JP2023075924A - スパッタリングターゲット材およびスパッタリングターゲット - Google Patents

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Abstract

【課題】特性に優れたスパッタリングターゲット材を提供する。【解決手段】カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの炭素濃度が200ppm以下であるか、25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの炭素濃度が90ppm以下である。【選択図】図1

Description

本開示は、スパッタリングターゲット材およびスパッタリングターゲットに関する。
圧電薄膜を製膜する際の材料として、カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材(以下、KNNターゲット材、あるいは、単にターゲット材ともいう)が用いられる場合がある(例えば特許文献1参照)。
特開2011-146623号公報
本開示の目的は、KNNターゲット材の特性を向上させることにある。
本開示の一態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの炭素濃度が200ppm以下である、
スパッタリングターゲット材が提供される。
本開示の他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの炭素濃度が90ppm以下である、
スパッタリングターゲット材が提供される。
本開示のさらに他の態様によれば、
上述の態様のうちいずれかに記載のスパッタリングターゲット材と、
前記スパッタリングターゲット材に接合されているバッキングプレートと、
を備えるスパッタリングターゲットが提供される。
本開示によれば、KNNターゲット材の特性を向上させることが可能となる。
図1は、本開示のターゲット材10の一態様を示す図である。 図2は、本開示のターゲット材10の製造フローを例示する図である。 図3は、本開示で用いる焼結装置100の概略構成図である。
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1~図3を参照しつつ説明する。
(1)ターゲット材の構成
本態様におけるターゲット材10は、主として、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ニオブ(Nb)、及び酸素(O)を含有する酸化物(アルカリニオブ酸化物)を含む焼結体、すなわち、KNN焼結体によって構成されている。KNN焼結体を主に構成する結晶粒は、ペロブスカイト構造を有している。KNN焼結体は、具体的には、組成式(K1-xNa)NbO(0<x<1)で表され、前記組成式中の係数x[=Na/(K+Na)]は、0<x<1、好ましくは0.4≦x≦0.8である。本態様のターゲット材10を構成するKNN焼結体は、実質的にカリウム、ナトリウム、ニオブ及び酸素からなる酸化物焼結体、もしくは以下に示すドーパント元素をさらに含む酸化物焼結体である。ここで、「実質的」とは、KNN焼結体を構成する全原子の99%以上が、カリウム、ナトリウム、ニオブ、酸素からなること、或いは、KNN焼結体がドーパント元素を含む場合には、カリウム、ナトリウム、ニオブ、酸素及びドーパント元素からなることを意味する。
ターゲット材10におけるK、Na、及びNbの組成((K+Na)/Nb)は、0.90以上1.25以下、より好ましくは0.95以上1.20以下、さらに好ましくは、1.00以上1.10以下の関係を満たしている。なお、ここでの(K+Na)/Nbの式中におけるK、Na、Nbは、それぞれ、KNN焼結体に含まれるK原子、Na原子、Nb原子の個数である。なお、ターゲット材10の組成比は、原料の仕込み量からも見積もれるが、公知の手法により測定することもでき、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES、(例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製のSPS5000等))等により求めることができる。
ターゲット材10には、以下に示す群より選択される少なくとも一種の元素(ドーパント)が、例えば、5at%以下の濃度で添加されている場合がある。ドーパントとしては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、バナジウム(V)、インジウム(In)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、および、ガリウム(Ga)からなる群より選択される少なくとも一種の元素が例示される。上述の元素を複数含有している場合は合計濃度が5at%以下であり、ドーパントの添加量は通常0.1at%以上である。
ターゲット材10は、例えば、円盤状に成型されており、Cu等からなる不図示のバッキングプレート(冷却板)上に、In、Sn及びそれら金属を含む合金等の接合材を介して接合され(貼り付けられ)、スパッタリングターゲットとして利用される。ターゲット材10が有する両主面のうち、冷却板との接合面とは異なる面が、製膜処理を行う際にアルゴン(Ar)等のプラズマに晒される面、すなわち、膜を構成する原子を放出するスパッタ面10sとして用いられる。
ターゲット材10が円盤状の場合、ターゲット材10の主面の直径、好ましくは、スパッタ面10sの直径は特に限定されないが、好ましくは75mm以上、より好ましくは80mm以上、さらに好ましくは90mm以上、さらにより好ましくは100mm以上、特に好ましくは200mm以上である。ターゲット材10の主面の面積、好ましくは、スパッタ面10sの面積は、好ましくは4500mm以上、より好ましくは5000mm以上、さらに好ましくは6000mm以上、さらにより好ましくは7500mm以上、特に好ましくは15000mm以上である。
ターゲット材10は、主面が長方形に構成された板状であってもよく、ターゲット材10の主面の長辺方向の長さ、好ましくは、スパッタ面10sの長辺方向の長さは、好ましくは80mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは120mm以上、さらにより好ましくは150mm以上、特に好ましくは200mm以上である。ターゲット材10の主面の短辺方向の長さ、好ましくは、スパッタ面10sの短辺方向の長さは、好ましくは50mm以上、より好ましくは80mm以上、さらに好ましくは100mm以上である。ターゲット材10の主面の面積、好ましくは、スパッタ面10sの面積は、好ましくは4500mm以上、より好ましくは5000mm以上、さらに好ましくは6000mm以上、さらにより好ましくは7500mm以上、特に好ましくは15000mm以上である。
ターゲット材10の厚さは特に限定されないが、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは5.0mm以上、さらに好ましくは7.5mm以上であり、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下である。
バッキングプレート(冷却板)は、導電性の材料から構成され、金属またはその合金からなり、例えば、Cu、Cu合金、Al、Al合金、Ti、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。冷却板のサイズは、ターゲット材10を接合、支持でき、スパッタリング装置に取り付けることができれば特に限定されないが、ターゲット材10の接合面とほぼ同等の大きさであることが好ましく、より大きいことが好ましい。
詳しくは後述するが、ターゲット材10を製造する際、K,Na,Nbを含む各種の原料粉体を混合し、好ましくは仮焼、粉砕等を行って、原料粉(以下、KNN原料粉)を調製することができる。前記KNN原料粉は、粉体の均質性の観点から、好ましくはK、Na、Nbを固溶した状態で含む酸化物である。そして、本態様においては、所定量のKNN原料粉に対して機械的な圧力を加えることで圧粉体としつつ、同時にこの圧粉体に対してパルス通電による加熱を行うことによって焼結させる、いわゆる、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering、以下、単にSPSともいう)を実施する。
この焼結処理の際、本態様においては、まず、圧粉体に対して、比較的低い機械的加圧条件下で、加熱温度が450℃以上となるようパルス通電加熱を行って、圧粉体中から残留ガス等を排出させる(以下、この処理を、脱ガス、あるいは、低加圧SPSともいう)。その後、脱ガス後の圧粉体に対して、焼結反応を進行させるのに必要な大きさ以上の比較的高い機械的加圧条件下でパルス通電加熱を行って、圧粉体を焼結させる(以下、この処理を本加圧SPSともいう)。
本態様におけるターゲット材10は、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を経て焼結されることから、高い相対密度を有するだけではなく、低加圧SPSを実施することなく本加圧SPSを実施することで焼結されるターゲット材や、いわゆるホットプレス法を用いて焼結させるターゲット材においては発現することのない、新規特徴を備えることとなる。具体的には、本態様におけるターゲット材10は、後述する特徴1~4のうちの少なくともいずれかの特徴を備えることとなる。結果、本態様におけるターゲット材10は、機械的強度等に関する特徴5~8のうちの少なくともいずれかの特徴をさらに備えることとなる。本態様におけるターゲット材10の相対密度は、スパッタ面全域にわたり、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。なお、ここでいう相対密度(%)とは、(実測密度/KNNの理論密度)×100により算出した値である。なお、KNNの理論密度は、例えば、(K/(Na+K))が0.35のKNNにおいては、4.52g/cmである。
本態様におけるターゲット材10は、スパッタ面10sに平行な断面にて観察される数平均粒子径が、例えば0.10μm以上20μm以下、好ましくは0.15μm以上10μm以下、さらに好ましくは0.20μm以上5.0μm以下、特に好ましくは0.25μm以上1.5μm以下の結晶粒で構成されている。また、スパッタ面10sに平行な断面にて観察される面積平均粒子径が、例えば0.10μm以上20μm以下、好ましくは0.20μm以上10μm以下、さらに好ましくは0.30μm以上5.0μm以下、特に好ましくは0.45μm以上2.0μm以下の結晶粒で構成されている。ターゲット材10の数平均粒子径及び面積平均粒子径が上記範囲内であると、ターゲット材10の機械的強度を高めやすくなる。本態様におけるターゲット材10の数平均粒子径及び面積平均粒子径は、好ましくは、それぞれ、ターゲット材10のスパッタ面10sの後方散乱電子回折(Electron Back Scattered Diffraction Pattern、EBSD)像を解析すること等により求めることができる。EBSDでの解析によって求められる結晶粒子径は、計測された結晶粒と同じ面積の円の直径で示され、数平均粒子径Nd(μm)は、EBSD測定においてNumber法によって求めた平均粒子径を採用することができる。Number法では、解析対象となった全面積を結晶粒数で除した値が結晶粒の平均面積となり、[測定領域(μm)/結晶の数]で算出された面積を円に仮定した時の直径が平均粒子径となる。解析に株式会社TSLソリューションズ製結晶方位解析ソフトOIMを使用する場合、ターゲット材10の評価する領域に空隙、欠陥等が多くみられるときは、OIMにて定義される信頼性指数(Confidence Index:CI値)が所定値以下の領域を排除し、[(測定領域-CI値が所定以下の領域)/結晶の数]の値から結晶粒子径を算出することで、より高い精度で平均粒子径を算出することができる。一方、面積平均粒子径Nv(μm)は、Area Fraction法で求めた平均粒子径を採用することができ、Area Fraction法では、各結晶粒の面積が全面積に占める割合を各面積値に乗した値の合計値が結晶粒の平均面積となり、算出された面積を円に仮定した時の直径が平均粒子径となる。なお、EBSD解析においては、結晶方位差が一定値以上、例えば15°以上の境界を結晶粒界とみなすことで、数平均粒子径Nd(μm)及び面積平均粒子径Nv(μm)を求めることができる。
また、数平均粒子径Nd(μm)及び面積平均粒子径Nv(μm)は、それぞれ、以下の式を用いて算出される値を採用してもよい。以下の式において、dは、観察された結晶粒の粒子径(μm)を、nは、観察された粒子径d(μm)を有する結晶粒の個数を、それぞれ示している。dは、観察された結晶粒の面積と等しい面積を有する真円の直径、すなわち、円相当径(μm)である。
数平均粒子径Nd(μm)=Σ(d×n)/Σn
面積平均粒子径Nv(μm)=Σ(d ×n)/Σ(d ×n
面積平均粒子径Nv(μm)は、粒子面積の大きさに応じて重みづけされた平均値となる。一部の結晶粒が、他の結晶粒に比べて大きく成長した場合、面積平均粒子径Nv(μm)は、数平均粒子径Nd(μm)に比べて大きくなるが、本態様におけるターゲット材10の面積平均粒子径Nv(μm)と数平均粒子径Nd(μm)との差は小さく、前記差(Nv-Nd)が好ましくは1.1μm以下、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.75μm以下、特に好ましくは0.50μm以下であり、また、(Nv-Nd)/Ndの値が小さく、前記値が好ましくは2.1以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.80以下、さらにより好ましくは0.70以下、特に好ましくは0.60以下、特により好ましくは0.50以下であり、粒子径の均一性に優れている。なお、本態様におけるターゲット材10の数平均粒子径及び面積平均粒子径については、後述する製造工程において、酸素含有雰囲気もしくは大気中での熱処理(以下、酸化処理と称することもある)を省略した場合、および、酸化処理を実施した場合、のいずれにおいても同等の値を示す。
以下に、本態様のターゲット材10が備え得る種々の新規特徴について説明する。
(特徴1)
ターゲット材10が備え得る特徴の一つとして、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの炭素濃度が200ppm以下である、
ことが挙げられる。
この特徴は、後述する製造工程において、酸化処理を省略した場合に発現し得るものである。ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)中に含まれる炭素濃度は、燃焼-赤外線吸収法を用いて求めることができる。
本態様におけるターゲット材10では、その製造過程において、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を採用している。これにより、低加圧SPSを実施することなく本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合に比べ、焼結対象となる圧粉体中から炭素含有ガス等を脱離させることが可能となり、上述の特徴が得られるようになる。なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、上述の特徴は得られない。
(特徴2)
ターゲット材10が備え得る特徴の一つとして、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの炭素濃度が90ppm以下である、
ことが挙げられる。
この特徴は、後述する製造工程において、酸化処理を実施した場合に発現し得るものである。
本態様におけるターゲット材10では、その製造過程において、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を採用している。これにより、低加圧SPSを実施することなく本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合に比べ、焼結対象となる圧粉体中から炭素含有ガス等を脱離させることが可能となり、上述の特徴が得られるようになる。なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、上述の特徴は得られない。
(特徴3)
ターゲット材10が備え得る特徴の一つとして、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの炭素成分の含有量が、ターゲット材10の質量1mgに対し、二酸化炭素及び一酸化炭素に換算した合計が5.0×10-9mol以下(すなわち、5.0×10-9mol/mg以下)である、
ことが挙げられる。
この特徴は、後述する製造工程において、酸化処理を省略した場合に発現し得るものである。ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)中に含まれる炭素成分の量は、昇温脱離ガス分析法(TDS分析)を用いて求めることができる。
ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)中に含まれる炭素成分は、昇温脱離ガス分析により二酸化炭素や一酸化炭素として全てが脱離することはなく、例えば、ターゲット材10中に取り込まれたまま脱離しない場合もある。そこで、本態様においては、ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)中に含まれる炭素成分の量とは、ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)を700℃~1000℃に加熱した際に脱離した二酸化炭素及び一酸化炭素として定量し得た合計値を示すこととする。
本態様におけるターゲット材10では、その製造過程において、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を採用している。これにより、低加圧SPSを実施することなく本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合に比べ、焼結対象となる圧粉体中から炭素含有ガス等を脱離させることが可能となり、上述の特徴が得られるようになる。なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、上述の特徴は得られない。
(特徴4)
ターゲット材10が備え得る特徴の一つとして、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの炭素成分の含有量が、ターゲット材10の質量1mgに対し、二酸化炭素及び一酸化炭素に換算した合計が4.0×10-9mol以下(すなわち、4.0×10-9mol/mg以下)である、
ことが挙げられる。
この特徴は、後述する製造工程において、酸化処理を実施した場合に発現し得るものである。
ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)中に含まれる炭素成分は、昇温脱離ガス分析により二酸化炭素や一酸化炭素として全てが脱離することはなく、例えば、ターゲット材10中に取り込まれたまま脱離しない場合もある。そこで、本態様においては、ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)中に含まれる炭素成分の量とは、ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)を700℃~1000℃に加熱した際に脱離した二酸化炭素及び一酸化炭素として定量し得た合計値を示すこととする。
本態様におけるターゲット材10では、その製造過程において、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を採用している。これにより、低加圧SPSを実施することなく本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合に比べ、焼結対象となる圧粉体中から炭素含有ガス等を脱離させることが可能となり、上述の特徴が得られるようになる。なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、上述の特徴は得られない。
(特徴5)
ターゲット材10が備え得る特徴の一つとして、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの、ビッカース硬度が460以上であり、抗折強度が90MPa以上である、
ことが挙げられる。
この特徴は、後述する製造工程において、酸化処理を省略した場合に発現し得るものである。なお、ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)のビッカース硬度(Hv)は、JIS R 1610:2003に準拠し、ビッカース硬度計を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。また、ターゲット材10(もしくはKNN焼結体)の抗折強度は、JIS R 1601:2008に準拠し、3点曲げ試験により求めることができ、例えば実施例に記載の方法により測定することができる。
本態様におけるターゲット材10では、その製造過程において、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を採用することにより、上述の特徴1~4のうちの少なくともいずれかの特徴が得られるようになる。結果、ターゲット材10のビッカース硬度を高めつつ、抗折強度をも高めることが可能となる。なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、上述の特徴1~4が発現しなくなり、酸化処理を省略した場合(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満である場合)において、ビッカース硬度あるいは抗折強度のうち少なくともいずれかについての上述の特徴は得られない。
(特徴6)
ターゲット材10が備え得る特徴の一つとして、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの、ビッカース硬度が250以上であり、抗折強度が90MPa以上である、
ことが挙げられる。
この特徴は、後述する製造工程において、酸化処理を実施した場合に発現し得るものである。
本態様におけるターゲット材10では、その製造過程において、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を採用することにより、上述の特徴1~4のうちの少なくともいずれかの特徴が得られるようになる。結果、ターゲット材10のビッカース硬度を高めつつ、抗折強度をも高めることが可能となる。なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、上述の特徴1~4が発現しなくなり、酸化処理を実施した場合(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上である場合)において、ビッカース硬度あるいは抗折強度のうち少なくともいずれかについての上述の特徴は得られない。
(特徴7)
ターゲット材10が備え得る特徴の一つとして、
大気中、900℃、5時間の条件下で熱処理を行った後のビッカース硬度が、熱処理を行う前のビッカース硬度に対して、50%を超える大きさに維持される、
ことが挙げられる。
この特徴は、後述する製造工程において、酸化処理を省略した場合、および、酸化処理を実施した場合、のいずれにおいても発現し得るものである。
本態様におけるターゲット材10では、その製造過程において、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を採用することにより、上述の特徴1~4のうちの少なくともいずれかの特徴が得られるようになり、結果、熱処理前後のビッカース硬度に関して、上述の特徴が得られるようになる。なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、上述の特徴1~4が発現しなくなり、上述の特徴は得られない。
(特徴8)
ターゲット材10が備え得る特徴の一つとして、
大気中、900℃、5時間の条件下で熱処理を行った後の相対密度が、熱処理を行う前の相対密度に対して、95%を超える大きさに維持される、
ことが挙げられる。
この特徴は、後述する製造工程において、酸化処理を省略した場合、および、酸化処理を実施した場合、のいずれにおいても発現し得るものである。
本態様におけるターゲット材10では、その製造過程において、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を採用することにより、上述の特徴1~4のうちの少なくともいずれかの特徴が得られるようになり、結果、熱処理前後の相対密度に関して、上述の特徴が得られるようになる。なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、上述の特徴1~4が発現しなくなり、上述の特徴は得られない。
(2)ターゲット材の製造方法
本態様におけるターゲット材10の製造方法の好適な実施形態について、図2、図3を参照しながら詳細に説明する。
(出発原料粉準備)
まず、出発原料粉として、Kを含む粉、Naを含む粉、Nbを含む粉、例えば、炭酸カリウム(KCO)粉、炭酸ナトリウム(NaCO)粉、五酸化ニオブ(Nb)粉を用意する。
なお、ここでいう「Kの化合物からなる粉体」は、Kの化合物を主成分とする粉体を意味し、Kの化合物の粉体のみで構成される場合の他、主成分であるKの化合物の粉体に加えて他の化合物の粉体が含まれる場合もある。同様に、「Naの化合物からなる粉体」は、Naの化合物を主成分とする粉体を意味し、Naの化合物の粉体のみで構成される場合の他、主成分であるNaの化合物の粉体に加えて他の化合物の粉体が含まれる場合もある。「Nbの化合物からなる粉体」は、Nbの化合物を主成分とする粉体を意味し、Nbの化合物の粉体のみで構成される場合の他、主成分であるNbの化合物の粉体に加えて他の化合物の粉体が含まれる場合もある。Kの化合物とは、Kの酸化物、Kの複合酸化物、及び加熱することにより酸化物となるKの化合物からなる群より選択される少なくとも一種であり、例えば、上記に示す炭酸塩の他、シュウ酸塩等が挙げられる。Naの化合物とは、Naの酸化物、Naの複合酸化物、及び加熱することにより酸化物となるNaの化合物からなる群より選択される少なくとも一種であり、例えば上記に示す炭酸塩の他、シュウ酸塩等が挙げられる。Nbの化合物とは、Nbの酸化物、Nbの複合酸化物、又は加熱することにより酸化物となるNbの化合物からなる群より選択される少なくとも一種であり、例えば上記に示す五酸化ニオブ等が挙げられる。
また必要に応じ、出発原料粉として、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Zn、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaからなる群より選択される少なくとも一種のドーパント元素を含む粉末、例えば、該元素単体の粉末、該元素を含む酸化物粉末、該元素含む複合酸化物粉末、及び加熱することにより酸化物となる該元素を含む化合物(例えば、炭酸塩、シュウ酸塩)の粉末を用意する。
なお、これら出発原料粉の平均粒子径は、例えば、メジアン径D50が1mm未満であることが好ましく、必要に応じ、秤量前に出発原料粉を予め粗粉砕等しておくことが好ましい。
(秤量、混合)
続いて、出発原料粉のそれぞれを秤量し、最終的に得られるターゲット材10の組成が所望の組成となるように、出発原料粉の混合比率を調整する。秤量は、大気中で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気中、真空中及び乾燥空気雰囲気中等、湿度が小さい雰囲気中で行うことが好ましく、また、各出発原料粉を十分に乾燥させてから行うことが好ましい。続いて、秤量後の出発原料粉を、ヘンシェルミキサー、ブレンダー、リボンミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、インテンシブミキサー、自動乳鉢等の混合器を用いて乾式で混合する。
(一次焼成、粗粉砕)
得られた混合粉を、電気炉等を用いて、大気下、酸素ガス雰囲気下等の酸化性雰囲気下にて、一次焼成して、K,Na,Nbを含む焼成物を得る。好ましくは、一次焼成において、原料の混合粉を固相反応させることで、K,Na,Nbが固溶状態となった焼成物を得る。その後、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、アトライタ、ジェットミル、アトマイザー、カッターミル等の粉砕手段を用い、得られた焼成物を粗粉砕することで、焼成粉(以下、KNN焼成粉)を得る。一次焼成にて、K,Na,Nbを固溶状態とした場合には、K,Na,Nbが固溶状態であるKNN焼成粉(以下、KNN固溶粉)を得ることができる。
一次焼成を行う際の加熱温度は、好ましくは500℃以上、より好ましくは550℃以上、さらに好ましくは600℃以上であり、好ましくは750℃以下、より好ましくは700℃以下である。加熱温度が上記下限以上であると、K,Na,Nbを固溶状態であるKNN固溶粉を得やすく、また均質性の高い焼成粉を得やすい。加熱温度が上記上限以下であると、KNN焼成粉及びKNN固溶粉のBET比表面積を大きくしやすく、焼結性の高い焼成粉を得やすい。
一次焼成の時間は、特に限定されないが、好ましくは3時間以上20時間以下、より好ましくは4時間以上15時間以下、さらに好ましくは5時間以上10時間以下である。
(仮焼、粗粉砕)
得られたKNN焼成粉(もしくはKNN固溶粉)を、さらに大気下、酸素ガス雰囲気下等の酸化性雰囲気下にて仮焼し、その後、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、アトライタ、ジェットミル、アトマイザー等の粉砕手段で粗粉砕することでKNN仮焼粉を得る。該仮焼を行うことにより、KNN焼成粉から、水分、炭素成分、塩素等の不純物を除去でき、純度の高いKNN仮焼粉を得ることができる。
仮焼を行う際の加熱温度は、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上、さらに好ましくは650℃以上、特に好ましくは700℃以上であり、好ましくは1150℃以下、より好ましくは1100℃以下、さらに好ましくは1000℃以下である。加熱温度が上記下限以上であると、純度の高いKNN仮焼粉を得やすく、加熱温度が上記上限以下であると、BET比表面積が大きく、焼結性の高いKNN原料粉を得やすくなる。
仮焼時の加熱時間は、特に限定されないが、好ましくは3時間以上50時間以下、より好ましくは3.5時間以上30時間以下、さらに好ましくは4時間以上20時間以下、特に好ましくは5時間以上12時間以下である。
該仮焼の工程においては、不純物を除去しやすい観点から、異なる加熱温度において、多段階の熱処理を行ってもよい。
(微粉砕)
粗粉砕により得られたKNN仮焼粉を、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、アトライタ、アトマイザー及びジェットミル等の粉砕手段、好ましくはジェットミルを用いてさらに粉砕し、必要に応じて粉砕後に乾燥を行うことにより、所定の仕様(比表面積、不純物濃度等)を有するKNN原料粉を得る。
例えば、ジェットミルで仮焼粉の粉砕を行う場合、処理速度は、1.0kg/h以上8.0kg/h以下、好ましくは1.2kg/h以上6.0kg/h以下、より好ましくは1.5kg/h以上3.0kg/h以下である。また、導入圧は、0.1MPa以上2.0MPa以下、好ましくは0.5MPa以上1.8MPa以下、より好ましくは1.0MPa以上1.7MPa以下であり、粉砕圧は、0.1MPa以上2.0MPa以下、好ましくは0.5MPa以上1.8MPa以下、より好ましくは1.0MPa以上1.7MPa以下である。上記条件で仮焼粉の粉砕を行うと、BET比表面積が大きく、焼結性の高い原料粉を得やすくなる。
以上の工程を経ることで、本態様のSPS焼結に用いるKNN原料粉が得られる。KNN原料粉のBET比表面積は、好ましくは1.0m/g以上、より好ましくは2.0m/g以上、さらに好ましくは2.5m/g以上、特に好ましくは3.0m/g以上であり、好ましくは11m/g以下、より好ましくは10m/g以下、さらに好ましくは8.0m/g以下、さらにより好ましくは7.0m/g以下、特に好ましくは6.0m/g以下である。KNN原料粉のBET比表面積が上記下限値以上であると、焼結性が高まり、高密度なKNN焼結体が得られやすい。また、KNN原料粉のBET比表面積が上記上限値以下であると、製造後の原料粉へ吸着するガス成分(例えば、大気中に含まれるガス成分、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン等)や水分を減らすことができ、不純物や空隙の少ないKNN焼結体が得られやすい。KNN原料粉のBET比表面積は、ガス吸着装置により測定でき、実施例に記載の方法により求められる。得られたKNN原料粉は、必要に応じ、例えば、180~200℃の条件下で加熱して乾燥させて用いられる。
また、該KNN原料粉に含まれる炭素の濃度は、好ましくは250ppm以下、好ましくは200ppm以下である。
本態様のSPS焼結に用いるKNN原料粉は、水酸化カリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液と出発原料粉であるNb粉とを高温高圧の熱水中で反応させる、いわゆる、水熱合成法を用いて得たKNbO粉末及びNaNbO粉末を混合して得ることもできる。水熱合成して得た反応物に対し、例えば固液分離、水洗、及び乾燥等を行うことによって酸化物粉末(KNbO粉末、NaNbO粉末)を得ることができ、得られたKNbO粉末及びNaNbO粉末を所定の割合で混合することでKNN原料粉を得ることができる。
水熱合成における反応を促進させる観点から、熱水の温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上であり、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下であり、熱水の圧力は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上、さらに好ましくは0.5MPa以上、さらにより好ましくは1.0MPa以上、特に好ましくは1.5MPa以上であり、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下、さらに好ましくは3MPa以下である。
水熱合成によりKNN原料粉を調製することで、KNN原料粉に含まれる炭素の濃度をより低減できる。結果、水熱合成により調製したKNN原料粉を用いることで、KNN焼結体の炭素濃度をさらに低減することが可能となる。
また、水熱合成により得たKNN原料粉に対して、上述の焼成等の処理を行うことにより、K、Na、Nbが固溶したKNN原料粉(KNN固溶粉)を得ることができる。また、所望の組成になるように、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、及びNb粉を予め混合し、該混合物を高温高圧の熱水中で反応させることによっても、K、Na、Nbが固溶したKNN原料粉を得ることができる。また、水熱合成により調製したKNN原料粉やKNN固溶粉に対しても、所望のBET比表面積にするために、上述の焼成や粉砕の処理を行っても良い。
なお、上述した、一次焼成、粗粉砕、仮焼、粗粉砕、ジェットミル粉砕といった処理は、必要に応じて、一部あるいは全てを繰り返し実施することができ、また、いずれかの処理を省略することができる。また、これらの処理の完了後、あるいは、各処理の合間に、篩分け処理等を追加することができる。混合や粉砕の手段は、上述の例示に限定されることなく、他の粉砕手段から広く採用することができ、また、その際の条件も、上述の仕様を得る目的に応じて広く選択することができる。
次いで、低加圧SPS、本加圧SPS工程の好適な一実施形態について、図3を参照しながら説明する。図3は、これらの工程で用いる焼結装置100の概略構成図である。焼結装置100は、チャンバ101、ダイス102、パンチ103,104、加圧装置105,106、真空ポンプ110、圧力計111、パルス通電装置120等を備えている。
(低加圧SPS)
まず、上述の仕様を有する所定量のKNN原料粉を、筒状のダイス(焼結用型)102内に充填する。次いで、KNN原料粉が充填されたダイス102を、チャンバ101内に収容し、上下一対のパンチ103,104の間に配置する。そして、真空ポンプ110を用いてチャンバ101内を真空排気しながら、チャンバ101内の圧力を圧力計111によってモニタする。ダイス102及びパンチ103,104は導電性の材料であればよいが、好ましくはグラファイト等のカーボン材である。
チャンバ101内が所望の圧力となったら、加圧装置105,106を作動させ、ダイス102内に充填されたKNN原料粉に対し、パンチ103,104を介して機械的な圧力を加えつつ、パルス通電装置120を用いて、KNN原料粉に対するパルス通電による加熱を開始する。パルス通電の開始により、KNN原料粉が加圧されてなる圧粉体の温度は、室温(25℃)程度の開始時温度から、以下に示す所定の脱ガス時温度にまで、次第に上昇することとなる。
この脱ガス時温度は、450℃以上であり、以下に示す本加圧SPSにおける焼結時温度と同程度の温度とすることができるが、この際に加える機械的圧力(脱ガス時圧力)は、本加圧SPSにおける機械的圧力(焼結時圧力)に比べてずっと小さなものとする。これにより、低加圧SPSにおいては、圧粉体中におけるKNN原料粉の焼結反応が緩やかに進行しつつ、同時に行う加熱による圧粉体中からの脱ガスが生じやすくなる。
該低加圧SPS工程における機械的圧力は、SPS装置にて、安定した通電が可能であればよいが、圧粉体中から残留ガスを排出させやすい観点から、好ましくは1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上、さらにより好ましくは8MPa以上であり、また好ましくは15MPa以下、より好ましくは12MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下である。
また、該低加圧SPS工程における脱ガス時温度は、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上、さらに好ましくは700℃以上、さらにより好ましくは800℃以上、特に好ましくは900℃以上であり、また好ましくは1200℃以下、より好ましくは1100℃以下である。低加圧SPS工程における脱ガス時温度が上記範囲内であると、残留ガスを排出させやすく、機械的強度の高い焼結体が得られやすい。
上記脱ガス時温度での加熱時間は、特に限定されず、昇温時間を十分に設けることで一定時間前記加熱温度以上で加熱することにしてもよいし、脱ガス時温度に達した状態を一定時間保持してもよい。脱ガス時温度に達した状態を保持する場合、その保持時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは20分以上であり、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下、さらに好ましくは3時間以下、さらにより好ましくは60分以下、特に好ましくは50分以下、特により好ましくは40分以下である。
また、低加圧SPSにおいては、パルス通電による加熱を行うため、電磁的エネルギー、ジュール加熱、粒子間に発生する放電プラズマ等の作用により、結晶粒の表面に吸着している残留ガス(例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、水分の他、塩素系の不純物等を含むガス分子)を、結晶粒の表面から効率的に脱離させ、圧粉体中から放出させることが可能となる。低加圧SPSでは、KNN原料粉の焼結反応を生じさせつつも、結晶粒の過度な成長を抑制しながら、効率よく圧粉体からの脱ガスを行うことができるため、圧粉体中の空隙を縮小させ、圧粉体を緻密化させることが可能となる。すなわち、圧粉体中に含まれる結晶粒周囲の余剰空間を減らし、結晶粒を、より高密度に凝縮させた状態とすることが可能となる。
圧粉体からのガス放出が始まると、チャンバ101内の圧力が上昇するが、圧粉体からのガス放出が完了すると、チャンバ101内の圧力が再び低下する。したがって、この圧力変化を圧力計111によりモニタすることで、低加圧SPSの完了タイミングを決定することができる。
低加圧SPSを行う際のその他条件としては、以下が例示される。
圧粉体温度(開始時温度):室温(25℃)~80℃
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa以下
(本加圧SPS)
圧粉体からのガス放出が完了したら、チャンバ101内の排気を継続しつつ、また、パルス通電装置120を用いたパルス通電による加熱を継続しつつ、圧粉体に加える機械的圧力を、低加圧SPSにおける機械的圧力よりも大きくする。この際に加える機械的圧力(焼結時圧力)は、圧粉体の焼結反応を十分に進行させるのに必要な大きさ以上の圧力とする。
該本加圧SPS工程における機械的圧力は、高密度かつ割れに強い焼結体が得られる観点から、好ましくは25MPa以上、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは35MPa以上であり、好ましくは70MPa以下、より好ましくは60MPa以下、さらに好ましくは50MPa以下である。
また、該本加圧SPS工程における加熱温度は、高密度かつ割れに強い焼結体が得られる観点から、好ましくは700℃以上、より好ましくは750℃以上、さらに好ましくは800℃以上、さらにより好ましくは850℃以上、特に好ましくは900℃以上であり、また好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下、さらに好ましくは980℃以下、特に好ましくは960℃以下である。
上記加熱温度での加熱時間は、特に限定されず、昇温時間を十分に設けることで一定時間前記加熱温度以上で加熱することにしてもよいし、所定の加熱温度に達した状態を一定時間保持してもよい。加熱温度を一定時間保持する場合、その保持時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは15分以上、さらに好ましくは20分以上であり、好ましくは240分以下、より好ましくは180分以下、さらに好ましくは120分以下である。
この処理を行うことにより、圧粉体を焼結させ、高密度な焼結体を得ることが可能となる。SPSを用いた焼結処理では、ホットプレスを用いた焼結処理に比べて、低い焼結温度で短時間のうちに均一に焼結を進行させることができ、これにより、焼結体の結晶粒の粒成長を抑制でき、また、焼結体を緻密化させることが可能となる。
本加圧SPSを行う際の他の条件としては、以下が例示される。
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa以下
上記に、低加圧SPS及び本加圧SPSについて一実施形態を例示したが、前記SPS焼結は、不活性雰囲気下、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素等の不活性ガスからなる雰囲気下で行ってもよい。
(酸化処理)
なお、低加圧SPSや本加圧SPSを実施すると、圧粉体からの炭素成分等の不純物の脱離等が生じる一方、酸化物焼結体の一部の酸素の脱離が生じ、最終的に得られるターゲット材10の絶縁性が若干低下する場合がある。そのため、必要に応じ、本加圧SPSを実施した後、酸素含有雰囲気下で酸化物焼結体に対して熱処理を行い高抵抗化させ、その絶縁性を回復させるようにしてもよい。また、該酸化処理によって、SPS焼結時に残った不純物をさらに低減することもできる。
該酸化処理は、大気及び酸素含有雰囲気等の酸化性雰囲気下で、500℃以上1100℃以下、好ましくは700℃以上1050℃以下、より好ましくは800℃以上1020℃以下、さらに好ましくは850℃以上1000℃以下の加熱温度で行われる。加熱時間は、1時間以上40時間以下、好ましくは2時間以上20時間以下、より好ましくは3時間以上10時間以下、さらに好ましくは4時間以上7時間以下である。
なお、酸化処理は、必要に応じて省略することも可能である。酸化処理を省略した場合には、最終的に得られるターゲット材10は、例えば、25℃において6.0×1011Ω・cm未満の体積抵抗率を有することになる。また、酸化処理を実施した場合には、最終的に得られるターゲット材10は、例えば、25℃において6.0×1011Ω・cm以上の体積抵抗率を有することになる。
(仕上げ加工・バッキングプレートへの接合)
その後、必要に応じて、焼結体を、例えば、面積が4500mm以上、厚さ3mm以上の寸法を有する円盤型に研削加工したり、表面を研磨して表面状態を調整することで、本態様におけるターゲット材10が得られる。ターゲット材10は、Cu等からなるバッキングプレートに、In、Sn及びそれら金属を含む合金等の接合材を介して接合され、スパッタリングターゲットとして用いられる。
(3)効果
本態様によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
(a)本態様におけるターゲット材10は、低加圧SPSを実施してから本加圧SPSを実施するという新規手法を経ることで焼結されることから、上述の特徴1~4のうちの少なくともいずれかの特徴を備えることとなる。
結果、本態様におけるターゲット材10は、機械的強度等に関する上述の特徴5~8のうちの少なくともいずれかの特徴をさらに備えることとなる。
なお、特徴5,6に示す特性を有するターゲット材10は、ターゲット材10を製造する際の研削等の機械加工中においても、また、ターゲット材10を用いたスパッタリング製膜中においても、割れ、欠け等が生じにくくなる。また、スパッタリング製膜中において、割れ、欠けに起因する異常放電が発生しにくくなることから、得られるスパッタリング膜(圧電薄膜)についての組成変化や特性低下を抑制できるようになる。
また、特徴7,8に示す特性を有するターゲット材10は、熱処理の前後にわたり、ビッカース硬度や相対密度が変化しにくいことから、ターゲット材10が高温になるスパッタリング製膜処理等において、安定して用いることができるようになる。
なお、低加圧SPSを実施せずに本加圧SPSを実施して焼結させる場合や、ホットプレス法を用いて焼結させる場合には、特徴1~4はいずれも発現せず、結果、特徴5~8に示す特徴はいずれも得られない。
(b)ターゲット材10の製造条件を上述の条件範囲内から適宜選択することにより、酸化処理を省略した場合(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満である場合)において、炭素濃度を、200ppm以下とするだけでなく、好ましくは180ppm以下、より好ましくは150ppm以下、さらに好ましくは110ppm以下、さらにより好ましくは100ppm以下、特に好ましくは90ppm以下、特により好ましくは80ppm以下、特にさらに好ましくは60ppm以下とすることが可能となる。
また、ターゲット材10の製造条件を上述の条件範囲内から適宜選択することにより、酸化処理を実施した場合(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上である場合)において、炭素濃度を、90ppm以下とするだけでなく、好ましくは80ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、さらにより好ましくは30ppm以下、特に好ましくは20ppm以下とすることが可能となる。
さらに、ターゲット材10の製造条件を上述の条件範囲内から適宜選択することにより、酸化処理の有無にかかわらず、炭素濃度を、90ppm以下とするだけでなく、好ましくは80ppm以下、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは60ppm以下、さらにより好ましくは50ppm以下とすることが可能となる。
さらに、ターゲット材10の製造条件を上述の条件範囲内から適宜選択することにより、酸化処理を省略した場合(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満である場合)において、炭素成分の含有量を、5.0×10-9mol/mg以下とするだけではなく、好ましくは4.5×10-9mol/mg以下、より好ましくは4.0×10-9mol/mg以下、さらに好ましくは3.5×10-9mol/mg以下、さらにより好ましくは3.0×10-9mol/mg以下、特に好ましくは2.5×10-9mol/mg以下とすることが可能となる。
さらに、ターゲット材10の製造条件を上述の条件範囲内から適宜選択することにより、酸化処理を実施した場合(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上である場合)において、炭素成分の含有量を、4.0×10-9mol/mg以下とするだけではなく、好ましくは3.0×10-9mol/mg以下、より好ましくは2.7×10-9mol/mg以下、さらに好ましくは2.5×10-9mol/mg以下、さらにより好ましくは2.0×10-9mol/mg以下、特に好ましくは1.0×10-9mol/mg以下とすることが可能となる。
これらの場合、ターゲット材10の機械的強度をさらに向上させることが可能となる。
具体的には、酸化処理を省略した場合(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満である場合)において、ビッカース硬度を、460以上とするだけでなく、好ましくは470以上、より好ましくは480以上、さらに好ましくは490以上、さらにより好ましくは500以上、特に好ましくは510以上とすることが可能となる。また、抗折強度を、90MPa以上とするだけでなく、好ましくは100MPa以上、より好ましくは110MPa以上、さらに好ましくは120MPa以上、さらにより好ましくは130MPa以上とすることが可能となる。
また、酸化処理を実施した場合(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上である場合)において、ビッカース硬度を、210以上とするだけでなく、好ましくは250以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは350以上、さらにより好ましくは400以上、特に好ましくは450以上、特により好ましくは500以上とすることが可能となる。また、抗折強度を、90MPa以上とするだけでなく、好ましくは100MPa以上、より好ましくは110MPa以上、さらに好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは130MPa以上とすることが可能となる。
また、これらの結果、ターゲット材10におけるビッカース硬度や相対密度の熱処理前後にわたる安定性をさらに向上させることが可能となる。
具体的には、大気中、900℃、5時間の条件下で熱処理を行った後のビッカース硬度を、熱処理を行う前のビッカース硬度に対して、50%超の大きさとするだけでなく、好ましくは70%超、より好ましくは90%超、より好ましくは95%超、より好ましくは100%超の大きさとすることが可能となる。
また、大気中、900℃、5時間の条件下で熱処理を行った後の相対密度を、熱処理を行う前の相対密度に対して、95%超の大きさとするだけでなく、好ましくは97%超、より好ましくは99%超、より好ましくは100%超の大きさとすることが可能となる。
なお、炭素濃度の下限値については、特に制限はない。ただし、炭素濃度を0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、より好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは3ppm以上、さらにより好ましくは5ppm以上とすることにより、スパッタリング中の熱負荷によって発生する応力を緩和でき、特にスパッタリング時のターゲット材10の割れ、欠けを、より確実に抑制できるようになり、好ましい。
なお、炭素成分の含有量の下限値については、特に制限はない。ただし、炭素成分の含有量を0.01×10-9mol/mg以上、好ましくは0.02×10-9mol/mg以上、より好ましくは0.05×10-9mol/mg以上、さらに好ましくは0.1×10-9mol/mg以上とすることにより、スパッタリング中の熱負荷によって発生する応力を緩和でき、特にスパッタリング時のターゲット材10の割れ、欠けを、より確実に抑制できるようになり、好ましい。
<本開示の他の態様>
以上、本開示の種々の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。まず、実施例及び比較例にて作製したターゲット材を測定する際に用いた、装置、条件、方法等について説明する。
<ターゲット材の結晶粒子径>
試料調製:研磨法により実施(評価に支障の出る大きな傷が無くなるまで、耐水研磨紙で研磨後、バフ研磨を実施した。)
装置:株式会社日立ハイテク製 超高分解能分析走査電子顕微鏡 SU-70
株式会社TSLソリューションズ製 EBSD検出器
解析ソフト:株式会社TSLソリューションズ製 OIM Analysis Ver8
測定倍率:3000倍
測定領域:30μm×50μm
ステップサイズ:0.06μm
粒界角:15°
KNNの結晶情報:X線回折法により、空間群、格子定数を求め、以下の表1に示す情報を使用した。
分析方法:ノイズ除去のため、クリーンアップ処理を行い、粒界角15°(結晶方位差15°以上の境界を結晶粒界とみなした)の条件で粒界マップを作成し、粒子径を解析した。ボイド等が存在する場合は、IQ(Image Quality)値に閾値を設けた。EBSDのNumber法、Area Fraction法を用いて各粒子の面積、粒子径(円相当径)を算出し、数平均粒子径及び面積平均粒子径を求めた。また、粒子径算出の際は、結晶性が悪く分析が出来ない部分や微結晶をノイズとして除去するため、0.20μm以上の粒子を計算対象とした。
<ビッカース硬度>
実施例及び比較例のターゲット材のビッカース硬度は、以下の装置、条件、方法を用いて測定した。
装置:株式会社ミツトヨ製 マイクロビッカース硬さ試験機 HM-114
雰囲気:大気中
温度:室温(25℃)
試験力:1.0kgf
荷重印加速度:10μm/s
保持時間:15sec
測定点数:5point
試験方法:本試験はJIS R 1610に準拠し、ビッカース圧子(向かいあった二つの面のなす角度が136度である底面が正方形の四角すい圧子)を用いて、試験面にくぼみをつけたときの試験力と、くぼみの対角線長さから求めたくぼみ表面積とからビッカース硬さを求めて、5点の測定結果から平均を求めた。
<抗折強度>
実施例及び比較例のターゲット材の抗折強度は、以下の装置、条件、方法を用いて測定した。
装置:インストロン社製 万能試験機 5582型(ロードセル500N)
雰囲気:大気中
温度:室温(25℃)
試験速度:0.5mm/min
支点間距離:L=30mm
ジグ材質:SiC
試験方法:JIS R 1601に準拠し、3点曲げ試験により評価した。試験片(サイズ:3mm×4mm×40mm)を、一定距離(30mm)に配置された2支点上に置き、支点間の中央の1点に荷重を加えて折れたときの最大荷重より、曲げ強さを求めた。
<相対密度>
実施例及び比較例のターゲット材の相対密度については、以下の装置、方法を用いて測定した。
装置:アルファミラージュ製 電子比重計 MDS300
試験方法:所定のサイズに切り出したターゲット材について、上記装置を用い、アルキメデス法にて、密度を測定した。求めた密度を、KNNの理論密度(4.52g/cm)で割ることにより、相対密度(%)(=実測密度/理論密度×100)を求めた。
<炭素濃度>
実施例及び比較例のターゲット材の炭素濃度(炭素不純物量)は、燃焼-赤外線吸収法を用いて測定した。具体的には、高温炉を使用して切り出したターゲット材サンプルを急速に加熱し、サンプルから発生したCO、COを分離し、赤外線測定にて炭素濃度を求めた。
<炭素成分量分析>
実施例及び比較例のターゲット材に含まれる炭素成分の量は、以下の装置、条件、方法を用いて、TDS分析により求めた。
装置:電子科学製TDS1200II
温度条件
・測定温度 RT-1200℃(30℃/min)
・制御熱電対 T1
・試料ステージ 石英ステージ/SIC皿/サンプル/石英丸蓋
四重極質量分析計(QMS)
・イオン化法 電子イオン化
・測定モード Barモード(整数質量数測定モード)
・測定範囲 m/z 1-100(積算時間50ms/ch)
分析方法:実施例、比較例の酸化処理前及び酸化処理後のターゲット材の一部を取り出し、大気中にて乳鉢でざらつき感がなくなるまで(1次粒子径が50μm未満)粉砕し、粉砕粉約3mgを用意した。室温から1200℃まで加熱し、質量分析装置にて、マスナンバー(m/z)28の成分(一酸化炭素)及びマスナンバー44の成分(二酸化炭素)のイオン強度を測定し、700℃~1000℃で脱離した二酸化炭素及び一酸化炭素の成分量を求めた。本実施例においては、m/z=28については一酸化炭素、m/z=44については二酸化炭素とみなして、ターゲット材(粉砕粉)の単位質量あたりの、脱離したそれぞれのガスのモル数を求めた。
<絶縁性評価>
実施例及び比較例のターゲット材の絶縁性は、以下の装置、試験、方法を用いて体積抵抗率を測定することにより評価した。
装置:ミタニマイクロニクス株式会社製 スクリーン印刷機 MODEL MEC=2400E型
株式会社西山製作所製 抵抗率測定装置
株式会社エーディーシー製 デジタル超高抵抗/微少電流計 型式5450
試験方法:直流三端子法
測定温度:室温(25℃)
測定雰囲気:アルゴン雰囲気(純度99.9999%Ar使用、流量300cc/min)
測定方法:スクリーン印刷機、田中貴金属工業株式会社製の白金ペーストを用い、所定のサイズに切り出したターゲット材サンプルの上面に主電極及びガード電極、ターゲット材サンプルの下面に対極を形成した。各電極は、サンプルに印刷した白金ペーストを、150℃で12時間乾燥させた後、雰囲気管状炉を用いた焼き付け処理(Ar雰囲気、1000℃)することで形成できる。電極を付けたサンプルを室温(25℃)の環境で15分保持した後、直流電圧100Vを印加し、1分間充電後の電流を測定し、サンプルの体積抵抗を求め、サンプルの厚みと電極面積から体積抵抗率を算出した。
<KNN原料粉のBET比表面積>
製造例で得たKNN原料粉のBET比表面積は、比表面積測定装置(モノソーブ、Quantachrome Instruments社製)を用いて、窒素吸着によるBET一点法にて測定した。
[KNN原料粉1の製造]
<製造例1>
出発原料粉としてKCO粉、NaCO粉、Nb粉を用意し、特開2018-197181号公報に記載の方法により、原子換算で、ナトリウム32.5モル%、カリウム17.5モル%、ニオブ50.0モル%、ニオブに対するアルカリ金属の比((Na+K)/Nb)が1.00、ナトリウム及びカリウムに対するカリウムの比(K/(Na+K))が0.35となるように、原料粉の混合、650℃での7時間焼成、粉砕を行うことで、K,Na,Nbが固溶してなるKNN原料粉1を得た。得られたKNN原料粉1の組成は、酸溶解後、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置により測定し、ほぼ仕込み比通りであることを確認し、X線回折分析により、K、Na、Nbの固溶体であることを確認した。また、KNN原料粉1のBET比表面積は、6.9m/gであった。
[KNN原料粉2の製造]
<製造例2>
製造例1で得られたKNN原料粉1を、電気炉を用いて750℃で5時間、続いて1000℃で5時間焼成した。焼成したKNN原料粉1を、ジェットミル(株式会社アイシンナノテクノロジーズ製、ナノジェットマイザーNJ100型)にて処理速度2kg/h、導入圧1.4MPa、粉砕圧1.4MPaの条件で粉砕し、KNN原料粉2を得た。得られたKNN原料粉2のBET比表面積は、4.0m/gであった。
[KNN原料粉3の製造]
<製造例3>
製造例1で得られたKNN原料粉1を、電気炉を用いて750℃で5時間、続いて900℃で5時間焼成し、KNN原料粉3を得た。得られたKNN原料粉3のBET比表面積は、3.6m/gであった。
[KNN原料粉4の製造]
<製造例4>
出発原料粉としてKCO粉、NaCO粉、Nb粉を用意し、[K/(K+Na)]の値が0.35、[(Na+K)/Nb]の値が1.00となるように混合するとともに、Mn及びCuを所定濃度で含むように、MnO粉末及びCuO粉末を混合し、650℃での7時間焼成、その後粉砕を行うことで、K,Na,Nbが固溶してなるKNN原料粉4を得た。得られたKNN原料粉4の組成は、酸溶解後、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置により測定し、ほぼ仕込み比通りであることを確認し、X線回折分析により、K、Na、Nbの固溶体であることを確認した。また、KNN原料粉4のBET比表面積は、6.9m/gであった。
[KNN原料粉5の製造]
<製造例5>
製造例4で得られたKNN原料粉4を、電気炉を用いて1000℃で5時間焼成した。焼成したKNN原料粉1を、ジェットミル(株式会社アイシンナノテクノロジーズ製、ナノジェットマイザーNJ100型)にて処理速度2kg/h、導入圧1.4MPa、粉砕圧1.4MPaの条件で粉砕し、KNN原料粉5を得た。得られたKNN原料粉5のBET比表面積は、4.4m/gであった。
[KNN原料粉6の製造]
<製造例6>
10wt%の水酸化カリウム水溶液150g及びNb粉100gをテフロン(登録商標)製の密閉容器に入れ、210℃で24時間水熱合成を行った。反応終了後、固液分離して反応物を回収し、回収した反応物を水洗した後、乾燥させてKNbO粉末を得た。同様に、10wt%の水酸化ナトリウム水溶液150g及びNb粉100gをテフロン(登録商標)製の容器の密閉容器に入れ、210℃で24時間水熱合成を行った。反応終了後、固液分離して反応物を回収し、回収した反応物を水洗した後、乾燥させてNaNbO粉末を得た。原子換算で、ナトリウム32.5モル%、カリウム17.5モル%、ニオブ50.0モル%、ニオブに対するアルカリ金属の比((Na+K)/Nb)が1.00、ナトリウム及びカリウムに対するカリウムの比(K/(Na+K))が0.35となるように、水熱合成で得たKNbO粉末及びNaNbO粉末の秤量、混合、ボールミル(溶媒にエタノール使用)を用いた粉砕を行うことで、KNN原料粉6を得た。得られたKNN原料粉6では、K、Na、Nbは固溶していない。得られたKNN原料粉6の組成は、酸溶解後、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置により測定し、ほぼ仕込み比通りであることを確認した。また、KNN原料粉6のBET比表面積は、10.5m/gであった。
〔実施例1〕
製造例2で得たKNN原料粉2を200℃に加熱して乾燥させた後、φ170mm×φ101.6mm×t100mmのグラファイト製のダイス、及びφ101.6mm×t65mmのグラファイト製のパンチを備えるパルス通電加圧焼結装置SPS9.40MK-VII(SPSシンテックス株式会社製)にセットした。真空雰囲気下(雰囲気圧力は10Pa未満)にて、10MPaで加圧した状態で、放電プラズマによる加熱を開始し、25℃から900℃まで50℃/分の速度で昇温した。その間、ガス成分の脱離が生じ、雰囲気圧力の上昇が生じるのを確認した。徐々に35MPaまで昇圧した後、2.5℃/分で950℃まで昇温し、950℃で30分間保持した。その後、通電及び加圧を停止し、冷却することで、直径が約101mm、厚さ5mmの円盤型のターゲット材(KNN焼結体、絶縁性の低いターゲット材)を得た。
また、得られたターゲット材を、大気下、900℃で5時間の酸化処理した後、表面を研削して仕上げることで、直径100mm、厚さ5mmのKNNターゲット材(絶縁性の高いターゲット材)を得た。
得られたターゲット材の数平均粒子径は0.34μmであり、面積平均粒子径は0.48μmであった。
得られたターゲット材の組成は、マイクロウェーブ分解を行った後、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置により測定し、[K/(K+Na)]の値が0.35、[(Na+K)/Nb]の値が1.0であることを確認した。
<低加圧SPSの条件>
機械的圧力:10MPa
加熱温度:~900℃
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa未満(上昇時、30Pa)
<本加圧SPSの条件>
機械的圧力:35MPa(900℃にて加圧開始)
加熱温度:950℃
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa未満
〔実施例2〕
製造例3で得たKNN原料粉3を用い、本加圧SPSを以下に示す条件で実施した以外は、実施例1と同様の方法で直径100mm、厚さ5mmのKNNターゲット材を得た。
得られたターゲット材の数平均粒子径は0.49μmであり、面積平均粒子径は0.71μmであった。
<本加圧SPSにおける条件>
機械的圧力:40MPa(900℃にて加圧開始)
加熱温度:900~1010℃(900℃から2.5℃/分で1010℃まで昇温、保持時間は無し)
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa未満
〔実施例3〕
製造例5で得たKNN原料粉5を用い、低加圧SPS及び本加圧SPSを以下に示す条件で実施した以外は、実施例1と同様の方法で直径100mm、厚さ5mmのKNNターゲット材を得た。
得られたターゲット材の数平均粒子径は0.71μmであり、面積平均粒子径は1.21μmであった。
<低加圧SPSの条件>
機械的圧力:5MPa
加熱温度(脱ガス時温度):~800℃(25℃から3℃/分で800℃まで昇温)
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa未満(上昇時、30Pa)
<本加圧SPSにおける条件>
機械的圧力:40MPa(800℃にて加圧開始)
加熱温度:900℃(800℃から3℃/分で900℃まで昇温、その後3時間保持)
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa未満
〔実施例4〕
製造例6で得たKNN原料粉6を用いた以外は、実施例1と同様の方法で直径100mm、厚さ5mmのKNNターゲット材を得た。
〔比較例1〕
製造例1で得たKNN原料粉1を用い、低加圧SPS及び本加圧SPSを以下に示す条件で実施した以外は、実施例1と同様の方法で直径100mm、厚さ5mmのKNNターゲット材を得た。
得られたターゲット材の数平均粒子径は0.55μmであり、面積平均粒子径は1.74μmであった。
<低加圧SPSの条件>
機械的圧力:10MPa
加熱温度:400℃(25℃から40℃/分で400℃まで昇温後、50分間保持)
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa未満(上昇時、20Pa)
<本加圧SPSにおける条件>
機械的圧力:40MPa(400℃にて加圧開始)
加熱温度:~915℃(400℃から10℃/分で600℃まで昇温後に20分間保持し、5℃/分で700℃まで昇温後に30分間保持、その後1.3℃/分で915℃まで昇温し、45分間保持)
雰囲気圧力(チャンバ内の圧力):10Pa未満
<炭素濃度に関する評価>
実施例1~4及び比較例1で作製したターゲット材の炭素濃度は、燃焼-赤外線吸収法(Instrumental Gas Analysis)により、酸化処理前の状態(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満である状態)、および、酸化処理後の状態(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上である状態)の2つのタイミングで測定した。
また、実施例1~4及び比較例1で作製したターゲット材のビッカース硬度、相対密度、抗折強度をそれぞれ測定した。
ターゲット材のビッカース硬度、相対密度については、それぞれ、酸化処理前の状態(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満である状態)、及び酸化処理後の状態(25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上である状態)の2つのタイミングで測定した。なお、実施例、比較例で得られたターゲット材は、いずれも、酸化処理前の25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であり、酸化処理後の25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であった。抗折強度については、酸化処理後のタイミングで測定した。なお、抗折強度は、酸化処理を行うことによっては変化しないか、あるいは、焼結体中から不純物としての炭素が抜けることにより若干低下するため、酸化処理前における抗折強度は、酸化処理後の抗折強度以上となる。
これらの測定結果を表1に示す。
Figure 2023075924000002
実施例1~4のターゲット材は、いずれも、炭素濃度が比較的低く、酸化処理前及び酸化処理後において、それぞれ、200ppm以下、80ppm以下であることが確認できた。
そして、実施例1~4のターゲット材では、いずれも、ビッカース硬度が、酸化処理前の状態において460以上であり、酸化処理後の状態において250以上であることが確認できた。また、実施例1~4のターゲット材では、いずれも、抗折強度が、酸化処理後の状態において90MPa以上であることが確認できた。これにより、実施例1~4のターゲット材では、いずれも、抗折強度が、酸化処理前の状態においても90MPa以上であることが推認できた。実施例1~4のターゲット材では、これらの機械的強度特性を備えることから、研削の際にも、また、その後のスパッタリング製膜処理の際にも、割れ、欠けが発生しなかったことが確認できた。
また、実施例1~4のターゲット材について、酸化処理前後のビッカース硬度を比較したところ、これらの値に大きな変化はなく、熱処理(酸化処理)を行った後のビッカース硬度が、熱処理を行う前のビッカース硬度に対して、50%を超える大きさに維持されていることが確認できた。
また、実施例1~4のターゲット材について、酸化処理前後の相対密度を比較したところ、これらの値も大きな変化はなく、熱処理(酸化処理)を行った後の相対密度が、熱処理を行う前の相対密度に対して、95%を超える大きさに維持されていることが確認できた。
また、実施例1の酸化処理前のターゲット材に含まれる炭素成分の量は、二酸化炭素換算で0.5×10-9mol/mg、一酸化炭素換算で1.4×10-9mol/mgであり、合計量が1.9×10-9mol/mgであり、実施例3の酸化処理前のターゲット材に含まれる炭素成分の量は、二酸化炭素換算で1.6×10-9mol/mg、一酸化炭素換算で2.3×10-9mol/mgであり、合計量が3.9×10-9mol/mgであり、二酸化炭素換算及び一酸化炭素換算の合計量が5.0×10-9mol/mg以下であることが確認できた。
また、実施例3の酸化処理後のターゲット材に含まれる炭素成分の量は、二酸化炭素換算で1.2×10-9mol/mg、一酸化炭素換算で1.8×10-9mol/mgであり、合計量が3.0×10-9mol/mgであり、二酸化炭素換算及び一酸化炭素換算の合計量が4.0×10-9mol/mg以下であることが確認できた。
これに対し、比較例1のターゲット材では、炭素濃度が高く、酸化処理前及び酸化処理後において、それぞれ、200ppm超、80ppm超であることが確認できた。
そして、比較例1のターゲット材では、ビッカース硬度が、酸化処理前の状態において460未満であり、酸化処理後の状態において250未満であることが確認できた。また、比較例1のターゲット材では、抗折強度が、酸化処理後の状態において90MPa未満であることが確認できた。これにより、比較例1では、抗折強度が、酸化処理前の状態においても90MPa未満であることが推察できた。比較例1のターゲット材では、研削の際にも、また、その後のスパッタリング製膜処理の際にも、割れ、欠けが発生したことが確認できた。
また、比較例1のターゲット材について、酸化処理前後のビッカース硬度を比較したところ、これらの値は大きく変化しており、熱処理(酸化処理)を行った後のビッカース硬度が、熱処理を行う前のビッカース硬度に対して、50%以下の大きさにまで減少していることが確認できた。
また、比較例1のターゲット材について、酸化処理前後の相対密度を比較したところ、これらの値も比較的大きく変化しており、熱処理(酸化処理)を行った後の相対密度が、熱処理を行う前の相対密度に対して、95%以下の大きさにまで減少していることが確認できた。
また、比較例1の酸化処理前のターゲット材に含まれる炭素成分の量は、二酸化炭素換算で2.7×10-9mol/mg、一酸化炭素換算で4.4×10-9mol/mgであり、合計量が5.0×10-9mol/mgを超えていることが確認できた。
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本開示の一態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの炭素濃度が200ppm以下である、
スパッタリングターゲット材が提供される。
(付記2)
本開示の他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの炭素濃度が90ppm以下である、
スパッタリングターゲット材が提供される。
(付記3)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの炭素成分の含有量が、ターゲット材10の質量1mgに対し、二酸化炭素及び一酸化炭素に換算した合計が5.0×10-9mol以下(すなわち、5.0×10-9mol/mg以下)である、
スパッタリングターゲット材が提供される。
(付記4)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの炭素成分の含有量が、ターゲット材10の質量1mgに対し、二酸化炭素及び一酸化炭素に換算した合計が4.0×10-9mol以下(すなわち、4.0×10-9mol/mg以下)である、
スパッタリングターゲット材が提供される。
(付記5)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときのビッカース硬度が460以上であり、抗折強度が90MPa以上である
スパッタリングターゲット材が提供される。
(付記6)
本開示のさらに他の態様によれば、
カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの、ビッカース硬度が250以上であり、抗折強度が90MPa以上である
スパッタリングターゲット材が提供される。
(付記7)
好ましくは、
大気中、900℃、5時間の条件下で熱処理を行った後のビッカース硬度が、前記熱処理を行う前のビッカース硬度に対して、50%を超える大きさに維持される。
(付記8)
好ましくは、
大気中、900℃、5時間の条件下で熱処理を行った後の相対密度が、前記熱処理を行う前の相対密度に対して、95%を超える大きさに維持される。
(付記9)
好ましくは、
ドーパントとして、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Zn、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む。
(付記10)
好ましくは、
主面が4500mm以上の面積を有する。
(付記11)
本開示のさらに他の態様によれば、
付記1~10のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット材と、
前記スパッタリングターゲット材に接合されているバッキングプレートと、
を備えるスパッタリングターゲットが提供される。
10 ターゲット材
10s スパッタ面

Claims (7)

  1. カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
    25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの炭素濃度が200ppm以下である、
    スパッタリングターゲット材。
  2. カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
    25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの炭素濃度が90ppm以下である、
    スパッタリングターゲット材。
  3. カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
    25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm未満であるときの炭素成分の含有量が、ターゲット材10の質量1mgに対し、二酸化炭素及び一酸化炭素に換算した合計が5.0×10-9mol以下である、
    スパッタリングターゲット材。
  4. カリウム、ナトリウム、ニオブ、及び酸素を含む酸化物の焼結体からなるスパッタリングターゲット材であって、
    25℃における体積抵抗率が6.0×1011Ω・cm以上であるときの炭素成分の含有量が、ターゲット材10の質量1mgに対し、二酸化炭素及び一酸化炭素に換算した合計が4.0×10-9mol以下である、
    スパッタリングターゲット材。
  5. ドーパントとして、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Bi、Sb、V、In、Ta、Mo、W、Cr、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Cu、Zn、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Si、Ge、Sn、Gaからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む
    請求項1~4のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット材。
  6. 主面が4500mm以上の面積を有する
    請求項1~4のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット材。
  7. 請求項1~4のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット材と、
    前記スパッタリングターゲット材に接合されているバッキングプレートと、
    を備えるスパッタリングターゲット。
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