側縁部に、前記傾斜面と連続する前記軸方向に平行な一対の開口拡大平面が形成されており、前記連通溝の前記導入環状チャンバと前記制御環状チャンバとの間の前記隔壁との重複範囲内の開口側縁部に、前記開口拡大平面から前記連通溝の前記制御環状チャンバ内の開口側縁部へと開口幅を狭くする一対の傾斜面が形成されていてもよい。
本開示に係る回転式スプールバルブによれば、バルブ開閉を含む流路切替制御及び流路開放時の流量制御をより高速かつ高精度に行うことができる。
以下、回転式スプールバルブ(以下、単にスプールバルブと呼ぶ)の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。
本実施形態のスプールバルブは、いわゆる、四ポート・三位置・オールポートクローズ・タイプのバルブである。スプールバルブは、導入ポートP、排出ポートT、第一制御ポートC1、及び、第二制御ポートC2の四つのポート(図3参照)を備えている。導入ポートPは、スプールバルブに流体を導入するポートであり、ポンプ(図示せず)に接続される。なお、本実施形態では、導入ポートPを通して導入される流体は液体であり、以下、作動液体と呼ぶ。排出ポートTは、スプールバルブから作動液体を排出するポートであり、タンク(図示せず)に接続される。外部液圧源としてのポンプはタンクから作動液体を吸入して導入ポートPへと圧送する。
第一制御ポートC1及び第二制御ポートC2は、複動形液圧シリンダ等の液圧アクチュエータに接続されている。第一制御ポートC1及び第二制御ポートC2は、スプールバルブによって流量制御された作動液体を液圧シリンダに送出したり、液圧シリンダから作動液体を回収したりする。液圧シリンダは、その内部にロッドが接続されたピストンを有しており、ピストンの両側にはそれぞれチャンバが形成される。第一制御ポートC1及び第二制御ポートC2は、ピストン両側の容積室にそれぞれ接続されている。
液圧シリンダの一方の容積室に第一制御ポートC1から作動液体を供給しつつ、他方の容積室から排出される作動液体を第二制御ポートC2に回収すると、ロッドは一方向にストロークされる。反対に、他方の容積に第二制御ポートC2から作動液体を供給しつつ、一方の容積室から排出される作動液体を第一制御ポートC1に回収すると、ロッドは他方向にストロークされる。第一制御ポートC1又は第二制御ポートC2を通して回収された作動液体は、排出ポートTを通してタンクへと排出される。
図1に示されるように、スプールバルブは、バルブボディ1と、スリーブ2と、スプール3と、サーボモータ5とを備えている。バルブボディ1は、スリーブ2及びスプール3を収納し、その内部には作動液体の流路が形成される。作動液体の流路については追って詳しく説明する。バルブボディ1は、メインボディ1B(図2(a)も参照)と、一対のエンドプレート1P1及び1P2と、キャップ1Cとによって構成されている。メインボディ1Bはスリーブ2及びスプール3を収納し、その内部には上述したポートと後述する環状チャンバが形成される。一対のエンドプレート1P1及び1P2は、メインボディ1Bの両端を塞いでいる。キャップ1Cは、スリーブ2及びスプール3にアクセスするためのエンドプレート1P1に形成されたアクセスホールを閉じている。
スリーブ2は、基本的には円筒状の部材であり、バルブボディ1の内部に固定される。上述したバルブボディ1のキャップ1Cには、バルブボディ1に対するスリーブ2の取付角度を固定するためのボルト10が取り付けられる。スリーブ2の取付角度は、ボルト10によって調節可能である。スリーブ2の先端面には、ボルト10の先端を受ける穴23が複数形成されている。スリーブ2の先端は、エンドプレート1P1により保持されつつ、キャップ1C及びボルト10によって固定される。一方、スリーブ2の基端は、エンドプレート1P2に固定されたマウントブラケット4によって保持される。なお、スリーブ2の基端とマウントブラケット4との間にはスペーサ40が挟まれており、スリーブ2の軸方向の移動が規制されている。また、スリーブ2の基端には、スプール3を回転可能に保持するベアリング(図示せず)が内蔵されている。
スリーブ2は、図2(b)に示されるように、外方に突出された鍔状の四つの隔壁22を備えている。隔壁22は、スリーブ2の中心軸の軸方向に沿って並んで形成されている。なお、スリーブ2の中心軸とスプール3の中心軸とは一致する。以下、この中心軸の軸方向を単に軸方向と呼ぶ。スリーブ2の先端及び基端も隔壁22と同じ外径を有しており、これらの先端及び基端並びに隔壁22によって、スリーブ2の外側のバルブボディ1の内部に五つの環状チャンバが形成される。スリーブ2の内径は、ベアリングが内蔵される基端を除いて一定である。先端及び基端並びに隔壁22を除いたスリーブ2の外径も一定である。
なお、環状チャンバについては追って詳しく説明するが、五つの環状チャンバは、それぞれ、導入環状チャンバ1P、制御環状チャンバ1C1及び1C2、並びに、排出環状チャンバ1T1及び1T2である。これらの五つの環状チャンバは、図1及び図2(a)に示されるように、隔壁22によって隔てられて、軸方向に沿って並んで形成されている。また、制御環状チャンバ1C1及び1C2については、それぞれ、第一制御環状チャンバ1C1及び第二制御環状チャンバ1C2とも呼ぶ。同様に、排出環状チャンバ1T1及び1T2については、それぞれ、第一排出環状チャンバ1T1及び第二排出環状チャンバ1T2とも呼ぶ。
スリーブ2の先端及び基端並びに隔壁22の間には、スリーブ2の内部と環状チャンバとを連通させるスリット20又は21がそれぞれ形成されている。各環状チャンバ内において、スリット20又は21は、中心軸に対して180°の位置に二つ形成されている(図5等参照)。スリット20とスリット21とは、その開口側縁部の形状が異なる。スリット20の一対の開口側縁部は、同一平面上にあり、その開口中心角は90°程度である。一方、スリット21の一対の開口側縁部は、当該スリット21の開口幅がスリーブ2の内部に向けて狭くなるように形成されており、その開口中心角は45°程度である。
ここで、スリット20の開口部に関して、その一対の開口側縁部を含む平面を開口平面と規定する。同様に、スリット21の開口部に関しても、その一対の開口側縁部を含む平面を開口平面と規定する。開口平面は、スリット20及び21の内周縁よりも内側の範囲である。なお、スリット20及びスリット21は、環状チャンバ毎に二つ形成されるが、中心軸に対して一側に形成される複数のスリット20及びスリット21は、それらの周方向の開口中央を一致させて一列に並んでいる。中心軸に対して他側に形成されるスリット20及びスリット21も、それらの周方向の開口中央を一致させて一列に並んでいる。
スプール3は、基本的には円柱状の部材であり、スリーブ2の内部に回転可能に収納される。スプール3の先端は、スリーブ2の先端によって保持されており、その回転は作動液体によって潤滑される。一方、スプール3の基端30の近傍は、スリーブ2の基端に内蔵されたベアリングによって保持されている。また、スプール3の基端30は、バルブボディ1のエンドプレート1P2に固定された円筒状のマウントブラケット4の内部に突出されており、カップリング6を介してサーボモータ5の回転軸50に接続されている。スプール3は、サーボモータ5によってその中心軸回りに回転される。本実施形態では、スプール3の回転制御範囲は90°である。
図2(c)に示されるように、スプール3の外周面上には、上述した五つの環状チャンバのうちの隣接する二つの環状チャンバに渡って連通溝31が形成されている。隣接する二つの環状チャンバは四組あり、隣接する二つの環状チャンバ毎に二つずつ合計八つの連通溝31がスプール3の外周面上に形成されている。隣接する二つの環状チャンバは、一組の連通溝31並びにスリット20及び21によって連通され得る。ただし、隣接する二つの環状チャンバが連通されるには、スプール3が適切な回転位置に設定されることが必要である。言い換えれば、スプール3の回転位置を後述する基準回転位置に設定することで、隣接する二つの環状チャンバを連通させないことも可能である。また、スプール3の回転位置によって、スリット20及び21の有効開口面積を調整でき、作動液体の流量を制御することも可能である。
連通溝31は、隣接する二つの環状チャンバに渡って形成されるので、その軸方向の中央に上述した隔壁22が位置する。スプール3の外径は、スリット20に対応する部分、即ち、図2(c)の右方から、第一排出環状チャンバ1T1、導入環状チャンバ1P及び第二排出環状チャンバ1T2に対応する部分で僅かに小さくされている(図5(b)及び(d)参照)。一方、スリット21に対応する部分、即ち、第一制御環状チャンバ1C1及び第二制御環状チャンバ1C2に対応する部分では、スプール3の外径はスリーブ2の内径に等しくされている(図5(a)及び(c)参照)。この小径部と大径部との境界部は、上述した隔壁22と重複する範囲内に位置する。
各連通溝31は、その開口縁部に各種の面取り加工が施されている。これらの面取り加工は、作動液体の有効流路断面積をできるだけ大きくして作動液体を円滑に流すために形成されている。有効流路断面積が過度に小さいと流路抵抗、即ち圧力損失が大きくなり、大流量を確保できないし、作動液体の流れによってスプール3に作用する負荷トルクが大きくなり、サーボモータ5によるスプール3の回転位置制御に影響が出てしまう。図2(c)を参照しつつ面取り加工について具体的に説明する。
連通溝31は隣接する二つの環状チャンバに渡って軸方向に長いが、スプール3の上述した小径部に形成される連通溝31の一端の開口端縁部には、連通溝31に落ち込む第一傾斜面32が形成されている。一方、スプール3の上述した大径部に形成される連通溝31の他端の開口端縁部には、連通溝31に落ち込む第二傾斜面33が形成されている。これらの傾斜面32及び33は、環状チャンバから連通溝31への作動液体の流入、及び、連通溝31から環状チャンバへの作動液体の流出を促進する。
スプール3の上述した小径部に位置する連通溝31の開口側縁部には、第一傾斜面32と連続する一対の開口拡大平面34が形成されている。一対の開口拡大平面34は同一平面上にある。開口拡大平面34は、軸方向に平行な平面であり、環状チャンバから連通溝31への作動液体の流入、及び、連通溝31から環状チャンバへの作動液体の流出を促進する。即ち、開口拡大平面34は、スプール3の小径部側において、連通溝31の有効開口面積を拡大する。また、連通溝31の開口側縁部の隔壁22との重複範囲内には、開口拡大平面34から大径部側の開口側縁部へと開口幅を狭くする一対の第三傾斜面35が形成されている。第三傾斜面35は、連通溝31内の小径部から大径部に向けた流れを促進する。
連通溝31、第一傾斜面32、第二傾斜面33、開口拡大平面34及び第三傾斜面35によって形成される構成単位を溝単位と呼ぶこととする。溝単位は、スプール3の小径部と大径部との間に形成されるが、小径部と大径部の配置に応じてその向きが異なる。図2(c)中の溝単位30Aは、スプール3の基端30側に第一傾斜面32が位置する。一方、溝単位30Bは、スプール3の基端30側に第二傾斜面33が位置する。また、溝単位30Aも溝単位30Bも、スプール3の中心軸に対して反対側にも形成されている。中心軸に対して互いに反対側に位置する一対の溝単位30A又は30Bの連通溝31の底部は互いに連通されている。即ち、この一対の連通溝31は貫通孔として形成されている。
また、溝単位30Aに対して溝単位30Bは、スプール3の中心軸に対して周方向に90°位置がずらされている。従って、本実施形態のスプール3には、四つの溝単位30Aと四つの溝単位30Bが形成されている。
マウントブラケット4は、バルブボディ1にサーボモータ5を固定する部材であり、その筒状部分の両端に外方に拡張するフランジが形成されている。一方のフランジはバルブボディ1のエンドプレート1P2にボルトによって固定され、他方のフランジはサーボモータ5のケースにボルトによって固定されている。マウントブラケット4の中央の筒状部には、カップリング6等へのアクセスホールが形成されている。また、マウントブラケット4の内部には内方に向けてフランジが形成されており、このフランジで上述したスペーサ40の軸方向の移動が規制されている。
サーボモータ5は、スプール3をその中心軸回りに回転させる回転駆動源である。サーボモータ5は、ロータリーエンコーダ又はレゾルバなどの回転位置検出器を内蔵している。回転位置検出器の検出結果を用いて、サーボモータ5の回転位置、即ち、スプール3の回転位置がフィードバック制御される。また,複動形液圧シリンダ等の液圧アクチュエータ制御への適用にあたっては,そのストローク等のアクチュエータ動作をセンサ検出して,この検出値に基づいたフィードバック制御が行われる。
次に、複数の環状チャンバについて詳しく説明する。上述したように、バルブボディ1の内部には、軸方向に沿って五つの環状チャンバが形成される。また、スプールバルブは、導入ポートP、排出ポートT、第一制御ポートC1、及び、第二制御ポートC2の四つのポートをそのバルブボディ1に備えている(図3及び図2(a)参照)。五つの環状チャンバの中央に位置する環状チャンバが導入環状チャンバ1Pである。導入環状チャンバ1Pには、導入ポートPを通してスプールバルブの外部から導入した作動液体を流入する。導入ポートPは、バルブボディ1の外表面から導入環状チャンバ1Pに連通している。
導入環状チャンバ1P内には開口面積の広いスリット20が形成されている。また、導入環状チャンバ1P内のスプール3の外径はスリーブ2の内径よりも僅かに小さい。図3に示されるように、導入ポートPの導入環状チャンバ1Pへの接続中心軸線(図中の導入ポートPの内径を示す円の中心)は、スリーブ2及びスプール3の中心軸とはズレている。なお、各ポートの環状チャンバへの接続中心軸線は、当該ポートの開口の中心を通り、当該ポートの環状チャンバへの接続部の延在方向に平行な線である。
導入環状チャンバ1Pの両側には、第一制御環状チャンバ1C1及び第二制御環状チャンバ1C2がそれぞれ形成されている。第一制御ポートC1は、バルブボディ1の外表面から第一制御環状チャンバ1C1に連通している。第一制御環状チャンバ1C1には、導入環状チャンバ1Pから溝単位30A並びにスリット20及び21を通して作動液体が流入し得る。導入環状チャンバ1Pから流入する作動液体は、溝単位30A並びにスリット20及び21によってその流量が制御されており、第一制御ポートC1を通して液圧シリンダに供給される。あるいは、第一制御環状チャンバ1C1には、第一制御ポートC1を通して液圧シリンダから回収した作動液体が流入し得る。液圧シリンダから第一制御環状チャンバ1C1内に回収された作動液体は、後述する第一排出環状チャンバ1T1及び排出ポートTを通してスプールバルブから排出される。
第二制御ポートC2は、バルブボディ1の外表面から第二制御環状チャンバ1C2に連通している。第二制御環状チャンバ1C2には、導入環状チャンバ1Pから溝単位30B並びにスリット20及び21を通して作動液体が流入し得る。導入環状チャンバ1Pから流入する作動液体は、溝単位30B並びにスリット20及び21によってその流量が制御されており、第二制御ポートC2を通して液圧シリンダに供給される。あるいは、第二制御環状チャンバ1C2には、第二制御ポートC2を通して液圧シリンダから回収した作動液体が流入し得る。液圧シリンダから第二制御環状チャンバ1C2内に回収された作動液体は、後述する第二排出環状チャンバ1T2及び排出ポートTを通してスプールバルブから排出される。
第一制御環状チャンバ1C1及び第二制御環状チャンバ1C2内には開口面積の狭いスリット21が形成されている。また、第一制御環状チャンバ1C1及び第二制御環状チャンバ1C2内のスプール3の外径はスリーブ2の内径に等しい。図3に示されるように、第一制御ポートC1の第一制御環状チャンバ1C1への接続中心軸線(図中の第一制御ポートC1の内径を示す円の中心)は、スリーブ2及びスプール3の中心軸と交差する。第二制御ポートC2の第二制御環状チャンバ1C2への接続中心軸線(図中の第二制御ポートC2の内径を示す円の中心)も、スリーブ2及びスプール3の中心軸と交差する。
第一制御環状チャンバ1C1の軸方向のさらに外側には第一排出環状チャンバ1T1が形成され、第二制御環状チャンバ1C2の軸方向のさらに外側には第二排出環状チャンバ1T2が形成されている。第一排出環状チャンバ1T1には、溝単位30Bを介して第一制御環状チャンバ1C1から送られた、液圧シリンダから回収した作動液体が流入し得る。同様に、第二制御環状チャンバ1C2には、溝単位30Aを介して第二制御環状チャンバ1C2から送られた、液圧シリンダから回収した作動液体が流入し得る。これらの回収された作動液体は、第一排出環状チャンバ1T1又は第二排出環状チャンバ1T2から排出ポートTを通してタンクへと排出される。
ここで、排出ポートTは、バルブボディ1内にT字状に形成されている。排出ポートTの第一制御環状チャンバ1C1及び第二制御環状チャンバ1C2側の区間は、軸方向に平行に形成されており、図2(a)に示されるように第一排出環状チャンバ1T1及び第二排出環状チャンバ1T2内の側壁にはその開口TPがそれぞれ形成される。この軸方向に平行な区間の中央からバルブボディ1の外表面まで、図3に示される排出ポートTが形成されている。即ち、排出ポートTは、バルブボディ1の外表面から第一排出環状チャンバ1T1内の開口TPに連通すると共に、バルブボディ1の外表面から第二排出環状チャンバ1T2内の開口TPに連通している。
スリーブ2のバルブボディ1への中心軸回りの取付角度によって、バルブボディ1に形成されたポートに対するスリット20及びスリット21の位置が決まる。具体的には、スリーブ2の取付角度によって、導入ポートPに対する導入環状チャンバ1P内のスリット20の位置が決まる。同様に、スリーブ2の取付角度によって、第一制御ポートC1に対する第一制御環状チャンバ1C1内のスリット21の位置が決まり、第二制御ポートC2に対する第二制御環状チャンバ1C2内のスリット21の位置も決まる。本実施形態では、図1に示されるように、図1中上側に位置するスリット20及び21の開口平面は、真上には向けられておらず、図1中若干手前側に向けられている。また、透過底面図である図3に示されるように、下側に位置するスリット20及び21の開口平面も、真下には向けられておらず、図3中若干下方側に向けられている。
導入ポートPに対する導入環状チャンバ1P内のスリット20の位置は、導入ポートPを通って導入環状チャンバ1Pに流入する作動液体の流れがスプール3に負荷トルクを与えないように設定されている。また、第一制御環状チャンバ1C1からは第一制御ポートC1を通して作動液体が液圧ピストンへと送出されるが、液圧ピストンから第一制御ポートC1を通して作動液体が第一制御環状チャンバ1C1内に回収される場合もある。このため、第一制御ポートC1に対する第一制御環状チャンバ1C1内のスリット21の位置は、第一制御ポートC1を通って第一制御環状チャンバ1C1内に流入する作動液体の流れがスプール3に負荷トルクを与えないように設定されている。同様に、第二制御環状チャンバ1C2からは第二制御ポートC2を通して作動液体が液圧ピストンへと送出されるが、液圧ピストンから第二制御ポートC2を通して作動液体が第二制御環状チャンバ1C2内に回収される場合もある。このため、第二制御ポートC2に対する第二制御環状チャンバ1C2内のスリット21の位置は、第二制御ポートC2を通って第二制御環状チャンバ1C2内に流入する作動液体の流れがスプール3に負荷トルクを与えないように設定されている。作動液体がスプール3に与える負荷トルクの影響については追って詳しく説明する。
なお、スプールバルブの内部には液密を確保するためのOリングなどのシール材が各所に設けられている。例えば、スリーブ2の隔壁22の外周面上には周溝が形成されており、この周溝にはOリングが収納される。しかし、図面中においては、シール材の収納溝は描かれているが、シール材自体は示されていない。また、スプールバルブ内のスリット20及び21は、上述したように真上又は真下には向けられていないが、図2(b)及び図4~図11においては、分かりやすいように、スリット20及び21は、真上又は真下に向けられて描かれている。
次に、スプール3の回転角度と作動液体の流路との関係について説明する。図4及び図5は、スプールバルブのバルブ全閉状態を示している。このときのスプール3の回転位置を基準回転位置と呼び、このときのスプール3の回転角度を0°とする。上述したように、スプール3の回転制御範囲は90°であり、スプール3の回転角度は、±45°で制御される。スプール3側からサーボモータ5の回転軸50を見て、時計回り(clockwise)をCWとし、反時計回りを(counter-clockwise)をCCWとする。また、図4中のA~D断面が図5に示されている。
図4及び図5に示されるバルブ全閉状態では、図5に示されるように、スリット20及び21の開口軸線に対して、連通溝31の開口軸線はCW45°又はCCW45°傾いている。スリット20及び21の開口軸線は、上述した開口平面の中心を通り、当該開口平面に垂直な線である。このとき、B断面を示す図5(b)から分かるように、導入環状チャンバ1Pは第一制御環状チャンバ1C1との間にある溝単位30Aの連通溝31と連通している。しかし、A断面を示す図5(a)から分かるように、第一制御環状チャンバ1C1は当該連通溝31とは連通していない。従って、導入環状チャンバ1Pから第一制御環状チャンバ1C1へと作動液体は流れない。厳密には、ごく僅かな量の作動液体はスリーブ2とスプール3との間の摺動面を介して環状チャンバ内で移動し得るが、スプールバルブの動作としては問題ない。
同様に、D断面を示す図5(d)から分かるように、導入環状チャンバ1Pは、第二制御環状チャンバ1C2との間にある溝単位30Bの連通溝31とも連通している。しかし、C断面を示す図5(c)から分かるように、第二制御環状チャンバ1C2は、当該連通溝31とは連通していない。従って、導入環状チャンバ1Pから第二制御環状チャンバ1C2へも作動液体は流れない。
また、C断面を示す図5(c)から分かるように、第一制御環状チャンバ1C1は第一排出環状チャンバ1T1との間にある溝単位30Bの連通溝31と連通していない。従って、第一制御環状チャンバ1C1から第一排出環状チャンバ1T1へも作動液体は流れない。ただし、D断面を示す図5(d)から分かるように、第一排出環状チャンバ1T1は、当該連通溝31とは連通している。同様に、A断面を示す図5(a)から分かるように、第二制御環状チャンバ1C2は第二排出環状チャンバ1T2との間にある溝単位30Aの連通溝31と連通していない。従って、第二制御環状チャンバ1C2から第二排出環状チャンバ1T2へも作動液体は流れない。ただし、B断面を示す図5(b)から分かるように、第二排出環状チャンバ1T2は、当該連通溝31とは連通している。
上述したように、バルブ全閉状態、即ち、スプール3が基準回転位置にある場合、ポンプから導入ポートPを通して導入環状チャンバ1Pへと作動液体が圧送され、作動液体は導入環状チャンバ1P内の一対の連通溝31内には導入される。このとき、連通溝31の開口周縁部には第一傾斜面32及び開口拡大平面34が形成されているため、連通溝31に作動液体が流入しやすくなっている。また、導入環状チャンバ1P内のスリット20も開口幅が広い。従って、圧力損失が低減され、作動液体は円滑に連通溝31内に導入される。しかし、第一制御環状チャンバ1C1及び第二制御環状チャンバ1C2内のスリット21が閉じられているため、作動液体は導入環状チャンバ1Pから第一制御環状チャンバ1C1及び第二制御環状チャンバ1C2に流れることはない。
このバルブ全閉状態からスプール3が回転されると、第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2内のスリット21が開かれ、作動液体が導入環状チャンバ1Pから第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2に流れる。このとき、連通溝31内はポンプによる圧力が作用した作動液体で満たされているため、作動液体はすぐに第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2へと流れるので応答性がよい。また、このとき、連通溝31の開口周縁部には第二傾斜面33及び第三傾斜面35が形成されているため、連通溝31から第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2への有効流路断面積も広げられることになる。従って、連通溝31を通る作動液体の流れ抵抗、即ち、圧力損失は、流入側及び流出側の双方で低減される。
次に、図6及び図7を参照して、導入環状チャンバ1P及び第一制御環状チャンバ1C1間の全開状態について説明する。このとき、第二制御環状チャンバ1C2及び第二排出環状チャンバ1T2間も全開となる。即ち、スプールバルブは、導入ポートP及び第一制御ポートC1を介して作動液体を液圧シリンダに全開で送出しつつ、第二制御ポートC2及び排出ポートTを介して作動液体を液圧シリンダから全開で回収する。このときのスプール3の回転位置は、CW45°である。即ち、スプール3は、上述した基準回転位置から時計回りに45°回転されている。図6(b)及び図7中にはこのCW45°が矢印で示されている。
この1P-1C1全開状態では、B断面を示す図7(b)から分かるように、導入環状チャンバ1Pは、第一制御環状チャンバ1C1との間にある溝単位30Aの連通溝31と連通している。連通溝31はスリット20の中央に位置し、スリット20の開口軸線と連通溝31の開口軸線とは一致しており、作動液体の連通溝31への流入抵抗は最も小さくなる。連通溝31の開口軸線は、連通溝31の開口の中心を通る連通溝31の深さ方向に平行な線である。一方、A断面を示す図7(a)から分かるように、第一制御環状チャンバ1C1内でも、当該連通溝31はスリット21の中央に位置し、スリット21の開口軸線と連通溝31の開口軸線とは一致しており、作動液体の連通溝31からの流出抵抗は最も小さくなる。上述した第一傾斜面32、第二傾斜面33、開口拡大平面34及び第三傾斜面35もこれらの流れ抵抗の低減に寄与している。この結果、図6(c)からよく分かるように、導入環状チャンバ1P及び第一制御環状チャンバ1C1間は全開状態となる。
一方、D断面を示す図7(d)から分かるように、導入環状チャンバ1Pは、第一傾斜面32及び開口拡大平面34を介して第二制御環状チャンバ1C2との間にある溝単位30Bの連通溝31と僅かに連通はしている。しかし、C断面を示す図7(c)から分かるように、当該連通溝31は第二制御環状チャンバ1C2とは連通していない。従って、導入環状チャンバ1Pから第二制御環状チャンバ1C2へは作動液体は流れない。
また、第一制御環状チャンバ1C1は、C断面を示す図7(c)から分かるように、第一排出環状チャンバ1T1との間にある溝単位30Bの連通溝31とは連通されていない。従って、第一制御環状チャンバ1C1から第一排出環状チャンバ1T1へも作動液体は流れない。ただし、D断面を示す図7(d)から分かるように、第一排出環状チャンバ1T1は、第一傾斜面32及び開口拡大平面34によって当該連通溝31とは僅かに連通はしている。
一方、A断面を示す図7(a)から分かるように、第二制御環状チャンバ1C2は、第二排出環状チャンバ1T2との間にある溝単位30Aの連通溝31と連通している。連通溝31はスリット21の中央に位置し、スリット21の開口軸線と連通溝31の開口軸線とは一致しており、作動液体の連通溝31への流入抵抗は最も小さくなる。また、B断面を示す図7(b)から分かるように、第二排出環状チャンバ1T2内でも、当該連通溝31はスリット20の中央に位置し、スリット20の開口軸線と連通溝31の開口軸線とは一致しており、作動液体の連通溝31からの流出抵抗は最も小さくなる。上述した第一傾斜面32、第二傾斜面33、開口拡大平面34及び第三傾斜面35がこれらの流れ抵抗の低減に寄与している。この結果、図6(c)からよく分かるように、第二制御環状チャンバ1C2及び第二排出環状チャンバ1T2間は全開状態となる。
次に、図8及び図9を参照して、導入環状チャンバ1P及び第二制御環状チャンバ1C2間の全開状態について説明する。このとき、第一制御環状チャンバ1C1及び第一排出環状チャンバ1T1間も全開となる。即ち、スプールバルブは、導入ポートP及び第二制御ポートC2を介して作動液体を液圧シリンダに全開で送出しつつ、第一制御ポートC1及び排出ポートTを介して作動液体を液圧シリンダから全開で回収する。このときのスプール3の回転位置は、CCW45°である。即ち、スプール3は、上述した基準回転位置から反時計回りに45°回転されている。図8(b)及び図9中にはこのCCW45°が矢印で示されている。
この1P-1C2全開状態では、D断面を示す図9(d)から分かるように、導入環状チャンバ1Pは第二制御環状チャンバ1C2との間にある溝単位30Bの連通溝31と連通している。連通溝31はスリット20の中央に位置し、スリット20の開口軸線と連通溝31の開口軸線とは一致しており、作動液体の連通溝31への流入抵抗は最も小さくなる。一方、C断面を示す図9(c)から分かるように、第二制御環状チャンバ1C2でも、当該連通溝31はスリット21の中央に位置し、スリット21の開口軸線と連通溝31の開口軸線とは一致しており、作動液体の連通溝31からの流出抵抗は最も小さくなる。上述した第一傾斜面32、第二傾斜面33、開口拡大平面34及び第三傾斜面35もこれらの流れ抵抗の低減に寄与している。この結果、図8(c)からよく分かるように、導入環状チャンバ1P及び第二制御環状チャンバ1C2間は全開状態となる。
一方、B断面を示す図9(b)から分かるように、導入環状チャンバ1Pは、第一傾斜面32及び開口拡大平面34を介して第一制御環状チャンバ1C1との間にある溝単位30Aの連通溝31と僅かに連通はしている。しかし、A断面を示す図9(a)から分かるように、当該連通溝31は第一制御環状チャンバ1C1とは連通していない。従って、導入環状チャンバ1Pから第一制御環状チャンバ1C1へは作動液体は流れない。
また、第二制御環状チャンバ1C2は、A断面を示す図9(a)から分かるように、第二排出環状チャンバ1T2との間にある溝単位30Aの連通溝31とは連通されていない。従って、第二制御環状チャンバ1C2から第二排出環状チャンバ1T2へも作動液体は流れない。ただし、B断面を示す図9(b)から分かるように、第二排出環状チャンバ1T2は、第一傾斜面32及び開口拡大平面34によって当該連通溝31とは僅かに連通はしている。
一方、C断面を示す図9(c)から分かるように、第一制御環状チャンバ1C1は、第一排出環状チャンバ1T1との間にある溝単位30Bの連通溝31と連通している。連通溝31はスリット21の中央に位置し、スリット21の開口軸線と連通溝31の開口軸線とは一致しており、作動液体の連通溝31への流入抵抗は最も小さくなる。また、D断面を示す図9(d)から分かるように、第一排出環状チャンバ1T1内でも、当該連通溝31はスリット20の中央に位置し、スリット20の開口軸線と連通溝31の開口軸線とは一致しており、作動液体の連通溝31からの流出抵抗は最も小さくなる。上述した第一傾斜面32、第二傾斜面33、開口拡大平面34及び第三傾斜面35もこれらの流れ抵抗の低減に寄与している。この結果、図8(c)からよく分かるように、第一制御環状チャンバ1C1及び第一排出環状チャンバ1T1間は全開状態となる。
以上、全閉又は全開状態を説明したが、スプールバルブは、全閉状態と全開状態との間で、作動液体の流量を制御した中間状態を実現できる。中間状態においても、第一傾斜面32、第二傾斜面33、開口拡大平面34及び第三傾斜面35によって有効流路断面積が十分に確保されるので、スプール3の制御回転位置に対して流量をリニアに制御することができる。言い換えれば、スプール3の回転位置に対して作動液体の流量をほぼ正比例で制御できる。また、有効流路断面積が十分に確保されているため、全開状態では作動液体の流量の絶対値も大きくすることができる。
次に、図10及び図11を参照して、導入環状チャンバ1P及び第二制御環状チャンバ1C2間の半開状態について説明する。この半開状態は、直前に説明した図8及び図9に示される1P-1C2全開状態に対する1P-1C2半開状態である。このとき、第一制御環状チャンバ1C1及び第一排出環状チャンバ1T1間も半開となる。即ち、スプールバルブは、導入ポートP及び第二制御ポートC2を介して作動液体を液圧シリンダに全開時のほぼ50%の流量で送出しつつ、第一制御ポートC1及び排出ポートTを介して作動液体を液圧シリンダから回収する。このときのスプール3の回転位置は、CCW22.5°である。即ち、スプール3は、上述した基準回転位置から反時計回りに22.5°回転されている。図10(b)及び図11中にはこのCCW22.5°が矢印で示されている。
この1P-1C2半開状態では、D断面を示す図11(d)から分かるように、導入環状チャンバ1Pは第二制御環状チャンバ1C2との間にある溝単位30Bの連通溝31と連通している。スリット20の開口幅が広く、かつ、第一傾斜面32及び開口拡大平面34が形成されているため、作動液体の連通溝31への流入抵抗は十分に低減されている。一方、C断面を示す図11(c)から分かるように、第二制御環状チャンバ1C2内では、当該連通溝31とスリット21との間の開口面積が全開時の50%となる。即ち、第二制御環状チャンバ1C2内のスリット21の有効開口面積によって作動液体の流量が制御される。この有効開口面積50%のスリット21を介して、作動液体が導入環状チャンバ1Pから第二制御環状チャンバ1C2へと流れる。このとき、第二傾斜面33及び第三傾斜面35が形成されているので、連通溝31から第二制御環状チャンバ1C2内への作動液体の流出抵抗が低減される。この結果、導入環状チャンバ1P及び第二制御環状チャンバ1C2間は半開状態となる。
一方、B断面を示す図11(b)から分かるように、導入環状チャンバ1Pは、第一傾斜面32及び開口拡大平面34を介して第一制御環状チャンバ1C1との間にある溝単位30Aの連通溝31と連通はしている。しかし、A断面を示す図11(a)から分かるように、当該連通溝31は、第一制御環状チャンバ1C1とは連通していない。従って、導入環状チャンバ1Pから第一制御環状チャンバ1C1へは作動液体は流れない。
また、第二制御環状チャンバ1C2は、A断面を示す図11(a)から分かるように、第二排出環状チャンバ1T2との間にある溝単位30Aの連通溝31とは連通されていない。従って、第二制御環状チャンバ1C2から第二排出環状チャンバ1T2へも作動液体は流れない。ただし、B断面を示す図11(b)から分かるように、第二排出環状チャンバ1T2は、第一傾斜面32及び開口拡大平面34によって当該連通溝31とは連通はしている。
一方、C断面を示す図11(c)から分かるように、第一制御環状チャンバ1C1は、第一排出環状チャンバ1T1との間にある溝単位30Bの連通溝31と連通している。第一制御環状チャンバ1C1内では、当該連通溝31とスリット21との間の開口面積が全開時の50%となる。即ち、第一制御環状チャンバ1C1内のスリット21の有効開口面積によって作動液体の流量が制御される。この有効開口面積50%のスリット21を介して、作動液体が第一制御環状チャンバ1C1から第一排出環状チャンバ1T1へと流れる。このとき、第二傾斜面33及び第三傾斜面35が形成されているので、連通溝31から第一排出環状チャンバ1T1内への作動液体の流出抵抗が低減される。
このとき、D断面を示す図11(d)から分かるように、第一排出環状チャンバ1T1内では、スリット20の開口幅が広く、かつ、第一傾斜面32及び開口拡大平面34が形成されているため、作動液体の連通溝31からの流出抵抗は十分に低減されている。この結果、第一制御環状チャンバ1C1及び第一排出環状チャンバ1T1間は半開状態となる。
上述した導入環状チャンバ1P及び第二制御環状チャンバ1C2間の半開状態以外の中間状態に関しては、図面も示さず、具体的な説明も省略するが、上記の説明からスプールバルブの動作は明らかである。中間状態では、第一制御環状チャンバ1C1内又は第二制御環状チャンバ1C2内のスリット21の有効開口面積によって作動液体の流量が制御される。
なお、本実施形態では、導入環状チャンバ1P内ではスプール3の外径が僅かに小さくされている。このため、作動液体は連通溝31内により流入しやすくなっている。また、スプール3の外径は、第一排出環状チャンバ1T1及び第二排出環状チャンバ1T2内でもスプール3の外径が僅かに小さくされている。これらの小径部を介して、潤滑液としても機能する作動液体がスプール3の大径部におけるスリーブ2とスプール3との間の摺動面に供給される。このため、小径部の形成による摺動面積減及び大径部への潤滑液供給によって、サーボモータ5によるスプールの回転抵抗が低減され、スプール3の回転位置制御の精度が向上され、回転速度も向上する。なお、これらの小径部は、第一制御環状チャンバ1C1から第一排出環状チャンバ1T1への作動液体の排出、及び、第二制御環状チャンバ1C2から第二排出環状チャンバ1T2への作動液体の排出も促進する。
バルブボディ1内の作動液体の流れがスプール3に与える影響について説明する。ポートから環状チャンバ内に流入する作動液体の流れが、スリット20又は21を通ってスプール3の連通溝31にぶつかると、スプール3をその中心軸周りに回転させようとする負荷トルクが作用する。この負荷トルクは、大きすぎると、サーボモータ5でスプール3を回転させる際に負荷となる。具体的には、サーボモータ5によるスプールの回転の抵抗となる正の負荷トルクを発生させたり、スプール3を過回転させる負の負荷トルクを発生させたりする。従って、サーボモータ5によるスプール3の回転位置制御を悪化させるため、このような負荷トルクは抑止したい。言い換えれば、いくら高精度かつ高速なサーボモータ5を用いても、このような負荷トルクを抑止しなければ、高精度かつ高速に流路切替制御及び流量制御は実現できない。
ポートから環状チャンバ内に流入する作動液体の流れに関して説明する。ポンプ駆動時には、導入ポートPを通して導入環状チャンバ1P内へはポンプから圧送された作動液体が流入する。1P-1C2開状態では、第一制御ポートC1を通して第一制御環状チャンバ1C1内へと液圧シリンダから回収された作動液体が流入する。一方、1P-1C1開状態では、第二制御ポートC2を通して第二制御環状チャンバ1C2内へと液圧シリンダから回収された作動液体が流入する。
本実施形態では、バルブボディ1内に作動液体を受け入れ得るこれらのポートが、当該ポートに対応する環状チャンバ内のスリット20又は21に対して、上述した負荷トルクを発生させないように配置されている。逆に言えば、バルブボディ1内に作動液体を流入させ得るこれらのポートに対して、当該ポートに対応する環状チャンバ内のスリット20又は21が、上述した負荷トルクを発生させないように配置されている。具体的には、ポートの環状チャンバへの接続中心軸線が、当該環状チャンバ内のスリット20又は21の開口平面を通過しないように、当該導入ポートに対してスリット20又は21が配置されている。
透過底面図である図3に示されるように、導入ポートPの導入環状チャンバ1Pへの接続中心軸線(図中の導入ポートPの内径を示す円の中心)は、導入環状チャンバ1P内のスリット20の開口平面を通過しない。本実施形態では、図1及び図2(a)に示されるように、導入ポートPは、導入環状チャンバ1Pを外方に拡張するように配置されており、導入ポートPの接続中心軸線はスリーブ2自体を通過することもない。なお、ここに言う接続中心軸線の開口平面の「通過」とは、スリーブ2に向けた作動液体の流れ方向を考慮するものであるので、スリーブ2の外部から内部への通過である。本実施形態では、導入環状チャンバ1P内には二つのスリット20が形成されるが、接続中心軸線が導入ポートPの開口に近い方のスリット20を通過しなければよい。導入ポートPの開口から遠い方のスリット20には、導入ポートPから流入する作動液体の流れが直接流入することはなく負荷トルクを発生させることはない、あるいは、発生させてもスプール3の回転制御には影響を与えないからである。以下、接続中心軸線の「通過」に関しては以下の説明においても同様である。
また、図3に示されるように、第一制御ポートC1の第一制御環状チャンバ1C1への接続中心軸線(図中の第一制御ポートC1の内径を示す円の中心)も、第一制御環状チャンバ1C1内のスリット21の開口平面を通過しない。第一制御ポートC1の接続中心軸線はスリーブ2のスリット21以外の部分を通過する。ここでも、接続中心軸線が第一制御ポートC1の開口に近い方のスリット20を通過しなければよい。同様に、第二制御ポートC2の第二制御環状チャンバ1C2への接続中心軸線(図中の第二制御ポートC2の内径を示す円の中心)も、第二制御環状チャンバ1C2内のスリット21の開口平面を通過しない。第二制御ポートC2の接続中心軸線はスリーブ2のスリット21以外の部分を通過する。ここでも、接続中心軸線が第二制御ポートC2の開口に近い方のスリット20を通過しなければよい。
ポートの接続中心軸線が開口平面を通過しないので、当該ポートを通って環状チャンバ内に流入した作動液体がスリット20又は21を通ってスプール3にぶつかって、スプール3に負荷トルクを発生させることを抑止できる。このため、サーボモータ5によるスプール3の回転制御を高精度に行うことができる。また、この負荷トルクの抑制は、スプールバルブで大流量を制御する上でも重要である。大きな流量を扱うときであっても負荷トルクが抑制されているため、高精度に流量を制御できる。
本実施形態の回転式スプールバルブは、五つの環状チャンバを有し、かつ、四つのポートを有しているが、回転式スプールバルブが異なる形態を有する場合も考えられ得る。しかし、作動液体の流れを考慮すれば、導入環状チャンバに隣接して少なくとも一つの制御環状チャンバが設けられる。これは、ポンプからの作動液体が導入される導入環状チャンバから、隣接する制御環状チャンバへと作動液体を流す必要があるからである。同様に、作動液体の流れを考慮すれば、排出環状チャンバは制御環状チャンバに隣接して設けられる。これは、液圧シリンダ等の液圧アクチュエータから制御環状チャンバに回収された作動液体を、隣接する排出環状チャンバを介してタンクへと排出する必要があるからである。従って、複数の環状チャンバにおける任意の隣接する環状チャンバの少なくとも一方には、当該環状チャンバに連通するポートを介してバルブボディの外部から内部へと作動液体が流入する。従って、上述した接続中心軸線と開口平面との関係は、隣接する二つの第一及び第二環状チャンバに関して次の(1)~(4)で規定することができる。
(1)複数の環状チャンバのうちの隣接する二つの第一環状チャンバ及び第二環状チャンバに渡って軸方向に延在する連通溝31がスプール3の外周面上に形成されている。(2)バルブボディ1の外表面から第一環状チャンバに連通してバルブボディの外部から流体を受け入れ得る第一ポートがバルブボディ1の内部に形成されている。(3)バルブボディ1の外表面から第二環状チャンバに連通する第二ポートがバルブボディ1の内部に形成されている。(4)第一ポートの第一環状チャンバへの接続中心軸線が、第一環状チャンバ内のスリット20又は21の開口平面を通過しない。
なお、ここで、隣接する二つの環状チャンバを第一環状チャンバ及び第二環状チャンバと呼んでいる。この「第一」及び「第二」の振り分けは、「第一」環状チャンバが流体を受け入れ得るという条件の元で任意に行える。隣接する二つの環状チャンバのうちの一方の流体を受け入れ得る環状チャンバが「第一」環状チャンバであり、他方が「第二」環状チャンバである。「第二」環状チャンバは、流体を受け入れ得る環状チャンバであってもよいし、流体を受け入れることのない環状チャンバであってもよい。例えば、導入環状チャンバ1P及び第一制御環状チャンバ1C1は互いに隣接しており、どちらも流体、即ち本実施形態における作動液体を受け入れ得る。従って、導入環状チャンバ1Pを第一環状チャンバとみなせば、第一制御環状チャンバ1C1が第二環状チャンバである。反対に、第一制御環状チャンバ1C1を第一環状チャンバとみなせば、導入環状チャンバ1Pが第二環状チャンバである。導入環状チャンバ1P及び第二制御環状チャンバ1C2についても同様である。
別の例として、第一制御環状チャンバ1C1及び第一排出環状チャンバ1T1は互いに隣接しているが、第一制御環状チャンバ1C1のみが作動液体を受け入れ得る。従って、第一制御環状チャンバ1C1は第一環状チャンバになり得るが、第一排出環状チャンバ1T1は第一環状チャンバにはなり得ない。第二制御環状チャンバ1C2及び第二排出環状チャンバ1T2についても同様である。
なお、本実施形態では、バルブボディ1から作動液体を排出する排出ポートTについても、その接続中心軸線と開口平面とが上述した関係を満足している。具体的には、排出ポートTの第一排出環状チャンバ1T1への接続中心軸線(図2中の開口TP参照)も、第一排出環状チャンバ1T1内のスリット20の開口平面を通過しない。同様に、排出ポートTの第二排出環状チャンバ1T2への接続中心軸線も、第二排出環状チャンバ1T2内のスリット20の開口平面を通過しない。
以下、本開示に係る回転式スプールバルブの利点について説明する。本開示に係る回転式スプールバルブは、バルブボディ1と、バルブボディ1内に固定された円筒状のスリーブ2と、スリーブ2の内部に回転可能に収納されたスプール3と、サーボモータ5と、を備えている。サーボモータ5は、スプール3をその中心軸回りに回転させる。バルブボディ1の内部のスリーブ2の外側に複数の環状チャンバ(1P,1C1,1C2,1T1,1T2)が形成されている。複数の前記環状チャンバは、上記中心軸の軸方向に沿って並べられて、それぞれ隔壁22で隔てられている。スリーブ2の内部と環状チャンバとを連通させるスリット20又は21が、複数の環状チャンバ毎にスリーブ2に形成されている。複数の環状チャンバのうちの隣接する二つの第一環状チャンバ(例えば、導入環状チャンバ1P)及び第二環状チャンバ(例えば、第一制御環状チャンバ1C1)に渡って上記軸方向に延在する連通溝31がスプール3の外周面上に形成されている。バルブボディ1の外表面から第一環状チャンバ(1P)に連通してバルブボディ1の外部から流体を受け入れ得る第一ポート(P)がバルブボディ1の内部に形成されている。バルブボディ1の外表面から第二環状チャンバ(1C1)に連通する第二ポート(C1)がバルブボディ1の内部に形成されている。第一ポート(P)の第一環状チャンバ(1P)への接続中心軸線は、第一環状チャンバ(1P)内のスリット(20)の開口平面を通過しない。
スプール3は、サーボモータ5によってその回転位置が制御される。近年のサーボモータ5は、その回転軸50の回転位置を高精度に制御することができる。従って、回転軸50に接続されたスプール3の回転位置を高精度に制御でき、連通溝31とスリット21との間での流量制御を高精度に行うことができる。また、スプール3の回転位置を高精度に制御できるので、複数の環状チャンバを介したスプールバルブの流路切替制御も高精度に行うことができる。なお、流路切替制御には、流路を形成させないバルブ閉止も含む。また、近年のサーボモータ5はその動作も高速であり、上述した制御を高速に行うことができる。
ここで、上述したように、バルブボディ1内の流体によってスプール3に負荷トルクが生じるようであると、流量精度の制御が低下すると共に、スプール3の回転制御に時間がかかって制御速度も低下してしまう。そこで、本開示の回転式スプールバルブでは、負荷トルクを防止するために、第一ポート(P)の第一環状チャンバ(1P)への接続中心軸線が、第一環状チャンバ(1P)内のスリット(20)の開口平面を通過しないようにスリット(20)が形成されている。言い換えれば、第一ポート(P)から第一環状チャンバ(1P)に流れ込む流体は、スリット(20)を通ってスプール3の連通溝31などに直接ぶつかることがないので、スプール3に負荷トルクを発生させることがない。このため、流量制御及び流路切替制御を高精度かつ高速に行うことができる。また、流体の流量が大きくなっても負荷トルクは防止されるので、大流量を扱うことができる。大流量時でも負荷トルクの影響を受ないことはサーボモータ5の制御上非常に有利であり、小流量から大流量までスプール3の回転位置にほぼ比例するリニアな理想的な流量特性を実現できる。
ここで、複数の環状チャンバのそれぞれにおいて、スリット20又は21が上記中心軸回りに均等に複数形成されている。そして連通溝31も、必然的に、複数のスリット20又は21に対応して複数形成されている。例えば、上記実施形態では、スリット20又は21が上記中心軸回りに均等に二つ、即ち、上記中心軸に対して180°の位置に形成されている。このようにすることで、流体のやり取りが行われる隣接する二つの第一環状チャンバ及び第二環状チャンバ間の有効流路断面積が増えて圧力損失が低減される。この結果、より大流量に対応できる。
また、スリット20又は21及び連通溝31が均等に配置されるため、スプール3が環状チャンバ内の流体の流れから受ける圧力などの影響が周方向に均一化されるので、スプール3の制御を高精度に維持することができる。この周方向に均一化を考慮すれば、スリット20又は21は上記中心軸回りに均等に複数形成される方が好ましい。しかし、スリット20又は21及び連通溝31の数が周方向に増えるとスリーブ2及びスプール3の強度が低下する。このため、本実施形態では、強度低下を回避するために各環状チャンバ内には二つのスリット20又は21が形成された。ただし、強度的に問題なく、かつ、連通溝31の形成スペース上の問題がなければ、周方向に三つ以上のスリット20又は21及び連通溝31が形成されてもよい。
これらの周方向に均等に形成された連通溝31の底部がすべて連通されていることが好ましい。即ち、これらの複数の連通溝31がスプール3を貫通する貫通孔として形成されていることが好ましい。このようにすることで、単一の連通溝31内だけで流体が流れるのではなく、一つの溝単位30A又は30Bにおいて複数の連通溝31を介する流体の流れを生じさせることができる。これは、連通溝31内の有効流路断面積の増加にも寄与するため、高精度の流量制御を担保することになる。また、有効流路断面積増加は流路抵抗低減ももたらすので、高速な流路切替制御にも寄与する。ただし、連通溝31を貫通孔とすると連通溝31内の内壁面積が増えるので、作用する流体圧力が増える。この流体圧力に対するスプール3の強度及び剛性が確保できるのであれば、連通溝31を貫通孔とすることが好ましい。なお、連通溝31を貫通孔とせずに各連通溝31に底部を設ければ、スプール3の強度並びに軸方向剛性及びねじり剛性を向上させることができる。
また、本開示の回転式スプールバルブにおいては、連通溝31の上記軸方向の両端に、連通溝31に落ち込む第一傾斜面32及び第二傾斜面33がそれぞれ形成されている。これらの傾斜面32及び33により、連通溝31へ流れ込む流体の有効流路断面積を大きくでき、流路抵抗を低減できる。あるいは、連通溝31から流れ出す流体の有効流路断面積を大きくでき、流路抵抗を低減できる。この結果、上述した高精度かつ高速な流量制御及び流路切替制御を担保することができる。
ここでさらに、本開示の回転式スプールバルブでは、外部のポンプから流体を導入する導入ポートPを第一ポートとみなすことができ、かつ、導入ポートPに連通された導入環状チャンバ1Pを第一環状チャンバであるとみなすことができる。これに伴い、連通溝31及びスリット21により制御された流体を導入環状チャンバ1Pから受け入れる第一制御環状チャンバ1C1を第二環状チャンバであるとみなすことができる。また、第一制御環状チャンバ1C1から流体を液圧アクチュエータに送出可能な第一制御ポートC1を第二ポートとみなすことができる。あるいは、第二制御環状チャンバ1C2及び第二制御ポートC2をそれぞれ第二環状チャンバ及び第二ポートであるとみなすことも可能である。
これらの場合、導入ポートPには、ポンプにより昇圧された高圧の流体が導入されることになるので、導入ポートPに連通する導入環状チャンバ1P内は特に上述した負荷トルクを生じさせやすい環境にある。しかし、上述したように負荷トルクは有効に防止されるので、上述した高精度かつ高速な流量制御及び流路切替制御を担保することができる。特に、連通溝31は、スプール3がその制御範囲内のどの回転位置にあっても、導入環状チャンバ1Pと連通されている。即ち、導入環状チャンバ1P内に延在している連通溝31の内部には、たとえバルブ全閉時であっても高圧の流体が充填される。このため、連通溝31がスリット21の開口平面と重複すれば流体はすぐに隣接する第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2に流入するので応答性が向上する。この点からも、上述した高精度かつ高速な流量制御及び流路切替制御が担保される。
さらにここで、第二ポートが第一制御ポートC1である場合は、第一制御ポートC1の第一制御環状チャンバ1C1への接続中心軸線が、当該第一制御環状チャンバ1C1内のスリット21の開口平面を通過しない。あるいは、第二ポートが第二制御ポートC2である場合は、第二制御ポートC2の第二制御環状チャンバ1C2への接続中心軸線が、当該第二制御環状チャンバ1C2内のスリット21の開口平面を通過しない。上述したように、第一環状チャンバとしての導入環状チャンバ1Pに隣接する第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2内からは、液圧アクチュエータに流体が送出される。その一方で第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2内には、液圧アクチュエータから回収した流体が流入する。即ち、この回収の際には、第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2内も上述した負荷トルクを生じさせやすい環境にある。しかし、上述したように負荷トルクは有効に防止されるので、上述した高精度かつ高速な流量制御及び流路切替制御を担保することができる。
さらに、第一環状チャンバが導入環状チャンバ1Pである場合に、連通溝31の導入環状チャンバ1P内の開口側縁部に、第一傾斜面32と連通する上記軸方向に平行な一対の開口拡大平面34が形成されていることが好ましい。ここで、一対の開口拡大平面34同士は同一平面上にある。開口拡大平面34によって、第一環状チャンバである導入環状チャンバ1Pから連通溝31内への流体の流れ抵抗、即ち、圧力損失が低減される。この結果、上述した高精度かつ高速な流量制御及び流路切替制御がより確実に担保される。加えて、連通溝31の隔壁22との重複範囲内の開口側縁部には、第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2に向けて開口幅を狭くする一対の第三傾斜面35が形成される。隔壁22との重複範囲内では連通溝31が隔壁22により塞がれており、当該重複範囲内の有効流路断面積は連通溝31の深さのみに依存する。ここで、一対の第三傾斜面35を形成することで、連通溝31における導入環状チャンバ1Pから第一制御環状チャンバ1C1又は第二制御環状チャンバ1C2への流体の流れ抵抗が低減され、この流体の流れが促進される。この流れ促進によっても、上述した高精度かつ高速な流量制御及び流路切替制御が担保される。
1 バルブボディ
1P 導入環状チャンバ(第一又は第二環状チャンバになり得る)
1C1 第一制御環状チャンバ(第一又は第二環状チャンバになり得る)
1C2 第二制御環状チャンバ(第一又は第二環状チャンバになり得る)
1T1 第一排出環状チャンバ(第二環状チャンバになり得る)
1T2 第二排出環状チャンバ(第二環状チャンバになり得る)
2 スリーブ
3 スプール
5 サーボモータ
20,21 スリット
22 隔壁
31 連通溝
32 第一傾斜面
33 第二傾斜面
34 開口拡大平面
35 第三傾斜面
P 導入ポート(第一又は第二ポートになり得る)
C1 第一制御ポート(第一又は第二ポートになり得る)
C2 第二制御ポート(第一又は第二ポートになり得る)
T 排出ポート(第二ポートになり得る)
1P 導入環状チャンバ(第一又は第二環状チャンバになり得る)
1C1 第一制御環状チャンバ(第一又は第二環状チャンバになり得る)
1C2 第二制御環状チャンバ(第一又は第二環状チャンバになり得る)
1T1 第一排出環状チャンバ(第二環状チャンバになり得る)
1T2 第二排出環状チャンバ(第二環状チャンバになり得る)
2 スリーブ
3 スプール
5 サーボモータ
20,21 スリット
22 隔壁
31 連通溝
32 第一傾斜面
33 第二傾斜面
34 開口拡大平面
35 第三傾斜面
P 導入ポート(第一又は第二ポートになり得る)
C1 第一制御ポート(第一又は第二ポートになり得る)
C2 第二制御ポート(第一又は第二ポートになり得る)
T 排出ポート(第二ポートになり得る)
Claims (6)
- 回転式スプールバルブであって、
バルブボディと、
前記バルブボディ内に固定された円筒状のスリーブと、
前記スリーブの内部に回転可能に収納されたスプールと、
前記スプールの中心軸回りに当該スプールを回転させるサーボモータと、を備えており、
前記バルブボディの内部の前記スリーブの外側に複数の環状チャンバが形成され、複数の前記環状チャンバは、前記中心軸の軸方向に沿って並べられて、それぞれ隔壁で隔てられており、
前記スリーブの内部と前記環状チャンバとを連通させるスリットが、複数の前記環状チャンバ毎に前記スリーブに形成されており、
複数の環状チャンバのうちの隣接する二つの第一環状チャンバ及び第二環状チャンバに渡って前記軸方向に延在する連通溝が前記スプールの外周面上に形成されており、
前記バルブボディの外表面から前記第一環状チャンバに連通して前記バルブボディの外部から流体を受け入れ得る第一ポートが前記バルブボディの内部に形成されると共に、前記バルブボディの外表面から前記第二環状チャンバに連通する第二ポートが前記バルブボディの内部に形成されており、
前記第一ポートの前記第一環状チャンバへの接続中心軸線が、当該第一環状チャンバ内の前記スリットの開口平面を通過しない、回転式スプールバルブ。 - 複数の前記環状チャンバのそれぞれにおいて、前記スリットが前記中心軸回りに均等に複数形成されており、
前記連通溝が、複数の前記スリットに対応して複数形成されている、請求項1に記載の回転式スプールバルブ。 - 複数形成された前記連通溝の底部がすべて連通されており、複数の前記連通溝がスプールを貫通する貫通孔として形成されている、請求項2に記載の回転式スプールバルブ。
- 前記連通溝の前記軸方向の両端が、前記連通溝に落ち込む傾斜面として形成されている、請求項2又は3に記載の回転式スプールバルブ。
- 前記第一ポートが外部のポンプから前記流体を導入する導入ポートであり、かつ、前記第一環状チャンバが前記導入ポートに連通する導入環状チャンバであり、
前記第二環状チャンバが前記連通溝及び前記スリットによって制御された前記導入環状チャンバからの前記流体を受け入れる制御環状チャンバであり、かつ、前記第二ポートが前記制御環状チャンバから前記流体を液圧アクチュエータに送出可能な制御ポートであり、
前記制御ポートの前記制御環状チャンバへの接続中心軸線が、前記制御環状チャンバ内の前記スリットの開口平面を通過せず、
前記連通溝が、前記導入環状チャンバと連通する、請求項4に記載の回転式スプールバルブ。 - 前記連通溝の前記導入環状チャンバ内の開口側縁部に、前記傾斜面と連続する前記軸方向に平行な一対の開口拡大平面が形成されており、
前記連通溝の前記導入環状チャンバと前記制御環状チャンバとの間の前記隔壁との重複範囲内の開口側縁部に、前記開口拡大平面から前記連通溝の前記制御環状チャンバ内の開口側縁部へと開口幅を狭くする一対の傾斜面が形成されている、請求項5に記載の回転式スプールバルブ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022139766A JP2024035352A (ja) | 2022-09-02 | 2022-09-02 | 回転式スプールバルブ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022139766A JP2024035352A (ja) | 2022-09-02 | 2022-09-02 | 回転式スプールバルブ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2024035352A true JP2024035352A (ja) | 2024-03-14 |
Family
ID=90194999
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022139766A Pending JP2024035352A (ja) | 2022-09-02 | 2022-09-02 | 回転式スプールバルブ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2024035352A (ja) |
-
2022
- 2022-09-02 JP JP2022139766A patent/JP2024035352A/ja active Pending
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