JP2024034746A - スパッタリングターゲット材及びスパッタリングターゲット材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低密度かつ割れに強いKNNターゲット材を提供する。【解決手段】カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、密度が4.2g/cm3以下であり、ビッカース硬度が30以上200以下であり、スパッタ面にて観察される複数の結晶粒の面積平均粒子径が3.0μm以上である。【選択図】図1

Description

本開示は、スパッタリングターゲット材及びスパッタリングターゲット材の製造方法に関する。
圧電膜を製膜する際の材料として、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材(以下、KNNターゲット材、あるいは、単にターゲット材ともいう)が用いられる場合がある(例えば特許文献1参照)。
特開2011-146623号公報
本開示の目的は、低密度かつ割れに強いKNNターゲット材を提供することにある。
本開示の一態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
密度が4.2g/cm以下であり、
ビッカース硬度が30以上200以下であり、
スパッタ面にて観察される複数の結晶粒の面積平均粒子径が3.0μm以上である
スパッタリングターゲット材が提供される。
本開示の他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
(a)ナトリウムを含む化合物で構成される原料粉体と、ニオブを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて加熱して、ナトリウム及びニオブを含む焼成粉を作製する工程と、
(b)カリウムを含む化合物で構成される原料粉体と、ニオブを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて加熱して、カリウム及びニオブを含む焼成粉を作製する工程と、
(c)(a)で作製した前記焼成粉と、(b)で作製した前記焼成粉と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて加熱(仮焼)して、カリウム、ナトリウム、及びニオブを含む原料粉を作製する工程と、
(d)(c)で作製した前記焼成粉に対して所定の圧力を加えて圧粉体としつつ、前記圧粉体に対して加熱を行い、焼結体を作製する工程と、を有し、
(a)における加熱温度を、(b)における加熱温度よりも高くする
スパッタリングターゲット材の製造方法が提供される。
本開示によれば、低密度かつ割れに強いKNNターゲット材を提供することが可能となる。
図1は、本開示のターゲット材の一態様を示す図である。 図2は、本開示で用いる焼結装置の概略構成図である。 図3(a)は、サンプル1の割断面の概略構成図であり、図3(b)はサンプル1の割断面の写真である。 図4(a)は、サンプル21の割断面の概略構成図であり、図4(b)は、サンプル21の割断面の写真である。
<発明者等が得た知見>
KNNターゲット材(KNN焼結体)は、通常、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ニオブ(Nb)、及び酸素(O)を含む焼成粉(KNN焼成粉)に対して機械的な圧力を加えることで圧粉体としつつ、同時にこの圧粉体に対して加熱を行うことによって焼結させる、いわゆる、ホットプレス法を用いた焼結処理(以下、「ホットプレス焼結」とも称する)によって、作製される。というのも、KNNは難焼結性材料であるため、常圧での焼結ではKNN焼成粉の焼結(焼結反応)を進行させるためには、非常に高い温度で焼結を行う必要があるからである。
しかしながら、ホットプレス焼結は、ヒータや断熱材等の炉部材の焼損を避けるため、通常、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気(例えば、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスからなる雰囲気)、又は真空雰囲気で実施され、雰囲気中の酸素分圧を高めることができない。このため、ホットプレス焼結を実施すると、KNN焼成粉の一部のOが脱離してしまう。その結果、最終的に得られるKNNターゲット材の組成が所望組成からずれることがある。例えば、最終的に得られるKNNターゲット材のOの組成が所望組成よりも少なくなることがある。このように組成がずれたKNNターゲット材を用いてスパッタ製膜を行うと、得られるスパッタ膜(KNN膜)の組成も所望組成からずれ、結果、KNN膜の特性が低下することがある。例えば、KNN膜の絶縁性が低下し、リーク電流が大きくなることがある。
このため、ホットプレス焼結により作製したKNNターゲット材(KNN焼結体)に対して、O含有雰囲気下で、熱処理(酸化処理)を実施している。これにより、ホットプレス焼結の実施により一部のOが脱離したKNNターゲット材中にOを取り込ませ、最終的に得られるKNNターゲット材を所望組成にすることが可能となる。
また、KNNターゲット材には、KNNターゲット材の作製中(例えば、上述の酸化処理の実施中、KNNターゲット材の作製時における研削等の機械加工中)においても、KNNターゲット材を用いたスパッタ製膜中においても、割れ、欠け等が生じにくいことが要求されている。なお、本明細書では、割れ、欠け等が生じにくいKNNターゲット材を、高い機械的強度を有するターゲット材とも称する。これまでは、KNNターゲット材の機械的強度を高めるためには、KNNターゲット材を高密度にすると良いと考えられており、このため、従来からホットプレス焼結により、高密度のKNNターゲット材が作製されている。
しかしながら、高密度のKNNターゲット材に対して上述の酸化処理を実施する場合、KNNターゲット材の中心部まで充分にOを取り込ませ、中心部まで充分に酸化させるためには、酸化処理における加熱温度を高温(例えば1100℃超)にする必要がある。このため、KNNターゲット材に反りや割れが生じやすく、KNNターゲット材の生産歩留りが低下してしまう。また、酸化処理における加熱温度が高温である場合、酸化処理の実施中に、KNNターゲット材の一部のKが飛散(揮発)しやすい。このため、やはり、最終的に得られるKNNターゲット材の組成が所望組成からずれることがある。例えば、最終的に得られるKNNターゲット材のKの組成が所望組成よりも少なくなることがある。
このため、ホットプレス焼結を低温・低圧の条件で実施することで、低密度のKNNターゲット材を作製することも考えられている。低密度のKNNターゲット材に対して酸化処理を実施する場合、酸化処理における加熱温度が低温であっても、KNNターゲット材の中心部まで充分にOを取り込ませて、中心部まで充分に酸化させることができる。また、酸化処理における加熱温度が低温であることで、酸化処理の実施中に、KNNターゲット材に反りや割れが生じにくくなり、また、KNNターゲット材の一部のKが揮発することを抑制できる。
しかしながら、低密度のKNNターゲット材の機械的強度は、高密度のKNNターゲット材に比べて低くなりやすい。このため、低密度のKNNターゲット材では、KNNターゲット材の作製中やスパッタ製膜中に、KNNターゲット材に割れ、欠け等が生じやすくなる。
上記課題について本発明者等は鋭意研究を行った。その結果、ビッカース硬度を所定範囲内とするとともに、KNNターゲット材のスパッタ面となる面において観察される複数の結晶粒の面積平均粒子径を所定値以上とすることで、低密度であっても割れに強いKNNターゲット材が得られる、との知見を得るに至った。すなわち、低密度のKNNターゲット材であるにもかかわらず、KNNターゲット材の作製中やスパッタ製膜中に、割れ、欠け等が生じにくいKNNターゲット材が得られることを見出した。
本開示は、発明者等が得た上述の課題や知見に基づいてなされたものである。
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1、図2を参照しつつ説明する。
(1)ターゲット材の構成
本態様におけるターゲット材10は、主として、K、Na、Nb、及びOを含有する酸化物(アルカリニオブ酸化物)を含む焼結体、すなわち、KNN焼結体によって構成されている。ターゲット材10を主に構成する結晶粒は、ペロブスカイト構造を有している。ターゲット材10は、具体的には、組成式(K1-xNa)NbO(0<x<1)で表され、前記組成式中の係数x[=Na/(K+Na)]は、0<x<1、好ましくは0.4≦x≦0.8である。ターゲット材10を構成するKNN焼結体は、実質的に、K、Na、Nb、及びOからなる酸化物焼結体、もしくは以下に示すドーパント元素をさらに含む酸化物焼結体である。ここで、「実質的」とは、ターゲット材10を構成する全原子の99%以上が、K、Na、Nb、及びOからなること、或いは、ターゲット材10がドーパント元素を含む場合には、K、Na、Nb、O、及びドーパント元素からなることを意味する。
ターゲット材10におけるK、Na、及びNbの組成(([K]+[Na])/[Nb])は、1.0超、好ましくは1.02以上であり、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.07以下、さらに好ましくは1.04以下である。
ここで、([K]+[Na])/[Nb]の式中における[K]、[Na]、[Nb]は、それぞれ、ターゲット材10におけるK原子の含有モル数、Na原子の含有モル数、Nb原子の含有モル数である。ターゲット材10の組成は、例えば、原子吸光分析法(AAS)及び誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)により求めることができる。すなわち、K原子の含有モル数及びNa原子の含有モル数をAAS(例えば、(株)日立ハイテクノロジーズ製のZ-2310等)により求め、Nb原子の含有モル数をICP-AES(例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製のSPS5000等)により求めることで、ターゲット材10の組成を求めることができる。なお、K原子の含有モル数及びNa原子の含有モル数をICP-AESのみ、又は、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectroscopy、EDX)のみにより求めることも考えられるが、測定感度が低く、再現性に乏しいことから、測定結果の信頼性が低くなる。
ターゲット材10には、Cu及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の元素(ドーパント)が、例えば、0.1at%以上2.0at%以下の濃度で添加されている場合がある。Cu及びMnの両方の元素を添加する場合は合計濃度が0.1at%以上2.0at%以下である。これにより、ターゲット材10を用いてスパッタ製膜したKNN膜に、Cu及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の元素を所定濃度で含ませることができる。
なお、本明細書における「ターゲット材10にCu及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の元素を0.1at%以上2.0at%以下の濃度で添加する」とは、ターゲット材10を構成する全元素の原子数の合計に対するCu及びMnの原子数の合計の比率の値(={(Cu原子数+Mn原子数)/(K原子数+Na原子数+Nb原子数+Cu原子数+Mn原子数)}×100)が0.1以上2.0以下となるように、Cu及びMnの元素を添加することを意味する。
ターゲット材10は、例えば、円盤状に成形されており、Cu等からなる不図示のバッキングプレート上に、インジウム(In)、スズ(Sn)、又はそれらのいずれかの金属を含む合金等の接合材を介して接合され(貼り付けられ)、スパッタリングターゲットとして利用される。ターゲット材10が有する両主面のうち、バッキングプレートとの接合面とは異なる面が、製膜処理を行う際にアルゴン(Ar)等のプラズマに晒される面、すなわち、スパッタ膜(KNN膜)を構成する原子を放出するスパッタ面10sとして用いられる。
ターゲット材10が円盤状の場合、ターゲット材10の主面の直径、好ましくは、スパッタ面10sの直径は、例えば30mm以上、好ましくは75mm以上、より好ましくは90mm以上、さらに好ましくは100mm以上、特に好ましくは200mm以上である。ターゲット材10の主面の面積、好ましくは、スパッタ面10sの面積は、例えば4500mm以上、好ましくは5000mm以上、より好ましくは6000mm以上、さらに好ましくは7500mm以上、特に好ましくは15000mm以上である。なお、ターゲット材10の主面の直径及びターゲット材10の主面の面積の上限は、特に限定されない。
ターゲット材10は、主面が長方形に構成された板状であってもよく、ターゲット材10の主面の長辺方向の長さ、好ましくは、スパッタ面10sの長辺方向の長さは、例えば80mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは120mm以上、さらにより好ましくは150mm以上、特に好ましくは200mm以上である。ターゲット材10の主面の短辺方向の長さ、好ましくは、スパッタ面10sの短辺方向の長さは、例えば50mm以上、より好ましくは80mm以上、さらに好ましくは100mm以上である。ターゲット材10の主面の面積、好ましくは、スパッタ面10sの面積は、例えば4500mm以上、好ましくは5000mm以上、より好ましくは6000mm以上、さらに好ましくは7500mm以上、特に好ましくは15000mm以上である。なお、ターゲット材10の主面の長辺方向及び短辺方向の長さ、及びターゲット材10の主面の面積の上限は、特に限定されない。
ターゲット材10の厚さは、例えば2mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは7.5mm以上であり、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下である。
バッキングプレートは、導電性の材料から構成され、金属又はその合金からなり、例えば、Cu、Cu合金、アルミニウム(Al)、Al合金、チタン(Ti)、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。バッキングプレートのサイズは、ターゲット材10を接合、支持でき、スパッタリング装置に取り付けることができ、さらにターゲット材10の冷却板及びスパッタ電極としての役割を担うことができれば特に限定されない。
ここで、本明細書において、「割れに強いターゲット材10」とは、ターゲット材10の作製中(例えば、後述の酸化処理の実施中、研削等の機械加工の実施中)に、割れや欠け等が生じにくいターゲット材10、あるいは、ターゲット材10を用いたスパッタ製膜中に、異常放電が生じるような割れ(クラック)等が生じにくいターゲット材10を意味する。なお、一般的には、低密度のターゲット材は割れに弱く、ターゲット材10の作製中やスパッタ製膜中に割れや欠け等が生じやすいとされている。
本態様におけるターゲット材10は、密度が4.2g/cm以下であるという特徴、ビッカース硬度が30以上200以下であるという特徴、及び、スパッタ面10s、好ましくはスパッタ面10s及びスパッタ面10sに平行な断面にて観察される複数の結晶粒の面積平均粒子径(以下、「面積平均粒子径Nv」とも称する)が3.0μm以上であるという特徴の3つの特徴を全て備えている。これにより、低密度かつ割れに強いターゲット材10が得られる。
ターゲット材10の密度が4.2g/cm以下であることにより、後述の酸化処理(ステップE)における加熱温度が低温であっても、ターゲット材10の中心部まで充分に酸素(O)を取り込ませ、ターゲット材10の中心部まで充分に酸化させることができる。これにより、Oの組成が、全域にわたり(ターゲット材10の厚さ方向及び面内方向の全域にわたり)、所望組成であるターゲット材10が得られる。
また、ターゲット材10の密度が4.2g/cm以下であることで、後述の酸化処理における加熱温度を低温にしてターゲット材10を作製することが可能となる。このため、酸化処理の実施中に、ターゲット材10の一部のK(K成分)が飛散(揮発)することを抑制できる。これにより、全域にわたり、Kの組成が所望組成であるターゲット材10が得られる。
このように、ターゲット材10の密度が4.2g/cm以下であることで、全域にわたり、O及びKの組成が所望組成であるターゲット材10が得られる。その結果、ターゲット材10を用いたスパッタ製膜により、所定の物性(結晶品質、厚さ、組成等)及び所定の特性(圧電特性、絶縁特性等)を有するKNN膜が確実に得られる。すなわち、信頼性の高いKNN膜が得られる。
また、ターゲット材10の密度が4.2g/cm以下であることで、後述の酸化処理における加熱温度を低温にしてターゲット材10を作製することが可能となる。このため、酸化処理の実施中に、ターゲット材10に反りや割れが生じにくくなり、ターゲット材10の生産歩留りを向上させることができる。
ターゲット材10の密度は、好ましくは4.0g/cm以下である。これにより、酸化処理における加熱温度が後述のように低温であっても、ターゲット材10の中心部まで確実に酸化させることができる。その結果、全域にわたり、O及びKの組成が所望組成であるターゲット材10が確実に得られる。
ターゲット材10の密度が4.2g/cmを超える場合、酸化処理における加熱温度を後述のように低温にすると、ターゲット材10の中心部まで充分に酸化されないことがある。このため、特にターゲット材10の中心部において、Oの組成が所望組成からずれることがある。
また、ターゲット材10の密度が4.2g/cmを超える場合は、酸化処理における加熱温度を高温にすることで、ターゲット材10の中心部まで充分に酸化させられるようになる。しかし、酸化処理における加熱温度を高温にすると、ターゲット材10の中心部まで充分に酸化されるものの、酸化処理の実施中に、ターゲット材10の一部のK成分が揮発しやすくなる。このため、密度が4.2g/cmを超えるターゲット材10では、Kの組成が所望組成からずれることがある。また、酸化処理における加熱温度を高温にすると、酸化処理の実施中に、ターゲット材10に反りや割れが生じやすくなる。
また、ターゲット材10の密度は、好ましくは3.5g/cm以上である。これにより、低密度かつ割れに強いターゲット材10が確実に得られる。ターゲット材10の密度が3.5g/cm未満である場合、ビッカース硬度が30以上200以下であり、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であっても、ターゲット材10の機械的強度が不充分であることがある。このため、低密度かつ割れに強いターゲット材10が得られないことがある。
ターゲット材10の密度は、例えば、以下の装置、方法を用いて測定することができる。以下に、密度の測定方法の一例を示す。
[密度の測定方法]
装置:アルファミラージュ製 電子比重計 MDS300
試験方法:所定のサイズに切り出したターゲット材について、上記装置を用い、アルキメデス法にて、密度を測定する。
本態様におけるターゲット材10のビッカース硬度は30以上200以下であり、好ましくは30以上200未満であり、さらに好ましくは30以上150未満である。これにより、低密度かつ割れに強いターゲット材10が得られる。
ターゲット材10のビッカース硬度が30未満である場合、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であっても、ターゲット材10の機械的強度が不充分であることがある。このため、低密度かつ割れに強いターゲット材10が得られないことがある。
ターゲット材10のビッカース硬度が200を超える場合、低密度かつ割れに強いターゲット材10が得られないことがある。というのも、ビッカース硬度が200を超えるターゲット材10を得るためには、後述のホットプレス焼結(ステップD)における圧力(後述の焼結時圧力)を500kgf/cm超にする必要がある。その結果、ターゲット材10の密度が4.2g/cm超になることがある。また、ビッカース硬度が200を超えるターゲット材10を得るために、後述のホットプレス焼結における温度(後述の焼結時温度)を1150℃超にすることも考えられる。この場合、ホットプレス焼結の実施中に、K成分が揮発しやすくなることから、Kの組成が所望組成からずれることがある。
ターゲット材10のビッカース硬度(Hv)は、JIS R 1610:2003に準拠し、ビッカース硬度計を用いて測定できる。以下に、ビッカース硬度の測定方法及び測定条件の一例を示す。
[ビッカース硬度の測定方法及び測定条件]
装置:株式会社ミツトヨ製 マイクロビッカース硬さ試験機 HM-114
雰囲気:大気中
温度:室温(25℃)
試験力:1.0kgf
荷重印加速度:10μm/s
保持時間:15sec
測定点数:5point
試験方法:本試験はJIS R 1610に準拠し、ビッカース圧子(向かいあった二つの面のなす角度が136度である底面が正方形の四角すい圧子)を用いて、試験面にくぼみをつけたときの試験力と、くぼみの対角線長さから求めたくぼみ表面積とからビッカース硬さを求めて、5点の測定結果から平均を求める。
また、本態様におけるターゲット材10の面積平均粒子径Nvは3.0μm以上である。ターゲット材10のビッカース硬度を所定の範囲にするとともにターゲット材10を平均粒子径が大きい結晶粒で構成することにより、ターゲット材10の機械的強度を高めることができる。その結果、低密度としても割れに強いターゲット材10が得られる。
ターゲット材10の面積平均粒子径Nvは、好ましくは5.0μm以上である。これにより、ターゲット材10の機械的強度を確実に高めることができる。
ターゲット材10の面積平均粒子径Nvが3.0μm未満である場合、ターゲット材10の密度を低く保ったまま機械的強度を充分に高めることができず、ターゲット材10の作製中やスパッタ製膜中にターゲット材10に割れや欠け等が生じやすくなる。すなわち、低密度かつ割れに強いターゲット材10が得られないことがある。
面積平均粒子径Nv(μm)は、ターゲット材10のスパッタ面10s又はスパッタ面10sに平行な断面の後方散乱電子回折(Electron Back Scattered Diffraction Pattern、EBSD)像を解析すること等により求めることができる。EBSDでの解析によって求められる結晶粒子径は、計測された結晶粒と同じ面積の円の直径で示され、面積平均粒子径Nv(μm)は、Area Fraction法で求めた平均粒子径を採用することができ、Area Fraction法では、各結晶粒の面積が全面積に占める割合を各面積値に乗した値の合計値が結晶粒の平均面積となり、算出された面積を円に仮定した時の直径が平均粒子径となる。なお、EBSD解析においては、結晶方位差が一定値以上、例えば15°以上の境界を結晶粒界とみなすことで、面積平均粒子径Nv(μm)を求めることができる。
また、面積平均粒子径Nv(μm)は、以下の式を用いて算出される値を採用してもよい。以下の式において、dは、観察された結晶粒の粒子径(μm)を、nは、観察された粒子径d(μm)を有する結晶粒の個数を、それぞれ示している。dは、観察された結晶粒の面積と等しい面積を有する真円の直径、すなわち、円相当径(μm)である。
面積平均粒子径Nv(μm)=Σ(d ×n)/Σ(d ×n
面積平均粒子径Nv(μm)は、粒子面積の大きさに応じて重みづけされた平均値となる。
詳しくは後述するが、本態様におけるターゲット材10は、K、Na、Nb、及びOを含む焼成粉(KNN焼成粉)に対して所定の条件のホットプレス焼結を実施して作製されている。また、KNN焼成粉の作製の際、Naを含む原料粉体とNbを含む原料粉体とを混合し、焼成して、Na及びNbを含む焼成粉(NaNbO粉)を作製し、また、Kを含む原料粉体とNbを含む原料粉体とを混合し、焼成して、K及びNbを含む焼成粉(KNbO粉)を作製し、そして、作製したNaNbO粉とKNbO粉とを混合し、仮焼して、KNN焼成粉を作製している。さらに、NaNbO粉及びKNbO粉を作製する際、NaNbO粉の作製時における焼成温度を、KNbO粉の作製時における焼成温度よりも高くして、NaNbO粉及びKNbO粉をそれぞれ作製している。
本態様におけるターゲット材10は、このような手法を経て作製されたKNN焼成粉に対してホットプレス焼結を実施して作製されている。このため、本態様におけるターゲット材10は、密度が4.2g/cm以下であるという特徴と、ビッカース硬度が30以上200以下であるという特徴と、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴と、の3つの特徴の全てを備えることが可能となる。
また、上述の手法を経て作製されたKNN焼成粉を用いてターゲット材10が作製されることから、本態様におけるターゲット材10は、スパッタ面10s、好ましくはスパッタ面10s及びスパッタ面10sに平行な断面にて観察される複数の結晶粒が、主に、Na及びNbを含む酸化物で構成される複数の結晶粒(NaNbO結晶粒)と、K及びNbを含む酸化物で構成される複数の結晶粒(KNbO結晶粒)と、を含むという特徴をさらに備え得る。走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectrometry、SEM-EDX)により、NaNbO結晶粒についてはNa及びNb、KNbO結晶粒についてはK及びNbが検出される部分を確認することで、スパッタ面10sにて観察される複数の結晶粒が、主に、NaNbO結晶粒とKNbO結晶粒とを含むことが確認できる。
また、上述の新規手法を経て作製されたKNN焼成粉を用いてターゲット材10が作製されることから、本態様におけるターゲット材10は、スパッタ面10s、好ましくはスパッタ面10s及びスパッタ面10sに平行な断面に、Naの含有量が多い部分(以下、Naリッチ部)と、Kの含有量が多い部分(以下、Kリッチ部)と、がそれぞれ点在するという特徴をさらに備え得る。Naリッチ部とは、ターゲット材10における平均のNa濃度よりもNa濃度が高い部分であり、Kリッチ部とは、ターゲット材10における平均のK濃度よりもK濃度が高い部分である。また、スパッタ面10s及びスパッタ面10sに平行な断面を、エネルギー分散型X線分析法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDX)又はSEM-EDXにより観察すると、Naリッチ部及びKリッチ部は、それぞれ、スパッタ面10s、好ましくはスパッタ面10s及びスパッタ面10sに平行な断面に点在していることが確認できる。
(2)ターゲット材の製造方法
本態様におけるターゲット材10の製造方法の好適な実施形態について、図2を参照しながら詳細に説明する。
本態様におけるターゲット材10の作製シーケンスでは、
Naを含む化合物で構成される原料粉体と、Nbを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、この混合粉を酸素含有雰囲気下にて加熱して、Na及びNbを含む焼成粉を作製するステップ(ステップA)と、
Kを含む化合物で構成される原料粉体と、Nbを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、この混合粉を酸素含有雰囲気下にて加熱して、K及びNbを含む焼成粉を作製するステップ(ステップB)と、
ステップAで作製した焼成粉と、ステップBで作製した焼成粉と、を所定の比率で混合し、この混合粉を酸素含有雰囲気下にて加熱(仮焼)して、K、Na、及びNbを含む焼成粉を作製するステップ(ステップC)と、
ステップCで作製した焼成粉に対して所定の圧力を加えて圧粉体としつつ、(同時に)圧粉体に対して加熱を行い、焼結体を作製するステップ(ステップD)と、を行う。
また、本態様におけるターゲット材10の作製シーケンスでは、ステップAにおける加熱温度を、ステップBにおける加熱温度よりも高くする。
また、ステップCでは、ステップAで作製した焼成粉と、ステップBで作製した焼成粉と、Cu及びMnから選択される少なくともいずれかの元素を含む粉末と、を所定の比率で混合して、K、Na、及びNbを含むとともに、ドーパントとしてCu及びMnから選択される少なくともいずれかの元素を含む焼成粉を作製してもよい。
また、ステップDを行った後、酸素含有雰囲気下にて、500℃以上1100℃以下の加熱温度で、1時間以上、焼結体に対して熱処理をさらに行う(ステップE)。
<ステップA:Na及びNbを含む焼成粉の作製>
本ステップでは、Naを含む化合物で構成される原料粉体と、Nbを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、得られた混合粉を酸素含有雰囲気下にて加熱して、Na及びNbを含む焼成粉を作製する(合成する)。
(出発原料粉準備)
まず、本ステップにおける出発原料粉として、Naを含む化合物で構成される粉体、Nbを含む化合物で構成される粉体を用意する。例えば、炭酸ナトリウム(NaCO)粉、五酸化ニオブ(Nb)粉を用意する。
ここでいう「Naを含む化合物で構成される粉体」は、Naの化合物を主成分とする粉体を意味し、Naの化合物の粉体のみで構成される場合の他、主成分であるNaの化合物の粉体に加えて他の化合物の粉体が含まれる場合もある。同様に、「Nbを含む化合物で構成される粉体」は、Nbの化合物を主成分とする粉体を意味し、Nbの化合物の粉体のみで構成される場合の他、主成分であるNbの化合物の粉体に加えて他の化合物の粉体が含まれる場合もある。Naの化合物とは、Naの酸化物、Naの複合酸化物、及び加熱することにより酸化物となるNaの化合物からなる群より選択される少なくとも一種であり、例えば上記に示す炭酸塩の他、シュウ酸塩等が挙げられる。Nbの化合物とは、Nbの酸化物、Nbの複合酸化物、又は加熱することにより酸化物となるNbの化合物からなる群より選択される少なくとも一種であり、例えば上記に示す五酸化ニオブ等が挙げられる。
これら出発原料粉の二次粒子の平均径は、例えば、1mm未満であることが好ましく、必要に応じ、秤量前に出発原料粉を予め粗粉砕等しておくことが好ましい。
(秤量、混合)
続いて、出発原料粉としてのNaCO粉及びNb粉をそれぞれ秤量し、得られるNa及びNbを含む焼成粉が所望組成となるように、NaCO粉及びNb粉の混合比率を調整する。秤量は、大気中で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気中、真空中、乾燥空気雰囲気中等の湿度が小さい雰囲気中で行うことが好ましく、また、NaCO粉及びNb粉を充分に乾燥させてから行うことが好ましい。続いて、秤量後のNaCO粉及びNb粉を、ヘンシェルミキサー、ブレンダー、リボンミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、インテンシブミキサー、ボールミル、自動乳鉢等の混合器を用いて乾式又は湿式で混合する。
(一次焼成)
得られたNaCO粉及びNb粉の混合粉を、電気炉等を用いて、大気下や酸素ガス雰囲気下等の酸素(O)含有雰囲気下(酸化性雰囲気下)にて、一次焼成して、Na及びNbを含む焼成粉(NaNbO粉)を得る。好ましくは、一次焼成において、NaCO粉及びNb粉の混合粉を固相反応させることで、Na、Nbが固溶状態となったNaNbO粉を得る。
本発明者等は、NaCO粉及びNb粉の混合粉の一次焼成を行う際の加熱温度(以下、「一次焼成温度A」とも称する)を高くすることで、得られるNaNbO粉の一次粒子の平均径(平均一次粒子径)を大きくできるという知見を得た。なお、一次焼成温度Aを高くしても、NaNbO粉の作製中にNaやNbは殆ど揮発しない。NaNbO粉の平均一次粒子径を大きくすることで、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるターゲット材10を得やすくなる。なお、本明細書における「NaNbO粉の平均一次粒子径」とは、2000~5000倍の倍率で観察した走査電子顕微鏡(SEM)の画像から読み取って算出したNaNbO粉の一次粒子のメジアン径D50である。また、本明細書における「一次粒子」とは、粒子一粒を意味する。
一次焼成温度Aは、後述のステップBにおける一次焼成温度Bよりも高い温度である。好ましくは、一次焼成温度Aは、NaNbO粉の平均一次粒子径が、ステップBで作製するKNbO粉の平均一次粒子径よりも大きくなる温度である。このように、NaNbO粉の平均一次粒子径は、一次焼成温度Aを高くすることで大きくできることから、後述のKNbO粉の平均一次粒子径よりも大きくしやすい。本ステップにおいて、平均一次粒子径が大きなNaNbO粉を作製することで、後述のステップCで得られるKNN焼成粉の平均一次粒子径も大きくしやすくなる。このため、最終的に得られるターゲット材10を構成する結晶粒の平均径も大きくしやすくなる。その結果、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴を有するターゲット材10をより得やすくなる。
好ましくは、一次焼成温度Aは、NaNbO粉の平均一次粒子径が、後述のKNbO粉の平均一次粒子径よりも大きくなる温度である。また好ましくは、一次焼成温度Aは、NaNbO粉の平均一次粒子径が、例えば5.0μm以上になる温度である。本ステップにおいて後述のKNbO粉の平均一次粒子径よりも大きな平均一次粒子径を有するNaNbO粉を作製することで、例えば平均一次粒子径が5.0μm以上のNaNbO粉を作製することで、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴を有するターゲット材10が確実に得られる。
一次焼成温度Aは、好ましくは1000℃以上である。これにより、平均一次粒子径が大きなNaNbO粉、例えば平均一次粒子径が5.0μm以上のNaNbO粉が得られる。平均一次粒子径の大きいNaNbO粉を確実に得る観点から、一次焼成温度Aは、より好ましくは1100℃以上である。なお、一次焼成温度Aが1000℃未満である場合、NaNbO粉の平均一次粒子径を充分に大きくできない、すなわち、NaNbO粉の一次粒子を充分に大きくできないことがある。
一次焼成温度Aの上限は特に限定されないが、例えば1300℃以下であることが好ましい。一次焼成温度Aが1300℃を超える場合、NaNbO粉の平均一次粒子径を大きくする効果が頭打ちになる一方、NaNbO粉の製造コストが増加することがある。一次焼成温度Aは、NaNbO粉の製造コストの増加を確実に回避する観点から、好ましくは1250℃以下であり、より好ましくは1200℃以下である。
本ステップにおける一次焼成の実施時間は、特に限定されないが、好ましくは3時間以上20時間以下、より好ましくは4時間以上15時間以下、さらに好ましくは5時間以上10時間以下である。
(粗粉砕)
その後、必要に応じ、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、アトライタ、ジェットミル、アトマイザー、カッターミル等の粉砕手段を用い、得られたNaNbO粉の二次粒子を粗粉砕してもよい。なお、二次粒子とは、一次粒子が凝集した凝集体である。また、ここでの粗粉砕は、NaNbO粉の二次粒子を細かくすることが目的であり、粗粉砕は、NaNbO粉の平均一次粒子径が小さくならない(変化しない)条件で行う。
なお、上述の一次焼成及び粗粉砕の処理は、必要に応じて、一部あるいは全てを繰り返し実施することができ、また、粗粉砕を省略することができる。また、これらの処理の完了後、あるいは、各処理の合間に、篩分け処理等を追加することができる。混合や粉砕の手段は、上述の例示に限定されることなく、他の粉砕手段から広く採用することができ、また、その際の条件も、上述の仕様を得る目的に応じて広く選択することができる。
<ステップB:K及びNbを含む焼成粉の作製>
本ステップでは、Kを含む化合物で構成される原料粉体と、Nbを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、得られた混合粉をO含有雰囲気にて加熱して、K及びNbを含む焼成粉を作製する(合成する)。
(出発原料粉準備)
まず、本ステップにおける出発原料粉として、Kを含む化合物で構成される粉体、Nbを含む化合物で構成される粉体を用意する。例えば、炭酸カリウム(KCO)粉、Nb粉を用意する。
なお、本明細書でいう「Kを含む化合物で構成される粉体」は、Kの化合物を主成分とする粉体を意味し、Kの化合物の粉体のみで構成される場合の他、主成分であるKの化合物の粉体に加えて他の化合物の粉体が含まれる場合もある。Kの化合物とは、Kの酸化物、Kの複合酸化物、及び加熱することにより酸化物となるKの化合物からなる群より選択される少なくとも一種であり、例えば、上記に示す炭酸塩の他、シュウ酸塩等が挙げられる。
これら出発原料粉の二次粒子の平均径は、例えば、1mm未満であることが好ましく、必要に応じ、秤量前に出発原料粉を予め粗粉砕等しておくことが好ましい。
(秤量、混合)
続いて、出発原料粉としてのKCO粉及びNb粉をそれぞれ秤量し、得られるK及びNbを含む焼成粉が所望組成となるように、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整する。秤量は、大気中で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気中、真空中、乾燥空気雰囲気中等の湿度が小さい雰囲気中で行うことが好ましく、また、KCO粉及びNb粉を充分に乾燥させてから行うことが好ましい。
本発明者等は、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整することで、本ステップで作製するK及びNbを含む焼成粉(KNbO粉)の平均一次粒子径を調整できるという知見を得た。この知見は、本発明者等により初めて見出された新規知見である。本ステップにおいて平均一次粒子径が大きいKNbO粉を作製することで、後述のステップCで得られるKNN焼成粉の平均一次粒子径を確実に大きくできる。このため、最終的に得られるターゲット材10を構成する結晶粒の平均粒子径を確実に大きくできる。その結果、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴を有するターゲット材10が確実に得られる。なお、本明細書における「KNbO粉の平均一次粒子径」とは、2000~5000倍の倍率で観察したSEM画像から読み取って算出したKNbO粉の一次粒子のメジアン径D50である。
好ましくは、KNbO粉の平均一次粒子径が例えば3.0μm以上になるように、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整する。本ステップにおいて平均一次粒子径が例えば3.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上のKNbO粉を作製することで、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴を有するターゲット材10がより確実に得られる。
好ましくは、KNbO粉の組成がKリッチ組成となるように、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整する。これにより、平均一次粒子径が大きいKNbO粉、例えば平均一次粒子径が3.0μm以上のKNbO粉が確実に得られる。作製されるKNbO粉の組成がKリッチ組成となるようにKCO粉及びNb粉の混合比率を調整することで、KNbO粉の平均一次粒子径を確実に大きくできるということは、本発明者等により初めて見出された新規知見である。ここでいう「Kリッチ組成」とは、KNbO粉の全組成に対するKの組成の割合(=Kの組成/KNbO粉の全組成)が、KNbO粉の全組成に対するNbの組成の割合(=Nbの組成/KNbO粉の全組成)よりも高いことを意味する。
好ましくは、作製するKNbO粉における、Nb組成に対するK組成の比(以下、K/Nb比)が、例えば1.005以上、好ましくは1.010以上、より好ましくは1.015以上となるように、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整する。これにより、平均一次粒子径が大きいKNbO粉、例えば平均一次粒子径が3.0μm以上のKNbO粉がより確実に得られる。また好ましくは、K/Nb比が、1.1以下、より好ましくは1.08以下になるように、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整する。これにより、作製したKNbO粉中に、ペロブスカイト構造以外の結晶構造を有する結晶が混入することを回避できる。KNbO粉中にペロブスカイト構造以外の結晶構造を有する結晶が存在すると、この結晶が、後述のホットプレス焼結(ステップD)における焼結反応や結晶粒の成長に悪影響を及ぼすことがある。
続いて、秤量後のKCO粉及びNb粉の混合粉を、ヘンシェルミキサー、ブレンダー、リボンミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、インテンシブミキサー、ボールミル、自動乳鉢等の混合器を用いて乾式又は湿式で混合する。
(一次焼成)
得られたKCO粉及びNb粉の混合粉を、電気炉等を用いて、O含有雰囲気下にて一次焼成して、K及びNbを含む焼成粉(KNbO粉)を得る。好ましくは、一次焼成において、KCO粉及びNb粉の混合粉を固相反応させることで、K、Nbが固溶状態となったKNbO粉を得る。
CO粉及びNb粉の混合粉の一次焼成を行う際の加熱温度(以下、「一次焼成温度B」とも称する)は、上述の一次焼成温度Aよりも低い温度である。
一次焼成温度Bは、所望組成のKNbO粉を得る観点から、好ましくは1000℃未満、より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。一次焼成温度Bが1000℃以上である場合、一次焼成中に、KNbO粉の一部のKが揮発しやすい。このため、KNbO粉において、Kの組成が所望組成からずれることがある。その結果、最終的に得られるターゲット材10においても、Kの組成が所望組成からずれることがある。
また、一次焼成温度Bは、平均一次粒子径が大きいKNbO粉、例えば平均一次粒子径が3.0μm以上のKNbO粉を確実に得る観点から、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上、さらに好ましくは650℃以上、特に好ましくは700℃以上である。一次焼成温度Bが500℃未満である場合、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整したとしても、KNbO粉の平均一次粒子径を充分に大きくできない、すなわち、KNbO粉の一次粒子を充分に大きくできないことがある。
本ステップにおける一次焼成の実施時間は、特に限定されないが、好ましくは3時間以上20時間以下、より好ましくは4時間以上15時間以下、さらに好ましくは5時間以上10時間以下である。
(粗粉砕)
その後、必要に応じ、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、アトライタ、ジェットミル、アトマイザー、カッターミル等の粉砕手段を用い、得られたKNbO粉の二次粒子を粗粉砕してもよい。なお、ここでの粗粉砕は、KNbO粉の二次粒子を細かくすることが目的であり、粗粉砕は、KNbO粉の平均一次粒子径が小さくならない条件で行う。
なお、上述の一次焼成及び粗粉砕の処理は、必要に応じて、一部あるいは全てを繰り返し実施することができ、また、粗粉砕を省略することができる。また、これらの処理の完了後、あるいは、各処理の合間に、篩分け処理等を追加することができる。混合や粉砕の手段は、上述の例示に限定されることなく、他の粉砕手段から広く採用することができ、また、その際の条件も、上述の仕様を得る目的に応じて広く選択することができる。
<ステップC:K、Na、及びNbを含む焼成粉の作製>
続いて、ステップAで作製したNaNbO粉と、ステップBで作製したKNbO粉と、を所定の比率で混合し、得られた混合粉をO含有雰囲気にて加熱(仮焼)して、K、Na、Nb、及びOを含む焼成粉(KNN焼成粉)を作製する。
(出発原料粉準備)
まず、本ステップにおける出発原料粉として、ステップAで作製したNaNbO粉と、ステップBで作製したKNbO粉と、を用意する。また必要に応じ、本ステップにおける出発原料粉として、Cu及びMnからなる群より選択される少なくとも一種のドーパント元素を含む粉末、例えば、該元素単体の粉末、該元素を含む酸化物粉末、該元素含む複合酸化物粉末、及び加熱することにより酸化物となる該元素を含む化合物(例えば、炭酸塩、シュウ酸塩)の粉末を用意する。
これら出発原料粉の二次粒子の平均径は、例えば、1mm未満であることが好ましく、必要に応じ、秤量前に出発原料粉を予め粗粉砕等しておくことが好ましい。
(秤量、混合)
続いて、NaNbO粉及びKNbO粉のそれぞれを秤量し、最終的に得られるターゲット材10の組成が所望組成となるように、NaNbO粉及びKNbO粉の混合比率を調整する。秤量は、大気中で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気中、真空中、乾燥空気雰囲気中等の湿度が小さい雰囲気中で行うことが好ましく、また、NaNbO粉及びKNbO粉を充分に乾燥させてから行うことが好ましい。続いて、秤量後のNaNbO粉及びKNbO粉の混合粉を、ヘンシェルミキサー、ブレンダー、リボンミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、インテンシブミキサー、自動乳鉢等の混合器を用いて乾式又は湿式で混合する。なお、本ステップでは、出発原料粉として、平均一次粒子径が大きいNaNbO粉及び平均一次粒子径が大きいKNbO粉を用いている。したがって、混合処理を充分に行っても、KNN混合粉の平均一次粒子径を、例えば3.0μm以上に保つことができる。なお、本明細書における「KNN混合粉の平均一次粒子径」とは、2000~5000倍の倍率で観察したSEMの画像から読み取って算出したKNN混合粉の一次粒子のメジアン径D50である。
(粗粉砕)
その後、必要に応じ、NaNbO粉及びKNbO粉の混合粉を、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、アトライタ、ジェットミル、アトマイザー、カッターミル等の粉砕手段を用い、粗粉砕して、K、Na、及びNbを含む混合粉(以下、KNN混合粉)を得る。粗粉砕は、NaNbO粉及びKNbO粉の二次粒子を細かくすることが目的であり、粗粉砕後のKNN混合粉の平均一次粒子径が小さくならない条件で行う。
(仮焼、粗粉砕)
得られたKNN混合粉を、電気炉等を用いてO含有雰囲気下にて仮焼する。該仮焼を行うことにより、KNN混合粉から、水分、炭素成分、塩素等の不純物を除去でき、純度の高いKNN仮焼粉((K,Na)NbO粉、以下、KNN焼成粉)を得ることができる。
仮焼を行う際の加熱温度(以下、仮焼温度)は、純度の高いKNN焼成粉を得る観点から、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上、さらに好ましくは650℃以上、特に好ましくは700℃以上である。また、仮焼温度は、KNN混合粉中のKの揮発を抑制し、所望組成のKNN焼成粉を得る観点から、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下、さらに好ましくは900℃以下、特に好ましくは800℃以下である。
仮焼時の加熱時間は、特に限定されないが、好ましくは1時間以上50時間以下、より好ましくは3.5時間以上40時間以下、さらに好ましくは4時間以上30時間以下、特に好ましくは5時間以上12時間以下である。
該仮焼の工程においては、不純物を除去しやすい観点から、異なる仮焼温度において、多段階の熱処理を行ってもよい。
仮焼を行った後、必要に応じて、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、アトライタ、ジェットミル、アトマイザー等の粉砕手段で粗粉砕する。粗粉砕は、粗粉砕後のKNN焼成粉の二次粒子が細かくなる条件で行う。
(微粉砕)
粗粉砕により得られたKNN焼成粉を、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、アトライタ、アトマイザー及びジェットミル等の粉砕手段、好ましくはジェットミルを用いてさらに粉砕してもよい。微粉砕は、微粉砕後のKNN焼成粉の平均一次粒子径が例えば3.0μm以上に保たれる条件で行う。なお、本明細書における「KNN焼成粉の平均一次粒子径」とは、2000~5000倍の倍率で観察したSEM画像から読み取って算出したKNN焼成粉の一次粒子のメジアン径D50である。
以上の処理を経ることで、本態様のホットプレス焼結に用いるKNN焼成粉が得られる。上述のように、本ステップでは、出発原料粉として、平均一次粒子径が大きいNaNbO粉及び平均一次粒子径が大きいKNbO粉を用いることから、上述の混合、粗粉砕、微粉砕を行ったとしても、平均一次粒子径が大きなKNN焼成粉、例えば平均一次粒子径が3.0μm以上のKNN焼成粉を得ることができる。また、得られたKNN焼成粉は、必要に応じ、例えば、180~200℃の条件下でさらに加熱して乾燥させて用いられる。
なお、上述の仮焼、粗粉砕、微粉砕といった処理は、必要に応じて、一部あるいは全てを繰り返し実施することができ、また、いずれかの処理を省略することができる。また、これらの処理の完了後、あるいは、各処理の合間に、篩分け処理等を追加することができる。混合や粉砕の手段は、上述の例示に限定されることなく、他の粉砕手段から広く採用することができ、また、その際の条件も、上述の仕様を得る目的に応じて広く選択することができる。
<ステップD:ホットプレス焼結>
本ステップでは、上述のステップA~Cを実施して得たKNN焼成粉に対して機械的な圧力を加えることで圧粉体としつつ、同時にこの圧粉体に対して加熱を行ってKNN焼成粉を焼結させる、いわゆる、ホットプレス焼結を実施し、KNN焼結体を作製する。ホットプレス焼結の好適な一態様について、図2を参照しながら説明する。
図2は、ホットプレス焼結で用いる焼結装置200の概略構成図である。図2に示す焼結装置200は、SUS等からなり、処理室201が内部に構成された処理容器203を備えている。処理室201内には、治具(焼結用型)208内に充填されたKNN焼成粉210に対して所定の圧力を加えることが可能なように構成された押圧手段217(例えば油圧プレス式の押圧手段217)が設けられている。また、処理室201の内部には、治具208内のKNN焼成粉210を所定の温度に加熱するヒータ207が設けられている。ヒータ207は、治具208を同心円状に囲うように配設されている。処理室201の内部には、処理室201内の温度を測定する温度センサ209が設けられている。焼結装置200が備える各部材は、コンピュータとして構成されたコントローラ280に接続されており、コントローラ280上で実行されるプログラムによって、後述する手順や条件が制御されるように構成されている。
まず、ステップCで作製したKNN焼成粉210を、治具208内に充填する。このとき、KNN焼成粉210の充填ムラができるだけ生じないように、KNN焼成粉210を治具208に充填する。治具208は、グラファイト等の材料で構成されていることが好ましい。また、治具208は、焼結装置200が備える処理室201内に投入可能に、かつ、押圧手段217による加圧により破損しないように構成されている。
次いで、KNN焼成粉210が充填された治具208を、処理室201内に収容し、押圧手段217の所定の位置に配置する。そして、処理室201内を窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気(例えば、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスからなる雰囲気)、又は真空雰囲気にする。処理室201内が所定の雰囲気になったら、押圧手段217を作動させて治具208内に充填されたKNN焼成粉210に対する加圧を開始し、同時にヒータ207によるKNN焼成粉210の加熱を開始する。押圧手段217は、図2に白抜きの矢印で示すように、押圧面に対して垂直方向に圧力を加えるように構成されている。押圧手段217の作動開始により、KNN焼成粉210に対して加えられる機械的な圧力は、後述の所定の焼結時圧力まで徐々に上昇し、ヒータ207によるKNN焼成粉210の加熱開始により、KNN焼成粉210が加圧されてなる圧粉体の温度は、室温(25℃)程度の開始時温度から後述の所定の焼結時温度まで徐々に上昇することとなる。
KNN焼成粉210に対して加えられる圧力が所定の焼結時圧力に到達し、KNN焼成粉210(圧粉体)の温度が所定の焼結時温度に到達したら、所定の焼結時圧力及び所定の焼結時温度に達した状態を、所定の時間保持する。これにより、圧粉体中におけるKNN焼成粉210の焼結反応が進行し、KNN焼結体が得られる。
ホットプレス焼結の条件としては、下記の条件が例示される。
[ホットプレス焼結条件]
雰囲気:窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、又は真空雰囲気
焼結時圧力(荷重):100kgf/cm以上500kgf/cm以下、好ましくは300kgf/cm以上400kgf/cm以下
焼結時温度:800℃以上1150℃以下、好ましくは850℃以上1000℃以下、より好ましくは900℃以上970℃以下
焼結時間:1時間以上5時間以下、好ましくは2時間以上3時間以下
上述のステップA~Cを実施して得たKNN焼成粉210に対して上述の条件でホットプレス焼結を行うことで、密度が4.2g/cm以下であるという特徴と、ビッカース硬度が30以上200以下であるという特徴と、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴と、の3つの特徴の全てを有するKNN焼結体、ひいては、ターゲット材10が得られる。特に、焼結時圧力及び焼結時温度を上記範囲内とすることで、上記3つの特徴を有するターゲット材10を得やすくなる。
なお、ホットプレス焼結後のKNN焼成粉210の粒子径は、ホットプレス焼結前のKNN焼成粉210の粒子径から変化することが経験的に分かっており、特にKNbO粉の粒子径は変化しやすい傾向がある。また、EBSDで求めたホットプレス焼結後のターゲット材10の面積平均粒子径Nvの値は、SEM画像から求めたホットプレス焼結前のKNN焼成粉210の平均一次粒子径よりも小さい値となる傾向がある。このため、測定方法の異なる焼結前後のKNN焼成粉210の粒子径の変化を比較することは難しいが、ホットプレス焼結後のターゲット材10のEBSDで求めた面積平均粒子径Nvを3.0μm以上とするためには、上述のステップA~Cを実施して得たKNN焼成粉210の平均一次粒子径、特にNaNbO粉の平均一次粒子径を大きくしておくことが重要であり、SEM画像から求めたNaNbO粉の平均一次粒子径を5.0μm以上、KNbO粉の平均一次粒子径を3.0μm以上、とすることにより、EBSDで求めた面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴を有するターゲット材10を確実に得ることができる。
焼結時圧力が100kgf/cm未満である場合や、焼結時温度が800℃未満である場合、ターゲット材10のビッカース硬度が30未満になることがある。また、焼結時圧力が500kgf/cmを超える場合、圧粉体が過度に緻密化され、ターゲット材10の密度が4.2g/cm超になることがある。また、焼結時温度が1150℃を超える場合、KNN焼結粉の一部のKが揮発しやすく、所望組成のターゲット材10が得られないことがある。
また、焼結時圧力を300kgf/cm以上400kgf/cm以下としたり、焼結時温度を850℃以上、好ましくは900℃以上としたりすることで、上記3つの特徴を有するターゲット材10が確実に得られる。また、焼結時温度が1000℃以下、好ましくは970℃以下とすることで、KNN焼結粉の一部のKの揮発を確実に回避でき、所望組成のターゲット材10が確実に得られる。
<ステップE:酸化処理>
上述のステップD(ホットプレス焼結)は、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、又は真空雰囲気で実施されることから、ステップDを実施すると、KNN焼結粉の一部の酸素(O)が脱離してしまう。このため、最終的に得られるターゲット材10の組成が、所望組成からずれた組成、具体的には、Oの組成が所望組成からずれた組成になることがある。そのため、ステップDを実施した後、O含有雰囲気下でターゲット材10(酸化物焼結体)に対して熱処理(酸化処理)を実施する。これにより、ステップDの実施により一部のOが脱離したターゲット材10中にOを取り込ませ、最終的に得られるターゲット材10の組成を所望組成にすることができる。
本ステップは、O含有雰囲気下で、例えば500℃以上1100℃以下、好ましくは600℃以上950℃以下、より好ましくは650℃以上900℃以下の加熱温度で実施される。本ステップにおける加熱時間は、例えば1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上とすることができる。
上述のステップDで作製したターゲット材10に対し、上述の条件で酸化処理を行うことで、ターゲット材10の中心部まで充分にOを取り込ませ、ターゲット材10の中心部まで充分に酸化させることができる。その結果、最終的に得られるターゲット材10の組成を所望組成にすることができる。
なお、ステップDで得られるターゲット材10は、低密度のターゲット材10、具体的には、密度が4.2g/cm以下のターゲット材10である。このため、酸化処理における加熱温度が1100℃以下、好ましくは950℃以下、特に900℃以下であっても、すなわち、酸化処理における加熱温度が低温であっても、ターゲット材10の中心部まで充分にOを取り込ませ、ターゲット材10の中心部まで充分に酸化させることができる。これにより、ターゲット材10の全域にわたり(ターゲット材10の厚さ方向及び面内方向の全域にわたり)、Oの組成を所望組成にできる。
また、酸化処理における加熱温度が低温であることで、酸化処理の実施中に、ターゲット材10の一部のKが揮発することを抑制できる。これにより、ターゲット材10の全域にわたり、Kの組成を所望組成にできる。
また、酸化処理における加熱温度が低温であることで、酸化処理の実施中に、ターゲット材10に反りや割れが生じにくくなる。その結果、ターゲット材10の生産歩留りを向上させることができる。
また、低密度のターゲット材10であるため、上記加熱温度での加熱時間を1時間以上にすることで、ターゲット材10の中心部まで充分にOを取り込ませ、ターゲット材10の中心部まで充分に酸化させることができる。また、上記加熱温度での加熱時間を5時間以上行うことで、ターゲット材10の中心部まで確実に酸化させることができ、上記加熱温度での加熱時間を10時間以上行うことで、ターゲット材10の中心部まで充分に、さらに確実に酸化させることができる。
酸化処理における加熱温度が500℃未満である場合や、上記加熱温度での加熱時間が1時間未満である場合、低密度のターゲット材10であっても、ターゲット材10の中心部まで充分に酸化させることが難しい。このため、ターゲット材10の全域にわたり、Oの組成を所望組成にできないことがある。また、酸化処理における加熱温度が1100℃超である場合、ターゲット材10の一部のKが揮発し、ターゲット材10の全域にわたり、Kの組成を所望組成にできないことがある。また、酸化処理の実施中に、ターゲット材10に反りや割れが生じやすくなる。
なお、上記加熱温度での加熱時間の上限は特に限定されない。しかしながら、加熱時間を長くしすぎると、ターゲット材10にOを取り込ませる効果は頭打ちとなる一方、ターゲット材10の一部のKが揮発するおそれがある。また、ターゲット材10の生産性の低下や生産コストの増加を招くこともある。このため、上記加熱温度での加熱時間は、好ましくは40時間以下、より好ましくは20時間以下、さらに好ましくは15時間以下である。
本ステップにおいては、ターゲット材10の中心部まで確実に酸化させる観点から、異なる加熱温度において、多段階の酸化処理を行ってもよい。
<仕上げ加工・バッキングプレートへの接合>
その後、必要に応じて、焼結体を、例えば、面積が4500mm以上、厚さ3mm以上の寸法を有する円盤型に研削加工したり、表面を研磨して表面状態を調整することで、本態様におけるターゲット材10が得られる。ターゲット材10は、Cu等からなるバッキングプレートに、In、Sn及びそれら金属を含む合金等の接合材を介して接合され、スパッタリングターゲットとして用いられる。
(3)効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
(a)本態様におけるターゲット材10は、密度が4.2g/cm以下であるという特徴と、ビッカース硬度が30以上200以下であるという特徴と、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴と、の3つの特徴を備えている。これにより、低密度かつ割れに強いターゲット材10を得ることができる。
また、低密度(密度が4.2g/cm以下)のターゲット材10であることで、ターゲット材10の全域にわたり(ターゲット材10の厚さ方向及び面内方向の全域にわたり)、O及びKの組成が所望組成であるターゲット材10が得られる。このことから、本態様によれば、全域にわたりO及びKの組成が所望組成であり、かつ、割れに強いターゲット材10を得ることができる。これにより、ターゲット材10を用いたスパッタ製膜により、所定の物性及び所定の特性を有する信頼性の高いKNN膜が確実に得られる。
(b)本態様におけるターゲット材10は、KNN焼成粉を上述のステップA~Cの新規手法を経て作製している。これにより、平均一次粒子径が大きいKNN焼成粉、例えば平均一次粒子径が3.0μm以上のKNN焼成粉が得られる。このような大きな平均一次粒子径を有するKNN焼成粉に対して所定の条件のホットプレス焼結を実施することで、上記3つの特徴を有するターゲット材10が得られる。
(c)NaNbO粉とKNbO粉とを別個に作製することで、NaNbO粉の作製時における一次焼成温度Aを高くすることができる。例えば、一次焼成温度Aを、KCO粉、NaCO粉、及びNb粉の混合粉を、電気炉等を用いて、O含有雰囲気下にて、一次焼成して、K,Na,Nbを含む焼成粉を作製する従来の手法における一次焼成温度よりも高くすることができる。このように、一次焼成温度Aを高くできることから、得られるNaNbO粉の平均一次粒子径を充分に大きくできる。ステップAにおいて、平均一次粒子径が大きいNaNbO粉を作製することで、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴を有するターゲット材10が確実に得られ、結果、上記3つの特徴を有するターゲット材10が確実に得られる。
(d)ステップBにおいて、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整して、平均一次粒子径が大きいKNbO粉を作製している。平均一次粒子径が大きいKNbO粉を作製することで、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴を有するターゲット材10が確実に得られ、結果、上記3つの特徴を有するターゲット材10がより確実に得られる。また、ステップBにおいて、KNbO粉の組成がKリッチ組成となるようにKCO粉及びNb粉の混合比率を調整することで、平均一次粒子径が大きいKNbO粉、例えば平均一次粒子径が3.0μm以上のKNbO粉がより確実に得られ、結果、上記3つの特徴を有するターゲット材10がより確実に得られる。
(e)ステップA及びBにおいて、それぞれ、平均一次粒子径が大きいNaNbO粉及びKNbO粉を作製することから、最終的に得られるターゲット材10は、スパッタ面10sにて観察される複数の結晶粒が、主に、複数のNaNbO結晶粒と、複数のKNbO結晶粒と、を含むという特徴を備え得る。さらに、ターゲット材10は、スパッタ面10sに、Naリッチ部と、Kリッチ部と、がそれぞれ点在するという特徴も備え得る。
なお、ホットプレス焼結を行う際、以下のように作製したKNN焼成粉を用いることも考えられる。すなわち、まず、出発原料粉として、KCO粉、NaCO粉、及びNb粉を用意する。そして、これらの出発原料粉のそれぞれを秤量し、最終的に得られるターゲット材10の組成が所望組成となるように、出発原料粉の混合比率を調整する。得られたKCO粉、NaCO粉、及びNb粉の混合粉を、電気炉等を用いて、O含有雰囲気下にて、一次焼成して、K,Na,Nbを含む焼成物((K,Na)NbO)を得る。その後、所定の粉砕手段を用い、得られた焼成物を粗粉砕することで、焼成粉((K,Na)NbO粉)を得る。所定の粉砕手段で粗粉砕することでKNN焼成粉が得られる。しかしながら、このような手法で得られたKNN焼成粉を用いてホットプレス焼結を行っても、密度が4.2g/cm以下であるという特徴と、ビッカース硬度が30以上200以下であるという特徴と、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴と、の3つの特徴を全て有するターゲット材を得ることができない。
というのも、このようなKNN焼成粉の作製手法において、一次焼成における加熱温度を低くすると、平均一次粒子径が3.0μm以上のKNN焼成粉を得ることができない。このようなKNN焼成粉を用い、上述のステップDと同様の温度(焼結時温度)でホットプレス焼結を行った場合、得られるKNN焼結体(ターゲット材)の密度が高くなる。すなわち、密度が4.2g/cm以下であるという特徴を有するターゲット材が得られない。また、このようなKNN焼結粉を用い、上述のステップDにおける焼結時温度よりも低温でホットプレス焼結を行った場合、ターゲット材を平均粒子径が大きい結晶粒で構成することができない。すなわち、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴を有するターゲット材が得られない。
一方、このようなKNN焼成粉の作製手法において、一次焼成における加熱温度を高くすると、平均一次粒子径が3.0μm以上のKNN焼成粉を得ることはできる。しかしながら、このような手法で得られるKNN焼成粉は、Na及びNbを含む焼成粉(NaNbO粉)と、K及びNbを含む焼成粉(KNbO粉)と、が均一に混じったKNN焼成粉になる。このため、このようなKNN焼成粉を用い、上述のステップDにおける焼結時温度と同様の温度でホットプレス焼結を行った場合、得られるターゲット材の密度が高くなりすぎてしまう。すなわち、密度が4.2g/cm以下であるという特徴を有するターゲット材が得られない。また、このようなKNN焼成粉を用い、上述のステップDにおける焼結時温度よりも低温でホットプレス焼結を行った場合、ビッカース硬度が30以上200以下であるという特徴を有するターゲット材が得られない。
これに対し、本態様では、上述のように、NaNbO粉とKNbO粉とを別々に作製し、作製したNaNbO粉とKNbO粉とを混合し、仮焼して、KNN焼成粉を作製している。これにより、上述のように、平均一次粒子径が3.0μm以上のKNN焼成粉を得ることができる。また、本態様の手法では、KNN焼成粉を作製する際(上述のステップCにおいて)、故意に、NaNbO粉とKNbO粉とが均一に混じらないように(不均一に混じるように)している。このようなKNN焼成粉を用い、上述のステップDにおける焼結時温度でホットプレス焼結を行うことで、密度が4.2g/cm以下であるという特徴と、ビッカース硬度が30以上200以下であるという特徴と、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であるという特徴と、の3つの特徴を全て有するターゲット材10が得られる。また、ステップCにおいて、NaNbO粉とKNbO粉とが均一に混じらないようにすることで、ターゲット材10は、スパッタ面10sに、Naリッチ部と、Kリッチ部と、がそれぞれ点在するという特徴も有することとなる。
また、上述の態様では、KNN焼成粉の焼結をホットプレス焼結により実施したが、KNN焼成粉の焼結を、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering、以下、単にSPSともいう)により実施することも考えられる。しかしながら、SPSでの焼結の場合、圧粉体が過度に緻密化されやすい。このため、密度が4.2g/cm以下のターゲット材10が得られないことがある。
<本開示の他の態様>
以上、本開示の種々の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
ターゲット材10には、Cu及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の元素に加えて、又は、Cu及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の元素に代えて、ドーパントとして、以下に示す群より選択される少なくとも一種の元素(ドーパント)が、例えば、5at%以下の濃度で添加されている場合もある。ドーパントとしては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、バナジウム(V)、In、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、Ti、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、Al、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、Sn、及び、ガリウム(Ga)からなる群より選択される少なくとも一種の元素が例示される。上述の元素を複数添加している場合は合計濃度が5at%以下であり、ドーパントの添加量は通常0.1at%以上である。この場合、上述のステップCにおいて、出発原料粉として、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zn、Ag、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaからなる群より選択される少なくとも一種のドーパント元素を含む粉末、例えば、該元素単体の粉末、該元素を含む酸化物粉末、該元素含む複合酸化物粉末、及び加熱することにより酸化物となる該元素を含む化合物(例えば、炭酸塩、シュウ酸塩)の粉末をさらに用意し、NaNbO粉と、KNbO粉と、混合すればよい。
以下、上述の態様の効果を裏付ける実験結果について説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
(サンプル1)
NaCO粉とNb粉とを所定の比率で混合し、NaCO粉とNb粉との混合粉をO含有雰囲気にて1200℃で加熱して、NaNbO粉を作製した(ステップA)。また、KCO粉とNb粉とを所定の比率で混合し、KCO粉とNb粉との混合粉をO含有雰囲気下にて800℃で加熱して、KNbO粉を作製した(ステップB)。ステップBでは、KNbO粉の組成がKリッチ組成となるように、KCO粉及びNb粉の混合比率を調整した。ステップBで作製したKNbO粉のK/Nb比(KNbO粉における、Nb組成に対するK組成の比)は、1.015であった。続いて、作製したNaNbO粉及びKNbO粉と、CuO粉末とを所定の比率で混合し、NaNbO粉とKNbO粉とCuO粉末との混合粉をO含有雰囲気下にて750℃で加熱して、ドーパントとしてのCuを含むKNN焼成粉を作製した(ステップC)。焼結時圧力を400kgf/cmとし、焼結時温度を900℃として、得られたKNN焼成粉に対してホットプレス焼結を実施し、KNN焼結体を作製した(ステップD)。得られたKNN焼結体に対して、O含有雰囲気下にて、800℃で、1時間、熱処理(酸化処理)を行った(ステップE)。その後、KNN焼結体の表面に対して研削等の所定の加工を行い、厚さ5mm、直径300mm(300mmφ)の円盤状のKNNターゲット材を得た。このKNNターゲット材をサンプル1とした。
サンプル2~29では、それぞれ、ステップAにおける温度(一次焼成温度A)、ステップBにおけるK/Nb比(すなわち、KCO粉及びNb粉の混合比率)、ステップBにおける温度(一次焼成温度B)、ステップDにおける圧力(焼結時圧力)、ステップDにおける温度(焼結時温度)、ステップEの実施の有無、又は、ステップEにおける温度を、表1に示す通りに変更した。その他の作製手順及び作製条件は、サンプル1と同様の手順、条件とし、サンプル2~29のターゲット材をそれぞれ作製した。なお、表1のステップEの欄において、「〇」は、ステップEを実施したことを意味し、「×」は、ステップEを不実施としたことを意味する。
また、サンプル30~33では、ステップDで用いる治具(焼結用型)を変更した。その他の作製手順及び作製条件は、サンプル1と同様の手順、条件とし、種々のサイズのサンプル30~33のターゲット材を作製した。なお、サンプル30~32のターゲット材は円盤状であり、サンプル33のターゲット材は、主面が長方形に構成された板状である。サンプル30~33のターゲット材のサイズは表1に示す通りである。
Figure 2024034746000002
<ステップAで作製したNaNbO粉に関する評価>
サンプル1~33で作製したNaNbO粉の平均一次粒子径の測定結果を、表1に示す。なお、表1における「平均径」とは、SEM画像から求めたNaNbO粉の平均一次粒子径であり、具体的には、NaNbO粉の一次粒子のメジアン径D50である。
サンプル1~4,7~33では、いずれも、NaNbO粉の平均一次粒子径が5.0μm以上であることが確認できた。このことから、ステップAにおける温度が1000℃以上であることで、平均一次粒子径が5.0μm以上(実施例では8.0μm以上)のNaNbO粉が得られることが分かる。また、サンプル1~4,7~33では、いずれも、NaNbO粉の平均一次粒子径が、ステップBで作製したKNbO粉の平均一次粒子径よりも大きいことが分かる。
また、サンプル1,3,4,7~33では、いずれも、NaNbO粉の平均一次粒子径が10.0μm以上であることが確認できた。このことから、ステップAにおける温度が1100℃以上であることで、平均一次粒子径が10.0μm以上のNaNbO粉が得られること、すなわち、平均一次粒子径が大きいNaNbO粉が確実に得られることが分かる。
なお、サンプル5,6では、いずれも、NaNbO粉の平均一次粒子径が5.0μm未満であることが確認できた。このことから、ステップAにおける温度が1000℃未満であると、NaNbO粉の一次粒子を充分に大きくできない場合があることが分かる。
また、サンプル6から、ステップAにおける温度を、ステップBにおける温度よりも高くした場合であっても、ステップAにおける温度が1000℃未満であると、NaNbO粉の平均一次粒子径を、ステップBで作製するKNbO粉の平均一次粒子径よりも大きくできない場合があることが分かる。
<ステップBで作製したKNbO粉に関する評価>
サンプル1~33で作製したKNbO粉の平均一次粒子径の測定結果を、表1に示す。なお、表1における「K/Nb比」とは、作製したKNbO粉における、Nb組成に対するK組成の比である。また、表1における「平均径」とは、SEM画像から求めたKNbO粉の一次粒子の平均径であり、具体的にはKNbO粉の一次粒子のメジアン径D50である。
サンプル1~11,13~17,19~33では、いずれも、KNbO粉の平均一次粒子径が3.0μm以上(実施例では5.0μm以上)であることが確認できた。このことから、K/Nb比が1.005以上であることで、平均一次粒子径が3.0μm以上のKNbO粉が得られることが分かる。また、ステップBにおける温度が500℃以上であることで、平均一次粒子径が3.0μm以上のKNbO粉が確実に得られることも分かる。
なお、サンプル12では、KNbO粉の平均一次粒子径が3.0μm未満であることが確認できた。このことから、K/Nb比が1.005未満であると、KNbO粉の一次粒子を充分に大きくできない場合があることが分かる。
また、サンプル18では、KNbO粉の平均一次粒子径が3.0μm未満であることが確認できた。このことから、K/Nb比が1.005以上であっても、ステップBにおける温度が500℃未満であると、KNbO粉の一次粒子を充分に大きくできない場合があることが分かる。
<ターゲット材に関する評価>
各サンプル(ターゲット材)の密度と、ビッカース硬度と、平均粒子径と、K、Na、及びNbの組成とに関する物性評価を行った。また、各サンプルの割れに関する評価も行った。
(密度に関する評価)
サンプル1~33のターゲット材の密度を、以下の装置、方法を用いて測定した。
装置:アルファミラージュ製 電子比重計 MDS300
試験方法:所定のサイズに切り出したターゲット材について、上記装置を用い、アルキメデス法にて、密度を測定した。
(ビッカース硬度に関する評価)
サンプル1~33のターゲット材のビッカース硬度を、以下の装置、条件、方法を用いて測定した。
装置:株式会社ミツトヨ製 マイクロビッカース硬さ試験機 HM-114
雰囲気:大気中
温度:室温(25℃)
試験力:1.0kgf
荷重印加速度:10μm/s
保持時間:15sec
測定点数:5point
試験方法:本試験はJIS R 1610に準拠し、ビッカース圧子(向かいあった二つの面のなす角度が136度である底面が正方形の四角すい圧子)を用いて、試験面にくぼみをつけたときの試験力と、くぼみの対角線長さから求めたくぼみ表面積とからビッカース硬さを求めて、5点の測定結果から平均を求めた。
(平均粒子径に関する評価)
サンプル1~33のターゲット材のスパッタ面をEBSDにより観察し、スパッタ面に観察された複数の結晶粒の面積平均粒子径Nv(μm)を、以下の装置、条件、方法を用いて算出した。
試料調製:研磨法により実施(評価に支障の出る大きな傷が無くなるまで、耐水研磨紙で研磨後、バフ研磨を実施した。)
装置:株式会社日立ハイテク製 超高分解能分析走査電子顕微鏡 SU-70
株式会社TSLソリューションズ製 EBSD検出器
解析ソフト:株式会社TSLソリューションズ製 OIM Analysis Ver8
測定倍率:3000倍
測定領域:30μm×50μm
ステップサイズ:0.06μm
粒界角:15°
分析方法:ノイズ除去のため、クリーンアップ処理を行い、粒界角15°(結晶方位差15°以上の境界を結晶粒界とみなした)の条件で粒界マップを作成し、粒子径を解析した。ボイド等が存在する場合は、IQ(Image Quality)値に閾値を設けた。EBSDのArea Fraction法を用いて各粒子の面積、粒子径(円相当径)を算出し、面積平均粒子径を算出した。また、粒子径算出の際は、結晶性が悪く分析ができない部分や微結晶をノイズとして除去するため、0.20μm以上の粒子を算出対象とした。
(K、Na、及びNbの組成に関する評価)
サンプル1~33のターゲット材の組成を、AASによりK及びNaの含有モル数をそれぞれ測定し、ICP-AESによりNbの含有モル数を測定し、([K]+[Na])/[Nb]の値を算出した。なお、[K]、[Na]、[Nb]は、それぞれ、ターゲット材におけるK原子の含有モル数、Na原子の含有モル数、Nb原子の含有モル数である。[K]、[Na]、[Nb]は、以下の装置、条件、方法を用いてそれぞれ測定した。
試料調整:各サンプルを、10mm×10mm(×厚さ5mm)の大きさに裁断した。
装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製 原子吸光分析(AAS)装置 Z-2300
株式会社日立ハイテクサイエンス製 高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)装置 PS3520VDDII
分析方法:裁断した各サンプルを、硫酸、硝酸、フッ化水素酸及び塩酸で加熱分解したのち、希過酸化水素水及び希フッ化水素酸で加熱溶解して定容した。そして、この溶液に対して、AASとICP-AESとを実施し、サンプル中のK、Na、及びNbの含有量を求め、これを原子数比に換算した。
(割れに関する評価)
ステップE(酸化処理)終了後のサンプル1~33に、割れ(クラック、欠けを含む)が生じていないかを目視で確認した。
また、組成異常やステップE(酸化処理)の終了後に割れが確認されなかったサンプル1~4,6~17,20,21,23,25~33の各サンプルを用い、下記手順でKNN膜をスパッタ製膜した。そして、スパッタ製膜後の各サンプルに、割れ(クラック、欠けを含む)、異常放電の跡が生じていないかを目視で確認した。
基板として、直径が4インチであり、厚さが510μmであり、表面が(100)面方位であり、表面に厚さが200nmの熱酸化膜(SiO膜)が形成されたSi基板を用意した。そして、この基板の熱酸化膜上に、密着層としてのTi膜(厚さ2nm)、下部電極膜としてのPt膜(基板の表面に対して(111)面方位に優先配向、厚さ200nm)、圧電膜としてのKNN膜(直径4インチ、基板の表面に対して(001)面方位に優先配向、厚さ2μm)を、RFマグネトロンスパッタリング法により(RFプラズマスパッタリング装置を用い)、この順に製膜した。
密着層及び下部電極膜を製膜する際の条件は、それぞれ、下記の通りとした。
基板温度:300℃
放電パワー密度:13.5W/cm
雰囲気:Arガス雰囲気
雰囲気圧力:0.3Pa
製膜時間:5分
KNN膜を製膜する際の条件は、下記の通りとした。
放電パワー密度:2W/cm以上5W/cm以下の所定の放電パワー密度
雰囲気:Arガス+Oガスの混合ガス雰囲気
雰囲気圧力:0.3Pa
Ar/O分圧比:25/1
温度(基板温度):600℃
製膜速度:1μm/hr
これらの評価結果(測定結果)を、表2に示す。なお、表2における「(K+Na)/Nb組成」とは、([K]+[Na])/[Nb]の値である。
Figure 2024034746000003
サンプル1~4,7~11,13~17,20,23,25~33では、いずれも、密度が4.2g/cm以下であり、ビッカース硬度が30以上200以下であり、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であることが確認できた。また、これらのサンプルでは、ステップEの終了後及びスパッタ製膜の実施後のいずれにおいても、割れは確認されなかった。また、これらのサンプルでは、KNN膜の累積の製膜厚さが50μmを超えるまでスパッタ製膜を行った後のターゲット材においても、割れは確認されなかった。これらから、これらのサンプルは、低密度でありながらも割れに強いターゲット材であることが分かる。
また、サンプル30~33から、ターゲット材のサイズや平面形状によらずに、低密度でありながらも割れに強いターゲット材が得られることが分かる。
また、サンプル1~4,7~11,13~17,20,23,25~33のターゲット材を厚さ方向に割り、その割断面(縦断面)を目視で観察した。一例として、図3(a)に、サンプル1の割断面の概略構成図を示し、図3(b)に、サンプル1の割断面の写真を示す。図3(a)及び図3(b)から、サンプル1では、表面(上面及び下面)及び内部(中心部)が白色であること、すなわち、全域にわたり白色であることが確認できる。これは、サンプル1では、中心部まで充分に酸化されていること、すなわち、全域にわたってOの組成が所望組成であることを示している。同様に、サンプル2~4,7~11,13~17,20,23,25~33の縦断面も、全域にわたり白色であることが確認できた。これらのことから、サンプル1~4,7~11,13~17,20,23,25~33では、いずれも、1000℃未満の低温で酸化処理を行った場合であっても(ステップEにおける温度が1000℃未満であっても)、ターゲット材の中心部まで充分に酸化できることが分かる。
また、サンプル1~4,7~11,13~17,20,23,25~33では、いずれも、([K]+[Na])/[Nb]の値が1.0超であることが確認できる。
また、サンプル25から、密度が4.2g/cm以下であり、ビッカース硬度が30以上200以下であり、面積平均粒子径Nvが3.0μm以上であることで、ステップE(酸化処理)を不実施としても、低密度でありながらも割れに強いターゲット材が得られる場合があることが分かる。しかしながら、全域にわたってOの組成が所望組成であるターゲット材を確実に得る観点から、ステップEを実施した方が好ましい。
なお、サンプル5,6,12,18では、いずれも、面積平均粒子径Nvが3.0μm未満であることが確認できた。このことから、ステップAでNaNbO粉の平均一次粒子径を充分に大きくできない場合や、ステップBでKNbO粉の平均一次粒子径を充分に大きくできない場合、ターゲット材の面積平均粒子径Nvを3.0μm以上にできない場合があることが分かる。また、サンプル5,18では、ステップEの終了後に割れが生じていることが確認でき、サンプル6,12では、スパッタ製膜の実施後に割れ(クラック)及び異常放電が生じていることが確認できた。これらから、ターゲット材の面積平均粒子径Nvが3.0μm未満であると、ターゲット材の作製中やスパッタ製膜中に割れが生じやすいことが分かる。
サンプル19,22では、ビッカース硬度が30未満であることが確認できた。このことから、ステップDにおける圧力が100kgf/cm未満である場合やステップDにおける温度が800℃未満である場合、ビッカース硬度を30以上にできない場合があることが分かる。また、サンプル19,22では、ステップEの終了後に割れが生じていることが確認できた。これらから、ターゲット材のビッカース硬度が30未満であると、ターゲット材の作製中やスパッタ製膜中に割れが生じやすいことが分かる。
サンプル21,24では、ビッカース硬度が200超であることが確認できた。このことから、ビッカース硬度が200超であるターゲット材を得るためには、ステップDにおける圧力を500kgf/cm超にしたり、ステップDにおける温度を1150℃超にしたりする必要があることが分かる。また、サンプル21,24では、密度が4.2g/cm超であることも確認できた。
また、サンプル21のターゲット材を厚さ方向に割り、その割断面(縦断面)を目視で観察した。図4(a)に、サンプル21の割断面の概略構成図を示し、図4(b)に、サンプル21の割断面の写真を示す。図4(a)及び図4(b)から、サンプル21では、表面(上面及び下面)は白色であるが、内部(中心部)は灰色、紺色、黒色であることが確認できる。これは、サンプル21では、表面は酸化されているが、中心部は酸素が少ない状態(すなわち未酸化の状態)にあることを示している。このことから、ステップDにおける圧力が高いと、密度が4.2g/cmを超えてしまい、ステップEにおける温度が1000℃未満の低温では、ターゲット材の中心部まで充分に酸化しない場合があることが分かる。すなわち、ターゲット材の全域にわたり、Oの組成を所望組成にできないことが分かる。また、サンプル21では、スパッタ製膜の実施後にクラック及び異常放電が生じていることも確認できた。
また、サンプル24では、表面の組成がKプア組成であることが確認できた。このことから、ステップDにおける温度が1100℃超であると、ターゲット材の一部のKが揮発し、ターゲット材の全域にわたり、Kの組成を所望組成にできない場合があることが分かる。また、サンプル24では、ステップEの終了後に、割れが生じていることも確認できた。このことから、ステップDにおける温度が高い場合、ターゲット材の作製中に割れが生じる場合があることも分かる。
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本開示の一態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
密度が4.2g/cm以下である
スパッタリングターゲット材が提供される。これにより、全域にわたり、O及びKの組成が所望組成であるターゲット材が得られる。
(付記2)
本開示の他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
ビッカース硬度が30以上200以下であり、
スパッタ面にて観察される複数の結晶粒の面積平均粒子径が3.0μm以上である
スパッタリングターゲット材が提供される。これにより、機械的強度の高いターゲット材が得られる。
(付記3)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
密度が4.2g/cm以下であり、
ビッカース硬度が30以上200以下であり、
スパッタ面にて観察される複数の結晶粒の面積平均粒子径が3.0μm以上である
スパッタリングターゲット材が提供される。これにより、全域にわたり、O及びKの組成が所望組成であり、かつ、機械的強度の高いターゲット材が得られる。
(付記4)
付記2又は3に記載のターゲット材であって、好ましくは、
前記面積平均粒子径は、後方散乱電子回折(EBSD)像からArea Fraction法を用いて算出した値である。
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
主面の面積が4500mm以上である。
(付記6)
付記1~5のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
ドーパントとして、銅及びマンガンから選択される少なくともいずれかの元素を、0.1at%以上2.0at%以下の濃度で含む。
(付記7)
付記1~6のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
前記スパッタ面にて観察される複数の結晶粒が、主に、ナトリウム及びニオブを含む酸化物で構成される複数の結晶粒と、カリウム及びニオブを含む酸化物で構成される複数の結晶粒と、を含む。
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
前記スパッタ面には、ナトリウムの含有量が多い部分(ナトリウムリッチ部)と、カリウムの含有量が多い部分(カリウムリッチ部)と、がそれぞれ点在している。
(付記9)
付記1~8のいずれか1項に記載のターゲット材であって、好ましくは、
前記焼結体におけるカリウム原子の含有モル数を[K]、ナトリウム原子の含有モル数を[Na]、ニオブ原子の含有モル数を[Nb]としたとき、([K]+[Na])/[Nb]の値が1.0超である。
(付記10)
本開示のさらに他の態様によれば、
付記1~9のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット材と、
前記スパッタリングターゲット材に接合されているバッキングプレートと、
を備えるスパッタリングターゲットが提供される。
(付記11)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
前記スパッタリングターゲット材を、接合材を介してバッキングプレート上に貼り付けてスパッタリングターゲットを作製し、RFプラズマスパッタリング装置に前記スパッタリングターゲットを取り付け、アルゴンガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気で、放電パワー密度を2.0W/cm以上として、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む圧電膜を製膜する処理を行い、前記圧電膜の累積の製膜厚さが50μmを超えるまで前記圧電膜を製膜する処理を行った後の前記スパッタリングターゲット材を観察した際、クラックが発生していないスパッタリングターゲット材が提供される。ここで、「クラックが発生していない」とは、上記放電パワー密度でスパッタリングを行った際に異常放電が生じるような亀裂が発生していないことを意味する。
(付記12)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
(a)ナトリウムを含む化合物で構成される原料粉体と、ニオブを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて加熱して、ナトリウム及びニオブを含む焼成粉を作製する工程と、
(b)カリウムを含む化合物で構成される原料粉体と、ニオブを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて加熱して、カリウム及びニオブを含む焼成粉を作製する工程と、
(c)(a)で作製した前記焼成粉と、(b)で作製した前記焼成粉と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて加熱(仮焼)して、カリウム、ナトリウム、及びニオブを含む焼成粉を作製する工程と、
(d)(c)で作製した前記焼成粉に対して所定の圧力を加えて圧粉体としつつ、前記圧粉体に対して加熱を行い、焼結体を作製する工程と、を有し、
(a)における加熱温度を、(b)における加熱温度よりも高くする
スパッタリングターゲット材の製造方法が提供される。
(付記13)
付記12に記載の製造方法であって、好ましくは、
(c)では、(a)で作製した前記焼成粉と、(b)で作製した前記焼成粉と、銅及びマンガンから選択される少なくともいずれかの元素を含む粉末と、を所定の比率で混合して、カリウム、ナトリウム、及びニオブを含むとともに、ドーパントとして銅及びマンガンから選択される少なくともいずれかの元素を含む焼成粉を作製する。
(付記14)
付記12又は13に記載の製造方法であって、好ましくは、
(d)を行った後、(e)酸素含有雰囲気下にて、500℃以上1100℃以下の温度で、1時間以上、前記焼結体に対して熱処理を行う工程をさらに有する。
(付記15)
付記12~14のいずれか1項に記載の製造方法であって、好ましくは、
(a)における加熱温度は、ナトリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の平均径が(b)で作製するカリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の平均径よりも大きくなる温度である。
(付記16)
付記15に記載の製造方法であって、好ましくは、
ナトリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の前記平均径、及び、カリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の前記平均径は、それぞれ、2000~5000倍の倍率で観察した走査電子顕微鏡(SEM)の画像から読み取って算出した値である。
(付記17)
付記12~16のいずれか1項に記載の製造方法であって、好ましくは、
(a)における加熱温度は、ナトリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の平均径が5.0μm以上、より好ましくは10.0μm以上になる温度である。
(付記18)
付記12~17のいずれか1項に記載の製造方法であって、好ましくは、
(a)における加熱温度は1000℃以上である。
(付記19)
付記12~18のいずれか1項に記載の製造方法であって、好ましくは、
(b)では、カリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の平均径が3.0μm以上、好ましくは5.0μm以上になるように、前記カリウムを含む化合物で構成される原料粉体及び前記ニオブを含む化合物で構成される原料粉体の混合比率を調整する。
(付記20)
付記19に記載の製造方法であって、好ましくは、
カリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の前記平均径は、2000~5000倍の倍率で観察した走査電子顕微鏡(SEM)の画像から読み取って算出した値である。
(付記21)
付記12~20のいずれか1項に記載の製造方法であって、好ましくは、
(b)では、カリウム及びニオブを含む前記焼成粉の組成がカリウムリッチな組成となるように、前記カリウムを含む化合物で構成される原料粉体及び前記ニオブを含む化合物で構成される原料粉体の混合比率を調整する。
(付記22)
付記21に記載の製造方法であって、好ましくは、
(b)では、カリウム及びニオブを含む前記焼成粉におけるニオブの組成に対するカリウムの組成の比(K/Nb)が1.005以上になるように、前記カリウムを含む化合物で構成される原料粉体及び前記ニオブを含む化合物で構成される原料粉体の混合比率を調整する。
(付記23)
付記12~22のいずれか1項に記載の製造方法であって、好ましくは、
(c)では、前記混合を、(a)で作製した前記焼成粉と(b)で作製した前記焼成粉とを混合して作製した混合粉の一次粒子の平均径が3.0μm以上、好ましくは5.0μm以上になる条件で行う。
(付記24)
付記12~23のいずれか1項に記載の製造方法であって、好ましくは、
(c)では、(a)で作製した前記焼成粉と(b)で作製した前記焼成粉とを混合して作製した混合粉の粉砕、又は、カリウム、ナトリウム、及びニオブを含む前記焼成粉の粉砕の少なくともいずれかを行い、
前記粉砕を、粉砕後の前記混合粉又は前記焼成粉の一次粒子の平均径が3.0μm以上、好ましくは5.0μm以上になる条件で行う。
(付記25)
付記23又は24に記載の製造方法であって、好ましくは、
前記混合粉又は前記焼成粉の一次粒子の前記平均径は、2000~5000倍の倍率で観察した走査電子顕微鏡(SEM)の画像から読み取って算出した値である。
10 ターゲット材
10s スパッタ面

Claims (17)

  1. カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
    密度が4.2g/cm以下であり、
    ビッカース硬度が30以上200以下であり、
    スパッタ面にて観察される複数の結晶粒の面積平均粒子径が3.0μm以上である
    スパッタリングターゲット材。
  2. 主面の面積が4500mm以上である
    請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
  3. ドーパントとして、銅及びマンガンから選択される少なくともいずれかの元素を、0.1at%以上2.0at%以下の濃度で含む
    請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
  4. 前記スパッタ面にて観察される複数の結晶粒が、主に、ナトリウム及びニオブを含む酸化物で構成される複数の結晶粒と、カリウム及びニオブを含む酸化物で構成される複数の結晶粒と、を含む
    請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
  5. 前記スパッタ面には、ナトリウムの含有量が多い部分と、カリウムの含有量が多い部分と、がそれぞれ点在している
    請求項1に記載のスパッタリングターゲット材。
  6. 前記焼結体に含まれるカリウム原子の含有モル数を[K]、ナトリウム原子の含有モル数を[Na]、ニオブ原子の含有モル数を[Nb]としたとき、([K]+[Na])/[Nb]の値が1.0超である
    請求項1~5のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット材。
  7. カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材の製造方法であって、
    (a)ナトリウムを含む化合物で構成される原料粉体と、ニオブを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて加熱して、ナトリウム及びニオブを含む焼成粉を作製する工程と、
    (b)カリウムを含む化合物で構成される原料粉体と、ニオブを含む化合物で構成される原料粉体と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて加熱して、カリウム及びニオブを含む焼成粉を作製する工程と、
    (c)(a)で作製した前記焼成粉と、(b)で作製した前記焼成粉と、を所定の比率で混合し、酸素含有雰囲気下にて仮焼して、カリウム、ナトリウム、及びニオブを含む焼成粉を作製する工程と、
    (d)(c)で作製した前記焼成粉に対して所定の圧力を加えて圧粉体としつつ、前記圧粉体に対して加熱を行い、焼結体を作製する工程と、を有し、
    (a)における加熱温度を、(b)における加熱温度よりも高くする
    スパッタリングターゲット材の製造方法。
  8. (c)では、(a)で作製した前記焼成粉と、(b)で作製した前記焼成粉と、銅及びマンガンから選択される少なくともいずれかの元素を含む粉末と、を所定の比率で混合して、カリウム、ナトリウム、及びニオブを含むとともに、ドーパントとして銅及びマンガンから選択される少なくともいずれかの元素を含む焼成粉を作製する
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  9. (d)を行った後、(e)酸素含有雰囲気下にて、500℃以上1100℃以下の温度で、1時間以上、前記焼結体に対して熱処理を行う工程をさらに有する
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  10. (a)における加熱温度は、ナトリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の平均径が(b)で作製するカリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の平均径よりも大きくなる温度である
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  11. (a)における加熱温度は、ナトリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の平均径が5.0μm以上になる温度である
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  12. (a)における加熱温度は1000℃以上である
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  13. (b)では、カリウム及びニオブを含む前記焼成粉の一次粒子の平均径が3.0μm以上になるように、前記カリウムを含む化合物で構成される原料粉体及び前記ニオブを含む化合物で構成される原料粉体の混合比率を調整する
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  14. (b)では、カリウム及びニオブを含む前記焼成粉の組成がカリウムリッチな組成となるように、前記カリウムを含む化合物で構成される原料粉体及び前記ニオブを含む化合物で構成される原料粉体の混合比率を調整する
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  15. (b)では、カリウム及びニオブを含む前記焼成粉におけるニオブの組成に対するカリウムの組成の比が1.005以上になるように、前記カリウムを含む化合物で構成される原料粉体及び前記ニオブを含む化合物で構成される原料粉体の混合比率を調整する
    請求項14に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  16. (c)では、前記混合を、(a)で作製した前記焼成粉と(b)で作製した前記焼成粉とを混合して作製した混合粉の一次粒子の平均径が3.0μm以上になる条件で行う
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
  17. (c)では、(a)で作製した前記焼成粉と(b)で作製した前記焼成粉とを混合して作製した混合粉の粉砕、又は、カリウム、ナトリウム、及びニオブを含む前記焼成粉の粉砕の少なくともいずれかを行い、
    前記粉砕を、粉砕後の前記混合粉又は前記焼成粉の一次粒子の平均径が3.0μm以上になる条件で行う
    請求項7に記載のスパッタリングターゲット材の製造方法。
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