JP2023036480A - 区画貫通処理構造、区画貫通処理材、区画貫通処理構造の施工方法及びカバー部材 - Google Patents

区画貫通処理構造、区画貫通処理材、区画貫通処理構造の施工方法及びカバー部材 Download PDF

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Hideyasu Nakajima
明津 廣野
Akitsu Hirono
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Abstract

Figure 2023036480000001
【課題】区画貫通処理材が規定どおりに設置されやすくなり、かつ規定どおりに設置されていることを簡単に確認できる、区画貫通処理構造、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材、区画貫通処理構造の施工方法及びカバー部材を提供する。
【解決手段】建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を防火構造とする区画貫通処理構造であって、区画貫通部15の開口13Cを覆うように設置されるカバー部材5と、カバー部材5を区画貫通処理構造に固定させる留付材6A,6Bとを備え、カバー部材5には、留付材の6A,6Bの設置位置を示すマークが付されている、区画貫通処理構造。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築物などの仕切り部において形成される区画貫通処理構造、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材、区画貫通処理構造の施工方法及びカバー部材に関する。
集合住宅、オフィスビル、学校等の建築物において、壁等の仕切り部には、ケーブル類、配管類などの長尺の挿通体を通すために、区画貫通部が設けられることがある。区画貫通部は、いずれかの区画で火災が発生した際に、他の区画への延焼を防止するために、防火措置を施した構造(防火構造)にすることが求められている。仕切り部は、2枚の壁部からなり、壁部間が中空部となっている中空壁が一般的である。
区画貫通部を防火構造とする方法は、例えば、長尺の挿通体と貫通孔の間隙に、耐火パテや、耐火パテを袋体内部に詰めた耐火パックなどを充填する方法が知られている。不定形充填材を使用する場合、各壁部の貫通孔内部と、挿通体の間には、耐火材よりなる筒状部材などが合わせて配設されることもある(例えば、特許文献1、2参照)。
特許第6150933号公報 特許第6348320号公報
内部にケーブル類及び配管類等の長尺の挿通体が挿通される区画貫通構造においては、開口との挿通体の隙間や、隙間を覆った耐火材などをカバー部材で覆うことで防火構造を形成して耐火性能を得ることがある。しかし、カバー部材が規定どおりに設置されないと耐火性能が損なわれてしまう。また、カバー部材が規定どおりに設置されたことが目視などにより容易に確認できないという問題もある。
そこで、本発明は、区画貫通処理材が規定どおりに設置されやすくなり、かつ規定どおりに設置されていることを簡単に確認できる、区画貫通処理構造、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材、区画貫通処理構造の施工方法及びカバー部材を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、前記区画貫通部の開口を覆うように設置されるカバー部材と、前記カバー部材を区画貫通処理構造に固定させる留付材とを備え、前記カバー部材には、前記留付材の設置位置を示すマークが付されている、区画貫通処理構造。
[2]前記カバー部材が、前記留付材によって、少なくとも前記仕切り部及び前記挿通体のいずれかに留められる、[1]に記載の区画貫通処理構造。
[3]前記マークは、前記留付材によって少なくとも一部が覆われ、少なくとも一部が外部から視認不可能である、[1]又は[2]に記載の区画貫通処理構造。
[4]前記カバー部材が変形可能なシート状である、[1]~[3]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[5]前記カバー部材の内側に配置される耐火材を備える、[1]~[4]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[6]前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材、及び、前記挿通体に一周以上巻き付けて配置されるテープ状部材の少なくともいずれかを備え、前記シート状部材及び前記テープ状部材の少なくともいずれかに耐火材を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[7]前記区画貫通部の内部に挿通体以外に何も設けられない、[1]~[6]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[8]前記カバー部材と前記仕切り部及び前記挿通体のいずれかとの間に空隙がある、[1]~[7]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[9]前記カバー部材と前記留付材とを備える区画貫通処理材が、前記仕切り部の両側に設けられる、[1]~[8]のいずれかに記載の区画貫通処理構造。
[10]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理材であって、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐカバー部材を備え、前記カバー部材には、前記カバー部材を区画貫通処理構造に固定する留付材の設置位置を示すマークが付されている、区画貫通処理材。
[11]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口を覆うようにカバー部材を設置する工程と、前記カバー部材を留付材によって固定する工程とを含み、前記カバー部材には、前記留付材の設置位置を示すマークが付されている、区画貫通処理構造の施工方法。
[12]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部の開口を覆うカバー部材であって、第1カバー部と、それぞれが前記第1カバー部と連接して設けられ、互いに隔てられた複数の第2カバー部とを備える、カバー部材。
[13]前記第1カバー部には、前記挿通体との固定箇所を示す第1マークが付されている、[12]に記載のカバー部材。
[14]前記第2カバー部には、前記仕切り部との固定箇所を示す第2マークが付されている、[12]又は[13]に記載のカバー部材。
[15]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、前記区画貫通部の開口を覆う、[12]~[14]のいずれかに記載のカバー部材と、前記カバー部材を区画貫通処理構造に固定させる留付材とを備える、区画貫通処理構造。
[16]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、前記区画貫通部の開口を覆うように、[12]~[14]のいずれかに記載のカバー部材を設置する工程と、前記カバー部材を区画貫通処理構造に留付材によって固定させる工程とを含む、区画貫通処理構造の施工方法。
本発明によれば、区画貫通処理材が規定どおりに設置されやすくなり、かつ規定どおりに設置されていることを簡単に確認できる、区画貫通処理構造、区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理材、区画貫通処理構造の施工方法及びカバー部材を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造において、区画貫通処理材が設置される前の状態を示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す平面図(その1)である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造に用いられるカバー部材を示す平面図(その1)である。 図5(a)は、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す平面図(その2)であり、図5(b)は、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造に用いられるカバー部材を示す平面図(その2)である。 図6(a)は、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す平面図(その3)であり、図6(b)は、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造に用いられるカバー部材を示す平面図(その3)である。 図7(a)は、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す平面図(その4)であり、図7(b)は、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造に用いられるカバー部材を示す平面図(その4)である。 本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造において、区画貫通処理材が設置される前の状態を示す斜視図である。 本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態に係る区画貫通処理構造において、区画貫通処理材が設置される前の状態を示す斜視図である。 本発明の第3の実施形態に係る区画貫通処理構造を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造の別の変形例を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る区画貫通処理構造の別の変形例を示す断面図である。
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造は、図1、2に示すように、建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を防火構造とする区画貫通処理構造である。
そして、本発明の第1の実施形態に係る区画貫通処理構造に用いる区画貫通処理部材は、シート状部材3と、カバー部材5とを備え、留付材6A,6Bをさらに備える。
本発明の区画貫通処理構造における仕切り部11は、建築物の壁面において区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を仕切る部材であり、仕切り部11の一方の外面11A側から他方の外面11B側に貫通する区画貫通部15を有する。図1で示す仕切り部11は、中空壁であり、間隔(中空部13)を介して配置される2枚の壁材(仕切り材)12A,12Bから構成される。そのため、区画貫通部15は、一方の壁材12Aに形成された貫通孔13Aと、他方の壁材12Bに形成された貫通孔13Bと、これらの間にある中空部13によって構成される。そして、一方の壁材12Aの外面が仕切り部11の外面11Aを構成し、他方の壁材12Bの外面が仕切り部11の外面11Bを構成する。貫通孔13A,13Bは、例えば、円形、楕円形、又は、これらに近似する形状を有すればよい。なお、外面11A、11Bそれぞれにおいて貫通孔13A,13Bは、仕切り部11に設けられた区画貫通部15の開口13C,13Dを構成する。
なお、本明細書において、区画貫通部15に施工され、区画貫通処理構造10を形成するための部材(本実施形態では、シート状部材3、カバー部材5など)を纏めて区画貫通処理材と称することがある。
また、以下では、仕切り部13の一方の開口13C側における区画貫通処理構造の構成について説明するが、本実施形態では、他方の開口13D側における区画貫通処理構造の構成も同様であるのでその説明は省略する。
第1の実施形態に係る区画貫通処理構造10は、区画貫通処理材として、シート状部材3と、カバー部材5とを備え、カバー部材5が留付材6によって区画貫通処理構造に固定される。そして、シート状部材3及びカバー部材5の少なくともいずれかが、後述するとおりに耐火材を有する。
〔シート状部材〕
シート状部材3は、図1に示すように、挿通体21が内部に挿通されるためのスリット30を有し、スリット30の少なくとも1つがシート状部材3の外縁まで延在する。スリット30は、切込みにより形成される。シート状部材3は、外縁まで延在するスリット30を介して、挿通体21をシート状部材3の内部に挿入させることが可能である。なお、スリット30は、挿通体21が内部に挿通されるための孔と、孔からシート状部材3の外縁まで延在するスリット30とを有する形態であってもよい。
スリット30によって挿通体21が挿入されたシート状部材3は、図2に示すように、仕切り部11の外側から、開口13Cと挿通体21の間の間隙13Eを覆うように、外面11A上に配置され、それにより、開口13Cと挿通体21の間の間隙13Eがシート状部材3により塞がれる。シート状部材3は、仕切り部11の外面11A及び挿通体21の外周の両方に接するように配置される。
シート状部材3は、シート状部材3に設けられる粘着剤層又は耐火材層などによって仕切り部11の外面11Aに固定されてもよいし、タッカー、ビスなどのシート状部材3とは別部材である固定部材によって仕切り部11の外面11Aに固定されるとよい。もちろん、これらの2以上の組み合わせにより、シート状部材3は、仕切り部11に固定されてもよい。また、シート状部材3は、留付材6Aによって、カバー部材5とともに仕切り部11に固定されてもよいし、固定部材と留付材6Aによって仕切り部11に固定されてもよい。
シート状部材3は、挿通体21及び仕切り部11に接するように設置されることが好ましい。シート状部材3が、挿通体21及び仕切り部11に接するように設置されることで、仕切り部11の開口13Cを塞ぐことができ、耐火性能を向上させることができる。
シート状部材3は、耐火材層及び不燃材料層の少なくともいずれかを有する。同様に、カバー部材5は、耐火材層及び不燃材料層の少なくともいずれかを有する。ただし、シート状部材3及びカバー部材5は、いずれか一方が耐火材層(耐火材)を有する。これにより、区画貫通処理構造10は、防火性能を確保でできる。また、防火性能の確保の観点からは、少なくともシート状部材3が耐火材層を有することが好ましく、より好ましくはシート状部材3が耐火材層を有し、かつカバー部材5が不燃材料層を有することが好ましい。
シート状部材3に使用される耐火材層は、加熱により膨張する熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。熱膨張性部材は、後述するように熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、耐火材層は、粘着性を有してもよい。
なお、シート状部材3における耐火材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。耐火材層がこれら上限値以下の厚みを有することで、シート状部材3に柔軟性が付与される。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
シート状部材3は、耐火材層単層からなってもよいし、不燃材料層単層からなってもよいし、耐火材層及び不燃材料層の両方を有してもよい。また、シート状部材3は、耐火材層及び不燃材料層以外の層を有してもよく、そのような層としては、例えば、基材層、粘着剤層などが挙げられる。
シート状部材3は、例えば、粘着性を有する耐火材層を有するか、又は粘着剤層を有してもよい。粘着性を有する耐火材層、及び粘着剤層は、シート状部材3において最外面を構成するとよい。
以上の構成により、シート状部材3とは別部材としての固定部材を使用しなくても、シート状部材3を仕切り部11に固定させることができる。また、耐火材層自体に粘着性を持たせることで、粘着剤層を設けなくてもよいので、シート状部材3の構成をより簡素化できる。
なお、シート状部材3は、その最外面に粘着性を有する耐火材層、又は粘着剤層が設けられる場合、その最外面に剥離シートが貼付されてもよい。剥離シートは、使用時に最外面から剥離されるとよい。
シート状部材3に使用される不燃材料層は、不燃材料で構成される。不燃材料とは、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。不燃材料層としては、具体的には、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体等の金属箔複合体が挙げられる。これらのなかでは、防火性の観点からアルミガラスクロスが好ましい。
不燃材料層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。不燃材料層がこれら上限値以下の厚みを有することで、シート状部材3に柔軟性が付与される。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
基材層として使用される基材は、上記した不燃材料以外であり、紙、布、樹脂フィルムなどが挙げられる。基材の厚みは、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
粘着剤層は、粘着剤により形成されるとよく、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。粘着剤層は、不燃性、準不燃性、又は難燃性であってもよく、使用する粘着剤に難燃剤などを配合してもよい。粘着剤層の厚みは、例えば5~400μm、好ましくは10~150μmである。
シート状部材3の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。
シート状部材3は、多層構造の場合、2層構造を有してもよいし、3層又はそれ以上の構造を有してもよい。2層構造としては、例えば、不燃材料層/耐火材層、不燃材料層/粘着剤層、耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層、基材/不燃材料層などの構造を有するものが挙げられる。
また、3層構造は、粘着剤層を有するものとして、不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。また、3層構造としては、不燃材料層/基材/耐火材層、基材/不燃材料層/耐火材層、基材/耐火材層/不燃材料層などの粘着剤層が設けられないものも挙げられる。
また、4層以上の構造としては、上記粘着剤層が設けられない3層構造の最外層としてさらに粘着剤層が設けられたものなどが挙げられる。代表的には、粘着剤層/不燃材料層/基材/耐火材層、不燃材料層/基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。
また、以上の多層構造においては、互いに隣接する、不燃材料層と耐火材層、不燃材料層と基材、耐火材層と基材は、公知の接着剤により接着されてもよく、したがって、上記各積層構造において、上記各層の間には接着剤層が設けられてもよい。
なお、多層構造において、シート状部材3は、その全体において同じ層構成を有していてもよいが、部分的に異なる構造を有してもよい。例えば、粘着剤層が、シート状部材3の一部に設けられ、一部が単層構造で、一部が多層構造でもよい。
シート状部材3の仕切り部3と対向する面3Bと反対側の面3A(図2参照)に金属箔複合体が積層されていることが好ましい。シート状部材3の面3Aに金属箔複合体が積層されていることで、シート状部材3の耐火性能を向上させることができる。
〔カバー部材〕
カバー部材5は、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cを覆うように設置される。ここで、本実施形態において、カバー部材5は、開口を覆う位置に配置される限り、カバー部材5と開口13Cの間に別の部材があってもよく、本実施形態では、カバー部材5と開口13Cの間にはシート状部材3が配置され、シート状部材3を介して開口13Cを覆うことになる。
このような構成により本実施形態におけるカバー部材5は、シート状部材3を覆い、かつシート状部材3によって塞がれていない間隙13Eの一部を塞ぐことになる。
カバー部材5は、図1に示すように、第1カバー部50と、第1カバー部50と連接して設けられ、互いに隔てられた複数の第2カバー部51(51A~51E)とを備える。第2カバー部51は、第1カバー部50の一辺に沿って一列に並べられる。
カバー部材5は、第1カバー部と、第2カバー部とを備えることによって、第1カバー部50により挿通体21を包囲しつつ、第2カバー部51を仕切り部11上に配置させやすくなって、開口11Cを覆うようにカバー部材5を設置しやすい。
カバー部材5には、留付材6A,6Bの設置位置を示すマーク(第1マーク52、第2マーク53A~53D)が付されている。
カバー部材5の第1カバー部50には、留付材6Bの設置位置を示すマーク(第1マーク52)が付されており、図2に示すように、第1カバー部50を挿通体21に巻き付けて設置した後に、第1マーク52上に留付材6Bを設置することで第1カバー部50が挿通体21に留められる。
また、カバー部材5の第2カバー部51には、留付材6Aの設置位置を示すマーク(第2マーク53A~53D)が付されており、図2に示すように、第2カバー部51をシート状部材3上に設置した後に、第2マーク53A~53D上から留付材6Aを設置することで第2カバー部51がシート状部材3に留められる。
なお、マーク(第2マーク53A~53D)は、各第1カバー部50及び第2カバー部51の挿通体21や仕切り部11との固定箇所を示すマークともいえる。
カバー部材5の第2カバー部51は、図2及び図3に示すように、外面11A上に配置されたシート状部材3上に配置される。そして、カバー部材5の第2カバー部51は、第2カバー部51の外側から留付材6Aを第2マーク53A~53Dから区画貫通部15の仕切り部11へ挿し込むことで、シート状部材3を介して仕切り部に留められる。
第2カバー部51を留める留付材6Aとしては、カバー部材5に付されている第2マーク53A~53Dから区画貫通部15の仕切り部11へ挿し込むことで、カバー部材5を区画貫通部15に固定して留めることが可能である部材であればよく、例えば、タッカー、ビス等の固定部材などが挙げられる。留付材6Aは、カバー部材5の固定強度を向上させるために、ワッシャー60をカバー部材5との間に介在させることが好ましい。
カバー部材5の第1カバー部50は、挿通体21を接するように包囲し、かつ第1カバー部50に付されている第1マーク52に沿って外側から留付材6Bによって抑制されて固定する形態によって挿通体21に留められる。
第1マーク52に沿って外側から留付材6Bによって抑制されて固定する形態においては、留付材6Bとして、曲げることができる部材を使用することができ、ワイヤを含むワイヤ部材や粘着テープであることが好ましい。ワイヤ部材は、金属製のワイヤ単独でもよいし、ねじりっこ(登録商標)などの金属製のワイヤを樹脂で被覆した樹脂被覆ワイヤ、モールなどと呼ばれるワイヤと繊維を絡ませたものなどでもよい。ワイヤ部材を使用すると、ひねったり、ねじったりするだけで、カバー部材5を挿通体21に固定できる。
粘着テープは、例えば第1マーク52に沿って第1カバー部50を外側から巻き付けてカバー部材5を挿通体に固定できる。粘着テープは、基材と基材の一方の面に設けられた粘着剤層を有するとよい。基材としては、紙、樹脂フィルム、布などが使用できるし、上記した不燃材料を使用してもよい。また、粘着剤層としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。また、粘着剤には、公知の難燃剤などを配合してもよい。また、第1マーク52に沿って外側から留付材6Bによって抑制されて固定する形態においては、留付材6Bとして、第1マーク52の外側から設置されるタッカー、ビスなどの固定部材を使用することができる。
カバー部材5の第1カバー部50を挿通体21に留める留付材6Bとしては、固着強度を向上させるために、上記の固定する形態で示す手段を組み合わせることが可能である。具体的には、留付材6Bは、ワイヤ部材と粘着テープの組み合わせ、ワイヤ部材と、ビス、タッカーなどの固定部材の組み合わせ等を採用することができる。
第1マーク52上には、上記の通り留付材6Bが設置され、第1マーク52は、少なくとも一部が留付材6Bによって覆われる。また、第2マーク53A~53D上には、留付材6Aが設置され、各第2マーク53A~53Dは留付材6Aによって少なくとも一部が覆われる。このような構成により、第1マーク51及び第2マーク53A~53Dそれぞれは、少なくとも一部が外部から視認不可能となり、規定どおりに設置されていることを簡単に確認できる。
第2カバー部51の形状及び数は、特に限定はなく、例えば、第2カバー部51の区画貫通部15への設置形態が、図3に示すような四角形である場合には、図4(a)及び(b)に示すように、第2カバー部51のそれぞれの形状が第2カバー部51の二辺のなす角aが90°の直角二等辺三角形であり、数が4つ以上であるとよい。図4(a)で示すカバー部材5の第2カバー部51の数は、5つであり、第2カバー部51Eは、第2カバー部51Aの下に重なるように配置され、二重に配置することで留付強度を向上させ、残渣落下を抑制する機能を発揮する。図4(a)で示すような、下に重なるように配置されるものはあると好ましいが、図4(b)で示すように無くても構わない。
第2カバー部51の区画貫通部15への設置形態が、図5(a)に示すような三角形である場合には、図5(b)に示すように、第2カバー部51のそれぞれの形状が第2カバー部51の二辺のなす角bが90°未満の二等辺三角形であり、数が3つ以上であるとよい。具体的には、第2カバー部51の区画貫通部15への設置形態が正三角形である場合、第2カバー部51の二辺のなす角bを60°とすればよい。
第2カバー部51の区画貫通部15への設置形態が、図6(a)に示すような星形多角形である場合には、図6(b)に示すように、第2カバー部51のそれぞれの形状が第2カバー部51の二辺のなす角cが90°未満の二等辺三角形であり、数が星形多角形の頂点の数以上であるとよい。具体的には、星形多角形の頂点の数が図6(a)に示すように5つである場合、第2カバー部51の数は5つ以上であるとよい。
上記では、各第2カバー部51の形状は、上述した三角形のように2辺が互いに近づく形状を示したが、上記の形状に限られない。
例えば、第2カバー部51の区画貫通部15への設置形態が、図7(a)に示すような矩形が放射状に配置された形状であってもよい。この場合には、図7(b)に示すように、第2カバー部51のそれぞれの形状を矩形とすることができる。この場合も、第2カバー部51の数は、特に制限はない。
なお、カバー部材5のいずれの設置形態でも、マーク(第1マーク52、第2マーク53A~53D)は、折られたり、曲げられたりして、挿通体21の形状、シート状部材3の形状に合わせて変形されるとよい。
カバー部材5は、シート状部材3の仕切り部11と対向する面3Bと反対側の面3Aを覆い、シート状部材3の面3Aを外部から視認不可能とすることが好ましい。カバー部材5によって、シート状部材3の面3Aを視認不可能とすることで、シート状部材3を設置する開口13Cを覆うことになり、区画貫通部15のデザイン性を良好とすることができ、かつ、区画貫通部15の耐火性能を向上させることができる。
カバー部材5は、挿通体21に接するように設置されることが好ましい。カバー部材5が、挿通体21に接するように設置されることで、仕切り部11の開口13Cを塞ぐことができ、耐火性能を向上させることができる。
カバー部材5は、シート状部材3(すなわち、仕切り部)との間、挿通体21との間、又はこれらの両方に空隙40を形成するように設置する。シート状部材3とカバー部材5との間や、挿通体21とカバー部材との間に空隙40があることで、カバー部材5は、挿通体21の軸方向の動きに対する裕度を持って固定される。カバー部材5が裕度を持って挿通体21に固定されることで、シート状部材3及びカバー部材5の設置後に、シート状部材3及びカバー部材5の内側に配置された挿通体21を軸方向に動かした場合であっても、カバー部材5の裕度によってシート状部材3及びカバー部材5が挿通体21と一緒に動いてしまうことを緩衝する。シート状部材3及びカバー部材5が挿通体21と一緒に動いてしまうことを緩衝することで、シート状部材3及びカバー部材5が区画貫通部15からずれることを抑制することができる。つまり、このような構成とすることで、シート状部材3及びカバー部材5を区画貫通部15における適切な位置に維持して配置し続けることができ、区画貫通部15の耐火性を維持することができる。
シート状部材3とカバー部材5との間に空隙40があり、カバー部材5が挿通体21の軸方向の動きに対して裕度を持って固定される構成としては種々の形態を取り得る。例えば、カバー部材5の少なくとも一部が屈曲ないし湾曲できるような柔軟性や伸縮性を有する材料による構成、及び、カバー部材5の少なくとも一部が挿通体21に対してたるみを有するように固定する構成等が挙げられる。
カバー部材5は、耐火材層単層からなってもよいし、不燃材料層単層からなってもよいし、耐火材層及び不燃材料層の両方を有してもよいが、不燃材料層を有することが好ましく、不燃材料層からなることがより好ましい。また、耐火材層及び不燃材料層以外の層を有してもよく、そのような層としては、例えば、基材層、粘着剤層などが挙げられる。
カバー部材5としては、具体的には、アルミニウム箔などの金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体である金属箔複合体などが挙げられる。これらのなかでは、防火性の観点からアルミガラスクロスが好ましい。
不燃材料層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。不燃材料層がこれら上限値以下の厚みを有することで、カバー部材5に柔軟性が付与される。したがって、カバー部材5は、例えば、不燃材料層を有していても、挿通体21の外周に密着させながら巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
カバー部材5に使用される耐火材層は、加熱により膨張する熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。熱膨張性部材は、後述するように熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、耐火材層は、粘着性を有してもよい。
なお、カバー部材5に使用される耐火材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。耐火材層がこれら上限値以下の厚みを有することで、カバー部材5に柔軟性が付与される。したがって、カバー部材5が耐火材層を有していても、カバー部材5が容易に変形して、挿通体21の外周に巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
カバー部材5は、粘着性を有する耐火材層を有するか、又は粘着剤層を有してもよい。粘着性を有する耐火材層、及び粘着剤層は、カバー部材5において最外面を構成するとよい。
この場合、粘着剤層又は耐火材層は、留付材6A,6Bとともに、カバー部材5を挿通体21やシート状部材3に固定させるとよい。
カバー部材5は、上記のとおり、シート状部材3を覆うように変形可能なシートであるとよい。また、カバー部材5は、柔軟性が付与され、変形が容易なようにシート状部材3よりも厚みが小さいことが好ましい。カバー部材5の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
(熱膨張性樹脂組成物)
以下、耐火材層などの耐火材に使用される熱膨張性樹脂組成物についてより詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と、熱膨張性材料を含有する。熱膨張性部材が、樹脂成分を含有する熱膨張性樹脂組成物により形成されることで、シート状部材3、カバー部材5、及び後述するテープ状部材4の湾曲や変形が容易となる。
熱膨張性材料としては、加熱することにより発泡する発泡剤、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性層状無機物が挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性黒鉛を使用することで、火災の加熱により適切に膨張され、また、膨張後の膨張残渣の機械強度が優れ、耐火性を良好にしやすくなる。なお、ここでいう熱膨張性材料とは、後述する成形などによって実質的に膨張せず、熱膨張性樹脂組成物は、耐火材において熱膨張性が維持される。
熱膨張性材料の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以下とすることで、火災以外の加熱により、熱膨張性材料が誤って膨張することを防止する。また、上限値以下とすることで、火災の加熱により確実に熱膨張性材料を膨張させやすくなる。
また、熱膨張性材料の膨張開始温度は、所定量(例えば、100mg)の熱膨張性材料を一定の昇温速度(例えば、10℃/分)で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、かつ法線方向の応力を測定できるものであればよく、例えばレオメーターを使用すればよい。
熱膨張性部材の膨張倍率は3倍以上であることが好ましく、10倍以上が好ましい。膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば50倍である。なお、膨張倍率は、熱膨張性部材を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)により算出するとよい。
以下、熱膨張性材料が、熱膨張性黒鉛である場合の熱膨張性樹脂組成物について詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
エラストマーの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等のゴムが挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、および塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
また、熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分としてエラストマーを使用することで粘着性を有しやすくなる。また、粘着性を発現しやすくする観点から、エラストマーは液状エラストマーを含有することが好ましい。なお、液状エラストマーとは、常温、常圧で液体となるエラストマーである。
熱膨張性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂である場合に好ましく使用される。可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
熱膨張性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲である。
可塑剤は、これら下限値以上とすると、成形性が良好になりやすく、上限値以下となると、成形体に適度な強度が付与される。
樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、熱膨張性部材の成形性などを良好にできる。また、柔軟性を確保して、湾曲や変形が容易となる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填材などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものなども使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の粒度は、特に限定されないが、20~200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度は、下限値以上となると黒鉛の膨張度が大きくなりやすく、発泡性が良好になる。また、上限値以下とすることで、樹脂と混練する際の分散性が良好となり、成形性が向上する。
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば3質量部以上300質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量は、3質量部以上となることで、熱膨張性が良好となる。また、300質量部以下となることで、成形性が良好となり、シール部材の表面性、機械的物性、柔軟性なども良好となる。これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは10質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは15質量部以上100質量部以下の範囲である。
熱膨張性樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、一般に熱膨張性樹脂組成物に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填材を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における無機充填材の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましく3質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは10質量部以上150質量部以下の範囲である。
熱膨張性樹脂組成物は、公知の粘着付与剤を含有してもよい。粘着付与剤を含有することで、熱膨張性部材に粘着性を付与しやすくなる。
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等の熱膨張性樹脂組成物に一般的に使用される添加剤が添加されてもよい。これらの中では加工助剤を使用することが好ましい。
熱膨張性部材は、例えば下記のようにして製造することができる。まず、所定量の樹脂成分、熱膨張性材料、及びその他の必要に応じて配合される添加剤を、混練ロールなどの混合機で混合して、熱膨張性樹脂組成物を得る。熱膨張性樹脂組成物は、適宜溶剤が添加されて、希釈されてもよい。
必要に応じて希釈された熱膨張性樹脂組成物は、基材、不燃材料、剥離シートなどの支持体に塗布し、適宜乾燥、硬化などされて、支持体の一方の面上に耐火材層(熱膨張性部材)が形成されるとよい。また、押出成形など公知の方法により支持体の一方の面上に耐火材層が形成されてもよい。剥離シート上に形成された耐火材層は、剥離シートから剥離することで、耐火材層単層からなるシート状部材、テープ状部材とするとよい。また、剥離シートから剥離した後に別の層上に積層することで、多層構造のシート状部材、テープ状部材を得るとよい。また、剥離シート上、又は他の支持体上に積層された状態のまま、他の層に積層されてもよい。
以上の本実施形態の構成によれば、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eが、シート状部材3及びカバー部材5により塞がれ、かつこれらうち少なくともいずれか一方が耐火材を有する。したがって、区画貫通部処理構造10に適切な防火性能を付与できる。
また、上記で説明した通り、区画貫通処理構造10は、図1に示すように、まず、シート状部材3により区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eを塞ぐように設置する。次いで、シート状部材3をカバー部材5の第2カバー部51により覆い、カバー部材5の第2カバー部51に付されている第2マーク53A,53B,53C,53Dから留付材6Aを区画貫通部15の仕切り部11へ挿し込むことで、第2カバー部51を区画貫通部15に固定する。そして、カバー部材5の第1カバー部50を挿通体21に巻き付かせ、第1カバー部50に付されている第1マーク52に沿って留付材6Bによって挿通体21に固定することで施工できる。したがって、その施工が容易かつ確実であり、確実に施工されているかを目視で把握することが可能である。
また、本実施形態では、耐火パテ、ロックウールなどの充填材を区画貫通部15の内部に配置することなく、シート状部材3及びカバー部材5により防火構造が形成されるので、作業者によるバラつきが生じることもない。
さらに、本実施形態では、少なくともカバー部材5及び留付材6A,6Bが露出しており、外部から視認可能である。また、シート状部材3も一部(図1~3の構成では、シート状部材3の側面)が外部から視認可能な位置に配置するとよい。そして、区画貫通部15の内部には、挿通体21以外の部材が何も設けられない。そのため、区画貫通処理材は、規定通り施工されたことが目視や写真撮影により簡単に点検できる。また、施工忘れなども発生にくくなる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、図8及び図9に示すように、区画貫通処理材がテープ状部材4及びカバー部材5を備える構成である。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
なお、カバー部材5そのものの構造の詳細は、第1の実施形態と同様であり、テープ状部材4及びカバー部材5は、少なくともいずれか一方が耐火材を有する。
〔テープ状部材〕
テープ状部材4は、図8及び図9に示すように、挿通体21の外周に一周以上巻き付けられた状態となる。これにより、テープ状部材4には端面4Aが形成され、端面4Aは、開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの少なくとも一部を塞ぐことが可能となる。
テープ状部材4は、不燃材料層及び耐火材層の少なくともいずれかを有する。同様に、カバー部材5は、耐火材層及び不燃材料層の少なくともいずれかを有する。ただし、テープ状部材4及びカバー部材5は、いずれか一方が耐火材層(耐火材)を有する。これにより、区画貫通処理構造10は、防火性能を確保でできる。また、防火性能の確保の観点からは、少なくともテープ状部材4が耐火材層を有することが好ましく、より好ましくはテープ状部材4が耐火材層を有し、かつ、カバー部材5が不燃材料層を有する。
テープ状部材4に使用される耐火材層は、加熱により膨張する熱膨張性部材であることが好ましい。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止する。熱膨張性部材は、上述した熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましい。また、耐火材層は、粘着性を有してもよい。
なお、テープ状部材4における耐火材層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。耐火材層がこれら上限値以下の厚みを有することで、テープ状部材4に柔軟性が付与される。したがって、例えば、テープ状部材4が耐火材層を有していても、挿通体21の外周に密着させながら巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
テープ状部材4は、耐火材層単層からなってもよいし、不燃材料層単層からなってもよいし、耐火材層及び不燃材料層の両方を有してもよい。また、耐火材層及び不燃材料層以外の層を有してもよく、そのような層としては、例えば、基材、粘着剤層などが挙げられる。
テープ状部材4は、粘着性を有する耐火材層を有するか、又は粘着剤層を有してもよい。粘着性を有する耐火材層、及び粘着剤層は、テープ状部材4において最外面を構成するとよい。
以上の構成により、テープ状部材4とは別部材としての固定部材を使用しなくても、テープ状部材4を挿通体21に固定させることができる。また、耐火材層自体に粘着性を持たせることで、粘着剤層を設けなくてもよいので、テープ状部材4の構成をより簡素化できる。
なお、テープ状部材4は、その最外面に粘着性を有する耐火材層、又は粘着剤層が設けられる場合、その最外面に剥離シートが貼付されてもよい。剥離シートは、使用時に最外面から剥離されるとよい。
テープ状部材4に使用される不燃材料層は、不燃材料で構成される。不燃材料とは、建築基準法及び建築基準法施行令において定められるものである。不燃材料層としては、具体的には、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属箔とガラスクロスの複合体である金属箔複合体などが挙げられる。これらのなかでは、防火性の観点からアルミガラスクロスが好ましい。
不燃材料層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。不燃材料層がこれら上限値以下の厚みを有することで、テープ状部材4に柔軟性が付与される。したがって、テープ状部材4は、例えば、不燃材料層を有していても、挿通体21の外周に密着させながら巻き付けることができる。また、下限値以上の厚みを有することで、防火性能を確保しやすくなる。
基材層として使用される基材は、上記した不燃材料以外であり、紙、布、樹脂フィルムなどが挙げられる。基材の厚みは、例えば0.01~1mm、好ましくは0.05~0.5mmである。
粘着剤層は、粘着剤により形成されるとよく、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤等を用いることができる。粘着剤層は、不燃性、準不燃性、又は難燃性であってもよく、使用する粘着剤に難燃剤などを配合してもよい。粘着剤層の厚みは、例えば5~400μm、好ましくは10~150μmである。
テープ状部材4の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm、好ましくは0.5~5mmである。
テープ状部材4は、多層構造の場合、2層構造を有してもよいし、3層又はそれ以上の構造を有してもよい。2層構造としては、例えば、不燃材料層/耐火材層、不燃材料層/粘着剤層、耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層、基材/不燃材料層などの構造を有するものが挙げられる。
また、3層構造は、粘着剤層を有するものとして、不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。また、3層構造としては、不燃材料層/基材/耐火材層、基材/不燃材料層/耐火材層、基材/耐火材層/不燃材料層などの粘着剤層が設けられないものも挙げられる。
また、4層以上の構造としては、上記粘着剤層が設けられない3層構造の最外層としてさらに粘着剤層が設けられたものなどが挙げられる。代表的には、粘着剤層/不燃材料層/基材/耐火材層、不燃材料層/基材/耐火材層/粘着剤層、基材/不燃材料層/耐火材層/粘着剤層、基材/耐火材層/不燃材料層/粘着剤層などが挙げられる。
また、以上の多層構造においては、互いに隣接する、不燃材料層と耐火材層、不燃材料層と基材、耐火材層と基材は、公知の接着剤により接着されてもよく、したがって、上記各積層構造において、上記各層の間には接着剤層が設けられてもよい。
なお、多層構造において、テープ状部材4は、その全体において同じ層構成を有していてもよいが、部分的に異なる構造を有してもよい。例えば、粘着剤層が、テープ状部材4の一部に設けられ、一部が単層構造で、一部が多層構造でもよい。
挿通体21の外周に巻き付けられたテープ状部材4は、挿通体21に密着するとよく、挿通体21の形状に合わせて適宜変形させるとよい。また、テープ状部材4は、挿通体21の外周面に固定される。ここでテープ状部材4は、テープ状部材4の内周側に配置される粘着剤層又は耐火材層などによって挿通体21の外周面に固定されてもよい。また、テープ状部材4は、テープ状部材4とは別に設けられた固定部材により挿通体21に固定されてよい。そのような固定部材としては、例えば、テープ状部材4の外周側から巻かれた紐状部材、又は粘着テープが挙げられる。また、これらの2以上の組み合わせにより、テープ状部材4は、挿通体21に固定されてもよい。
〔カバー部材〕
カバー部材5は、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cを覆うように設置される。ここで、本実施形態において、カバー部材5は、開口13Cを覆う位置に配置される限り、カバー部材5と開口13Cの間に別の部材があってもよく、本実施形態では、カバー部材5と開口13Cの間にはテープ状部材4が配置され、テープ状部材4を介して開口13Cを覆うことになる。
すなわち、本実施形態におけるカバー部材5は、テープ状部材4を覆い、かつテープ状部材4によって塞がれていない間隙13Eの一部を塞ぐことになる。以上の構成により、区画貫通部15の開口13Cと、挿通体21の間の隙間13Eは、その全体が、テープ状部材4及びカバー部材5により塞がれることになる。
カバー部材5は、シート状であり、かつ、変形できることで、テープ状部材4を容易に覆い、かつ挿通体21に密着しつつ挿通体21を包囲して、テープ状部材4によって塞がれない間隙13Eの一部を容易に塞ぐことが可能になる。
カバー部材5の第2カバー部51は、図9に示すように、外面11A上に配置される。そして、カバー部材5の第2カバー部51は、留付材6Aを第2マーク53A~53Dから区画貫通部15の仕切り部11へ挿し込むことで、区画貫通部15に留められる。
カバー部材5の第1カバー部50は、テープ状部材4を覆うように配置される。そして、カバー部材5の第1カバー部50は、挿通体21を接するように包囲し、かつ第1カバー部50に付されている第1マーク52に沿って外側から留付材6Bによって抑制されて固定する形態によって挿通体21に留められる。
カバー部材5は、テープ状部材4を覆い、テープ状部材4を外部から視認不可能とすることが好ましい。カバー部材5によって、テープ状部材4を視認不可能とすることで、テープ状部材4を設置する開口13Cを覆うことになり、区画貫通部15のデザイン性を良好とすることができ、かつ、区画貫通部15の耐火性能を向上させることができる。
以上の本実施形態の構成によれば、区画貫通部15の開口13C内部の間隙13Eが、テープ状部材4及びカバー部材5により塞がれ、かつこれらうち少なくともいずれか一方が、耐火材を有する。したがって、区画貫通部処理構造10に適切な防火性能を付与できる。
また、上記で説明した通り、区画貫通処理構造10は、挿通体21に一周以上テープ状部材4を巻き付け、テープ状部材4によって、区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの少なくとも一部を塞ぐように設置する。次いで、テープ状部材4を覆うようにカバー部材5を設置し、カバー部材5の第2カバー部51に付されている第2マークから留付材6Aを区画貫通部15の仕切り部11へ挿し込むことで、第2カバー部51を区画貫通部15に固定する。そして、カバー部材5の第1カバー部50を挿通体21に巻き付かせ、第1カバー部50に付されている第1マーク52に沿って留付材6Bによって挿通体21に固定することで施工できる。したがって、その施工が容易かつ確実であり、確実に施工されているかを目視で把握することが可能である。
また、本実施形態では、耐火パテ、ロックウールなどの充填材を区画貫通部15の内部に配置することなく、テープ状部材4及びカバー部材5により防火構造が形成されるので、作業者によるバラつきが生じることもない。
さらに、本実施形態では、少なくともカバー部材5及び留付材6A,6Bが露出しており、外部から視認可能である。また、テープ状部材4も外部から視認可能な位置に配置するとよい。そして、区画貫通部15の内部には、挿通体21以外の部材が何も設けられない。そのため、区画貫通処理材は、規定通り施工されたことが目視や写真撮影により簡単に点検できる。また、施工忘れなども発生にくくなる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について詳細に説明する。第3の実施形態において、第1,2の実施形態と相違する点は、図10及び図11に示すように、区画貫通処理材が、シート状部材3、テープ状部材4及びカバー部材5を備える構成である。以下、第3の実施形態について、第1,2の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1,2の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
なお、シート状部材3、テープ状部材4及びカバー部材5そのものの構造の詳細は、第1,2の実施形態と同様であり、シート状部材3、テープ状部材4及びカバー部材5は、少なくともいずれかが耐火材を有する。
シート状部材3は、図10及び図11に示すように、挿通体21及び仕切り部11に接するように設置される。
そして、テープ状部材4は、図10及び図11に示すように、挿通体21の外周に一周以上巻き付けられている。これにより、テープ状部材4には端面4Aが形成され、端面4Aは、開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの少なくとも一部を塞ぐことが可能となる。
以上の構成により、シート状部材3と挿通体21の間には、隙間が設けられることがあるが、そのような隙間はテープ状部材4及びカバー部材5により塞がれる。そのため、区画貫通部15の開口13Cと、挿通体21の間の隙間13Eは、その全体が、シート状部材3、テープ状部材4及びカバー部材5により塞がれることになる。
カバー部材5は、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cを覆うように設置される。ここで、本実施形態において、カバー部材5は、開口13Cを覆う位置に配置される限り、カバー部材5と開口13Cの間に別の部材があってもよく、本実施形態では、カバー部材5と開口13Cの間にはシート状部材3及びテープ状部材4が配置され、シート状部材3及びテープ状部材4を介して開口13Cを覆うことになる。
すなわち、本実施形態におけるカバー部材5は、シート状部材3及びテープ状部材4を覆い、かつシート状部材3及びテープ状部材4によって塞がれていない間隙13Eの一部を塞ぐことになる。
カバー部材5は、シート状であり、かつ、変形できることで、シート状部材3及びテープ状部材4を容易に覆い、かつ挿通体21に密着しつつ挿通体21を包囲して、シート状部材3及びテープ状部材4によって塞がれない間隙13Eの一部を容易に塞ぐことが可能になる。
カバー部材5は、シート状部材3の仕切り部11と対向する面3Bと反対側の面3Aを覆う形態とすることができる。カバー部材5は、同様にテープ状部材4を覆う形態とすることができる。カバー部材5によって、シート状部材3の面3A、及び、テープ状部材4の少なくともいずれかを覆う形態とすることで、シート状部材3及びテープ状部材4の残渣落下を抑制する機能を発揮し、区画貫通部15の耐火性能を向上させることができる。
カバー部材5は、挿通体21及び仕切り部11に接するように設置されることが好ましい。カバー部材5が、挿通体21及び仕切り部11に接するように設置されることで、仕切り部11の開口13Cを塞ぐことができ、耐火性能を向上させることができる。
以上の本実施形態の構成によれば、区画貫通部15の開口13C内部の間隙13Eが、シート状部材3、テープ状部材4及びカバー部材5の少なくともいずれかにより塞がれ、かつこれらうち少なくともいずれかが耐火材を有する。したがって、区画貫通部処理構造10に適切な防火性能を付与できる。
また、上記で説明した通り、区画貫通処理構造10は、区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの少なくとも一部を塞ぐようにシート状部材3を設置する。次いで、挿通体21に一周以上テープ状部材4を巻き付け、テープ状部材4によって、区画貫通部15の開口13Cと挿通体21との間の間隙13Eの少なくとも一部を塞ぐように設置する。次いで、シート状部材3及びテープ状部材4の両方をカバー部材5により覆うようにカバー部材5を設置し、カバー部材5の第2カバー部51に付されている第2マークから留付材6Aを区画貫通部15の仕切り部11へ挿し込むことで、第2カバー部51を区画貫通部15に固定する。そして、カバー部材5の第1カバー部50を挿通体21に巻き付かせ、第1カバー部50に付されている第1マーク52に沿って留付材6Bによって挿通体21に固定することで施工できる。したがって、その施工が容易かつ確実であり、確実に施工されているかを目視で把握することが可能である。
また、本実施形態では、耐火パテ、ロックウールなどの充填材を区画貫通部15の内部に配置することなく、シート状部材3、テープ状部材4及びカバー部材5により防火構造が形成されるので、作業者によるバラつきが生じることもない。
さらに、本実施形態では、少なくともカバー部材5及び留付材6A,6Bが露出しており、外部から視認可能である。また、シート状部材3及びテープ状部材4も一部が外部から視認可能な位置に配置するとよい。そして、区画貫通部15の内部には、挿通体21以外の部材が何も設けられない。そのため、区画貫通処理材は、規定通り施工されたことが目視や写真撮影により簡単に点検できる。また、施工忘れなども発生にくくなる。
[その他の実施形態]
本発明は、以上の第1~第3の実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない限りいかなる改良、変更を行ってもよい。
例えば、以上の各実施形態では、留付材6A,6Bはカバー部材5の外側から留め付ける態様を示したが、必ずしも外側から留める必要はない。
例えば、接着剤、粘着剤及び粘着テープ等を留付材として、第2カバー部51の内側(すなわち、仕切り部11側)に配置させて、カバー部材5の第2カバー部51を留めてもよい。この場合、第2カバー部51の外側から留める留付材6Aは省略してもよいし、併用してもよい。
同様に、接着剤、粘着剤及び粘着テープ等を留付材として、第1カバー部50の内側(すなわち、挿通体側)に配置させて、カバー部材5の第1カバー部50を挿通体に留めてもよい。この場合も、第1カバー部50の外側から留める留付材6Bは省略してもよいし、併用してもよい。
留付材として使用する接着剤、粘着剤及び粘着テープは、不燃材料、準不燃材料又は難燃材料のいずれかであることが好ましく、接着剤、粘着剤などに難燃剤などを配合するとよい。
ただし、本発明では、第2カバー部51の外側から留める留付材6Aを使用することが好ましい。同様に、第1カバー部50の外側から留める留付材6Bを使用することが好ましい。カバー部を外側から留めることで、留付材を規定の位置に容易に設置させるができ、また、規定の位置に設置させたことを目視により容易に確認できる。
また、本発明では、カバー部材5にマーク(第1マーク52、第2マーク53)が付される限り、第1マーク52及び第2マーク53のいずれか一方は、省略してもよいが、少なくとも第2マーク53を設けることが好ましい。第2マーク53を設けることで、第2カバー部51は、留付材6Aの設置位置を適切な位置に容易に配置させることができるが、留付材6Aの設置位置を適切にすると、隙間が生じることを効果的に防止できる。
カバー部材5には、第1マーク52及び第2マーク53以外にも、キャラクタ、文字情報、図形が付されてもよい。例えば、第1マーク52及び第2マーク53とともに、本カバー部材5が適用可能な開口のサイズ、区画貫通部の種類、カバー部材の使用方法、注意書きなどが記されていてもよい。
例えば、上記各実施形態において区画貫通処理材は、シート状部材3及びテープ状部材4の少なくともいずれかに連結し、区画貫通部15の内部に配置される部材を有してもよい。そのような部材として、例えば、耐火材、付属品が挙げられる。
その具体例として、第1の実施形態の変形例を図12に示し、第2の実施形態の変形例を図13に示す。耐火材としては、図12及び図13に示すようなブロック状の耐火材70が例えば使用され、そのブロック状の耐火材70が、シート状部材3又はテープ状部材4に連結するとよい。連結する態様は、特に限定されないが、例えば、シート状部材3又はテープ状部材4の一方の面に積層されてもよいし、シート状部材3又はテープ状部材4の端面に連結されてもよい。耐火材70は、上記の通り、加熱により膨張する熱膨張性部材からなることが好ましく、中でも熱膨張性樹脂組成物より形成されることが好ましい。
また、以上の説明では、仕切り部11は、内部に中空部13がある中空壁であったが、中空壁に限定されず、中空が設けられない壁であってもよく、例えば1枚の壁材からなるものでもよい。また、仕切り部11は、建築物の壁に限定されず、建築物の天井、床であってもよい。仕切り部は、天井、床の場合でも、2枚の仕切り材の間に中空部を有する構造であってもよいし、中空部がない構造であり、例えば1枚の仕切り材から構成されてもよい。
また、以上の各実施形態では、仕切り部11の両方の開口13C,13D(すなわち、仕切り部11の両側)に、いずれも同じ構造の区画貫通処理材が設けられることを前提に説明したが、各開口13C,13Dには、別の構造の区画貫通処理構造が設けられてもよい。例えば、一方の開口13Cに第1の実施形態に係る区画貫通処理構造が設けられ、他方の開口13Dに第2の実施形態に係る区画貫通処理構造が設けられてもよい。また、開口13Dにおける区画貫通処理材が省略されてもよい。
さらに、上記各実施形態では、シート状部材3及びテープ状部材4の少なくとも一方が設けられる態様も示されるが、両方が省略されてもよい。両方が省略される場合には、カバー部材5が耐火材を有してもよいが、シート状部材3及びテープ状部材4以外の耐火材が、カバー部材5の内側に配置されることが好ましい。例えば、カバー部材5と仕切り部11の間に、シート状部材3及びテープ状部材4以外の耐火材が配置されるとよい。耐火材は、区画貫通部15の内部、例えば、区画貫通部15の開口13Cと、挿通体21の間の隙間13Eなどに配置されてもよい。
また、シート状部材3及びテープ状部材4以外の耐火材は、熱膨張性樹脂組成物により形成されることが好ましいが、耐火パテなどであってもよい。
3 シート状部材
4 テープ状部材
5 カバー部材
6A,6B 留付材
11 仕切り部
12A,12B 壁材
13 中空部
13A,13B 貫通孔
13C,13D 開口
13E 間隙
15 区画貫通部
21 挿通体
30 スリット
40 空隙
50 第1カバー部
51、51A,51B,51C,51D,51E 第2カバー部
52 第1マーク
53,53A,53B,53C,53D 第2マーク
60 ワッシャー
70 耐火材

Claims (16)

  1. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、
    前記区画貫通部の開口を覆うように設置されるカバー部材と、
    前記カバー部材を区画貫通処理構造に固定させる留付材とを備え、
    前記カバー部材には、前記留付材の設置位置を示すマークが付されている、区画貫通処理構造。
  2. 前記カバー部材が、前記留付材によって、少なくとも前記仕切り部及び前記挿通体のいずれかに留められる、請求項1に記載の区画貫通処理構造。
  3. 前記マークは、前記留付材によって少なくとも一部が覆われ、少なくとも一部が外部から視認不可能である、請求項1又は2に記載の区画貫通処理構造。
  4. 前記カバー部材が変形可能なシート状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
  5. 前記カバー部材の内側に配置される耐火材を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
  6. 前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐシート状部材、及び、前記挿通体に一周以上巻き付けて配置されるテープ状部材の少なくともいずれかを備え、
    前記シート状部材及び前記テープ状部材の少なくともいずれかに耐火材を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
  7. 前記区画貫通部の内部に挿通体以外に何も設けられない、請求項1~6のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
  8. 前記カバー部材と前記仕切り部及び前記挿通体のいずれかとの間に空隙がある、請求項1~7のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
  9. 前記カバー部材と前記留付材とを備える区画貫通処理材が、前記仕切り部の両側に設けられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の区画貫通処理構造。
  10. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理材であって、
    前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口と前記挿通体との間の間隙の少なくとも一部を塞ぐカバー部材を備え、
    前記カバー部材には、前記カバー部材を区画貫通処理構造に固定する留付材の設置位置を示すマークが付されている、区画貫通処理材。
  11. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、
    前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口を覆うようにカバー部材を設置する工程と、
    前記カバー部材を留付材によって固定する工程とを含み、
    前記カバー部材には、前記留付材の設置位置を示すマークが付されている、区画貫通処理構造の施工方法。
  12. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部の開口を覆うカバー部材であって、
    第1カバー部と、
    それぞれが前記第1カバー部と連接して設けられ、互いに隔てられた複数の第2カバー部とを備える、カバー部材。
  13. 前記第1カバー部には、前記挿通体との固定箇所を示す第1マークが付されている、請求項12に記載のカバー部材。
  14. 前記第2カバー部には、前記仕切り部との固定箇所を示す第2マークが付されている、請求項12又は13に記載のカバー部材。
  15. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造であって、
    前記区画貫通部の開口を覆う、請求項12~14のいずれか1項に記載のカバー部材と、
    前記カバー部材を区画貫通処理構造に固定させる留付材とを備える、区画貫通処理構造。
  16. 建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理構造の施工方法であって、
    前記区画貫通部の開口を覆うように、請求項12~14のいずれか1項に記載のカバー部材を設置する工程と、
    前記カバー部材を区画貫通処理構造に留付材によって固定させる工程とを含む、区画貫通処理構造の施工方法。
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