JP2024021733A - 区画貫通処理構造、区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法 - Google Patents

区画貫通処理構造、区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐火性能のバラつきを低減し、かつ耐火性能を向上させることができる区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供する。【解決手段】建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を防火構造とする区画貫通処理構造であって、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Aに少なくとも一部がスリーブ状で挿入され、開口13Aの内面に沿って配置された熱膨張性シート部材3と、熱膨張性シート部材3の外周側3Aで連結し、区画貫通部15の開口13Aと挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐカバー部材4と、カバー部材4の外周側3A又は内周側(3B)に設けられる凸部材5(51)とを備える、区画貫通処理構造。【選択図】図1

Description

本発明は、建築物などの仕切り部において形成される区画貫通処理構造、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材、及び区画貫通処理構造の施工方法に関する。
集合住宅、オフィスビル、学校等の建築物において、壁等の仕切り部には、ケーブル類、配管類などの長尺の挿通体を通すために、区画貫通部が設けられることがある。区画貫通部は、いずれかの区画で火災が発生した際に、他の区画への延焼を防止するために、防火措置を施した構造(耐火構造)にすることが求められている。仕切り部は、2枚の壁部からなり、壁部間が中空部となっている中空壁が一般的である。
区画貫通部を耐火構造とする方法は、例えば、長尺の挿通体と開口との間隙に、耐火パテなどの不定形充填材を充填する方法が知られている。不定形充填材を使用する場合、各壁部の開口内部と、挿通体の間には、耐火材よりなる筒状部材などが合わせて配設されることもある(例えば、特許文献1、2参照)。
特許第6150933号公報 特許第6348320号公報
しかしながら、区画貫通部の防火処理に不定形充填材を使用した場合、作業者によるバラつきがあり、十分な耐火性能が得られないことがある。また、躯体内に耐火材及びその付属品等を設置する場合、それらがどの程度(量や厚み、長さ等)設置されているか明確でなかったり、規定通りに設置されているか判断できなかったりすることがある。そのため、規定通りに耐火材などが設置されているか否かを確認するためには、区画貫通処理構造を破壊して、内部構造を確認する必要がある。
また、作業者によるバラつきを低減するため、あらかじめ決められた量、及び大きさの部材が一体化されたキットがあったが、部材点数が多い傾向があり、部材紛失や設置し忘れが生じやすく、また、キットごとの梱包のため、発生するゴミが多いという問題もある。
また、内部にケーブル類及び配管類等の長尺の挿通体が挿通される区画貫通構造においては、区画貫通処理構造を施した後に挿通体を動かした場合には、内部に設置された耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことがある。また、地震等の外力によっても、耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことがある。また、耐火材が均一に膨張せずに偏って膨張すると設置されていた適切な位置からずれたり、脱落したりすることがある。また、膨張性を有する耐火材を使用した場合、火災等により加熱されることで膨張し、耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことがある。このように、耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことによって、区画貫通部の耐火構造として望まれる耐火性能を発揮することが困難となる。
そこで、本発明は、耐火性能のバラつきを低減し、かつ耐火性能を向上させることができる区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口に少なくとも一部がスリーブ状で挿入され、前記開口の内面に沿って配置された熱膨張性シート部材と、前記熱膨張性シート部材の外周側で連結し、前記区画貫通部の前記開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐカバー部材と、前記カバー部材の外周側又は内周側に設けられる凸部材とを備える、区画貫通処理構造。
[2]前記凸部材は、前記熱膨張性シート部材と前記カバー部材との連結する境界部近傍に設けられている、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[3]前記熱膨張性シート部材が前記開口から突出しない、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[4]前記カバー部材を前記仕切り部及び前記挿通体の少なくともいずれかに固定させる留付材をさらに備える、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[5]前記カバー部材と前記仕切り部との間、前記熱膨張性シート部材と前記開口との間、及び、前記熱膨張性シート部材と前記挿通体との間に形成される隙間の少なくともいずれかに耐火材が配置されている、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[6]前記耐火材が充填材である、[5]に記載の区画貫通処理構造。
[7]前記耐火材がシート材である、[5]に記載の区画貫通処理構造。
[8]前記カバー部材と前記挿通体との間、及び、前記熱膨張性シート部材と前記仕切り部との間の少なくともいずれかに空隙がある、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[9]前記凸部材が、発泡体である、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[10]前記凸部材は、前記カバー部材の外周側に設けられる、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[11]前記凸部材は、前記カバー部材の内周側にさらに設けられる、[10]に記載の区画貫通処理構造。
[12]前記熱膨張性シート部材と、前記カバー部材と、前記凸部材とを備える区画貫通処理材が前記仕切り部の両側に設けられる、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[13]前記熱膨張性シート部材の少なくとも一方の表面が金属箔複合体で覆われている、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[14]前記カバー部材が少なくとも金属箔複合体を有する、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[15]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理材であって、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口に少なくとも一部がスリーブ状で挿入され、前記開口の内面に沿って配置された熱膨張性シート部材と、前記熱膨張性シート部材の外周側で連結し、前記区画貫通部の前記開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐカバー部材と、前記カバー部材の外周側又は内周側に設けられる凸部材とを備える、区画貫通処理材。
[16]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を耐火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口に、スリーブ状の熱膨張性シート部材の少なくとも一部を挿入し、前記開口の内面に沿って前記熱膨張性シート部材を配置する工程と、前記熱膨張性シート部材の外周側で連結したカバー部材で、前記区画貫通部の前記開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐ工程と、前記カバー部材の外周側又は内周側に設けられた凸部材が前記仕切り部に接触するまで挿入する工程とを含む、区画貫通処理構造の施工方法。
本発明によれば、耐火性能のバラつきを低減し、かつ耐火性能を向上させることができる区画貫通処理構造、区画貫通処理構造の施工方法、及び区画貫通処理材を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造において、区画貫通処理材が設置される前の状態を示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図(その1)である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図(その2)である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図(その3)である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図(その4)である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理材の構成を示す模式的断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造において、区画貫通処理材が設置される前の状態を示す斜視図である。
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造は、図1及び図2に示すように、建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を耐火構造とする区画貫通処理構造である。
本発明の区画貫通処理構造における仕切り部11は、建築物の壁面において区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を仕切る部材であり、仕切り部11の一方の外面11A側から他方の外面11B側に貫通する区画貫通部15を有する。図1で示す仕切り部11は、中空壁であり、間隔(中空部13)を介して配置される2枚の壁材(仕切り材)12A,12Bから構成される。そのため、区画貫通部15は、一方の壁材12Aに形成された開口13Aと、他方の壁材12Bに形成された開口13Bと、これらの間にある中空部13によって構成される。そして、一方の壁材12Aの外面が仕切り部11の外面11Aを構成し、他方の壁材12Bの外面が仕切り部11の外面11Bを構成する。開口13A,13Bは、例えば、円形、楕円形、又は、これらに近似する形状を有すればよい。
なお、本明細書において、区画貫通部15に施工され、区画貫通処理構造10を形成するための部材(本実施形態では、テープ状部材4、及びこれらを固定するための固定部材など)を纏めて区画貫通処理材ということがある。
また、以下では、仕切り部11の一方の開口13A側における区画貫通処理構造の構成について説明するが、本実施形態では、他方の開口13B側における区画貫通処理構造の構成も同様であるのでその説明は省略する。
第1の実施形態に係る区画貫通処理構造10は、区画貫通処理材として、熱膨張性シート部材3と、カバー部材4と、凸部材5とを備える。
〔熱膨張性シート部材〕
熱膨張性シート部材3は、図1に示すように、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Aに少なくとも一部がスリーブ状で挿入され、開口13Aの内面に沿って配置される。
熱膨張性シート部材3は、耐火性能を維持するために、開口13Aから突出しないように配置されるとよい。本実施形態においては、熱膨張性シート部材3が開口13Aから突出しないように凸部材5が配置されることで、火災等により加熱されることで熱膨張性シート部材3が膨張しても、凸部材5により開口13Aの外側に膨張することがなく、耐火材などが設置されていた適切な位置からずれてしまうことを防ぐことができる。
また、スリーブ状の熱膨張性シート部材3は、一方の開口13Aから他方の開口13Bまで通ってなくてもよいが、中空部13と仕切り部11の外部が連通することを防止するために、区画貫通部15において一方の開口13Aから他方の開口13Bまで通されているとよい。
熱膨張性シート部材3は、スリーブ状であるか、又は、スリーブ状に変形可能である。ここで、熱膨張性シート部材3がスリーブ状に変形可能なものとは、シート状である熱膨張性シート部材3を、端部と端部とを向かい合わせてスリーブ状に変形して区画貫通部15に挿入するものをいう。シート状である熱膨張性シート部材3は、当初からシート状のものに限られず、ロールから繰り出してシート状にしたものも含む。ただし、熱膨張性シート部材3をスリーブ状に変形する際に、シート状である熱膨張性シート部材3の端部同士は突き合わされる態様に限定されず、端部同士がオーバーラップするようにしてスリーブ状としてもよい。熱膨張性シート部材3がスリーブ状に変形可能なものであることで、施工現場で開口13A,13Bの大きさに合わせて、熱膨張性シート部材3の大きさを調整してスリーブ状にすることができるので、様々な大きさの区画貫通部15に対応できる。シート状又はロール状の熱膨張性シート部材3の厚さは特に限定されないが、例えば0.5~10mm、好ましくは1~5mmである。熱膨張性シート部材3は、スリーブ状に変形可能なように、柔軟性を有するとよい。
熱膨張性シート部材3は、加熱により膨張する熱膨張性を有する。熱膨張性シート部材3は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。
熱膨張性シート部材3は、熱膨張性樹脂組成物より製造される。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と、熱膨張性材料とを含有する。熱膨張性シート部材3が、樹脂成分を含有する熱膨張性樹脂組成物により形成されることで、熱膨張性シート部材3の湾曲形状の形成や変形が容易となり、上記のとおりにスリーブ状にすることができる。
熱膨張性材料としては、熱膨張性無機物が挙げられる。熱膨張性無機物を使用することで、火災の加熱により適切に膨張され、また、膨張後の膨張残渣の機械強度が優れ、耐火性を良好にしやすくなる。なお、ここでいう熱膨張性材料とは、後述する成形などによって実質的に膨張せず、熱膨張性樹脂組成物は、熱膨張性材料において熱膨張性が維持される。
熱膨張性材料の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以下とすることで、火災以外の加熱により、熱膨張性材料が誤って膨張することを防止する。また、上限値以下とすることで、火災の加熱により確実に熱膨張性材料を膨張させやすくなる。
また、熱膨張性材料の膨張開始温度は、所定量(例えば、100mg)の熱膨張性材料を一定の昇温速度(例えば、10℃/分)で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、かつ法線方向の応力を測定できるものであればよく、例えばレオメーターを使用すればよい。
熱膨張性材料の膨張倍率は3倍以上であることが好ましく、10倍以上が好ましい。膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば50倍である。なお、膨張倍率は、熱膨張性材料を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)により算出するとよい。
以下、熱膨張性材料が、熱膨張性黒鉛である場合の熱膨張性樹脂組成物について詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
エラストマーの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等のゴムが挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、および塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
熱膨張性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂である場合に好ましく使用される。可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
熱膨張性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲である。
可塑剤は、これら下限値以上とすると、成形性が良好になりやすく、上限値以下となると、成形体に適度な強度が付与される。
樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、熱膨張性材料の成形性などを良好にできる。また、柔軟性を確保して、スリーブ状に変形可能にしやすくなる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填剤などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものなども使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の粒度は、特に限定されないが、20~200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度は、下限値以上となると黒鉛の膨張度が大きくなりやすく、発泡性が良好になる。また、上限値以下とすることで、樹脂と混練する際の分散性が良好となり、成形性が向上する。
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば3質量部以上300質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量は、3質量部以上となることで、熱膨張性が良好となる。また、300質量部以下となることで、成形性が良好となり、シール部材の表面性、機械的物性、柔軟性なども良好となる。これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは10質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは15質量部以上100質量部以下の範囲である。
熱膨張性樹脂組成物は、さらに無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤は、一般に熱膨張性樹脂組成物に使用されている無機充填剤であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。無機充填剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における無機充填剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましく3質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは10質量部以上150質量部以下の範囲である。
本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種の添加成分を含有させることができる。

この添加成分の種類は特に限定されず、各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、滑剤、収縮防止剤、結晶核剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、補強剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、及び表面処理剤等が挙げられる。添加成分の添加量は成形性等を損なわない範囲で適宜選択できる。添加成分は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱膨張性樹脂組成物は、樹脂、熱膨張性無機物及び任意成分をビーズミル、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、及び遊星式撹拌機等の公知の装置を用いて混合することにより得ることができる。
熱膨張性シート部材3は、熱膨張性樹脂組成物より製造される熱膨張層と、熱膨張層を支持する基材とを備える構成とすることができる。
基材としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体等の金属箔複合体、紙、布、樹脂フィルムなどが挙げられる。これらのなかでは、耐火性の観点から、不燃材料で構成されることが好ましく、具体的には、金属箔及び金属箔複合体が挙げられ、これらの中では金属箔複合体が好ましい。不燃材料とは、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。
基材は、熱膨張性シート部材3の一方の面を覆うように配置されるとよい。また、基材は、挿通体21とは反対側の位置となる、熱膨張性シート部材3の外周側3Aに配置されていることが好ましい。熱膨張性シート部材3の外周側3Aに基材が配置されていることで、内側に配置されている熱膨張層を良好に支持し、熱膨張層に熱を均等に伝達させることができるため、熱膨張層の機能を発揮しやすくさせることができる。
熱膨張性シート部材3の厚みは、特に限定されないが、例えば0.5~10mm、好ましくは1~5mmである。熱膨張性シート部材3がこれら上限値以下の厚みを有することで、熱膨張性シート部材3に柔軟性が付与される。また、下限値以上の厚みを有することで、耐火性能を確保しやすくなる。
熱膨張層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.05~6mm、好ましくは0.1~5mmである。耐火材層がこれら上限値以下の厚みを有することで、熱膨張性シート部材3に柔軟性が付与される。また、下限値以上の厚みを有することで、耐火性能を確保しやすくなる。
基材の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。基材がこれら上限値以下の厚みを有することで、熱膨張性シート部材3に柔軟性が付与される。また、下限値以上の厚みを有することで、耐火性能を確保しやすくなる。
熱膨張性シート部材3と仕切り部11との間には、空隙があるとよい。熱膨張性シート部材3と仕切り部11との間の空隙は、挿通体21の軸方向と直交する動きに対する裕度を生み、挿通体21が動いた場合であっても、空隙による裕度によって熱膨張性シート部材3が挿通体21と一緒に動いてしまうことを緩衝し、熱膨張性シート部材3が区画貫通部15からずれることを抑制することができる。
〔カバー部材〕
カバー部材4は、熱膨張性シート部材3の外周側3Aで連結し、区画貫通部15の開口13Aと挿通体21との間の空隙50の少なくとも一部を塞ぐ。カバー部材4は、例えば、接着剤、粘着剤及び粘着テープなどの公知の固定手段によって、熱膨張性シート部材3の外周面の一端部30側に固定されるとよい。ここで、接着剤、粘着剤及び粘着テープは、不燃材料、準不燃材料又は難燃材料のいずれかであることが好ましく、接着剤、粘着剤などに難燃剤などを配合するとよい。
カバー部材4は、図2に示したように、区画貫通部15の開口13Aを覆う部分が、挿通体21を包囲し、かつ外側から巻かれた紐状の留付材22によって挿通体21に固定される。紐状の留付材22は、曲げることができる部材であればよく、ワイヤを含むワイヤ部材であることが好ましい。ワイヤ部材は、金属製のワイヤ単独でもよいし、ねじりっこ(登録商標)などの金属製のワイヤを樹脂で被覆した樹脂被覆ワイヤ、モールなどと呼ばれるワイヤと繊維を絡ませたものなどでもよい。ワイヤ部材を使用すると、ひねったり、ねじったりするだけで、カバー部材4を挿通体21に固定できる。
また、カバー部材4は、タッカー、ビスなどの留付材によって挿通体21に固定されるとよい。もちろん、これらの2以上の留付材の組み合わせにより、カバー部材4は、挿通体21に固定されてもよい。
カバー部材4は、少なくとも一部が区画貫通部15の内部に配置されるとよく、具体的には、カバー部材4は、一部が開口13Aの内部に配置されるとよい。カバー部材4は、開口13Aと、スリーブ状にした熱膨張性シート部材3との間に配置される。
カバー部材4は、さらに留付材23によって区画貫通部15の仕切り部11に固定してもよい。
カバー部材4を留める留付材23は、図3に示すように、カバー部材4が連結された熱膨張性シート部材3の箇所において仕切り部11へ挿し込むことで、カバー部材4を区画貫通部15に固定して留めることが可能である部材であればよい。
カバー部材4は、図4に示すように、仕切り部11の外面11Aと凸部材5とに挟まれる位置関係で配置されることがある。この場合において、カバー部材4を留める留付材23は、凸部材5から仕切り部11の外面11Aへ挿し込むことで、カバー部材4を区画貫通部15に固定して留めることが可能である部材であればよい。
また、カバー部材4は、図5に示すように、凸部材5の少なくとも一部が区画貫通部15の内部に配置されることで、凸部材5及び開口13Aに沿って配置されることがある。この場合において、カバー部材4を留める留付材23は、凸部材5が配置された位置より奥側であって、カバー部材4が連結された熱膨張性シート部材3の箇所において仕切り部11へ挿し込むことで、カバー部材4を区画貫通部15に固定して留めることが可能である部材であればよい。
留付材23としては、例えば、タッカー、ビス等の固定部材などが挙げられる。留付材23は、熱膨張性シート部材3、カバー部材4及び凸部材5の固定強度を向上させるために、ワッシャー23Aを熱膨張性シート部材3、カバー部材4及び凸部材5との間に介在させることが好ましい。
カバー部材4と挿通体21との間には、空隙50がある。カバー部材4と挿通体21との間の空隙50は、挿通体21の軸方向の動きに対する裕度、及び、挿通体21の開口13A近傍での動きに対する裕度を生む。このように、空隙50によって挿通体21の動きに対する裕度を生むことで、挿通体21が動いた場合であっても、空隙50による裕度によってカバー部材4が挿通体21と一緒に動いてしまうことを緩衝し、カバー部材4が区画貫通部15からずれることを抑制することができる。
カバー部材4は、挿通体21の軸方向の動きに対する裕度を持って固定される。カバー部材4が裕度を持って挿通体21に固定されることで、熱膨張性シート部材3の設置後に、熱膨張性シート部材3の内側に配置された挿通体21を軸方向に動かした場合であっても、カバー部材4の裕度によって熱膨張性シート部材3が挿通体21と一緒に動いてしまうことを緩衝することができる。そして、カバー部材4が裕度を持って挿通体21に固定されることで、熱膨張性シート部材3が挿通体21と一緒に動いてしまうことを緩衝することができるので、熱膨張性シート部材3が区画貫通部15からずれることを抑制することができる。つまり、このような構成とすることで、熱膨張性シート部材3を区画貫通部15における適切な位置に維持して配置し続けることができ、区画貫通部15の耐火性を維持することができる。
カバー部材4が挿通体21の軸方向の動きに対して裕度を持って固定される構成としては、例えば、カバー部材4の少なくとも一部が屈曲ないし湾曲できるような柔軟性や伸縮性を有する材料による構成、及び、カバー部材4の少なくとも一部が挿通体21に対してたるみを有するように固定する構成等が挙げられる。
カバー部材4は、不燃材料で構成されるとよく、アルミニウム箔などの金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体等の金属箔複合体で構成することができる。カバー部材4は、防火性の観点から、少なくとも一方の表面が金属箔複合体で覆われている構成であるとよい。また、カバー部材4は、本発明の趣旨に反しない範囲で、金属箔複合体などの不燃材料に熱膨張性を有する部材が積層されたものであってもよい。熱膨張性を有する部材は、、熱膨張性樹脂組成物などにより形成されるとよい。カバー部材4は、上記の中でも少なくとも金属箔複合体を有するが好ましい。
カバー部材4の厚みは、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
なお、カバー部材4の厚みは、カバー部材4が熱膨張性シート部材3よりも柔軟性を有し、施工性を向上させる観点から、熱膨張性シート部材3の厚みより薄いことが好ましい
〔凸部材〕
凸部材5は、カバー部材4の外周側4Aに設けられる部材である。凸部材5は、カバー部材4の外周面より外側に突出する。凸部材5は、熱膨張性シート部材3の区画貫通部15における位置を決定することができる。具体的には、凸部材5は、外面11Aにおいて開口13Aの外周に係止され、熱膨張性シート部材3の一端部30側が所定の位置に配置されるようになる。凸部材5の形状は、特に限定されず、例えば、カバー部材4の外周側4Aの周囲に亘るライン状、及び、カバー部材4の外周側4Aの周囲に点在するブロック状等が挙げられる。
凸部材5は、熱膨張性シート部材3とカバー部材4との連結する境界部近傍に設けられているとよい。凸部材5は、接着剤や、粘着テープなどによって、カバー部材4に固定されるとよい。境界部は、カバー部材4において熱膨張性シート部材3が設けられた部分と、設けられない部分の境界である。凸部材5は、境界部に重なるように配置されてもよいが、厳密に重なる必要はなく、本発明の効果を奏する限り、境界部からずれて配置されてもよい。具体的には、凸部材5は、外面11Aに係止された状態になったときに、開口13Aの内部に熱膨張性シート部材3の少なくとも一部が配置される程度であれば、境界部に対して、熱膨張性シート部材3から遠ざかる位置(図2における左側)に配置されてもよい。また、凸部材5が外面11Aに係止した状態になったときに、開口13Aの内部にカバー部材4の一部が配置される程度であれば、境界部に対して、熱膨張性シート部材3が設けられる側の位置(図2における右側)に配置されてもよい。
凸部材5は、区画貫通処理材を仕切り部11に係止可能な材料であれば特に限定されず、例えば、発泡体及びコーキング材等が挙げられ、これら2種以上を複合した複合材料であってもよい。発泡体は、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン及び発泡ポリウレタン等が挙げられる。発泡体は、難燃剤などを含有させて、難燃性発泡体としてもよい。コーキング材は、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂等の合成樹脂系材料を主成分に充填剤及び難燃剤等を配合してなるものが挙げられる。また、発泡体以外のクッション材であってよい。これらの中では、凸部材5は、熱膨張性シート部材3を設置された箇所に維持されるための追従性、粘着層を介したカバー部材4との密着性、通常時の寸法維持性、断熱性、意匠性、防水性の観点から発泡体が好ましい。
また、凸部材5は、図2に示すように、仕切り部11の外面11Aに配置されることで、仕切り部11とカバー部材4との間に間隙が形成されてしまう場合であっても、間隙を塞ぐこともできる。また、凸部材5は、仕切り部11とカバー部材4との間の間隙を塞ぐように配置することで、当該間隙を隠すことができ、意匠性が向上し、かつ耐火性を向上させることができる。
区画貫通処理構造10において、カバー部材4と仕切り部11との間、熱膨張性シート部材3と開口13Aとの間、及び、熱膨張性シート部材3と挿通体21との間に、隙間がある場合、隙間を塞ぐように、さらに、耐火材を配置することが好ましい。
耐火材は、耐火性を有するパテ材等の隙間を充填する充填材を採用することができる。充填材を採用した場合は、カバー部材4と仕切り部11との間、熱膨張性シート部材3と開口13Aとの間、及び、熱膨張性シート部材3と挿通体21との間に形成される隙間に充填材を充填するとよい。
また、耐火材は、耐火性を有するパテ材等からなる耐火材層と基材が積層されたシート材を採用することができる。シート材を採用した場合は、カバー部材4と仕切り部11との間、熱膨張性シート部材3と開口13Aとの間、及び、熱膨張性シート部材3と挿通体21との間に形成される隙間にシート材を配置するとよい。
耐火材としては、耐火性を有する材料であれば特に限定されず、上記の熱膨張性材料を含有する熱膨張性樹脂組成物により形成される耐火材であることが好ましい。
耐火性を有するパテ材として使用されるパテ組成物についてより詳細に説明する。パテ組成物は、バインダー成分と、充填剤とを含有する。
バインダー成分は、熱膨張性樹脂組成物で用いる樹脂成分を適宜使用でき、好ましくはエラストマーを使用することができる。また、バインダー成分としては、液状エラストマーであることがより好ましく、例えば、液状ポリブタジエンゴム、液状スチレン・ブタジエンゴム、液状クロロプレンゴム及び液状イソプレンゴム等が挙げられる。
充填剤としては、熱膨張性樹脂組成物で用いる無機充填剤を適宜使用することができる。無機充填剤としては、中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、タルク及びカオリナイト、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化亜鉛等の金属水酸化物、リン酸塩、ポリリン酸塩、高分子無機ポリリン酸塩、リン酸塩鉱物等のリン化合物、並びに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム及び炭酸バリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸鉄、炭酸銀等の炭酸塩化合物などが好ましい。これら無機充填剤を使用することで、パテ材に耐火性を付与しやすくなる。
パテ組成物は、必要に応じて、熱膨張性樹脂組成物と同様に、可塑剤、粘着付与樹脂、その他の成分を配合することができる。
ただし、パテ組成物は、熱膨張性材料を含有しない。
パテ組成物における無機充填剤の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、好ましく30質量部以上500質量部以下の範囲であり、より好ましくは50質量部以上400質量部以下の範囲であり、更に好ましくは80質量部以上250質量部以下の範囲である
パテ材は、上記熱膨張性樹脂組成物と同様の方法により形成できる。
なお、以上の説明では、パテ組成物は、上記のとおりバインダー成分として樹脂成分(有機物)を使用する例を説明したが、耐火パテとして使用できる従来公知のものを適宜選択して使用できる。例えば、バインダー成分に樹脂成分を使用する必要はなく、有機物を含有しない耐火パテであってもよく、例えば粘土からなる耐火パテであってもよい。
本実施形態における区画貫通処理構造10の施工方法について説明する。区画貫通処理構造10の施工方法は、以下の工程(I)~(III)を含む。
(I)仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Aに、スリーブ状の上述した熱膨張性シート部材3の少なくとも一部を挿入し、開口13Aの内面に沿って熱膨張性シート部材3を配置する工程。
(II)熱膨張性シート部材3の外周側3Aで連結したカバー部材4で、区画貫通部15の開口13Aと挿通体21との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐ工程。
(III)熱膨張性シート部材3を挿入開口13Aに挿入する際、カバー部材4の外周側4Aに設けられた凸部材5が仕切り部11に接触するまで挿入する工程。
以下に、本実施形態における区画貫通処理構造10の施工方法の具体例として、熱膨張性シート部材3と、カバー部材4と、凸部材5とを備える一体物である区画貫通処理部材を用いる場合の施工について説明するが、本発明の施工方法は以下に限定されない
スリーブ状に変形可能な熱膨張性シート部材3は、シート状であり、図6に示すように、一方の面3Aの一端部30側にカバー部材4が積層されて連結されている。また、カバー部材4の一方の面4A上であって、熱膨張性シート部材3とカバー部材4との連結する境界部近傍に凸部材5が設けられている。凸部材5は、図6の構成では、発泡体が好ましい。また、凸部材5の端部同士も突き合わされることが好ましい。
スリーブ状に変形可能な熱膨張性シート部材3は、図1に示すように、区画貫通部15を構成する開口13A,13Bの内周面の形状に適合するようにスリーブ状に変形する。すなわち、熱膨張性シート部材3は、その外周面が、開口13A,13Bの内周面の形状に沿うようにスリーブ状にするとよい。開口13A,13Bの内周面の形状は、一般的に、円、楕円、またはこれらに近似する形状であるので、熱膨張性シート部材3は丸められてスリーブ状にされるとよく、円、楕円、又はこれらに近似する形状にされるとよい。
また、熱膨張性シート部材3がスリーブ状にされる際に、端部同士は突き合わされるが、この際、端部同士は、接着剤、粘着剤及び粘着テープなどにより接着されてもよい。ここで、接着剤、粘着剤及び粘着テープは、不燃材料、準不燃材料又は難燃材料のいずれかであることが好ましく、接着剤、粘着剤などに難燃剤などを配合するとよい。粘着テープは、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを備えるが、基材及び粘着剤層それぞれが、不燃材料、準不燃材料又は難燃材料のいずれかで構成されるとよい。ただし、熱膨張性シート部材3がスリーブ状にされる際に、端部同士は突き合わされる態様に限定されず、端部同士がオーバーラップするようにしてスリーブ状としてもよい。
スリーブ状の熱膨張性シート部材3を区画貫通部15の開口13Aに挿入した後、凸部材5が仕切り部11の外面11Aにおいて開口13Aの外周に係止され、スリーブ状の熱膨張性シート部材3が区画貫通部15の所定位置に配置される。スリーブ状の熱膨張性シート部材3を区画貫通部15に配置した後、開口13Aより外側には、熱膨張性シート部材3の一端部30に設けられたカバー部材4が延出される。開口13Aより延出するカバー部材4は、適宜曲げられたり折られたりして、縮径させられ、挿通体21の外周に密接しつつ包囲する。そして、カバー部材4は、その包囲する部分に紐状の留付材22が巻き付けられ、その紐状の留付材22によって挿通体21に固定され、これにより、区画貫通部15の一方の開口13Aが、カバー部材4により覆われることになる。
以上の本実施形態の区画貫通処理構造10の構成によれば、熱膨張性シート部材3が火災等により加熱されて膨張した場合であっても、熱膨張性シート部材3を区画貫通部15の所定位置に維持することができ、区画貫通部処理構造10の適切な耐火性能を維持することができる。具体的には、凸部材5は、カバー部材4を外側から押さえ込むことで、熱膨張性シート部3が膨らんでカバー部材4が外側に押されても、区画貫通部15の内部に配置されたカバー部材4が区画貫通部15の外側に移動することが防止でき、耐火性能を維持できる。また、凸部材5を備えることで、熱膨張性シート部材3を区画貫通部15の所定位置に維持することができ、区画貫通部処理構造10に適切な耐火性能を付与することができる。また、凸部材5を備えることで、仕切り部11とカバー部材4との間に間隙が形成されてしまう場合であっても、間隙を塞ぐことができ、意匠性が向上し、かつ耐火性を向上させることができる。
また、本実施形態では、耐火パテ、ロックウールなどの充填材を区画貫通部15の内部に配置することなく、熱膨張性シート部材3、カバー部材4及び凸部材5により耐火構造が形成されるので、作業者によるバラつきが生じることもない。
さらに、本実施形態では、少なくともカバー部材4の少なくとも一部が露出しており、外部から視認可能である。そのため、区画貫通処理材は、規定通り施工されたことが目視や写真撮影により簡単に点検できる。また、施工忘れなども発生にくくなる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、図7に示すように、凸部材5がカバー部材4の外周側4Aのみに設けられる構成ではなく、凸部材51をカバー部材4の内周側4Bにさらに備える構成である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
凸部材51は、カバー部材4の内周側4Bに設けられる部材である。凸部材51は、カバー部材4の内周面より内側に突出する。凸部材51の形状は、特に限定されず、例えば、カバー部材4の内周側4Bの周囲に亘るライン状、及び、カバー部材4の内周側4Bの周囲に点在するブロック状等が挙げられる。
凸部材51は、発泡体及びコーキング材等が挙げられ、これら2種以上を複合した複合材料であってもよい。発泡体は、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン及び発泡ポリウレタン等が挙げられる。発泡体は、難燃剤などを含有させて、難燃性発泡体としてもよい。コーキング材は、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂等の合成樹脂系材料を主成分に充填剤及び難燃剤等を配合してなるものが挙げられる。また、発泡体以外のクッション材であってよい。これらの中では、凸部材51は、熱膨張性シート部材3を設置された箇所に維持されるための追従性、粘着層を介したカバー部材4との密着性、通常時の寸法維持性、断熱性、意匠性、防水性の観点から発泡体が好ましい。凸部材51は、上述した凸部材5と同じ材料からなるものであってもよく、異なる材料からなるものであってもよい。
凸部材51は、カバー部材4の内周側4Bであって、熱膨張性シート部材3の一端部30より外側(図7における左側)に配置されるとよい。凸部材51を当該位置に配置することで、熱膨張性シート部材3が火災等により加熱されて膨張した場合であっても、熱膨張性シート部材3を区画貫通部15の所定位置に維持することができ、区画貫通部処理構造10の適切な耐火性能を維持することができる。具体的には、凸部材51は、火災等により加熱されて膨張した熱膨張性シート部材3を外側から押さえ込むことで、熱膨張性シート部3を開口13Aから突出しないように抑制することができ、耐火性能を維持できる。
[その他の実施形態]
本発明は、以上の第1及び第2の実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない限りいかなる改良、変更を行ってもよい。
例えば、第1実施形態においては、図6に示したように、熱膨張性シート部材3と、カバー部材4と、凸部材5とを備える一体物である区画貫通処理材によって区画貫通処理構造を施工した態様を示したが、一体物以外の態様によっても施工することができる。
また、第2の実施形態においては、図7に示したように、カバー部材4の外周側4Aに凸部材5が設けられ、カバー部材4の内周側4Bに凸部材51がそれぞれ設けられる態様を示したが、カバー部材4の内周側4Bに凸部材51のみが設けられる態様とすることができる。
また、以上の第1及び第2の実施形態では、仕切り部11の両方の開口13A,13B(すなわち、仕切り部11の両側)に、いずれも同じ構造の区画貫通処理材が設けられることを前提に説明したが、各開口13A,13Bには、別の構造の区画貫通処理構造が設けられてもよい。例えば、一方の開口13Aに第1の実施形態に係る区画貫通処理構造が設けられ、他方の開口13Bに第2の実施形態に係る区画貫通処理構造が設けられてもよい。また、開口13Bにおける区画貫通処理材が省略されてもよい。
また、以上の説明では、仕切り部11は、内部に中空部13がある中空壁であったが、中空壁に限定されず、中空が設けられない壁であってもよく、例えば1枚の壁材からなるものでもよい。なお、仕切り部11が1枚の壁材からなるものである場合、開口は1つになる。
また、仕切り部11は、建築物の壁に限定されず、建築物の天井、床であってもよい。仕切り部は、天井、床の場合でも、2枚の仕切り材の間に中空部を有する構造であってもよいし、中空部がない構造であり、例えば1枚の仕切り材から構成されてもよい。なお、仕切り部11が1枚の仕切り材からなるものである場合、開口は1つになる。
以上の各実施形態において、区画貫通処理構造10における吸音性を向上させる観点から、熱膨張性シート部材3及びカバー部材4が吸音層(図示せず)を有する構成とすることができる。
吸音層は、グラスウール、ロックウール、軟質ウレタンフォーム、セラミックファイバー、セルロースファイバー、及びニードルパンチマットなどにより構成することができる。
吸音層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。吸音層がこれら上限値以下の厚みを有することで、テープ状部材4の設置を容易にすることができる。また、吸音層がこれら下限値以上の厚みを有することで、吸音性能を確保しやすくなる。
以上の各実施形態において、区画貫通処理構造10における遮音性を向上させる観点から、熱膨張性シート部材3及びカバー部材4が遮音層(図示せず)を有する構成とすることができる。
遮音層は、アスファルトシート、オレフィンシート、及び鉄系軟質シートなどにより構成することができる。また、遮音層は、炭酸カルシウムなどの無機フィラーを高充填した樹脂材料によっても構成することができる。具体的には、オレフィン系樹脂100質量部に対して、無機フィラーを300~600質量部含有する樹脂組成物から構成されることが好ましく、350~550質量部含有する樹脂組成物から構成されることがより好ましく、400~500質量部含有する樹脂組成物から構成されることがさらに好ましい。このように、無機フィラーを高充填した樹脂材料は、単位体積当たりの質量が大きくなることによって、遮音効果を効果的に発揮する。
遮音層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。遮音層がこれら上限値以下の厚みを有することで、テープ状部材4の設置を容易にすることができる。また、遮音層がこれら下限値以上の厚みを有することで、遮音性能を確保しやすくなる。
吸音層又は遮音層が設けられる場合、吸音層又は遮音層は、基材に隣接させることが好ましく、それにより、吸音層又は遮音層は基材に支持させることができる。
なお、吸音層又は遮音層は、熱膨張性シート部材3及びカバー部材4のいずれかのみに設けられてもよい。また、熱膨張性シート部材3及びカバー部材4においてそれぞれ2層以上設けられてもよい。
3 熱膨張性シート部材
4 カバー部材
5,51 凸部材
10 区画貫通処理構造
11 仕切り部
12A,12B 壁材
13 中空部
13A,13B 開口
13E 間隙
15 区画貫通部
21 挿通体
22、23 留付材
50 空隙

Claims (16)

  1. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、
    前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口に少なくとも一部がスリーブ状で挿入され、前記開口の内面に沿って配置された熱膨張性シート部材と、
    前記熱膨張性シート部材の外周側で連結し、前記区画貫通部の前記開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐカバー部材と、
    前記カバー部材の外周側又は内周側に設けられる凸部材とを備える、区画貫通処理構造。
  2. 前記凸部材は、前記熱膨張性シート部材と前記カバー部材との連結する境界部近傍に設けられている、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  3. 前記熱膨張性シート部材が前記開口から突出しない、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  4. 前記カバー部材を前記仕切り部及び前記挿通体の少なくともいずれかに固定させる留付材をさらに備える、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  5. 前記カバー部材と前記仕切り部との間、前記熱膨張性シート部材と前記開口との間、及び、前記熱膨張性シート部材と前記挿通体との間に形成される隙間の少なくともいずれかに耐火材が配置されている、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  6. 前記耐火材が充填材である、請求項5に記載の区画貫通処理構造。
  7. 前記耐火材がシート材である、請求項5に記載の区画貫通処理構造。
  8. 前記カバー部材と前記挿通体との間、及び、前記熱膨張性シート部材と前記仕切り部との間の少なくともいずれかに空隙がある、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  9. 前記凸部材が、発泡体である、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  10. 前記凸部材は、前記カバー部材の外周側に設けられる、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  11. 前記凸部材は、前記カバー部材の内周側にさらに設けられる、請求項10に記載の区画貫通処理構造。
  12. 前記熱膨張性シート部材と、前記カバー部材と、前記凸部材とを備える区画貫通処理材が前記仕切り部の両側に設けられる、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  13. 前記熱膨張性シート部材の少なくとも一方の表面が金属箔複合体で覆われている、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  14. 前記カバー部材が少なくとも金属箔複合体を有する、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  15. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理材であって、
    前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口に少なくとも一部がスリーブ状で挿入され、前記開口の内面に沿って配置された熱膨張性シート部材と、
    前記熱膨張性シート部材の外周側で連結し、前記区画貫通部の前記開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐカバー部材と、
    前記カバー部材の外周側又は内周側に設けられる凸部材とを備える、区画貫通処理材。
  16. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を耐火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、
    前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口に、スリーブ状の熱膨張性シート部材の少なくとも一部を挿入し、前記開口の内面に沿って前記熱膨張性シート部材を配置する工程と、
    前記熱膨張性シート部材の外周側で連結したカバー部材で、前記区画貫通部の前記開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐ工程と、
    前記カバー部材の外周側又は内周側に設けられた凸部材が前記仕切り部に接触するまで挿入する工程とを含む、区画貫通処理構造の施工方法。
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