JP2024020930A - 電気化学的処理用陽極材及び電気化学的処理システム - Google Patents

電気化学的処理用陽極材及び電気化学的処理システム Download PDF

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Abstract

【課題】通電期間中、電圧の上昇を抑制し、コンクリートに電流を安定して供給できる鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材を提供することを目的とする。【解決手段】チタン系基材と、前記チタン系基材の表面に貴金属を30~70質量%含有するコーティング層と、を有する鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材、及び電気化学的処理用陽極材を用いた電気化学的処理システムである。【選択図】図1

Description

本発明は、電気化学的処理用陽極材及び電気化学的処理システムに関する。
従来、道路、鉄道などの土木建設構造物、具体的には橋梁の下部工、橋梁の橋桁、トンネルなどの地下構造物又は半地下構造物、カルバートなどの構築には、一般的に鉄筋コンクリートが使用されている。この鉄筋コンクリートは、高い圧縮強度性能を持つコンクリートと、高い引張強度性能を持つ鉄筋とを組み合わせることにより、圧縮強度と引張強度とを併せ持つ複合構造体を作ることが可能であり、構造物の材料として多く使用されている。なお、この鉄筋コンクリートを用いた構造物には、所謂PC構造物と呼ばれ、更にPC鋼材(PC鋼線、PC鋼棒、PC鋼より線など)をコンクリート内に配置したコンクリート構造物も多く存在する。
コンクリートは環境抵抗性が高く、コンクリート自体のアルカリ度はpH値で12~12.5の強アルカリ性であるため、コンクリート内部に配設された鉄筋は表面に不動態被膜を形成し腐食から防止されるものと考えられてきた。
しかしながら、近年、コンクリートの中性化や塩害によって鉄筋コンクリート構造物に劣化現象が生じていることが社会問題となってきている。
ここで、「中性化」とは、セメントの水和反応によって生成された水酸化カルシウムが大気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなる現象であり、この炭酸化によりコンクリートのアルカリ度が低下し、pH値が10以下になると鉄筋の不動態被膜が破壊され、鉄筋の腐食が始まる劣化現象である。
また、「塩害」とは、沿岸部にあるコンクリート構造物の場合、海水の飛沫がコンクリート表面に付着し、その塩分がコンクリートの吸着現象や濃度勾配によりコンクリート中に浸透して鉄筋まで到達すると、塩素イオンにより鉄筋の不動態皮膜が破壊され腐食が始まる劣化現象である。さらに、過去のコンクリート構造物では、細骨材として海砂が使用されることもあり、その際、管理の不十分さから塩分除去が十分に行われないまま使用されたため、多量の塩化物がコンクリート中に存在することになり、その結果、鉄筋の不動態皮膜が破壊され腐食が始まるケースもあった。
上記のような鉄筋コンクリートの劣化現象が進行すると、複合構造物としての耐久性が大きく低下することになる。
そこで、劣化した鉄筋コンクリートの補修方法として、劣化部分をはつり取り、コンクリート又はモルタル等で埋め戻すなどの構造物の破壊を伴う補修方法の他に、破壊を伴うことなく電気化学的な方法により補修を行う方法が提案され、実施されてきた。
例えば、特許文献1では、板状体の一方面側に外部電極を配設するとともに、外部電極配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材で被覆した電極用ユニットパネルを多数用意し、処理対象のコンクリート面に対して、電極用ユニットパネルを並べて配設するとともに、隣接する電極用ユニットパネル間の目地部及び外周部において液密性を確保した状態とし、任意箇所に電解質溶液供給口を設置するとともに、電解質溶液回収口を設置し、継続的又は断続的に、電解質溶液供給口から電解質溶液を電極用ユニットパネルとコンクリート表面との間に供給するとともに、電解質溶液回収口から電解質溶液を回収する、鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法が提案されている。
特許第6586000号公報
特許文献1の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法によれば、セルロースファイバー及び電解質溶液の吹付け作業を無くし作業環境を良好に保つとともに、作業員の安全性を確保することが可能であり、また特殊産業廃棄物の発生を極力抑え、更に電解質溶液の使用量を削減できるとともに、給水作業の省力化を図り得る等、種々の効果が期待できる。
一方で、電気化学的処理方法においては、安全に作業を行うため、コンクリート内部の鉄筋(内部電極)と、外部電極との間に通電する電流を、通電期間中は、電圧の上昇を抑制し、安定して供給することが求められている。
以上から、本発明は、通電期間中、電圧の上昇を抑制し、コンクリートに電流を安定して供給できる鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材、及び、電気化学的処理システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために鋭意検討したところ、本発明者は下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は下記のとおりである。
[1] チタン系基材と、前記チタン系基材の表面に貴金属を30~70質量%含有するコーティング層と、を有する鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
[2] 前記貴金属がイリジウムである[1]に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
[3] 前記コーティング層が、さらに卑金属を含有する[1]又は[2]に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
[4] 前記卑金属がタンタルである[3]に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
[5] 前記貴金属及び前記卑金属を酸化物として含有する[3]に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
[6] 前記コーティング層の膜厚が、0.5μm以上3μm以下である[1]~[5]のいずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
[7] 脱塩工法又は再アルカリ化工法に用いられる[1]~[6]のいずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材を、コンクリート表面側に設置した外部電極とし、コンクリート内部側に埋設されている鉄筋を内部電極として、前記外部電極と前記内部電極との間に直流電流を通電する鉄筋コンクリートの電気化学的処理システム。
[9] 前記コンクリートと前記外部電極との間に、電解質を保持した電解質保持材を備える[8]に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理システム。
本発明によれば、通電期間中、電圧の上昇を抑制し、コンクリートに電流を安定して供給できる鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材、及び電気化学的処理システムを提供することができる。
本実施形態に係る陽極材を備える電気化学的処理システムの部分断面図である。 試験例で作製した角柱試験体を示す図であり、(A)が正面図であり、(B)が側面図である。 試験例で作製した角柱試験体の試験方法を説明する図であり、(A)が正面側の断面図であり、(B)が側面側の断面図である。
本発明の電気化学的処理用陽極材は、鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法に用いられる陽極材である。以下、本発明の電気化学的処理用陽極材について説明する。
<電気化学的処理用陽極材>
本発明の電気化学的処理用陽極材(以下、単に「陽極材」ともいう。)は、チタン系基材と、チタン系基材の表面に貴金属を30~70質量%含有するコーティング層と、を有する。
チタン系基材としては、チタン及びチタン合金を用いることができる。チタン合金としては、Ti-Ta-Nb、Ti-Pd、Ti-Zr、Ti-Al等を挙げることができる。また、チタン系基材の形状としては、特に限定されないが、板状、有孔板状、棒状、及び網板状(メッシュ状)等の所望の形状に加工して用いることができる。中でも、チタン系基材の使用量を少なくし、広い範囲に電流を通電することができるため、網板状とすることが好ましい。
コーティング層に含まれる貴金属としては、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、及び金を例示することができ、中でも、通電中の電圧の上昇の抑制及び耐久性の観点からイリジウムが好ましい。また、これらの貴金属は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
貴金属の含有量は、コーティング層中の貴金属元素の割合で30~70質量%であり、35~68質量%が好ましく、40~65質量%がより好ましい。貴金属の含有量が30%未満であると、通電中に電圧が上昇し、電流を安定して供給することが難しくなる。同様に、貴金属の含有量が70%を超えても、通電中に電圧が上昇し、電流を安定して供給することが難しくなる。
コーティング層は、さらに、卑金属を含有することが好ましい。卑金属を含有することで、コーティング層の耐久性を向上させることができる。卑金属としては、上記の貴金属を除く金属であり、具体的には、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、水銀、タリウム、鉛、ビスマス等を含有させることができる。これらの中でも、卑金属はタンタルであることが好ましい。これらの卑金属は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
貴金属及び卑金属のコーティング層におけるそれぞれの含有割合は、貴金属が30~70質量%であり、卑金属が70~30質量%の割合で含有していることが好ましい。貴金属と卑金属を上記範囲で含有することで、コーティング層の耐久性を向上させることができる。
また、貴金属及び卑金属は、コーティング層中にそれぞれ貴金属酸化物及び卑金属酸化物として混合した状態で存在していることが好ましい。コーティング層中に貴金属酸化物及び卑金属酸化物として含まれる場合、コーティング層中に含まれる割合は、モル比で、貴金属酸化物:卑金属酸化物が45:55~80:20の範囲であることが好ましく、52:48~74:26の範囲がより好ましく、57:43~75:25の範囲がさらに好ましい。貴金属酸化物及び卑金属酸化物の割合を上記範囲とすることで、通電中の電圧の上昇を防止し、安定して電流を供給することができる。また、貴金属酸化物及び卑金属酸化物の含有量の合計は、コーティング層中の90質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
コーティング層の膜厚は、0.5μm以上3μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上2.5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上2μm以下である。コーティング層の膜厚を0.5μm以上とすることで、コーティング層の耐久性を向上させることができる。また、コーティング層の膜厚を3μm以下とすることで、通電中の電圧の上昇を抑制することができる。なお、コーティング層の膜厚は、任意の複数の位置で膜厚を測定し、その平均値により求めることができる。
<コーティング層の製膜方法>
チタン系基材へのコーティング層の製膜方法としては、特に限定されないが、例えば次のようにして製膜することができる。
貴金属の金属塩、及び、卑金属を含有する場合は卑金属の金属塩を有機溶媒、又は水に溶解した溶液を準備する。貴金属としてイリジウムを用いる場合は、例えば、塩化イリジウム塩、塩化イリジウム、塩化イリジウムカリウム等が挙げられ、特に塩化イリジウム酸を好適に用いることができる。また、卑金属としてタンタルを用いる場合は、例えば、塩化タンタル、タンタルエトキシド等が挙げられる。また、貴金属の金属塩及び卑金属の金属塩を溶解する有機溶媒としては、低級アルコールを用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等又はこれらの混合物が挙げられる。
次に、貴金属の金属塩及び卑金属の金属塩を溶解した溶液をチタン系基材に塗布する。チタン系基材への塗布は、刷毛塗り法、ロール塗り法、スプレー塗り法、ディップコート法により塗布することができる。溶液を塗布した後、乾燥させ、600℃以下で熱処理を行う。熱処理を行うことで、チタン系基材上に、貴金属及び卑金属の酸化物からなるコーティング層を製膜することができる。熱処理を上記範囲で行うことで、金属が蒸発により損失すること、及び、酸化物の酸素欠損を防止し、耐久性が低下することを防止することができる。また、チタン系基材の酸化を防止することができる。
陽極材の耐久性を上げるため、上記の塗布工程、乾燥工程、及び熱処理工程を繰り返すことが好ましい。この工程を繰り返すことで、所望の膜厚のコーティング層を製膜することができ、耐久性を向上させることができる。また、溶液を塗布、熱処理し、コーティング層を製膜することで、コーティング層の表面を粗面化することができる。
[電気化学的処理システム]
次に、本発明の陽極材が用いられる鉄筋コンクリートの電気化学的処理システムについて説明する。本発明の電気化学的処理システムは、上述した陽極材をコンクリート表面側に設置した外部電極とし、コンクリート内部側に埋設されている鉄筋を内部電極として、前記外部電極と前記内部電極との間に直流電流を通電する電気化学的処理システムである。
電気化学的処理システムは、直流電流を通電することで、例えば、コンクリート内部の塩化物イオンを外部電極側に泳動させて除去したり(脱塩工法)、アルカリ性の電解質溶液をコンクリート内部の鉄筋側に電気浸透させ、中性化しているコンクリートのアルカリ性を回復させたり(再アルカリ化工法)することができる。
このような電気化学的処理システムの一例を、図1を用いて説明する。図1は、電気化学的処理システムの部分断面図である。図1に示す電気化学的処理システムは、コンクリート10の表面側に設置した電極を外部電極(陽極材)20とし、コンクリート10の内部側に埋設されている不図示の鉄筋を内部電極とし、当該内部電極、電解質を保持した電解質保持材22、外部電極20、保護基板24をこの順に配置して、外部電極20と内部電極との間に直流電流を通電する鉄筋コンクリートの電気化学的処理システムである。電解質保持材22を設けることにより、コンクリートへの電解質浸透性が向上して安定した電圧が早く得られる。
図1に示すように、電解質を保持した電解質保持材22、外部電極20、及び保護基板24はこの順に配置してなる電極用ユニットパネル26として、例えば、保護基板24の外側に複数の桟木30で、固定化されている。
また、2つの桟木30の間には、電解質供給管としての給水ホース34が設けられて固定されている。給水ホース34の任意箇所には電解質供給口(不図示)が設置されている。また、給水ホース34からの電解質を回収する電解質回収口を有する回収管(不図示)も適宜設けられている。すなわち、給水ホース34の電解質供給口からは継続的又は断続的に、電解質が電解質保持材に供給され、その後は電解質が回収管(不図示)で回収される。
つまり、当該システムでは、任意箇所に電解質供給口を設置するとともに、電解質回収口を設置し、継続的又は断続的に、電解質供給口から電解質を電解質保持材に供給するとともに、電解質溶液回収口から電解質を回収するようになっていることが好ましい。かかる構成とすることで、電解質の安定した供給が可能とあり当該システムの効果をより発揮させやすくすることができる。
給水ホース34の電解質供給口の径は、0.5~1.0mmであることが好ましく、0.6~0.8mmであることがより好ましい。0.5~1.0mmであることで、安定的にユニットパネルへ電解質を供給することができる。また、電解質供給口とその隣にある電解質供給口との間隔は10~35mmであることが好ましく、15~30mmであることがより好ましい。間隔が10~35mmであることで、電極用ユニットパネル26へ均一に電解質を供給することができる。
電解質供給口を有する複数の電解質供給管(給水ホース34)において、1の電解質供給管とこれに並行して設けられる他の電解質供給管との間隔Wは300~600mmであることが好ましい。300~600mmであることで、電解質の量が多くなって漏水してしまうことを防ぎながら、電解質を電解質保持材に十分に行き渡らせることができる。間隔Wは400~500mmであることがより好ましい。
また、複数の電解質供給管はその外側が樹脂シートで被覆されてなることが好ましい。これにより、コンクリートに均一に電解質溶液が浸透し安定した通電処理をすることができる。樹脂シートとしては、例えば、プラ段(ポリプロピレン製)等を用いることができる。
電極用ユニットパネル26の取付けは、例えば、特許第6586000号公報に記載のパネル固定金具を用いて行ってもよいし、その他の公知の手段を用いてもよい。
また、電極用ユニットパネル26を格子状に並べて配置する際には、隣接する電極用ユニットパネル26の間に所定の隙間を設けて配置し、この隙間(目地部)に特許第6586000号公報に記載の接続部材を配置して液密性を確保するようにしてもよい。
給水ホース34及び回収管はそれぞれホース等で外部と接続されている。すなわち、給水ホース34には、電解質溶液タンク(図示せず)から電解質溶液がポンプ圧送される。回収管で回収される電解質は、電解質溶液分離タンク(空気と電解質溶液を分離するタンク)、エレメントを経て電解質溶液タンクへポンプ圧送されるようになっていることが好ましい。
<電解質>
電気化学的処理システムに用いられる電解質は、コンクリート中に浸透することによりコンクリートの電気抵抗を低減し、電気を流れやすくするもので、溶液中にプラスイオンとマイナスイオンが存在するものであればよい。具体的には、溶媒である水に、溶質として各種のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を溶解した水溶液が好適に使用される。アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム、並びにマグネシウムやカルシウムなどの炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、さらに水酸化物や塩化物等が挙げられる。
外部電極20を構成する陽極材と、コンクリート内部に埋設されている鉄筋(内部電極)とは、それぞれ電極ケーブルと接続し、電極間が通電できるようになっている。
以上のような状態で、外部電極と、コンクリート内部に埋設されている鉄筋(内部電極)との間に直流電流を通電(好ましくはコンクリート表面積当り0.5A/m以上、より好ましくは0.7~1.5A/m)しながら、継続的又は断続的(間欠的)に、電解質の供給管に電解質溶液を供給する。
ここで、コンクリートへの効率的に電解質を電気浸透性させ、また、コンクリート内部の塩化物イオンを外部電極側に泳動させて除去する観点から、電解質の供給は断続的(間欠的)であることが好ましい。
この場合、例えば、吐出量を0.05~0.2m/min(より具体的には0.1m/min)として、タイマーにて5~15分(より具体的には10分)運転後、5~25分(より具体的には15分)休止するような操作を繰り返して電解質を供給することが好ましい。
電解質保持材の保水量はコンクリートを湿潤状態で保持する観点から、0.1~1.5ml/cmとすることが好ましく、0.4~0.8ml/cmとすることがより好ましい。保水量は下記式のようにして求めることができる。
保水量(ml/cm)=
(湿潤重量(g)-絶乾質量(g))/電解質保持材の体積(cm
上記の各質量を求めるには、まず、電解質保持材を20cm角に切る。その後、バットに電解質溶液を張り各時間吸水浸漬させて、その後、ウエス等で表面の目に見える水分をぬぐった後、天秤にて質量を測定して、湿潤質量を求める。次に温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥後、常温まで冷却して天秤にて質量を測定して、絶乾質量を求める。
電解質は、コンクリートの中性化処理が進行するに従って、pHが徐々に低下するようになる。pHの低下した電解質を使用し続けると、コンクリート表面で酸性化した電解質の影響を受け、ペースト分が溶解してコンクリートの酸荒れ現象が発生するようになるため、所定の管理値(通常pH8)までpHが低下したならば電解質を交換するようにする。
次に、電極用パネルユニット26を構成する各部材について説明する。電極用ユニットパネル26は、上述したように、電解質溶液保持材22、外部電極(陽極材)20、保護基板24がこの順に配置されてなる。電極用ユニットパネル26は、処理対象コンクリート面に対して、格子状に並べやすいように、平面視で矩形状を成していることが好ましい。
<外部電極>
外部電極20としては、上述した本発明の電気化学的処理用陽極材を用いることができ、同様の構成とすることができるので、その説明を省略する。
<電解質溶液保持材>
電解質溶液保持材22としては、親水性素材による不織布、親水処理された不織布又はフェルトを用いることができる。
親水性素材による不織布とは、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、綿などの天然繊維のように素材自在に親水性を有する原料により製造された不織布である。
親水処理された不織布とは、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を原料として製造された不織布であって、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた不織布である。
フェルトは、羊毛または他の獣毛繊維を縮絨してシート状にしたものである。
上記の不織布の製造方法は、特に限定はなく、スパンレース法、スパンボンド方、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた各種の不織布を用いることができる。
各電解質溶液保持材の厚みは、2~15mmであることが好ましく、2~10mmであることがより好ましく、2~5mm程度であることがさらに好ましい。また、密度は、200~500g/mであることが好ましく、300~400g/mであることがより好ましい。
保護基板24は、電解質保持材22からの電解質の蒸発を緩和するために設けられ、例えば、中空ポリカーボネート板、透明アクリル板、硬質塩ビ板等を用いることが好ましい。保護基板24の厚さは、4~10mm程度であることが好ましい。
また、電解質保持材22の厚さ(T1)は、コンクリートへの電解質保持の観点から、保護基板の厚さ(T2)よりも厚いことが好ましくT1/T2が1.1~2.5であることが好ましく、1.2~2.2であることがより好ましい。
以下、本発明について、実施例、及び比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、以下の実施例、及び比較例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1で用いた陽極材は、次のようにして製造した。
塩化イリジウム酸六水和物(試薬)と塩化タンタル(試薬)を、IrOとTaのモル比で7:3となるように計り取り、5vol%塩酸を含むブタノール溶液により、金属換算で50mg/mlとなるように塗布液を調整した。
該塗布液を、網板状のチタン基材(市販品)に刷毛塗り法により塗布後、100℃で10分間乾燥させ、その後、500℃で1時間熱処理を行った。この工程を10回繰り返し、IrO-Taからなるコーティング層を形成し、陽極材を作製した。
(実施例2~6、比較例1~4)
実施例2~6、及び比較例1~4については、塩化イリジウム酸六水和物と塩化タンタルの配合割合を、IrOとTaのモル比が所望の範囲となるように変更することで、コーティング層のイリジウムとタンタルの配合量を調整し、陽極材を作製した。
陽極材のコーティング層の膜厚は、塗布液の塗布、乾燥及び熱処理を繰り返す回数を変更することで、調整した。膜厚は、陽極材の断面をSEMで撮影し、この断面図から二次電子像の観察倍率10000倍の写真よりスケールにより5箇所測定し、平均値を求めた。
陽極材のコーティング層の成分は、蛍光X線分析により求めた。蛍光X線分析は、蛍光X線分析装置(INCA X act:オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を用い、加速電圧:6kV、プローブ電流:medium 10、収集時間:60sec、プロセスタイム:3の測定条件で測定を行った。測定は、4箇所行い、その平均値により求めた。
通電試験に用いた試験体は、下記表1に示す配合のコンクリート10と、直径13mmの鉄筋12を用いて、図2(A)、(B)に示すような100mm×100mm×400mmでかぶり30mmの角柱試験体14を作製した。なお、コンクリートは28日間封緘養生後、試験に使用した。
通電試験は、図3(A)、(B)で示すように、電解質溶液に浸した5mm厚電解質溶液保持材(不織布)22を角柱試験体14の下面に配置し、電解質保持材22、陽極材(チタンメッシュ)21の順に配置した。角柱試験体14の鉄筋12より下面側の側面には、エポキシ樹脂(コニシ(株)製、商品名ボンドクイックメンダー)を塗布し、加熱することで、エポキシ樹脂塗装36を設けた。鉄筋12を内部電極とし、チタンメッシュ21を外部電極として、これらの間に直流電流を通電できるようにした。
通電は、直流電源方式は定電流方式(一定の電流値を通電)を使用し、所定の電流を流すのに必要な電圧を測定し、電圧の経時変化をデータロガーにて記録保存した。コンクリートへの通電は,コンクリート表面積当り1A/mとした。
電解質は、0.3mol/L炭酸カリウム(KCO)、又は、0.18mol/L炭酸リチウム(LiCO)を用い、ポリプロピレン製のハズマットピ
グ吸収剤(ニューピグコーポレーション製のMSD-015)である不織布に含浸し、電解質を保持した電解質溶液保持材を作製した。
試験に用いた陽極材のコーティング層の組成、膜厚、セメントの種類、電解質溶液の種類、及び結果を表2に示す。なお、評価は、以下の基準で行った。また、表中のセメントの種類は、OPC:普通ポルトランドセメント、HPC:早強ポルトランドセメントを示す。
≪評価方法≫
通電を8時間行い、初期電圧値からの8時間後の電圧の上昇が20V未満を「〇」とし、20V以上を「×」とした。なお、初期電圧値は、通電を開始し、所定の電流値で通電が可能となった電圧値とした。
表2に示すように、実施例1~6の陽極材を用いた場合は、8時間経過後の電圧上昇値は、3~7Vであり、安定して通電を行えていることが確認できる。コーティング層を設けなかった比較例1、2では、大きな電圧の上昇が見られ、コーティング層の貴金属の含有量が本発明の範囲外である比較例3、4においても、電圧の上昇が見られた。
10 コンクリート
12 鉄筋
14 角柱試験体
20 外部電極
21 陽極材(チタンメッシュ)
22 電解質保持材
24 保護基板
26 電極用ユニットパネル
30 桟木
34 給水ホース
36 エポキシ樹脂塗装

Claims (9)

  1. チタン系基材と、前記チタン系基材の表面に貴金属を30~70質量%含有するコーティング層と、を有する鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
  2. 前記貴金属がイリジウムである請求項1に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
  3. 前記コーティング層が、さらに卑金属を含有する請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
  4. 前記卑金属がタンタルである請求項3に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
  5. 前記貴金属及び前記卑金属を酸化物として含有する請求項3に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
  6. 前記コーティング層の膜厚が、0.5μm以上3μm以下である請求項1または2に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
  7. 脱塩工法又は再アルカリ化工法に用いられる請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材。
  8. 請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理用陽極材を、コンクリート表面側に設置した外部電極とし、コンクリート内部側に埋設されている鉄筋を内部電極として、前記外部電極と前記内部電極との間に直流電流を通電する鉄筋コンクリートの電気化学的処理システム。
  9. 前記コンクリートと前記外部電極との間に、電解質を保持した電解質保持材を備える請求項8に記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理システム。
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