JP2024025127A - 抄造体、湿式摩擦材及び湿式摩擦材の使用方法 - Google Patents

抄造体、湿式摩擦材及び湿式摩擦材の使用方法 Download PDF

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Kumiko Mizufuji
義宮 大津賀
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Abstract

【課題】放熱性の向上を図ることができる抄造体、湿式摩擦材及び湿式摩擦材の使用方法を提供する。【解決手段】抄造体10は、黒鉛11と、繊維12と、結着剤13とを含み、黒鉛11は、嵩密度が0.125g/cm3以下の黒鉛を含み、この抄造体10を利用して湿式摩擦基材20を得ることができ、また、湿式摩擦材30は、コアプレート31と、コアプレート31の表面に配された湿式摩擦基材20と、を備えるものである。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や自動二輪車等のトランスミッション等に利用される抄造体、その抄造体を利用した湿式摩擦材、及び湿式摩擦材の使用方法に関するものである。
自動車や自動二輪車等の車両では、トルク伝達や制動等のために、湿式摩擦材を用いた湿式クラッチや湿式ブレーキが利用されている。湿式摩擦材は、複数の抄造体(摩擦基材)をディスクプレートに接着した構成を有している。そして、湿式摩擦材は、湿式クラッチの内部において、複数枚がセパレータプレートと小さなクリアランスを介して交互に配置され、作動時・空転時にセパレータプレートと圧接・離間させることでトルク伝達・非伝達を行うように構成されている。また、湿式クラッチは、湿式摩擦材の摩擦低減や、摩擦熱の吸収等のため、その内部に潤滑油が供給される構成とされている。
近時の湿式クラッチ等は、環境配慮等に基づき、トランスミッションの軽量化やドラグトルクの低減化等のため、湿式摩擦材の枚数の減数化や潤滑油の低油量化等を求められている。こうした湿式摩擦材の枚数の減数化や潤滑油の低量化等を図るには、湿式摩擦材の1枚あたりにおける熱負荷の増加について考慮する必要があるため、湿式摩擦材は、高熱負荷の環境下における耐熱性の向上や温度上昇の抑制について検討されている。
通常、湿式摩擦材は、固体潤滑剤であり、熱伝導率が高く、耐熱性の高い黒鉛(グラファイト)を充填材として用いることにより、耐熱性の向上や温度上昇の抑制が図られる。例えば、特許文献1には、湿式摩擦材の抄造体(摩擦基材)について、第1最外側面と、第1最外側面から離間した第2最外側面とを有し、充填材である黒鉛(グラファイト)を、セパレータプレート等の相手部材との摩擦面等となる第2最外側面側に偏らせて配した構成が開示されている。
特開2019-210463号公報
湿式摩擦材によるトルク伝達時において、抄造体(摩擦基材)は、摩擦面に相手部材が圧接されているため、摩擦面以外の面で潤滑油との熱交換を行い、内部に蓄積された熱を放熱する必要がある。黒鉛を摩擦面側に偏らせて配した抄造体(摩擦基材)は、摩擦面の放熱性は向上するものの、摩擦面以外の面の放熱性は向上せず、トルク伝達時の湿式摩擦材の放熱性も向上しない。このため、上述の抄造体(摩擦基材)を利用した湿式摩擦材は、近時における湿式摩擦材の枚数の減数化や潤滑油の低油量化等による高熱負荷の環境下で必要とされる放熱性を確保することができない。
抄造体(摩擦基材)は、上述の放熱性の問題について、黒鉛の配合割合の増加により、解決を試みることができる。但し、黒鉛の配合割合の増加は、黒鉛以外の摩擦調整剤の配合割合や、抄造体の骨格を形成する繊維の配合割合の低下を招き、摩擦係数(μ)や強度の低下を発生させる。また、固体潤滑剤でもある黒鉛は、摩擦面側に偏らせて配した状態で、配合割合の増加を図ると、セパレータプレート等の相手部材との間で低μ状態を発生させやすくなる。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、放熱性の向上を図ることができる抄造体、湿式摩擦材及び湿式摩擦材の使用方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
〔1〕本発明の抄造体は、湿式摩擦基材として利用される抄造体であって、
黒鉛と、繊維と、結着剤とを含み、
前記黒鉛は、嵩密度が0.125g/cm以下の黒鉛を含むことを要旨とする。
〔2〕本発明の抄造体において、前記黒鉛は、鱗片状の黒鉛を含むことができる。
〔3〕本発明の抄造体において、前記黒鉛は、比表面積が3.5m/g以上の黒鉛を含むものとすることができる。
〔4〕本発明の抄造体において、前記繊維は、フィブリル化された合成繊維を含むものとすることができる。
〔5〕本発明の抄造体は、空隙率が、30%以上であるものとすることができる。
〔6〕本発明の湿式摩擦材は、コアプレートと、前記コアプレートの表面に配された湿式摩擦基材と、を備える湿式摩擦材であって、
前記湿式摩擦基材が、上述の抄造体であることを要旨とする。
〔7〕本発明の湿式摩擦材において、前記抄造体は、比表面積が3.5m/g以上の黒鉛を含むものとすることができる。
〔8〕本発明の湿式摩擦材において、前記抄造体は、フィブリル化された合成繊維を含むものとすることができる。
〔9〕本発明の湿式摩擦材において、前記抄造体は、空隙率が30%以上であるものとすることができる。
〔10〕本発明の湿式摩擦材は、300mL/分以下の油量下で利用される
〔11〕本発明の湿式摩擦材の使用方法は、300mL/分以下の油量下で使用することを要旨とする。
本発明によれば、放熱性の向上を図ることができる抄造体、湿式摩擦材及び湿式摩擦材の使用方法を提供することができる。
本発明の抄造体の一部を拡大した断面図である。 本発明の湿式摩擦基材の一例を説明する斜視図である。 本発明の湿式摩擦材の一例を説明する全体平面図である。 実施例のプレート温度の測定結果を示すグラフ。
以下、本発明を、図を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
[1]抄造体
本発明の抄造体は、湿式摩擦基材20として利用される抄造体10であって、
黒鉛11と、繊維12と、結着剤13とを含み、
黒鉛11は、嵩密度が0.125g/cm以下の黒鉛を含むことを特徴とする(図1参照)。
抄造体10は、湿式摩擦基材20として利用されるものであり、詳しくは、湿式摩擦基材20の材料等として用いられるものである。
ここで、湿式摩擦基材20は、その表面を摩擦面21とし、摩擦面21と、摩擦面21に係合される相手部材(セパレータプレート等、図示略)との接触の程度により、相手部材との連動具合を調節可能とされたものである(図2参照)。つまり、湿式摩擦基材20は、相手部材に対するブレーキ機能(制動機能)やトルク伝達機能を発揮可能なものである。
湿式摩擦基材20の形状は、特に限定されない。この形状は、例えば、平面視で略台形状とすることができる(図2参照)。この他に、平面視の形状で、平行四辺形状、長方形状、正方形状等の四角形状や三角形状や六角形状等といった多角形状、波形状、弧状、クランク状、L字状、T字状、凸字状などを例示することができる。
湿式摩擦基材20の厚さTは、特に限定されない(図2参照)。この厚さTは、例えば、0.1mm以上2mm以下とすることができる。厚さTは、好ましくは0.15mm以上1.8mm以下、より好ましくは0.2mm以上1.5mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上1.2mm以下である。
抄造体10に含まれる繊維12は、抄造されることで複雑に絡み合い、抄造体10の骨格を形成するものである。繊維12の種類は、特に限定されないが、有機繊維、無機繊維などを例示することができる。
有機繊維は、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系樹脂繊維、アクリル繊維等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維、セルロース繊維(パルプ)等の有機天然繊維などを例示することができる。
無機繊維は、炭素系繊維(カーボン繊維、炭化繊維等含む)、単結晶繊維(ウォラストナイトフィラー等)、多結晶繊維(アルミナ繊維等)、非晶質繊維(ロックウール、ガラス繊維等)、金属繊維等を例示することができる。
これら有機繊維、無機繊維で例示した繊維は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
抄造体10は、繊維12として、フィブリル化された合成繊維を含むことができる。フィブリル化された合成繊維は、繊維同士の絡み合い性や接触性が向上することにより、抄造体10の強度や形状保持性を向上させることができる。
フィブリル化とは、合成繊維を離解・叩解することにより、繊維内部のフィブリル(原繊維)が表面に現れて毛羽立ち、ささくれる現象をいう。合成繊維をフィブリル化する方法は、特に限定されず、例えば、加圧水流を噴射する、解繊機等を用いて離解・叩解する等を挙げることができる。
抄造体10は、フィブリル化された合成繊維を含む場合、フィブリル化された繊維のみを含むことができ、あるいは、フィブリル化された合成繊維とフィブリル化されていない繊維とを含むことができる。
合成繊維について、ポリアミド系繊維は、芳香族ナイロン繊維、脂肪族ナイロン繊維等を例示することができる。芳香族ナイロン繊維としては、特に、全芳香族ナイロンを用いた繊維、その具体例としてアラミド繊維を挙げることができる。アラミド繊維には、パラ系アラミド及びメタ系アラミドのいずれか一方又は両方を用いることができる。
繊維12は、例えば、アラミド繊維とセルロース繊維、あるいは合成繊維と炭素系繊維、などのように、必要に応じて複数種類を利用することができる。この場合、繊維の種類、配合割合等は、特に限定されない。
繊維12のサイズは、特に限定されないが、例えば、繊維長が0.2mm以上1.3mm以下、繊維径が0.1μm以上10μm以下とすることができる。繊維長は、好ましくは0.3mm以上1.2mm以下とすることができる。繊維径は、好ましくは0.5μm以上8μm以下とすることができる。
抄造体10に含まれる結着剤13は、上述の繊維12同士を結着するものである。
結着剤13は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を例示することができる。これらの中でも、熱硬化性樹脂は、抄造体10の耐熱性を向上させることができることから、結着剤13として有用である。
熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、フェノール樹脂の変性樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド等を例示することができる。これらは、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フェノール樹脂、フェノール樹脂の変性樹脂は、耐熱性に加え、機械的強度、耐酸性に優れ、安価であることから、結着剤13として有用である。
結着剤13の配合割合(含有率)は、特に限定されないが、抄造体10の全体を100質量%として、18質量%以上とすることができる。配合割合は、好ましくは20質量%以上とすることができる。
抄造体10は、気孔14を有するものとすることができる(図1参照)。気孔14は、繊維12を抄造して形成された抄造体10において、繊維12同士の隙間により形成される。
湿式摩擦基材20は、その材料となる抄造体10が気孔14を有することにより、潤滑油を吸収する吸油性を備えるものとすることができる。
湿式摩擦基材20(抄造体10)における気孔14の存在割合、つまり気孔率は、所望する吸油性に応じて調整することができ、特に限定されない。通常、気孔率は、10%以上80%以下とすることができる。気孔率は、好ましくは20%以上75%以下とすることができる。
なお、気孔率は、抄造体10を油に浸漬し、浸漬前後の質量及び体積からアルキメデス法を用いて算出される。即ち、抄紙基材2の浸漬前の質量をW(g)、浸漬後の質量をW(g)とし、抄紙基材2の体積をV(cm)、油の密度をρ(g/cm)とすると、気孔率(%)=(W-W)×(1/ρ)×(1/V)×100である。
抄造体10に含まれる黒鉛11は、黒鉛が有する熱伝導性により、抄造体10に放熱性を付与するものである。黒鉛11は、嵩密度が0.125g/cm以下の黒鉛(以下、「黒鉛A」と記載する)を含んでいる。
抄造体10は、嵩密度の低い黒鉛Aを配合する場合、嵩密度の低い黒鉛Aの粒子が粗くなることで、黒鉛同士が接触しやすくなり、相互に繋がりやすくなる。黒鉛は、相互の繋がりが多い場合、熱伝導性が向上する特性を有している。この特性から、抄造体10は、嵩密度の低い黒鉛Aを配合した場合、同じ割合で配合した通常の黒鉛と比べ、熱伝導性が高まり、放熱性の向上を図ることができる。
そして、放熱性が向上した抄造体10を利用する湿式摩擦基材20は、内部に熱が溜まりにくくなるため、高熱負荷の環境下において、自らの温度上昇を抑制される。
黒鉛Aの嵩密度の上限は、好ましくは0.14g/cm以下、より好ましくは0.11g/cm以下、さらに好ましくは0.05g/cm以下とすることができる。黒鉛Aの嵩密度の下限は、特に限定されず、0g/cm超であり、好ましくは0.05g/cm以上、より好ましくは0.07g/cm以上、さらに好ましくは0.09g/cm以上とすることができる。
なお、黒鉛Aの嵩密度は、レーザー回折法による平均粒径(D50)が、好ましくは20μm以上80μm以下、より好ましくは30μm以上50μm以下のものを測定対象とし、SAP 01-79(日本粉体工業技術協会規格)に規定の方法で測定された値とする。
抄造体10に含まれる黒鉛11は、固体潤滑剤としてその機能を発揮することもでき、これにより湿式摩擦基材20に所望の摩擦特性を付与することができる。黒鉛11による固体潤滑剤としての機能の高低は、抄造体10に配合される黒鉛11全体の割合の高低に応じたものとなる。
つまり、黒鉛11として、嵩密度の低い黒鉛Aと、通常の黒鉛とは、抄造体10への配合割合が同じである場合、湿式摩擦基材20の摩擦特性もまた同等の性能となる。従って、抄造体10への黒鉛11の全体の配合割合を変えることなく、黒鉛11に含まれる嵩密度の低い黒鉛Aの量を増すことにより、湿式摩擦基材20の摩擦特性を維持したまま、熱伝導性を高めることができ、抄造体10の放熱性の向上を図ることができる。
抄造体10における黒鉛11の配合割合(含有率)は、抄造体10の全体を100質量%として、10質量%以上50質量%以下とすることができる。
黒鉛11は、嵩密度の低い黒鉛Aのみが含まれるものとすることができ、通常の黒鉛等といった黒鉛A以外の他の黒鉛と、嵩密度の低い黒鉛Aとが含まれるものとすることができる。
具体的に、黒鉛11に含まれる嵩密度の低い黒鉛Aの含有率の上限は、黒鉛11の全体を100質量%として、100質量%以下とすることができ、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下とすることができる。また、黒鉛11に含まれる嵩密度の低い黒鉛Aの含有率の下限は、黒鉛11の全体を100質量%として、20質量%以上とすることができ、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好しくは50質量%以上とすることができる。
抄造体10に含まれる黒鉛11の形状は、特に限定されない。この黒鉛11に含まれる嵩密度の低い黒鉛Aの形状は、特に限定されないが、相互に接触しやすく、繋がりやすい形状として、例えば、鱗片状等の板状、楕円球状などを挙げることができる。これら形状のなかでも鱗片状は、黒鉛同士が好適に接触しやすく、繋がりやすいため、有用である。
具体的に、鱗片状の黒鉛Aは、長径をdとし、短径をdとした場合に、長径dと短径dとの比d/d(アスペクト比;Dr)が5~100であるものとすることができる。
なお、アスペクト比(Dr)の測定は、測定器(商品名;iSpect DIA-10、島津製作所)によって測定された値とする。
抄造体10に含まれる黒鉛11は、比表面積が3.5m/g以上の黒鉛を含むものとすることができる。
比表面積の上限は、特に限定されないが、10m/g以下とすることができる。
黒鉛11は、比表面積が上述の範囲の場合、好適な熱伝導性を発揮することができ、抄造体10(湿式摩擦基材20)に良好な放熱性を付与することができる。
抄造体10は、充填材を含む構成とすることができる。
充填材の種類は、特に限定されない。充填材の種類は、具体的に、摩擦調整剤としてのカシューダスト、固体潤滑剤としての二硫化モリブデン、体質顔料としてのケイソウ土などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
充填材のサイズは、特に限定されない。このサイズは、具体的に、レーザー回折法による平均粒径(D50)で、好ましくは0.1μm以上1000μm以下、より好ましくは2μm以上200μm以下である。
充填材の添加率は、特に限定されない。この添加率は、例えば、抄造体10の全体を100質量%として、好ましくは20質量%以上70質量%以下、より好ましくは30質量%以上60質量%以下とすることができる。
[2]湿式摩擦材
本発明の湿式摩擦材30は、コアプレート31と、コアプレート31の表面に配された湿式摩擦基材20と、を備える湿式摩擦材であって、
湿式摩擦基材20が、上記の抄造体10であることを特徴とする(図3参照)。
湿式摩擦材30において、湿式摩擦基材には、上述したもの、つまり本発明の抄造体10を利用し、これを材料に用いて得られた湿式摩擦基材20が使用されている。
即ち、湿式摩擦材30は、抄造体10と、抄造体10を利用した湿式摩擦基材20とによって得られる効果をそのまま享受することができる。
コアプレート31は、板体中央が開孔された環形状、即ち、リング形状に形成されている。このコアプレート31は、リング形状の中心を回転中心としている。
コアプレート31は、主面32を有する。主面32は、複数の湿式摩擦基材20が接合される面である。
主面32は、コアプレート31の一面のみに有してよいし、両面に有してもよい。即ち、湿式摩擦基材20は、コアプレート31の一面のみに配されてもよいし、コアプレート31の両面に配されていてもよい。
コアプレート31は、主面32以外に、他の構成を必要に応じて、適宜、備えることができる。
他の構成としては、例えば、係合歯が挙げられる。係合歯は、コアプレート31の内周面や外周面から突設して設けることができる。
具体的には、図3に示すように、内周面から突設された係合歯33を有することができる。係合歯33は、湿式摩擦材30に対して回転軸となるハブの外周に配置されたスプラインと噛み合うことができるように設けることができる。
コアプレート31の大きさ等は、特に限定されない。コアプレート31の外径と内径との相関も、特に限定されない。
例えば、外径をR1(外周の直径)、内径をR2(係合歯33を有する場合には、係合歯33を除いた内周面を基準とする)とした場合、これらの比R1/R2は、1<R1/R2≦10とすることができ、1.05≦R1/R2≦5とすることができ、1.1≦R1/R2≦3とすることができる。
コアプレート31の厚さDは、特に限定されない。この厚さDは、例えば、0.1≦D(mm)≦10mmとすることができ、0.3≦D(mm)≦7とすることができ、0.5≦D(mm)≦5とすることができる。
コアプレート31の材料は、特に限定されない。この材料は、例えば、各種炭素鋼(S20C、S35C、S55C等)、冷間圧延鋼板(SPCC、SPCCT等)などを用いることができる。
湿式摩擦基材20は、1つのコアプレート31に対して、1つのみ、又は、複数個を設けることができる。上述のように、コアプレート31は円環状をなしているため、通常、湿式摩擦基材20も円環状に配置される(図3参照)。
湿式摩擦基材20を1つのみ有する場合には、コアプレート31の円環形状に対応した、円環状の湿式摩擦基材20とすることができる。
湿式摩擦基材20を複数有する場合には、コアプレート31の円環形状に対応して、円環状に配置することができる。とりわけ、隣り合った湿式摩擦基材20同士の間に間隙を設けて円環状に配置することができる。この場合、隣り合った湿式摩擦基材20同士によって区画形成された間隙は、油溝として機能させることができる。
湿式摩擦基材20を複数有する場合、各湿式摩擦基材20の平面形状は、互いに、同じでもよいし、異なってもよい。
湿式摩擦材30において、コアプレート31の1つの主面32に配置される湿式摩擦基材20の数は限定されないが、例えば、10以上120以下とすることができる。この数は、15以上100以下が好ましく、20以上80以下がより好ましく、25以上60以下が特に好ましい。
[3]湿式摩擦材の使用方法
本発明の湿式摩擦材は、300mL/分以下の油量下で使用することを特徴とする。
上述したように、湿式摩擦材30は、抄造体10と、抄造体10を利用した湿式摩擦基材20とによって得られる効果をそのまま享受することができる。
即ち、抄造体10は、黒鉛11として、嵩密度の低い黒鉛Aを含んでおり、これにより黒鉛11による熱伝導性が高まり、放熱性が向上されている。また、抄造体10を利用する湿式摩擦基材20は、抄造体10の放熱性が向上さているため、内部に熱が溜まりにくくなり、熱による高負荷の環境下における温度上昇が抑制されている。
湿式摩擦材30は、例えば、湿式クラッチの内部に複数枚を収容して使用される。この湿式クラッチの内部において、複数枚の湿式摩擦材30は、セパレータプレートと小さなクリアランスを介して交互に配置されている。
湿式クラッチの作動時において、湿式摩擦材30は、主面32の湿式摩擦基材20をセパレータプレートと圧接させることにより、トルク伝達を行う。このトルク伝達時において、湿式摩擦基材20には、その摩擦面21におけるセパレータプレートとの摩擦により、摩擦熱が生じる。
湿式クラッチの内部には、潤滑油が供給されている。この潤滑油は、湿式クラッチの作動時において、湿式摩擦材30の内周側から外周側へ向けて、複数の湿式摩擦基材20の間を通過する。湿式摩擦基材20の間を通過する際、潤滑油は、接触した湿式摩擦基材20との間で熱交換を行うことにより、湿式摩擦基材20に生じた摩擦熱を放熱させる。
湿式摩擦材30は、抄造体10及び湿式摩擦基材20が利用されており、抄造体10による放熱性の向上や、湿式摩擦基材20による温度上昇の抑制を発揮することができる。このため、湿式摩擦材30は、潤滑油を減量した低油量の環境下、具体的に300mL/分以下の油量下においても、抄造体10が好適な放熱性を発揮し、潤滑油との熱交換を良好に行うことで、湿式摩擦基材20の摩擦熱による温度上昇を抑制される。
低油量の環境下は、好ましくは280mL/分以下、より好ましくは260mL/分以下、さらに好ましくは250mL/分以下とすることができる。
以下では本発明を実施例によって説明する。尚、各実施例に共通する説明は省略する。
(1)抄造体の調整、及び湿式摩擦基材の加工
パルプ及びアラミド繊維等の繊維と、黒鉛とを抄造して得られた抄紙材に、結着剤としてフェノール系の樹脂を含浸させた後、乾燥工程で硬化させたものを抄造体とした。
上述の抄造体を利用し、大きさ、形状が試験条件に応じたものとなるように加工して、湿式摩擦基材とした。
黒鉛の配合割合は、抄造体100質量%に対し、30質量%とした。
黒鉛には、黒鉛A(嵩密度:0.05g/cm、比表面積:7.25m/g)、黒鉛B(嵩密度:0.39g/cm、比表面積:2.31m/g)、黒鉛C(嵩密度:0.37g/cm、比表面積:3.24m/g)の3種類を用いた。
黒鉛に含まれる黒鉛A、黒鉛B、黒鉛Cの含有率を以下に記載のものとして、実施例1、2及び比較例の試料を得た。なお、黒鉛A、黒鉛B、黒鉛Cの含有率について、併せて表1に示す。
実施例1;黒鉛全体を100質量%として、黒鉛Aの含有率を64.2質量%、黒鉛Bの含有率を35.8質量%とした。
実施例2;黒鉛全体を100質量%として、黒鉛Aの含有率を32.1質量%、黒鉛Bの含有率を35.8質量%、黒鉛Cの含有率を32.1質量%とした。
比較例;黒鉛全体を100質量%として、黒鉛Cの含有率を64.2質量%、黒鉛Bの含有率を35.8質量%とした。
Figure 2024025127000002
(2)湿式摩擦材の調整
コアプレート(S20C、平板なリング形状、外径R1=198.9mm、内径R2=185.3mm)の主面に、上記(1)の湿式摩擦基材を合計で60個、均等なリング状に配置し、接着して湿式摩擦材を得た。
(3)湿式摩擦材の性能評価
上記(2)の湿式摩擦材を3枚使用し、下記の試験条件でSAE摩擦試験機を用い、プレート温度を測定した。
なお、プレート温度とは、上記(2)の湿式摩擦材の1枚全体の温度を指しており、SAE摩擦試験機において湿式摩擦材と接触される相手材プレートに差し込まれた熱電対を利用して測定することができる。
(試験条件)
回転速度:2400rpm、
Qs:100J/cm
面圧:0.95MPa
油量:300mL/min(軸心潤滑・フルディップ)、
油温:100℃。
(4)考察
測定結果を図4に示す。
測定されたプレート温度について、嵩密度の低い黒鉛Aを含む実施例1、2は、黒鉛Aを含まない比較例に比べると、比較例のプレート温度を10割として、実施例1が3割程度、実施例2が5割程度と、明らかに低くなっていた。
また、実施例1、2について、嵩密度の低い黒鉛Aを多く含む実施例1は、黒鉛Aの少ない実施例2と比べても、測定されたプレート温度が明らかに低くなっていた。
以上から、湿式摩擦材において、湿式摩擦基材(抄造体)が嵩密度の低い黒鉛Aを含むことで、放熱性が向上しており、プレート温度の上昇が抑えられることが示された。
本発明の抄造体が利用される湿式摩擦基材及び湿式摩擦材の用途は特に限定されず、例えば、自動車(四輪自動車、二輪自動車等)、鉄道車両、船舶、飛行機等において広く適用される。このうち自動車用品としては、自動変速機(オートマチックトランスミッション、AT)に好適に用いられる。湿式摩擦材は、変速機内で1枚のみ用いられてもよく、複数枚が用いられてもよいが、複数枚が用いられることが好ましい。湿式摩擦材は、1つの変速機内でより多く用いられる方が、積算的に大きな効果を得ることができる。即ち、湿式摩擦材の利用枚数が多い湿式多板クラッチにおいてより効果的に温度上昇を抑制できる。
10;抄造体、11;黒鉛、12;繊維、13;結着剤、14;気孔、
20;湿式摩擦基材、21;摩擦面、
30;湿式摩擦材、31;コアプレート、32;主面、33;係合歯。

Claims (11)

  1. 湿式摩擦基材として利用される抄造体であって、
    黒鉛と、繊維と、結着剤とを含み、
    前記黒鉛は、嵩密度が0.125g/cm以下の黒鉛を含むことを特徴とする抄造体。
  2. 前記黒鉛は、鱗片状の黒鉛を含む請求項1に記載の抄造体。
  3. 前記黒鉛は、比表面積が3.5m/g以上の黒鉛を含む請求項1又は2に記載の抄造体。
  4. 前記繊維は、フィブリル化された合成繊維を含む請求項1又は2に記載の抄造体。
  5. 空隙率が、30%以上である請求項1又は2に記載の抄造体。
  6. コアプレートと、前記コアプレートの表面に配された湿式摩擦基材と、を備える湿式摩擦材であって、
    前記湿式摩擦基材が、請求項1又は2に記載の抄造体であることを特徴とする湿式摩擦材。
  7. 前記抄造体は、比表面積が3.5m/g以上の黒鉛を含む請求項6に記載の湿式摩擦材。
  8. 前記抄造体は、フィブリル化された合成繊維を含む請求項6に記載の湿式摩擦材。
  9. 前記抄造体は、空隙率が30%以上である請求項6に記載の湿式摩擦材。
  10. 300mL/分以下の油量下で利用される請求項6に記載の湿式摩擦材。
  11. 請求項6に記載の湿式摩擦材の使用方法であって、
    300mL/分以下の油量下で使用することを特徴とする湿式摩擦材の使用方法。
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