JP2024016815A - フレキシブルディスプレイ用積層体、ならびにフレキシブルディスプレイ - Google Patents

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Hiroyuki Furuno
慎吾 田邉
Shingo Tanabe
努 早坂
Tsutomu Hayasaka
克哲 福田
Katsunori Fukuta
智文 石
Tomofumi Ishi
剛史 入江
Takashi Irie
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Abstract

【課題】繰り返し屈曲しても高速で屈曲しても貼り合わせた被着体同士のズレが生じず、端部からの粘着層のはみ出しがない積層体の提供を目的とする。さらに高極性基材を用いた場合であっても、屈曲部で表示上の欠陥が生じないようなフレキシブルディスプレイ用積層体、ならびに視認性に優れたフレキシブルディスプレイの提供を目的とすること。【解決手段】透過性可撓性基材と粘着剤層を備えるフレキシブルディスプレイ用積層体であって、水の接触角とジヨードメタンの接触角からOWRK法に基づき算出される光透過性可撓性基材の表面自由エネルギーの極性項成分が3.0mN/m以上であって、粘着剤層の表面自由エネルギーの極性項成分が0.5mN/m以下であり、前記粘着剤層の単位面積あたりの質量が10~100g/m2であり、アクリル系粘着剤から形成されることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用積層体により解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、光透過性可撓性基材と粘着剤層を備えるフレキシブルディスプレイ用積層体であって、光透過性可撓性基材、粘着剤層、および偏光板をこの順に備える積層体を形成するための粘着剤層、該粘着剤層を有する積層体に関する。前記積層体は、フレキシブルディスプレイに用いられる。
近年、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ(OLED)等の画像表示装置とタッチパネルを組み合わせて用いる入力装置が普及している。タッチパネルに用いる透明導電性フィルムは、支持ガラス等の部材に粘着剤層を介して積層されている。また、画像装置に用いる偏光板フィルムは、液晶モジュールや有機ELモジュールに粘着剤層を介して貼付される。
前記画像表示装置としては、ガラス基板を用いたフラットディスプレイが主流であったが、近年、プラスチック等の可撓性基材を用いたフォルダブルディスプレイ(Foldable display)やローラブルディスプレイ(Rollable display)等の、フレキシブルディスプレイが開発されている。このようなフレキシブルディスプレイは、従来のガラス基材を用いたフラットディスプレイと比較して、軽量性、薄さ、可撓性等に優れており、また意匠性にも優れている等の種々の利点を有する。
フォルダブルディスプレイに使用することができるためには、ディスプレイの屈曲に対応する適性(屈曲性)が必要となる。一般に、屈曲性としては、折り曲げを繰り返した際に、発泡、浮きやハガレが生じない特性(動的屈曲性)が必要とされる。
これらの問題を解決すべく、特許文献1には、(メタ)アクリレートモノマーを部分重合させて製造された樹脂シロップ、および光開始剤を含み、前記粘着剤層の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×10~1.0×10Paであることを特徴とする光学透明粘着シートが開示されている。また、特許文献2には、ベースポリマー、光硬化性化合物、および光開始剤を含む粘着剤により形成された粘着剤層が開示されている。
特開2020-517800号公報 特開2020-097737号公報
しかし、このような従来の粘着剤層では、フレキシブルディスプレイにより繰り返し屈曲すると、粘着剤層により貼り合わせた被着体同士のズレが生じたり、端部からはみ出た粘着剤層が周辺の部材と接触して折り曲げ性が悪化したりすることがあり、屈曲性が充分とはいえない。
さらに近年、フォルダブルディスプレイには、光透過性可撓性基材として、圧倒的な機械特性を有する、ポリイミドを透明化したカラーレスポリイミドが用いられるようになっている。これにより粘着剤層に求められる耐久性はより厳しいものとなっているが、粘着剤層とカラーレスポリイミドを貼り合わせた積層体を繰り返し屈曲すると、屈曲部において粘着剤層に浮きが発生して被着体同士のズレが生じたり、或いは粘着剤層中に発泡が生じ、気泡により白化が発生したりするという問題がある。また、通常の繰り返し屈曲試験では問題無しとされていた製品でも、想定よりも高速で屈曲される場合に被着体同士のず
れや粘着剤層の浮き、粘着剤層中の発泡が生じて表示に問題が発生するという問題も発生している。
よって本発明は、繰り返し屈曲しても高速で屈曲しても貼り合わせた被着体同士のズレが生じず、端部からの粘着層のはみ出しがない積層体の提供を目的とする。さらに光透過性可撓性基材としてカラーレスポリイミドのような高極性基材を用いた場合であっても、屈曲部で表示上の欠陥が生じないようなフレキシブルディスプレイ用積層体、ならびに視認性に優れたフレキシブルディスプレイの提供を目的とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、光透過性可撓性基材上に粘着剤層を備えるフレキシブルディスプレイ用積層体であって、水の接触角とジヨードメタンの接触角からOWRK法に基づき算出される光透過性可撓性基材の表面自由エネルギーの極性項成分が3.0mN/m以上であって、水の接触角とジヨードメタンの接触角からOWRK法に基づき算出される粘着剤層の表面自由エネルギーの極性項成分が0.5mN/m以下であり、前記粘着剤層の単位面積あたりの質量が10~100g/mであり、前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤から形成されることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用積層体である。
上記の本発明により、繰り返し屈曲しても高速で屈曲しても貼り合わせた被着体同士のズレが生じず、端部からの粘着層のはみ出しがない積層体の提供が可能となる。さらに光透過性可撓性基材としてカラーレスポリイミドのような高極性基材を用いた場合であっても、屈曲部で表示上の欠陥が生じないようなフレキシブルディスプレイ用積層体、ならびに視認性に優れたフレキシブルディスプレイの提供が可能となる。
また、本発明の積層体を用いることで、視認性に優れたフレキシブルディスプレイの提供ができる。
本発明の積層体を、部分的に示す概略断面図である。 本発明の積層体の使用例であるフレキシブルディスプレイを、部分的に示す概略断面図である。
以下、本発明の積層体、およびフレキシブルディスプレイの構成例を説明するが、これに限定されない。
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
また被着体とは、粘着シートの粘着剤層を貼り付ける相手方を指し、例えば、光透過性可撓性基材、粘着剤層、および偏光板を、この順に備えるフレキシブルディスプレイ用積層体の場合には、光透過性可撓性基材と偏光板のことをいう。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
《フレキシブルディスプレイ用粘着剤層》
本発明の積層体に用いられる粘着剤層は水の接触角とジヨードメタンの接触角から、O
WRK法に基づき算出される表面自由エネルギーの極性項成分が0.5mN/m以下であることを特徴とする。
これにより、繰り返し屈曲しても高速で屈曲しても貼り合わせた被着体同士のズレが生じず、端部からの粘着層のはみ出しがない。さらに光透過性可撓性基材としてカラーレスポリイミドのような高極性基材を用いた場合であっても、屈曲部で表示上の欠陥が生じない。
<表面自由エネルギーの極性項成分>
表面自由エネルギーの極性項成分は、0.5mN/m以下である。粘着剤層の表面自由エネルギーの極性項成分は小さいほど好ましく、0mN/m以上であることが好ましい。また、0.3mN/m以下であることが好ましく、0.2mN/m以下であることがより好ましい。極性項成分を0.5mN/m以下に調整することにより、繰り返し屈曲しても高速で屈曲しても屈曲部が白化せず、貼り合わせた被着体同士のズレが生じない粘着剤層が得られる。かような効果が得られるメカニズムは不明ではあるが、粘着剤層が被着体に対して強い粘着性を発揮していたとしてもその粘着力の発現に双極子相互作用による強固な分子間引力が寄与しないことにより折り曲げで剪断力が掛かった際に粘着剤層が被着体から剥がれることなく追従するためであると推定される。
表面自由エネルギーの極性項成分を0.5mN/m以下とする方法は、粘着剤に用いる樹脂の極性を下げること、または塗工後に表面に偏在する低極性の添加剤を配合すること等により制御できる。
表面自由エネルギーは、25℃における水の接触角とジヨードメタンの接触角から、OWRK法に基づき算出される。
具体的には、各液体の接触角は、液滴の体積を1μlとし、着滴1秒後に測定される。接触角の測定に用いられる装置は特に限定されないが、例えば協和界面科学株式会社製の自動接触角計DM-501Hi等が挙げられる。表面自由エネルギーの極性項成分は分散項成分と併せてOWRK法により計算される。
<ゲル分率>
本発明の粘着剤層は、ゲル分率が55~90質量%であることが好ましく、60~80質量%がより好ましい。ゲル分率が55質量%以上であると、粘着剤の凝集力が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、折り曲げ時に端部から粘着剤層がよりはみ出しにくくなる。90質量%以下であると、粘着剤の応力緩和性が向上し、柔軟な粘着剤層が得られやすく、密着力が向上し、折り曲げ時の被着体同士のズレをより抑制できる。
[ゲル分率測定方法]
ゲル分率は、酢酸エチル等の溶媒に対する不溶分として求めることができる。具体的には、下記、式1によって表される様、粘着剤層を酢酸エチル中に50℃で1日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の粘着剤層に対する質量分率(単位:質量%)として求められる。
(式1)
ゲル分率(質量%)=((X-Y)/X)×100
X=浸漬前の粘着剤層の質量(g)
Y=浸漬後の粘着剤層の質量(g)
一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中の架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。ゲル分率(架橋構造の導入量) は、架橋構造の導入方法や
、架橋剤の種類および量等により所望の範囲に調整できる。
<粘着剤>
粘着剤層は、粘着剤により形成される。
粘着剤の樹脂系はアクリル系粘着剤である。粘着剤をアクリル系粘着剤とすることで表面自由エネルギーの極性項成分が0.5mN/m以下に調整しつつ各種性能バランスを取りやすくなる。
[アクリル系粘着剤]
アクリル系粘着剤は(メタ)アクリル酸エステル重合体であるアクリル系共重合体を主成分とし、必要に応じて硬化剤、およびその他添加剤等を含有する。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む。モノマーとは、エチレン性不飽和基を有する単量体である。
(アクリル系共重合体)
アクリル系共重合体は(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のアクリルモノマーを1種類または2種類以上含むモノマーの重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、などの直鎖または分岐したアルキル基を有するものや、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、などの環状アルキル基を有するものが挙げられる。
アクリル系共重合体には官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を含むモノマーが共重合されていることが好ましい。官能基を含むことで粘着層に凝集力を付与できる他、粘着剤に硬化剤を使用することで更に粘着層の凝集力を向上できるため屈曲時のはみ出し抑制が容易となる。
官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、官能基が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、オキシアルキレン基、エポキシ基及びイソシアネート基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
カルボキシル基を有するモノマー単位としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するモノマー単位は、ヒドロキシル基を有するモノマーに由来する繰り返し単位である。ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基を有するモノマー単位としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等のアミノ基を有するモノマーに由来する繰り返し単位が挙げられる。
エポキシ基を有するモノマー単位としては、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基を有するモノマーに由来する繰り返し単位が挙げられる。
(メタ)アクリル共重合体は、必要に応じて、上述したモノマー単位以外に、他のモノマー単位を有してもよい。他のモノマーは、上述したアクリルモノマーと共重合可能なものであればよく、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル類やスチレン等が挙げられる。これらのうち、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルは25℃における水/オクタノール分配係数log Kowが2.30以下と親水性であるため、アクリル系共重合体の極性を下げ
るためには後述の通り比率を下げることが好ましい。
log Kowの値は、例えばそのモノマーの構造式を元にして、HSPiPというソ
フトウェア(Steven Abbott、Hiroshi Yamamoto)にて計算できる。
(アクリル系共重合体の製造)
アクリル系共重合体は、モノマー混合物を重合し、製造することができる。
重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。
重合温度は、60~120℃の沸点反応が好ましい。重合時間は、5~12時間程度が好ましい。
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド;
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビ
スプロピオニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル等が挙げられる。
重合開始剤は、前記モノマー混合物100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
(質量平均分子量(Mw))
アクリル系共重合体の質量平均分子量は、80万~180万が好ましく、100万~150万がより好ましい。80万~180万の範囲にあると凝集力がより向上し、折り曲げ時に端部から粘着剤層がはみ出しにくくなる。なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。
(硬化剤)
アクリル系粘着剤は硬化剤を含むことが好ましい。粘着剤に配合する硬化剤としては上記官能基を有するモノマーの官能基と熱などにより反応して結合を形成するものが好ましい。硬化剤の配合により粘着剤層の凝集力が向上し、耐久性、耐汚染性がより向上する。
硬化剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から、粘着剤中の重合体が有する官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。例えば粘着剤中の重合体の官能基としてヒドロキシル基を含む場合はイソシアネート化合物を用いることができる。
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)
、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
エポキシ化合物は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
アジリジン化合物は、例えばN,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジ
リジンカルボキサイト)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV-03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、ア
ンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
硬化剤は、粘着剤中のアクリル系共重合体100質量部に対して0.02~4.0質量部含むことが好ましく、0.04~1.0質量部含むことがより好ましい。含有量が0.02質量部以上になると凝集力がより向上し、4質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために好ましい。
アクリル系粘着剤には、課題を解決できる範囲であれば、任意成分として各種樹脂、後述するシランカップリング剤、塩素化ポリオレフィン、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を含有できる。
粘着剤層の極性項成分を0.5mN/m以下に調整する方法は、例えば、粘着剤に用いる樹脂の極性を下げる方法、塗工後に表面に偏在する低極性の添加剤を配合する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、アクリル系共重合体の極性を下げる場合、アルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルやヒドロキシル基含有モノマー、酸含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、オキシアルキレン基含有モノマー、あるいはこれらの他のアクリル系モノマーと共重合可能なモノマーの中でも25℃における水/オクタノール分配係数log Kowが2.22以下であるモノマーおよび水と任意に
混和可能であるモノマーの比率を下げ、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの比率を上げることが挙げられる。
具体的には、アルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル系共重合体100質量%中18質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
ヒドロキシル基含有モノマーはアクリル系共重合体100質量%中5質量%以下であることが好ましく2質量%以下であることが更に好ましい。
酸含有モノマーはアクリル系共重合体100質量%中5質量%以下であることが好ましく2質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以下であることが最も好ましい。
アミド基含有モノマーはアクリル系共重合体100質量%中で5質量%未満であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが最も好ましい。
アミノ基含有モノマーはアクリル系共重合体100質量%中5質量%未満であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが最も好ましい。
オキシアルキレン基含有モノマーの比率は20質量%未満であることが好ましく10質量%以下であることがより好ましく5質量%以下であることが最も好ましい。
この他の、アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーの中でも25℃における水/オクタノール分配係数log Kowが2.22以下であるモノマーおよび水と任意に混和
可能であるモノマーについては10質量%未満であることが好ましく5質量%以下であることがより好ましく3質量%以下であることがさらに好ましく1質量%以下であることが最も好ましい。
アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル系共重合体100質量%中80~99質量%であることが好ましく85~99質量%であること
が更に好ましい。
塗工後に表面に偏在する低極性の添加剤を配合する方法としては、粘着剤中に、シランカップリング剤や塩素化ポリオレフィン等を添加する方法が挙げられる。
これらの低極性の添加剤の配合量は、アクリル系共重合体の樹脂成分100質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下であることがより好ましい。
このとき、低極性の添加剤を配合する前のアクリル系共重合体の表面自由エネルギーの極性項成分は、2.0mN/m以下であることが好ましく、1.5mN/m以下であることがより好ましい。
具体的には、アルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル系共重合体100質量%中25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
ヒドロキシル基含有モノマーはアクリル系共重合体100質量%中25質量%以下であることが好ましく20質量%以下であることが更に好ましい。
酸含有モノマーはアクリル系共重合体100質量%中10質量%以下であることが好ましく7質量%以下であることが更に好ましい。
アミド基含有モノマーはアクリル系共重合体100質量%中で15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが最も好ましい。
アミノ基含有モノマーはアクリル系共重合体100質量%中15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが最も好ましい。
オキシアルキレン基含有モノマーの比率は30質量%以下であることが好ましく15質量%以下であることがより好ましく12質量%以下であることが最も好ましい。
この他の、アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーの中でも25℃における水/オクタノール分配係数log Kowが2.22以下であるモノマーおよび水と任意に混和
可能であるモノマーについては20質量%以下であることが好ましく15質量%以下であることがより好ましく12質量%以下であることが最も好ましい。
アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル系共重合体100質量%中70~99質量%であることが好ましく75~90質量%であることが更に好ましい。
シランカップリング剤としては、(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物、ビニル基を有するアルコキシシラン化合物、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物、メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物、またはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
市販品として具体的には、例えば、KBM403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE403(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、KBM303(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)(以上、信越化学工業株式会社製)、BYK-325N(ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン)(ビックケミージャパン株式会社製)などが挙げられる。
塩素化ポリオレフィンとしては、塩素化ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化エチレン酢ビニルコポリマー等が挙げられ、アクリル系共重合体等との相溶性がよく、効果的に極性を下げられる観点から、塩素化ポリプロピレン、または塩素化エチレン酢ビニルコポリマーが好ましい。
市販品として具体的には、例えば、スーパークロン 390S(塩素化ポリプロピレン、塩素含有率36%)、スーパークロン BX(塩素化EVA、塩素含有率18%)(以
上、日本製紙株式会社製)が挙げられる。
《フレキシブルディスプレイ用積層体》
フレキシブルディスプレイ用積層体は、光透過性可撓性基材上に粘着剤層を備える。例えば、基材/粘着剤層/偏光板の構成を有する。光透過性可撓性基材、粘着剤層、および偏光板を、この順に備えることが好ましい。これにより、透明性と屈曲性に優れた積層体とできる。
図1に、本発明の積層体を部分的に示す概略断面図の例を示す。図1において3は光透過性可撓性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層であり、1、4は偏光板である。
図1で示される積層体では、光透過性可撓性基材(カバーパネル)が、粘着剤層を介して、偏光板に貼付されている。
[光透過性可撓性基材]
光透過性可撓性基材(カバーパネル)としては、透明プラスチック基材が用いられる。
本発明において、光透過性可撓性基材の表面自由エネルギーの極性項成分は3.0mN/m以上であり、4.0mN/m以上であることが好ましい。極性項成分が0.5mN/m以下である粘着剤層と、極性項成分が3.0mN/m以上である光透過性可撓性基材の極性引力による密着性が強固になり過ぎず、繰り返し屈曲時に基材の動きに粘着剤層が追従し、屈曲部の白化や粘着剤層による被着体同士のズレが生じにくくなる。4.0mN/m以上である光透過性可撓性基材を用いると、本発明の効果がより優れるため好ましい。
このような光透過性可撓性基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリイミド等のプラスチック材料などが挙げられる。特に、PETフィルム、またはポリイミドが好ましく、耐久性の面でポリイミドが最も好ましい。
なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の積層体で用いられる粘着剤層は、耐屈曲性に優れるため、ポリイミドを透明化したカラーレスポリイミドを基材に用いた場合であっても、被着体同士のズレや白化を抑制した積層体とすることができる。
光透過性可撓性基材(カバーパネル)としては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿などの苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。
光透過性可撓性基材には必要に応じてプラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理、UV処理などの表面処理を施しても良い。未処理では極性項成分の値が3.0mN/m未満であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のような透明プラスチック基材であっても、前記表面処理を施すことにより、極性項成分の値を3.0mN/m以上とすることが可能となり、本発明に利用できる。
光透過性可撓性基材の厚さは、特に限定されず、例えば、100~2000μmが好ましく、200~1000μmがより好ましい。
<フレキシブルディスプレイ用積層体の製造>
積層体の製造方法は、例えば、粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シートから
剥離フィルムを剥離し、それぞれ光透過性可撓性基材、もしくは偏光板等の被着体に粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することができる。また、光透過性可撓性基材上に粘着剤層を直接形成後、粘着剤層に、被着体、または別の粘着シートが備える粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することもできる。
[粘着シート]
粘着シートは、通常の製造方法に従って製造することができる。例えば、剥離フィルムの剥離処理面に、粘着剤を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように直接塗工して粘着剤層を形成し、剥離フィルムを貼付する方法や、2枚の剥離フィルムの剥離処理面に、粘着剤を乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗工して、2つの粘着剤層をそれぞれ形成した後、各粘着剤層を貼付する方法等により作製することができる。
粘着剤の塗工に際しては、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、またはスプレーコーターなどを用いることができる。
前記粘着シートとしては、適宜の幅に裁断し、ロール状に巻回することにより、ロール状に巻回した粘着テープの形態を有していてもよい。
粘着剤層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、10~500μmが好ましく、50~200μmがより好ましい。粘着剤層の厚みが10~500μmであると、十分な凝集力が得やすく、粘着剤層の端部のズレやはみ出しがなく、高速屈曲時の屈曲性を両立できるために好ましい。
粘着剤層の単位面積あたりの質量(以下、塗布量とも言う)は、10~100g/mであり、25~70g/mであることが好ましい。粘着剤層の単位面積あたりの質量をこの範囲とすることで繰り返し屈曲しても屈曲部が白化せず、被着体同士のズレが生じない粘着剤層を得ることが可能である。塗布量が10g/m以上であれば、折り曲げ時に被着体に追従する粘着剤層が充分となり、浮きによる端部のズレの発生をより抑制できる。塗布量が100g/m以下であることにより、折り曲げ時に端部から粘着剤層がはみ出ることをより抑制できる。
剥離フィルムとしては、特に制限されないが、透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン等のプラスチック材料などが挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
剥離フィルムとしては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿などの苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。
剥離フィルムは単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、透明基材表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの適宜な表面処理が施されていてもよい。
《フレキシブルディスプレイ》
フレキシブルディスプレイは、本発明の積層体、および光学素子を備えることが好ましい。これにより、本発明のディスプレイは、屈曲性および視認性に優れる。
光学素子としては、特に限定されず、例えば、液晶素子、有機EL素子等が挙げられる。
図2に、本発明の粘着シートの使用例である、ディスプレイを部分的に示す概略断面図の例を示す。図2において、3は光透過性可撓性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層1、4は偏光板、5は粘着剤層、2、6は窒化ケイ素等のバリア層、7は有機EL層、8はポリイミド等の支持体、9は有機ELセルである。なお、ディスプレイの構成が図2に限定されることはない。
図2で示されるディスプレイでは、光透過性可撓性基材(カバーパネル)が、本発明の粘着剤層(粘着剤層1)を介して、偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着剤層(粘着剤層2)を介して有機ELセルに貼付されている。このように、本発明の粘着シートは、前記粘着剤から形成された透明粘着剤層が、光透過性可撓性基材(カバーパネル)および偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着剤層を介して積層体が有機ELに貼付される形態で用いることができる。
例えば、図2において、本発明の粘着剤層は、粘着剤層1、および粘着剤層2のいずれにも用いることができる。
一般に、粘着剤層1と粘着剤層2を比較した場合、粘着剤層に要求される要求品質は粘着剤層1の方が要求は高く、本発明の粘着剤は、基材への密着性および、接着性が良好であることから、粘着剤層1に用いられることが好ましい。このとき、粘着剤層2を形成するための粘着剤は、本発明の粘着剤を用いてもよく、従来公知の粘着剤を用いてもよい。
ディスプレイの使用用途としては、特に制限はないが、有機ELテレビをはじめ、有機ELスマートフォン、有機ELタブレット、有機ELスマートウォッチ等が挙げられる。
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示し、「RH」は相対湿度を意味する。また、表中の配合量は、質量部である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、アクリル系共重合体の質量平均分子量の測定方法は、下記に示す通りである。
<アクリル系共重合体の質量平均分子量の測定>
質量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、質量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行うことができる。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
<アクリル系共重合体の製造例>
(アクリル系共重合体(R1))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)72.2部、アクリル酸ドデシル(DOA)25部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)2部、アクリル酸(AA)0.8部、開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリ
ル(以下、単に「AIBN」と記述する。)0.2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、50℃まで加熱し反応を
開始した。その後、反応溶液を50℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%の共重合体(R1)溶液を得た。得られた共重合体(R1)の質量平均分子量は120万であった。
(アクリル系共重合体(R2~R34)
表1記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系共重合体(R1)の製造と同様の方法でアクリル系共重合体(R2~R34)を製造した。
得られたアクリル系共重合体(R1~R34)の組成、配合量(不揮発質量部)および質量平均分子量(Mw)を表1、2、3に示す。
表中の略号は以下の通りである。
MA:アクリル酸メチル(アルキル基の炭素数1)
EA:アクリル酸エチル(アルキル基の炭素数2)
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル(アルキル基の炭素数8)
BA:アクリル酸ブチル(アルキル基の炭素数4)
DOA:アクリル酸ドデシル(アルキル基の炭素数12)
IBXA:アクリル酸イソボロニル(アルキル基(環状構造)の炭素数10)
TDA:アクリル酸トリデシル(アルキル基の炭素数13)
IBXMA:メタクリル酸イソボロニル(アルキル基(環状構造)の炭素数10)
nHA:アクリル酸n-ヘプチル(アルキル基の炭素数7)
IAA:アクリル酸イソアミル(アルキル基(分岐あり)の炭素数5)
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
AA:アクリル酸
ACMO:アクリロイルモルフォリン
AAm:アクリルアミド
DEAEA:ジエチルアミノエチルアクリレート
MDEA:メトキシジエチレングリコールアクリレート
(実施例1)
<粘着剤の調製>
アクリル系共重合体(R1)不揮発分100部に対して、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体D-160N 0.14部を加え、さらに不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤を得た。
<粘着シートの作製>
前記粘着剤を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ(剥離フィル
ム1)に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、100℃で2分間熱風乾燥する
ことで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ(剥離フィルム2)を貼り合せ、粘着シート1を得た。
<積層体の作製>
前記粘着シートから一方のセパレータを剥がし、露出した粘着剤層を25℃、相対湿度50%雰囲気で光透過性可撓性基材としてCPI(カラーレスポリイミド、KOLON社製、50μm、極性項成分 4.5mN/m)にラミネーターを用いて貼着し、もう一方のセパレータを剥がして、厚みが188μmのPETフィルムにラミネーターを用いて貼り合わせ、PETフィルム/粘着剤層/光透過性可撓性基材の積層体を得た。
(実施例2~16、19~45、比較例1~11)
表4~9に示す通りに、アクリル系共重合体および、硬化剤の種類と配合量(質量部)を変更した以外は実施例1と同様にして、粘着シートを得た。その後、表4~9に示す光透過性可撓性基材に粘着剤層を貼り合わせ、PETフィルム/粘着剤層/光透過性可撓性基材の積層体を得た。
ただし、実施例25、26は参考例である。
《粘着剤層の評価》
粘着剤層および積層体の物性値の測定および評価を下記の方法で行った。結果を表4~9に示す。
<粘着剤層の単位面積あたりの質量(塗布量)の測定>
得られた粘着シートを100mm×100mmの大きさに裁断し、質量を測定した(質量W(g))。別途、粘着シートに用いた厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ(剥離フィルム1)と厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ(剥離フィルム2)のそれぞれを100mm×100mmの大きさに裁断して質量を測定した(それぞれ質量W75(g)、質量W50(g))。
塗布量(g/m)=(W-W75-W50)/0.01
<ゲル分率の測定>
得られた粘着シートを30mm×100mmの大きさに裁断し、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ(剥離フィルム2)を剥離し露出した粘着剤層を、秤量した300メッシュのステンレス製金網(質量W0)に貼り付け、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ(剥離フィルム1)を剥離して試料とした。前記試料を秤量した質量をW1とし、試料を酢酸エチル中で24時間静置後、100℃で1時間乾燥させ秤量した質量をW2とし、下記式で算出した。
ゲル分率(%)={(W2-W0)/(W1-W0)}×100
<表面自由エネルギーの極性項成分測定>
得られた粘着シートから厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製セパレータ(剥
離フィルム2)を剥がし、粘着剤層を露出させて測定した。
測定にはKRUSS社製MSAを用い、水およびジヨードメタン各1μlが粘着剤層または光透過性可撓性基材に着弾して1秒後の接触角からOWRK法を用いて算出し、極性項を求めた。
<標準曲げ試験による屈曲部の白化、端部のズレ、および端部のはみ出し評価>
得られた積層体を用い、常態試験として25℃、相対湿度50%雰囲気にて折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)を用いて、折り曲げた時の内径(直径)が3mm条件に設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとし、毎分30往復のペースで30万サイクル繰り返し行った。
試験後の外観を曲げ箇所の白化と、被着体の端部のズレについて下記基準で評価した。何れも評価基準の数値が高いほど優れており、3以上であれば実用可能である。
外観:試験用積層体の気泡の有無および被着体同士の端部のズレ、および粘着剤層の端部のはみ出しの有無を以下の条件で目視評価した。
[屈曲部の白化]
5:屈曲部から左右5mmずつの範囲内で気泡が見られない。
4:屈曲部から左右5mmずつの範囲内で気泡が1個以上10個以下である。
3:屈曲部から左右5mmずつの範囲内で気泡が11個以上50個以下である。
2:屈曲部から左右5mmずつの範囲内で気泡が51個以上100個以下である。
1:屈曲部から左右5mmずつの範囲内で気泡が100個以上である。
[端部のズレ]
5:PETフィルムと光透過性可撓性基材のズレが1mm未満である。
4:PETフィルムと光透過性可撓性基材のズレが1mm以上2mm未満である。
3:PETフィルムと光透過性可撓性基材のズレが2mm以上3mm未満である。
2:PETフィルムと光透過性可撓性基材のズレが3mm以上4mm未満である。
1:PETフィルムと光透過性可撓性基材のズレが4mm以上である。
[端部のはみ出し]
5:粘着剤層の端部からのはみ出しが100μm未満である。
4:粘着剤層の端部からのはみ出しが100μm以上200μm未満である。
3:粘着剤層の端部からのはみ出しが200μm以上300μm未満である。
2:粘着剤層の端部からのはみ出しが300μm以上400μm未満である。
1:粘着剤層の端部からのはみ出しが400μm以上である。
<高速曲げ試験による屈曲部の白化、端部のズレ、および端部のはみ出し評価>
標準曲げ試験おける往復ペースを毎分120往復、サイクル数を10万サイクルとして試験を実施し、標準曲げ試験と同様の評価基準で評価を実施した。
表中の略号は以下の通りである。
<硬化剤>
D-110N:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン変性体
D-160N:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体EX-313:多官能エポキシ化合物(グリセロールポリグリシジルエーテル)
PZ-33:3官能アジリジン化合物
<添加剤>
KBM-403:信越化学株式会社製エポキシシラン KBM-403
KBE-403:信越化学株式会社製エポキシシラン KBE-403
KBM-303:信越化学株式会社製エポキシシラン KBM-303
BYK-325N:ビックケミージャパン株式会社製シリコン含有表面調整剤 BYK-325N
390S:日本製紙株式会社製シリコン含有表面調整剤 390S
BX:日本製紙株式会社製塩素化EVA BX
<光透過性可撓性基材>
CPI:カラーレスポリイミド(KOLON社製、50μm、極性項成分 4.5mN/m)
P-CPI:プラズマ処理済みカラーレスポリイミド(上記CPIを処理、50μm、極性項成分 7.6mN/m))
PET:ポリエチレンテレフタレート(東洋紡社製、50μm、極性項成分 5.8mN/m)
PMMA:ポリメチルメタクリレート(三菱ケミカル社製、53μm、極性項成分 6.8mN/m)
HDPE:高密度ポリエチレン(NTフィルム株式会社製、50μm、極性項成分 1.0mN/m)
C-HDPE:高密度ポリエチレン(NTフィルム株式会社製、50μm)のコロナ処理品(極性項成分 4.8mN/m)
OPP:延伸ポリプロピレン(東洋紡株式会社製、40μm、極性項成分 0.9mN
/m)
C-OPP:延伸ポリプロピレン(東洋紡株式会社製、40μm)のコロナ処理品(極性項成分 4.6mN/m)
C-HDPE、C-OPPを作成する際のコロナ処理は、ナビタス社製コロナ処理装置プラズマダインを使用し、速度100mm/秒、コロナ放電ノズルと基材との距離は20mmとしてコロナ放電ノズルを基材の一端から他端まで1回掃引した。
表4~9の結果から本発明の粘着剤層は、繰り返し屈曲しても貼り合わせた被着体同士のズレが生じず、端部からの粘着層のはみ出しがなかった。また、光透過性可撓性基材としてカラーレスポリイミドを用いた場合であっても、屈曲部が発泡による白化のないことが確認された。これにより、本発明の粘着剤層を有する積層体を備えたディスプレイは、屈曲性に優れ、これにより視認性に優れたディスプレイが得られる。
一方、比較例1~11の粘着剤層では、前記特性の全てを満たすことはできなかった。
1 粘着剤層1
3 光透過性可撓性基材(カバーパネル)
4 偏光板
5 粘着剤層2
6 バリア層
7 有機EL層
8 支持体
9 有機ELセル

Claims (5)

  1. 光透過性可撓性基材上に粘着剤層を備えるフレキシブルディスプレイ用積層体であって、
    水の接触角とジヨードメタンの接触角からOWRK法に基づき算出される光透過性可撓性基材の表面自由エネルギーの極性項成分が3.0mN/m以上であって、
    水の接触角とジヨードメタンの接触角からOWRK法に基づき算出される粘着剤層の表面自由エネルギーの極性項成分が0.5mN/m以下であり、
    前記粘着剤層の単位面積あたりの質量が10~100g/mであり、
    前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤から形成されることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用積層体。
  2. 水の接触角とジヨードメタンの接触角からOWRK法に基づき算出される粘着剤層の表面自由エネルギーの極性項成分が0.2mN/m以下であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルディスプレイ用積層体。
  3. 前記粘着剤層の単位面積あたりの質量が25~70g/mであり、かつ、前記粘着剤層のゲル分率が、60~80質量%であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルディスプレイ用積層体。
  4. 粘着剤層上にさらに偏光板を備える、請求項1~3いずれか1項に記載のフレキシブルディスプレイ用積層体。
  5. 請求項4に記載の積層体、および光学素子を備える、フレキシブルディスプレイ。
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