JP2024034797A - 車両用制動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヒステリシス特性を有する電動ブレーキの制御において、制動力の増加動作と減少動作との切り替えに応じて制御を適切に実施可能な車両用制動装置を提供する。【解決手段】制動力制御部のトルク指令演算部401は、外部から指令される要求制動力に基づきモータのトルク指令値Trq*を演算する。モータのトルクと電動ブレーキに発生する制動力との関係は、ヒステリシス特性を有している。トルクが増加するとき、制動力が正効率線に沿って増加し、トルクが減少するとき、制動力が逆効率線に沿って減少する。トルク指令演算部401の特定制御器(荷重制御器)48は、実荷重Fを荷重指令値F*に近づけるように、トルク指令値Trq*を演算する。制御調整器471は、増加動作時、減少動作時、又は、増加動作と減少操作との遷移時に、特定制御器48の、又は、特定制御器48の入力側もしくは出力側における制御演算のパラメータを調整する。【選択図】図5
Description
本発明は、車両用制動装置に関する。
従来、モータのトルクと、運動変換機構からブレーキディスクに加える押圧力との関係がヒステリシス特性を有している車両の電動ブレーキ装置において、押圧力の大きさが目標値に到達するようにモータの駆動を制御する技術が知られている。
例えば特許文献1に開示された電動ブレーキ装置では、モータ制御装置は、荷重センサで検出される押圧力の大きさに基づいてモータの駆動電流を制御する。モータトルクと押圧力との関係はヒステリシス特性を有している。このモータ制御装置は、押圧力をブレーキディスクに加えて保持するとき、押圧力が目標値よりも大きい所定値に上昇するまで正効率線に沿ってモータのトルクを増加させてから、押圧力が目標値に減少するまで逆効率線に沿ってモータのトルクを減少させる。
本明細書ではヒステリシスの図の縦軸を「制動力の相関量」として記載する。特許文献1において荷重センサで検出される押圧力は、電動ブレーキが実際に出力する制動力である実制動力に相当する。また、特許文献1における荷重指令値は要求制動力に相当する。特許文献1の従来技術では、正効率線上から逆効率線上に動作点を移して制動力を保持することで、制動力の保持中にモータを駆動する電流を低減することができる。
ヒステリシス特性を有する電動ブレーキの制御では、ヒステリシス特性が無い場合に比べ、制動力の増加動作から減少動作への遷移時、及び、減少動作から増加動作への遷移時に大きなトルク変化が必要となり、応答遅れが生じるおそれがあった。また、増加動作と減少動作とでPI制御器の制御ゲインを同等に設定すると、減少動作時にオーバーシュートが生じるおそれがあった。また、制動力目標値を跨いで増加動作と減少動作との不要な切り替わりが発生することにより、トルクの脈動が生じるおそれがあった。
本発明は上述の点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、ヒステリシス特性を有する電動ブレーキの制御において、制動力の増加動作と減少動作との切り替えに応じて制御を適切に実施可能な車両用制動装置を提供することにある。
本発明の車両用制動装置は、モータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪(91-94)に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)が各車輪に設けられた車両(900)に搭載される。
車両用制動装置は、トルク指令演算部(401-404)及び電流指令演算部(50)を含み、各電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部(400)を備える。トルク指令演算部は、外部から指令される要求制動力に基づきモータのトルク指令値(Trq*)を演算する。電流指令演算部は、トルク指令値に基づきモータに通電する電流指令値(I*)を演算する。
電動ブレーキは、車輪に実際に押圧される制動荷重である実荷重(F)を検出する荷重センサ(71)、又は、モータの実際の回転角度もしくは直動機構の実際のストロークである実位置(θ、X)を検出する位置センサ(72、73)を備えている。
モータのトルクと電動ブレーキに発生する制動力との関係は、トルクが増加するとき、制動力が正効率線に沿って増加し、トルクが増加から減少に転じる転向値から保持臨界値まで減少するとき、制動力が一定に保持され、トルクが保持臨界値から減少するとき、制動力が逆効率線に沿って減少するヒステリシス特性を有している。
モータのトルクを正効率線に沿って増加させる動作を「増加動作」、正効率線と逆効率線との間の任意の動作点で制動力を保持する動作を「保持動作」、モータのトルクを逆効率線に沿って減少させる動作を「減少動作」と定義する。
本発明の第一の態様では、トルク指令演算部は、特定制御器(48)と、制御調整器(471、472、473)と、を有する。特定制御器は、荷重センサにより検出された実荷重を荷重指令値に近づけるように、又は、位置センサにより検出された実位置を位置指令値に近づけるように、トルク指令値を演算する。制御調整器は、増加動作時、減少動作時、又は、増加動作と減少操作との遷移時に、特定制御器の、又は、特定制御器の入力側もしくは出力側における制御演算のパラメータを調整する。
本発明の第一の態様では、ヒステリシス特性を有する電動ブレーキの制御において、制動力の増加動作及び減少動作の切り替えに応じて制御演算のパラメータを調整することで、制御を適切に実施することができる。
本発明の第二の態様では、トルク指令演算部は、特定制御器(48)と、不感帯設定器(43)と、を有する。特定制御器は、荷重センサにより検出された実荷重を荷重指令値に近づけるように、又は、位置センサにより検出された実位置を位置指令値に近づけるように、トルク指令値を演算する。不感帯設定器は、特定制御器に入力される荷重指令値と実荷重との偏差である荷重偏差、又は、位置指令値と実位置との偏差である位置偏差がゼロを含む所定範囲内にある場合、荷重偏差又は位置偏差をゼロとみなすように、所定範囲を不感帯として設定する。
本発明の第二の態様では、不感帯を設定することで、増加動作と減少動作との不要な切り替わりが生じることを防止することができる。
本発明の複数の実施形態による車両用制動装置を図面に基づいて説明する。複数の実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。以下の第1~第4実施形態を包括して「本実施形態」という。本実施形態の車両用制動装置は、モータが出力したトルクを直動機構により直動力に変換し、対応する車輪に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキが各車輪に設けられた車両に搭載される。車両用制動装置は、各電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部を備える。
[車両の構成]
図1~図3(b)を参照し、本実施形態の車両用制動装置30が搭載される車両900及び電動ブレーキ81-84の構成を説明する。図1に示すように、車両900は、前後方向において二列の左右対の車輪91、92、93、94を有する四輪車両である。前列左右輪91、92に「FL、FR」、後列左右輪93、94に「RL、RR」と記す。各車輪91、92、93、94に対応して複数(この例では四つ)の電動ブレーキ81、82、83、84が設けられている。以下、連続する四つの符号を、「車輪91-94」、「電動ブレーキ81-84」のように省略して記す。
図1~図3(b)を参照し、本実施形態の車両用制動装置30が搭載される車両900及び電動ブレーキ81-84の構成を説明する。図1に示すように、車両900は、前後方向において二列の左右対の車輪91、92、93、94を有する四輪車両である。前列左右輪91、92に「FL、FR」、後列左右輪93、94に「RL、RR」と記す。各車輪91、92、93、94に対応して複数(この例では四つ)の電動ブレーキ81、82、83、84が設けられている。以下、連続する四つの符号を、「車輪91-94」、「電動ブレーキ81-84」のように省略して記す。
車両用制動装置30は制動力制御部400を備える。制動力制御部400は、外部から指令される要求制動力に基づき、各電動ブレーキ81-84が発生させる制動力を制御する。要求制動力は、運転者のブレーキ操作や運転支援装置からの制動信号等により指令される。各電動ブレーキ81-84から、ブレーキパッドの押圧荷重を検出した荷重センサ信号F(実線)、又は、モータ又は直動機構の動作位置を検出した位置センサ信号θ、X(破線)が制動力制御部400に入力される。
本実施形態では各電動ブレーキ81-84の制御構成は同様である。図2には、電動ブレーキ81-84のうちいずれか一つを例として、制動力制御部400による電動ブレーキの制御構成を図示する。
各電動ブレーキ81-84は、モータ60、直動機構85、及びキャリパ86を含む。モータ60は、例えば永久磁石式三相ブラシレスモータで構成されており、制動力制御部400から通電される駆動電流によりトルクを出力する。直動機構85は、モータ60の出力回転を減速しつつ直線運動に変換するアクチュエータである。モータ60の回転角度θと直動機構85のストロークXとは比例する。こうして各電動ブレーキ81-84は、モータ60が出力したトルクを直動機構85により直動力に変換し、対応する車輪91-94に押圧して制動力を発生させる。
モータ60の出力トルクは、直動機構85を介してキャリパ86のパッド87を動作させる。パッド87が移動して各車輪91-94のディスク88に押し付けられることで、摩擦により制動力が発生する。また、パッド87がディスク88から離れることで、制動力が解除される。
図3(a)、(b)を参照し、図2のIIIa部に示す電動ブレーキ81-81のパッド87の特性について補足する。図3(a)に示すように、パッド87はバネのような特性を持ち、直動機構85による押し込み力Fdと、ひずみ量に応じた反力Frとが互いに反対方向に作用する。図3(b)に示すように、直動機構85のストロークに基づくパッド位置Xと、パッド荷重Fとはほぼ比例する。モータ60の回転角度の変化Δθによりパッド位置がΔX変化すれば、パッド荷重はΔF変化する。なお、図3(b)でのみ、記号「ΔF」は荷重の変化分を示す。図5以下で用いられる、荷重指令値と実荷重との荷重偏差を示す「ΔF」とは意味が異なる。
図2に戻り、制動力制御部400は、トルク指令演算部40、電流指令演算部50及びインバータ55を含む。トルク指令演算部40は、外部から指令される要求制動力に基づきモータ60のトルク指令値Trq*を演算する。電流指令演算部50は、トルク指令値に基づきモータ60に通電する電流指令値I*を演算する。
インバータ55は、バッテリ15の直流電力を交流電力に変換し、電流指令値I*に応じた交流電力をモータ60に供給する。なお、電流指令演算部50からインバータ55までの電流フィードバック等の詳細な構成を省略する。一般的なモータ制御技術により、PWM制御等によるスイッチング信号に従ってインバータ55がスイッチング動作する。
基本的な実施形態では、電動ブレーキ81-84は、車輪91-94に実際に押圧される制動荷重である実荷重Fを検出する荷重センサ71を備えている。荷重センサ71が検出した実荷重Fはトルク指令演算部40に入力される。トルク指令演算部40は、要求制動力に基づき演算される荷重指令値に実荷重Fを近づけるようにトルク指令値Trq*を演算する荷重制御器を有する。第1~第4実施形態の説明では、トルク指令演算部40が荷重制御器により荷重制御を行う構成を前提とする。
ただし、その他の実施形態の電動ブレーキ81-84は、一点鎖線で示す角度センサ72、又は、二点鎖線で示すストロークセンサ73を備えてもよい。角度センサ72は、モータ60の実際の回転角度である実角度θを検出する。ストロークセンサ73は、直動機構85の実際のストロークである実ストロークXを検出する。
角度センサ72及びストロークセンサ73を包括して「位置センサ」といい、実角度θ及び実ストロークXを包括して「実位置」という。位置センサ72、73が検出した実位置θ、Xはトルク指令演算部40に入力される。トルク指令演算部40は、要求制動力に基づき演算される位置指令値に実位置θ、Xを近づけるようにトルク指令値Trq*を演算する位置制御器を有してもよい。本明細書において荷重制御器又は位置制御器を「特定制御器」と定義する。第1~第4実施形態のトルク指令演算部では「特定制御器」として荷重制御器48が用いられる。
次に図4を参照し、この構成の電動ブレーキにおけるモータトルクと制動力との関係について説明する。制動力はブレーキパッド荷重に相関する。以下、単に「トルク」とはモータ60が出力するトルクを意味し、単に「荷重」とはパッド87による押圧荷重を意味する。図4は、特許文献1(特許第6080682号公報)の図10に対応する。
モータ60のトルクと電動ブレーキ81-84に発生する制動力との関係はヒステリシス特性を有している。トルクが増加するとき、制動力は正効率線に沿って増加する。トルクが増加から減少に転じる転向値Tconvから保持臨界値Tcrまで減少するとき、制動力は一定に保持される。トルクが保持臨界値Tcrから減少するとき、制動力は逆効率線に沿って減少する。
特許文献1の従来技術では、荷重センサで検出される荷重の大きさが「目標値F*よりも所定のオフセット値dF大きい値」に到達するまでモータのトルクを増加させる。その後、荷重センサで検出される荷重の大きさが目標値F*に到達するまでモータのトルクを減少させるようにモータの駆動電流を制御する。モータのトルクを減少させる過程で荷重F、すなわち制動力は保持される。
トルク及び制動力を正効率線に沿って増加させる動作を「増加動作」、正効率線と逆効率線との間の任意の動作点で制動力を保持する動作を「保持動作」、トルク及び制動力を逆効率線に沿って減少させる動作を「減少動作」と定義する。
特許文献1に開示されているように、ヒステリシス特性を有する電動ブレーキの制御では、ヒステリシス特性が無い場合に比べ、制動力の増加動作から減少動作への遷移時、及び、減少動作から増加動作への遷移時に大きなトルク変化が必要となり、応答遅れが生じるおそれがあった。また、増加動作と減少動作とでPI制御器の制御ゲインを同等に設定すると、減少動作時にオーバーシュートが生じるおそれがあった。また、制動力目標値を跨いで増加動作と減少動作との不要な切り替わりが発生することにより、トルクの脈動が生じるおそれがあった。
そこで本実施形態の車両用制動装置30は、ヒステリシス特性を有する電動ブレーキの制御において、制動力の増加動作と減少動作との切り替わりに伴う制御を適切に実施することを目的とする。その解決手段は、大きく、第1~第3実施形態のグループと第4実施形態とで分かれる。
第1~第3実施形態のトルク指令演算部40は、増加動作時、減少動作時、又は、増加動作と減少操作との遷移時に、荷重制御器の、又は、荷重制御器の入力側もしくは出力側における制御演算のパラメータを調整する「制御調整器」を有する。続いて、実施形態毎に詳細な構成を説明する。第1~第3実施形態のトルク指令演算部及び制御調整器の符号は、「40」及び「47」に続く3桁目に実施形態の番号を付す。
第1実施形態のトルク指令演算部401において、制御調整器471は、増加動作と減少操作との遷移時に、荷重制御器の出力側における制御演算のパラメータとしてトルク指令値Trq*のフィードフォワード項を調整する。
第2実施形態のトルク指令演算部402において、制御調整器472は、増加動作時及び減少動作時に、荷重制御器の制御演算のパラメータとして制御ゲインを調整する。
第3実施形態のトルク指令演算部403において、制御調整器473は、増加動作時及び減少動作時に、荷重制御器の入力側における制御演算のパラメータとして不感帯の上下限値を調整する。
(第1実施形態)
図5~図8を参照し、第1実施形態について説明する。図5に示すように、第1実施形態のトルク指令演算部401は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42及び荷重制御器48に加え、制御調整器471を有する。また、電流指令演算部50は、トルク偏差算出器52及びトルク制御器53を有する。
図5~図8を参照し、第1実施形態について説明する。図5に示すように、第1実施形態のトルク指令演算部401は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42及び荷重制御器48に加え、制御調整器471を有する。また、電流指令演算部50は、トルク偏差算出器52及びトルク制御器53を有する。
荷重指令演算部41は、要求制動力に基づき荷重指令値F*を演算する。荷重偏差算出器42は、荷重センサ71により検出された実荷重Fと荷重指令値F*との荷重偏差ΔF(=F*-F)を算出し、荷重制御器48に出力する。荷重制御器48は、荷重偏差ΔFをゼロに近づけるように、すなわち、実荷重Fを荷重指令値F*に近づけるようにトルク指令値Trq*を演算する。
制御調整器471は、後述のように、トルク-制動力マップにおいてヒステリシス幅W_hysを算出する。また制御調整器471は、トルク指令値のフィードフォワード項Trq*_FFを設定し、電流指令演算部50のトルク偏差算出器52に出力する。以下、トルク指令値のフィードフォワード項Trq*_FFを単に「フィードフォワード項Trq*_FF」と記す。
制御調整器471は、実荷重F及び荷重偏差ΔFを取得して、マップ上の現在の動作点及び制動力の増減方向を推定する。そして制御調整器471は、増加動作から減少動作への遷移時であるか、減少動作から増加動作への遷移時であるかを判別し、フィードフォワード項Trq*_FFを調整する。
電流指令演算部50のトルク偏差算出器52には、荷重制御器48が演算したトルク指令値Trq*、制御調整器471が設定したフィードフォワード項Trq*_FF、及び、モータ60が実際に出力するトルクである実トルクTrqが入力される。例えば永久磁石式三相ブラシレスモータにおいて、モータ60の実トルクTrqは、極対数、磁石磁束、d軸インダクタンス、q軸インダクタンスを用いて、d軸電流及びq軸電流から推定される。或いは、モータ60の実トルクTrqはトルクセンサにより検出されてもよい。
トルク偏差算出器52は、トルク指令値Trq*とフィードフォワード項Trq*_FFとの和からモータ60の実トルクTrqを減じた値をトルク偏差ΔTrq(=Trq*+Trq*_FF-Trq)として算出する。トルク制御器53は、トルク偏差ΔTrqをゼロに近づけるように、すなわち、実トルクTrqをトルク指令値Trq*とフィードフォワード項Trq*_FFとの和に近づけるように電流指令値I*を演算する。
図6を参照し、制御調整器471による最大トルクTrq_max、最小トルクTrq_minの記憶、及び、ヒステリシス幅W_hysの算出について説明する。図6のトルク-制動力マップにおいて正効率線上の白丸は最大トルクTrq_maxを示し、逆効率線上のハッチング入りの丸は最小トルクTrq_minを示す。制御調整器471は、各荷重指令値F*に対応する最大トルクTrq_max及び最小トルクTrq_minを記憶する。また制御調整器471は、最大トルクTrq_maxと最小トルクTrq_minとの差分である「ヒステリシス幅W_hys」を算出する。
例えば製造工程中や初回動作時に制御調整器471は、荷重指令値F*に対しトルクを「0→最大トルク→0」のように動かして、最大トルクTrq_max及び最小トルクTrq_minを記憶する。電源投入ごと、作業ごと等に適宜マップが更新されてもよい。また、特許文献1の従来技術のように、荷重指令値F*に対し超過動作をしてから戻す方式の保持動作を行う場合、制御調整器471は、超過動作開始時及び戻し動作終了時のトルク値を記憶してもよい。この場合、全体のマップを保持する必要がなく効率的である。
次に図7を参照し、増加動作と減少動作との遷移方向に応じたフィードフォワード項Trq*_FFの調整について説明する。制御調整器471は、フィードフォワード項の変化量の絶対値|ΔTrq*_FF|をヒステリシス幅W_hys以下に設定する。フィードフォワード項の変化量の絶対値|ΔTrq*_FF|がヒステリシス幅W_hysを超えない程度に設定されることを意図し、フィードフォワード項の変化量を示すブロック矢印の長さは、ヒステリシス幅W_hysよりもわずかに短く図示されている。
増加動作から減少動作への遷移時、制御調整器471は、Trqフィードフォワード項Trq*_FFの値を減少させる。つまり、フィードフォワード項の変化後の値から変化前の値を減じた変化量ΔTrq*_FFは負となる。減少動作から増加動作への遷移時、制御調整器471は、Trqフィードフォワード項Trq*_FFの値を増加させる。つまり、フィードフォワード項の変化量ΔTrq*_FFは正となる。
図8のフローチャートを参照し、制御調整器471が実行するフィードフォワード項調整処理について説明する。フローチャートの説明で記号「S」はステップを意味する。
S11で制御調整器471は、保持された制動力に対応する最大トルクTrq_max及び最小トルクTrq_minを記憶し、最大トルクTrq_maxと最小トルクTrq_minとの差分であるヒステリシス幅W_hysを算出する。S12で制御調整器471は、増加動作と減少動作との遷移時におけるフィードフォワード項の変化量の絶対値|ΔTrq*_FF|をヒステリシス幅W_hys以下に設定する。
S13では、増加動作から減少動作への遷移時であるか判断される。S13でYESの場合、S14で制御調整器471は、フィードフォワード項Trq*_FFの値を減少させる。S15では、減少動作から増加動作への遷移時であるか判断される。S15でYESの場合、S16で制御調整器471は、フィードフォワード項Trq*_FFの値を増加させる。
なお、第1実施形態の変形例では、そもそもヒステリシス幅W_hysを算出しない場合を含め、フィードフォワード項の変化量の絶対値|ΔTrq*_FF|をヒステリシス幅W_hysとは関係なく、例えば固定値に設定してもよい。その場合、フローチャートのS11、S12は実施されない。
第1実施形態では、増加動作と減少動作との遷移時に、遷移方向に応じてフィードフォワード項Trq*_FFの値を増減させることで、動作切り替えに伴う応答遅れを低減することができる。また、フィードフォワード項の変化量の絶対値|ΔTrq*_FF|をヒステリシス幅W_hys以下に設定することで、過剰な調整により不適切なトルク指令値Trq*が演算されることが防止される。特にフィードフォワード項の変化量の絶対値|ΔTrq*_FF|をヒステリシス幅W_hysと同等に設定することで動作切り替えに伴う応答遅れをほぼゼロにすることができる。
(第2実施形態)
図9、図10を参照し、第2実施形態について説明する。図9に示すように、第2実施形態のトルク指令演算部402は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42及び荷重制御器48に加え、制御調整器472を有する。また、第2実施形態の荷重制御器48は、比例積分制御(以下「PI制御」)を含む制御演算によりトルク指令値Trq*を演算するものである。例えば特定制御器48は、微分制御を含むPID制御を行ってもよい。
図9、図10を参照し、第2実施形態について説明する。図9に示すように、第2実施形態のトルク指令演算部402は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42及び荷重制御器48に加え、制御調整器472を有する。また、第2実施形態の荷重制御器48は、比例積分制御(以下「PI制御」)を含む制御演算によりトルク指令値Trq*を演算するものである。例えば特定制御器48は、微分制御を含むPID制御を行ってもよい。
制御調整器472は、荷重偏差ΔFを取得し、荷重偏差ΔFの正負から制動力の増減方向を推定する。つまり制御調整器472は、現在の動作が増加動作、減少動作、又は保持動作のいずれであるか判別する。さらに制御調整器472は、実荷重Fを取得し、マップ上の現在の動作点を推定してもよい。
図4のマップにおいて正効率線の傾きと逆効率線の傾きとが異なる場合、共通の制御ゲインKp、Kiを用いると最適な制御性能が得られない可能性がある。そこで制御調整器472は、荷重制御器48の比例ゲインKp又は積分ゲインKiの少なくとも一方を、増加動作と減少動作とで変更する。好ましくは、制御調整器472は、荷重制御器48の比例ゲインKp及び積分ゲインKiを、増加動作において減少動作よりも大きくする。
なお、制御調整器472は、比例ゲインKp及び積分ゲインKiの両方を変更するとは限らず、比例ゲインKp又は積分ゲインKiの一方だけを変更してもよい。また、増加動作と減少動作との切り替え後、積分項をリセットする等の処理が行われてもよい。
図10のフローチャートを参照し、制御調整器472が実行するゲイン調整処理について説明する。ここで制御調整器472は、比例ゲイン及び積分ゲインの両方の制御ゲインKp、Kiを同じ増減方向に変更するものとする。
S23では、増加動作中であるか判断される。S23でYESの場合、S24で制御調整器472は、制御ゲインKp、Kiを減少動作での値よりも大きく設定する。S25では、減少動作中であるか判断される。S25でYESの場合、S26で制御調整器472は、制御ゲインKp、Kiを増加動作での値よりも小さく設定する。
第2実施形態では、増加動作と減少動作との切り替えに伴って制御ゲインKp、Kiを切り替えることで、制動力の制御を適切に実施することができる。なお制御調整器472は、比例ゲインKp又は積分ゲインKiの一方を上記のように動作に応じて切り替えてもよい。その際、他方のゲインを固定してもよく、逆方向に変化させてもよい。
次に図11、図12を参照し、第1実施形態及び第2実施形態の複合実施形態の効果を比較例と対比しつつ説明する。図11に示す比較例では、フィードフォワード項Trq*-FF及び制御ゲインKp、Kiは調整されない。各図の上段に荷重指令値F*(破線)及び実荷重F(実線)の変化を示し、下段にトルクの変化を示す。
荷重指令値F*は、時刻t0から時刻t1まで増加した後、時刻t1から時刻t4まで減少する。時刻t1までの期間、正効率線に沿って実荷重Fは荷重指令値F*に追従して目標保持荷重Fholdまで増加し、トルクは最大トルクTrq_maxまで増加する。比較例では、時刻t1から時刻t2まで、保持動作によりトルクが減少しつつ実荷重Fが目標保持荷重Fholdに保持される。荷重Fの応答性の観点から言えば、この間、荷重指令値F*の減少に対する実荷重Fの応答遅れが発生する。
時刻t2にトルクが最小トルクTrq_minまで低下すると保持動作が終了し、実荷重Fは荷重指令値F*まで急激に低下する。このとき、減少動作時の応答遅れを減らそうとして増加動作時と同程度に制御ゲインを大きく設定すると、減少動作への切り替え時に実トルクのオーバーシュートが発生しやすくなり、同時に実荷重Fもオーバーシュートする。その後、実トルクが回復し、時刻t3に、減少した荷重指令値F*が実荷重Fに一致すると、実荷重Fは荷重指令値F*に追従し、逆効率線に沿って減少する。
図12に示す第1実施形態及び第2実施形態の複合実施形態では、トルクが最大トルクTrq_maxに達した時刻t1に、増加動作から減少動作への遷移とともに、ヒステリシス幅W_hys分のフィードフォワード項Trq*_FFが減少する。すると、トルクは瞬時に最小トルクTrq_minまで低下する。つまり、正効率線上から逆効率線上に動作点が瞬時に移動するため、制動力の保持動作による応答遅れが発生しない。
また複合実施形態では、増加動作と減少動作とで別の制御ゲインKp、Kiを設定可能である。そのため、減少動作での制御ゲインKp、Kiを増加動作の値よりも小さくすることで、減少動作への切り替え時のオーバーシュートが抑制される。したがって、制御性と応答性との適切な両立を図ることができる。
(第3実施形態)
図13~図18を参照し、第3実施形態について説明する。図13に示すように、第3実施形態のトルク指令演算部403は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42及び荷重制御器48に加え、不感帯設定器43及び制御調整器473を有する。
図13~図18を参照し、第3実施形態について説明する。図13に示すように、第3実施形態のトルク指令演算部403は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42及び荷重制御器48に加え、不感帯設定器43及び制御調整器473を有する。
不感帯設定器43は、荷重偏差算出器42と荷重制御器48との間に設けられる。不感帯設定器43は、荷重制御器48に入力される荷重偏差ΔFがゼロを含む所定範囲内にある場合、荷重偏差ΔFをゼロとみなすように、所定範囲を不感帯として設定する。不感帯設定器43は、処理後の荷重偏差ΔF#を荷重制御器48に出力する。
制御調整器473は、荷重偏差ΔFを取得し、荷重偏差ΔFの正負から制動力の増減方向を推定する。つまり制御調整器473は、現在の動作が増加動作、減少動作、又は保持動作のいずれであるか判別する。さらに制御調整器473は、破線で示すように、荷重指令値F*又は実荷重Fの少なくとも一方を取得し、荷重偏差ΔFを加減して他方を算出してもよい。制御調整器473は、実荷重Fに基づきマップ上の現在の動作点を推定してもよい。荷重指令値F*を用いる制御の例については後述する。
ここで、本実施形態における荷重偏差ΔFの符号の定義について再確認する。本実施形態の荷重偏差ΔFは、荷重指令値F*から実荷重Fを減じた値として定義される。増加動作では、荷重偏差ΔFが正の場合、荷重指令値F*に未達であり、荷重偏差ΔFが負の場合、荷重指令値F*を超過していることを意味する。減少動作ではその逆となる。
以下の説明では、上記の荷重偏差ΔFの符号の定義を前提とする。ただし他の実施形態では、荷重偏差ΔFの符号を正負逆に定義してもよく、その場合、以下の説明は、適宜、正負を逆に読み替えて解釈される。
制御調整器473は、増加動作と減少動作とで不感帯を変更する。図14に第3実施形態の基本実施例による不感帯設定を示す。制御調整器473は、増加動作では、荷重偏差ΔFの負領域にのみ上限値がゼロである不感帯DZiを設定する。実荷重Fが増加して荷重指令値F*に到達し、さらに荷重指令値F*を上回ると、荷重偏差ΔFは正から負に変わる。すると、負の荷重偏差ΔFをゼロにしようとする制御が働き、減少動作に切り替わる。そこで、荷重偏差ΔFの負領域に下限値LLの不感帯DZiを設定することで、実荷重Fが荷重指令値F*を上回っても、不感帯DZiの範囲内では減少動作に切り替わることが防止される。また、荷重偏差ΔFの正領域に不感帯DZiを設けないため、実荷重Fが荷重指令値F*に到達する瞬間まで増加動作を精度良く維持することができる。
また制御調整器473は、減少動作では、荷重偏差ΔFの正領域にのみ下限値がゼロである不感帯DZdを設定する。実荷重Fが減少して荷重指令値F*に到達し、さらに荷重指令値F*を下回ると、荷重偏差ΔFは負から正に変わる。すると、正の荷重偏差ΔFをゼロにしようとする制御が働き、増加動作に切り替わる。そこで、荷重偏差ΔFの正領域に上限値ULの不感帯DZdを設定することで、荷重指令値F*を下回っても、不感帯DZdの範囲内では増加動作に切り替わることが防止される。また、荷重偏差ΔFの負領域に不感帯DZdを設けないため、実荷重Fが荷重指令値F*に到達する瞬間まで減少動作を精度良く維持することができる。
基本実施例では、増加動作時の負の不感帯DZiと減少動作時の正の不感帯DZdとを組み合わせて実施することで、実荷重Fが荷重指令値F*を跨ぐ所定範囲内で、増加動作と減少動作とが頻繁に切り替わることが防止される。
図15(a)、図15(b)に第3実施形態の他の実施例による不感帯設定を示す。図15(a)に示す例では、ゼロを跨いで正負対称に、つまり、上限値と下限値との絶対値が等しい(|UL|=|LL|)ように不感帯DZが設定される。図15(b)に示す例では、ゼロを跨いで正負非対称に、つまり、上限値と下限値との絶対値が異なる(|UL|≠|LL|)ように不感帯DZが設定される。
図15(a)にて対比されるように、制御調整器473は、荷重指令値F*が大きいほど不感帯DZの幅を大きく設定してもよい。これにより、要求制動力の大きさに応じて不感帯DZの幅を適切に、例えば荷重指令値F*に対する不感帯DZの比率がほぼ一定になるように設定することができる。これは、正領域又は負領域の一方に設けられる不感帯の上限値及び下限値の設定にも適用される。つまり制御調整器473は、荷重指令値F*が大きいほど、不感帯の上限値UL又は下限値LLの絶対値を大きく設定してもよい。
図16のフローチャートを参照し、制御調整器473が実行する不感帯調整処理について説明する。ここでは、図14に示す基本実施例により、増加動作又は減少動作に応じて荷重偏差ΔFの負領域又は正領域の一方にのみ不感帯が設定される例を前提とする。
S33では、増加動作中であるか判断される。S33でYESの場合、S34で制御調整器473は、不感帯DZiを荷重偏差ΔFの負領域にのみ設定する。S35では、減少動作中であるか判断される。S35でYESの場合、S36で制御調整器473は、不感帯DZdを荷重偏差ΔFの正領域にのみ設定する。
第3実施形態では、増加動作と減少動作との切り替えに伴って不感帯を切り替えることで、増加動作と減少動作との不要な切り替わりが生じることを防止することができる。
次に図17、図18を参照し、第3実施形態の効果を比較例と対比しつつ説明する。図17に示す比較例では、不感帯は設定されない。各図の上段に荷重指令値F*(破線)及び実荷重F(実線)の変化を示し、下段にトルクの変化を示す。
荷重指令値F*は、時刻t5から時刻t6まで増加した後、時刻t6から時刻t7までの停止期間に一定値Fconstに維持され、時刻t7から再び増加する。比較例では、停止期間中、実荷重Fが荷重指令値F*に追従しようとして、荷重指令値F*を超える度に増加動作と減少動作とが切り替えられる。それに伴い、トルクはヒステリシス幅W_hysを跨いで増減を繰り返す。荷重偏差の絶対値|ΔF|は微小であっても、トルク指令値Trq*の大きな変化が周期的脈動となって発生するため、荷重制御器48の負荷が増大したり、音や電磁ノイズの要因となったりするおそれがある。
図18に示す第3実施形態では、増加動作中に負領域の不感帯DZiが設定されるため、停止期間中の荷重偏差ΔFが下限値LLより大きい場合、減少動作に切り替わることが防止される。同様に、減少動作の途中では、正領域の不感帯DZdが設定されるため、停止期間中の荷重偏差ΔFが上限値ULより小さい場合、増加動作に切り替わることが防止される。したがって、荷重偏差ΔFが下限値LLから上限値ULまでの範囲内にあるときのトルク指令値Trq*の脈動を抑制することができる。
(第4実施形態)
図19を参照し、第4実施形態について説明する。第4実施形態のトルク指令演算部404は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42及び荷重制御器48に加え、第3実施形態と同様に不感帯設定器43を有する。ただし第4実施形態では動作の方向や荷重指令値F*の大きさによらず、不感帯の上下限値及び幅は固定されている。上下限値は、正負対称に設定されてもよく、正負非対称に設定されてもよい。
図19を参照し、第4実施形態について説明する。第4実施形態のトルク指令演算部404は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42及び荷重制御器48に加え、第3実施形態と同様に不感帯設定器43を有する。ただし第4実施形態では動作の方向や荷重指令値F*の大きさによらず、不感帯の上下限値及び幅は固定されている。上下限値は、正負対称に設定されてもよく、正負非対称に設定されてもよい。
第4実施形態では、不感帯を設定することで、増加動作と減少動作との不要な切り替わりが生じることを防止することができる。
(その他の実施形態)
(a)本発明の車両用制動装置が搭載される車両は、車両前後方向において二列の左右対の車輪を有する四輪車両に限らず、車両前後方向において三列以上の車輪を有する六輪以上の車両であってもよい。
(a)本発明の車両用制動装置が搭載される車両は、車両前後方向において二列の左右対の車輪を有する四輪車両に限らず、車両前後方向において三列以上の車輪を有する六輪以上の車両であってもよい。
(b)上記実施形態のトルク指令演算部では、「特定制御器」としての荷重制御器48が、荷重センサ71により検出された実荷重Fを荷重指令値F*に近づけるようにトルク指令値Trq*を演算する。他の実施形態のトルク指令演算部では、「特定制御器」としての位置制御器が、位置センサ72、73により検出された実位置θ、Xを位置指令値に近づけるようにトルク指令値Trq*を演算してもよい。その場合、制動力は位置θ、Xに相関し、図4、図6等に対応するヒステリシス図の縦軸として位置θ、Xが用いられる。また、上記実施形態における「荷重指令値」及び「実荷重」が「位置指令値」及び「実位置」に読み替えて解釈される。位置指令値と実位置との偏差が「位置偏差」となる。
第3実施形態では、位置偏差は、位置指令値から実位置を減じた値として定義される。不感帯設定器は、位置制御器に入力される位置偏差がゼロを含む所定範囲内にある場合、位置偏差をゼロとみなすように、所定範囲を不感帯として設定する。第3実施形態の基本実施例において、制御調整器は、増加動作では位置偏差の負領域にのみ不感帯DZiを設定し、減少動作では位置偏差の正領域にのみ不感帯DZdを設定する。なお、荷重制御と位置制御とを組み合わせた構成を採用してもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
本開示に記載の制動力制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制動力制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制動力制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
30・・・車両用制動装置、
400・・・制動力制御部、
40(401-404)・・・トルク指令演算部、 43・・・不感帯設定器、
47(471、472、473)・・・制御調整器、
48・・・荷重制御器(特定制御器)、
50・・・電流指令演算部、
60・・・モータ、
81-84・・・電動ブレーキ、 85・・・直動機構、
900・・・車両、 91-94・・・車輪。
400・・・制動力制御部、
40(401-404)・・・トルク指令演算部、 43・・・不感帯設定器、
47(471、472、473)・・・制御調整器、
48・・・荷重制御器(特定制御器)、
50・・・電流指令演算部、
60・・・モータ、
81-84・・・電動ブレーキ、 85・・・直動機構、
900・・・車両、 91-94・・・車輪。
Claims (9)
- モータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪(91-94)に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)が各車輪に設けられた車両(900)に搭載される車両用制動装置であって、
外部から指令される要求制動力に基づき前記モータのトルク指令値(Trq*)を演算するトルク指令演算部(401-403)、及び、前記トルク指令値に基づき前記モータに通電する電流指令値(I*)を演算する電流指令演算部(50)を含み、各前記電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部(400)を備え、
前記電動ブレーキは、前記車輪に実際に押圧される制動荷重である実荷重(F)を検出する荷重センサ(71)、又は、前記モータの実際の回転角度もしくは前記直動機構の実際のストロークである実位置(θ、X)を検出する位置センサ(72、73)を備えており、
前記モータのトルクと前記電動ブレーキに発生する制動力との関係は、トルクが増加するとき、制動力が正効率線に沿って増加し、トルクが増加から減少に転じる転向値から保持臨界値まで減少するとき、制動力が一定に保持され、トルクが前記保持臨界値から減少するとき、制動力が逆効率線に沿って減少するヒステリシス特性を有しており、
前記モータのトルク及び制動力を前記正効率線に沿って増加させる動作を増加動作、前記正効率線と前記逆効率線との間の任意の動作点で制動力を保持する動作を保持動作、前記モータのトルク及び制動力を前記逆効率線に沿って減少させる動作を減少動作と定義すると、
前記トルク指令演算部は、
前記荷重センサにより検出された前記実荷重を荷重指令値に近づけるように、又は、前記位置センサにより検出された前記実位置を位置指令値に近づけるように、前記トルク指令値を演算する特定制御器(48)と、
前記増加動作時、前記減少動作時、又は、前記増加動作と前記減少操作との遷移時に、前記特定制御器の、又は、前記特定制御器の入力側もしくは出力側における制御演算のパラメータを調整する制御調整器(471、472、473)と、
を有する車両用制動装置。 - 前記トルク指令演算部(401)は、前記特定制御器が演算した前記トルク指令値と、前記制御調整器が設定した前記トルク指令値のフィードフォワード項(Trq*_FF)とを前記電流指令演算部に出力し、
前記電流指令演算部は、前記モータが実際に出力するトルクである実トルク(Trq)を前記トルク指令値と前記フィードフォワード項との和に近づけるように前記電流指令値を演算し、
前記制御調整器(471)は、前記増加動作から前記減少動作への遷移時に前記フィードフォワード項の値を減少させ、前記減少動作から前記増加動作への遷移時に前記フィードフォワード項の値を増加させる請求項1に記載の車両用制動装置。 - 前記制御調整器は、
保持された制動力に対応する前記正効率線上の最大トルクと前記逆効率線上の最小トルクとの差分であるヒステリシス幅(W_hys)を算出し、
前記増加動作と前記減少動作との遷移時における前記フィードフォワード項の変化量の絶対値を前記ヒステリシス幅以下に設定する請求項2に記載の車両用制動装置。 - 前記トルク指令演算部(402)の前記特定制御器は、比例積分制御を含む制御演算によりトルク指令値を演算するものであり、
前記制御調整器(472)は、前記特定制御器の比例ゲイン又は積分ゲインの少なくとも一方を、前記増加動作と前記減少動作とで変更する請求項1に記載の車両用制動装置。 - 前記制御調整器は、前記特定制御器の比例ゲイン又は積分ゲインの少なくとも一方を、前記増加動作において前記減少動作よりも大きくする請求項4に記載の車両用制動装置。
- 前記トルク指令演算部(403)は、
前記特定制御器に入力される前記荷重指令値と前記実荷重との偏差である荷重偏差、又は、前記位置指令値と前記実位置との偏差である位置偏差がゼロを含む所定範囲内にある場合、前記荷重偏差又は前記位置偏差をゼロとみなすように、前記所定範囲を不感帯として設定する不感帯設定器(43)を有し、
前記制御調整器(473)は、前記増加動作と前記減少動作とで前記不感帯を変更する請求項1に記載の車両用制動装置。 - 前記荷重偏差が前記荷重指令値から前記実荷重を減じた値として定義され、又は、前記位置偏差が前記位置指令値から前記実位置を減じた値として定義される場合、
前記制御調整器は、
前記増加動作では、前記荷重偏差又は前記位置偏差の負領域にのみ上限値がゼロである前記不感帯を設定し、
前記減少動作では、前記荷重偏差又は前記位置偏差の正領域にのみ下限値がゼロである前記不感帯を設定する請求項6に記載の車両用制動装置。 - 前記制御調整器は、前記荷重指令値又は前記位置指令値が大きいほど、前記不感帯の上限値又は下限値の絶対値を大きく設定する請求項6または7に記載の車両用制動装置。
- モータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪(91-94)に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)が各車輪に設けられた車両(900)に搭載される車両用制動装置であって、
外部から指令される要求制動力に基づき前記モータのトルク指令値(Trq*)を演算するトルク指令演算部(404)、及び、前記トルク指令値に基づき前記モータに通電する電流指令値(I*)を演算する電流指令演算部(50)を含み、各前記電動ブレーキが発生させる制動力を制御する制動力制御部(400)を備え、
前記電動ブレーキは、前記車輪に実際に押圧される制動荷重である実荷重(F)を検出する荷重センサ(71)、又は、前記モータの実際の回転角度もしくは前記直動機構の実際のストロークである実位置(θ、X)を検出する位置センサ(72、73)を備えており、
前記モータのトルクと前記電動ブレーキに発生する制動力との関係は、トルクが増加するとき、制動力が正効率線に沿って増加し、トルクが増加から減少に転じる転向値から保持臨界値まで減少するとき、制動力が一定に保持され、トルクが前記保持臨界値から減少するとき、制動力が逆効率線に沿って減少するヒステリシス特性を有しており、
前記トルク指令演算部は、
前記荷重センサにより検出された前記実荷重を荷重指令値に近づけるように、又は、前記位置センサにより検出された前記実位置を位置指令値に近づけるように、前記トルク指令値を演算する特定制御器(48)と、
前記特定制御器に入力される前記荷重指令値と前記実荷重との偏差である荷重偏差、又は、前記位置指令値と前記実位置との偏差である位置偏差がゼロを含む所定範囲内にある場合、前記荷重偏差又は前記位置偏差をゼロとみなすように、前記所定範囲を不感帯として設定する不感帯設定器(43)と、
を有する車両用制動装置。
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2023
- 2023-08-17 WO PCT/JP2023/029671 patent/WO2024048291A1/ja unknown
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WO2024048291A1 (ja) | 2024-03-07 |
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