JP2024016828A - 紙製容器およびその使用方法 - Google Patents

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Yuki Kawamata
慎吾 橋本
Shingo Hashimoto
真也 大根田
Shinya Oneda
知也 畠山
Tomoya Hatakeyama
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Abstract

【課題】本発明の課題は、十分な防水性を備えた二重構造の紙製容器を開発することである。【解決手段】本発明によって、少なくとも内容器の内側となる面に、防水層側から測定した30分コッブ吸水度が40g/m2以下である防水層を有する内容器を外容器の内側に設けた、二重構造の紙製容器が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は、内容器と外容器の二重構造を有する紙製容器およびその使用方法に関する。
従来から、種々の物品を包装するために、紙基材を用いた種々の形態からなる紙製容器や梱包材等が使用されている。一般に、紙製の容器や梱包材は、紙基材をベース素材とすることから、水蒸気等の透過が極めて容易であり、包装している物品から発生する湿気による強度低下を来すことがある。また、包装、梱包の対象となる物品によっては、外部から侵入する水蒸気等を著しく嫌うものがある。更に、チルド製品等のように氷を一緒に入れて輸送する場合、紙製の容器や梱包材が防水性を具備する必要がある。
このため、紙基材の表面に、撥水性を有するワックス組成物を塗工してワックス層を形成する方法、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等をラミネートして樹脂被膜を形成する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、紙の少なくとも片面に、ワックスエマルジョンおよび水不溶性合成樹脂エマルジョンと共に界面活性剤を加えた混合液を塗布後、加熱処理を施して、最外層に界面活性剤の層を形成した防湿紙が記載されている。また、特許文献2には、基紙の少なくとも片面に、少なくとも2層の塗工層を有し、最表面に位置する塗工層はワックスを封入したマイクロカプセルを含有し、塗工量が固形分換算0.5g/m以上2.5g/m以下であり、この最表面の塗工層と基紙との間に位置する塗工層はアクリル系共重合体および/またはスチレン系共重合体を含有する防湿ライナが記載されている。
特開平10-266096号公報 特開2011-162899号公報
脱プラスチックの流れの中で発泡スチロールを代替する紙製容器が要求されており、そのような容器のひとつとして段ボール箱が注目されている。
段ボール箱を取り扱う上で、特に内容物が海産物や食品のような水分の高い品物の場合、通常のライナを内面に設けた段ボール箱に直接投入、保管した場合箱の強度が低下してしまう。そのため、段ボール箱の内面に用いられるライナについては特許文献1や特許文献2に代表される加工処理を行ったライナを用いる必要がある。
しかし、特許文献1のワックス層を形成する方法では、単にワックス組成物を1層塗工しても、透湿度を十分に抑制することは困難であり、透湿度を十分に抑制するためにはワックス組成物を多数回塗工することが必要となり、製造工程が著しく煩雑になる。また、特許文献2のような樹脂被膜でラミネートする方法では、ラミネート加工のため製造工程が煩雑となることに加え、樹脂被膜でラミネートした紙または板紙は、使用後に古紙として回収使用する際の離解性が著しく悪く、再利用化が困難であった。
このような事情に鑑み、本発明の課題は、従来よりも簡便な方法で十分な防水性を備え、リサイクル性が良好な二重構造の紙製容器、およびその使用方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討したところ、少なくとも内面となる側に防水層を設けた紙製の内容器を、紙製の外容器の内部に設けることにより、十分な防水性を備えた二重構造の紙製容器を開発することに成功した。
以下に限定されるものではないが、本発明は、下記の態様を包含する。
[1](a)紙製の外容器と、(b)外容器の内側に設けられた紙製の内容器と、を有する紙製容器であって、前記内容器が、少なくとも内側となる面に、防水層側から測定した30分コッブ吸水度が40g/m以下である防水層を有する、紙製容器。
[2]前記内容器の外側側面部の少なくとも一面が、少なくとも前記外容器の内側側面部に接していることを特徴とする、[1]に記載の紙製容器。
[3]前記内容器が箱形状である、[1]または[2]に記載の紙製容器。
[4]前記内容器に水を入れて24時間放置後の、外容器単独の箱圧縮強さ残存率が50%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の紙製容器。
[5]前記内容器の内側となる面において、[水に30分接触させた後の破裂強度]/[水に接触させる前の破裂強度]が50%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の紙製容器。
[6]前記防水層が塗工により設けられている、[1]~[6]のいずれかに記載の紙製容器。
[7]前記防水層が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂の少なくとも1つの樹脂および撥水性ワックスを含有する防水性樹脂層である、[1]~[6]のいずれかに記載の紙製容器。
[8]少なくとも内容器の内側となる面に、防水層側から測定した30分コッブ吸水度が40g/m以下である防水層を有する内容器を外容器の内側に設けた紙製容器に物を収容する、紙製容器の使用方法。
[9]二重構造を有する紙製容器を製造する方法であって、
(a) 紙製の外容器を作製すること、
(b) 30分コッブ吸水度が40g/m以下である防水層を有する紙を少なくとも内側となる面に使用した紙製の内容器を作製すること、
(c) 外容器の内側に内容器をセットすること、
を含む、上記方法。
本発明によれば、従来よりも簡便な方法で、十分な防水性を備えた二重構造の紙製容器、および二重構造の紙製容器の使用方法が得られる。
図1は、防水性を評価する際に作製した内容器の概略図である。 図2は、防水性の評価方法を示した写真である。 図3は、耐油性の評価方法を示した写真である。
本発明は、紙製容器(紙容器、以下「外容器」とする。)の内部に、防水性を有する紙製容器(紙容器、以下「内容器」とする。)を設けた二重構造の紙製容器、および、その使用方法に関する。本発明において防水性とは、1週間以上の長時間水にさらしても水が浸みこまない機能を意味する。また、本発明の好ましい態様において、紙製容器の内容器は、内容器に水を入れて3週間放置しても、内容器の外部、外容器の内部および外部に水の浸み出しが発生せず内容器・外容器ともに形状が変形しない、あるいは、若干変形はみられるが内容器・外容器それぞれの形状が維持されるものをいう。
本発明に係る二重構造の紙製容器の用途には特に制限はなく、例えば、鮮魚や野菜を始めとした食料品などを収容したり、水などの液体やスラリー、エマルジョン、ゲル状の材料などを収容したり、洗剤などの吸湿性のある物品を収容したりする容器として好適に用いることができる。
紙製容器
本発明に係る二重構造の紙製容器は、紙製の内容器と紙製の外容器とから構成される。内容器および外容器に用いられる紙の種類は特に限定されず、包装紙、加工原紙、段ボール原紙、紙器用板紙、雑板紙、厚紙など適宜選択してよい。好ましい態様においては、外容器に段ボールシートを用いており、好ましい態様において、内容器に段ボールシートを用いており、より好ましい態様において、内容器と外容器の両方に段ボールシートを用いている。段ボールシートの厚みは特に限定されないが、好ましい態様において、外容器に用いる段ボールシートの厚みは2.5~15mm、内容器に用いる段ボールシートの厚みは2~10mmであり、より好ましい態様においては、内容器に用いる段ボールシートの厚みは外容器に用いる段ボールシートの厚み以下である。
段ボールシートとは、平らな紙(ライナ)と波型の紙(中しん)を接着剤で貼り合わせて作られ、商品の包装や緩衝材、荷物の運送、物品を保管するときなどの様々な用途に好適に使用される。
本発明に係る二重構造の紙製容器に用いる段ボールシートは、一般に、ライナと、波型に加工した中しんをコルゲーターを用いて貼り合わせることにより製造することができる。コルゲーターとしては、公知のものを制限なく使用することができるが、一般的なコルゲーターは、シングルフェーサ、ダブルバッカー、カッターによって構成される。また、ライナと中しん原紙を接着するための製糊装置、さらに、糊を溶かすための熱を発生させる装置などが合わせて使用される。
また、本発明に係る二重構造の紙製容器に用いる段ボールシートを製造する際、ライナと中しんとの接着には接着剤を用いる。接着剤は公知の物を利用することができるが、段ボールシート断面における水濡れ、結露および湿気等により段ボール箱の強度が低下しにくくなる観点から、耐水接着剤を使用することが好ましい。特に、内容器用の段ボールシートを製造する際に耐水接着剤を用いることが好ましい。耐水接着剤とは、通常の段ボール用接着剤に、耐水化剤を加えたものである。耐水化剤としては特に限定されず、合成樹脂エマルジョンやケトンアルデヒド樹脂等が含まれているものがあげられる。
段ボールシートに用いるライナについては後述するが、使用する用途および使用する部位に応じてクラフトライナ、ジュートライナなどを使用することができる。ライナの坪量も特に制限されず、例えば、ライナ全体の坪量を70~550g/mとすることができ、100~500g/mとしたり、150~450g/mとしたりしてもよい。
段ボールを構成する中しんについては、使用する用途および使用する部位に応じて、Aフルート、Bフルート、Cフルート、Eフルート、Fフルート、Gフルート、AAAフルート、AAフルート、Wフルートなどを特に制限なく使用することができる。中しんの坪量も特に制限されず、120g/m、160g/m、180g/m、強化180g/m、強化200g/mなどを好適に使用することができる。
本発明に係る二重構造の紙製容器は、内容器・外容器とも、例えば1枚のブランクシートを用いて折り曲げることにより、また必要に応じ接着剤によって貼合したりすることによって段ボールシートから製造される。接着剤の種類については特に限定されず、水系、水分散系、溶液系、無溶剤系、固体系等が挙げられ、接着面となる紙素材の表面の状態などに応じて適宜選択することができる。
接着剤の使用量は、充分な接着強度を有すれば特に限定されないが、面塗布の場合は0.5~2000g/mとしてもよく、5~1500g/mとしてもよく、10~1000g/mとしてもよい。また線塗布の場合は、アプリケーターのノズル径、ノズルもしくは紙素材の移動速度、塗布時の接着剤粘度、接着する紙の幅等に応じて塗布幅を適宜変更することができ、また単位長さあたりの塗布量も特に限定されないが例えば0.1~30g/mとしてもよく、0.5~20g/mとしてもよく、1~15g/mとしてもよい。
本発明に用いられる二重構造の紙製容器の形状や大きさについては、外容器の内側に内容器を設けることができ、また対象とする物品を適切に収納可能で強度が担保可能な範囲であれば内容器・外容器とも特に限定されず、例えばJIS Z 1507に例示されている段ボール箱や、1枚のブランクシートを折り曲げることにより形成され、底部とすべての側壁部が折曲線を介し連接しており、側壁部のすべてが折曲線を介して連接しているウォータータイト型の箱、多角形の容器や箱、円筒形の容器や箱、湾曲した器状の容器や箱など、強度や使用用途に応じて適宜選択して良い。また、内容器と外容器の形状を同一としてもよく、異なる形状の内容器と外容器を組み合わせてもよい。好ましい態様において、本発明に係る紙製容器は側面部において、少なくとも外容器内側の面の一部と内容器外側の面の一部が接する程度に外容器内寸と内容器外寸が設定された一組の紙製容器であり、より好ましい態様においては内容器・外容器とも箱の形状をしており、さらに好ましい態様においては、内容器がウォータータイト型の箱である。
紙素材を製函して箱などの紙製容器を製造する場合、製函機を用いることができる。使用する製函機は特に制限されず、例えば、垂直式や水平式の製函機を用いることができる。
本発明に係る二重構造の紙製容器は、好ましい態様において、内容器に水を入れて24時間放置後の、外容器単独の箱圧縮強さ残存率が50%以上であることを特徴とする。また、本発明に係る二重構造の紙製容器は、内容器の内側となる面において、[水に30分接触させた後の破裂強度]/[水に接触させる前の破裂強度]が50%以上であることが好ましい。内容器の内側となる面に防水紙を用いることにより、外容器の内面に防水性を付与しなくとも容易に防水性を有する箱を得ることができるとともに、外容器の強度低下を抑制することができる。
本発明の好ましい態様において、本発明に係る紙製容器は優れた耐油性を備えており、内容器の内面に油を付着させた物品を入れて1週間放置しても、外容器の外部に油の浸み出しが発生せず、より好ましい態様において内容器の外側まで油の浸み出しが発生しない。さらに好ましい態様において、本発明の二重構造の紙製容器は、箱内部の温度が維持される保温性も併せ持ち、例えば、冷たい内容物を収容した場合、優れた保冷性を発揮する。
段ボールのライナ
本発明の紙製容器を構成する段ボールに用いるライナについて、その坪量は特に制限されず、例えば、10~800g/mとすることができる。ライナが単層紙である場合、坪量は10~300g/mの範囲で適宜設定することができ、30~250g/mの範囲としてもよい。また、ライナが2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、その坪量は70~800g/mの範囲で適宜設定することができる。段ボールのライナについては、紙製容器の用途や構造等に応じて適宜選択することができ、また内容器用のライナの坪量と外容器用のライナの坪量を同一としてもよく、内容器と外容器とで異なる坪量のライナを用いてもよい。好ましい形態として、内容器の組立作業性向上を図る観点から、本発明で用いる内容器用のライナの坪量は、外容器用のライナの坪量よりも小さくするとよい。
(内容器用ライナ)
本発明の紙製容器を構成する内容器に係るライナは、好ましい態様において、防水性を有しており、より好ましい態様において、表面の120秒コッブ吸水度が3g/m以下であり、2g/m以下がより好ましく、1g/m以下であってよい。なお、120秒コッブ吸水度を測定した際に1g/m未満(吸水せず測定限界値未満の場合も含む)である紙においては、好ましい態様において、表面の30分コッブ吸水度が155g/m以下であり、100g/m以下がより好ましく、50g/m以下がさらに好ましく、25g/m以下がさらに好ましく、最も好ましくは10g/m以下であってよい。本発明においてコッブ吸水度は、JIS P8140(コッブ法)に準拠して、100mlの蒸留水を防水層に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定する。測定時間を伸ばした条件下でもコッブ吸水度が低いほど、防水層の吸水性が低いものとなる。
本発明の紙製容器を構成する内容器用ライナは、好ましい態様において防湿性にも優れており、例えば、透湿度は100g/m・24h以下であり、より好ましくは75g/m・24h以下、さらに好ましくは50g/m・24h以下である。ここで、紙の透湿度は、JIS Z 0208に準拠してライナの防水層側から測定することができ、数値が小さい程、防湿性が高いことを意味する。
本発明の紙製容器を構成する内容器用ライナは、耐油性にも優れており、好ましい態様において、防水層側のはつ油度がキットナンバー7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましい。ここで、はつ油度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41「紙及び板紙-はつ油度試験方法-キット法」に準拠してライナの防水層側から測定することができ、キットナンバーの値が大きい程、耐油性が高いことを意味する。
本発明の紙製容器を構成する内容器用のライナは、防水面の王研式平滑度が15秒以上であることが好ましく、20秒以上がより好ましく、25秒以上がさらに好ましい。防水紙の防水層の表面の平滑度が上記の範囲であることにより、防水層の表面において高い光沢が得られ、より美粧性に優れた防水紙が得られる。
(内容器用ライナの紙基材)
本発明の紙製容器を構成する内容器用のライナは、紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面に設けられた防水層と、を少なくとも有している。本発明において紙基材の坪量は特に制限されず、例えば、10~800g/mとすることができる。紙基材が単層紙である場合、坪量は10~300g/mの範囲で適宜設定することができ、例えば、紙基材がクラフト紙の場合、坪量を30~250g/mの範囲で設定することができる。また、紙基材が2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、その坪量は70~800g/mの範囲で適宜設定することができる。
内容器用ライナに用いる紙基材は、防水層を設ける面の120秒コッブ吸水度が25g/m以下、好ましくは20g/m以下、より好ましくは15g/m以下の範囲である。また、本発明の二重構造の紙容器において、内容器用のライナに用いる紙基材は、120秒コッブ吸水度が5g/m以上であり、好ましくは7g/m以上、より好ましくは10g/m以上である。本発明においては、ワックスなどの撥水剤を塗工するなどして120秒コッブ吸水度を調整することができるが、120秒コッブ吸水度が上記の範囲であることにより、防水塗料の溶媒中に含まれた水分の過剰な浸透による紙力低下防止と、防水塗料中の固形分が紙層表面へ滞留することにより確実な被覆が行われ防水性と防湿性の向上を両立させることができる。
内容器用ライナに用いる紙基材は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に準拠して測定した撥水度がR4以上であり、R6以上であることが好ましく、R8以上であることがより好ましい。紙基材の撥水度がR4以上であると、防水材を塗工する際、防水材および/または防水材の溶媒に含まれる水分が紙基材へ過剰に浸透することがなく、紙の強度低下を抑制することができる。
内容器用ライナに用いる紙基材は、好ましい態様において防水層を設ける面の点滴吸油度が5秒以上であり、より好ましくは7秒以上、さらに好ましくは10秒以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは80秒以下、より好ましくは75秒以下、さらに好ましくは70秒以下である。吸油度が上記の範囲であることにより、防水材に含まれるワックスが紙表面にとどまり紙層に浸み込みにくいことから、紙基材の防水性および防湿性を向上させることができる。紙基材の吸油度は、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間を測定する。
内容器用のライナに用いる紙基材は、好ましい態様において、防水層を設ける側より測定した透湿度が1500g/m・24h以上であり、より好ましくは1750g/m・24h以上、さらに好ましくは2000g/m・24h以上である。透湿度の上限は特に限定されないが、好ましい態様において、5000g/m・24h以下であり、より好ましくは4500g/m・24h以下、さらに好ましくは4000g/m・24h以下である。防水層を設ける面の透湿度が上記の範囲であることにより、塗工後の乾燥工程において効率よく防水材および/または防水材の溶媒中の水分を紙層側へ蒸発させることから、均一に被覆する防水層を設けることができ、防水性および防湿性が向上する。
内容器用のライナに用いる紙基材は、好ましい態様において、防水層を設ける面の水接触角が75度以上であり、77度以上であることがより好ましい。水接触角が上記の範囲であることにより、防水材および/または防水材の溶媒中に含まれる水分が紙基材へ過剰に浸透することを防ぎ、紙基材の強度低下を防ぐことができる。
内容器用ライナに用いる紙基材の物性は特に制限されず、紙製容器の用途や構造に応じて適宜設定することができる。本発明においては、例えば、縦伸びが1.0~15.0%、横伸びが2.0~12.0%、比圧縮強度が100~350N・m/g、比破裂強度が2.80~5.00kPa・m/gとなるように設定することができる。
(外容器用ライナ)
本発明の紙製容器を構成する外容器に係るライナの紙物性は特に限定されず、たとえば、表面の120秒コッブ吸水度を50g/m以下としてもよく、45g/m以下としてもよく、40g/m以下としてもよい。本発明においてコッブ吸水度は、JIS P8140(コッブ法)に準拠して、100mlの蒸留水を表層に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定する。
本発明の紙製容器を構成する外容器用ライナの透湿度は特に限定されず、10000g/m・24h以下としてもよく、7500g/m・24h以下としてもよく、5000g/m・24h以下としてもよい。ここで、紙の透湿度は、JIS Z 0208に準拠して表層側から測定することができ、数値が小さい程、防湿性が高いことを意味する。
本発明の紙製容器を構成する外容器用ライナの、表面の点滴吸油度は特に限定されず、1秒以上としてよく、2秒以上としてもよく、3秒以上としてもよい。なお吸油度は、注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間を測定する。
外容器用ライナのその他の物性についても特に制限されず、紙製容器の用途や構造に応じて適宜設定することができ、例えば、表側の王研式平滑度を1秒~100秒、縦伸びが1.0~15.0%、横伸びが2.0~12.0%、比圧縮強度が100~350N・m/g、比破裂強度が2.80~5.00kPa・m/gとなるように設定することができる。また、外容器用ライナにおいて、外容器の内側となる面に対して後述する防水層を設けていてもよい。
(ライナの原料、製造)
ライナの原料パルプとしては、後述するが内容器用、外容器用ともに特に制限なく公知のものを使用することができる。ライナは、古紙パルプを含有するものであってもよく、また、古紙パルプを含有しないものであってもよい。古紙パルプを含有する場合であって、例えば、ライナが単層紙である場合、好ましくは全パルプに占める古紙パルプの配合率は10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上とすることができ、また、100質量%(古紙由来のパルプのみからなる)とすることができる。また、古紙パルプ以外のパルプとしてクラフトパルプを配合してもよく、全量クラフトパルプとしてもよい。また、ライナが2層以上の紙層を有する多層抄き板紙である場合、1層あたりの古紙パルプ配合率を上記の通りとすることができ、各層における古紙パルプ配合率が異なるものであってもよい。
また、ライナの抄造では、サイズ剤や撥水剤を内添または外添させることができ、更に、強度を向上させるために紙力増強剤を内添または外添させることができる。サイズ剤としては、例えば、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α-カルボキシルメチル飽和脂肪酸等、また、中性ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、カチオンポリマー系サイズ剤等が挙げられる。また、撥水剤としては、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ワックス等が挙げられる。また、紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)や変性でん粉等の従来から使用されている紙力増強剤が挙げられる。外添する場合の塗工量は特に制限されず、例えば、10g/m以下としてもよく、5g/m以下としてもよく、3g/m以下としてもよく、2g/m以下としてもよい。
また、必要に応じてライナに公知の填料を内添させることができる。填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料、及び尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料等が挙げられる。
さらに、ライナの品質に影響のない範囲で、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物、水溶性アルミニウム化合物、多価金属化合物、シリカゾル等を内添して使用してもよい。
ライナは、公知の抄紙方法で製造される。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機等を用いて行うことができるが、これらに限定されない。
また、ライナの平滑度を調整するため、必要に応じ平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理には、通常のカレンダ、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、熱カレンダ、シューカレンダ等の平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温、線圧等を適宜調整してよい。さらに、抄紙したライナの最外層の上に公知の塗工方法を用いて、ライナの使用目的に応じる形でラテックス、澱粉、顔料、撥水剤、後述する防水材等の塗工剤を塗工してもよい。
本発明においては、紙製容器の用途や構造に応じて、内容器用ライナと外容器用ライナとで前述した原料や薬品、抄紙方法等を同一としてもよく、異なってもよい。より好ましい態様として、本発明の紙製容器を構成する内容器について、内容器の内側となる面に、後述する防水性を有する防水層を設けた紙(防水紙)を用いている。
中しん原紙
得られたライナに、波状に加工した中しん原紙を貼り合わせることにより、本発明に係る段ボールを得ることができる。一般に中しん原紙は、コルゲーターで波状に加工され、その表裏にライナを貼り合わせて、強度の高い段ボールが製造されるが、多層に加工した段ボールや、波状の中しん原紙が表面にでている片面段ボールも知られている。本発明において好ましい態様として、中しんの両面にライナを貼り合わせた段ボール、もしくは多層に加工した段ボールであることが好ましい。
中しん原紙の坪量は特に制限されないが、60~250g/mが好ましく、70~240g/mがより好ましく、80~230g/mがさらに好ましい。また、二重構造の紙容器の用途や構造に応じて、内容器用の段ボールシートに用いる中しんと外容器用の段ボールシートに用いる中しんとで坪量を同一としてもよく、異なる坪量の中しんを用いてもよい。
本発明では、内容器用の段ボールシートにおいて強化中しんを使用することが好ましく、耐水強化中しんを使用することがより好ましい。強化中しんとは、抄紙工程で紙力剤等を添加することにより、JIS P 3904に規定される中しん原紙の性能を満足する一般中しんと比較し圧縮強度を向上させた中しんを指す。また、耐水強化中しんとは、強化中しんの製造工程にて、さらに耐水剤を添加することにより、圧縮強度だけでなく耐水性を向上させた中しんを指す。内添紙力剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)を用いてもよく、その場合の添加量は、紙料固形分に対して0.1%~5.0%が好ましく、0.2%~2.0%がより好ましい。
中しん原紙は、原紙の片面または両面に、澱粉系化合物を含む塗工液を塗布することによって設けられたクリア(透明)塗工層を有しても良い。澱粉塗工とは、例えば、ポンド式2ロールサイズプレス、フィルム転写型の塗工方式であるゲートロールコーターやロッドメタリングサイズプレス、非接触塗工方式であるカーテンコーターやスプレーコーターなどのコーター(塗工機)を使用して、澱粉系化合物を含む塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布することをいう。
澱粉塗工の量は、中しんの強度を損なわない範囲であれば特に制限されず、下限は片面あたり固形分で0.2g/m以上としてもよく、0.8g/m以上としてもよく、2.0g/m以上としてもよく、3.0g/m以上としてもよく、4.0g/m以上としてもよい。上限は特に限定しないが、塗工量を多くすると澱粉をクリア塗工する前の原紙坪量を下げる必要があり、澱粉塗工前の原紙の引張り強度や引裂き強度が低下し、断紙が発生しやすくすることから、澱粉系化合物の塗工量は、片面あたり8.0g/m以下が好ましく、6.0g/m以下としてもよい。
本発明においては、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、通常の澱粉塗工に配合される各種助剤を適宜使用できる。
中しん原紙に澱粉系化合物を塗布するための塗工機としては、例えば2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコーター、バーコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーターを用いることができる。本発明においては、ゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスなどのフィルム転写方式の塗工機を用いても効果を発揮することができる。
中しん原紙の原料パルプとしては、後述するが特に制限なく公知のものを使用することができる。本発明で用いる中しん原紙のパルプ原料としては、古紙パルプを多く配合することが好ましい。本発明において全パルプに占める古紙パルプの配合率は、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上であってもよい。
中しん原紙に添加する填料、添加剤については後述するが公知のものを使用することができ、抄紙方法も公知の抄紙方法を用いることができる。また、中しん原紙に種々の表面処理を施すことができ、例えば、カレンダによって表面処理を行ってもよく、中芯原紙に滑剤を塗布してもよい。滑剤としては、特にワックス系の滑剤を用いてよく、塗布量としては、0.005g/m~0.1g/mが好ましい。本発明においては、滑剤は、原紙をカレンダに通紙する際に、カレンダロールに滑剤を噴霧し紙に転写する方式が好ましい。このようにすることにより滑剤の塗布以外に、カレンダロールの表面に汚れが付着するのを防止する事が可能となるためである。上記の通り、滑剤を塗布することにより、カレンダロールの表面に汚れが付着するのをより効果的に防止することができる。
得られた中しん原紙は、公知のコルゲーターを用いて波型に加工(フルーテッド)することができる。波形加工としては、用途に応じて公知のあらゆる加工を施すことができるが、例えば、Aフルート、Bフルート、Cフルート、Eフルート、Fフルート、Gフルート、AAAフルート、AAフルートなどを中しん原紙に施してもよい。なお本発明において、内寸をより広く確保する観点から、内容器用段ボールシートに用いる中しん原紙についてはBフルート方式で加工したものを使用することが好ましい。
段ボールシートへの加工
本発明の箱に用いられる段ボールシートは、ライナと、波型に加工した中しんをコルゲーターを用いて貼り合わせることにより得られる。
コルゲーターとしては、公知のものを制限なく使用することができるが、一般的なコルゲーターは、シングルフェーサ、ダブルバッカー、カッターによって構成される。また、ライナと中芯原紙を接着するための製糊装置、さらに、糊を溶かすための熱を発生させる装置などが合わせて使用される。
また、本発明の箱に用いられる段ボールシートを製造する際、ライナと中芯の接着には接着剤を用いるが、段ボールシート断面における水濡れ、結露および湿気等により段ボール箱の強度が低下しにくくなる観点から、耐水接着剤を使用することが好ましく、特に、内容器用の段ボールシートを製造する際に耐水接着剤を用いることがより好ましい。耐水接着剤とは、通常の段ボール用接着剤に、耐水化剤を加えたものである。耐水化剤としては特に限定されず、合成樹脂エマルジョンやケトンアルデヒド樹脂等が含まれているものがあげられる。
紙製容器用ライナ および 紙製容器用段ボールの中しんの原料
紙製容器に用いられるライナおよび中しん(以下「紙素材」と表記する。)の原料パルプとしては、その使用部位および用途に応じて特に制限なく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミカルパルプ(CP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)などの木材由来の各種パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプを挙げることができる。
紙素材は、古紙パルプを含有するものであってもよく、また、古紙パルプを含有しないものであってもよい。古紙パルプを含有する場合であって、例えば、紙素材が単層紙である場合、好ましくは全パルプに占める古紙パルプの配合率は10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは70質量%以上とすることができ、また、100質量%(古紙由来のパルプのみからなる)とすることができる。また、古紙パルプ以外のパルプとしてクラフトパルプを配合してもよく、全量クラフトパルプとしてもよい。
古紙パルプとしては、段ボール古紙、上白、特白、中白、白損などの未印刷古紙を離解した古紙パルプ、上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙、更紙などに印刷された古紙、および筆記された古紙、廃棄機密文書等の紙類、雑誌古紙、新聞古紙を離解後脱墨したパルプ(DIP)などを使用することができる。
また、紙素材の抄造では、サイズ剤や撥水剤を内添または外添させることができ、さらに、強度を向上させるために紙力増強剤を内添させることができる。サイズ剤としては、例えば、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α-カルボキシルメチル飽和脂肪酸など、また、中性ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、カチオンポリマー系サイズ剤などが挙げられる。また、撥水剤としては、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ワックスなどが挙げられる。また、紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド(PAM)や変性でん粉などの従来から使用されている紙力増強剤が挙げられる。
また、必要に応じて紙素材に公知の填料を内添させることができ、無機填料や有機填料を制限なく使用することができる。無機填料としては、例えば、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、クレー、焼成クレー、デラミネーティッドクレー、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などが挙げられ、有機填料としては、例えば、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
さらに、紙素材の品質に影響のない範囲で、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物、水溶性アルミニウム化合物、多価金属化合物、シリカゾルなどを内添して使用してもよい。
紙素材は、公知の抄紙方法で製造することができる。例えば、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、ハイブリッドフォーマー型抄紙機、オントップフォーマー型抄紙機、丸網抄紙機などを用いて行うことができるが、これらに限定されない。
また、本発明の紙素材の平滑度を調整するため、必要に応じ平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理には、通常のカレンダ、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、熱カレンダ、シューカレンダなどの平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温、線圧などを適宜調整してよい。
防水紙、防水層
本発明の紙製容器を構成する防水紙は、紙素材上に設けられた防水層を有しており、好ましい態様において、本発明の防水層は塗工により設けられ、より好ましい態様において、防水層は、合成樹脂およびワックスを含有する。合成樹脂は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種類を含有することが好適である。特に、合成樹脂がスチレン系樹脂および/またはアクリル系樹脂であることが好適である。
本発明を構成する防水層が含有することのできるスチレン系樹脂としては、構造中にスチレン骨格を有するスチレン系単量体の共重合割合が50質量%以上であることが好ましく、スチレン系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレンなどが挙げられる。
また、スチレン単量体と共重合可能な単量体として、例えば、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンなどの共役ジエンなどが挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
本発明を構成する防水層が含有することのできるアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体であるアクリル系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂であり、アクリル系単量体の重合体のみからなるものであってもよい。
アクリル系単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピルなどのアクリル酸エステルなどを挙げることができ、アクリル系樹脂は、これらのアクリル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を重合したものであってよい。
また、アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで用いることができる。
本発明においては、防水層にワックスが含有されている。防水層が含有するワックスとしては、例えば、ポリエチレン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、油脂系合成ワックス(脂肪酸エステル系、脂肪酸アミド、ケトン・アミン類)、水素硬化油などの合成ワックス、蜜蝋、木蝋、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックスなどを挙げることができる。これらのワックスは、1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができ、特に、パラフィンを含む炭化水素系ワックスが好適である。
本発明においては、白色度を向上させることなどを目的として、防水性を損なわない範囲で防水層に顔料を含有させてもよい。この場合、顔料を含有させることで防水層の表面の白色度が、紙素材の白色度と比較して1%以上高くなっていることが好ましい。このような顔料としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーティッドクレー、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト、マイカ、モンモリトナイトなどの無機顔料を挙げることができ、これらの顔料を1種単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。これらの顔料の中で、特に、粒子が扁平な形状であるカオリンや炭酸カルシウムもしくはマイカは、防水性を阻害しにくいため特に好適である。このような扁平形状の無機顔料は、アスペクト比が10以上であることが好ましい。防水層における顔料の含有量は、5~40質量%以下が好ましく、10質量%~35質量%以下がより好ましい。顔料の含有量が顔料の含有量が5質量%未満であると、白色度の向上効果が十分に得られず、40質量%を超えると、合成樹脂成分が有する防水層の防湿性、防水性の機能が十分発揮できないことがあるので好ましくない。また、その他の塗工剤として、例えば、バインダー、安定剤、消泡剤、粘性改良剤、保水剤、防腐剤、着色剤などを含有させてもよい。
本発明において防水層は、上記のような成分を含有する防水材を紙素材上に塗工して乾燥することにより形成することができる。防水層の塗工量は、4~20g/mとすることが好ましく、5~15g/mとすることがより好ましい。20g/mを超えると、防水性のさらなる向上は望めない一方で、製造コストの増大を来すことがある。
本発明を構成する防水紙に設けられた防水層は、好ましい態様において、平均の厚みが5.5~20μmであり、5.6~15μmがより好ましく、5.7~12.5μmがさらに好ましい。ここで、防水層の平均厚みは、サンプルを短冊状に切断し、その断面を任意の10箇所において電子顕微鏡を用いた観察により測定した防水層の厚みの平均値である。
また、本発明を構成する防水紙は、防水層の単位厚さ当たりの透湿度が15(g/m・24h)/μm以下が好ましく、10(g/m・24h)/μm以下がより好ましく、7(g/m・24h)/μm以下がさらに望ましい。ここで、防水層の単位厚さ当たりの透湿度は、防水紙の防水層側からJIS Z 0208に準拠して測定した透湿度を平均防水層厚みで除して算出する。
本発明を構成する防水紙は、紙素材の少なくとも一方の面に、防水材を塗工し、塗工した防水材を乾燥することによって製造することができる。防水層の形成は、公知の塗工方式を使用して塗工剤を塗工して行うことができ、例えば、エアナイフ塗工、カーテン塗工、ブレード塗工、ゲートロール塗工、ダイ塗工などの塗工方式を用いることができる。また、塗工層は、単層であっても複数層であってもよく、複数の塗工層を順次塗工してもよく、カーテン塗工などにより2層以上を同時に塗工してもよい。また複数の塗工層を設ける場合は、少なくとも1層が防水性を有する塗工層であればよく、最外の塗工層として防水材を塗工することが好ましい。塗工層を乾燥する際、好ましくは、乾燥工程出口の塗工層温度が120℃未満となるように調整する。塗工剤を塗工する際の塗工速度は、塗工剤の粘度、目標塗工量を考慮して適宜設定することができる。
好ましい態様として、紙素材への塗工剤の塗工を、エアナイフ塗工やカーテン塗工といった輪郭塗工方式により行うことにより、紙素材表面への塗工剤の塗工量が均一となり、したがって塗膜厚みが均一となり、後工程である乾燥工程において塗工層におけるブリスターの発生を抑制することができる。また、接触塗工方式に比べて塗工剤の使用量を低減することができ、製造コストを抑えることができる。
紙素材に塗工された塗工剤を乾燥して塗工層とするが、この乾燥工程では、出口での塗工層温度が120℃未満とすることが好ましく、100℃以下となるように調整してもよい。出口での塗工層温度が120℃以上であると、塗工層におけるブリスターの発生率が高くなることがあり、また、塗工層が形成された後に巻き取られた防水紙にブロッキングが発生することがある。一方、出口での塗工層温度は、60℃以上が好ましく、70℃がより好ましく、80℃以上とすることもできる。出口での塗工層温度が60℃未満であると、場合によって、塗工層が形成された後に巻き取られた防水紙にブロッキングが発生することがあるだけでなく、塗工層の乾燥が不十分であるため防水、防湿性能を十分に発現できないことがある。
乾燥工程出口での塗工層温度の設定は、紙素材の坪量および紙厚を考慮して設定することができる。例えば、坪量および紙厚が大きい紙素材の場合、坪量および紙厚が小さい紙素材に比べて乾燥に熱量が必要となるが、その一方で塗工層の表面にブリスターが発生し易い傾向にある。その理由は限定されないが、厚紙の場合、薄紙に比べて坪量および紙厚が大きいと共に透気性が低いことが多く、同じ紙中水分値であっても、乾燥工程において紙素材内部で気化した多くの水分が十分に逃げきれないため、塗工層の表面にブリスターが発生し易くなると考えられる。このため、紙素材の坪量および紙厚が大きいほど、乾燥工程出口での塗工層温度を、上記の範囲内で高めに調整することが好ましく、乾燥工程入口の温度を低めに設定することがより好ましい。
ここで、乾燥工程の出口とは、乾燥工程における乾燥ゾーンが1個の場合、当該乾燥ゾーンの出口であり、乾燥工程における乾燥ゾーンが複数個の場合、最も下流側の乾燥ゾーンの出口である。
乾燥工程出口での塗工層温度の調整は、乾燥時間、乾燥ゾーンの温度の調節により行うことができる。乾燥時間は、紙素材の送り速度、乾燥ゾーンの個数、長さ、乾燥ゾーンの機器能力(風量、赤外線出力)などで決定される。また、乾燥方式としては、公知の乾燥方式を用いることができ、例えば、蒸気シリンダ加熱乾燥方式、熱風乾燥方式、ガス式赤外線乾燥方式、電気式赤外線乾燥方式などを挙げることができ、これらのいずれか1種、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。
以下に、具体例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例によって限定されるものではない。なお、本明細書において、特に記載しない限り、濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとする。
ライナおよび中しん原紙の製造
(1)ライナサンプルA
段古紙パルプ100%からなる裏層、古紙パルプ100%からなる中層、未晒クラフトパルプ70%および段古紙パルプ30%からなる表層を、裏層:中層:表層=25:60:15の重量比で抄き合わせ、ドライヤにて乾燥後、パラフィン系ワックスおよびロジンを含む撥水剤を表層側に片面塗工し、再度ドライヤにて乾燥後、カレンダを用いて平滑化処理を行ってライナサンプルAを製造した(坪量:282.6g/m、表面の120秒コッブ吸水度:12.9g/m、撥水剤の塗工量:約1g/m)。
(2)ライナサンプルB
ライナサンプルAの表層側にエアナイフを用いてスチレン・アクリル系樹脂とパラフィン系ワックスを含有する防水材(マイケルマン、VaporCoat2200)を10.0g/m塗布し、乾燥工程出口における塗工層の温度が80℃となるよう熱風乾燥してライナサンプルBを得た(坪量:291.4g/m、表面の120秒コッブ吸水度:0.1g/m)。
(3)ライナサンプルC
段古紙パルプ100%からなる裏層、古紙パルプ100%からなる中層、未晒クラフトパルプ70%および段古紙パルプ30%からなる表層を、裏層:中層:表層=25:60:15の重量比で抄き合わせ、ドライヤにて乾燥後、カレンダを用いて平滑化処理を行ってライナサンプルCを製造した(坪量:281.3g/m、表面の120秒コッブ吸水度:27.7g/m)。
(4)ライナサンプルD
ライナサンプルCの表層側に、厚さ約10μmのポリエチレン製フィルムを積層後、温度80℃に加熱したローラーを用いて接着しラミネート加工したライナサンプルDを得た(坪量:289.7g/m)。
(5)ライナサンプルE
坪量を170g/m程度となるように抄き合わせた以外は、ライナサンプルAと同様にして、薄物ライナサンプルを製造した(坪量:167.5g/m、表面の120秒コッブ吸水度:13.3g/m、撥水剤の塗工量:約1g/m)。薄物ライナサンプルの表層側に、エアナイフを用いてスチレン・アクリル系樹脂とパラフィン系ワックスを含有する防水材(マイケルマン、VaporCoat2200)を11.0g/m塗布し、乾燥工程出口における塗工層の温度が80℃となるよう熱風乾燥してライナサンプルEを得た(坪量:178.9g/m、表面の120秒コッブ吸水度:0.1g/m)。
(6)ライナサンプルF
ライナサンプルEの製造に用いた薄物ライナサンプルの表層側に、厚さ約10μmのポリエチレン製フィルムを積層後、温度80℃に加熱したローラーを用いて接着しラミネート加工したライナサンプルFを得た(坪量:177.8g/m)。
(7)中しん原紙
段古紙パルプ100重量%のパルプスラリーに、防水材0.4%を添加して紙料を調成した。次いで、この紙料から単層で抄紙し、ドライヤにて乾燥後、カレンダを用いて平滑化処理を行って中しん原紙を製造した(坪量:約200g/m)。
ライナおよび中しん原紙の評価
ライナサンプルおよび中しん原紙について、紙質を表1に示す。
(坪量) JIS P 8124に準拠して測定した。
(平均塗工層厚み、単位塗工層厚さ当たり透湿度) サンプルを短冊状に切断し、その断面を任意の10箇所において電子顕微鏡を用いた観察により塗工層(防水層)の厚みを測定し、平均値を算出して平均塗工層厚みとした。また、透湿度を平均塗工層厚みで除して、単位塗工層当たり透湿度を求めた。
(王研式平滑度) JIS P 8155に準拠し、デジタル型王研式透気度平滑度試験機(旭精工)を用いて王研式平滑度を測定した。
(縦伸び、横伸び) JIS P 8113に準拠して測定した。
(比圧縮強さ) JIS P 8126に準拠して圧縮強さを測定し、これを坪量で除して比圧縮強さを算出した。
(比破裂強さ) JIS P 8131に準拠して破裂強さを測定し、これを坪量で除して比破裂強さを算出した。
(水接触後の比破裂強さ残存率) 各サンプルの表層側の表面に水を接触させた状態で30分放置後、水をふき取ったサンプルについて、JIS P 8131に準拠して破裂強さを測定し、これを坪量で除して比破裂強さを算出した。この値を前述の比破裂強さ(水を接触させる前のサンプルの比破裂強さ)で除した値を、水接触後の比破裂強さ残存率とした。
(コッブ吸水度) JIS P 8140に準拠し、コッブ法により測定を行った。すなわち、100mlの蒸留水を表面(塗工面)に接触させ、規定時間後に吸収された水の単位面積あたりの重量を測定した。なお、測定時間は、通常の規定時間である120秒(2分間)に加え、30分でも測定を行った。
(透湿度) JIS Z 0208に準拠し、表面側(塗工面側)から測定した。
(撥水度) JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に準拠し、表面側(塗工面側)を測定した。
(接触角) 蒸留水をサンプル表面に1滴(50μl)滴下してから1秒後の接触角を接触角測定装置(DAT1100 FIBRO System AB製)により測定した。
(はつ油度) JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41「紙及び板紙-はつ油度試験方法-キット法」に準拠し、表面側(塗工面側)を測定した。
(点滴吸油度) 注射針H5号を備えたマイクロシリンジを用いて、動粘性係数が3cStに調整した軽油1号をサンプル表面に1滴滴下し、表面の光沢がみえなくなるまでの時間を測定した。
段ボールシートの製造と評価
各ライナサンプルから、製函用段ボールシートを作製した。具体的には、ライナサンプルA~Dについては、各サンプルを表ライナ、ライナサンプルCと同一のライナを裏ライナとして用い、表層側(防水層側)が段ボールシートの外側になるように、中しん原紙を介して表ライナと裏ライナを接着して、段ボールシートを製造した。また、ライナサンプルE,Fについては、各サンプルを表ライナ、ライナサンプルEおよびFの製造に用いた(防水処理前の)薄物ライナサンプルを裏ライナとして用い、表層側(防水層側)が段ボールシートの外側になるように、中しん原紙を介して表ライナと裏ライナを接着して、段ボールシートを製造した。なお、段ボールシートの厚さは外容器用のシートは5mm(Aフルート)、内容器用のシートは3mm(Bフルート)とした。
ここで、内容器用の段ボールシートについては、JIS K 7171:2016「プラスチック-曲げ特性の求め方」を参考に、下記の方法で三点曲げ強度を測定した。なお、段ボールシートの三点曲げ強度が15N以下であると、折り曲げやすく、箱などへの加工が容易である。
(a) 段ボールシートから長さ100mm×幅30mmの試験片を切り出す(段ボールシートの流れ方向が試験片の幅方向になるように切断する)
(b) 曲げ試験機に試験片をセットし、試験片の中央部に10mm/minの速度で上部から力を加えていく(台座の支点間距離:100mm)
(c) 段ボールシート片が折れ曲がった際の最大荷重値(三点曲げ強度)を測定する
二重構造を有する紙製容器の製造と評価
得られた段ボールシートを、それぞれ表ライナの表側(防水層面側)が内側となるようにして、外容器用としてA式(JIS Z 1507に規定される0201形式)の段ボール箱(本体の内寸:縦46cm×横32cm×深さ25cm)、また内容器として図1に示すような段ボール製容器(本体の内寸:縦45cm×横31cm×深さ24cm)を作製した。次いで、外容器となるA式段ボール箱の内側に内容器をセットし、二重構造を有する紙製容器を製造した(図2)。
(1)防水性
A式の外容器用段ボール箱の内側に、内容器として図1のように作製した段ボール製容器をセットしてから、内容器の内側に水2Lを入れた後(図2)、5℃の冷蔵庫に1日、1週間、2週間、3週間放置し、内容器となる段ボール製容器からの水漏れ状況および外容器の段ボール箱側の濡れ状況を目視にて確認した。評価基準は、下記のとおりである。
○:内容器から水滴などが漏れておらず、外容器も濡れていない。
△:内容器から水滴などが漏れているが、外容器の外側は濡れていない。
×:内容器から水が漏れていて、外容器も濡れている。
(2)水に接触した後の箱圧縮強さ
防水性試験前の外容器、防水性試験を3日間行った後の二重構造の紙容器から水および内容器を取り出した外容器(空き段ボール箱)を対象に、箱圧縮強さを、JIS Z 0212に準拠し、下記の手順により測定した。
(a) 蓋をした状態の箱を圧縮試験機の中央にセットする。
(b) 圧縮試験機を起動し、箱上面全体に満遍なく徐々に下方向へ力を加えていく。
(c) 箱側面が変形した際の加重を読み取り、箱圧縮強さとする。
また、箱圧縮強さの測定結果から、外容器の防水性の指標として、箱圧縮強さ残存率(%)を算出し、水に接触した後の箱の強度を評価した。
・残存率=放置後の箱圧縮強さ/放置前の箱圧縮強さ×100
〇:残存率が70%以上である。
×:残存率が70%未満である。
(3)混合リサイクル性
外容器用および内容器用の紙シートサンプル(外段ボールおよび内段ボール)を、それぞれ25mm角のサイズに切り取り、外容器用紙サンプル30g:内容器用紙サンプル10gの割合で計り取り、45℃の水1.5Lを加え2%に希釈後、Tappi式離解機を用いて30分間離解を行った。次いで、JIS P 8222に準拠してシート形成およびプレスを行って湿紙を得た後、50℃に熱したプレートにて2時間乾燥して手抄きシートを作製した(坪量:約50g/m)。次いで、手抄きシート表面の様子を目視で観察し、下記の基準に基づいてリサイクル性を評価した。
〇:紙表面に目立つ異物などはなく、リサイクル上問題となる点は特にない。
×:紙表面に異物などが目立ち、リサイクル上問題となる。
(4)耐油性
二重構造を有する紙製容器について耐油性を評価した。具体的には、図3に示すように紙製容器の底部に油10mlを均等に縦5か所×横8か所の計40か所滴下してから25℃の室内に静置し、油の滴下から1週間後(168時間後)における内容器への吸油状況および外容器の外面への油シミ付着状況を目視で確認し、下記の基準に基づいて耐油性を評価した。
○:外容器の外面に油シミが認められない。
×:外容器の外面に油シミが認められる。
(5)組立作業性
二重構造の紙製容器について、組立作業性(組み立ての容易さ)を評価した。具体的には、折り目が付けられた、外容器用段ボールシート(外段ボール)と内容器用段ボールシート(内段ボール)を20セット用意し、以下に示す組立手順の説明を受けた30代の成人男性5名が、二重構造の紙製容器を一人当たり20個ずつ組み立て、各人が紙製容器の組み立てに要した時間の平均値に基づいて組立作業性を評価した。
(組立手順) まず、折りたたまれた状態にある20枚の外容器用段ボールシートから外容器として用いるA式の段ボールを組み立て、底部の中央部をガムテープで封緘する。その後、折りたたまれた状態にある20枚の内容器用段ボールシートについて、開口部より側壁部を起立させた後、折込部を開口部短辺側に位置する側壁部に接するよう折込み、内容器を作製する。次いで、外容器であるA式段ボール箱の内側に内容器をセットし、二重構造を有する紙製容器を20個組み立てる。
(評価基準)
○:6分以内に組立作業が完了した。
△:組立作業完了までの時間が6分を超えた。
(6)保冷性
二重構造を有する紙製容器について、以下の手順により保冷性を評価した。
(a) 塊状のかち割り氷5kgを紙製容器内に入れ、外容器の蓋をガムテープで封緘した後、紙製容器の重量を測定する(試験前の重量)
(b) 紙製容器を温度5℃の冷蔵庫内に24時間(1日間)保管してから取り出し、底部に穴をあけて内部の水を排水後、重量を測定する(試験後の重量)
(c) 試験前後の重量から下式に基づいて重量減少率を算出し、この重量減少率に基づいて保冷性を評価する
重量減少率(%)= 100-(試験後の重量)/(試験前の重量)×100
○:重量減少率が30%以下
△:重量減少率が30%超50%未満
×:重量減少率が50%以上
上記の表に示す通り、内容器の内面に防水性を有するライナ(ライナサンプルBの内容器、ライナサンプルDの内容器、ライナサンプルEの内容器、ライナサンプルFの内容器)を用いた本発明の紙製容器は、水を入れて放置しても、内容器の内部からの水漏れが発生しておらず、水の浸みだしによる外容器への影響はなかった。特に、防水塗工層を有する内容器サンプルBおよび内容器サンプルEは、離解試験を行っても異物などが無く、リサイクル性に優れていることが示された。
一方、内容器に防水層を有しない紙製容器(ライナサンプルAの内容器、ライナサンプルCの内容器)はリサイクル性に優れるものの、防水材を塗工していないため、紙面からの水の浸み出しが発生しており、浸み出した水が段ボール箱の内面を濡らしていた。
上記の実験結果から、本発明の紙製容器は、特に液体を対象とする包装材として好適に使用できることがわかった。すなわち、30分コッブ吸水度が40g/m以下である防水層を有する紙を内容器の少なくとも内側面に使用することによって、二重構造を有する優れた紙製容器を製造することができた。
1 内容器本体
2 シート
3 第1基準線
4 第1折線部
5 第2基準線
6 第2折線部
7 四角形部
8 交点
9 角部
10 第3折線部
11 折り重なり部
12 四角形折り重なり部
13 シール部
14 底部
15、16 側壁部

Claims (9)

  1. (a)紙製の外容器と、(b)外容器の内側に設けられた紙製の内容器と、を有する紙製容器であって、
    前記内容器が、少なくとも内側となる面に、防水層側から測定した30分コッブ吸水度が40g/m以下である防水層を有する、紙製容器。
  2. 前記内容器の外側側面部の少なくとも一面が、少なくとも前記外容器の内側側面部に接していることを特徴とする、請求項1に記載の紙製容器。
  3. 前記内容器が箱形である、請求項1または2に記載の紙製容器。
  4. 前記内容器に水を入れて24時間放置後の、外容器単体での箱圧縮強さ残存率が50%以上である、請求項3に記載の紙製容器。
  5. 前記内容器の内側となる面において、[水に30分接触させた後の破裂強度]/[水に接触させる前の破裂強度]が50%以上である、請求項1または2に記載の紙製容器。
  6. 前記防水層が塗工により設けられている、請求項1または2に記載の紙製容器。
  7. 前記防水層が、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂の少なくとも1つの樹脂および撥水性ワックスを含有する防水性樹脂層である、請求項6に記載の紙製容器。
  8. 少なくとも内容器の内側となる面に、防水層側から測定した30分コッブ吸水度が40g/m以下である防水層を有する内容器を、外容器の内側に設けた紙製容器に物を収容する、紙製容器の使用方法。
  9. 二重構造を有する紙製容器を製造する方法であって、
    (a) 紙製の外容器を作製すること、
    (b) 30分コッブ吸水度が40g/m以下である防水層を有する紙を少なくとも内側となる面に使用した紙製の内容器を作製すること、
    (c) 外容器の内側に内容器をセットすること、
    を含む、上記方法。
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