JP2024007543A - p-クレゾール生成抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】シトラールの劣化により生じるp-クレゾールの生成を抑制するために、安全に使用できる添加剤、及び、当該添加剤を用いて、シトラールを含有する組成物の風味劣化を抑制する方法の提供。【解決手段】分岐グルカン又はその還元物を有効成分とすることを特徴とする、p-クレゾール生成抑制剤、前記分岐グルカンが、α-1,6-グルコシド結合からなる分岐構造を有するグルカンである、前記p-クレゾール生成抑制剤、前記分岐グルカンが、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状構造を有する、前記p-クレゾール生成抑制剤、及び、シトラールを含有する組成物の風味劣化を抑制する方法であって、前記いずれかのp-クレゾール生成抑制剤を、シトラールを含有する組成物に含有させることを特徴とする、シトラール含有組成物の風味劣化抑制方法。【選択図】なし

Description

本発明は、シトラール劣化により生じるp-クレゾールの生成を抑制するための抑制剤、及び当該p-クレゾール生成抑制剤を用いて、シトラールを含有する組成物の風味劣化を抑制する方法に関する。
レモン等の柑橘類に含まれるシトラール(CAS No.: 5392-40-5)は、シトラス様のフレッシュな香りを与える芳香成分であり、レモンなどの柑橘類の果実のような風味を備えた飲食品において、その嗜好性を高めるために重要な香気成分である。一方で、シトラールは、酸や熱によって劣化反応を起こし、好ましくない臭い(オフフレーバー)を発生することが知られている。なかでも、レモン風味飲料等の柑橘風味飲料においては、酸性条件であることやオフフレーバーが風味に影響を与えやすいこと、さらに加温状態で保存あるいは提供される場合もあることから、特にシトラールの劣化がその商品価値に与える影響が大きい。
シトラールの劣化により生じるオフフレーバーの原因成分としては、p-シメン(p-cymene、CAS No.: 99-87-6)、p-シメン-8-オール(p-cymen-8-ol、CAS No.: 1197-01-9)、α,p-ジメチルスチレン(α,p-dimethylstyrene、CAS No.: 1195-32-0)、p-クレゾール(p-cresol、CAS No.: 106-44-5)、及びp-メチルアセトフェノン(p-methylacetophenone、CAS No.: 122-00-9)が知られている(非特許文献1参照)。これらの成分のうち、p-クレゾールとp-メチルアセトフェノンが、最も問題となるオフフレーバーの原因成分である。p-シメン、p-シメン-8-オール、及びα,p-ジメチルスチレンは、香気の質が、シトラス様香気からさほど大きく外れておらず、また、閾値も比較的高い。一方で、p-クレゾールは薬品様、フェノール様と言われ、非常に不快な香気であり、かつ閾値も非常に低い。p-メチルアセトフェノンは、シトラールの香りとは異なり、アーモンド様の香気を含む一方、花のような甘い香りを特徴とするフローラルな香気が含まれる。そのため、p-クレゾールの方が、柑橘風味の飲食品に含まれていると異味となりやすい。
シトラールの劣化により生じるオフフレーバーに関しては、種々の改善方法が検討されている。例えば、特許文献1には、シトラールを含有している柑橘系フレーバー組成物に茶ポリフェノールを配合することによって、シトラール劣化によるp-メチルアセトフェノンの生成を抑制し、香味劣化を抑制できることが開示されている。また、特許文献2には、シトラール含有飲食品にヒノキチオールを配合することによって、シトラール劣化によるp-シメンの生成を抑制できることが開示されている。さらに、特許文献3には、シコウカ抽出物等を配合することによって、シトラールの熱劣化によるp-メチルアセトフェノンの生成を抑制できることが開示されている。
一方で、糖組成物による、飲食品の不快臭を低減させる方法が開示されている。例えば、特許文献4には、グルコースを構成糖とした直鎖状又は分岐鎖状の三糖類並びにその還元物を飲食品に配合することにより、飲食品における多種多様な不快臭、例えば、穀物臭、酸臭、青臭さ、ビタミン臭、魚臭、アルコール臭、加熱臭、容器臭などを低減できることが開示されている。また、特許文献5には、容器に入れて加熱処理する飲食物に、パノースを含む糖組成物を使用することにより、加熱処理下での香気成分(匂い成分)の分解を抑制でき、これにより飲食物本来の風味の消失や変質を抑制できることが開示されている。
特開2003-96486号公報 特開2020-99245号公報 特開2020-94182号公報 特開2005-137362号公報 特開2013-198435号公報
Weerawatanakorn, et al., Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2015, vol.23 , p.176-190.
特許文献1~3で使用されている添加成分は、いずれも特有の風味を有しているため、配合量によっては、飲食品の風味に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、特許文献5に開示されている糖組成物は、香気成分の分解を抑制できるものであり、オフフレーバー成分の生成を抑制する記載はない。
本発明は、シトラールの劣化により生じるオフフレーバー成分のうち、特に嗜好性に対する影響が大きいp-クレゾールの生成を抑制するために、安全に使用できる添加剤、及び、当該添加剤を用いて、シトラールを含有する組成物の風味劣化を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分岐グルカン又はその還元物を、シトラールを含有する飲食品に添加することによって、シトラール劣化によるp-クレゾールの生成を抑制することができ、これにより当該飲食品の風味劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤、及び、シトラール含有組成物の風味劣化抑制方法は下記の通りである。
[1] 分岐グルカン又はその還元物を有効成分とすることを特徴とする、p-クレゾール生成抑制剤。
[2] 前記分岐グルカンが、α-1,6-グルコシド結合からなる分岐構造を有するグルカンである、前記[1]のp-クレゾール生成抑制剤。
[3] 前記分岐グルカンが、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状構造を有する、前記[1]又は[2]のp-クレゾール生成抑制剤。
[4] 前記分岐グルカンが、パノース、イソパノース、6-α-D-グルコシル-マルトトリオース、及びこれらの還元物からなる群より選択される一種以上である、前記[1]~[3]のいずれかのp-クレゾール生成抑制剤。
[5] 前記分岐グルカン又はその還元物を含有する糖組成物を含有する、前記[1]~[4]のいずれかのp-クレゾール生成抑制剤。
[6] 前記分岐グルカン又はその還元物を含有する糖組成物を含有し、
前記糖組成物のヨード呈色試験における波長660nmの吸光度(ヨード呈色値)が、0.20以下である、前記[1]~[4]のいずれかのp-クレゾール生成抑制剤。
[7] シトラールを含有する組成物の風味劣化を抑制する方法であって、
前記[1]~[6]のいずれかのp-クレゾール生成抑制剤を、シトラールを含有する組成物に含有させることを特徴とする、シトラール含有組成物の風味劣化抑制方法。
[8] 前記シトラール含有組成物が、柑橘風味を有する、前記[7]のシトラール含有組成物の風味劣化抑制方法。
[9] 前記シトラール含有組成物が、飲食品である、前記[7]又は[8]のシトラール含有組成物の風味劣化抑制方法。
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤を、シトラールを含有する飲食品等に添加させることによって、風味劣化が抑制された飲食品等を製造することができる。特に、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤は、分岐グルカン又はその還元物を有効成分とするため、飲食品をはじめとする各種製品に対して安全に使用することができる。
シトラールを含有する水溶液中に含まれる分岐グルカンの重合度ごとのp-クレゾール生成量を示すグラフである。
本発明及び本願明細書において、「直鎖状グルカン」とは、単一のグルコシド結合によりグルコース分子が結合して構成された直鎖状のグルカンを意味する。本発明及び本願明細書において、「分岐グルカン」とは、2種類以上のグルコシド結合によりグルコース分子が結合して構成されたグルカンを意味する。直鎖状グルカン及び分岐グルカンを構成するグルコシド結合としては、α-1,4-グルコシド結合、α-1,6-グルコシド結合、α-1,3-グルコシド結合、α-1,2-グルコシド結合、α-1,1-グルコシド結合、β-1,4-グルコシド結合、β-1,6-グルコシド結合、β-1,3-グルコシド結合、β-1,2-グルコシド結合、β-1,1-グルコシド結合等が挙げられる。分岐グルカン及びその還元物としては、具体的には、パノース、イソパノース、6-α-D-グルコシル-マルトトリオース、パニトール(還元パノース)、ニゲロシルグルコース、ニゲロシルマルトース、マルトシルトレハロース、3-β-D-グルコシル-セロビオース、3-β-D-セロビオシルグルコース、3-β-D-セロトリオシルグルコース、β-D-グルコピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコースなどが挙げられる。
本発明及び本願明細書において、「還元末端」とは、還元性を示す糖残基を意味し、「非還元末端」とは、還元性を示さない糖残基、すなわち「還元末端」以外の末端糖残基を意味する。
本発明及び本願明細書において、「重合度」(DP)とは、グルカンを構成するグルコース残基の個数を指し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。分岐糖類の重合度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定することができる。
本発明及び本願明細書において、「分岐グルカンの還元物」とは、分岐グルカンの還元末端のグルコシル基のアルデヒド基が還元され、水酸基となっているものをいう。糖の還元物を得る方法は当業者に周知であり、これらの周知の方法を使用して、分岐グルカンの還元物を得ることができる。分岐グルカンの還元物を得るために使用可能な還元方法を例示すれば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が挙げられる。本発明において用いられる分岐グルカンの還元物を調製する方法としては、少量の還元物を調製する場合には、ヒドリド還元剤を用いる方法が簡便且つ特殊な装置を必要とせず便利であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。なお、本発明及び本願明細書において、特に記載のない限り、「分岐グルカン」や「糖組成物」という場合には、それぞれ、分岐グルカンの還元物を含むものとする。
<p-クレゾール生成抑制剤>
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤は、分岐グルカン又はその還元物を有効成分とすることを特徴とする。本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤の有効成分とする分岐グルカン(以降において、「本発明の分岐グルカン」ということがある)としては、直鎖状構造がα-グルコシド結合により構成されており、当該直鎖状構造を構成する少なくとも1個のグルコース単位に分岐構造が導入されている分岐グルカンが好ましく、直鎖状構造がα-1,4-グルコシド結合により構成されており、当該直鎖状構造を構成する少なくとも1個のグルコース単位に分岐構造が導入されている分岐グルカンがより好ましい。α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状構造に導入される分岐構造を構成するグルコシド結合としては、α-1,4-グルコシド結合以外のグルコシド結合であれば特に限定されるものではなく、例えば、α-1,6-グルコシド結合、α-1,3-グルコシド結合、α-1,2-グルコシド結合、α-1,1-グルコシド結合等が挙げられる。
本発明の分岐グルカンにおいて、一分子中に存在する分岐構造の個数は、p-クレゾール生成抑制効果が消失しない限りにおいて、特に限定されない。本発明の分岐グルカンが有する分岐構造の数としては、好ましくは1~数個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1~2個又は1個である。本発明の分岐グルカンが一分子中に2個以上の分岐構造を有する場合、一分子中に2種類以上のグルコシド結合からなる分岐構造が存在していてもよく、一分子中に存在する全ての分岐構造が同種のグルコシド結合からなっていてもよい。
本発明の分岐グルカンとしては、特に、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状構造と、一分子中に存在する分岐構造のうちの少なくとも1個がα-1,6-グルコシド結合からなるグルカン及びその還元物が好ましく、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状構造と、一分子中に存在する全ての分岐構造がα-1,6-グルコシド結合からなるグルカン及びその還元物がより好ましい。本発明の分岐グルカンとしては、例えば、パノース(Glc-α-1,6-Glc-α-1,4-Glc)、イソパノース(Glc-α-1,4-Glc-α-1,6-Glc)、6-α-D-グルコシル-マルトトリオース(Glc-α-1,6-Glc-α-1,4-Glc-α-1,4-Glc)、及びこれらの還元物が挙げられる。その他、本発明の分岐グルカンとしては、重合度が5以上、好ましくは重合度が5又は6であり、α-1,4-グルコシド結合により構成される直鎖状構造と、α-1,6-グルコシド結合の分岐構造を少なくとも1個有するグルカン及びその還元物であることも好ましい。しかしながら、実施例6で詳述するように、分岐グルカンは重合度に拘わらず、p-クレゾールの生成抑制能を有するため、分岐グルカンの重合度はとくに限定されるものではない。
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤に含まれている本発明の分岐グルカンは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。例えば、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤は、パノース、イソパノース、6-α-D-グルコシル-マルトトリオース、及びこれらの還元物からなる群のうち、1種類のみを含有していてもよく、当該群より選択される2種類以上を含有していてもよい。
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤は、本発明の分岐グルカンのみからなるものであってもよく、また、本発明の分岐グルカンによるp-クレゾール生成抑制効果が消失しない限りにおいて、その他の成分を含有していてもよい。例えば、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤が、本発明の分岐グルカンを、精製品として含有している場合、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤の全固形分量に対する本発明の分岐グルカンの含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上であることがよりさらに好ましく、50質量%以上であることがよりさらに好ましく、90質量%以上であってもよい。
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤は、本発明の分岐グルカンを、当該分岐グルカンを含む糖組成物(糖混合物)として含有していてもよい。本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤に含有させる糖組成物としては、当該糖組成物の全固形分量に対する本発明の分岐グルカンの含有量(固形分換算の含有割合)が、5質量%以上のものが好ましく、10質量%以上のものがより好ましく、20質量%以上のものであることがさらに好ましく、30質量%以上のものであることがよりさらに好ましく、50質量%以上のものであることが特に好ましい。
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤に含有させる糖組成物としては、本発明の分岐グルカンを含有しており、かつ、当該糖組成物のヨード呈色値が、0.20以下であるものが好ましい。中でも、当該糖組成物のヨード呈色値は、0.15以下であることが好ましく、0.12以下であることがより好ましく、0.10以下であることがよりさらに好ましく、0.05以下であることが特に好ましい。特に、当該糖組成物のヨード呈色値は、0.05以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることがさらに好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。
本発明及び本願明細書において、「ヨード呈色値」とは、ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度、すなわち、5.0質量%(固形分濃度)の糖組成物水溶液1mLに0.05M ヨウ素水溶液100μLを加え、よく撹拌した後の波長660nmの吸光度をいう。ヨウ素は、直鎖状のグルカン鎖のらせん構造内に包接されることによって呈色を示す。つまり、ヨード呈色値は、グルカン中の直鎖構造の量の指標である。糖組成物のヨード呈色値が小さいほど、当該糖組成物中に含まれている比較的長鎖の直鎖構造が少ないことを示す。
直鎖状のグルカン鎖のらせん構造内には、ヨウ素以外にも様々な風味成分が包接されることがある。このため、ヨード呈色値は、各種の風味成分に対するマスキング効果の指標として用いることができる。以下の理論に拘束されるものではないが、ヨード呈色値が0.20を上回る糖組成物は、直鎖状のグルカン鎖のらせん構造が多い等の理由により、包接能が高く、各種の風味成分を包接してマスキングしてしまう。
本発明の分岐グルカン及びこれを含有する糖組成物は、天然物から精製されたものであってもよく、また、直鎖状グルカンから、分岐グルカンの製造に用いられる周知の手法に従って製造することができる。
本発明の分岐グルカン及びこれを含有する糖組成物は、その製造方法に特に制限はないが、澱粉分解物に糖転移酵素を作用させることで安価かつ効率的に製造可能である。具体的には、澱粉分解物の5~50%溶液に糖転移酵素を添加し、使用酵素に応じた好適なpH、温度で反応させる。反応は通常、pH4~9の範囲で実施することができ、好適な反応pHは、pH5~7の範囲である。反応は通常、70℃付近までの温度範囲で実施することができ、好適な反応温度は、40~60℃の範囲である。酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜反応時間を調節することができ、通常は15~96時間程度反応させる。目的組成物の生成を確認後、必要に応じてろ過、脱塩、脱色等の精製を行い、製品形態に応じて濃縮又は粉末化してもよい。
ここで、糖転移作用を有する酵素は、例えば、α-グルコシダーゼ、6-α-グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼ、及び環状マルトシルマルトース生成酵素から選択することができる。α-グルコシダーゼは、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアクレモニウム・スピーシーズ(Acremonium sp.)由来のものを使用することができる。
糖転移作用を有する酵素としてα-グルコシダーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるα-グルコシダーゼの添加量は、反応効率及び製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.01~30単位とすることができる。ここで、α-グルコシダーゼ1単位とは後述するα-グルコシダーゼの活性測定方法の条件下において、1分間に1μmolのマルトースを加水分解するのに必要な酵素量をいう。
本発明の分岐グルカン及びこれを含有する糖組成物はまた、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素とを組み合わせて澱粉分解物に作用させることによって、より効率的に製造することができる。前記アミラーゼとしては、例えば、シクロデキストリン生成酵素やα-アミラーゼが挙げられる。
ここで、シクロデキストリン生成酵素は、パエニバチルス・スピーシーズ (Paenibacillus sp.)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、及びバチルス・マゼランス(Bacillus macerans)に由来のものの中から選択することができる。また、α-アミラーゼは、市販のα-アミラーゼであるクライスターゼL-1及びクライスターゼT-5(いずれも天野エンザイム)の中から選択することができる。
アミラーゼとしてシクロデキストリン生成酵素を使用する場合、前記酵素反応に用いられるシクロデキストリン生成酵素の添加量は、反応効率及び製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.1~10単位とすることができる。ここで、シクロデキストリン生成酵素1単位とは、後述するシクロデキストリン生成酵素の活性測定方法の条件下において、1分間に1mgのβ-シクロデキストリンを生成するのに必要な酵素量をいう。
アミラーゼとしてα-アミラーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるα-アミラーゼの添加量は、反応性及び製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.0005~0.1質量%とすることができる。
本発明の分岐グルカン及びこれを含有する糖組成物はさらに、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素に加えて、枝切り酵素をさらに組み合わせて澱粉分解物に作用させることによって製造することができる。枝切り酵素は、アミラーゼ及び糖転移作用を有する酵素と一緒に、澱粉分解物に作用させることが好ましい。
ここで、枝切り酵素は、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択して使用することができ、より好ましい態様では、マイロイデス・オドラータス(Myroides odoratus)由来イソアミラーゼ、シュードモナス・アミロデラモサ(Pseudomonas amyloderamosa)由来イソアミラーゼ、及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)由来プルラナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
枝切り酵素としてイソアミラーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるイソアミラーゼの添加量は、反応効率及び製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり10~1000単位とすることができる。前記製造方法の酵素反応に用いられる枝切り酵素のうちプルラナーゼの添加量は、反応性及び製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.001~0.1質量%とすることができる。ここで、イソアミラーゼ1単位とは、後述するイソアミラーゼの活性測定方法の条件下において、610nmの吸光度を0.01増加させる酵素力価である。
澱粉又はその分解物に対して各種酵素処理を行うことによって本願発明の分岐グルカンを調製する際には、使用する酵素の種類や組み合わせ、使用量、使用温度、使用時間等は、得られる酵素処理物の全固形分量に占める本願発明の分岐グルカンの量が所望の含有割合になるように、適宜調整することもできる。例えば、α-アミラーゼ等による処理時間を長くする等により、高重合度のグルカンの量を十分に低減させて、ヨード呈色値が0.20以下の酵素処理物を得ることができる。
酵素処理によって得られた本発明の分岐グルカンを含む糖組成物は、必要に応じて、分画処理を行ってもよい。酵素処理後の糖組成物を分画処理することにより、当該糖組成物に含まれる所望の重合度の分岐グルカンの含有割合を高めたり、平均重合度を所望の範囲内に調整することもできる。また、酵素処理後の糖組成物から高重合度の画分を除去することによって、当該糖組成物の前記ヨード呈色値を0.20以下とすることができる。前記の分画処理を行う方法に特に制限は無く、膜分画、クロマト分画、沈殿分画等を例示することができる。
<シトラール含有組成物の風味劣化抑制方法>
本発明に係るシトラール含有組成物の風味劣化抑制方法(以下、「本発明に係る風味劣化抑制方法」ということがある)は、シトラールを含有する組成物の風味劣化を抑制する方法であって、前記の本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤を、シトラールを含有する組成物に含有させることを特徴とする。本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤は、シトラールと共存させるだけで、シトラール劣化により生成されるp-クレゾールを顕著に低減させることができる。このため、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤をシトラール含有組成物に配合させることによって、当該p-クレゾール生成抑制剤を配合させていないシトラール含有組成物に比べて、経時的に増加するp-クレゾール量を低く抑えることができ、風味劣化を抑制することができる。
シトラール含有組成物に含有させる本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤の量は、シトラール含有組成物の全質量に対する本発明の分岐グルカンの含有量の比率が、p-クレゾール生成抑制効果が奏されるために十分な濃度となる量であれば、特に限定されるものではない。例えば、シトラール含有組成物に含有させる本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤の量は、シトラール含有組成物中の本発明の分岐グルカンの濃度(シトラール含有組成物の全質量に対する、本発明の分岐グルカンの固形分換算量(質量)の割合)が、0.001質量%以上となる量が好ましく、0.005質量%となる量がより好ましく、0.01質量%となる量がさらに好ましく、0.02質量%となる量がよりさらに好ましい。より十分なp-クレゾール生成抑制作用が得られやすい点から、シトラール含有組成物に含有させる本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤の量は、シトラール含有組成物中の本発明の分岐グルカンの濃度が、0.05質量%以上となる量が好ましく、0.1質量%以上となる量がより好ましく、0.5質量%以上となる量がさらに好ましい。シトラール含有組成物に含有させる本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤の量の上限値は特に限定されるものではないが、シトラール含有組成物が本来有している粘度や呈味等に対する影響が抑えられる点から、シトラール含有組成物に含有させる本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤の量は、シトラール含有組成物中の本発明の分岐グルカンの濃度が、5.0質量%以下となる量が好ましく、3.0質量%以下となる量がより好ましく、2.0質量%以下となる量がさらに好ましく、1.0質量%以下となる量がよりさらに好ましい。
本発明に係る風味劣化抑制方法に供されるシトラール含有組成物としては、シトラール劣化による風味劣化の抑制がより強く求められていることから、柑橘類の風味を有するものが好ましく、具体的には、使用時に柑橘類の風味を感じる組成物を意味する。また、柑橘類の風味とは、具体的には、柑橘類の果実の風味を意味する。柑橘類としては、例えば、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、シトロン、マイヤーズレモン、スウィーティー、温州ミカン、夏ミカン、ポンカン、ダイダイ、ネーブル、ハッサク、キンカン、ブンタン、ユズ、ライム、カボス、スダチ、シークワーサー等が挙げられる。本発明に係る風味劣化抑制方法に供されるシトラール含有組成物としては、特に、シトラールの香味が柑橘らしさに与える影響が大きいことから、レモン風味、オレンジ風味、又はユズ風味を有するシトラール含有組成物が好ましい。
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤の有効成分は、可食性の分岐グルカンであり、各種製品に安全に添加することができる。このため、本発明に係る風味劣化抑制方法に供されるシトラール含有組成物としては、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生用品、香料組成物等の様々な製品を用いることができ、これらの製品中のシトラールの劣化によるp-クレゾールの生成を抑制することができる。
シトラール含有組成物として用いられる飲食品としては、そのまま直接摂取されるものであってもよく、水等の液体で溶解又は懸濁することにより喫食可能となる加工品であってもよく、調味料等の添加剤であってもよい。飲食品としては、例えば、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼き肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの各種調味料;せんべい、あられ、おこし、求肥、餅類、まんじゅう、ういろう、餡類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子;パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、ヨーグルト、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、ヌガー、キャンディーなどの各種洋菓子;アイスクリーム、シャーベットなどの氷菓;果実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ類;フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのペースト類;ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖果などの果実、野菜の加工食品類;福神漬け、べったら漬、千枚漬などの漬物類、たくわん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素;ハム、ソーセージなどの畜肉製品類;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、天ぷらなどの魚肉製品類;ウニ、イカの塩辛、酢コンブ、さきするめ、タラ、タイ、エビなどの田麩などの各種珍味類;海苔、山菜、するめ、小魚、貝などで製造される佃煮類;煮豆、煮魚、ポテトサラダ、コンブ巻などの惣菜食品、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜の瓶詰、缶詰類、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープなどの即席食品;冷凍食品、果汁含有飲料、果汁ジュース、野菜ジュースなどの果実・野菜飲料;サイダー、ジンジャーエールなどの炭酸飲料;アイソトニック飲料、アミノ酸飲料などのスポーツ飲料;コーヒー飲料、緑茶、紅茶などの茶系飲料;乳酸飲料、ココアなどの乳系飲料;チューハイ、清酒、果実酒などのアルコール飲料;栄養ドリンク、更には、フレーバーウォーター、離乳食、治療食、流動食、ドリンク剤、ペプチド食品などが挙げられる。これらの飲食品の製造工程におけるいずれかの時点において、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤を原料として添加することにより、本発明に係る風味劣化抑制方法を実施できる。
例えば、本発明に係る風味劣化抑制方法に供されるシトラール含有組成物が柑橘風味飲料の場合、柑橘類の風味を有する飲料であればよく、代表的なものとして柑橘果汁(例えば、レモン果汁、オレンジ果汁、ゆず果汁)を含有する飲料が挙げられるが、果汁の他に果皮(例えば、レモン果皮、オレンジ果皮、ゆず果皮)や精油(例えば、レモン精油、オレンジ精油、ゆず精油)、更には柑橘風味香料(例えば、レモン風味香料、オレンジ風味香料、ゆず風味香料)を有するものでもよい。すなわち、当該柑橘風味飲料は、無果汁飲料や柑橘由来原料を含まない飲料も含むものである。また、当該柑橘風味飲料は、果汁飲料や炭酸飲料等の清涼飲料でもよく、チューハイやカクテル等のアルコール飲料でもよく、ノンアルコールチューハイやノンアルコールカクテル等のノンアルコール飲料でもよい。
本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤は、飲食品中に添加する場合、有効成分である分岐グルカン又はその還元物が、p-クレゾール生成抑制効果を有する範囲で含まれていればよい。例えば、本発明の分岐グルカンを、糖組成物として飲食品へ含有させる場合、本発明の分岐グルカンの含有量は、飲食品中に0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましく、0.09質量%以上であってもよい。
本発明及び本願明細書において、「医薬品」及び「医薬部外品」とは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に定められた医薬品及び医薬部外品を指す。シトラール含有組成物として用いられる医薬品及び医薬部外品としては、特に限定されるものではなく、その剤形は、錠剤、チュアブル錠、発泡錠、トローチ剤、ドロップ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、ドライシロップ剤、舐剤、チューインガム剤、口腔内崩壊錠等の経口投与用固形剤であってもよく、シロップ剤、ドリンク剤、エキス剤、エリキシル剤、懸濁剤等の経口投与用液剤であってもよく、注射剤、点眼剤、エアゾール剤、噴霧剤、坐剤、パップ剤、プラスター剤、軟膏剤、クリーム剤、ムース剤等の非経口投与用剤であってもよい。
これらの医薬品は、薬効成分と各種の薬学的に許容可能な添加剤を原料として、常法により製造できる。当該添加剤としては、例えば、賦形剤、分解剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、流動促進剤(glidant)、滑剤、香味料、甘味料又は可溶化剤を挙げることができるが、これらに限定されない。より具体的には、薬学的に許容可能な添加剤、例えば、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖、タルク、ラクトアルブミン、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、並びにポリエチレングリコールが挙げられる。これらの医薬品の製造工程におけるいずれかの時点において、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤を原料として添加することにより、本発明に係る風味劣化抑制方法を実施できる。
シトラール含有組成物として用いられる医薬部外品としては、特に限定されるものではなく、例えば、薬用石けん、薬用歯磨き剤、薬用クリーム、薬用パウダー、染毛剤、養毛剤、育毛剤、薬用入浴剤、薬用化粧品等の各種の製品を用いることができる。これらの医薬部外品の製造工程におけるいずれかの時点において、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤を原料として添加することにより、本発明に係る風味劣化抑制方法を実施できる。
本発明及び本願明細書において、「化粧品」とは、薬機法により定められた化粧品を指す。シトラール含有組成物として用いられる化粧品としては、特に限定されるものではなく、例えば、ローション、エッセンス、乳液、クリーム、ハップ剤、ペースト剤、ゲル剤、パウダー、ファンデーション、化粧水、パック剤などの基礎化粧品及びメイクアップ化粧品;日焼け防止剤、制汗剤;石鹸、洗顔料、ボディソープなどの皮膚洗浄剤;シャンプー、リンス、ヘアートニック、ヘアートリートメント剤、ヘアスプレーなどのヘアケア製品;浴用剤等が挙げられる。
シトラール含有組成物として用いられる衛生用品としては、特に限定されるものではなく、例えば、マスク、生理用品、失禁用品、冷却用スプレー、冷却用シート、冷却用ジェル、氷枕、ウェットティッシュ、空間用消臭剤、トイレ用消臭剤、衣類用消臭剤、消毒用スプレー、消毒用シート、消毒用ジェル、台所・食器用洗剤、衣類用洗剤、浴室用洗剤、住宅用洗剤、トイレ用洗剤等が挙げられる。これらの衛生用品の製造工程におけるいずれかの時点において、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤を原料として添加することにより、本発明に係る風味劣化抑制方法を実施できる。
シトラール含有組成物として用いられる香料組成物としては、特に限定されるものではなく、食品用香料組成物(フレーバー)であってもよく、食品以外のもの、例えば、化粧品や衛生用品等に香りを付ける香料組成物(フレグランス)であってもよい。これらの香料組成物のうち、特に、柑橘風味を付与するための香料組成物(柑橘風味香料)が好ましく、レモン風味香料、オレンジ風味香料、ゆず風味香料が特に好ましい。これらの香料組成物の製造工程におけるいずれかの時点において、本発明に係るp-クレゾール生成抑制剤を原料として添加することにより、本発明に係る風味劣化抑制方法を実施できる。
シトラール含有組成物やこれを含有させた各種組成物中のシトラール、p-クレゾール等の香気成分の分析は、公知の分析方法にて行うことができる。これらの分析方法として、例えば、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)及びガスクロマトグラフ法(GC法)などがあるが、分析手法は特段限定されない。
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
<糖組成分析>
糖組成分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行った。分析カラムは、MCI GEL CK04S(三菱ケミカル社製)を用い、超純水を溶離液として流速0.4mL/分、カラム温度70℃で分析を行った。検出には、示差屈折率検出器(RID-10A、島津製作所製)を使用し、分析時間は35分とした。得られるクロマトグラムのピーク面積より、各重合度成分の含有量を求めた。
<重合度4~6の分岐グルカン含有量の定量>
分岐グルカンの含有量を次の方法で確認した。5質量%に調製した糖液1mLに、1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に溶解した10mg/mL β-アミラーゼ#1500(ナガセケムテックス社製)50μLを添加し、55℃にて1時間作用させ、煮沸失活させた。これをアンバーライトMB4(オルガノ社製)にて脱塩した後、0.45μmフィルターにてろ過したものを、HPLCに供した。酵素処理後に残存する重合度4~6の糖質を、重合度4~6の分岐グルカンとした。
<β-シクロデキストリン生成酵素の活性測定>
酵素反応は、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解した1質量% 可溶性澱粉(ナカライテスク社製)0.9mLに適宜水で希釈した酵素溶液0.1mLを添加し、40℃に10分間保持した。これに40mM水酸化ナトリウム水溶液を2.5mL添加して、反応を停止させた。生成したβ-シクロデキストリンを、フェノールフタレイン法により測定した。具体的には、0.1mg/mL フェノールフタレイン及び2.5mM 炭酸ナトリウムからなる溶液0.3mLを前記溶液に添加し、攪拌後550nmの吸光度を測定した。0~0.1mg/mLの範囲で作成したβ-シクロデキストリンの標準曲線に基づき、生成したβ-シクロデキストリン量を求めた。
<α-グルコシダーゼの活性測定>
酵素反応は、50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)に溶解した0.25質量% マルトース80μLに、0.05% トリトンX-100を含む10mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)で適宜希釈した酵素溶液20μLを添加し、37℃に10分間保持した。反応開始から10分で反応液50μLを抜き出し、2M トリス塩酸緩衝液(pH7.0)100μLと混合して、反応を停止させた。これにグルコースCII-テストワコー(富士フイルム和光純薬社製)を40μL添加した後、室温に1時間保持して発色させ、490nmの吸光度を測定した。生成したグルコース量は、0~0.01%の範囲で作成したグルコースの標準曲線に基づき算出した。
<イソアミラーゼの活性測定>
酵素反応は、20mM 塩化カルシウムを含む50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)100μLに5mg/mL ワキシーコーンスターチ(日本食品化工社製)350μLを添加した後、45℃で5分間保持した後の溶液に、同緩衝液にて適宜希釈した酵素溶液100μLを添加して、45℃に15分間保持した。これに反応失活用ヨウ素液(6.35mg/mLヨウ素及び83mg/mLヨウ化カリウムからなる溶液2mLと0.1N 塩酸8mLを混合したもの)500μLを添加して、反応を停止させた。この反応停止液を室温に15分間保持し、これに純水10mL添加したものの610nmの吸光度を測定した。
<ヨード呈色試験>
固形分濃度5.0質量%の糖組成物水溶液1mLに0.05M ヨウ素水溶液100μLを加え、よく撹拌した後に1cm石英セルにいれ、660nmの吸光度を分光光度計(U-2900、日立ハイテクサイエンス社製)で測定した。得られた吸光度から、超純水を試験溶液として同様に測定して得た吸光度を減じたものを、その糖組成物のヨード呈色値とした。
[実施例1]
各種糖質におけるp-クレゾールの生成抑制試験を実施した。糖質としては、D(+)-グルコース(富士フィルム和光純薬社製)、D(-)-フルクトース(ナカライテスク社製)、スクロース(富士フィルム和光純薬社製)、D(+)-マルトース一水和物、富士フィルム和光純薬社製)、マルトトリオース(日本食品化工社製)、マルトテトラオース(日本食品化工社製)、イソマルトース(東京化成工業社製)、イソマルトトリオース(東京化成工業社製)、イソマルトテトラオース(東京化成工業社製)、パノース(Megazyme社製)、イソパノース(Megazyme社製)、及び6-α-D-グルコシル-マルトトリオース(Megazyme社製)を用いた。
80.0μg/mLのシトラールを含むレモン香料(FL CCA-433286、ケミ・コム・ジャパン社製)、1質量% 各種糖質、及び0.1M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.4)からなる水溶液500μLを、60℃にて5日間保持した。5日間保存した反応液のシトラール含有量の経時変化及びp-クレゾールの生成量を、HPLCにて分析した。HPLC分析条件は、下記の通りで行った。
カラム:Inertsil(登録商標)ODS-3V(ジーエルサイエンス社製)
溶離液:0.1質量% ギ酸水溶液/アセトニトリル、85/15(0-15分)、85/15-15/85(15-50分)、15/85-85/15(50-55分)、85/15(55-60分)
流速:1.0mL/分
カラム温度:35℃
検出器:紫外吸光度検出器
波長:254nm
p-クレゾールの生成量は、0~10mg/mLのp-クレゾール水溶液を用いて、前記のHPLC分析にて各濃度における面積値を算出し、検量線を作成することで算出した。
シトラールの残存量は、0~10mg/mLのシトラール水溶液を用いて、HPLC分析にて各濃度における面積値を算出し、検量線を作成することで算出した。
各試験区の保存後(保存5日目)のシトラール濃度を、保存前(保存0日目)のシトラール濃度を100とした相対量として求めた。保存後のシトラールの相対量の結果を、各試験区に添加した糖質と共に表1に示す。表中、試験区1-0は、糖質無添加の反応液である。また、各試験区の保存後におけるp-クレゾールの生成量(μg/mL)とその相対量(試験区1-0のp-クレゾール生成量を100とする)を、表1に示す。
Figure 2024007543000001
表1に示すように、全ての試験区の水溶液において、60℃で5日間の保存後には、シトラールは保存前の2%程度しか残存しておらず、ほぼ全量が分解されてしまっていた。一方で、α-1,4結合及びα-1,6結合を含む分岐グルカンを配合した試験区1-10~1-12の水溶液では、60℃にて保存5日後におけるp-クレゾールの生成量は、糖質無添加の試験区1-0の水溶液の65質量%以下であり、特に、還元末端がα-1,6結合により分岐構造を形成しているイソパノースを添加した試験区1-11は、p-クレゾール生成量は、試験区1-0の10%以下にまで低下していた。これらの結果から、α-1,4結合及びα-1,6結合を含む分岐グルカンを配合することにより、シトラール劣化によるp-クレゾール生成を抑制できることが示された。これに対して、単糖、2糖、及び直鎖状の三糖を配合した試験区1-1~1-9の水溶液では、60℃にて保存5日後におけるp-クレゾール量は、糖質を配合していない試験区1-0の水溶液とほぼ同程度に高かく、これらの糖質には、p-クレゾール生成抑制作用はないことが示された。
[実施例2]
分岐グルカンの配合量が、p-クレゾール生成抑制に与える影響を調べた。
(1)パノースの配合量が、p-クレゾール生成抑制作用に与える影響
スクロース又はパノースを様々な濃度で含有するシトラール含有水溶液に対して、p-クレゾールの生成抑制試験を実施した。すなわち、80.0μg/mLのシトラールを含むレモン香料、0.1~2質量% スクロース又はパノース、及び0.1M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.4)からなる水溶液500μLを、60℃にて5日間保存した。5日間保存した反応液のp-クレゾールの生成量(μg/mL)を、実施例1と同様にしてHPLC分析により測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 2024007543000002
スクロースを添加した水溶液では、スクロースの添加量に関わらず、60℃にて5日間保存後には、一定量のp-クレゾールが生成された。一方で、パノースを添加した水溶液では、パノースの添加量が多くなると、p-クレゾールの生成量が低下する傾向がみられた。つまり、パノースによるp-クレゾール生成抑制効果は、パノースの濃度依存的に増強することが確認された。
(2)6-α-D-グルコシル-マルトトリオースの配合量が、p-クレゾール生成抑制作用に与える影響
スクロース、6-α-D-グルコシル-マルトトリオース、又はマルトテトラオースを様々な濃度で含有するシトラール含有水溶液に対して、p-クレゾールの生成抑制試験を実施した。具体的には、糖質をパノースに代えて、6-α-D-グルコシル-マルトトリオース又はマルトテトラオースを用いた以外は、前記(1)と同様にして、60℃で5日間保存した後の反応液のp-クレゾールの生成量(μg/mL)を測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 2024007543000003
スクロース及びマルトテトラオースを添加した水溶液では、それぞれの糖質の添加量に関わらず、60℃にて5日間保存後には、一定量のp-クレゾールが生成された。一方で、6-α-D-グルコシル-マルトトリオースを添加した水溶液では、6-α-D-グルコシル-マルトトリオースの添加量が多くなると、p-クレゾールの生成量が低下する傾向がみられた。つまり、6-α-D-グルコシル-マルトトリオースによるp-クレゾール生成抑制効果は、6-α-D-グルコシル-マルトトリオースの濃度依存的に増強することが確認された。
[実施例3]
分岐グルカンを含有する糖組成物によるp-クレゾール生成抑制能を検討した。
(1)分岐グルカン4の調製
液化酵素により、液化したコーンスターチを糖分解酵素及び糖転移酵素などの各種酵素で処理することによって、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状構造にα-1,6-グルコシド結合からなる分岐構造が導入された分岐グルカンを主成分とする糖組成物を調製した。
具体的には、30%(w/w) DE6.5コーンスターチ液化液を、温度53℃、pH6.0に調整し、これに、パエニバチルス・スピーシーズ由来のシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり0.3単位、マイロイデス・オドラータス由来のイソアミラーゼを対固形分1g当たり200単位、プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム社製)を対固形分1g当たり0.2mg、トランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム社製)を対固形分1g当たり3.75単位、クライスターゼL-1(天野エンザイム社製)を対固形分1g当たり0.06mg添加して、50時間糖化した。これを80℃に加温し、さらにクライスターゼL-1を対固形分1g当たり0.15mg添加して、1時間作用させた。続いて、酵素処理後の組成物を、定法に従い精製、濃縮して、分岐グルカン4を得た。なお、パエニバチルス・スピーシーズ由来のシクロデキストリン生成酵素は、Agr. Biol. Chem., vol.40(9), p.1785-1791(1976)に記載の方法に従って、調製した。マイロイデス・オドラータス由来のイソアミラーゼは、特開平5-227959号公報に記載の方法に従って、調製した。
(2)各種糖組成物のp-クレゾール生成抑制能の検討
前記(1)で調製した糖組成物(分岐グルカン4)に加えて、イソマルトオリゴ糖を主成分とする糖組成物(「バイオトース#50」、日本食品化工社製;以下、分岐グルカン1)、パノースを主成分とする糖組成物(「パノリッチ」、日本食品化工社製;以下、分岐グルカン2)、高分子イソマルトオリゴ糖を主成分とする糖組成物(「ブランチオリゴ」、日本食品化工社製;以下、分岐グルカン3)、異性化糖(「フジフラクトH-100」、日本食品化工社製)、及びマルトースを主成分とする糖組成物(「ハイマルトースMC-55」、日本食品化工社製;以下、マルトオリゴ糖)について、p-クレゾール生成抑制能を調べた。なお、分岐グルカン1は、α-1,6-グルコシド結合からなるイソマルトースを主成分とするが、一定量のα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合から成るパノースを含有する。分岐グルカン3の主成分である高分子イソマルトオリゴ糖は、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合を主たる結合様式とする分岐グルカンである。
まず、分岐グルカン1~4の糖組成及びヨード呈色値を調べた。結果を表4に示す。表中、「-」は、未測定であることを意味する。分岐グルカン1は、分岐グルカン2よりも低分子のイソマルトオリゴ糖であり、その糖組成によりDP4~6の分岐グルカン含有量及びヨード呈色値は、分岐グルカン2の値と同程度であることは明らかなため、一部データを省略した。
Figure 2024007543000004
表5に示した分量(質量部)で各原料を配合し、500μLずつバイアル瓶に分注して水溶液を調製した。シラップ状の糖組成物については、固形分換算の配合量を、表5に記載した。レモン香料は、実施例1で使用したものと同種の市販香料を用いた。
Figure 2024007543000005
調製された各試験区の水溶液500μLを、60℃で5日間保存した後、当該水溶液のp-クレゾールの生成量(μg/mL)を、実施例1と同様にしてHPLC分析により測定した。測定結果を表6に示す。
Figure 2024007543000006
表6に示すように、分岐グルカンを主成分とする糖組成物を配合した試験区2-1~2-4の水溶液では、60℃にて保存5日後におけるp-クレゾールの生成量は、糖組成物無添加の試験区2-0の水溶液の10質量%以下にまで低下していた。これらの結果から、分岐グルカンを含有する糖組成物を配合することにより、シトラール劣化によるp-クレゾール生成を抑制できることが示された。一方で、分岐グルカンが主成分ではない糖組成物を配合した試験区2-5~2-6の水溶液では、p-クレゾールの生成量が多く、これらの糖組成物には、p-クレゾール生成抑制作用は、全くないか、非常に小さいことが示された。
(3)分岐グルカンを主成分とする糖組成物の配合量が、p-クレゾール生成抑制作用に与える影響
スクロース、分岐グルカン1~4を様々な濃度で含有するシトラール含有水溶液に対して、p-クレゾールの生成抑制試験を実施した。すなわち、80.0μg/mLのシトラールを含むレモン香料、10質量%スクロース、及び0.1M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.4)からなるベース液に、スクロース又は分岐グルカンを0.1~10質量%となるように添加して調製した水溶液500μLを、60℃にて5日間保存した。5日間保存した反応液のp-クレゾールの生成量(μg/mL)を、実施例1と同様にしてHPLC分析により測定した。
Figure 2024007543000007
p-クレゾール生成量の測定結果を表7に示す。この結果、分岐グルカン1~4の全てにおいて、添加量依存的なp-クレゾール生成抑制が確認された。パノースの含有比率が多い分岐グルカン2が最もp-クレゾール生成抑制能が高かったが、分岐グルカン4も分岐グルカン2と同程度に高いp-クレゾール生成抑制能を有していた。分岐グルカン4は、DP5以上の分岐グルカンの含有比率が高いことから、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状構造にα-1,6-グルコシド結合からなる分岐構造が導入された分岐グルカンであれば、DP5以上の比較的重合度の高い分岐グルカンであっても、p-クレゾール生成抑制効果が得られることが確認された。
[実施例4]
実施例3で用いた分岐グルカン1~4を、レモン風味飲料に配合し、呈味に対する影響を調べた。
(1)レモン風味飲料の調製
表8に示した分量(質量部)で各原料を配合し、缶に分注して、75℃で10分間殺菌を行い、殺菌後に急冷することによって、レモン風味飲料を調製した。なお、シラップ状の各糖組成物は、固形分換算の配合量を表8に記載した。
Figure 2024007543000008
(2)官能評価
前記(1)で製造した各レモン風味飲料に対して、製造直後から60℃で14日間保存した。保存後の各レモン風味飲料の薬品臭及びアーモンド・フローラル臭について、4名の熟練したパネラーによる官能評価を実施した。官能評価は、糖組成物無添加である試験区3-0のレモン風味飲料を対照とする相対評価により行った。各パネラーの評価点の平均値を、各試験区の評価点とした。
薬品臭(p-クレゾールの臭いとして特徴的に感じられる、薬品様又はフェノール様の風味)の評価基準:
評価点3 : 試験区3-0よりも薬品臭が非常に強い。
評価点2 : 試験区3-0よりも薬品臭が強い。
評価点1 : 試験区3-0よりも薬品臭がやや強い。
評価点0 : 試験区3-0と同程度の薬品臭がする。
評価点-1: 試験区3-0よりも薬品臭がやや弱い。
評価点-2: 試験区3-0よりも薬品臭が弱い。
評価点-3: 試験区3-0よりも薬品臭が非常に弱い。
アーモンド・フローラル臭(p-メチルアセトフェノンなどのp-クレゾール以外のレモン由来の物質の劣化臭。アーモンド様又はフローラル様の風味)の評価基準
評価点3 : 試験区3-0よりもアーモンド臭・フローラル臭が非常に強い。
評価点2 : 試験区3-0よりもアーモンド臭・フローラル臭が強い。
評価点1 : 試験区3-0よりもアーモンド臭・フローラル臭がやや強い。
評価点0 : 試験区3-0と同程度のアーモンド臭・フローラル臭がする。
評価点-1: 試験区3-0よりもアーモンド臭・フローラル臭がやや弱い。
評価点-2: 試験区3-0よりもアーモンド臭・フローラル臭が弱い。
評価点-3: 試験区3-0よりもアーモンド臭・フローラル臭が非常に弱い。
Figure 2024007543000009
官能評価の結果を表9に示す。分岐グルカンを配合したレモン風味飲料(試験区3-1~試験区3-4)は、製造14日後において、分岐グルカン無添加の試験区3-0のレモン風味飲料に比べて、薬品臭が低減されていた。特に、p-クレゾール生成抑制効果自体は分岐グルカン2が最も高かった(実施例3-(3))にもかかわらず、試験区3-3及び3-4のレモン風味飲料では、試験区3-1及び3-2のレモン風味飲料よりも、薬品臭が強く抑えられていた。
また、p-クレゾールの生成抑制により、p-クレゾール以外のシトラール劣化物が減量されていないにもかかわらず、試験区3-1~試験区3-4のレモン風味飲料のアーモンド・フローラル臭は、試験区3-0と同程度に抑えられていた。特に、分岐グルカン4を含有させた試験区3-4のレモン風味飲料は、薬品臭とアーモンド・フローラル臭のいずれもが非常に低減されており、嗜好性の高いものであった。これらの結果から、分岐グルカン1~4には、p-クレゾールの生成抑制効果と共に、劣化臭に対するマスキング効果も有することが示唆された。
[実施例5]
分岐グルカンの呈味改良効果(マスキング効果)を検討した。
表10に示した分量(質量部)で各原料を配合したレモン風味飲料を調製した。得られたレモン風味飲料を缶に充填して、75℃で10分間殺菌を行い、殺菌後に急冷した。冷却後の缶入りレモン風味飲料を、60℃にて14日間保存した。保存後の飲料に各分岐グルカンを添加し、表11に示した分量(質量部)となるレモン風味飲料を調製した。なお、シラップ状の各糖組成物は、固形分換算の配合量を表11に記載した。
Figure 2024007543000010
Figure 2024007543000011
(2)官能評価
前記(1)で製造した各レモン風味飲料を60℃で加温し、レモン風味飲料の薬品臭及びアーモンド・フローラル臭について、4名の熟練したパネラーによる官能評価を実施した。
官能評価は、分岐グルカン無添加である試験区4-0のレモン風味飲料を対照とする相対評価により行った。評価基準は実施例4の薬品臭及びアーモンド・フローラル臭の評価基準を用いて、各パネラーの評価点の平均値を、各試験区の評価点とした。
Figure 2024007543000012
官能評価の結果を表12に示す。分岐グルカンを配合したレモン風味飲料(試験区4―1~試験区4―4)は、無添加のレモン風味飲料(試験区4-0)に比べて、薬品臭とアーモンド・フローラル臭の両方が低減されていた。実施例4及び実施例5の結果から、分岐グルカンは、p-クレゾールの生成抑制効果があると共にマスキング効果も有することが確認された。
[実施例6]
分岐グルカンの重合度ごとのp-クレゾール生成抑制能を検討した。
80.0μg/mLのシトラールを含むレモン香料と、上述の実施例3で調製した分岐グルカン4を重合度ごとにDP1-3、DP4-6、DP7超過の3種類に分画したいずれかの分画品と、0.1M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)とからなる水溶液を、サンプルバイアルに250μLずつ分注し、60℃にて5日間保存した。
分画品の重合度を異にする各試験区には、Brix値(可溶性固形物含有量であり、糖度計の示度)が0.1から10までの系を用意した。
その後、上記の5日間保存した水溶液のうちの50μLをHPLC分析に供し、p-クレゾールの生成量(μg/mL)を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表13及び図1に示す。
Figure 2024007543000013
分岐グルカン4の重合度ごとの分画品を添加した水溶液では、いずれの重合度の試験区においても、Brix値(表13では「Bx.」として記載)依存的に、p-クレゾールの生成抑制が確認された。
以上の結果から、分岐グルカンは、その重合度に拘わらず、p-クレゾールの生成抑制効果を有することが明らかになった。

Claims (9)

  1. 分岐グルカン又はその還元物を有効成分とすることを特徴とする、p-クレゾール生成抑制剤。
  2. 前記分岐グルカンが、α-1,6-グルコシド結合からなる分岐構造を有するグルカンである、請求項1に記載のp-クレゾール生成抑制剤。
  3. 前記分岐グルカンが、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状構造を有する、請求項1に記載のp-クレゾール生成抑制剤。
  4. 前記分岐グルカンが、パノース、イソパノース、6-α-D-グルコシル-マルトトリオース、及びこれらの還元物からなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載のp-クレゾール生成抑制剤。
  5. 前記分岐グルカン又はその還元物を含有する糖組成物を含有する、請求項1に記載のp-クレゾール生成抑制剤。
  6. 前記分岐グルカン又はその還元物を含有する糖組成物を含有し、
    前記糖組成物のヨード呈色試験における波長660nmの吸光度が0.20以下である、請求項1に記載のp-クレゾール生成抑制剤。
  7. シトラールを含有する組成物の風味劣化を抑制する方法であって、
    請求項1~6のいずれか一項に記載のp-クレゾール生成抑制剤を、シトラールを含有する組成物に含有させることを特徴とする、シトラール含有組成物の風味劣化抑制方法。
  8. 前記シトラール含有組成物が、柑橘風味を有する、請求項7に記載のシトラール含有組成物の風味劣化抑制方法。
  9. 前記シトラール含有組成物が、飲食品である、請求項7に記載のシトラール含有組成物の風味劣化抑制方法。
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