JP2024009689A - 電池の診断方法、診断装置、診断システム及び診断プログラム - Google Patents

電池の診断方法、診断装置、診断システム及び診断プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】電池の状態の判定に用いるデータ量の増大が抑制され、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて適切に電池の状態が判定される電池の診断方法を提供すること。
【解決手段】実施形態の電池の診断方法では、第1の周波数での電池の第1のインピーダンスの計測結果に基づいて、複数のSOC値のそれぞれについて、SOCに対する第1のインピーダンスの変化率の絶対値が基準値以下になるか否かを判定する。診断方法では、複数のSOC値の中で変化率の絶対値が基準値以下になる対象SOC値について、第1の周波数より高い第2の周波数での電池の第2のインピーダンスを計測する。診断方法では、対象SOC値における第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、電池の状態に関して判定する。
【選択図】図11

Description

本発明の実施形態は、電池の診断方法、診断装置、診断システム及び診断プログラムに関する。
近年、二次電池等の電池について、電池のインピーダンスの周波数特性を計測し、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて、電池の劣化状態を含む電池の状態を診断している。このような診断では、交流電流の電流波形等の周期的に電流値が変化する電流波形を複数の周波数のそれぞれで電池に入力し、複数の周波数のそれぞれでの電池のインピーダンスを計測することにより、電池のインピーダンスの周波数特性を計測する。インピーダンスの周波数特性は、電池の複数のSOC値のそれぞれについて、計測される。そして、インピーダンスの周波数特性を計測した複数のSOC値のそれぞれについて、インピーダンスの周波数特性の計測結果を用いて、正極及び負極のそれぞれに関する抵抗を算出し、例えば、正極及び負極の少なくとも一方の電荷移動抵抗を算出する。そして、複数のSOC値のそれぞれについて算出された抵抗、及び、算出された抵抗と電池のSOCとの関係等に基づいて、電池の劣化状態等の電池の状態が判定される。
前述のようにして電池の状態について診断する場合、例えば、高い周波数でのインピーダンスの計測を行うSOC値の数を減少させる等して、電池の状態の判定に用いるデータ量の増大を抑制することが、求められている。また、電池の状態の判定に用いるデータ量を減少させても、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて、電池の劣化状態等の電池の状態が適切に判定されることが、求められている。
特開2013-93120号公報 特開2019-21608号公報
J. P. Schmidt et al., "Studies on LiFePO4 as cathode materials using impedance spectrometry" Journal of power Sources. 196, (2011), pp5342-pp5348
本発明が解決しようとする課題は、電池の状態の判定に用いるデータ量の増大が抑制され、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて適切に電池の状態が判定される電池の診断方法、診断装置、診断システム及び診断プログラムを提供することにある。
実施形態の電池の診断方法では、第1の周波数での電池のインピーダンスである第1のインピーダンスの計測結果に基づいて、電池の複数のSOC値のそれぞれについて、電池のSOCに対する第1のインピーダンスの変化率の絶対値が基準値以下になるか否かを判定する。診断方法では、複数のSOC値の中で変化率の絶対値が基準値以下になる対象SOC値について、第1の周波数より高い第2の周波数での電池の前記インピーダンスである第2のインピーダンスを、第1のインピーダンスに加えて計測する。診断方法では、対象SOC値における第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、電池の状態に関して判定する。
図1は、実施形態において診断対象となる電池について、電池の充電状態と正極及び負極のそれぞれの電位との関係の一例を示す概略図である。 図2は、実施形態において診断対象となる電池について、第1の電極の充電状態と第1の電極の電荷移動抵抗との間の関係の一例を示す概略図である。 図3は、実施形態において診断対象となる電池について、電池のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係の一例を示す概略図である。 図4は、実施形態に係る電池の診断システムの一例を示す概略図である。 図5は、実施形態に係る電池のインピーダンスの計測において電池に入力される電流波形の一例を示す概略図である。 図6は、実施形態に係る電池のインピーダンスの計測において電池に入力される電流波形の図5とは別の一例を示す概略図である。 図7は、実施形態において、複数のSOC値のそれぞれについて電池のSOCに対する第1のインピーダンスの変化率を算出する処理の一例を示す概略図である。 図8は、実施形態においてフィッティング計算に用いられる電池5等価回路の一例を概略的に示す回路図である。 図9は、実施形態において、第1の電極の電荷移動抵抗が最低になる基準SOC値を算出する処理の一例を示す概略図である。 図10は、実施形態において算出される、第1の期間及び第1の期間より後の第2の期間のそれぞれでの第1の電極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係の一例を示す概略図である。 図11は、実施形態において診断装置の処理回路が診断プログラムを実行することによって行われる処理の一例を概略的に示すフローチャートである。 図12は、実施形態に関連する検証において、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡を算出した3つの演算パターンを説明する概略図である。
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態)
まず、実施形態において診断対象となる電池について説明する。診断対象となる電池は、例えば、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池及びニッケル水素電池等の二次電池である。電池は、単セル(単電池)から形成されてもよく、複数の単セルを電気的に接続することにより形成される電池モジュール又はセルブロックであってもよい。電池が複数の単セルから形成される場合、電池において、複数の単セルが電気的に直列に接続されてもよく、複数の単セルが電気的に並列に接続されてもよい。また、電池において、複数の単セルが直列に接続される直列接続構造、及び、複数の単セルが並列に接続される並列接続構造の両方が形成されてもよい。また、電池は、複数の電池モジュールが電気的に接続される電池ストリング、電池アレイ及び蓄電池のいずれかであってもよい。また、複数の単セルが電気的に接続される電池モジュールにおいて、複数の単セルのそれぞれを診断対象の電池として診断してもよい。
前述のような電池では、電池の充電状態を示すパラメータとして電池の電荷量(充電量)及びSOCが規定される。リアルタイムでの電池の電荷量は、所定の時点における電池の電荷量、及び、電池に流れる電流についての所定の時点からの時間変化等に基づいて、算出される。例えば、所定の時点から電池に流れる電流の時間積算値を、所定の時点における電池の電荷量に加算することにより、リアルタイムでの電池の電荷量が算出される。
電池では、電圧について、下限電圧Vmin及び上限電圧Vmaxが規定される。また、電池のSOCの値として、SOC値が規定される。電池では、所定の条件での放電又は充電における電圧が下限電圧Vminになる状態が、SOC値が0(0%)の状態として規定され、所定の条件での放電又は充電における電圧が上限電圧Vmaxになる状態が、SOC値が1(100%)の状態として規定される。また、電池では、所定の条件での充電においてSOC値が0から1になるまでの充電容量(充電電荷量)、又は、所定の条件での放電においてSOC値が1から0になるまでの放電容量(放電電荷量)が、電池容量として規定される。そして、電池の電池容量に対するSOC値が0の状態までの残存電荷量(残容量)の比率が、電池のSOCとなる。
また、電池は、正極及び負極を電極として備え、正極及び負極は、互いに対して極性が反対になる。電池の正極及び負極のそれぞれでは、充電状態の変化に対応して、電位が変化する。正極及び負極のそれぞれでは、電位と充電状態との間に所定の関係を有する。このため、電池の電極のそれぞれに関しては、充電状態に基づいて電位を算出可能であるとともに、電位に基づいて充電状態を算出可能である。二次電池等である電池では、充電及び放電を繰返すことにより、電池の電荷量及びSOCに対する電極(正極及び負極)のそれぞれの電位の関係が、電池の使用開始時等に比べて、変化する。実施形態では、診断対象となる電池について、電池のSOCに対する正極及び負極の少なくとも一方の電位のリアルタイムにおける関係を推定する。そして、電池のSOCに対する正極及び負極の少なくとも一方の電位の関係について、電池の使用開始時等での関係とリアルタイムにおける関係とを比較する等して、正極及び負極の少なくとも一方について、劣化状態等を判定する。
図1は、実施形態において診断対象となる電池について、電池の充電状態と正極及び負極のそれぞれの電位との関係の一例を示す概略図である。図1では、横軸が電池の電荷量(充電量)を示し、縦軸が電位を示す。図1では、電池の電荷量と正極の電位との関係Vp1,Vp2、及び、電池の電荷量と負極の電位との関係Vnが示される。図1の一例の電池5では、充電及び放電を繰返すことにより、電池の電荷量と正極の電位との関係が、関係Vp1から関係Vp2へ変化する。電池の電荷量が互いに対して同一の条件下で比較すると、関係Vp2では、関係Vp1に比べて、正極の電位が高い。このため、図1の一例では、正極の劣化によって、劣化後の正極の電位は、電池の電荷量が互いに対して同一の条件下で比較して、劣化前の正極の電位に対して高電位側にずれる。前述のように電池の電荷量と正極の電位との関係が変化するため、図1の一例では、正極の電位と電池のSOCとの関係が、電池の使用開始時等から変化する。
また、診断対象となる電池において、正極及び負極の一方を第1の電極とし、正極及負極の中で第1の電極とは反対の極性の一方を第2の電極とする。電池では、第1の電極は、第1の電極活物質を電極活物質として含み、第2の電極は、第1の電極活物質とは異なる第2の電極活物質を電極活物質として含む。電池のSОC値が0~1(0%~100%)の範囲で変化する場合、第1の電極活物質は、リチウムの吸蔵及び放出のそれぞれにおいて、単一相反応(固溶反応)する。また、電池5のSОC値が0~1の範囲で変化する場合、第2の電極活物質は、リチウムの吸蔵及び放出のそれぞれにおいて、二相共存反応してもよく、単一相反応してもよい。二相共存反応をする第2の電極活物質を第2の電極が含む場合、第2の電極は、充電状態が変化しても電位が一定又は略一定となるプラトー領域を有する。図1の一例では、負極が二相共存反応する第2の電極活物質を含む第2の電極となり、負極は、プラトー領域εを有する。
ある一例では、診断対象となる電池は、正極と負極との間でリチウムイオンが移動することにより、充電及び放電するリチウムイオン二次電池である。そして、第1の電極の第1の電極活物質は、リチウムの吸蔵及び放出のそれぞれにおいて単一相反応し、第2の電極の第2の電極活物質は、リチウムの吸蔵及び放出のそれぞれにおいて二相共存反応をする。正極が第1の電極となる場合、正極では、単一相反応する第1の電極活物質(正極活物質)として、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物及びリチウムニッケルコバルトアルミ酸化物等のいずれかが用いられる。そして、第2の電極となる負極では、二相共存反応する第2の電極活物質(負極活物質)として、チタン酸リチウム、酸化チタン及びニオブチタン酸化物等のいずれかが用いられる。一方、負極が第1の電極となる場合、負極では、単一相反応する第1の電極活物質(負極活物質)として、炭素系活物質等が用いられる。そして、第2の電極となる正極では、二相共存反応をする第2の電極活物質(正極活物質)として、リン酸鉄リチウム及びリチウムマンガン酸化物等のいずれかが用いられる。
実施形態等では、診断対象となる電池について、第1の電極の電位と電池のS0Cとのリアルタイムにおける関係を推定する。また、電池の診断では、第1の電極の電位と電池のS0Cとの関係の推定結果等に基づいて、第2の電極の電位と電池のSOCとの関係を推定してもよい。第1の電極の電位と電池のSOCとのリアルタイムにおける関係を推定する際に、診断対象となる電池のインピーダンス及びインピーダンスの周波数特性を計測する。そして、電池のインピーダンスの周波数特性の計測結果等に基づいて、電池のインピーダンスの抵抗成分を算出する。
ここで、電池のインピーダンス成分としては、電解質等でのリチウムの移動過程における抵抗を含むオーミック抵抗、正極及び負極のそれぞれの電荷移動インピーダンス、反応等によって正極又は負極に形成される被膜の被膜抵抗を含む被膜に起因するインピーダンス、拡散抵抗を含むワーブルグインピーダンス、及び、電池のインダクタンス成分等が含まれる。そして、正極及び負極のそれぞれでは、電荷移動インピーダンスの抵抗成分が電荷移動抵抗となる。第1の電極及び第2の電極の電荷移動抵抗等を含む電池のインピーダンス成分は、電池のインピーダンスの周波数特性を用いて、算出可能である。
実施形態等では、診断対象となる電池について、複数の対象SOC値のそれぞれでのインピーダンスの周波数特性を計測する。そして、複数の対象SOCのそれぞれについて、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて、第1の電極の電荷移動抵抗を第1の電極に関する抵抗として算出する。これにより、第1の電極の電荷移動抵抗と電池のSOCとのリアルタイムにおける関係が、算出される。また、第1の電極の電位及び充電状態に対して第1の電極の電荷移動抵抗は所定の関係を有する。実施形態等では、診断対象となる電池について、第1の電極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係の算出結果、及び、第1の電極の電位と第1の電極の電荷移動抵抗との間の所定の関係を用いて、第1の電極の電位と電池のSOCとのリアルタイムにおける関係を算出する。そして、第1の電極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係の算出結果、及び、第1の電極の電位と電池のSOCとの関係の算出結果等に基づいて、第1の電極の劣化状態等について判定する。
図2は、実施形態において診断対象となる電池について、第1の電極の充電状態と第1の電極の電荷移動抵抗との間の関係の一例を示す概略図である。図2では、横軸が第1の電極の充電状態として第1の電極のストイキメトリーを示し、縦軸が第1の電極の電荷移動抵抗を示す。実施形態等の電池では、第1の電極は、前述のように、単一相反応する第1の電極活物質を含む。このため、図2等に示すように、第1の電極の充電状態が変化すると、第1の電極の電荷移動抵抗は、第1の電極の充電状態に対応して変化する。そして、図2等において示される第1の電極のストイキメトリーと第1の電極の電荷移動抵抗との関係は、電荷移動抵抗の低い側(下側)へ凸の形状となる。
図3は、実施形態において診断対象となる電池について、電池のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係の一例を示す概略図である。図3では、横軸が電池のSOCを示し、縦軸が第1の電極の電荷移動抵抗を示す。診断対象となる電池では、第1の電極のストイキメトリーと第1の電極の電荷移動抵抗との関係が、図2等で示されるように、電荷移動抵抗の低い側へ凸の形状となる。このため、図3等において示される電池のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係も、電荷抵抗の低い側へ凸の形状となる。また、第1の電極の電荷移動抵抗は、SOC値が30%以上かつ70%以下の範囲において、SOC値が20%以下の範囲、及び、SOC値が80%以上の範囲のそれぞれに比べて、低い傾向にある。
また、電池のSOCに対する第1の電極の電荷移動抵抗の変化率を、規定する。SOCの増加に伴って電荷移動抵抗が上昇するSOC値では、電荷移動抵抗の変化率は正の値となり、SOCの増加に伴って電荷移動抵抗が低下するSOC値では、電荷移動抵抗の変化率は負の値となる。電池では、SOCに対する第1の電極の電荷移動抵抗の変化率の絶対値が、SOC値が30%以上かつ70%以下の範囲において、SOC値が20%以下の範囲、及び、SOC値が80%以上の範囲のそれぞれに比べて、小さい。
また、第2の電極に含まれる第2の電極活物質が単一相反応する場合は、第2の電極の充電状態と第2の電極の電荷移動抵抗との間の関係は、図2等に示す第1の電極の充電状態と第1の電極の電荷移動抵抗との関係と同様の傾向になり、電荷移動抵抗の低い側へ凸の形状となる。このため、電池のSOCと第2の電極の電荷移動抵抗と関係は、図3等に示す電池のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係と同様の傾向になり、電荷移動抵抗の低い側へ凸の形状となる。また、第2の電極に含まれる第2の電極活物質が二相共存反応する場合は、第2の電極の充電状態が変化しても、第2の電極の電荷移動抵抗は、一定又は略一定になる。このため、電池のSOCが変化しても、第2の電極の電荷移動抵抗は、変化しない又はほとんど変化しない。
診断対象となる電池では、電池のSOCに対する第1の電極及び第2の電極のそれぞれの電荷移動抵抗の関係が前述のようになるため、電池のSOCと電池のインピーダンス(インピーダンスの絶対値)との関係は、電池のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係と同様の傾向になる。すなわち、電池のSOCと電池のインピーダンスとの関係は、インピーダンスの低い側へ凸の形状となる。また、電池のインピーダンスは、SOC値が30%以上かつ70%以下の範囲において、SOC値が20%以下の範囲、及び、SOC値が80%以上の範囲のそれぞれに比べて、低い傾向にある。
また、電池のSOCに対する電池のインピーダンスの変化率を、規定する。SOCの増加に伴ってインピーダンスが上昇するSOC値では、インピーダンスの変化率は正の値となり、SOCの増加に伴ってインピーダンスが低下するSOC値では、インピーダンスの変化率は負の値となる。電池では、SOCに対するインピーダンスの変化率の絶対値が、SOC値が30%以上かつ70%以下の範囲において、SOC値が20%以下の範囲、及び、SOC値が80%以上の範囲のそれぞれに比べて、小さい。
電池のSOCと電池のインピーダンスとの関係で示される前述の傾向は、例えば0.1Hz以上かつ100Hz以下の比較的低い周波数範囲でのインピーダンスにおいて、顕著となる。この周波数範囲は、電極に含まれる活物質の種類や組み合わせ等により異なり、ある一例では、正極が、単一相反応するリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を正極活物質として含む第1の電極となり、負極が、二相共存反応するチタン酸リチウムを負極活物質として含む第2の電極となる。この場合、1Hz程度でのインピーダンスにおいて、電池のSOCと電池のインピーダンスとの関係で示される前述の傾向が、特に顕著となる。実施形態等は、電池のSOCと電池のインピーダンスとの関係で示される前述の傾向を利用して、複数のSOC値のそれぞれについて、100Hz以上かつ10kHz以下の比較的高い周波数範囲で電池のインピーダンスを計測するか否かを判定する。
以下、前述のような電池を診断する診断システムについて、説明する。図4は、実施形態に係る電池5の診断システム1の一例を示す概略図である。図4に示すように、診断システム1は、電池搭載機器2及び診断装置3を備える。電池搭載機器2には、電池5、制御回路6、記憶媒体7及び通信モジュール8が搭載される。また、電池搭載機器2には、駆動回路11、電流検出回路12及び電圧検出回路13が搭載される。電池搭載機器2としては、電力系統用の大型蓄電装置、スマートフォン、車両、定置用電源装置、ロボット及びドローン等が挙げられ、電池搭載機器2となる車両としては、鉄道用車両、電気バス、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車及び電動バイク等が、挙げられる。また、電池5は、前述した電池が用いられる。このため、電池5は、単一相反応をする第1の電極活物質を含む第1の電極を備え、0.1Hz以上かつ100Hz以下の比較的低い周波数範囲でのインピーダンスにおいて、電池のSOCと電池のインピーダンスとの関係が前述の傾向を示す。
電池搭載機器2では、制御回路6及び記憶媒体7によってBMU(battery management unit)が構成される。制御回路6は、電池5の充電及び放電を制御する等して、電池5を管理する。制御回路6は、プロセッサ又は集積回路等から構成され、制御回路6を構成するプロセッサ等は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal Processor)等のいずれかを含む。制御回路6は、1つのプロセッサ等から構成されてもよく、複数のプロセッサ等から構成されてもよい。記憶媒体7は、メモリ等の主記憶装置、及び、補助記憶装置のいずれかである。記憶媒体7としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、及び、半導体メモリ等が挙げられる。電池搭載機器2には、記憶媒体7となるメモリ等は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。
通信モジュール8は、電池搭載機器2の通信インタフェース等から構成される。制御回路6は、通信モジュール8を介して、診断装置3を含む電池搭載機器2の外部の処理装置と通信する。制御回路6は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。また、制御回路6によって実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークを介して接続されたコンピュータ(サーバ)、又は、クラウド環境のサーバ等に格納されてもよい。この場合、制御回路6は、ネットワーク経由でプログラムをダウンロードする。また、制御回路6は、通信モジュール8を介して外部から受信した指令等に基づいて、処理を行う。
制御回路6は、駆動回路11の駆動を制御する等して、電池5の充電及び放電を制御する。制御回路6は、例えば、駆動回路11の駆動状態を切替えることにより、電池5が充電される状態と電池5が放電される状態との間を切替える。また、電池5が充電されている状態では、制御回路6は、電池5に電力を供給する電源(図示しない)の駆動、及び、駆動回路11の駆動を制御することにより、電池5へ入力される電流の大きさ等が調整される。なお、電池5に電力を供給する電源は、電池搭載機器2に搭載されてもよく、電池搭載機器2の外部に設けられてもよい。
電流検出回路12及び電圧検出回路13は、電池5に関連するパラメータを検出及び計測する計測ユニット10を構成する。計測ユニット10は、電池5が充電又は放電されている状態等において、電池5に関連するパラメータが定期的に計測する。計測ユニット10では、電池5に関連するパラメータとして、電流検出回路12が、電池5に流れる電流を定期的に検出及び計測し、電圧検出回路13が、電池5に印加される電圧を定期的に検出及び計測する。ある一例では、計測ユニット10は、電流検出回路12及び電圧検出回路13に加えて、温度センサ(図示しない)を備える。この場合、温度センサは、電池5に関連するパラメータとして、電池5の温度を定期的に検出及び計測する。
診断装置3は、診断対象となる電池5について、電池5の劣化状態等を含む電池5の状態を診断する。図4等の一例では、診断装置3は、電池搭載機器2の外部に設けられるサーバ等の処理装置(コンピュータ)であり、電池搭載機器2とネットワークを介して通信可能である。診断装置3は、処理回路21、記憶媒体22、通信モジュール23及びユーザインタフェース25を備える。処理回路21は、プロセッサ又は集積回路等から構成され、処理回路21を構成するプロセッサ等は、CPU、ASIC、マイコン、FPGA及びDSP等のいずれかを含む。処理回路21は、1つのプロセッサ等から構成されてもよく、複数のプロセッサ等から構成されてもよい。記憶媒体22は、メモリ等の主記憶装置、及び、補助記憶装置のいずれかである。診断装置3には、記憶媒体22となるメモリ等は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。
処理回路21は、記憶媒体22に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。図4の一例では、記憶媒体22に、処理回路21に実行されるプログラムとして、データ管理プログラム27及び診断プログラム28が記憶される。処理回路21は、データ管理プログラム27を実行することにより、記憶媒体22へのデータの書込み、及び、記憶媒体22からのデータの読取りを行う。また、処理回路21は、診断プログラム28を実行することにより、電池5の診断における後述の処理を行う。診断プログラム28には、インピーダンス計測プログラム31、変化率判定プログラム32、抵抗演算プログラム33及び状態判定プログラム35が含まれる。
なお、ある一例では、複数のサーバ等の複数の処理装置(コンピュータ)から診断装置3が構成され、複数の処理装置のプロセッサが協働して、電池5の診断における後述の処理を行う。また、別のある一例では、クラウド環境のクラウドサーバから診断装置3が構成される。クラウド環境のインフラは、仮想CPU等の仮想プロセッサ及びクラウドメモリによって、構成される。このため、診断装置3がクラウドサーバから構成される場合、仮想プロセッサが、処理回路21の代わりに、電池5の診断における後述の処理を行う。そして、クラウドメモリが、記憶媒体22と同様に、プログラム及びデータ等を記憶する機能を有する。
ある一例では、処理回路21によって実行されるプログラム、及び、処理回路21の処理に用いられるデータが記憶される記憶媒体22は、電池搭載機器2及び診断装置3とは別体のコンピュータに設けられる。この場合、診断装置3は、記憶媒体22等が設けられるコンピュータに、ネットワークを介して接続される。また、別のある一例では、診断装置3が、電池搭載機器2に搭載される。この場合、診断装置3では、電池搭載機器2に搭載されるプロセッサ等が、処理回路21の代わりに、電池5の診断における後述の処理を行う。
通信モジュール23は、診断装置3を構成する処理装置の通信インタフェース等から構成される。処理回路21は、通信モジュール23を介して、電池搭載機器2を含む診断装置3の外部の装置等と通信する。ユーザインタフェース25では、診断装置3及び診断システム1の利用者等によって、電池5の診断に関連する操作等が入力される。このため、ユーザインタフェース25には、ボタン、マウス、タッチパネル及びキーボード等のいずれかが、利用者等によって操作が入力される操作部として設けられる。また、ユーザインタフェース25では、電池5の診断に関連する情報を告知する告知部が、設けられる。告知部では、画面表示及び音の発信等のいずれかによって、情報が告知される。なお、ユーザインタフェース25は、診断装置3を構成する処理装置とは別体で設けられてもよい。
実施形態では、電池5の劣化状態等を含む電池5の状態の診断において、診断装置3等によって、以下のような処理が行われる。電池搭載機器2の制御回路6は、電池5に関連する前述のパラメータの計測ユニット10での計測結果を含む計測データを、通信モジュール8を介して診断装置3に送信する。そして、診断装置3の処理回路21は、電池搭載機器2から送信された計測データを、通信モジュール23を介して、受信する。処理回路21で受信した計測データでは、電池5の電流及び電圧等を含む電池5に関連するパラメータについて、複数の計測時点のそれぞれで計測値、及び、時間変化(時間履歴)等が示される。このため、計測データでは、電池5の電流の時間変化(時間履歴)、及び、電池5の電圧の時間変化(時間履歴)が示され、電池5の温度の時間変化(時間履歴)が示されてもよい。
電池搭載機器2の制御回路6及び診断装置3の処理回路21少なくとも一方は、電池5に関連するパラメータの計測ユニット10での計測結果等を含む計測データに基づいて、リアルタイムでの電池5の電荷量(充電量)及びSOCを算出する。また、制御回路6及び処理回路21の少なくとも一方は、電池5に関連するパラメータの時間変化(時間履歴)に基づいて、電池5の電荷量及びSOCのそれぞれの時間変化(時間履歴)を算出する。リアルタイムでの電池5の電荷量及びSOCは、前述のようにして算出される。
処理回路21は、電池5の状態の診断において、診断プログラム28を実行する。そして、処理回路21は、診断プログラム28に含まれるインピーダンス計測プログラム31を実行することにより、電池5のインピーダンスを計測する。電池5のインピーダンスの計測では、処理回路21は、電池搭載機器2の制御回路6に指令を送信する。そして、制御回路6は、処理回路21からの指令に基づいて、駆動回路11の駆動、及び、電源の駆動等を制御し、周期的に電流値が変化する電流波形で電池5に電流を流す。これにより、周期的に電流値が変化する電流波形が、電池5に入力される。
図5は、実施形態に係る電池5のインピーダンスの計測において電池5に入力される電流波形の一例を示す概略図である。また、図6は、実施形態に係る電池5のインピーダンスの計測において電池5に入力される電流波形の図5とは別の一例を示す概略図である。図5及び図6のそれぞれでは、横軸は時間tを示し、縦軸は電流Iを示す。図5の一例、及び、図6の一例のそれぞれでは、入力される電流波形の周波数における電池5のインピーダンスが、計測される。
図5の一例では、制御回路6等は、流れる方向が周期的に変化する電流波形の交流電流Ia(t)を、電池5に入力する。一方、図6の一例では、交流電流の電流波形を直流電流の基準電流軌跡Ibref(t)に重畳させた重畳電流Ib(t)を、電池5に入力する。電池5に入力される重畳電流Ib(t)では、基準電流軌跡Ibref(t)を中心として、電流値が周期的に変化する。また、重畳電流Ib(t)は、流れる方向が変化しない直流電流である。基準電流軌跡Ibref(t)は、例えば、電池5の充電等において充電条件として設定される充電電流の時間変化の軌跡である。
ある一例では、電池5の充電(電池5のSOCの調整)と並行して、電池5のインピーダンスが計測される。この場合、図6の一例の重畳電流Ib(t)等と同様に、充電電流の時間変化の軌跡として設定される直流電流の基準電流軌跡に交流電流の電流波形を重畳した重畳電流が、電池5に入力される。そして、重畳電流は、充電における基準電流軌跡を中心として周期的に電流値が変化する直流電流となる。充電における基準電流軌跡では、充電電流の電流値が経時的に一定であってもよく、充電電流の電流値が経時的変化してもよい。また、図5の交流電流Ia(t)の電流波形、及び、図6の重畳電流Ib(t)の電流波形のそれぞれは正弦波(sin波)であるが、交流電流及び重畳電流のそれぞれの電流波形は、三角波及び鋸波等の正弦波以外の電流波形であってもよい。
計測ユニット10は、電流検出回路12及び電圧検出回路13によって、前述のように周期的に電流値が変化する電流波形が電池5に入力されている状態において、電池5の電流及び電圧のそれぞれを、複数の計測時点で計測する。そして、制御回路6は、周期的に電流値が変化する電流波形が電池5に入力されている状態での電池5の電流及び電圧のそれぞれの計測結果等を示す計測データを、通信モジュール8を介して診断装置3に送信する。処理回路21は、制御回路6から送信された計測データを、通信モジュール23を介して、受信する。処理回路21が受信した計測データでは、周期的に電流値が変化する電流波形が電池5に入力されている状態について、複数の計測時点のそれぞれでの電池5の電流及び電圧のそれぞれの計測値、及び、電池5の電流及び電圧のそれぞれの時間変化(時間履歴)等が、示される。
処理回路21は、インピーダンス計測プログラム31を実行することにより、制御回路6から受信した計測データに基づいて、入力された電流波形の周波数における電池5のインピーダンスを算出する。ある一例では、処理回路21は、電池5の電流の時間変化に基づいて、電池5の電流の周期的な変化におけるピーク-ピーク値(変動幅)を算出し、電池5の電圧の時間変化に基づいて、電池5の電圧の周期的な変化におけるピーク-ピーク値(変動幅)を算出する。そして、処理回路21は、電流のピーク-ピーク値に対する電圧のピーク-ピーク値の比率から、電池5のインピーダンスを算出する。
診断対象となる電池5の診断では、まず、処理回路21は、インピーダンス計測プログラム31を実行することにより、電池5の複数のSOC値のそれぞれについて、第1の周波数での電池5のインピーダンスである第1のインピーダンスを計測する。複数のSOC値のそれぞれについての第1のインピーダンスは、前述のようにして計測される。すなわち、処理回路21は、複数のSOC値のそれぞれについて、第1の周波数で周期的に電流値が変化する電流波形を電池5へ入力させることにより、第1のインピーダンスを計測する。
ある一例では、計測対象のなる複数のSOC値のそれぞれに電池5のSOCを充電等によって調整してから、図5の一例と同様の交流電流を第1の周波数で電池5に入力し、複数のSOC値のそれぞれについて、電池5のインピーダンスを計測する。別のある一例では、図6の一例と同様の重畳電流を第1の周波数で電池5に入力し、電池5を充電しながら、複数のSOC値のそれぞれについて、電池5のインピーダンスを計測する。この場合、第1の周波数で交流電流の電流波形を直流電流の基準電流軌跡に重畳した重畳電流が、電池5に入力される。
第1の周波数は、比較的低い周波数であり、0.1Hz以上かつ100Hz以下の周波数範囲(第1の周波数範囲)のいずれかの周波数である。また、ある一例では、電池5において、正極が単一相反応するリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を正極活物質として含む第1の電極となり、負極が、二相共存反応するチタン酸リチウムを負極活物質として含む第2の電極となる。この場合、第1の周波数は、1Hz程度であることが好ましい。
また、複数のSOC値のそれぞれでの第1のインピーダンスの計測結果は、例えば、電池5についての複素インピーダンスプロット(Cole-Coleプロット)において示すことが可能である。複素インピーダンスプロットでは、複数のSOC値のそれぞれでの第1のインピーダンスを含む電池5のインピーダンスについて、実数成分及び虚数成分が示される。また、複素インピーダンスプロットでは、原点からの距離が、インピーダンスの大きさ(インピーダンスの絶対値)となる。なお、周期的に電流値が変化する電流波形を電池に入力することにより電池のインピーダンスの周波数特性を計測する方法、及び、複素インピーダンスプロット等は、非特許文献1(J. P. Schmidt et al., “Studies on LiFePO4 as cathode materials using impedance spectrometry” Journal of power Sources. 196, (2011), pp5342-pp5348)等に示される。
前述のように計測対象となる複数のSOC値のそれぞれについて第1の周波数での電池5のインピーダンスである第1のインピーダンスを計測すると、処理回路21は、変化率判定プログラム32を実行することにより、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値のそれぞれについて、電池5のSOCに対する第1のインピーダンスの変化率βを算出する。変化率βの算出では、複数のSOC値のそれぞれでの第1のインピーダンスの値として、第1のインピーダンスの絶対値(第1のインピーダンスの大きさ)、すなわち、複素インピーダンスプロットでの原点からの距離が、用いられる。また、SOCの増加に伴って第1のインピーダンスが上昇するSOC値では、第1のインピーダンスの変化率βは正の値となり、SOCの増加に伴って第1のインピーダンスが低下するSOC値では、第1のインピーダンスの変化率βは負の値となる。
図7は、実施形態において、複数のSOC値のそれぞれについて電池のSOCに対する第1のインピーダンスの変化率βを算出する処理の一例を示す概略図である。図7では、横軸が電池5のSOCを示し、縦軸が第1のインピーダンス(第1のインピーダンスの絶対値)を示す。図7一例では、0(0%)を最も低い最低SOC値とし、かつ、1(100%)を最も高い最高SOC値として、電池5のSOC換算で0.1(10%)の間隔で、電池5の第1のインピーダンスが計測される。このため、11個のSOC値のそれぞれについて、第1の周波数でのインピーダンスである第1のインピーダンスが計測される。図7では、11個のSOC値についての第1のインピーダンスが、点M0,M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7,M8,M9,M10としてプロットされる。
11個のSOC値のそれぞれについてSOCに対する第1のインピーダンスの変化率βを算出する際には、処理回路21は、例えば、点M0~M10へ二次関数又は三次関数等の関数をフィッティングするフィッティング計算によって、電池5のSOCと第1のインピーダンスとの関係を示す関数の軌跡Xを算出する。そして、処理回路21は、11個のSOC値のそれぞれについて、軌跡Xにおける接線の傾きを、電池5のSOCに対する第1のインピーダンスの変化率βとして算出する。例えば、接線T0,T3,T5,T7,T10の傾きが、それぞれ、SOC値が0,0.3,0.5,0.7,1における第1のインピーダンスの変化率βとして、算出される。また、SOC値が0.1,0.2,0.4,0.6,0.8,0.9のそれぞれにおける第1のインピーダンスの変化率βも、軌跡Xにおける接線の傾きから、同様にして算出される。なお、軌跡Xの算出では、二次関数等の関数を用いたフィッティングの代わりに、スプライン補間等の補間が行われてもよい。
前述のようにして第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値のそれぞれについてSOCに対する第1のインピーダンスの変化率βを算出すると、処理回路21は、変化率判定プログラム32を実行することにより、複数のSOC値のそれぞれについて、算出した変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下であるか否かを判定する。そして、処理回路21は、複数のSOC値の中で変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になるSOC値を、第1の周波数より高い第2の周波数で電池5のインピーダンスを計測する対象となる対象SOC値に設定する。基準値βrefは、固定値であってもよく、処理回路21によって適宜の値に設定されてもよい。
ある一例では、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値の中で最も低い最低SOC値での変化率βL、又は、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値の中で最も高い最高SOC値での変化率βHに基づいて、基準値βrefが設定される。例えば、最低SOC値での変化率βLの絶対値|βL|の半分値、又は、最高SOC値での変化率βHの絶対値|βH|の半分値が、基準値βrefとして設定される。この場合、図7の一例では、SOC値が0における変化率β0の絶対値|β0|の半分値、又は、SOC値が1における変化率β10の絶対値|β10|の半分値が、基準値βrefとして設定される。
ここで、第1の周波数は、0.1Hz以上かつ100Hz以下の周波数範囲(第1の周波数範囲)のいずれかの周波数であるため、SOCに対する第1のインピーダンスの変化率βの絶対値|β|は、SOC値が30%以上かつ70%以下の範囲において、SOC値が20%以下の範囲、及び、SOC値が80%以上の範囲のそれぞれに比べて、小さい。このため、ある一例では、変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になるか否かの判定において、複数のSOC値の中で30%以上かつ70%以下の範囲のSOC値が、絶対値|β|が基準値βref以下になる対象SOC値であると判定される。そして、30%より低いSOC値、及び、70%より高いSOC値については、絶対値|β|が基準値βrefより大きく、対象SOC値でないと判定される。
例えば、図7の一例のように、11個のSOC値のそれぞれについて、SOCに対する第1のインピーダンスの変化率βが算出されたとする。この場合、0.3、0.4,0.5,0.6,0.7のSOC値のそれぞれについては、変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下であると判定され、対象SOC値であると判定される。一方、0,0.1,0.2,0.8,0.9,1のSOC値のそれぞれについては、変化率βの絶対値|β|が基準値βrefより大きいと判定され、対象SOC値でないと判定される。また、ある一例では、複数のSOC値の中で30%以上かつ70%以下の範囲のSOC値のみが対象SOC値となる状態に、前述の基準値βrefが適宜の値に設定されてもよい。また、第1のインピーダンスを計測したSOC値の中の2つ以上が対象SOC値であると判定されることが、好ましく、第1のインピーダンスを計測したSOC値の中の3つ以上が対象SOC値であると判定されることが、さらに好ましい。
前述のようにSOCに対する第1のインピーダンスの変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になるSOC値を対象SOC値に設定すると、対象SOC値のそれぞれについて、第1の周波数より高い第2の周波数で電池5のインピーダンスである第2のインピーダンスを、第1のインピーダンスに加えて、計測する。ある一例では、複数のSOC値の中で30%以上かつ70%以下の範囲のSOC値のみが対象SOC値と判定され、処理回路21は、インピーダンス計測プログラム31を実行することにより、第1のインピーダンスを計測したSOC値の中で30%以上かつ70%以下の範囲のSOC値についてのみ、第2のインピーダンスを計測する。
対象SOC値のそれぞれについての第2のインピーダンスは、複数のSOC値のそれぞれについての第1のインピーダンスと同様にして、計測される。すなわち、処理回路21は、対象SOC値のそれぞれについて、第2の周波数で周期的に電流値が変化する電流波形を電池5へ入力させることにより、第2のインピーダンスを計測する。ある一例では、対象SOC値のそれぞれに電池5のSOCを充電等によって調整してから、図5の一例と同様の交流電流を第2の周波数で電池5に入力し、対象SOC値のそれぞれについて、電池5のインピーダンスを計測する。別のある一例では、図6の一例と同様の重畳電流を第2の周波数で電池5に入力し、電池5を充電しながら、対象SOC値のそれぞれについて、電池5のインピーダンスを計測する。この場合、第2の周波数で交流電流の電流波形を直流電流の基準電流軌跡に重畳した重畳電流が、電池5に入力される。
第2の周波数は、第1の周波数に比べて高く、比較的高い周波数である。また、第2の周波数は、100Hz以上かつ10kHz以下の周波数範囲(第2の周波数範囲)のいずれかの周波数である。第2の周波数が含まれ得る100Hz以上かつ10kHz以下の周波数範囲(第2の周波数範囲)における下限周波数は、第1の周波数が含まれ得る0.1Hz以上かつ20Hz以下の周波数範囲(第1の周波数範囲)における上限周波数に比べて、高い。また、ある一例では、電池5において、正極が、単一相反応するリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を正極活物質として含む第1の電極となり、負極が、二相共存反応するチタン酸リチウムを負極活物質として含む第2の電極となる。この場合、第2の周波数は、1000Hz(1kHz)程度であることが好ましい。
前述のように電池5のインピーダンスが計測されることにより、第1のインピーダンスの変化率βの絶対値|β|が基準値βrefより大きいSOC値については、第1のインピーダンスのみが計測される。一方、第1のインピーダンスの変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下の対象SOC値については、第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの両方が計測され、複数の周波数のそれぞれでのインピーダンスが計測される。例えば、図7の一例では、11個のSOC値の中で、0.3、0.4,0.5,0.6及び0.7の5つのSOC値についてのみ、第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスが計測される。
診断対象となる電池5の診断では、処理回路21は、対象SOC値のそれぞれについての第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、電池5の劣化状態等の電池5の状態について判定する。この際、処理回路21は、抵抗演算プログラム33を実行することにより、第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスを計測した対象SOC値のそれぞれについて、電池5のインピーダンスの抵抗成分を算出する。そして、対象SOC値のそれぞれについて、インピーダンス抵抗成分の1つである第1の電極の電荷移動抵抗が、第1の電極に関する抵抗として算出される。また、対象SOC値のそれぞれについて、第1の電極の電荷移動抵抗に加えて、第2の電極の電荷移動抵抗が算出されてもよい。
記憶媒体22には、電池5の等価回路に関する情報を含む等価回路モデルが、記憶される。等価回路モデルの等価回路では、電池5のインピーダンス成分に対応する複数の電気特性パラメータ(回路定数)が設定される。電気特性パラメータは、等価回路に設けられる回路素子の電気特性を示すパラメータである。電気特性パラメータとしては、抵抗、キャパシタンス(容量)、インダクタンス及びインピーダンス等が挙げられる。また、等価回路の回路素子として、コンデンサの代わりにCPE(constant phase element)が用いられる場合は、CPEの電気特性パラメータとして、キャパシタンス及びデバイの経験パラメータが設定される。等価回路において電気特性パラメータとして示される抵抗には、第1の電極の電荷移動抵抗が含まれ、第2の電極の電荷移動抵抗が含まれてもよい。
また、記憶媒体22に記憶される等価回路モデルには、等価回路の電気特性パラメータと電池5のインピーダンスとの関係を示すデータ等が、含まれる。電気特性パラメータと電池5のインピーダンスとの関係を示すデータでは、例えば、電気特性パラメータ(回路定数)からインピーダンスの実数成分及び虚数成分のそれぞれを算出する演算式等が、示される。この場合、演算式では、電気特性パラメータ及び周波数等を用いて、電池5のインピーダンスの実数成分及び虚数成分のそれぞれが、算出される。
処理回路21は、インピーダンスの周波数特性として第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの両方を計測した対象SOC値のそれぞれに関して、等価回路モデルを用いて、以下のようにして第1の電極の電荷移動抵抗を算出する。すなわち、対象SOC値のそれぞれについての第1の電極の電荷移動抵抗の算出において、処理回路21は、等価回路を含む等価回路モデル、及び、第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスのそれぞれの計測結果を用いて、フィッティング計算を行う。この際、第1の電極の電荷移動抵抗を含む等価回路の電気特性パラメータを変数としてフィッティング計算を行い、変数となる電気特性パラメータを算出する。また、フィッティング計算では、例えば、第1のインピーダンスを計測した第1の周波数、及び、第2のインピーダンスを計測した第2の周波数のそれぞれにおいて、等価回路モデルに含まれる演算式を用いたインピーダンスの算出結果とインピーダンスの計測結果との差が可能な限り小さくなる状態に、変数となる電気特性パラメータの値を決定する。
前述のようにフィッティング計算が行われることにより、等価回路において電気特性パラメータの1つとして設定される第1の電極の電荷移動抵抗が、算出される。また、等価回路において第2の電極の電荷移動抵抗が電気特性パラメータの1つとして設定される場合は、第2の電極の電荷移動抵抗も算出される。なお、電池の等価回路等は、非特許文献1に示される。また、電池のインピーダンスの周波数特性についての計測結果、及び、電池の等価回路モデルを用いてフィッティング計算を行い、等価回路の電気特性パラメータ(回路定数)を算出する方法等も、非特許文献1に示される。
図8は、実施形態においてフィッティング計算に用いられる電池5の等価回路の一例を概略的に示す回路図である。図8の一例の等価回路では、抵抗Ro1,Ro2,Rc1,Rc2,Rc3、キャパシタンスC1,C2,C3、インダクタンスL1、インピーダンスZw1,Zw2及びデバイの経験パラメータα1,α2,α3が、電池5のインピーダンス成分に対応する電気特性パラメータとして設定される。ここで、抵抗Ro1,Ro2は、オーミック抵抗となる抵抗成分に対応し、インダクタンスL1は、電池5のインダクタンス成分に対応し、インピーダンスZw1,Zw2は、ワーブルグインピーダンスとなるインピーダンス成分に対応する。また、抵抗Rc3は、反応等によって正極又は負極に形成される被膜の被膜抵抗に対応し、抵抗Rc3、キャパシタンスC3及びデバイの経験パラメータα3は、被膜抵抗を含む被膜に起因するインピーダンスに対応する。キャパシタンスC3及びデバイの経験パラメータα3は、CPEQ3の電気特性パラメータとなる。
また、図8の一例の等価回路では、第1の電極の電荷移動インピーダンスのインピーダンス成分に対応する電気特性パラメータとして、抵抗Rc1、キャパシタンスC1及びデバイの経験パラメータα1が設定され、キャパシタンスC1及びデバイの経験パラメータα1は、CPEQ1の電気特性パラメータとなる。そして、図8の一例の等価回路では、第2の電極の電荷移動インピーダンスのインピーダンス成分に対応する電気特性パラメータとして、抵抗Rc2、キャパシタンスC2及びデバイの経験パラメータα2が設定され、キャパシタンスC2及びデバイの経験パラメータα2は、CPEQ2の電気特性パラメータとなる。フィッティング計算によって前述のようにして図8の一例の等価回路の電気特性パラメータを算出することにより、抵抗Rc1が第1の電極の電荷移動抵抗として算出され、抵抗Rc2が第2の電極の電荷移動抵抗として算出される。
処理回路21は、第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスをインピーダンスの周波数特性として計測した複数の対象SOC値のそれぞれについて、前述のようにして第1の電極の電荷移動抵抗を算出する。これにより、第1の電極に関する抵抗である第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係が、算出される。第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係は、例えば、横軸を電池5のSOCとし、かつ、縦軸を第1の電極の電荷移動抵抗とするグラフにおいて、曲線等で示される。電荷移動抵抗とSOCとの関係を示す曲線等の算出では、前述したグラフにおいて、複数の対象SOC値のそれぞれでの第1の電極の電荷移動抵抗を示す点をプロットする。そして、プロットされた点へ二次関数又は三次関数等の関数をフィッティングするフィッティング計算によって、電荷移動抵抗とSOCとの関係を示す曲線等が、算出される。なお、第1の電極の電荷移動抵抗とSOCとの関係を示す曲線の算出では、関数を用いたフィッティングの代わりに、スプライン補間等の補間が行われてもよい。
処理回路21は、状態判定プログラム35を実行することにより、前述のようにして算出した第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係を用いて、第1の電極の電荷移動抵抗が最小になるSOC値を、基準SOC値として算出する。第1の電極の電荷移動抵抗が最小になる基準SOC値は、電池5のSOCに対する第1の電極の電位の関係が変化することにより、電池5の使用開始時から変化する。このため、第1の電極の電荷移動抵抗が最小になる基準SOC値を算出することにより、第1の電極の劣化状態を判定可能となり、電池5の状態について判定可能となる。処理回路21は、算出した基準SOC値に基づいて、第1の電極の劣化状態等を含む電池5の状態として判定する。
図9は、実施形態において、第1の電極の電荷移動抵抗が最低になる基準SOC値を算出する処理の一例を示す概略図である。図9では、横軸が電池5のSOCを示し、縦軸が第1の電極の電荷移動抵抗を示す。図9の一例では、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値の中で、0.3,0.4,0.5,0.6,0.7の5つのSOC値のそれぞれが、前述の変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になる対象SOCであると判定される。そして、5つの対象SOC値のそれぞれについて、第2のインピーダンスが計測され、第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、前述のようにして第1の電極の電荷移動抵抗を算出する。図9では、5個の対象SOC値についての第1の電極の電荷移動抵抗が、点N1,N2,N3,N4,N5としてプロットされる。そして、点N1~N5へ関数をフィッティングするフィッティング計算によって、電池5のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係を示す関数の軌跡Yを算出する。
図9の一例の軌跡Yにおいて示されるように、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCの関係を示す軌跡は、電荷移動抵抗が低い側(下側)へ凸の形状となる。第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCの関係を示す軌跡において凸の形状の頂部になるSOC値が、第1の電極の電荷移動抵抗が最低になる基準SOC値として算出される。図9の一例では、軌跡Yの凸の形状の頂部において、SOC値は0.5(50%)であり、0.5が、第1の電極の電荷移動抵抗が最低になる基準SOC値として算出される。
また、処理回路21は、状態判定プログラム35を実行することにより、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係に基づいて、第1の電極の電位と電池5のSOCとのリアルタイムにおける関係を算出してもよい。この場合、記憶媒体22に、第1の電極の電位と第1の電極の電荷移動抵抗との間の所定の関係を示すデータが、記憶される。処理回路21は、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係についての算出結果、及び、第1の電極の電荷移動抵抗と電位との間の所定関係に基づいて、第1の電極の電位と電池5のSOCとのリアルタイムにおける関係を算出する。この際、例えば、第2のインピーダンスを計測した対象SOC値を含む複数のSOC値のそれぞれについて第1の電極の電位の対応値を算出することにより、第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係が算出される。
処理回路21は、第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係を前述のように算出することにより、複数のSOC値のそれぞれに対応する第1の電極の電位の値を、算出する。例えば、電池5のSOC値が0の状態(電池5が下限電圧Vminの状態)に対応する第1の電極の電位の値、及び、電池5のSOC値が1の状態(電池5が上限電圧Vmaxの状態)に対応する第1の電極の電位の値を、算出する。そして、処理回路21は、SOC値が0(0%)の状態に対応する第1の電極の電位の値とSOC値が1(100%)の状態に対応する第1の電極の電位の値との間の範囲を、第1の電極についてのリアルタイムでの利用可能な電位範囲として算出する。
また、ある一例では、処理回路21は、状態判定プログラム35を実行することにより、第1の電極の電位と電池5のSOCとのリアルタイムにおける関係の算出結果に基づいて、第2の電極の電位と電池5のSOCとのリアルタイムにおける関係を算出する。この際、第2のインピーダンスを計測した対象SOC値を含む複数のSOC値のそれぞれでの電池5の電圧の計測結果を用いて、演算が行われる。そして、複数のSOC値のそれぞれについて、電池5の電圧の計測結果、及び、第1の電極の電位の算出結果に基づいて、第2の電極の電位の対応値が算出される。
処理回路21は、第2の電極の電位と電池5のSOCとの関係を前述のように算出することにより、例えば、電池5のSOC値が0の状態(電池5が下限電圧Vminの状態)に対応する第2の電極の電位の値、及び、電池5のSOC値が1の状態(電池5の上限電圧Vmaxの状態)に対応する第2の電極の電位の値が、算出される。そして、処理回路21は、SOC値が0(0%)の状態に対応する第2の電極の電位の値とSOC値が1(100%)の状態に対応する第2の電極の電位の値との間の範囲を、第2の電極についてのリアルタイムでの利用可能な電位範囲として算出する。
処理回路21は、状態判定プログラム35を実行することにより、前述した第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係、第1の電極の電荷移動抵抗が最小となる基準SOC値、第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係、及び、第2の電極の電位と電池5のSOCとの関係のいずれか1つ以上に基づいて、電池5の状態に関して判定する。この際、第1の電極及び第2の電極のそれぞれの劣化状態、及び、電池5全体の劣化状態等について、判定される。
また、ある一例では、処理回路21は、状態判定プログラム35を実行することにより、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係、第1の電極の電荷移動抵抗が最小となる基準SOC値、及び、第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係等について、過去のデータとリアルタイムでのデータとを比較する。そして、処理回路21は、第1の期間でのデータである過去のデータと第1の期間より後の第2の期間でのデータであるリアルタイムでのデータとを比較することにより、第1の電極のリアルタイムでの劣化状態等を含む電池5のリアルタイムの状態について判定する。
この場合、処理回路21は、複数のSOC値についての第1のインピーダンスの計測、変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になるか否かの判定、対象SOC値についての第2のインピーダンスの計測、及び、電池5の状態に関する判定のそれぞれを、第1の期間及び第2の期間のそれぞれにおいて行う。また、過去のデータである第1の期間でのデータは、記憶媒体22等に保存される。第2の期間における電池5の状態に関する判定では、処理回路21は、記憶媒体22から第1の期間でのデータを読取り、第1の期間でのデータとリアルタイムでのデータである第2の期間でのデータとを比較する。
例えば、処理回路21は、電池5の使用開始時等の第1の期間、及び、第1の期間より後の第2の期間のそれぞれについて、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係を、前述のようにして算出する。そして、処理回路21は、第1の期間及び第2の期間のそれぞれについて、第1の電極の電荷移動抵抗が最小となる電池5の基準SOC値を、前述のようにして算出する。そして、処理回路21は、第1の電極の電荷移動抵抗が最小となる電池5の基準SOC値に関して、第1の期間での算出結果と第2の期間での算出結果とを比較する。そして、処理回路21は、基準SOC値についての比較結果に基づいて、電池5のSOCと第1の電極の電位との関係について、第1の期間に対する第2の期間における変化を算出する。
図10は、実施形態において算出される、第1の期間及び第1の期間より後の第2の期間のそれぞれでの第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係の一例を示す概略図である。図10では、横軸が電池5のSOCを示し、縦軸が第1の電極の電荷移動抵抗を示す。また、図10では、第1の期間での関係が実線で示され、第2の期間での関係が破線で示される。図10の一例では、第1の期間及び第2の期間のそれぞれにおいて、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値の中で、0.3,0.4,0.5,0.6,0.7の5つのSOC値のそれぞれが、前述の変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になる対象SOCであると判定される。そして、5つの対象SOC値のそれぞれについて、第2のインピーダンスが計測され、第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、前述のようにして第1の電極の電荷移動抵抗が算出される。
図10の一例では、第1の期間での5個の対象SOC値についての第1の電極の電荷移動抵抗の算出結果が、点Na1,Na2,Na3,Na4,Na5としてプロットされ、第2の期間での5個の対象SOC値についての第1の電極の電荷移動抵抗の算出結果が、点Nb1,Nb2,Nb3,Nb4,Nb5としてプロットされる。そして、点Na1~Na5へ関数をフィッティングするフィッティング計算によって、第1の期間での電池5のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係を示す軌跡Yaを算出し、点Nb1~Nb5へ関数をフィッティングするフィッティング計算によって、第2の期間での電池5のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係を示す軌跡Ybを算出する。図10の一例では、軌跡Yaの凸の形状の頂部において、SOC値は0.6(60%)であり、0.6が、第1の期間において第1の電極の電荷移動抵抗が最低になる基準SOC値として算出される。また、軌跡Ybの凸の形状の頂部において、SOC値は0.5(50%)であり、0.5が、第1の期間において第1の電極の電荷移動抵抗が最低になる基準SOC値として算出される。
前述のように第1の期間及び第2の期間のそれぞれについて第1の電極の電荷移動抵抗が最低になる基準SOC値が算出されるため、図10の一例では、基準SOC値が、第1の期間に比べて第2の期間で10%(0.1)程度低いことが、算出される。このため、第2の期間での第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係が、第1の期間での第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係に対して、電池5のSOC値が互いに対して同一の条件下で比較して高電位側に、電池5のSOC換算で10%程度ずれていることが、処理回路21によって算出される。したがって、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係について過去のある期間(第1の期間)でのデータとリアルタイム(第2の期間)でのデータとを比較することで、第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係について、過去のある期間からの変化が算出される。
図11は、実施形態において診断装置3の処理回路21が診断プログラム28を実行することによって行われる処理の一例を概略的に示すフローチャートである。図11では、電池5の診断における処理が示され、図11の処理は、電池5の診断の度に行われる。図11の処理を開始すると、処理回路21は、複数のSOC値のそれぞれについて、前述のようにして第1の周波数での電池5のインピーダンスである第1のインピーダンスを計測する(S101)。この際、交流電流又は前述の重畳電流を第1の周波数で電池5に入力し、計測対象となる複数のSOC値のそれぞれについて、電池5の第1のインピーダンスを計測する。そして、処理回路21は、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値のそれぞれについて、電池5のSOCに対する第1のインピーダンスの変化率βを前述のようにして算出する(S102)。
そして、処理回路21は、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値の中で、変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になるSOC値を対象SOC値に設定する(S103)。この際、基準値βrefは、前述した例のいずれかと同様にして設定される。また、S103では、複数のSOC値の中で30%以上かつ70%以下の範囲のSOC値を、変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になる対象SOC値であると判定されてもよい。そして、処理回路は、対象SOC値と設定されたSOC値のそれぞれで、第1の周波数より高い第2の周波数での電池5のインピーダンスである第2のインピーダンスを、第1のインピーダンスに加えて計測する(S104)。この際、交流電流又は前述の重畳電流を第2の周波数で電池5に入力し、対象SOC値のそれぞれについて、電池5の第2のインピーダンスを計測する。
そして、処理回路21は、対象SOC値のそれぞれについて、第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスに基づいて、第1の電極の電荷移動抵抗を第1の電極に関する抵抗として算出する(S105)。この際、前述のように第1の電極の電荷移動抵抗を電気特性パラメータとする等価回路モデルを用いてフィッティング計算を行うことにより、対象SOC値のそれぞれについて、第1の電極の電荷移動抵抗を算出する。そして、処理回路21は、対象SOC値のそれぞれでの第1の電極の電荷移動抵抗の算出結果から、前述のようにして、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとのリアルタイムにおける関係、及び、第1の電極の電荷移動抵抗が最小となるSOC値である基準SOC値を算出する(S106)。
そして、処理回路21は、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係についての算出結果に基づいて、前述のようにして、電池5のSOCと第1の電極の電位とのリアルタイムにおける関係を算出し、第1の電極のリアルタイムにおける利用可能な電位範囲を算出する(S107)。そして、処理回路21は、電池5のSOCと第1の電極の電位との関係についての算出結果、及び、電池5の電圧についての計測結果等に基づいて、前述のようにして、電池5のSOCと第2の電極の電位とのリアルタイムにおける関係を算出し、第2の電極のリアルタイムにおける利用可能な電位範囲を算出する(S108)。
そして、処理回路21は、第1の電極の電荷移動抵抗と電池5のSOCとの関係、第1の電荷移動抵抗が最小となる基準SOC値、第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係、及び、第2の電極の電位と電池5のSOCとの関係のいずれかについて、過去(第1の期間)のデータとリアルタイム(第2の期間)でのデータとを比較する。そして、処理回路は、過去のデータとの比較に基づいて、演算及び電池の状態の判定等を行う(S109)。この際、例えば、第1の電荷移動抵抗が最小となる基準SOC値に基づいて、過去のある期間からの電池5の状態の変化として、例えば、第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係について、過去のある期間からの変化が算出される。
前述のように、実施形態では、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値のそれぞれについて、電池5のSOCに対する第1のインピーダンスの変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になるか否かが、判定される。そして、複数のSOC値の中で変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下になる対象SOC値について、第2のインピーダンスを計測し、対象SOC値における第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、電池5の状態に関して判定する。前述のようにインピーダンスの周波数特性の計測が行われるため、高い周波数でのインピーダンスである第2のインピーダンスを計測するSOC値の数が、減少する。高い周波数でのインピーダンスの計測対象となるSOC値の数が減少することにより、電池5の状態の判定に用いるデータ量の増大が、抑制される。
電池5の状態の判定に用いるデータ量の増大が抑制されることにより、電池搭載機器2と診断装置3との間での通信容量の増大も適切に抑制される。また、電池搭載機器2の制御回路6及び診断装置3の処理回路21のそれぞれにおいて処理されるデータ量の増大が適切に抑制され、電池搭載機器2及び診断装置3のそれぞれのプロセッサ等への負荷の増大が適切に抑制される。また、診断装置3によって管理が必要となるデータ量の増大も、適切に抑制される。さらに、電池5の状態の判定に用いるデータ量の増大が抑制されることにより、データの解析に要する時間が短縮され、電池5の診断における処理に要する時間が短縮される。
また、実施形態では、複数のSOC値のそれぞれについて、SOCに対する第1のインピーダンスの変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下であることに基づいて、第2のインピーダンスを計測する対象となる対象SOC値であると、判定される。前述のようにして第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの両方を計測する対象SOC値が決定されるため、決定された対象SOC値のそれぞれでの第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、前述のように、電池5のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係、及び、第1の電極の電荷移動抵抗が最小となる基準SOC値等が適切に算出される。そして、電池5のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係についての算出結果に基づいて、第1の電極及び第2の電極のそれぞれの電位と電池5のSOCとの関係が適切に算出される。
したがって、実施形態では、高い周波数でのインピーダンスを計測するSOC値の数を減少させても、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて、電池5のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係等を含むリアルタイムにおける電池5の状態が適切に判定される。すなわち、実施形態では、電池5の状態の判定に用いるデータ量の増大が抑制するとともに、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて適切に電池5の状態が判定される。
また、実施形態のある一例では、最低SOC値での変化率βLの絶対値|βL|の半分値、又は、最高SOC値での変化率βHの絶対値|βH|の半分値を基準値βrefとして、複数のSOC値のそれぞれについて、変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下であるか否かが判定される。このため、例えば、30%以上かつ70%以下のSOC範囲等の、第1の電極の電荷移動抵抗が最小になる基準SOC値が存在し得るSOC範囲に含まれるSOC値については、第2のインピーダンスが計測される。
これにより、対象SOC値のそれぞれでの第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、電池5のSOCと第1の電極の電荷移動抵抗との関係、及び、第1の電極の電荷移動抵抗が最小となる基準SOC値が、さらに適切に算出される。したがって、基準SOC値の算出結果等に基づいて、第1の電極の電位と電池5のSOCとの関係等を含む電池5の状態について、使用開始時等の過去のある期間からの変化がさらに適切に算出される。これにより、電池5の状態に関する判定が、さらに適切に行われる。
(実施形態に関連する検証)
また、前述した実施形態に関連する検証として、以下の検証を行った。検証では、正極が、単一相反応するリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を正極活物質として含む第1の電極となり、かつ、負極が、二相共存反応するチタン酸リチウムを負極活物質として含む第2の電極となる電池について、診断を行った。0(0%)を最も低い最低SOC値とし、かつ、1(100%)を最も高い最高SOC値として、電池のSOC換算で0.1(10%)の間隔で、電池のインピーダンスの周波数特性を計測した。すなわち、11個のSOC値のそれぞれについて、電池のインピーダンスの周波数特性を計測した。11個のSOC値のそれぞれについては、互いに対して異なる複数の周波数でインピーダンスを計測し、インピーダンスの周波数特性を計測した。
また、検証では、11個のSOC値のそれぞれについて、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて、第1の電極である正極の電荷移動抵抗を算出した。正極の電荷移動抵抗は、実施形態等で前述したように、正極の電荷移動抵抗を電気特性パラメータとする等価回路モデルを用いてフィッティング計算を行うことにより、算出した。また、検証では、横軸を電池のSOCとし、かつ、縦軸を正極の電荷移動抵抗とするグラフにおいて、11個のSOC値のそれぞれでの正極の電荷移動抵抗を示す点をプロットした。そして、プロットした点を用いて、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡となる曲線を算出した。正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡は、演算パターンγ0,γ1,γ2の3つの演算パターンのそれぞれで、算出した。
図12は、実施形態に関連する検証において、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡を算出した3つの演算パターンγ0~γ2を説明する概略図である。図12では、横軸が電池のSOCを示し、縦軸が正極の電荷移動抵抗を示す。また、図12では、インピーダンスの周波数特性を計測した11個のSOC値について、正極の電荷移動抵抗が、点P0,P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8,P9,P10としてプロットされる。
演算パターンγ0では、11個のSOC値の中で30%以上かつ70%以下の範囲の5つのSOC値での正極の電荷移動抵抗のみを用いて、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡を算出した。この際、5つの点P3~P7に二次関数をフィッティングするフィッティング計算によって、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡となる曲線Y0を算出した。したがって、演算パターンγ0では、前述した実施形態等のある一例と同様に、30%以上かつ70%以下の範囲のSOC値での正極の電荷移動抵抗のみを用いて、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を算出した。なお、図12では、曲線Y0を実線で示す。
また、演算パターンγ1では、前述した実施形態等とは異なり、11個のSOC値での正極の電荷移動抵抗の全てを用いて、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡を算出した。この際、11個の点P0~P10に二次関数をフィッティングするフィッティング計算によって、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡となる曲線Y0を算出した。また、演算パターンγ2では、前述した実施形態等とは異なり、11個のSOC値の中で0,0.2,0.4,0.6,0.8,1の6つのSOC値での正極の電荷移動抵抗のみを用いて、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡を算出した。この際、6つの点P0,P2,P4,P6,P8,P10に二次関数をフィッティングするフィッティング計算によって、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡となる曲線Y2を算出した。なお、図12では、曲線Y1を破線で示し、曲線Y2を一点鎖線で示す。
前述のように演算パターンγ0~γ2のそれぞれによって正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係を示す軌跡を算出することにより、演算パターンγ0,γ2のそれぞれでは、演算パターンγ1に比べて、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係の算出に用いるデータ量が低減された。また、演算パターンγ0で軌跡とした算出した曲線Y0では、正極の電荷移動抵抗が最小になる基準SOC値が存在し得るSOC範囲において、すなわち、30%以上かつ70%以下のSOC範囲において、演算パターンγ1で算出した曲線Y1に対するずれが、演算パターンγ2で算出した曲線Y2に比べて小さくなった。すなわち、演算パターンγ0,γ2では、正極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係の算出に用いるデータ量が、演算パターンγ1に比べて低減されるが、30%以上かつ70%以下のSOC範囲において、演算パターンγ0で算出した曲線Y0は、演算パターンγ2で算出した曲線Y2に比べて、演算パターンγ1で算出した曲線Y1に近い値となった。
以上の検証から、実施形態等のように第1のインピーダンスの変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下となる対象SOC値でのみ第2のインピーダンスを計測し、かつ、対象SOC値での第1の電極の電荷移動抵抗のみを用いても、第1の電極の電荷移動抵抗が最小となる基準SOC値、及び、第1の電極の電荷移動抵抗と電池のSOCとの関係等が、適切に算出されることが実証された。したがって、第1のインピーダンスの変化率βの絶対値|β|が基準値βref以下となる対象SOC値でのみ第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスを計測し、対象SOC値での第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果を用いて電池の状態等について判定することにより、電池の状態の判定に用いるデータ量の増大が抑制、及び、電池の状態についての判定での精度の向上が両立されることが、実証された。
前述の少なくとも一つの実施形態又は実施例では、第1のインピーダンスを計測した複数のSOC値のそれぞれについて、SOCに対する第1のインピーダンスの変化率の絶対値が基準値以下になるか否かが、判定される。そして、変化率の絶対値が基準値以下になる対象SOC値について、第2のインピーダンスを計測し、対象SOC値における第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、電池の状態に関して判定する。これにより、電池の状態の判定に用いるデータ量の増大が抑制され、インピーダンスの周波数特性の計測結果に基づいて適切に電池の状態が判定される電池の診断方法、診断装置、診断システム及び診断プログラムを提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、SOC値や周波数の範囲を表す際に使用した「以下」や「以上」との用語は、「未満」、「より小さい」や「より大きい」との用語に適宜置き換えることができる。
1…診断システム、2…電池搭載機器、3…診断装置、5…電池、6…制御回路、10…計測ユニット、21…処理回路、22…記憶媒体、28…診断プログラム、31…インピーダンス計測プログラム、32…変化率判定プログラム、33…抵抗演算プログラム、35…状態判定プログラム、β…変化率、βref…基準値。

Claims (14)

  1. 第1の周波数での電池のインピーダンスである第1のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記電池の複数のSOC値のそれぞれについて、前記電池のSOCに対する前記第1のインピーダンスの変化率の絶対値が基準値以下になるか否かを判定することと、
    前記複数のSOC値の中で前記変化率の前記絶対値が前記基準値以下になる対象SOC値について、前記第1の周波数より高い第2の周波数での前記電池の前記インピーダンスである第2のインピーダンスを、前記第1のインピーダンスに加えて計測することと、
    前記対象SOC値における前記第1のインピーダンス及び前記第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記電池の状態に関して判定することと、
    を具備する、電池の診断方法。
  2. 前記変化率の前記絶対値が前記基準値以下になるか否かの判定では、前記複数のSOC値の中で最も低い最低SOC値での前記変化率の前記絶対値の半分値、又は、前記複数のSOC値の中で最も高い最高SOC値での前記変化率の前記絶対値の半分値を前記基準値として、前記複数のSOC値のそれぞれについて判定する、請求項1の診断方法。
  3. 前記変化率の前記絶対値が前記基準値以下になるか否かの判定では、前記複数のSOC値の中で30%以上かつ70%以下の範囲のSOC値を、前記絶対値が前記基準値以下になる前記対象SOC値であると判定する、請求項1の診断方法。
  4. 前記電池の状態に関する判定において、前記絶対値が前記基準値以下になる前記対象SOC値について、前記第1のインピーダンス及び前記第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、正極及び負極の一方である第1の電極に関する抵抗を算出する、請求項1の診断方法。
  5. 前記変化率の前記絶対値が前記基準値以下になるか否かの判定では、前記複数のSOC値の中の2つ以上を、前記絶対値が前記基準値以下になる前記対象SOC値であると判定し、
    前記電池の状態に関する前記判定において、2つ以上の前記対象SOC値のそれぞれについて、前記第1の電極に関する前記抵抗を算出し、前記第1の電極に関する前記抵抗と前記電池の前記SOCとの関係を算出する、
    請求項4の診断方法。
  6. 前記電池の状態に関する前記判定において、前記第1の電極に関する前記抵抗と前記電池の前記SOCとの前記関係に基づいて、前記第1の電極に関する前記抵抗が最小となるSOC値を、基準SOC値として算出する、請求項5の診断方法。
  7. 前記変化率の前記絶対値が前記基準値以下になるか否かの前記判定、前記対象SOC値についての前記第2のインピーダンスの計測、及び、前記電池の状態に関する前記判定のそれぞれは、第1の期間、及び、第1の期間より後の第2の期間のそれぞれにおいて行われ、
    前記第2の期間における前記電池の状態に関する前記判定では、前記第1の電極に関する前記抵抗が最小となる前記基準SOC値を前記第1の期間と前記第2の期間とで比較することにより、前記第1の電極の劣化状態について判定する、
    請求項6の診断方法。
  8. 前記電池の状態に関する前記判定において、前記第1の電極に関する前記抵抗と前記電池の前記SOCとの前記関係に基づいて、前記第1の電極の電位と前記電池の前記SOCとの関係を算出し、前記第1の電極の前記電位と前記電池の前記SOCとの前記関係に基づいて、前記第1の電極の利用可能な電位範囲を算出する、請求項5の診断方法。
  9. 前記電池の状態に関する前記判定において、前記第1の電極の前記電位と前記電池の前記SOCとの前記関係に基づいて、前記正極及び前記負極の前記第1の電極とは極性が反対の一方である第2の電極の電位と前記電池の前記SOCとの関係を算出し、前記第2の電極の利用可能な電位範囲を算出する、請求項8の診断方法。
  10. 前記第1の周波数で交流電流の電流波形を直流電流の基準電流軌跡に重畳した重畳電流を前記電池に入力することにより、前記複数のSOC値のそれぞれにおいて前記第1のインピーダンスを計測することをさらに具備し、
    前記第2のインピーダンスの計測では、前記第2の周波数で交流電流の電流波形を前記基準電流軌跡に重畳した重畳電流を前記電池に入力することにより、前記対象SOC値において前記第2のインピーダンスを計測する、
    請求項1の診断方法。
  11. 第1の周波数での電池のインピーダンスである第1のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記電池の複数のSOC値のそれぞれについて、前記電池のSOCに対する前記第1のインピーダンスの変化率の絶対値が基準値以下になるか否かを判定し、
    前記複数のSOC値の中で前記変化率の前記絶対値が前記基準値以下になる対象SOC値について、前記第1の周波数より高い第2の周波数での前記電池の前記インピーダンスである第2のインピーダンスを、前記第1のインピーダンスに加えて計測し、
    前記対象SOC値における前記第1のインピーダンス及び前記第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記電池の状態に関して判定する、
    プロセッサを具備する、診断装置。
  12. 請求項11の診断装置と、
    前記診断装置によって診断される前記電池と、
    を具備する前記電池の診断システム。
  13. 前記電池は、正極及び負極の一方である第1の電極と、前記正極及び前記負極の前記第1の電極とは極性が反対の一方である第2の電極と、を備え、
    前記第1の電極は、単一相反応する第1の電極活物質を含み、
    前記第2の電極は、二相共存反応する第2の電極活物質を含む、
    請求項12の診断システム。
  14. コンピュータに、
    第1の周波数での電池のインピーダンスである第1のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記電池の複数のSOC値のそれぞれについて、前記電池のSOCに対する前記第1のインピーダンスの変化率の絶対値が基準値以下になるか否かを判定させ、
    前記複数のSOC値の中で前記変化率の前記絶対値が前記基準値以下になる対象SOC値について、前記第1の周波数より高い第2の周波数での前記電池の前記インピーダンスである第2のインピーダンスを、前記第1のインピーダンスに加えて計測させ、
    前記対象SOC値における前記第1のインピーダンス及び前記第2のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記電池の状態に関して判定させる、
    電池の診断プログラム。
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